著者
清田 雅史 米崎 史郎 香山 薫 馬場 徳寿
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.71-78, 2011 (Released:2011-07-27)
参考文献数
12

オットセイ(キタオットセイ,Callorhinus ursinus)の科学調査や漂着,混獲個体の適切な処置の際に必要とされる捕獲と取り扱いの方法を,陸上と海上に分けて解説する.陸上では,雌獣や小型の雄獣(体重70 kg未満)であれば,絞め縄のついた棒か大型のタモ網を用いて捕獲し,保定具を用いて物理的に不動化することができるが,大型の成獣雄の取り扱いには,化学的不動化法を用いざるを得ない.捕獲と保定の間は絶えず呼吸状態を確認することが大切である.また,繁殖島上でオットセイは密集した社会的な集団を形成するため,捕獲に際して上陸集団への撹乱を最小にし,動物と作業者の安全を確保し得る接近,捕獲,保定の方法を選ばなければならない.処置後の捕獲個体が他個体との社会的関係を維持できるよう,元の状態に安全に戻すことも重要である.一方海上では,摂餌域で流し刺網を使った生け捕りが可能である.日本国内ではオットセイの捕獲と所持は国内法により規制されており,調査のための捕獲を行うには,政府の許可を得る必要がある.
著者
馬場 香里
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.207-218, 2015
被引用文献数
1

<b>目 的</b><br> 児童虐待防止への介入の必要性の判断や介入の評価指標とする児童虐待の本質を捉えた尺度の開発につなげ,さらに将来的な周産期における児童虐待防止への支援の発展と,児童虐待予防活動の基盤づくりへの示唆を得ることを目的とした。<br><b>方 法</b><br> Rodgers(2000)の提唱する概念分析のアプローチ法を用いた。9つのデータベースとして,医中誌Web,CiNii,MEDLINE,CINHAL,PsycINFO,SocINDEX,Minds,National Guideline clearing-house,trip databaseを使用し,検索用語は「児童虐待(child abuse),妊娠(pregnant women),産後(postnatal),育児(child care)」とした。最終的に,英語文献26件,日本語文献32件の計58件と,日本小児科学会の発行している「子ども虐待診療手引き(2014)」を分析対象とした。<br><b>結 果</b><br> 5つの属性【養育者から子どもへの一方的な支配関係】【養育者の自覚の有無に関係しない行為】【子どものwell-beingを害する行為】【子どものwell-beingを保つ行為の欠如】【子どもの状況】,5つの先行要件【養育者の要因】【子どもの要因】【社会環境の要因】【複数要因の重なり】【適切な介入の不足】,5つの帰結【子どもの保護】【養育者の否認と孤独】【サバイバーの健康への影響】【母になったサバイバーの苦悩】【世代間伝播】が抽出された。代用語に「child maltreatment」が抽出され,関連概念に「しつけ」「shaken baby syndrome(揺さぶられっこ症候群)」「Munchhausen Syndrome by proxy(代理ミュンヒハウゼン症候群)」が抽出された。分析の結果,本概念を「養育者から子どもへの一方的な支配関係から成る,養育者の自覚の有無に関係しない行為による子どもの状況を基盤とした,子どものwell-beingを害する行為,及び子どものwell-beingを保つ行為の欠如である」と再定義した。<br><b>結 論</b><br> 本概念分析の結果は,児童虐待の本質を捉えることにつながり,今後の研究において児童虐待を測る尺度を開発する基盤となりうる。また本概念分析により,児童虐待による子どもへの長期的な健康への影響や,次世代への児童虐待の繰り返しの可能性が示され,児童虐待発生前の妊娠期からの予防の必要性,特に周産期で主な支援対象となる母がサバイバーであった場合の母に対する介入の必要性が示唆された。さらに周産期における児童虐待防止への支援については,妊婦のみならず,そのパートナーや子ども,社会環境も含めて支援対象であると認識し,それらの要因に対する適切な介入が必要である。
著者
馬場 信行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.357-364, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
32

本論は、京浜電鉄が明治後期から昭和初期まで開発し、その後引き続き所有、管理、運営した羽田穴守海水浴場および周囲付属施設を対象として、文献調査に基づき、その運営実態と招致戦略の解明を目的とする。分析の結果、京浜電鉄は運営に試行錯誤を繰り返しながらも、明治後期から30年以上継続して海水浴場を維持し、多くの客に一日の遊楽を提供し、庶民の行楽の一環としての海水浴文化の定着に大きな役割を果たしたことが明らかになった。また、新社会層の女性や子どもが楽しめるように配慮した集客戦略は、化粧品という当該社会層を意識したサービスを提供した堀越商店のノウハウを取り入れながら、次第に施設や設備を洗練させていったことが判明した。
著者
森 篤志 馬場 直義 池田 由美 三田 久載
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【はじめに】運動麻痺は軽度であったにも関わらず、ゲルストマン症候群(左右識別障害・手指失認・失書・失算)・失行症(模倣困難)に加え、上下肢の表在・深部覚に重度の感覚障害を有した症例に対し認知運動療法を試みた。その結果、症例の主観的な報告から左右の障害がある患者の空間認識における知見を得たのでここに報告する。<BR>【症例紹介】67歳、男性。2007年5月9日、言葉の出難さ、右半身の脱力にて発症。画像所見は、MRI上で左前頭頭頂円蓋部、中心後回に沿った皮質に多発性の急性梗塞、左レンズ核、尾状核頭部に陳旧性梗塞を認めた。来院時意識レベルJCSI-3、指示には応じるが発語は少なく運動性失語の状態であり、またゲルストマン症候群・失行症が見られた。麻痺はBrsにて右上下肢・手指VIレベルで、歩行は可能だが軽度分廻し様の歩容を呈した。感覚障害は、右下肢に軽~中等度鈍麻、右上肢・手指に中~重度鈍麻が存在していた。しかし身体状況について尋ねると「手も足も特に問題ないです」と答えた。<BR>【病態と解釈】自己の右側と左側の認識が可能かどうかについて確認するために、セラピストが触った部位が自分の右手か左手かを答える課題を実施した結果、自己の左右方向の認識困難であった。そこで、なぜ困難かについて症例に問うと「自分の右手と言っても、その手を右方向に動かせば右だし、左方向に動かせば左だから、どちらが自分の右でどちらが自分の左だかが分からなくなってしまう」と報告した。次に、盤上に書かれた横棒線を見て、セラピストに言語指示された方向(右・左)へ指でなぞるといった、視覚情報を基にした方向の認識課題を実施した結果、指示通りに横棒上を左・右方向へ正しくなぞることができなかった。なぜ困難かについて症例に問うと「線を辿るとき、一辺の端から始めるのか、一辺の中心から始めるのかが分からなくなってしまうため、どちらの方向に進んで良いか分からなくなってしまう」と報告した。<BR>【考察】訓練課題で観察されたエラーと症例自身の報告から、症例は発症により身体図式の変性が起こったことで、自己の身体空間の認識が障害されたのではないかと考えた。そして身体空間の認識障害によって、自己中心座標と物体中心座標の混同が起こり、空間での方向認識(視覚情報を基にした方向の認識困難、体性感覚を介した運動方向認識困難)にエラーが生じていたのではないかと考えた。この考えの基、自己の空間及び自己と外界との空間の統合(マッチング)を要求する課題を中心としたアプローチを実施した結果、視覚及び体性感覚を介した方向認識にある程度の改善を認め、結果として歩容の改善も見られた。このことより空間を認識する課題が、変性した身体図式の再構築をもたらし、身体空間の認識能力を改善させたのではないかと考えられた。<BR>
著者
馬場 香菜子 小原 依里 飯原 なおみ
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.35-43, 2020-05-29 (Released:2020-06-13)
参考文献数
29

Benzodiazepine receptor agonists (BZs) are medications to be used with caution, not only for long-time users, but also for first-time users. This study aimed to compare the use of BZs or central nervous system (CNS) agents in first-time BZs users (FU) and continuing BZs users (CU). Using a large health insurance claims database in Japan, BZs users aged ≥40 years in 2013 who were opioid non-users without hospitalization were classified into FU or CU, by use of BZs in the first half-year. BZs or CNS agent use at the index date (the first date BZs were dispensed in the latter year) was investigated as follows: (1) proportion of patients with prescriptions of BZs for use as needed (BZs-AN), (2) daily number of BZs or CNS agents, and (3) daily standardized dose of BZs or CNS agents. More individuals in the FU group (3,162/16,576; 19%) than in the CU group (7,627/46,088; 17%) received BZs-AN (p<0.001); 87% of the FU group vs 62% of the CU group used single BZs (p<0.001), and 53% vs 24% used less than 5 mg/day of equivalent diazepam (p<0.001). A similar trend was found for CNS agents. Numbers or doses of BZs or CNS agents decreased with increasing age in both groups. However, some first-time users aged 70-74years started with ≥2 types of BZs or ≥10 mg/day of equivalent diazepam. Overall, BZs for outpatients without opioids were started carefully, but a prescription review was necessary for some patients, requiring more effort from healthcare providers.
著者
馬場 靖憲 渋谷 真人
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-47, 2000-10-25
参考文献数
14
被引用文献数
5

われわれは日本のTVゲームソフト産業のダイナミズムは産業クラスターの視点からの分析によって可能になると考え, 先行論文で東京ゲームソフト・クラスターを提案した。本論文ではなぜクラスターが併存することになったのかについて実証分析を行なった。産業クラスターの形成要因としては関連教育機関による開発支援環境の有無, マーケティング情報を入手するためのゲームソフト量販店に対する近接度, 加えて, 放送局, 出版社など知的社会インフラによって構成される開発環境の重要性に着目している。興味深いのは, ゲームソフト企業の母体企業がデジタルコンテンツに適した開発環境に立地する場合であり, 多角化企業とベンチャー企業は同一地域に密集して立地する。ここでは, 開発に関係する情報がリアルタイムで密度高く交換され, 高度化した情報環境は開発者のコミュニティの質を向上させる。良好な開発環境においてクラスターの中核が形成されると, 活性化された情報環境はさまざまな企業のクラスターへの集中化を測深しその形成を加速する。本論文では, このような現象が現在, 山手線クラスターにおいて進行中であることを示した。さらに述べれば, 近年, 同南部クラスターの勢いが強くなりつつあるのが現状である。
著者
馬場 國昭 徳田 リツ子 馬場 淳徳
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-32, 2020-03-25 (Released:2020-03-25)
参考文献数
16

初診日が1993年4月1日から2019年3月31日にある26年間の熱傷患者50,376例を統計解析した. 2018年の第44回日本熱傷学会総会・学術集会では25年間の症例の集計をした. その後の1年間の症例を加え5万余例になったので, 本稿では26年間の熱傷症例の集計とした. 内訳は男性17,437例, 女性32,939例, 男女比0.53であった. 最も多い受傷年代は10歳未満の15,936例 (熱傷全体の31.6%) であり, 同年代の男女比は0.98で男女差がない. 熱傷の受傷原因は熱性液体が24,105例 (47.9%), 接触17,656例 (35.0%), 火炎3,784例 (7.5%), 蒸気2,679例 (5.3%) であった. これらの四大原因で熱傷全体の95.7%を占めた. 最多の原因である熱性液体による熱傷24,105例のうち熱湯によるものは10,581例, 熱油6,023例, 茶・コーヒー2,084例, みそ汁1,439例であった. 接触熱傷のうち最多の原因はストーブなどの暖房器具による5,211例, ついでアイロンの2,258例であり, 火炎熱傷では花火によるものが多く1,070例, 蒸気熱傷では炊飯器の蒸気によるものが多く608例あった. 26年間の症例を年度ごとにみると, 集計初年度の1993年度は2,690例あったのが最終年度の2018年度では1,245例 (集計初年度の46.3%) と半数以下になった. この推移から多数例の集計に加えて, この間の変動をみることが重要であると考え, 26年間を前期と後期の2期に分け熱傷患者数のさらなる統計分析をした. 前期の症例数は29,836例, 後期は20,540例 (前期の68.8%) であり, 男女別では男性の後期症例数は前期の60.2%, 女性は73.8%であり男性の減少率が大きかった. 原因別では火炎 (50.2%) と爆発 (37.5%) による熱傷の減少率が大きかった. ストーブによる熱傷では後期は前期の44.0%になっていた. 逆に増加した受傷原因はヘアーアイロンによる熱傷が1,100%で, 約10倍になっていた.
著者
工藤 功貴 片岡 智哉 二瓶 泰雄 日向 博文 島崎 穂波 馬場 大樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1225-I_1230, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
14
被引用文献数
1

近年,直径5mm以下の微細プラスチック片(microplastics,以下MP)による環境影響が懸念されている.海洋では多くの調査・研究が行われているが,河川での調査例は少なく,調査手法も統一されていない.現地観測を行う際,プラスチック製用具の使用や周辺環境中のプラスチックとの接触による予期せぬプラスチック混入はMP採取量の誤差要因となるため,プラスチック混入への十分な配慮が必要となる.そこでまずMP調査手法に関して基礎的検討を行った.検討結果を踏まえ,これまで国内18河川で実施したMP調査の結果を整理した.得られたMP数密度(0.0064~2.5 個/m3)は日本近海(0.6~4.2 個/m3)13)より1オーダー小さく,地点毎に材質構成に違いが見られた.サイズは2mm以下がほとんどであった.
著者
馬場 基 中川 正樹 久留島 典子 高田 智和 耒代 誠仁 山本 和明 山田 太造 笹原 宏之 大山 航 中村 覚 渡辺 晃宏 桑田 訓也 山本 祥隆 高田 祐一 星野 安治 上椙 英之 畑野 吉則
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

国際的な歴史的文字の連携検索実現のため、「IIIFに基づく歴史的文字研究資源情報と公開の指針」および「オープンデータに関する仕様」(第一版)を、連携各機関(奈良文化財研究所・東京大学史料編纂所・国文学研究資料館・国立国語研究所・京都大学人文学研究所・台湾中央研究院歴史語言研究所)と共同で策定・公表し、機関間連携体制の中核を形成した。また、上記「指針」「仕様」に基づく、機関連携検索ポータルサイト「史的文字データベース連携システム」の実証試験版(奈文研・編纂所・国文研連携)を令和2年3月に公開。令和2年10月には、台湾中研院・国文研・京大人文研のデータを加えて、多言語(英語・繁体中国語・簡体中国語・韓国語)にて本公開を開始した(https://mojiportal.nabunken.go.jp/)。なお、連携・サイト公開は、国内および台湾メディアで報道された。木簡情報の研究資源化として、既存の木簡文字画像(約10万文字)をIIIF形式に変換した。また、IIIF用の文字画像切出ツールを開発し、新規に約15,000文字(延べ)のデータを作成した。過年度と合わせて合計約115,000文字の研究資源化を実現した。文字に関する知識の集積作業として、木簡文字観察記録シートを約50,000文字(延べ)作成した。なお、同シートによる分析が、中国簡牘・韓国木簡にも有効であることが確認されたことを踏まえ、東アジア各地の簡牘・木簡文字の観察作業も実施した。国際共同研究・学際研究として、令和1年9月に、東アジア木簡に関する国際学会を共催した(北京)。当初、国際学会の開催は、研究計画後半での実施を予定していたが、本研究遂行にあたっての共同研究等の中で、学会共催の呼びかけを受け、予定を繰り上げて国際学会を共催した。また、人文情報学の国内シンポジウム等において、IIIF連携等本研究の成果を報告した。
著者
馬場 悠男 松井 章 篠田 謙一 坂上 和弘 米田 穣 金原 正明 茂原 信生 中山 光子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

上野寛永寺御裏方墓所から発掘された徳川将軍親族遺体のうち保存の良い15体の人骨について、修復・保存処理を施し、形態観察・写真撮影・CT撮影・計測を行って、デジタルデータとして記録保存した(馬場・坂上・河野)。さらに、遺骨の形態比較分析(馬場・坂上・茂原・中山)、ミトコンドリアDNAハプロタイプ分析(篠田)、安定同位体による食性分析および重金属分析(米田他)、寄生虫卵および花粉分析(松井・金原他)を行い、親族遺体の身体的特徴と特殊な生活形態を明らかにした。
著者
楊 明哲 荒井 ひろみ 馬場 雪乃
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.2C3OS9a03, 2021 (Released:2021-06-14)

無意識のバイアスは,人間が無意識のうちに獲得した固定観念等から形成される,潜在的な偏見のことである.人種・性別に関する無意識のバイアスは,採用や貸与等で他者を評価する際の不公平な判断に繋がる.機械学習モデルによる人間の評価がしばしば不公平になることは知られており,解決のために公平性配慮型機械学習の技術が研究されている.本研究では,人間が公平に判断できるようにするため,人間の無意識バイアスを矯正する手法を提案する.提案手法は,まず人間に(不公平な)評価を行わせ,評価結果に対して公平性配慮型機械学習を適用して公平なモデルを獲得する.公平なモデルと同様の判断をできるようにするため,人間に対して機械教示を行う.他者の収入を予測する被験者実験を実施し,不公平な評価を行う人間に対して,提案手法による矯正効果が見られることを確認した.
著者
馬場 宏二
出版者
大東文化大学
雑誌
経済論集 (ISSN:02874237)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.79-87, 2003-04-30

まことに偶然のきっかけから見付けた。経済学者で「経済成長」という語を初めて使ったのは、ヨーゼフ・シュムペーターである。その『経済発展の理論』の初版に、「経済成長」 Wachstum der Wirtschaft という文字が出てくる。それが「経済成長」なる語の初出のようである。もっとも、これがすぐ、今日の「経済成長」の流行に繋がったわけではないし、意味上も今日の用法と全く同義とは解しきれないないところがある。しかし、多くの論者が「経済成長」の創案者だろうと漠然と予期しているアルフレッド・マーシャルは、「企業成長」とは述べたものの、「経済成長」という語は終に使わなかった。しかるべき経済学者で「経済成長」と述べたのは、どうやらシュムペーターが最初らしいのである。
著者
梶村 俊介 馬場 雪乃 梶野 洸 鹿島 久嗣
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.K-F79_1-9, 2016-03-01 (Released:2016-02-18)
参考文献数
20

Crowdsourcing allows human intelligence tasks to be outsourced to a large number of unspecified people at low costs. However, because of the uneven ability and diligence of crowd workers, the quality of their work is also uneven and sometimes quite low. Therefore, quality control is one of the central issues in crowdsourcing research. In this paper, we address a quality control problem of enumeration tasks, in which workers are asked to enumerate as many answers satisfying certain conditions as possible. As examples of enumeration tasks, we consider text collection tasks in addition to POI collection tasks. Since workers neither necessarily provide correct answers nor provide exactly the same answers even if the answers indicate the same object because of orthographic or numerical variations, we propose a two-stage quality control method consisting of an answer clustering stage and a reliability estimation stage. The answer clustering stage with a new constrained exemplar clustering method groups answers indicating the same object into a cluster and requires a representative answer from each cluster, and then the reliability estimation stage with a modified HITS estimates the reliabilities of representative answers and removes unreliable ones. Implemented with a new constrained exemplar clustering and a modified HITS algorithm, the effectiveness of our method is demonstrated as compared to baseline methods on several real crowdsourcing datasets of POI collection tasks and text collection tasks.
著者
樋口 輝久 馬場 俊介
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.758, pp.117-136, 2004-04-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
157

本論文は, わずか四半世紀の間に, 導入・発展・衰退の過程を辿ったわが国のバットレスダムの変遷を明らかにしようとするものである. 薄い遮水壁と控え壁 (バットレス) で構成されるバットレスダムは, 笹流ダムで初めてわが国に導入され, 物部長穂の耐震理論によって発展を遂げたが, 国際大ダム会議で凍害が報告された直後の三滝ダムが最後とされてきた. 本論文では, 希少性と形態上の特異性からわが国のダム史上における特徴の一つになっているバットレスダムについて, ダム技術史上における位置付けを明確に示すとともに, 大正~昭和初期にかけてこの形式が積極的に採択された理由, そして, その後すぐに採択されなくなった理由の双方を明らかにすることで, 近代日本におけるバットレスダムの技術史の構築を目指す.
著者
岩井 大 宇都宮 啓太 小西 将矢 安藤 奈央美 宇都宮 敏生 藤澤 琢郎 馬場 奨 友田 幸一
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.235-241, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
13

甲状腺全摘後の甲状腺分化癌高リスク症例に対するI-131の外来内用療法が認可され,われわれの施設でも本法の適応と考えられた22例中19例で実施できた。当初,東日本大震災の福島原発放射能汚染事故に関連し,本法に躊躇される例があった。甲状腺ホルモン休薬法に比しrhTSH(Recombinant human thyroid stimulation hormone,ヒト遺伝子組み換え甲状腺刺激ホルモン)法では合併症が少なかった。19例中3例に局所再発と1例に遠隔転移が認められた。これらの症例はいずれも頸部再発歴があり,再手術のあとにI-131内用療法を受けた症例であった。したがって,今回のI-131内用療法は,甲状腺癌再発症例の再々発予防に対する効果は十分でない印象であったが,さらに十分な症例数と観察期間をもって判断すべきと思われた。
著者
津田 敏秀 馬場園 明 茂見 潤 大津 忠弘 三野 善央
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.161-173, 2001
参考文献数
63
被引用文献数
1 1

医学における因果関係の推論-意思決定-:津田敏秀ほか.岡山大学大学院医歯学総合研究科社会環境生命科学専攻長寿社会医学講座-産業医学においては, 予防施策を講じるにおいても補償問題においても, しばしば業務起因性が問題となる.また近年ではリスクアセスメントにおいても疫学の重要性が増し疫学的因果論を産業現場においても認識する必要が出てきた.我々は, 医学における因果律が確率的因果律として認識される事を明らかにしてきた.この因果律は, 科学のモデルの1つとして見なされてきた物理学においても同様に確率現象として認知されて来た.数学者・物理学者たちは, 因果推論において確率的思考が重要であることを, 不確定性原理が発見される以前に同様に主張してきた.それから, 病因割合, 曝露群寄与危険度割合, 原因確率, 等々で呼ばれる指標を説明した.原因確率(PC)は, ある特定の曝露によって引き起こされた疾病の個々の症例への条件付き確率を知るために用いられてきた.これは, 適当な相対危険度を決定するために曝露集団の経験を使って求められ, 曝露症例への補償のためにしばしば用いられてきた.最近の原因確率に関する議論も本論文の中で示した.次に, 人口集団からの因情報を個別個人の因果情報として適用可能であることを示した.日常生活においてさえ, 我々は因果を考える際に, 多くの人々によって試行された結果に基づいて因果を判断している.その上で, 我々は疫学研究から得られた結果を個人における曝露と疾病の関連に応用することに関して疑う懐疑主義を批判した.第三に, 我々は疫学の手短な歴史的視点を提供した.疫学はいくつかの期間を経て発展してきたが, 日本においては, 近年それぞれの疫学者が学んだ時代に依存して疫学者間で多くの互いに共約不可能な現象を観察することになった.第四に, 疫学的証拠に基づいた判断や政治的応用について, 柳本の分類に基づいて考察した.そして, 判断の理由付けのいくつかの例を呈示した.疫学の分野では因果関係による影響の大きさが確率として認知され, 意志決定にも極めて役に立つ.最後に, 疫学の未来におけるいくつかの課題について考察した.