著者
足達 太郎 鳥海 航 大川原 亜耶 高橋 久光
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.259-263, 2008-12-10
被引用文献数
1

キャベツ畑に,ハーブ類のカモミール(カミツレ)およびキンレンカ(ノウゼンハレン)をそれぞれ混作した区と,キャベツを単作して化学合成殺虫剤を施用した区および施用しない区をもうけ,キャベツの主要害虫であるダイコンアブラムシ・モンシロチョウ・コナガの個体数変動と捕食寄生性天敵による寄生率を比較した。試験の結果,各害虫ともそれぞれの個体数がほぼピークとなる時期に,処理区間で個体群密度に有意な差がみられた。ダイコンアブラムシは,カモミール混作区における個体群密度がキンレンカ混作区やキャベツ単作/殺虫剤無施用区または施用区よりも高かった。モンシロチョウの幼虫個体数は,キャベツ単作/殺虫剤無施用区>キンレンカ混作区>カモミール混作区>キャベツ単作/殺虫剤施用区の順に多かった。また,モンシロチョウの卵数は,両ハーブの混作区における値がキャベツ単作区(殺虫剤施用および無施用)における値よりも多かった。コナガは,キャベツ単作/殺虫剤施用区およびカモミール混作区で幼虫の個体数が多かった。いっぽう,モンシロチョウの幼虫におけるアオムシコマユバチの寄生率は,キャベツの生育中期において,キンレンカ混作区およびキャベツ単作/殺虫剤無施用区で最も高かった。これに対し,コナガ幼虫におけるコナガコマユバチの寄生率は,処理区間で有意な差は認められなかった。
著者
高橋 広満
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.47-57, 1998-01-10

「橋づくし」と、数字パズル・沖縄の祭・古典などの作品の<外>との関連を再検証し、異論を提出した。その上で、個々の典拠との関係を越えたイメージ群を想定する作者の思考の可能性や、この作品のパロディとしての構造とその真意などに触れた。続いて、小説の総体の類似物が作品内に存在するといういわゆる象徴の問題を、作品生成上からは模倣の運動を前提とするものとみて、<内>なるその模倣物(ミニチュア)の位置と及ぶ範囲をはかった。
著者
井上 智之 辻 義輝 藤田 聡美 吉村 直人 兵頭 正浩 高橋 博愛 初村 和樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0509, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 肩関節周囲炎は肩関節周囲組織の退行性変化を基盤とし、主に肩甲上腕関節の可動域制限をきたす疾患である。退行性変化の一つとして肩甲骨の可動性低下があげられるが、肩関節周囲炎発症後の肩甲骨の動きは代償動作が強く、本来の退行性による可動性の変化は見出せないことが多い。そこで今回、肩関節に疾患のない20歳代と50歳代の肩甲骨の動きを比較し、可動性の退行性変化を検証することで今後の理学療法に役立てようと考えた。【方法】 対象は肩関節に既往のない20歳代男性10名(平均年齢24.5±1.69)、50歳代男性10名(平均年齢54.8±2.14)、利き肩20肩を対象とした。測定方法は、被検者に端坐位にて利き肩上肢のみの安静坐位、屈曲90°、最大挙上、外転の肢位をとらせた。肢位は日本整形外科学会の関節可動域測定法に基づいて実施。肩甲棘三角、肩峰後角、肩甲骨下角、上腕骨内側上顆、上腕骨外側上顆にランドマークをつけ、各々の肢位で前額面、矢状面、水平面からデジタルカメラにて撮影し、画像処理ソフトImageJを用いて肩甲骨傾斜角度、移動角度量(各動作肢位時肩甲骨傾斜角度-安静時肩甲骨傾斜角度)を算出した。20歳代と50歳代の各肢位における肩甲骨傾斜角度と移動角度量をJSTAT for Windowsを使用し統計処理を行い、危険率5%未満で有意として比較検討した。【説明と同意】 対象者に本研究の趣旨を説明し、同意を得た上で行った。【結果】 1.肩甲骨傾斜角度について安静坐位での前額面にて20歳代7.2±7.4°、50歳代16.2±6.5°であり有意な肩甲骨の上方回旋を認めた。最大挙上・外転での矢状面にて、最大挙上:20歳代41.5±11.3°、50歳代26.0±9.1°であり有意な肩甲骨の後傾角度低下を認めた。外転:20歳代7.9±11.5°、50歳代-4.9±6.7°であり有意な肩甲骨前傾が認められた。2.肩甲骨移動角度量について 屈曲90°での前額面にて20歳代16.8±5.7°、50歳代10.3±4.7°。最大挙上での前額面にて20歳代45.6±9.4°、50歳代33.5±7.7°、矢状面にて20歳代52.9±10.7°、50歳代39.1±9.3°。外転での前額面にて20歳代32.2±7.9°、50歳代20.3±4.7°、矢状面にて20歳代19.4±13.0°、50歳代8.2±5.7°。屈曲90°・最大挙上・外転の肢位において有意に50歳代の肩甲骨移動量の低下を認めた。【考察】 結果より、肩甲骨傾斜角度については、退行性変化として肩甲骨が上方回旋位となることが認められた。これは加齢に伴う胸郭の変化や肩甲骨上方回旋に関与する筋の緊張が優位となっていることが考えられる。また肩甲骨移動角度量については、屈曲90°、最大挙上、外転ともに上方回旋の可動性低下、最大挙上、外転においては後傾の可動性低下が認められており、これは肩甲上腕リズムにおいて、肩甲上腕関節による肩関節運動が優位になっていることが考えられる。特に外転においては、20歳代では肩甲骨が後傾しているのに対し、50歳代では前傾している対象者が多く、これは外転時の肩峰下でのストレスが強くなることが考えられる。今回の結果より、肩甲骨の上方回旋・後傾の可動性に着目することで、肩関節周囲炎の治療や予防につながると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 肩関節周囲炎は肩甲骨の可動性や協調性が低下することが引き金となり、結果として肩甲上腕関節の疼痛や可動域制限をきたす可能性は以前より言われている。退行性変化を考慮して理学療法を行うことで、肩関節周囲炎に対する理学療法の新たな展開につながり、早期回復の達成、より効果的な予防治療の実現に寄与すると考えられる。
著者
アブリティプ アブライティ 阪田 升 高橋 裕子
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和元年度大会(札幌)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.141-144, 2019 (Released:2020-10-31)

受動喫煙は社会問題にまでなりつつあるが、喫煙室の煙の広がりについて評価した例は少ない。 本報告では移動物体CFD解析手法を用いて、人体が喫煙室を退出する際の煙濃度の移流拡散状況の再現を試みた。スライド式ドアとヒンジ式ドアの2つの種類のドアを対象に解析を行い、現場実測での煙(VOC)濃度との対応について考察した。
著者
高橋 良 岡田 諄
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.411-415,396, 1966-10-15 (Released:2011-08-10)

Since domestic air lines commenced their service in Japan, the department Otorhynolaryngogy, the Jikei University School of Medicine has been participating to the health controls of flight crews of the 'domestic air lines and students of the Aviation Academy.Highly developed airplanes, vastly increased number of flight crews and serial domestic air accidents prompted us to establish the details of medical standards in accepting new crews and students.The Otorhynolaryngological standards have been set to prevent individual health hazards in long duties, to eliminate the accidents due to human errors and to save resultant losses of the air line companies.The standards were prescribed based mainly on the experience and date in our dapartment, which were accumulated previously, in conjunction with the Japanese domestic flight rules and the medical standards of Air France and F. A. A.
著者
鈴木 一郎 清水 弘之 高橋 宏 石島 武一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.295-300, 1991-07-15 (Released:2012-10-29)
参考文献数
18
被引用文献数
8 5

We have originated cisternal irrigation combined with head shaking in order to remove subarachnoid clots rapidly and extensively. Eighteen patients with subarachnoid hemorrhage (SAH) due to ruptured intracranial aneurysms of the anterior part of the circle of Willis were studied. The degree of SAH as shown by CT was Group 3 on the Fisher's grading scale. Clipping was performed within 72 hours after the last bleeding. Continuous ventriculo-cisternal irrigation was carried out from 12 hours after the surgery, using solution with or without urokinase. The head was intermittently shaken (amplitude 4 cm, frequency 1.0-2.0 c/s) by a head-shaking device of our own making. The effect of head shaking on clot removal was evaluated by neurological examination, CT, and the volume of sedimentary clots in the draining fluid. Postoperative angiography was usually performed about 10 days after SAH.Although the number of patients was small for statistical analysis, the effect of head shaking on clot removal as shown by CT was remarkable. The subarachnoid clots with CT attenuation values of more than 60 in the basal and sylvian cisterns were usually washed out to the range (10-15) of normal cerebrospinal fluid within 48 hours. No delayed ischemic neurological deficits (DIND) occurred, and no low-density areas due to vasospasm were observed on computed tomography. Angiographic vasospasms were observed in only 2 cases, in which the diameter of the artery was less than 75% of that in the acute phase. But these vasospasms were limited to the area adjacent to the ruptured aneurysm.
著者
高橋 望
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

平成3年の大学設置基準の大綱化以降、大学の個別化により学部・学科名称が多様化している。この多様化により、専攻分野と卒後の進路との対応関係が不明確となったことが、大学進学希望者らにとって、将来のキャリアを見据えた進路選びを阻害する一因となっている。本研究は、適切な進路選択を支援するため、まず、学位に付記する専攻分野の名称を専攻分野の代理指標として、専攻分野と卒後の進路選択との対応関係の変遷を解明することを試みる。そして、この対応関係に基づき、希望する進路と関係する専攻分野や大学を検索し、結果を比較表示するアプリケーションを開発し、大学進学希望者らへ進路選択支援システムとして提供する。
著者
高橋 雅洋 岸 光男
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.137-147, 2006
参考文献数
35
被引用文献数
4

85歳高齢者,歯周組織の健全な若年成人(以下,健常者)およびその中間年齢層にあたり,歯周治療後のメインテナンスのために定期受診している者,合計292名から舌苔を採取し,菌種特異的PCR法により,4種の歯周病原性細菌と2種のミュータンスレンサ球菌を検出し,検出率を比較した.また,85歳高齢者と健常者においては歯科疾患関連細菌の検出と口腔内状況との関連を検討した.結果を以下に示す.1.無菌顎者の舌苔からの4種の歯周病原性細菌の検出率は低かった.また,有歯顎高齢者を含むその他の被験者群中では,健常者からのPorphyromonas gingivalis, Treponema denticolaの検出率が有意に低かった.これらより,歯周病に罹患していない者,歯周病感受性がない者の舌苔は,歯周病原性細菌の棲息部位となりにくいことが示された.2.健常者において舌苔と歯垢からの歯科疾患関連細菌の検出状況を比較したところ,T. denticola以外の細菌で,舌苔と歯垢からの検出に関連が認められた.さらに歯周病原性細菌に関しては,舌苔からの検出率が歯垢より高く,いずれか一方から歯周病原性菌が検出された場合には,主として舌苔からであった.これらの結果から,舌苔は口腔他部位への細菌の供給源であると同時に受容部位としても働き,さらに口腔他部位の細菌叢と相互に関連し合って,口腔全体の細菌叢を構成しているものと考えられた.
著者
橘 啓盛 池谷 朋彦 高橋 伸政 村井 克己 青山 克彦 星 永進
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.790-794, 2006-07-15 (Released:2008-03-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は38歳女性.月経に一致した左気胸を発症し当センターを紹介された.月経22日後に行った胸腔鏡下手術にて,肺瘻の部位や気腫性嚢胞は確認できなかったが,左胸腔内の臓側,壁側胸膜にびまん性に多発する褐色の結節を認めた.病理学的に臓側,壁側胸膜ともに子宮内膜組織を認め,月経随伴性気胸と診断した.術後第3病日に月経が開始し右気胸を併発したが胸腔ドレナージにより改善した.後にホルモン療法を施行し,術後1年の経過では気胸の再発を認めていない.本症例は月経直前に手術を施行したため脱落する前の病変が観察されたと考えられた.発症機序は腹腔からの子宮内膜組織の侵入と臓側胸膜病変の脱落による気胸発症と推測された.壁側胸膜に子宮内膜組織を認めることはまれであり,月経随伴性気胸の発症機序を考えるうえで,本症例は興味深く貴重な症例と思われた.
著者
中宮 英次郎 宮川 優一 戸田 典子 冨永 芳信 斉藤 るみ 住吉 義和 高橋 真理 徳力 剛 前澤 純也 三原 貴洋 竹村 直行
出版者
獣医循環器研究会
雑誌
動物の循環器 = Advances in animal cardiology (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.41-47, 2011-12-01
参考文献数
12

2歳6カ月齢,去勢オスのノルウェージャン・フォレスト・キャットを各種検査に基づいて肥大型心筋症と診断し,エナラプリルの投与を開始した。第1357病日に左房の高度な拡大が見られたため,ダルテパリン療法を追加した。さらに,第1616病日に左房内に spontaneous echo contrast (SEC) が,そして第2155病日には左心耳内に血栓形成が認められた。本症例は第2229病日に死亡した。SECは拡大した左房内での血液うっ滞により生じ,ヒトでは心房内での血栓形成または血栓塞栓症の危険因子と考えられている。獣医学領域ではSECの臨床的意義に関する記載は極めて限られている。本症例はSECが確認されてから613日間生存したことから,血栓予防療法を含む心不全療法が的確に実施されれば,SECは必ずしも予後不良を示す所見ではないと考えられた。