著者
荻田 義明 高橋 由里 本多 伴絵 吉川 循江 町田 良治 須藤 秀夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.613-618, 2007 (Released:2009-09-04)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

White petrolatum is widely used as an ointment base.In this study,we examined the quality characteristics of pharmaceutical petrolatums and a cosmetic petrolatum.There are 6 brands of pharmaceutical white petrolatum which are Perfecta and White 1S made by Sonneborn Co.and Ultima,Snow,Snow V and Regent made by Penreco Co.<br>We measured the melting point and viscosity of the white petrolatums.Perfecta had the highest melting point and Ulitima had the lowest.Snow had the highest viscosity and Perfecta the lowest.These results show that the characteristics of white petolatums vary among brands.Spectrophotometry was used to evaluate potential allergenicity.For extracts of Ultima,Regent and a cosmetic petrolatum,absorption was not observed in the 260 to 270 nm range suggesting that Ultima,Regent and the cosmetic petrolatum have a low content of polycyclic aromatic hydrocarbons which cause skin irritation.Upon investigating the brands of white petrolatum used in the base of commercial ointments,we found that the brand of petrolatum varied among the ointments.In order to ensure the proper use of ointments,suitable ointments should therefore be selected in consideration of patient needs.
著者
高橋 章
出版者
四国歯学会
雑誌
Journal of Oral Health and Biosciences (ISSN:21887888)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.57-61, 2018 (Released:2018-07-05)
参考文献数
9

Both periapical and panoramic radiographies are routinely used in the daily dental practice. They may accidentally reveal abnormal radiopacities. However, clinicians may overlook or misdiagnose these radiopacities more frequently than abnormal radiolucensies. In this paper, common radiopaque lesions including periapical focal radiopacities and tonsilloliths were introduced. These imaging characteristics and clue to differential diagnosis were also described.
著者
渡辺 慶一 高橋 文次郎 白戸 一士
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.835-840, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
19
被引用文献数
9 26

キウイフルーツ (A. deliciosa) の雄性品種‘マチュア’, 雌性品種‘アボット’, ‘ブルーノ’及びマタタビ(A. polygama), サルナシ(A. arguta) を用いて体細胞染色体, 減数分裂について観察調査を行った. キウイフルーツの3品種の体細胞染色体数は2n=174であり, マタタビの2種では2n=58, サルナシの4種では2n=58, 2n=116, 2n=ca. 174と算定された.これらの染色体数から, Actinidia においてはx=29が基本数であることが認められた.サルナシにおいては, 2仁を有する2n=58, 4仁を有する2n=116と仁数は不明確であったが2n=ca. 174の2x, 4x, 6xの倍数関係が示された. 本報のマタタビは2n=58の2倍性であったが, これまでに報告された2n=116の存在を考えると両者の間には, 2xと4xの同質倍数性関係があるのかもしれない. 本研究の2n=174のキウイフルーツの3品種‘マチュア’, ‘アボット’, 及び‘ブルーノ’は体細胞核に6仁または小胞子核で3仁を有し, いずれも基本数x=29の6倍性を示している.
著者
木田 秀幸 今野 武津子 高橋 美智子 近藤 敬三 飯田 健一 佐藤 繁樹 須賀 俊博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.312, 2008

〈緒言〉<I>Helicobacter.pylori</I>(<I>H.pylori</I>)は、グラム陰性の螺旋様桿菌で胃内に感染し胃炎、消化性潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫などの上部消化管疾患の病態に関与していることが明らかになっている。<I>H.pylori</I>の診断方法としては、血清及び尿中抗体測定(抗体)、便中抗原測定(HpSA)、尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ試験、病理組織学的検査、細菌培養などがある。唯一の直接的証明法である<I>H.pylori</I>の分離培養は、特異性に優れ菌株保存が可能なため抗菌薬の感受性検査や遺伝子学的解析を行うためには不可欠である。培養に用いる検体は胃粘膜生検が一般的であるが、我々は胃粘膜生検の他に胃液を検体とした<I>H.pylori</I>培養を1997年より行なっている。この10年間の培養経験と成績を報告する。<BR>〈対象と方法〉1997年3月から2008年3月までに腹痛を主訴に、当院小児科を受診し上部消化管内視鏡検査を施行した小児を対象とした。また、血清<I>H.pylori</I> IgG抗体(血清抗体)あるいは便中<I>H.pylori</I>抗原(HpSA)陽性患児とその家族も対象とした。<BR>患児95例は内視鏡検査と胃粘膜生検を施行し、その家族で<I>H.pylori</I>陽性の有症状者(既往も含む)にはインフォームドコンセント(I.C.)を得た後、82例に対し内視鏡下生検あるいは胃液を採取し培養を施行した。除菌後の検体を含む延べ培養総数は、289例(胃液培養111例、胃粘膜培養178例)であった。培地は<I>H.pylori</I>の選択分離培地である「ニッスイプレート・ヘリコバクター寒天培地」(日水製薬株式会社)を用い、微好気条件下で35℃(2005年10月までは37℃)ふらん器にて最大1週間の培養を行なった。結果の判定は、発育したコロニーのグラム染色を行い、グラム陰性螺旋菌であることを確認、ウレアーゼ試験、オキシダーゼ試験、カタラーゼ試験陽性となったものを<I>H.pylori</I>培養陽性とした。<BR>〈結果〉HpSA又は血清抗体陽性群78例の胃液培養では、68例が陽性で10例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は抗体陽性群118例の胃粘膜培養では、103例が陽性で15例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は血清抗体陰性群では胃液培養、胃粘膜培養共に全例が培養陰性であり特異度は100%であった。培養結果とHpSA及び血清抗体が不一致となった25例中9例に雑菌発育が認められ培養不可能であった。胃液と胃粘膜の雑菌発育に大きな有意差は認められなかった。1998年までは、HpSA又は血清抗体やウレアーゼ試験との不一致例が検体56例中18例(32%)、雑菌発育8例(14%)と培養成績に良好な結果が得られなかった。不一致18例中7例(39%)の原因は雑菌発育によるものであった。しかし、1999年以降の不一致は、検体233例中7例(3%)、雑菌発育2例(1%未満)と培養成績が明らかに向上した。<BR>〈結語〉我々は、胃液を検体とした<I>H.pylori</I>の培養を1997年から試行錯誤の中行なってきた。1998年以前の培養成績と他の検査方法との不一致や雑菌発育は、培地の使用方法や培養条件、検体処理方法等、様々な要因が示唆された。<BR>胃液検体は胃粘膜検体と比較しても十分な培養成績を得ることができた。また、胃液採取は、内視鏡を用いた胃粘膜採取と比較し患者への侵襲性が小さく、採取部位による影響も受けないことからも有用性が高いと考えられる。
著者
高橋 哲 西原 舞
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.16060, (Released:2017-11-10)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

It is widely accepted that sex offenders frequently deny their offense or minimize their responsibility, and there is controversy regarding how this should be approached in psychological interventions. However, few studies have examined the relationship between denial/minimization and recidivism, and the results are inconsistent across the limited body of research. The purpose of this research was to estimate the prevalence of denial/minimization in sex offenders and examine its relationship with recidivism. We examined 1,484 sex offenders who had been convicted from July 2008 to June 2009 in Japan. The prevalence of both denial and minimization was 16.3% overall. In addition, the relationship between denial/minimization and recidivism was investigated for 753 convicts whose sentences had been suspended. Controlling for possible confounding variables, including empirically known risk factors, logistic regression revealed that denial/minimization did not significantly increase the possibility of both any and sexual recidivism during the 5-year follow-up period. Implications for psychological intervention and future research are discussed.
著者
高橋 龍介 萩原 礼紀 龍嶋 裕二
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CdPF2035-CdPF2035, 2011

【目的】<BR> Femorotibial angle(以下FTA)210度の変形性膝関節症(以下KOA)患者に対して,当院整形外科にて人工膝関節置換術(以下TKA)を施行した.手術前後での歩行について動作分析装置を用いて,比較検討を行ったので報告する.<BR>【症例紹介】<BR> 83歳女性で,高血圧症以外に特記すべき既往歴,合併症はない.現病歴は,約20年前より右膝の内反変形を自覚するも近医にて保存的加療を継続していた.3年前より右膝関節の疼痛が増悪し,歩行困難を主訴にて当院整形外科に紹介され手術適応と判断された.術前は安静時,動作時にNRS(numerical rating scale)7~8の疼痛がみられた.FTAは右210度,左181度であり,横浜市大方式による変形性膝関節症分類(以下OAgrade)5であった.ROMは右膝関節屈曲115度,伸展-10度で,右下肢筋力はMMT3であった.コンポーネントは,Zimmer社LCCKを使用してcement固定で行った.手術後の理学療法は,日大メソッドにて実施した.<BR>【方法】<BR> 路上における10mの直線自由歩行を測定課題とした.測定前に複数回の試行を実施し動作に習熟させた.被験者の体表面上位置に赤外線反射標点を貼り付け空間座標データを計測した.直径25mmの反射標点を,剣状突起,右側の膝蓋骨上縁,脛骨粗面,下腿遠位中央部,両側の肩峰,上前腸骨棘,大転子,腓骨頭,外果,踵骨,第5中足骨頭の計18点に貼り付け,6回測定を行った.歩行が定常化する4歩行周期目以降の位置に,測定域として2m<SUP>3</SUP>の補正空間を設定し,空間内を移動する反射標点を測定した.測定課題を実施中の標点位置を三次元動作解析装置(ライブラリー社製GE-60)により撮影した.サンプリング周波数は120Hzとした.計測した1歩行周期を,画像データから各運動相に分類した.解析方法は,観測データをPCに取り込み,平均的な波形を抽出するために,最小二乗法により最適化を行い,位相を合わせ平均化した.計測した重複歩長,歩隔,歩行周期の各相における右股関節,膝関節の角度,右立脚期のFTAを3次元動画計測ソフト(ライブラリー社製 Move-tr/3D)を使用して求めた.測定された値は,5次スプライン補間により補正し,小数点2桁目を四捨五入し,術前と独歩可能となった術後12病日目を比較した.<BR>【説明と同意】<BR> 本研究の目的および方法について,十分に説明し書面にて同意を得た.なお本研究は,本学医学部の倫理委員会の承認を得て行った.<BR>【結果】<BR> 術前右重複歩長39.9±2.4cm,左重複歩長34.0±5.7cm,術後右重複歩長45.9±2.0cm,左重複歩長48.6±4.4cmと左右ともに延長された.術前歩隔は13.5±2.5cm,術後7.0±2.7cmと狭小化した.術前歩行周期の各相における右股関節屈曲角度heel strike(以下HS)14.3±6.7度,foot flat(以下FF)14.6±5.0度,mid-stance(以下MS)12.9±5.9度,heel off(以下HO)11.8±4.9度,toe off(以下TO)19.9±4.5度.右膝関節屈曲角度HS22.1±6.7度,FF30.3±5.0度,MS35.2±5.9度,HO33.1±4.9度,TO30.1±4.5度.術後歩行周期の各相における右股関節屈曲角度HS17.3±6.7度,FF13.3±5.0度,MS18.3±5.9度,HO25.4±4.9度,TO8.8±4.5度.右膝関節屈曲角度HS8.2±7.7度,FF22.8±5.7度,MS43.4±6.7度,HO10.2±4.8度,TO9.3±6.5度となった.右立脚期のFTAは術前で211.8±3.8度,術後で181.3±4.1度と改善した.<BR>【考察】<BR> 術前は,右立脚期に著明なlateral thrustが生じていた.これは,関節構成要素が破綻していることによって生じており,疼痛を回避するために主動作筋と拮抗筋の同時収縮による関節の剛性が高まった結果,膝関節運動も低下していた.12病日目に独歩可能となり,同日に測定した結果は上述のとおりで,右立脚期のFTA,重複歩長,歩隔が改善した.これはTKAにて結果に示す様なアライメントに矯正され,関節にかかる力学的不均衡の問題が解消し,さらに,理学療法の施行によって再獲得したアライメントに対する効率的な運動再学習が得られたことによると考えられた.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> OAgrade5でFTA210度と高度KOAであっても,適正な理学療法を実施することで,早期に歩行可能となった症例を提示した.
著者
高橋 勝
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.35, pp.32-52, 1977-05-20 (Released:2010-01-22)
参考文献数
56

In contemporary Germany a lively discussion is carried on about the scientific nature (Wissenschaftscharakter) of pedagogy. Against (1) the hermeneutic method (Hermeneutik) which was ruling hitherto in the educational world, since the 1950s, (2) the method of an empirical science (Erfahrungswissenschaft) influenced by English and American positivistic educational research and (3) the method of social criticism (Gesellschaftskritik) gained momentum.In this paper Wolfgang Brezinka's “educational science” (Erziehungswissenschaft) in which the viewpoint of (2) empirical science (more precisely of critical rationalism (Kritischer Rationalismus)) is adopted will be discussed ; the content of his critical observations on pedagogy in West Germany will be examined and their validity will be clarified. In particular, special attention will be given to the view of making an attempt to reinterpret the method of (1) hermeneutics and (3) social critism ss “ideology” emphasizing practice more than theory as not fulfilling the conditions of the construction of a “scientific theory”, and the attempt is made to clarify the relation between “educational theory” and “educational science” on the one hand the non-scientific level of ideology of “educational thought” and “Weltanschauung” on the other hand. Furthermone I shall try to discuss the function of “educational thought” guiding the educator and the role of “educational theory” which examines the correctness or falsehood of his statements and the validity of Brezinka's “metapedagogy” which poses the problem of making a distinction between the two different levels of these functions.
著者
登本 洋子 高橋 純
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.45026, (Released:2021-08-24)
参考文献数
18

学校も社会と同様にDXが求められている.2019年12月にGIGAスクール構想が示され,児童生徒一人に1台の情報端末が整備されようとしているが,これまでのICT機器に対する意識や経験の差などから,1人1台の情報端末が学習で活用されるものになるのか懸念がある.本研究ではICT環境の整備やICT活用に対する教員の期待や懸念を明らかにするために,児童生徒1人1台の情報端末の活用に対する初等中等教育の教員の意識を調査した.結果,1人1台の情報端末の活用は進んでおらず,情報端末は学びに役立つと期待がある一方,ICT環境の整備や児童生徒の心身の健康に対する不安も低くない.ICT機器を学習で活用し,児童生徒の生活を向上させるためには,まずはICT環境を整備し,ICT活用に対する理解を深め,児童生徒の心身への影響やトラブルに対する不安を解消していく必要がある.
著者
久保 俊一 新井 祐志 高橋 謙治
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

分子シャペロンであるheatshockprotein70(HSP70)は,低酸素環境に対するストレス応答機構として軟骨細胞に誘導され,基質代謝を亢進し,細胞を保護していた.われわれは,関節軟骨にHSP70を安全に,効率的に誘導する方法としてアミノ酸であるグルタミンを関節内注射し,すでに臨床応用されているマイクロ波で温熱刺激を加える方法を開発した.このHSP70誘導療法は,動物実験で変形性関節症の進行を抑制した.グルタミンと温熱療法を併用したHSP70誘導療法は変形性関節症の新規保存療法として臨床応用につながる可能性がある.
著者
進藤 浩子 深澤 光晴 飯嶋 哲也 高野 伸一 門倉 信 高橋 英 横田 雄大 廣瀬 純穂 佐藤 公 榎本 信幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.2389-2398, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
22

【目的】ベンゾジアゼピンを用いた従来のERCP鎮静ではしばしば脱抑制による体動を認める.安定した鎮静を得られる方法としてドロペリドール,フェンタニル,ケタミンを用いた静脈麻酔による鎮静法の安全性と有効性を評価した.【方法】対象はERCPの鎮静にミダゾラムとペンタゾシンを用いた従来法群42例とドロペリドール,フェンタニル,ケタミン(DFK法)群17例.評価項目は鎮静関連偶発症および鎮静効果とした.【結果】SpO2 90%未満を認めた症例は従来法で4例(10%),DFK法で1例(6%)と有意差は認めなかった.体動により処置継続に支障があった症例は従来法で8例(19%),DFK法で0例とDFK法で良好な鎮静効果を得られる傾向を認めた(p=0.09).鎮静困難ハイリスク症例である飲酒習慣を有する21例では,鎮静不良となる症例はDFK群で有意に少なかった(従来法 50% vs DFK法 0%,p=0.02).【結論】DFK法は従来法と比較して同等な安全性で施行可能であった.飲酒習慣を有する症例ではDKF法の方が有効な鎮静が得られた.
著者
高橋 孝治
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.189-196, 2015

日本における教育は文系と理系に区分されている。この区分に対して今まで多くの疑義が示されてきた。本稿は文系の代表的な分野である法学と理系の代表的な分野である数学が実はその本質は同じものなのではないかというアプローチから、文理区分に対して疑義を示すものである。本稿は、文系思考とは何か、理系思考とは何か、学説対立の有無、数学者と法律家は歴史的に一体性などを見る。その結果、法学も数学も共に人間の造ったものであり、共に論理であるがゆえ解釈の違いがあることを明らかにする。さらに、その問題解決法にも類似が見られ、歴史的にも法律家と数学者は同一人物であることが多く、両者には非常に密接な関係にあることも述べる。これらのことから法学と数学は一体的なものであり、単に「文系と理系であるために異なる学問である」とすることは、法学の発展、数学の発展の双方にとっても望ましいこととは言えないと述べる。
著者
高橋 佑磨
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.167-175, 2014-11-30 (Released:2017-05-20)
参考文献数
51
被引用文献数
2

種内の遺伝的多型は、種分化の初期過程の例、あるいは遺伝的多様性のもっとも単純な例であることから、古くから理論的にも実証的にも研究が盛んに行なわれてきた。結果として、遺伝的多型に関する研究は、種分化や多様性の維持機構というような進化学や生態学において中核をなす重要なプロセスの理解に大きく貢献している。しかしながら、遺伝的多型の維持機構は実証的には検証が充分であるとはいいがたい。その理由の一つには、生態学者の中で多型の維持機構について正しい共通見解がないことが挙げられる。もう一つの大きな理由は、これまでに示されてきた多型の維持機構に関する証拠は状況証拠に過ぎない点である。選択の存在やその機構との因果性を担保できない断片的な状況証拠では多型の維持機構を包括的に理解することにはならないのである。そこで本稿では、まず、遺伝的多型の維持機構に関してこれまでに提唱された主な説を概説するとともに、それらの関連を体系的に捉えるための"頻度依存性"という軸を紹介する。ついで、負の頻度依存選択を例に、これまでに行なわれた多型の維持機構に関する実証研究の問題点を明確にしていく。そのうえで、選択のプロセスの複数の段階で選択の証拠を得、それらの因果性をできるかぎり裏付けていくという研究アプローチの重要性を述べたい。個体相互作用の引き金となる行動的・生理的基盤からその生態的・進化的帰結を丁寧に結びつけるこのような多角的アプローチは生態学や進化学が扱うあらゆる現象に適用可能な手法であると思われる。
著者
高橋 理 大生 定義 徳田 安春 萱間 真美 福井 次矢
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.411-417, 2009 (Released:2010-09-01)
参考文献数
15

世界レベルで関心の高い医師のプロフェッショナリズムは,社会との関係性が十分考慮されることが重要であるといわれている.しかし,医療を受ける側・患者の視点から考える医師のプロフェッショナリズムの構成概念を実証的に検討した研究は少ない.1)東京と大阪の市民各6人を対象に約2時間グループインタビューを行った.2) インタビューの逐語録を質的・帰納的に分析し市民が認識する医師のプロフェッショナリズムを構成する要素を探索した.また,それらを欧米の医師憲章と比較した.3) 探索の結果,医師のプロフェッショナリズムと関連すると考えられる要素は,(1)患者への献身・奉仕 (2)公正性 (3)医師の社会的責任 (4)企業との適切な関係 (5)患者との適切な関係,の5つに分類された.4) 欧米の医師憲章とは重なる要素もあるが,抽出されなかった要素も認めた.患者との適切な関係では,医師への謝礼に関して患者間で相反する意見もみられた.5) 医師のプロフェッショナリズムについて社会から理解を得るためには,わが国の市民の認識を考慮した構成概念が必要であろう.
著者
森本 元 高橋 佑磨 鶴井 香織
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.39-46, 2015-03-30 (Released:2017-05-20)
参考文献数
44
被引用文献数
2

クラインは、生物の形質の進化や適応のメカニズムを検討可能な興味深い現象である。この現象には古くから多くの進化学者・生態学者が魅了され、さまざまな経験的一般則が発見されてきた。量的形質である体サイズや体重のクラインを扱ったベルクマンの法則は、その代表例である。ただし、これらの法則は、優れた視点を有すると同時に、その定義に曖昧な部分も多い。クラインとは空間的なパターンのことであるが、それを生み出すメカニズムは一つではない。それゆえ、観察された現象へ与えられる名称と、その現象を説明するメカニズムは、区別して扱われるべきである。しかしながら、現状ではこの点について混乱もある。ベルクマンの法則の適用範囲が拡大していく中で、アレンの法則や温度-サイズ則といった温度勾配を背景とした法則とベルクマンの法則との関連性および相違点を改めて確認し、整合性を与える必要も生じている。そのためには、量的形質のクラインが地理的な環境要因の勾配に応じた可塑的応答と、量的遺伝を基盤とした適応進化の地理的差異によって構成されることを再確認することが第一歩となる。本稿では、量的形質のクラインにおける基礎的な考えと量的形質のクラインに関する法則の問題点を整理することで、マクロな視点から生物の一般則を導く「クライン研究」がさらなる進展をするための基盤整備を目指す。
著者
大島 堅一 植田 和弘 稲田 義久 金森 絵里 竹濱 朝美 安田 陽 高村 ゆかり 上園 昌武 歌川 学 高橋 洋 木村 啓二 櫻井 啓一郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の地域分散型エネルギーシステムへの移行には次の方策が必要である。第1に経済性向上のための対策が必要である。分散型エネルギーの経済性を高めるには、技術革新と制度改革とを並行して進める必要がある。第2に、分散型エネルギー中心の電力システムに改革するには、変動電源の安定化やデマンド・レスポンスなどの対策を効果的に講じなければならない。第3に、政策転換の不確実性の克服である。この際、集中型エネルギーシステムと分散型エネルギーシステムとの間で政策的バランスを取る必要もある。第4に、公正かつ中立的な電力市場をつくる必要がある。
著者
三谷 章雄 大澤 数洋 森田 一三 林 潤一郎 伊藤 正満 匹田 雅久 佐藤 聡太 川瀬 仁史 高橋 伸行 武田 紘明 藤村 岳樹 福田 光男 稲垣 幸司 石原 裕一 黒須 康成 三輪 晃資 相野 誠 岩村 侑樹 鈴木 孝彦 外山 淳治 大野 友三 田島 伸也 別所 優 前田 初彦 野口 俊英
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.313-319, 2012-10-31

目的:欧米では,心臓血管疾患と歯周病には関連性がみられるというデータが得られているが,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関連についてはほとんど報告がない.そこで今回われわれは,東海地方での心臓血管疾患の罹患状況と歯周病の指数を比較することで,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関係を明らかにすることを目的とし,健診のデータを基にその関連性の検討を行った.対象と方法:2008年に豊橋ハートセンターのハートの日健診において,一般健診を受診した者でかつ歯科健診を受けた者549名についてのデータを分析対象とした.心臓血管疾患データとして,血圧,脈拍,動脈硬化・不整脈の有無,狭心症・心筋梗塞の既往の有無,手術歴を,歯周病データとして,現在歯数,Community Periodontal Index (CPI)を用いた.これらのデータを用いて,心臓血管疾患の有無と健診時点での歯周病の指数を比較し,統計分析を行った.結果:対象者の平均年齢は61.7±13.6歳であった.狭心症,心筋梗塞,手術(経皮的カテーテルインターベンション)のいずれかの既往のある者を冠動脈心疾患(coronary heart disease: CHD)群(82名:男性44名,女性38名)とし,それに該当しない者,すなわち非CHD群(467名:男性122名,女性345名)と比較検討したところ,女性ではCHD群の現在歯数が有意に少なかった.また男性では,糖尿病,BMI,中性脂肪,HDL,総コレステロールおよび年齢の因子を調整してもなお,CHD既往のあるオッズ比は,CPIコード最大値2以下の者に比べ,CPIコード最大値3以上の者が3.1倍(95%信頼区間1.2〜7.7)高かった.結論:CPIや現在歯数と,CHDの既往があることの関連性が認められ,日本人においても歯周病とCHDに相関がみられることが示唆された.
著者
清水 健太郎 小倉 裕司 高橋 弘毅 和佐 勝史 平野 賢一
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.95-102, 2020

<p>リフィーディング症候群は,飢餓状態にある低栄養患者が,栄養を急に摂取することで水,電解質分布の異常,心合併症を引き起こす病態であるが,低血糖との関連は明らかではない.BMIが14未満の低血糖を伴うリフィーディング症候群を発症した12例の本邦報告例を検討したところ,たこつぼ型心筋症や心停止を含む致死的な心合併症を10例に発症していた.機序は不明な点が多いが,低栄養状態でのエネルギー供給による過剰なインスリン分泌が低血糖を生じ,低血糖によるカテコラミンの過剰分泌がたこつぼ型心筋症をひきおこすことが推察された.また,心筋への不十分なエネルギー供給が心合併症の要因と考えられた.この病態は重症化する可能性があるため,極度の低栄養患者には心電図モニターや血糖値および電解質管理等の全身管理を要する.目標投与エネルギー量を適切に設定し,リフィーディング症候群およびそれに伴う合併症を予防しつつ厳密な栄養管理が必要である.</p>