著者
高橋 学 渡部 祐司 岡部 永年 野村 信福 堤 三佳
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

切離手術時間を短縮するための切離技術の一つとして,肝臓ガン局部凍結技術の開発を目的として,(1)将来肝臓の冷凍技術として提案している音波を用いた熱音響冷凍技術の開発,(2)冷却切離抵抗の研究および(3)肝臓冷凍針の開発と冷却特性の3つの実験が実施された.熱音響冷凍では汎用スピーカー(最大出力70W)を駆動源として使用した簡易型音響冷却装置を用いて冷却実験を実施した.内径26mm,長さ1500mm(約1/4波長)の真鍮円管を共振管とし,スタックには内径1mmの絶縁管を100本束ねたものを用い,作動流体に空気およびヘリウムガスを用いて常温常圧下で冷却実験を行った.その結果ヘリウムでは空気の場合の約3倍増の冷却効果が得られた.また,スタック表面積,内部圧力,および振動振幅は冷却効果に強い影響を与え,本実験で用いた簡易型装置でも,1mm^3程度の肝細胞であれば冷凍することが可能となる.冷却切離抵抗の実験では,ロボットによる肝臓の切離を行う際,正常な部位まで損傷させることは望ましくなく,正確な切離開始位置の決定が求められる.また,切離中に加わる抵抗が小さい程,滑らかな切離動作が実現でき,さらに刃物の損傷を防ぐことが可能である.視覚情報を用いた正確な切離開始位置の決定,及び,力覚情報により切離抵抗を低減するロボットシステムを提案する.視覚情報を用いた切離開始位置の決定手法では,肝臓の色の変化と温度の関係から,半冷凍部分(-1〜-3℃)の決定を行っている.また,力覚情報を用いた切離動作においては,インピーダンス制御を用いることで刃物の側面方向からの加重を低減し,目標とする切離抵抗による切離動作を実現している.肝臓の冷却特性および物性値を調べるため,豚の肝臓を用いた.血流を模擬して肝臓内に生理水を流し,その際の血管寸法の相違による熱伝導率の変化を実験データから逆解析することにより明らかにした.また,冷却温度,時間,冷却針からの位置をパラメータとした実験式を導出し,冷却予測が可能となった.
著者
高橋 智 中村 美樹
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.60-65, 2010-02

日本の学校に在籍する障害を有する外国人児童生徒本人とその保護者及び学級担任に調査を行い(東京都内の小・中学校の特別支援学級・通級指導学級及び特別支援学校高等部に在籍する外国人児童生徒本人4名,その保護者5名及び学級担任7名.調査期間:2006年11月〜2007年1月),障害を有する外国人児童生徒の困難・ニーズと彼らに対する支援の実態を明らかにした.とくに母親の抱える情報不足・地域参加の困難に起因する社会的孤独感が子どもに不安を伝え,学校との関わりに閉鎖的傾向をもたらすことが明らかとなった.本人・保護者が閉塞的な学校・地域との関係から脱却し,双方向的な関わりが可能となるような支援を構築していくことが急務である.また,本人は文化的背景の肯定的受容,アイデンティティの形成や帰属意識の希薄さ等の困難を有しており,さらに不安定な生活展望が長期的な支援を困難にしていた.このような困難・ニーズの実態を踏まえ,単純な受け入れ論ではなく,多文化社会が抱える複合的な諸課題に対処して具体的支援を構築していく必要がある.
著者
高橋 篤司
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

性能とともに信頼性を従来よりも格段に向上させた集積回路を設計,製造するための設計方法論を確立することを目的とし,回路の遅延分布をできる限り精度を保ちつつ,より高速に得るための遅延分布見積もり手法を開発するとともに,遅延エラー検出回復方式に基づき様々な回路の可変レイテンシ化した場合の性能および性能向上率などを評価することで,高性能高信頼性集積回路を効率良く実現するための指針を得た.
著者
高橋 由利子 市川 誠一 相原 雄幸 横田 俊平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.26-33, 1998
被引用文献数
6

そばアレルギーは蕁麻疹, 喘鳴, 呼吸困難などアナフィラキシー型の反応を呈する頻度が高く, 注意深い対応が必要である疾患であるが, その羅患率は明らかではない.今回横浜市の全小学校341校の養護教諭にアンケート調査を行い, 回答のあった166校, 92680名の児童について, 学童期のそばアレルギー羅患状況を検討した.同時に調査したアレルギー疾患の羅患率は, 気管支喘息5.6%, アトピー性皮膚炎4.2%, アレルギー性鼻炎3.1%, アレルギー性結膜炎1.6%, 食物アレルギー1.3%であった.これに対しそばアレルギー児童は男子140名, 女子54名, 計194名で, 羅患率は0.22%であった.症状は蕁麻疹が最も頻度が高く(37.3%), ついで皮膚〓痒感(33.3%), 喘鳴(26.5%)で, アナフィラキシーショックは4名(3.9%)が経験しており, 卵・牛乳アレルギーより高率であった.また, 学校給食で7名, 校外活動で1名の児童がそばアレルギー症状の出現を経験していた.養護教諭を中心とした小学校児童のアレルギー歴の把握が積極的に実施されている実態が明らかになり, これによりそばアレルギーは稀な疾患では無いことが明らかになった.学校生活においても十分な予防対策を講じる必要がある.
著者
西 哲生 緒方 将人 高橋 規一 NISHI Tetsuo 佐藤 秀則 實松 豊
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究課題では、解の個数に関する一つの結果を与えるとともに、トランジスタ回路を含むより一般の能動回路、すなわち、ニューラルネットワークやCNNのシステム方程式の安定性について検討し、特に安定性に関しては種々の安定条件を求めることが出来た。結果の概要は次の通りである。(以下で発表論文の番号は成果報告書の文献番号を示す)1.トランジスタ回路の解の個数に関しては、トランジスタの中の非線形抵抗特性である単調増加な指数関数及び線形項からなる2元(2変数)の非線形方程式に対して、解の上限がちょうど5個であることを証明している。この結果は、解の個数が高々2の次元数乗ではないかという予想が正しくないことを示したことになる。さらに一般の場合に関して、解の個数の上界を与えている(発表論文4,22)。2.トランジスタを含む能動RC回路に対して、浮遊素子により生じる分母多項式の高次項が負とならないための回路構造上の条件を与えた(発表論文1,12,21)。3.ニューラルネットワークのうち、1次元離散時間CNN(Cellular Neural Network)の安定性を定義し、このもとで、安定であるための必要十分条件を与えた(発表論文2,5,6,9,13,15,16,19)。4.微分方程式で与えられた2次元CNNが大域安定であるための必要十分条件を与えた(発表論文3,8,10,11,13,18,20,23)。
著者
前川 禎通 森 道康 家田 淳一 安立 裕人 高橋 三郎 大江 純一郎
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究は、磁化運動に伴う電圧生成の新原理「スピン起電力」に関する量子論的基礎を確立し、現象の解明と新機能を有する磁気デバイスの開発を目的とする。主な成果として、スピン起電力の数値計算アルゴリズム開発を行い、強磁性体中の局在磁化ダイナミクスとスピン起電力の関係を明らかにした。特に、磁気渦運動によるスピン起電力の解明、非一様磁性細線中の磁壁移動を用いた外部磁場印加不要なスピン起電力の解明、強磁性共鳴を用いたスピン起電力の連続発信、スピン起電力を用いた磁気ヘッドの発明などを行った。
著者
丸山 俊明 森谷 菜穂子 高橋 加津美
出版者
山形大学
雑誌
山形大学高等教育研究年報 : 山形大学高等教育研究企画センター紀要
巻号頁・発行日
vol.3, pp.20-33, 2009-03-31

はじめに 本学の附属博物館では,学芸員という国家資格を取得するための必修科目の一つである博物館実習を担当している。この実習は,博物館の教育運営に造詣が深い10人程の教員グループが講師を務めて,小白川3学部に共通する集中実施形式の授業として夏休みに開講している2単位の授業科目である。したがって,教育成果や学生からの授業評価は担当教員全員で共有すべきものであるが,小論では著者ら博物館事務執行部の視点で授業の概要をご説明し,実践事例の一つとして近況や課題をご報告する。ただし,すべての責は筆頭著者一人に限られ,他の授業担当教員や事務員の方にはまったく累を及ぼさないことをご承知置き願いたい。
著者
内田 九州男 竹川 郁雄 寺内 浩 山川 広司 加藤 好文 川岡 勉 加藤 国安 小嶋 博巳 河合 真澄 関 哲行 弘末 雅士 稲田 道彦 大稔 哲也 野崎 賢也 伊地知 紀子 松原 弘宣 西 耕生 田村 憲治 神楽岡 幼子 黒木 幹夫 菅谷 成子 若江 賢三 藤田 勝久 高橋 弘臣 吉田 正広 木下 卓 矢澤 知行 岡村 茂 石川 重雄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

シンポジウム・研究集会を3年開き31本の報告を実現、各発表は報告書に掲載した。巡礼の諸相の解明では、日本の四国遍路、熊野参詣、西国巡礼、海外では10巡礼地を調査し、キリスト教世界(古代東部地中海、中世ヨーロッパ、スペイン中近世、イギリス中世・現代)、古代ギリシア、アジア(中国中世、韓国現代、モンゴル中世、エジプト中世、ジャワ中世)の巡礼で実施。国際比較では、日本の巡礼とキリスト教巡礼での共通性は中近世では来世での霊的救済と現世利益の実現を願うことであることを示した。
著者
坪田 幸政 高橋 庸哉 森 厚
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

気象と大気環境の観測結果と天気予報を提供する大気環境情報システムを構築した.そして,科学リテラシーを育成するための学習モジュールを天気と大気環境をテーマとして開発した.学習モジュールは教員研修会参加者の意見なども考慮して改良された.最終年度には高校生向け講座を開いて,学習モジュールの最終評価を実施した.天気予報と風力発電,紫外線とオゾン層,地球温暖化に関する学習モジュールの評価が高かった.
著者
高橋 康夫
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

固相接合過程は接合圧力や接合温度だけでなく接合表面凹凸(表面あらさ)に大きく影響される。接合面同士を押しあてると、表面凹凸に起因して接合界面に空隙ができ、即座には完全な密着が出来ない。本研究では、この空隙が消失していく過程を数値計算により解析し、広範な条件に対して、予測できるアルゴリズムを試作している。すなわち、拡散によるボイド収縮過程のシミュレ-ションを行い、さらに、表面あらさのばらつきの接合過程への影響を考慮して、接合条件設定アルゴリズムを試作している。得られた主な成果及び概要を以下に示す。1)空隙収縮過程は、圧力・温度に影響される。その活性化エネルギ-はln(T/tv)-(1/T)プロットによって得ることができる。ここで、Tは絶対温度、tvはあるボイド収縮量Vsを達成させるに必要な時間である。2)拡散機構支配であると、時間tvに対する応力指数n(tvαP^n)は-1又は、-1〜-0.3となる。ここで、Pは接合圧力である。3)空隙収縮過程は、空隙の配列間隔に大きく影響される。4)細かい凹凸の表面を導入すると接合道程は促進される。5)表面凹凸のばらつきによる接合中のボイド間隔は、表面凹凸形状のかさね合せの手法によって正確に推定できる。6)推定した接合中のボイド間隔を考慮して、接合予測をすると、接合終了時をかなり正確に推定予測しうる。7)本研究で試作した接合条件設定ウルゴリズムは、接合条件を最適化させる上で、大きな力となることがわかった。8)実験によりこのアルゴリズムの適用範囲を確認している。
著者
大城 道則 金谷 一朗 橋本 英将 高橋 秀樹 設楽 博巳 青木 真兵
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ナイル河の西方地域における古代エジプト文化の影響を羊の頭部を持つアムン神信仰の伝播と受容から確認した。具体的な例としてはカルガ・オアシスのナドゥーラ神殿、ダクラ・オアシスのアイン・アムール神殿、シーワ・オアシスのアムン神殿、そして同地域に点在するその他の神殿群とサハラ砂漠地域の岩絵・線刻画が挙げられる。本研究は今後さらに西方へと調査範囲を拡大し、北アフリカ全域を視野に入れた古代エジプト文化研究の基盤となる。
著者
高橋 良博 森山 敏文
出版者
駒澤大学
雑誌
駒沢社会学研究 (ISSN:03899918)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.101-116, 1994-03

本研究は、前報『仏教におけるイメージの研究I』(駒沢大学社会学研究第25号1993.3.)にひき続き、「遍」と呼ばれる単色の円図形の観察課題のもたらす効果を検討した。ここでは、刺激図自体が持つ効果を分析するため、「図形から思い浮かぶことや連想されるものを、思い浮かぶ順に記述する」という課題で、被験者に5分間の反応を求めた。その結果、120名の被験者から652の反応を得ることができた。これらの連想されたイメージの内容を、ロールシャハ・テストのスコアリングに基づき整理したところ、全体の数の上ではObj系の反応が第1位を占め、第2位がPlanet(天体)系、第3位がFood系、第4位がAbst系の反応であった。また、本研究に参加した学生は、経済学部経済学科、経済学部商学科、仏教学部禅学科、仏教学部仏教学科の各専攻の学生が含まれていたが、上記の連想されたイメージの内容の割合や反応の質は、統計的検討は行われていないものの、被験者の専攻学部・学科等により若干の特色が観察された。これは、実験の行われた時間等の要因の影響を考慮しなければならないが、一方では被験者の関心・興味等を含む、環境への認知のありかたが、図形から連想されるイメージの内容にも反映しているものと考えられた。
著者
壹岐 伸彦 星野 仁 高橋 透
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は社会安全性確保を志向し, 土壌中交換態Cd, Pbなど重金属の簡易迅速定量法を開発することを目標とした.まずチアカリックス[4] アレーンを土壌検液作成時に用い, 溶出時間を6時間から10分に短縮し, 迅速化した.次いでチオセミカルバゾン配位子を本検液に添加し, 生成した錯体をHPLCに供することで, 土壌マトリクス成分の影響を受けない, ppbレベルの高感度検出を可能とする高性能化学計測法を開発することに成功した.
著者
園部 真美 恵美須 文枝 高橋 弘子 鈴木 享子 谷口 千絵 水野 千奈津 岡田 由香
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.233-240, 2008-03-25

本研究は,地域住民のボランティア活動に関する意識の実態を把握することを目的とし,大学主催のボランティア講演会参加者を中心とする計94名を対象として,質問紙調査を実施した。対象者の性別は女性が88.3%平均年齢は44.8歳であった。過去のボランティア活動経験者は40.9%,現在の活動者は16.7%,その内容は,過去現在ともに「障害児(者)」「子ども」の割合が多かった。ボランティア活動をしていない理由の「機会がない・きっかけがない」という者の中に,潜在的ボランティア活動希望者がいることが示唆された。ボランティア活動の魅力は,他者の利益のためと自分のためにする場合の二つがあることが明らかとなった。自分にできる子育てボランティアとして「赤ちゃんの面倒をみる」「上の子の遊び相手をする」が多かった。ボランティア希望者と利用者とをつなぐコーデュネーターの役割をとる人材育成や組織作りが今後の課題である。
著者
高橋 善男 川村 仁 林 進武
出版者
東北大学
雑誌
東北大学歯学雑誌 (ISSN:02873915)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.43-52, 1983-09-15

昭和51年から昭和56年までの6年間に, Obwegeser-Dal Pont法を適用した骨格型不正咬合者39症例を経験した。症例は男性16名, 女性23名で, やや女性が多かった。手術対象者は骨格型下顎前突症が大半をしめていた。手術時年齢は16歳から28歳までで, 男女とも20歳前後に集中していた。手術時間は120分から290分であり, 平均は209分であった。出血量は105mlから1,961mlまでであり, 平均は549mlであった。女性では比較的骨が柔らかく手術操作がやりやすい印象があり, 手術時間は短く, 出血量も少なかった。手術による下顎歯列弓の移動は, 対象症例が骨格型下顎前突症が主であったことから, 後方に移動するものが殆どであった。移動範囲は後方へ0mmから19mmであり, なかでも, 8mmから10mm程度後方移動するものが多かった。なお, 前方への移動も1例にみられ, それはPogonionを前方へ15mm移動した症例であった。その前方移動例を除いた術前のoverjetは-10.0mmから3.0mmに分布し, -5.0mm付近への集中がみられた。術後矯正終了時のoverjetは1.5mmから4.5mmの範囲にあり, 3.0mm前後に集中していた。術前のoverbiteは-6.0mmから9.0mmに分布し, 0から3.0mmのものが多かった。術後矯正終了時のoverbiteは0.5mmから4.0mmとなっていた。以上のごとく, 本手術法を適用した骨格型不正咬合者の術後矯正終了時のoverjet, overbiteは良好な状態を示していた。
著者
田村 淳二 高橋 理音
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、基本的に電力系統に接続しないスタンドアローン形のウィンドファームを想定し、風力発電出力を用いて電気分解装置により水素製造を行うシステムの設計を行った。具体的には、固定速風力発電機から成るシステム、交流励磁形誘導発電機から成るシステム、永久磁石形同期発電機からシステムを対象として、風力発電機、電解槽、蓄電装置の協調制御により水素を発生するシステムを構築し、それぞれの性能を検証した。
著者
中野 栄二 庄司 道彦 王 志東 高橋 隆行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.実験機の試作操縦型連続移動歩容の検証のために,18自由度をもつ脚車輪ロボットの実験機を製作した.2.オペレータによる操縦に的確に反応する脚相管理歩容の実現オペレータの指示する速度が限度を超えたときに,脚の復帰動作が間に合わずに推進動作が停止する問題が明らかになり,この点の解決に特に重点を置き,集中的に研究を行った.その結果,これまで提案してきた脚相管理歩容ときわめて親和性の高い,かつ効果的な方法の開発に成功した.この方法の主要な部分は以下の通りである.(1)ベースとなる脚相管理歩容とは,脚が可動限界に到達して推進動作が継続不可能になる時刻を予測し,それに基づいて脚の復帰動作開始タイミングを決定する手法である.この手法は,脚の機械的な可動限界到達までの時間と,可動限界からの復帰に要する時間を比較し,継続的な推進動作を実現するものである.(2)しかしながらオペレータの指示速度が過大で,脚の動作タイミングの制御のみでは推進動作の継続性が維持できない場合,速度指令を強制的に小さくすることにより,機体が実現可能な範囲内で最大の速度が出せるようにする.この二つの手法を併用することにより,制御対象である脚車輪型ロボットを不整地上で継続的に動作させることに成功し,また速度指令が一定の場合については,脚の復帰動作を最小限に抑えた効率的な推進動作が実現できることを確認した.3.安定性を考慮に入れた脚相管理歩容の拡張上述の脚相管理歩容を,任意に設定した転倒安定余裕を確保しつつ継続的推進動作が可能なように拡張した.