著者
家村 浩和 小川 一志 五十嵐 晃 高橋 良和 松久 貴 佐藤 忠信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、隣接する橋桁構造系や隣接建物系を取り上げ、それらの連結装置による連結により、同時振動制御を行うことを目的として、理論的実験的側面から種々の検討を行った。得られた主な結果は、次のとおりである。1) 大地震に対する制震システムにおいては、入力レベルに関わらず装置の性能制約範囲を超えない制御を実現する必要がある。特にアクティブマスダンパー装置における補助質量の変位制約問題を解決するために提案されている非線型可変ゲイン制御の実用性を検証するため、AMD装置を実物大構造フレームに実装した実験を行った。可変ゲイン制御アルゴリズムにより十分な制震効果を確保しつつ、装置の能力を有効に用いた制御が実現されることを示した。2) 阪神高速3号神戸線の震災復旧において、上部をラーメン構造とし橋脚の下端部に免震支承を設置するタイプの道路橋が建設されている。このタイプの免震橋では地震時において、免震支承には水平変形だけでなく、従来考慮されていなかった曲げ(回転変形)や軸力の変動が生じる。そのためそれらの効果の影響を実験的に評価する必要がある。そこで本研究では、多軸載荷が可能となる実験システムを用いて免震支承(LRB)の載荷実験を行い、水平変形・回転変形・変動軸力同時載荷条件下での復元力特性を検討した。その結果、変動軸力の効果は、回転変形の効果に比べ復元力特性への影響が大きいこと等を示した。3) 隣接する橋桁構造系や隣接建物系を制震する手法として、両者をジョイントダンパーで連結し、一体的に制御する方法が提案されている。本研究では5層と3層の隣接構造物の応答低減効果を得る手法として、LQ理論及びH^∞理論により制御器を設計し、シミュレーションを行った。特に制御における時間遅れの問題を取り上げ、数値モデルに対する検討を行った。その結果、H^∞制御においてはLQ制御に比べてはるかにロバスト安定性が得られ、ジョイントダンパーへの適用において優れていることが示された。
著者
小川 千里 高橋 潔
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,プロスポーツ選手の現役引退に伴っておこるキャリア上の諸問題を,経営学的視点から明らかにし,第二の職業人生に対する望ましい支援の方法について検討することを目的に行われた。プロスポーツ選手のキャリア・トランジションに関して,(元)Jリーガーと既存の支援システムを対象とした定性的調査を実施した。その結果,スポーツ選手の引退とその後のキャリアへの移行の実態を詳らかにした。そして「現役時代」の行動や考え方の傾向と周囲の人の属人的な要素が,引退に関する「内的キャリア」や支援に影響を与えること,選手個人が引退に伴う心理的激動を受容するために望ましい支援の特徴と組織の在り方を見出した。
著者
高橋 輝 Takahashi Teru
出版者
沖縄県図書館協会
雑誌
沖縄県図書館協会誌 (ISSN:1342050X)
巻号頁・発行日
no.11, pp.33-39, 2007-12

ベッテルハイム自筆史料の意義、修復内容をレビューし、社会貢献の考え方について検討した。The meaning and the restoration process of Manuscripts of Bettelheim were reviewed. The view of contribution to society was examined.
著者
高橋 京子 川瀬 雅也 東 由子 廣川 和花 宮久保 圭祐 江口 太郎 原田 和生 村田 路人
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

博物学的生薬資料並びに医療文化財に基づくプロファイル情報は、実地臨床使用の根拠を有し、伝統医療の国際化に伴う材料天然物の有効性・安全性・均一性を担保できる標準化インデックスであることを示唆した。江戸・享保期の薬種国産化政策の実践例として育種・栽培されてきた大和芍薬を対象に、網羅的元素分析(メタロミクス解析)とγ線を利用したメスバウワー効果測定法を構築し、原料生薬の品質が漢方薬(当帰芍薬散)の臨床効果に反映することを明らかにした。
著者
兵藤 友博 梶 雅範 岡本 正志 中村 邦光 松原 洋子 永田 英治 東 徹 杉山 滋郎 高橋 哲郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は基本的に、2003年度から始まる、高等学校の理科教育への科学史の本格的導入にあたって、これまでの科学史の成果をどのようにしたら生かせるかにあるが、その研究成果報告書の概要は以下の通りである。第一に、科学史研究関連の文献・資料の調査・調達をおこなうと共に、科学史教育の意味について論じた先行研究の分析を行ない、それらの中から高等学校の理科教育に適用しうるタイトルをピックアップし整理した。第二に、高等学校の理科教育における科学史の導入、その教材化の望ましいあり方について検討すると共に、個別教材の位置づけを検討し、それらの構成のあり方、理科教育における科学史教育の目標などについて検討した、より具体的にいえば、科学的発見の歴史的道筋、科学的認識の継承・発展のあり方・科学法則・概念の形成の実際、科学実験・観測手段のあり様とその時代的制約、あるいは理論的考察や実験、観察に見られる手法、またそれらの理科学習への導入のあり方について、個別的かつ包括的な検討をおこなった。また、個別科学史教材に関わって、科学の方法の果たした役割、科学思想との関連などについて検討した。第三に、その上で、新科目「理科基礎」を含む高等学校の理科教育を射程に入れた科学史の教材化の開発研究をおこなった。具体的には、物理学史系、化学史系、生物学史系、天文学史。地学史系の個別科学史分野別にトピック項目を設定し、ケース・スタディ的にその具体化をおこなった。本研究プロジェクトが掲げた当初の目標を達成した。これらの成果について、最終的に冊子として印刷し、広くその成果を普及することにしている。
著者
永山 國昭 森 泰生 岡村 康司 宇理須 恒雄 青野 重利 高橋 卓也 渡辺 芳人
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設)
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2001

[複素顕微鏡]炭素膜を用いる位相板には物質透過に伴う電子線損失がある。この問題を解決し像の感度を上げるため無損失位相板の開発を試みた。Aharnov-Bohm効果を用いると、ベクトルポテンシャルが電子線の位相を変えるため電子線損失がない。ループ型微小磁石と棒型微小磁石の2つの位相板につきテストし、棒磁石型の場合無損失位相板が成功した。[チャネル蛋白質]形質膜における、一酸化窒素(NO)センサーカチオンチャネルとして働くTRPC5による、NO感知の分子機構を明らかにした。TRPC5のチャネル腔を形成するpore領域近傍のシステイン残基を、NOはニトロシル化し、その結果生じるコンフォメーション変化により、空間的に近接する内部ゲートが開くことが示された。[電位センサー蛋白質]イノシトールリン脂質のうちPIP2によって活性が変化することが知られているKチャネルを電位センサー分子(VSP)とともにアフリカツメガエル卵母細胞へ強制発現させ計測し、酵素活性が膜電位依存的に制御されることを見出した。更に電位センサードメインをもちボア領域を欠く別の膜タンパクがチャネル活性をもつことを示した。ヒト電位依存性NaチャネルNav1.6分子の機能の多様性を明らかにするためアンキリンGとNav1.6を共発現させ不活性化に及ぼす影響を検討した。[蛋白質機能素子作製]シリコン基板に微細貫通孔を形成する技術を開発し、ここに脂質二重膜/イオンチャンネル(グラミシジン)を再構成して単一イオンチャンネル電流を計測することに成功した。微細孔構造を工夫することで、シリコン基板として世界最小の雑音電流(貫通孔径50μmで〜1pA rms、テフロン基板と同程度)を得ることが出来た。
著者
高橋 ユリア
出版者
大妻女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

目的 摂食障害者の毛髪中含有微量元素の変動、特異的な食概念・食行動、健常者の食概念との比較、家族環境との関係、食によるストレス情報伝達方法などについて今までに研究してきた。今回は摂食障害者の「調理」という観点から「食」と「ストレス」のかかわり方を分析する事を目的とした(日本家政学会第55回大会発表.2003.5.24.お茶の水女子大学)。方法 摂食障害者60名に食概念とストレスについて、調理を中心にアンケートおよび聞き取り調査を行った。また、調理が好きであると回答した摂食障害者のなかから、調査協力を得られた20組の母親および家族に、摂食障害者から受ける調理・食・ストレスとの関係についてのアンケートおよび聞き取り調査を行った。さらに、過食症女子短大生の手記95件(1992年7月〜11月)、拒食症の娘を子供に持つ母親の手記15件(1995年〜1999年)から、調理・食・ストレスに関係する表記を抽出し分析を行った。この両者についても聞き取り調査を行った。結果 摂食障害者60名中46名が調理をすると答えた。この46名中32名が調理をすることが好きであると答えた。好きな理由として、食べる事はしないが味見による満足感、家族への強制摂食要求、自分の調理したものを相手が食べる事の支配感、調理は誰にも邪魔されない時間・空間、自分の思い通りにできるなどであった。しかし、作った料理を強制的に大量に摂食させられる母親、家族にとっては食べる事もストレスであり、また食べない事も摂食障害者のストレスの原因となり、この事が自分達のストレスへとつながっていた。摂食障害者は調理条件へのこだわりも強く、自分自身のストレスにもなっていた。
著者
高橋 富士雄
出版者
岩手県立大学
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.13-23, 2007-03
被引用文献数
1

骨粗鬆症の予防を目的に、特にその予防に関わりの深い食事に注目し、成長期の子供とその母親を対象に身体状況あるいは食物摂取状況等について調査した。今回は岩手県内の県南部地域のG-中学校、県央部地域のI-、J-およびK-中学校、県北部地域のN-中学校の5ヵ所の中学校の2年生とその母親を対象に実施した。得られた主な結果は次の通りである。1)全ての中学校の男子および女子生徒の骨密度は何れも良好な状況であった。また、母親ではG-中学校男女の母親、I-中学校男子の母親およびJ-中学校女子の母親の骨密度が同年齢の基準値に比べ上回った。2)調査した中学校の朝食の欠食率は2.0〜5.7%であった。同時に実施した睡眠時間等の調査から、朝の欠食や食欲がない理由として、睡眠時間が必ずしも直接的に関連するとは言えず、その他の生活面での要因が関わるものと推察される。3)「好きな料理は何か」を調べたところ、生徒は肉料理を好む割合が突出し、続いて麺類、一方、母親では野菜料理の割合が顕著に高く、続いては肉料理と魚料理である。「よく食べる菓子類」について調べたところ、生徒がよく食べる菓子類としてはポテトチップス類等のスナック菓子類、チョコレート類の割合が顕著に高く、母親ではセンベイ類、スナック菓子類、パン類、チョコレート類がよく食べられている。これらの結果より生徒と母親間では料理あるいは菓子類の嗜好に明らかな違いが確認された。4)栄養素等摂取状況の調査から、生徒とその母親、すなわち親子間においては主要栄養素(炭水化物、たんぱく質および脂質)の摂取傾向が類似するということが認められた。5)食品群別摂取状況の調査から、多くの食品群で、中学校男子とその母親問および中学校女子とその母親間の摂取充足率が類似の傾向を示していることが認められ、その他にも幾つかの興味ある結果が得られた。
著者
川村 静児 中村 卓史 安東 正樹 坪野 公夫 沼田 健司 瀕戸 直樹 高橋 龍一 長野 重夫 石川 毅彦 植田 憲一 武者 満 細川 瑞彦 佐藤 孝 佐藤 修一 苔山 圭以子 我妻 一博 青柳 巧介 阿久津 智忠 浅田 秀樹 麻生 洋一 新井 宏二 新谷 昌人 井岡 邦仁 池上 健 石徹白 晃治 市耒 淨興 伊藤 洋介 井上 開輝 戎崎 俊一 江里口 良治 大石 奈緒子 大河 正志 大橋 正健 大原 謙一 奥冨 聡 鎌ヶ迫 将悟 河島 信樹 神田 展行 雁津 克彦 木内 建太 桐原 裕之 工藤 秀明 國森 裕生 黒田 和明 郡和 範 古在 由秀 小嶌 康史 小林 史歩 西條 統之 阪上 雅昭 阪田 紫帆里 佐合 紀親 佐々木 節 柴田 大 真貝 寿明 杉山 直 宗宮 健太郎 祖谷 元 高野 忠 高橋 忠幸 高橋 弘毅 高橋 竜太郎 田越 秀行 田代 寛之 田中 貴浩 谷口 敬介 樽家 篤史 千葉 剛 辻川 信二 常定 芳基 徳成 正雄 内藤 勲夫 中尾 憲一 中川 憲保 中野 寛之 中村 康二 西澤 篤志 丹羽 佳人 野沢 超越 橋本 樹明 端山 和大 原田 知広 疋田 渉 姫本 宣朗 平林 久 平松 尚志 福崎 美津広 藤本 眞克 二間瀬 敏史 前田 恵一 松原 英雄 水澤 広美 蓑 泰志 宮川 治 三代木 伸二 向山 信治 森澤 理之 森脇 成典 柳 哲文 山崎 利孝 山元 一広 横山 順一 吉田 至順 吉野 泰造
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 (ISSN:13428349)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, 2006-03-04
著者
片山 喜章 高橋 直久 和田 幸一 高橋 直久 和田 幸一
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

無線通信装置を有する大量のセンサー端末が互いに通信しあうネットワークがセンサーネットワークであり,これは一般の無線通信端末による"アドホックネットワーク"(無線通信ネットワーク)として捉えることが可能である.本研究では,アドホックネットワーク上で効率のよい通信を実現するための論理的構造の構築方法と経路制御手法,および端末が自律的に移動する場合にそのシステムがどのように制御可能かを明らかにした.これらの成果を,7編の論文,8件の国際会議,および学術誌解説記事と招待講演各1件で発表した
著者
黒川 洸 尾島 俊雄 高橋 信之 増田 幸宏 小澤 一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

首都直下地震対策が緊急の課題である現在、世界に多大な影響力を持つ東京の企業の業務中枢機能を維持することが重要である。ミュンヘン再保険会社が発表した都市のリスク指数では、東京の危険度は710と他の都市の高くても100前後という値に比べて非常に高く、国際的に東京の危険性が危惧され、今後東京での国際的企業の経済活動が阻害される恐れがある。現在国際的に行政のみならず民間企業も地震リスクに対策を行うことが必要とされている。特に中央防災会議首都直下地震専門対策委員会においても、企業が災害時に重要業務を継続するためのBCP(事業継続計画)の策定を行うことが必要と報告されている。しかし日本の企業の地震リスク対策は不十分であり、ここ30年以内に起こる可能性の高い首都直下地震による多大な被害も懸念される。そこで企業が具体的にこれらの地震リスクを低減し事業継続を行なうための防災投資の提案を行う必要がある。都市の防災基盤整備としての安全街区構築のためのスキーム検討として、新たな保険制度の提案を目指して下記項目について検討を進めた。BCPのISO化や、企業統治の一環として企業の一層の危機管理が求められる中で、都市のライフラインや建築の設備系統を強固に整備して、特別に信頼性を高めた地域を、日本独自の「安全街区」として提案する。こうした「安全街区」が実現した場合の、安全街区内の高い仕様の建物について、地震利益保険や再保険市場での査定、あるいは不動産投資市場における評価への影響について調査を行った。また海外への研究発表に重点をおいて研究活動を進めた。また、環境と防災両面に資する「都市環境インフラ」の構築に向けての包括的な概念検討を継続して進めており、関連の実測調査や現地調査、文献調査を組み合わせ、今後の研究展開に資する基盤的な要素について幅広く検討を行い成果を得た。研究は、1.人工系都市基盤・都市インフラに関連する研究、2.都市内自然資本に関連する研究、3.各都市の基礎調査、4.安全・安心確保のための関連事例等の基礎調査に分類される。関連する社会的な要求を背景に、意義ある研究を行うことができた。研究助成に御礼申し上げる次第である。
著者
高橋 伸夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

この研究計画では、協調的な経営行動に対してさまざまな角度から分析を試みた。経営理論や経営の実践の現場で見られる現象をAxelrod流の協調行動の進化の観点から描いてみたのである。そのために、まずはAxelrodの進化理論のエッセンスを抽出して未来傾斜原理として定式化して使い易くする必要がある。単純化して言えば、現在の損得勘定や過去への復讐にこだわることなく、より良き未来をこそ選ぶべきだというのが未来傾斜原理である。このことによって、経営理論や経営の実践における協調行動の出現を説明することが容易になる。未来係数が高い場合には、未来への期待に寄り掛かる形で、苦しいても現在をなんとか凌いでいく行動につながるが、このことは日本企業でも、利益を分配したり使ってしまったりせずに、こつこつと内部留保して、将来の拡大投資のためにとっておこうとする強い成長志向として観察できる。さらに、このことを応用して、組織均衡を説明するための有望な二つの指標、見通し指数、未来傾斜指数を開発した。これらの二つの指数はAxelrodの未来係数の代替的指標として作られており、見通し指数は、その人の会社における将来への重みづけを表し、未来傾斜指数は将来に対する心理的な未来係数を表している。そして、この二つの指数が高い値をとるとき、職務満足を感じ、参加の意思決定が行われるという仮説の検証が行われた。見通し指数については、日本の大企業21社の2600人以上のホワイトカラーのデータによって支持され、見通し指数と職務満足比率との間には決定係数0.9989、参加比率との間には決定係数0.9980の非常に強い線形の関係があった。未来傾斜指数については、日本の大企業67社の約23万3千人のデータによって支持され、未来傾斜指数と職務満足比率との間には決定係数0.9970、参加比率との間には決定係数0.9678の強い線形の関係がやはりあった。
著者
高橋 邦夫
出版者
社団法人溶接学会
雑誌
溶接学会誌 (ISSN:00214787)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, 1998-07-05
著者
堤 裕昭 木村 千寿子 永田 紗矢香 佃 政則 山口 一岩 高橋 徹 木村 成延 立花 正生 小松 利光 門谷 茂
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.165-189, 2006-03-05
被引用文献数
6

有明海では,近年,秋季から初冬に大規模な赤潮が発生し,ノリ養殖漁業に大被害をおよぼしている。水産庁九州漁業調整事務所がまとめた過去の赤潮記録を用いた解析によって,冷却期(10月〜12月)に有明海で発生した赤潮は,1998年以降規模が急に大型化したことが判明した。しかし,赤潮の大規模化を招くような陸域からの栄養塩流入量の増加は,有明海奥部に注ぐ一級河川からの栄養塩負荷量や有明海沿岸での公共用水域水質測定の過去のデータには見られない。本研究では,2002年4月〜2003年4月に,有明海で全域にわたる精密な隔月水質調査を行なった。奥部では7月および10月〜12月において,流入した河川水が表層の塩分を低下させて成層化し,その表層で栄養塩濃度が急上昇して,大規模な赤潮が発生していた。2002年4月〜5月の諫早湾潮受け堤防の開門操作期間には,島原半島側に顕著な湾口流出流が観測された。本研究の調査結果は,1997年の潮受け堤防締めきりが有明海奥部の河口循環流を変化させ,塩分の低下した表層水を湾外へ流出し難くして,1998年以降,毎年冷却期に奥部で大規模な赤潮を起こしてきたことを示している。
著者
高橋 秀依 南目 利江
出版者
帝京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では、新規な糖の連結法の開発を行い、それによって新たな機能を有する糖関連生物活性物質を創出することを目的としている。まず、血糖効果作用を有するエーテル結合糖であるcoyolosaの構造を基本とし、その類縁体合成を行った。coyolosaはメキシコのヤシの木の根から得られた天然物で、ピラノースが6位同士でエーテル結合した極めて珍しい構造を有している。このようなエーテル結合糖の安定供給をめざし、還元的エーテル化を用いて化学合成を行った。また、生物活性の検討によってエーテル結合糖に血糖効果作用があることを確認した。続いて糖のその他の部位(2〜4位)にエーテル結合を形成すべく、オキシランの開環反応を利用したエーテル結合形成を試みている。オキシランの開環にあたっては位置選択性が重要であるが、糖の環状に形成されたオキシランの場合は糖の水酸基の立体化学及び反応条件(塩基性もしくは酸性)が影響し、適切な基質及び反応条件を用いることで所望する位置選択性がもたらされることを明らかにした。また、この研究の過程で新しいグリコシド結合形成反応を見出し、エーテル結合とグリコシド結合を併せ持つハイブリッド型の糖の連結を行った。さらに、ピラノースの1位にメチル基を導入した1C-メチル糖のグリコシル化及びカルバメートによる糖の連結を行い、様々な連結様式による糖鎖構造の創出を行った。これらの検討によって得られた糖類の生物活性を他機関において検討していただいている。
著者
高橋 庸哉 新保 元康 土田 幹憲 佐藤 裕三 小笠原 啓之 割石 隆浩 神林 裕子 佐野 浩志 坂田 一則 細川 健裕 土門 啓二 松田 聡 本間 寛太 伊藤 健太郎 杉原 正樹 中島 繁登 吉野 貴宏
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

開発してきた雪に関するWebコンテンツの授業での普及を図るために、コンテンツの拡充と共に児童向けワークシート及び教員向け学習プラン集、教員研修プログラムの開発を行った。ワークシートを授業で利用した教員は5段階で平均4.8と高く評価した。教員研修プログラム後に参加小学校教員の45%はこのコンテンツを利用しており、プログラムが有効に機能した。また、コンテンツが授業に役立ったかについて5段階で4.5と答えており、Webコンテンツの内容妥当性も示された。
著者
高橋 誠一 野間 晴雄 橋本 征治 平岡 昭利 西岡 尚也 筒井 由起乃 貝柄 徹 木庭 元晴
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、南海地域における歴史地理的実体を多角的に解明することを主目的としたものであった。従来の地理学分野からの琉球研究は、都市、集落、民俗、交易活動などを個別的に扱い、かつ沖縄や奄美の一地方を対象としたものが多かった。しかしこれらの個別事例の蓄積のみでは、東シナ海や南シナ海全域にわたる琉球の実体の把握が困難であったことは言うまでもない。そこで本研究においては、中国沿海州・台湾・ベトナム・フィリピン、沖縄・奄美における現地調査を実施し、都市・集落景観、伝統的地理学観の影響と変容、伝統的農作物栽培の伝播過程、物流と交易活動、食文化の比較、過去と現在の当該地域における地理学教育に見られる地域差などに関して、立体的な分析を行った。以上の研究によって、琉球が果たしてきた重層的な歴史的役割の実態を、かなりの程度まで明らかにできたと考える。これらの成果の一部は各研究者による個別論文のほかに、2007年に沖縄県立公文書館において開催した国際研究集会報告書などにおいても公刊済みである。また全体的な成果の一部を報告書としても提示した。しかし、本研究によって解明できた点は、当初の目的からすれば、やはりまだその一部を果たしたに過ぎないと言わざるを得ない。すなわち南海地域における歴史地理的諸事象の伝播過程やその変容については、かなり解明したとはいうものの、本研究の成果は単方向的な文化事象の伝播や影響の摘出に終始したとの反省がある。文化の交流や伝播は、長い歴史的過程の中では、多方向的に複雑に錯綜することによって新しい様相を生み出すということができる。それらを明らかにすることによって、本究で対象とした地域に関する理解を深化することを今後の課題としたい。