著者
高田 博行
出版者
Japanische Gesellschaft für Germanistik
雑誌
ドイツ文學 (ISSN:03872831)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.12-24, 1994-03-01 (Released:2008-03-28)
参考文献数
49

Über die geschichtliche Entwicklung der Wortstellung mehrgliedriger Prädikate im Nebensatz, wie z.B. daß er sehr gut hat singen können oder daß dies jetzt gefunden werden muß, hat J. E. Härd eine wichtige Arbeit vorgelegt: "Studien zur Struktur mehrgliedriger deutscher Nebensatzprädikate. Diachronie und Synchronie. Göteborg 1981. "Aus seinen Untersuchungsergebnissen glaubt Härd, für das 17. Jh. die folgende Entwicklungslinie rekonstruieren zu können: Das System der vorangestellten Finita bei mehrgliedrigen Nebensatzprädikaten, das sich im Verlauf des 16. Jhs. gebildet hat, fixiere sich im 17. Jh. So werde der Prozeß der vollständigen Durchführung der Rahmenkonstruktion in der Schriftsprache dieses Jhs. offenbar verzögert und sogar zum Teil rückgängig gemacht. Um die Mitte des 17. Jhs. dringe aber die Nachstellung des Finitums beim Verbalkomplex vom Typ 3 (Partizip II+werden/haben/sein+Modalverb) merklich vor; hier werde dann in der ersten Hälfte des 18. Jhs. die Nachstellung zum ersten Mal überwiegender.Zur Nachprüfung und Ergänzung dieser These haben wir für die Zeit 1600-1700 aus Texten 37 verschiedener Autoren rund 3200 Belege gesammelt und sie analysiert. Die Vorkommenshäufigkeit der Stellungsvarianten des Finitums bei den jeweiligen Strukturtypen 1 bis 7 läßt sich in Prozenten folgendermaßen darstellen:(N: Nach-, V: Voran-, Z: Zwischenstellung, W: Weglassung)Unsere Ergebnisse sprechen entschieden gegen die These von Härd. Zum einen können wir keinen Rückgang der Nachstellung am Anfang des Jhs. ermitteln, ausgenommen den Typus 1 (Partizip II+worden+sein), wo die Weglassung auf Kosten der Nachstellung markant zugenommen hat. Zum andern können wir auch im Verlauf des Jhs. (den Typ 1 ausgenommen) gar nicht von einem Rückgang der Nachstellung sprechen; statt dessen nimmt die Häufigkeit der Nachstellung bei den Typen 3 und 6b (Inf+Inf [≠Modalverb]+Modalverb) in der Mitte des Jhs. zu, his sie schließlich Ende diesel Jhs. beim Typ 3 die Voranstellung übertrifft und bei den Typen 5b und 6b über 40 Prozent Häufigkeit zeigt.Wir sind dann auch den Unterschieden in der Vorkommenshäufigkeit der Stellungsvarianten des Finitums in den jeweiligen sprachlichen Regionen nachgegangen, um noch Präziseres zur Entwicklungslinie der Rahmenbildung im Nebensatz feststellen zu können. Nach unseren Ergebnissen herrscht in den Jahren 1600-60 die Tendenz, daß die Belege für nachgestelltes Finitum im oberdeutschen Sprachraum viel häufiger zu finden sind. In den Jahren 1660-80 scheint aber dann die Nachstellung in den mittelund niederdeutschen Raum so tief eingedrungen zu sein, daß die Texte mit hoher Häufigkeit von Nachstellung Ende des Jhs. nicht mehr ausschließlich aus dem Oberdeutschen, sondern auch aus dem Mittel- und Niederdeutschen stammen. Nun kann man nicht mehr von einem dialektalen, sondern nur von einem idiolektalen Unterschied sprechen.Gerade in der Zeit der im gesamten deutschen Sprachraum vordringenden Nachstellung erfuhr die Originalausgabe von Grimmelshausens "Simplicissimus“ (1668/69) im revidierten Konkurrenzdruck von 1669 Änderungen der Finitumstellung der mehrgliedrigen Nebensatzprädikate. Die individuelle Eigenschaft von Grimmelshausen, d.h. sein allzu fortschrittlicher, allzu häufiger Gebrauch der Nachstellung einerseits und sein konservativer bzw. dialektaler Gebrauch der Zwischenstellung andererseits waren nämlich sicher dem Korrektor besonders aufgefallen. Aus den Änderungen können wir das reflektierte Sprachnormbewußtsein dieses Korrektors ersehen. Die Tatsache,
著者
清野 公宏 鈴木 郁斗 野川 雅道 五十嵐 朗 内藤 尚 小川 充洋 山越 憲一 高田 重男 田中 志信
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55Annual, no.5PM-Abstract, pp.460, 2017 (Released:2017-09-13)

これまで我々は腎・尿路系疾患発見に重要な指標である尿成分を全自動で計測可能なトイレ内蔵型尿成分計測システムの開発を最終目的として,近赤外光を用いた尿糖計測法について基礎的検討を続けてきた.具体的には糖尿病の早期発見に有用なグルコースをメインターゲットとし,蛋白摂取量の指標である尿素,塩分摂取量の指標である塩化ナトリウム,尿中成分の排出量測定に有用なクレアチニンの4成分について,糖尿病が疑われる成人男性等から採取した尿(高尿糖随時尿)などを対象に各4成分の濃度推定を行ってきた.その結果計測波長範囲(750-2500nm)の中から各成分の感度波長を4種類選定し重回帰モデルを構築することで,実用に供し得る精度で濃度予測が可能であることを確認した.今回は実用化に向けて,多波長LEDを光源とした場合の測定精度を次のような方法で検証した.すなわちFT-IRで得た透過光強度スペクトルに対して,中心波長の重みを1,半値幅を200nmとしたガウス関数を乗じることで,LEDのブロード状の発光特性を模擬し,上述の重回帰分析を行った. その結果,グルコース,クレアチニンについてはγ=0.7前後で濃度予測精度の更なる向上を要するものの,尿素,塩化ナトリウムについてはγ>0.8以上となり,多波長LEDを光源として用いることの妥当性が確認できた.
著者
米山 恭平 榊原 僚子 浅香 貴広 高田 治実 菅沼 一男
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.193, 2017 (Released:2019-04-03)

【はじめに】前院にて右下腿切断し筋力や立位能力を考慮し装飾用義足を作成された症例に対し,義足調整を行い歩行可能となった症例について報告する.【対象】対象は慢性腎不全と診断され血液透析を行っている80 歳代男性であった.2016 年8 月に糖尿病性の閉塞性動脈硬化症により右下腿切断術をし,装飾用義足を作成した後に理学療法を目的に同年10 月に当院に入院となった.入院時の身体機能は下肢MMT3~4 レベルであり移動は車椅子自立であった.本人の希望で義足を装着し平行棒内で歩行練習を実施した.しかし,装飾用義足であるため荷重部と免荷部が不明瞭であったため断端と義足の不適合により,脛骨末端前面と底面に荷重時痛を認め,義足側での片脚立位が不可能で歩行不能であった.新たな義足作成には、経済的問題があり装飾用義足での歩行練習の実施を余儀なくされていた.被験者には研究の主旨と目的を説明し同意を得た上で実施した.【方法】歩行練習は週3 回非透析日に実施した.断端と義足の不適合を調整するためにソケット内部にゴム板を貼り調整をした.脛骨末端前面と底面の荷重時痛の原因は,ソケット後壁の高さが低かった事とソケット前面支持力不足であった.そこで脛骨前面に貼物調整をし,脛骨末端前面と底面の除圧をし,ソケット後面に貼物調整を行う事で膝蓋腱への体重支持を行った.その後アライメント調整を行った.【結果】断端状態に合わせ,貼物とアライメント調整により即時的に疼痛が消失し平行棒内を近位監視で10 往復可能となった.2 回目の治療では平行棒外歩行が自立し,現在は100 m以上の自立歩行が可能となった.【考察】本症例は前院で歩行不能と判断されたが,身体機能が残存していたため本院ではソケット適合とアライメント調整により即時的に義足歩行が可能となった.理学療法士が義足製作,適合判定の知識を十分に習得し対応することで,患者の歩行能力の向上が期待できると考えた.
著者
黒木 直美 宮下 奈々 日野 義之 茅嶋 康太郎 藤野 善久 高田 幹夫 永田 智久 山瀧 一 櫻木 園子 菅 裕彦 森田 哲也 伊藤 昭好 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.49-59, 2009 (Released:2009-10-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

小規模事業場において良好実践を行っている事業者の産業保健ニーズに関する質的調査:黒木直美ほか.産業医科大学医学部公衆衛生学―本研究では,小規模事業場における事業者の産業保健ニーズあるいは良好実践の動機を把握することを目的とした.これまでの調査では小規模事業場における産業保健活動の遅れが報告されている.これらの知見は主に質問紙調査から得られたものである.しかし,小規模事業場には事業者の意識が直接反映されるという特徴があり,積極的に産業保健活動に取り組んでいる事業場も存在している.このような小規模事業場の良好実践例において,事業者のニーズを分析した研究はこれまでにない.産業保健に対する事業者の動機を明らかにすることは小規模事業場間に良好実践を水平展開する一助となると考えられる.そこで,我々は産業保健活動の良好実践が行われている小規模事業場10社の事業者と半構造化面接を行い,その逐語録をKJ法を用いた質的手法で分析した.その結果,事業者はもっぱら「よい会社」,「よい経営」を強く意識していることが明らかになった.「よい経営」のための要素には「人材確保」,「取引先の信用」,「社会的信用」,「社長自身の健康」という4つがあった.事業者はこれらの要素を達成するため職場の安全,従業員の健康に関する活動は当たり前であると考えていた.さらに,具体的な活動には「コストの問題」,「担当者の問題」,「時間がない」,「外部資源」という既知の制約があった.調査結果から,経営と安全衛生活動を関連づけることが小規模事業場における安全衛生活動の向上に寄与すると考えられた. (産衛誌2009; 51: 49-59)
著者
河田 正仁 岡田 敏男 清水 雅俊 高田 幸浩 下川 泰史 五十嵐 宣明 岡嶋 克則 宮武 博明 水谷 哲郎 中村 哲也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.337-343, 1999-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

くも膜下出血や手術後などのストレス状態におかれると急性心筋梗塞類似の病態となり,冠動脈に器質的狭窄がなくても広範な左室壁運動障害を引き起こすことが知られている.症例は81歳の女性で,当初は右下肺野の陰影で入院した.次第に陰影が広がり,呼吸困難を呈した.第10病日に突然呼吸困難が増悪し,心電図上胸部誘導で高度のST上昇をきたし,ショック状態となった.挿管の上,緊急冠動脈造影を施行した.冠動脈の器質的狭窄はなかったが,左室造影上前壁,心尖部,下壁にわたり広範な無収縮を認め,心基部のみ正常収縮をしていた.患者はその2日後に肺炎陰影が両肺に広がり呼吸不全で死亡したが,血清の最大CKは296U/lであった.病理解剖における心筋組織には壊死,炎症細胞浸潤などを認めなかった.本症例は重症肺炎を契機にstunned myocardiumが疑われる病態が引き起こされ,原因として冠攣縮やカテコールアミン心筋障害などが推定された.まれではあるが,ストレスを伴った低酸素血症がstunned myocardium様の心機能低下の誘因となった重要な病態であると考えられ報告する.
著者
高田 一宏
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.73-90, 1994-10-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
18
被引用文献数
4
著者
高田 昌樹
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.145-146, 2023-05-31 (Released:2023-06-06)
著者
今関 雄人 高田 眞吾 土居 範久
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.2328-2337, 2008-07-15

ラウンドトリップエンジニアリングは,モデリング段階とコーディング段階を往復しながらソフトウェア開発を行う手法である.ラウンドトリップエンジニアリングを支援するために,クラス図の変更をソースコードに自動的に反映させ,またソースコードの変更をクラス図に自動的に反映させるツールがある.しかし,従来のツールでは,クラス図などの静的側面のモデルを扱うのみで,動的側面のモデル,すなわちシーケンス図やステートチャートとソースコード間のラウンドトリップエンジニアリングを扱うことはできない.そこで,本研究では動的モデルとソースコード間のラウンドトリップエンジニアリングを支援するツールを提案する.本ツールはMVCパターンに基づいたアプリケーションを対象とし,シーケンス図,ステートチャートとソースコード間のラウンドトリップエンジニアリングを支援する.本ツールを使用することにより,動的モデルとソースコード間の効率的なラウンドトリップエンジニアリングが可能となる.
著者
高田 十志和 大塚 英幸
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.194-207, 2006-03-01 (Released:2010-10-20)
参考文献数
61
被引用文献数
11 10

Dynamic covalent chemistry relates to the utilization of chemical equilibrium systems, i.e., reversible cleavage-rebondage of covalent bond, which is effectively applicable to the molecular architectures in supramolecular chemistry and polymer chemistry. This review deals mainly with molecular integration and molecular conversion of supramolecules and polymers in order to prove significance and utility of the dynamic covalent bond by introducing the representative research studies. Equilibria of imine bond, carbon-carbon double bond, disulfide bond, trityl carbon-sulfur bond, ester bond, alkoxyamine bond, and so on are typical dynamic covalent bonds, and several important examples for the constructions of interlocked molecules and polymers are described. In the utilization of the dynamic covalent bond in polymer, utility of a few reversibly cleavable covalent bonds included in polymer main chains is also discussed for the formation and transformation of polymers and cyclic polymers.
著者
高田 琢弘
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.82-84, 2023-08-29 (Released:2023-08-29)
参考文献数
9

This study investigated the relationship between gambling addiction and the Dark Triad among Japanese adult gamblers. The study participants were 360 Japanese adult gamblers. They were asked to complete an online questionnaire measuring their Dark Triad traits and the level or degree of their gambling addiction.The results showed that Machiavellianism and narcissism were correlated with gambling addiction among men, whereas psychopathy was correlated with gambling addiction among both men and women. These results are partially consistent with those of previous studies conducted with Western samples.
著者
高田 哲雄 広内 哲夫 平野 雅道 羽倉 弘之 海津 ゆりえ 若林 一平
出版者
文教大学
雑誌
湘南フォーラム:文教大学湘南総合研究所紀要 = Shonan Forum : Journal of the Shonan Research Institute Bunkyo University (ISSN:18834752)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.117-137, 2008-03-01

Cultural tourism has become an important phase of the new age tourism. Attractively archiving cultural resources provide cultural tourists with an intellectual and practical guide especially to a performing aspect of the urban and rural culture. This study focuses on the 3D imaging of performing rituals, festivals and lodging accommodations.“Shonan” is mainly the coastal region facing Sagami Bay extending from Kamakura and Enoshima, through Chigasaki and Hiratsuka, to Oiso and Ninomiya. This region has a fine view of Mount Fuji and “Shonan” beach. The Kamakura Shogunate have left a wide variety of historical and cultural heritage in “Shonan” area.Minamoto No Yoshitsune (shortly "Yoshitsune") is the younger brother of Minamoto No Yoritomo who is the founder of the Kamakura Shogunate. But Yoshitsune is a famous tragic general of Japanese samurai. He was named as an “enemy of the Emperor” by the shogunate, and finally betrayed by his patronage and forced to commit suicide “harakiri.”He is enshrined in Shirahata Shrine in Fujisawa.Our research team successfully achieved a challenging 3D image recording of Shirahata Shrine “Kagura.” The chief priests of shrines related to and emerging from the Shinto religious or historical legend perform “Kagura.”Another challenge is VRML technology. We have reconstructed Maita “Honjin” official accommodations for “Daimyo” warriors using VRML stereoscopic technology. Maita “Honjin is official accommodations managed by Maita family in Fujisawa “juku”lodging spot.
著者
郭 雅〓 高田 光雄 清水 貴史
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.74, no.640, pp.1297-1305, 2009-06-30 (Released:2010-01-18)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

Surveying the remaining Japanese-style houses in Showa-Cho in Taiwan, this study conducted the measurement survey on the houses, and authors interviewed the Japanese who had lived there. The findings of this study indicated: 1.Showa-Cho was developed with the housing society, which was established by the Japanese academics who wanted their own houses in Taiwan. 2.The results of this research suggests that there were no significant differences on the housing plan and the living conditions between the house in Showa-Cho and ones in the mainland of Japan around the same time. However, the housing plan in Showa-Cho considerably reflected the residents' desires and the characteristics of their own culture of life. 3.The residents wanted to be the permanents in Taiwan, so that these houses were particularly high-quality and adapt to the subtropical climate condition in Taiwan.
著者
高田 祐輔 中谷 知生 山本 征孝 堤 万佐子 田口 潤智 笹岡 保典 藤本 康浩 佐川 明 天竺 俊太
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bb0768, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 近年、治療用装具として長下肢装具を積極的に活用することの有用性が認識されつつある。脳卒中片麻痺患者の歩行練習に際し、長下肢装具を使用する利点の一つとして、ターミナルスタンス(以下Tst)における股関節伸展・足関節背屈運動が保障されると考えられており、先行研究においても短下肢装具装着下に比べ足関節背屈運動の可動域が拡大することが明らかとなっている。しかし長下肢装具を装着することによる、股関節伸展運動への影響についてまとまった報告はこれまでなされていない。そこで今回、長下肢装具を装着することが麻痺側立脚期の股関節伸展角度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、短下肢装具装着下との比較検討を行ったのでここに報告する。【方法】 対象は当院入院中の脳卒中片麻痺患者6名(左片麻痺3名・右片麻痺3名、男性3名、女性3名、平均年齢69±10歳)とした。発症日からの平均経過日数は155±39日で、下肢Bruunstrom Recovery Stageは3が4名、4が2名であった。すべての対象者が当院にて長下肢装具作成後カットダウンを行っており、計測時点では短下肢装具を用いた歩行トレーニングを行っていた。作成した下肢装具はいずれも足継手に底屈制動・背屈フリーの機能を有する川村義肢社製Gait Solutionを使用していた。計測は長下肢装具、短下肢装具それぞれ前後3mの予備路を設けた10mを自由速度で歩行する様子を、矢状面から三脚台に固定したデジタルカメラにて撮影した。すべての対象者は杖を使用し、計測時は転倒防止のため理学療法士が見守った。デジタルカメラは床面から1.2mの高さの位置に歩行の進行方向と垂直になるように、歩行路から4m離れた位置に設置した。股関節角度は倉林らの報告を参照に股関節点(上前腸骨棘点と大転子最外側突出点を結ぶ線上で大転子最外側突出点から1/3の位置)をとり、上前腸骨棘、膝関節外側裂隙を結んだ線のなす角とした。対象者には上記3点にマーカーを貼り付け、静止立位時の角度を基準にそこからの増減角度を計測した。計測は2回実施し、画像解析ソフト(NIH ImageJ)を利用し得られた3歩行周期分の平均角度を、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い統計学的処理を行った。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は所属施設長の承認を得て、対象者に口頭にて説明し同意を得た【結果】 Tstでの股関節伸展角度は、長下肢装具装着下では5.8±2.3°であり、短下肢装具装着下では-0.9±2.1°であった。すべての対象者が長下肢装具装着下ではTstにて股関節伸展位を保持でき、短下肢装具装着下と比べ股関節伸展角度が有意に増大していた。短下肢装具装着下ではTstで股関節伸展位を保持できた者は3名(1±0.4°)であり、屈曲位となった者が3名(-2.7±0.9°)であった。【考察】 脳卒中片麻痺患者の歩行の特徴の一つとして、Tstにおける股関節伸展運動の不足が挙げられる。吉尾らは、股関節伸展運動の不足により股関節屈筋群が十分に伸張されず、遊脚初期に必要な筋力の発揮が困難となると述べている。当院において長下肢装具を積極的に使用する目的の一つは、不足する股関節伸展運動を補い、力学的に有利なアライメント下で歩行練習が行えるという点にある。しかし、実際に短下肢装具装着下と比較しTstでの股関節伸展角度が増大しているのかについては目測の域で終わってしまうことが多かった。今回の調査から、すべての対象者において長下肢装具装着下のTstの股関節伸展角度は有意に拡大し、長下肢装具の有する役割が明らかとなった。一方、短下肢装具装着下ではTstにて股関節伸展位を保持することが可能な者と不可能な者の2群に分けられた。一般的に長下肢装具におけるカットダウンの基準は、立位での麻痺側下肢の支持性、歩行時の下肢アライメントなどが挙げられている。今回、股関節屈曲位となった3名について運動学的見地からはカットダウンの時期でなかった可能性があるが、病棟での生活動作においても使用することを目的に短下肢装具へと変更していた。理学療法場面においては、より有利なアライメント下での歩行練習としては長下肢装具が適していると考えられるが、カットダウンについては症例の個別性も配慮する必要性があると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究は長下肢装具を装着することで、短下肢装具と比較しTstでの股関節伸展角度が有意に増大することを示したものである。このことにより、脳卒中片麻痺患者の歩行練習において長下肢装具を使用することの利点がより明確にされたものと考える。
著者
田中 周平 垣田 正樹 雪岡 聖 鈴木 裕識 藤井 滋穂 高田 秀重
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.III_35-III_40, 2019 (Released:2020-03-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

本研究では,下水処理場の処理工程におけるマイクロプラスチック(以下,MPs)の挙動と琵琶湖への負荷量を把握することを主目的として,2017年11月~2018年2月に4か所の流域下水処理場(分流式)の流入水,放流水,処理工程別において100μm以上のMPsを,流入水と放流水ではさらに10~100μmのMPsの分析を行った.その結果,下水,処理水,汚泥,スカムなどから合計30種類のMPsが検出され,流入水中のMPs濃度は158~5,000個/m3であった.放流水中のMPs濃度は0.3~2.2個/m3であり,放流先の琵琶湖水中のMPs濃度と同等であった.一方,10~100μmのMPsの除去率は76.3%であった.100μm未満のMPsの除去は急速砂ろ過を行っても不十分であると示唆された.4つの下水処理場からの合計負荷量は501,630個/日と推計され,晴天時の琵琶湖流入河川からの総負荷量とほぼ同じであることが示された.
著者
横山 詔一 相澤 正夫 久野 雅樹 高田 智和 前田 忠彦
出版者
基礎教育保障学会
雑誌
基礎教育保障学研究 (ISSN:24333921)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.11-28, 2022 (Released:2022-09-15)

The first scientific literacy survey in Japan was conducted in 1948. It was the first time that a full-scale nationwide survey based on random sampling techniques was carried out in Japan, and data were collected from 16,820 men and women between the ages of 15 and 64 (by the traditional Japanese system). One of the most well-known aspects of this global landmark survey is the figures on illiteracy rates and their interpretation. The report of the survey, "The reading and writing ability of the Japanese" (1951), concluded that the illiteracy rate of the Japanese was"extremely low" at 1.7% or 2.1%. This view has been cited repeatedly in Japan and abroad and is now treated as a definite fact. However, a reexamination of the content and format of the test questions on the 1948 survey revealed that there was insufficient control of the difficulty level and that the test contained a large number of multiple-choice questions, making it problematic to simply classify those who scored zero on the test as illiterate. Therefore, we concluded that we should avoid uncritically quoting the description of illiteracy rates in this report.