著者
瀧井 一博 大久保 健晴 勝部 眞人 植村 和秀 永井 史男 谷川 穣 前田 勉 國分 典子 五百籏頭 薫 小川原 正道 松田 宏一郎 島田 幸典 佐野 真由子 塩出 浩之 福岡 万里子 中村 尚史 牛村 圭 今野 元 山田 央子 清水 唯一朗 岩谷 十郎 奈良岡 聰智 Breen John
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

明治維新から150年が経過した。日本は今、明治日本という西洋近代に対する稀有なキャッチアップを遂げた自らの歴史的経験を振り返り、その経験を学術的に分析して、その功罪を人類の歴史的遺産として今後似たような歩みをするかもしれない世界中の他の国々や地域に対して提供する使命を有しているといえる。本研究課題においては、明治日本の世界史的意義を学際的かつ内在的に把握するための研究ネットワークを構築することが掲げられた。そのために、海外の研究者とも積極的に連携して、明治史のグローバルな関心と日本の学界を接合することを促進した。
著者
篠田 浩一 井上 中順 岩野 公司 宇都 有昭
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

音声に関する音声認識、音声合成、話者認識などの様々なタスクを担当するエージェントが互いに競争・協調・調整しながら個々のタスクを学習する、マルチエージェントによる深層学習基盤を構築する。個々のタスクに関わる音声因子の間の含有・排他・共有などの関係を用いて音声データを因子分解することにより、個々のタスクの性能を高める。マルチタスク学習に比べ、少量・非均一のデータでより高い性能を得ることを目標とする。
著者
島村 忠勝 胡 志青 大久保 幸枝 趙 維華 柳川 容子 山口 晃史
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

カテキンの抗微生物活性のメカニズムおよびカテキンの抗微生物薬との併用効果について研究を行った。1.エピガロカテキンガレート(EGCg)は細菌細胞膜や細胞壁傷害作用および細胞壁合成阻害作用を有し、β-ラクタム剤と併用すると、MRSAに対するβ-ラクタム剤の抗菌活性を復活させ、強い相乗効果が発現した。タンパク合成阻害剤、核酸合成阻害剤との併用では相乗効果は見られず、ペプチド系抗生物質では拮抗作用が見られた。この拮抗作用はEGCgとペプチドの結合によると考えられた。また、EGCgはβ-ラクタマーゼ活性を直接阻害することができ、β-ラクタマーゼ産生黄色ブドウ球菌およびMRSAに対して、EGCgとβ-ラクタム剤の併用は相乗効果を発揮した。β-ラクタマーゼが分泌されないグラム陰性桿菌に対して、効果は弱かった。2.ヘリコバクター・ピロリに対しては、EGCg単独で殺菌作用を示した。クラリスロマイシン高度耐性株に対してEGCgとクラリスロマイシンまたはプロトンポンプ阻害剤を併用すると相加効果が見られた。3.細胞内寄生菌サルモネラに関しては、EGCgはサルモネラ食食マウスマクロファージの細胞内殺菌能を亢進した。EGCg投与マウスのマクロファージはサルモネラ貧食能と細胞内殺菌能がともに増強した。4.HIVに関しては、HIVの細胞への吸着後から宿主細胞遺伝子への挿入までの過程においてEGCgの阻害作用が見られ、逆転写酵素やプロテアーゼの阻害が示唆された。また、EGCgは持続感染細胞からのHIV粒子の産生を抑制した。この抑制効果はリボソームに包埋したEGCgやLPSを併用すると増強した。しかし、このEGCgの効果は単球細胞系で特異的におこり、リンパ球では見られなかった。また、EGCgとAZTを併用すると弱いながら相乗効果が見られた。
著者
宮崎 康典 穂坂 綱一 足立 純一 下條 竜夫 星野 正光 村松 悟
出版者
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

原子力機構では、地層処分する放射性廃棄物の発熱及び有害度の支配因子であるマイナーアクチノイドを分離回収するHONTA抽出剤を開発し、フローシート構築に向けた性能評価試験を行っている。一方で、耐放射線性が課題となっており、安全面の観点から、放射線分解機構の解明が不可欠となっている。本研究では、放射線分解の初期反応で生成するラジカルカチオンから分解物に至るまでの中間反応に注目し、放射光と難揮発性試料測定用光電子―光イオンコインシデンスを組み合わせた実験的な反応経路と、量子化学計算で予想される反応経路との比較評価を行い、抽出剤の放射線分解機構を明らかにする。
著者
小林 亮 中垣 俊之 三浦 岳
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

真正粘菌が鉄道網のような輸送ネットワークと等価なネットワークを形成する能力があることを実験的に示し、その数理モデルを構築することによって、ネットワークの新しい設計手法を提案した。また、卵割初期における空間的配位の決定や、肺や血管網の分岐構造の形成において、情報がどのような機序で働いているかを記述するモデルを提案した。これらの研究を通して、生物の構造形成と情報を結ぶしくみを記述する数理的手法を開発した。
著者
安井 眞奈美 中本 剛二 遠藤 誠之 倉田 誠 松岡 悦子 澤野 美智子 伏見 裕子 木村 正
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の概要は、現代の妊娠・出産・産後を危機的状況にあると捉え、医療、女性の身体、子供の命といったさまざまな切り口から、妊娠・出産・産後の現状を総合的に解明することである。現状を変えていくための処方箋を提示する、緊急を要した実践・応用人類学の研究と位置づけられる。現代の妊娠・出産・産後の現状をインタビューも含めた文化人類学の参与観察によって解明し、エスノグラフィーを作成する点に特徴がある。
著者
澤 斉
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

我々ヒトを含む左右相称動物は、左右で鏡像対称なボディプランを持っているが、鏡像対称な形態形成機構はほとんどわかっていない。線虫において、生殖巣は前後に鏡像対称であり、DTC細胞の鏡像対称な移動によって形成されるが、その制御機構は不明であった。DTCは、前駆細胞(Z1/Z4)の非対称分裂によって作られる。我々は、Z1/Z4の極性が、三種類のWntと、Wnt否依存的に働く受容体との冗長的機構により制御されていることを発見した。また、DTCの移動方向は、前駆細胞の極性方向によって決められることを明らかにした。
著者
福嶋 慶繁 津邑 公暁 杉本 憲治郎
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

計算機環境が複雑化している中,高度に最適化された機械語を得るためには,分野ごとに特化した専用プログラミング言語が必要不可欠である.しかし,最新の画像処理専用プログラミング言語でも,局所的な最適化しかできず,アルゴリズム全体の最適化は未だできない.本研究では,画像処理をデザインパターンとしてまとめ,多くのパターン集として体系化することともに,それをプログラミング言語として試作する.主に,画像処理は,FIRやIIRといった畳み込み,拡大縮小,点の処理の連続として表現され,これを効率的につなぐことで高速化可能であることを示した.さらにそれらを検証するために様々なアプリケーションで検証した.
著者
庵 功雄 イ ヨンスク 松下 達彦 豊田 哲也 宮部 真由美 早川 杏子 田中 牧郎 ビアルケ 千咲 志賀 玲子 志村 ゆかり
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

令和元年度は、日本の公立中学校でのフィールドワークを通した教材開発の成果として、外国につながる生徒のための日本語総合教科書(初級版、初中級版)を刊行し、その概要と具体的なアプローチについて、口頭発表を行った。JSL児童生徒のための漢字シラバス開発に資するべく、中学校教科書コーパスから漢字の音訓使用率を算出し、文理教科書における漢字情報の使用傾向の対照分析を行い、論文による成果報告を行った。また、非漢字圏のJSL児童生徒あるいは成人日本語学習者の効果的な漢字字形学習方法を探るために、彼/彼女らの漢字字形認知の様相を明らかにする目的で、漢字の構造と構成要素を軸に初見漢字の再認実験と漢字要素分解調査を行い、口頭発表によって報告を行った。ろう児に対する日本語教育の実践を続ける一方、日本語と日本手話の対照研究を続け、口頭発表で報告した。日本語学習教材の自動生成方法について検討し、言語処理分野の機械学習モデル「Word2Vec」を用いた類義語を用いて、日本語能力テストの多肢選択問題を構築する手法を検討する一方、学術共通語彙知識の発達やその読解力との関係についての横断的調査を行った。さらに、学習者の語彙力測定のためにWebブラウザから語彙情報を収集するフレームワークを提案し、学習者が登録した語彙から関連語彙を「Word2Vec」を用いて推定し、日本語学習教材の自動構築に役立てる仕組みを検討した。「やさしい日本語」の理念の拡張について考究するとともに、講演、新聞や雑誌への寄稿などを通して、「やさしい日本語」の理念の地域社会への普及に努めた。
著者
宮本 直和 福 典之
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、人間生体組織の硬さを直接的かつ非侵襲的に測定できる超音波剪断波エラストグラフィを用いることによって、以下のことを明らかにした。1) 関節可動域と筋肉の硬さ(伸びにくさ)には関連があるが、その関係は決して強くなく、関節可動域による評価では筋肉の硬さ(伸びにくさ)を適切に評価できない。2) 男性の筋肉は女性の筋肉よりも硬い。3) ストレッチによって対象とする全ての筋肉が軟らかくなるわけではない。4) 筋肉の硬さは遺伝要因の影響を受ける。
著者
山田 祐彰 瀧谷 イザベルクリスチーナ 堤 剛太
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ブラジル北部で一世紀にわたり開拓に従事する日本人移民とその子孫は、ジュートとコショウの導入でアマゾンに初めて農業を確立した後、経営多角化を目指して1970年代から遷移型アグロフォレストリーを発展させた。周囲のブラジル人小農に模倣され普及していったが、熱帯雨林地域の環境に適合した持続的農法として国際的な評価を得ている。アマゾンの日系農場と、日系アグロフォレストリーを受け入れたブラジル人小農集落を調査し、この持続型農業体系の普及プロセスを明らかにした。
著者
水谷 康弘 高谷 裕浩
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

半導体検査工程においてサブナノオーダの欠陥を光学的に検出する手法が求められている.一般的に,光学的な応答強度と対象物の大きさは相関があるため,欠陥が小さくなるほど強度が弱くなり検出が困難になる.そこで,本研究では,光学的に非常に弱い応答をする欠陥からの散乱光をイメージングするために,光相関イメージングを適用することを試みた.ここでは,フォトンカウンティングと組み合わせることで数フォトンレベルでのイメージングを可能した方法と,ディープラーニングと組み合わせることにより検出速度を高速化させた手法とを提案し実証した.
著者
水原 啓暁 佐藤 直行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本提案では,ヒトとヒトのコミュニケーションは、コミュニケーションを行う二者の脳の神経活動の振動(神経リズム)がシンクロすることによって実現される,という仮説を検証する.この目的のために,コミュニケーション課題を遂行中の被験者からの脳波計測を実施するとともに,神経リズムのシンクロを非侵襲的に操作することで,コミュニケーションの量的および質的変化が起こるかを調べる.本研究提案の成果は,円滑なコミュニケーションを実現するための技術開発につながる.令和元年においては,以下の2つの研究項目のうち、「コミュニケーション時の脳波と音声のシンクロ」について重点的に研究を遂行するとともに、「非侵襲脳刺激による神経リズム協調の操作」についても、その非侵襲脳刺激の方法について検討した.(1) コミュニケーション時の脳波と音声のシンクロ(2) 非侵襲脳刺激による神経リズム協調の操作「コミュニケーション時の脳波と音声のシンクロ」については,ナレーションを聴取中の20名の実験参加者を対象とした脳波計測実験を完了した.この実験では,短編小説のナレーションを聴取後に,どのような内容であったかを自由想起により被験者に回答してもらう課題である.自由想起した内容とオリジナルの小説文章との意味的な一致度を定量的に評価するために,自然言語処理技術を用いてそれぞれの文章を意味ベクトルに分解する.この意味ベクトルの一致度合いに基づき,被験者がどの程度ナレーション文章の聴取に成功していたかの成績評価を行う方法を開発した.特に今年度においては,自然言語処理技術による評価性能が最大となるパラメータ探索を実施した.また,「非侵襲脳刺激による神経リズム協調の操作」については,現在,経頭蓋電気刺激の利用可能性について検討を開始したところである.
著者
藏田 伸雄 森岡 正博 村山 達也 久木田 水生 古田 徹也 鈴木 生郎 八重樫 徹 吉沢 文武 杉本 俊介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、「人生の意味」に関するメタ倫理学的研究と「死」の形而上学的研究との関連を、「人生の意味」についての規範的議論を手掛かりにして検討する。さらに「人生の意味」という概念の規範性について批判的に検討する。またこの分野での主張に見られる、「人生の意味」に関する命題についても真理条件が成立するという前提について検討を進める。そして決定論的な世界観を採用することは、「人生の意味」の価値を減じるのかという問題について分析する。
著者
高宮 正貴 児島 博紀 生澤 繁樹 橋本 憲幸 室井 麗子 森岡 次郎 杉田 浩崇 虎岩 朋加 平石 晃樹 鵜海 未祐子 関根 宏朗 岸本 智典 市川 秀之 田中 智輝
出版者
大阪体育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

これまで、教育学と政治学の接合の仕方は、①教育政策を政治学の方法で分析すること、②シティズンシップ教育として政治「を」教育すること、の2点に止まっていた。しかし本研究では、教育の規範を問う観点から、上記の接合の仕方とは異なった以下の3つのあり方を探究する。【1A】教育政策をいかに正当化すべきか(教育の分配的正義)【1B】教育は人々の生にどのように作用し、いかに包摂と排除を可能にしているのか(教育の生政治)【2】統治の対象かつ主体でもある人間は、いかにして形成されるのか(政治的主体の育成)これらの探究を通して、正義論、権力分析、市民性教育論を統合することで、規範的教育学の再構築を行う。
著者
豊福 誠 佐藤 一郎 大西 博 滝 次陽 植本 誠一郎 小杉 弘明
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ラピス・ラズリ原石の選別と粉砕、粉砕粉から高純度青色顔料の抽出を初年度に行った。同時に始めた粉砕粉による陶磁器素地への焼き付け試験と分析の試験結果を踏まえ、釉薬としての発色維持の可能性を22、23年度にかけて探った。その結果、高火度釉への応用は出来なかったが、低火度釉薬として安定した釉調と発色の釉薬を完成し、最終年度に陶磁器作品への展開と成果報告展として研究を締め括った。
著者
田村 恵子 西山 知佳 星野 明子 平井 啓 森田 達也 清原 康介 本間 なほ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、地域社会で病いとともに生きる人々や家族、市民と専門職で創るケアリングコミュニティにおける対話プログラムの効果検証を目的とする。CBPR(Community-Based Participatory Research)を主軸に、ケアリングに基づく対話パターンの実践知の共有、世代を越えた人々とのケアする対話の場づくりの検討、病いとともに生きる意味を探求するスピリチュアルケアガイドの作成を行う。地域社会における対話プログラムの効果を検討することで、今後の少子高齢・人口減少を向かえるわが国において、病いとともに生きる人々と市民が支え合い、主体的に生き抜くための地域共生社会実現への貢献を目指す。
著者
吉澤 誠 杉田 典大 八巻 俊輔 湯田 恵美 山家 智之 田中 明 山邉 茂之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

不完全な自動運転は,運転者の乗り物酔いのリスクを高める可能性があるため,交通事故を誘発する恐れがある.そこで本研究では,不完全な自動運転中の運転者の乗り物酔いの発症条件の解明とそれに伴う交通事故との因果関係を明らかにするとともに,乗り物酔いを低減する自動車に具備すべき具体的手段を得るために,次を行う.1)不完全自動運転中における乗り物酔いの発症条件の実験的解明,2)乗り物酔いを発症した運転者の判断・操作能力の低下と交通事故間の因果関係の解明,3)乗り物酔いを客観的・定量的に判断する自動車用センシングシステムの構築,4)不完全自動運転中の乗り物酔いを低減させる手段の提案とその効果の実験的検証.
著者
東海 正 胡 夫祥 塩出 大輔 内田 圭一 荒川 久幸
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では、海洋におけるマイクロプラスチック(MPs)を採集する際に標準的に用いられるニューストンネットの採集特性を明らかにして、MPsの大きさ別の推定密度の精度向上を図り、ニューストンネットによるMPs採集方法の標準化に貢献する。このために、仕様の異なるニューストンネット(ニューストンネットやマンタネット、標準的に用いられる0.33mmやその他目合)の網目選択性を表す特性曲線のパラメータを比較操業実験から推定する。また、回流水槽での実物実験やCFDを用いて、海表面を曳網される際の網内外の流速分布を求め、濾水効率を推定する。これらの結果をもとに、ネット採集数と濾水量からの補正方法を提示する。
著者
野口 裕之 島田 めぐみ 熊谷 龍一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2019年度は、以下の調査を実施した。1)「話す(表現)」「書く」および「やりとり」の自己評価調査、2)「漢字運用力」を表わす能力記述文を開発試行調査、3)日本語教育機関のカリキュラムに対応する Can-do statements 自己評価調査( 1)2)と同時実施、中国のみ)。1)では、CEFRから学習者による自己評価が難しい言語能力記述文を除いて、調査票を構成した。回答には4段階評定尺度を用いた。調査協力者は、中国(漢字圏)、インド、ベトナム(非漢字圏アジア)、豪州、米国(非漢字圏非アジア)および日本国内の日本語学習者724名であった。難易度を表す尺度構成にはIRTの段階応答モデルを適用した。その結果、「産出的能力」では、難易度の順序が元のCEFRの順序と一致する部分が少なくないが、「やりとり」では、元のA2項目群とB1項目群に難易度の重なりが見られるなど項目の順序性に関してCEFRと緩やかな一致傾向が見られるに留まった。CEFRの日本語への適用は、単に翻訳するのではなく、日本語に合わせた調整の必要性が示唆された。2)に関しては、現在詳細な分析を継続している。3)に関しては、2018年度に実施した「聞く」「読む」に関する中国A大学のCan-do statements自己評価データと,CEFR言語能力記述文の自己評価データを合わせて同時に分析した結果を比較検討した。すなわち、IRTの段階応答モデルを用いて,グローバルなCEFRとローカルなA-Cdsを同一尺度に乗せて,両者の項目困難度を比較するという試みを行なったが,この手法の有効性が確認できた。CEFRを日本語教育場面で活用するためには、言語能力記述文をそのまま日本語に翻訳するだけではなく、日本語に合わせたレベルの調整・変更や、日本語の独自性を反映する言語能力記述文を加えることなどが必要であることが明らかにされた。