著者
大久保 史郎 徐 勝 上田 寛 赤澤 史朗 松本 克美 中島 茂樹 松宮 孝明
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、民主化以降の現代韓国の法・政治構造の転換を主題とし、日本との比較の中で、韓国側の新進気鋭の法学者を網羅し、3年間の研究を進めてきた。韓国の民主化の転換点を1987年の「6月民主化大抗争」に置いて、盧泰愚政権以降の韓国政治の民主化過程に対応する憲法・刑事法・労働法・行政法・経済法等の変動に関する分析を行い、その過程と到達点、限界などを明らかにした。そこでは、憲法裁判所の役割や国家人権委員会設立過程などで見られるように、司法の権力統制と人権保障機能の段階的強化、司法権の独立および司法制度改革への模索、市民運動の興隆と市民の政治・司法への参加の増大などが認められた。しかし、反面、分断体制からくる制約や権威主義体制の遺産などもあり、国家保安法を存置させている問題も指摘された。3年間の共同研究の経過を下に示す。第1回共同研究(99年4月・ソウル)では、日本側から2本、韓国側から5本の報告がなされた。第2回共同研究(99年10月・京都)では、日本側から3本、韓国側から4本の報告と、園部逸夫氏の記念講演がなされた。第3回共同研究(2000年6月・韓国慶州)では、日本側から4本、韓国側から4本の報告がなされた。第4回共同研究(2000年12月・京都)日本側から1本、韓国側から3本の報告がなされた。第5回共同研究(01年5月・釜山)では、韓国側から3本の報告と、全体の総合討論がなされた。3年間で30本の報告がなされたことになるが、以上の報告のうち、9論文は『立命館大学法学』に翻訳掲載され、全体のなかから選んで、『現代韓国の法・政治構造の転換』として、2002年度に公刊される。
著者
齊藤 宣一 土屋 卓也 谷口 雅晴 降籏 大介 村川 秀樹 菊地 文雄 河原田 秀夫 牛島 照夫 宮下 大
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究プロジェクトでは,構造保存型の数値解法として理工学各分野で広く応用されている有限体積法に対する数学的な基盤理論の開発とその現実問題への応用を行なった。基礎的な面では、離散ソボレフの不等式、補間誤差不等式の最良定数、離散Rellichの定理、離散最大値の定理、離散微分形式などについて応用指向の進んだ結果を得ることができた。応用面では、細胞性粘菌の数理モデルに対して、構造保存型の有限体積法を開発し、いままで未解決だった離散エネルギー不等式の証明に成功した。また、離散微分形式の応用としてLagrange力学に基づくエネルギー保存型数値解法の有限体積法への拡張を行なった。
著者
青山 裕彦 坂本 信之 松井 浩二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

脊椎動物は分節的に構成されていると考えられるが,その発生的基本単位は体節である.体節自身から発生する骨格や筋はもとより,脊髄神経や交感神経系の分節的形成も体節によって支配されている.本研究では脊椎動物のボディプラン形成機構を考察するため,体節から中軸骨格が形成される機構,とくにその胸部を特徴づける肋骨の部域特異的形態形成機構を題材に取り上げた.1.肋骨形成の3区画:体節周囲組織の肋骨形成との関わりを調べ,椎骨と結合している短い部分(近位肋骨)は神経管の底板や脊索に,その遠位にある長い部分(遠位肋骨)は表皮外胚葉に依存して発生することを示した.遠位肋骨はさらに壁側板に進入する部分(遠位肋骨胸骨部)としない部分(遠位肋骨椎骨部)の2区画に分けられる.これは近年提唱された(Burk, A),abaxial, primaxial区画にそれぞれ対応する.2.遠位肋骨形成と体節分化:表皮外胚葉と体節との相互作用を物理的に阻害すると,皮筋板の外側部(Sim 1),皮筋板辺縁近傍の椎板(Scleroaxis)の形成不全が示された.これらの遺伝子発現領域が遠位肋骨の形成に関わるのであろう.3.体壁筋の部域特異的形態形成〜腹壁筋の発生的分節性(1)体節の発生運命:腹壁の筋はほぼ第27体節のみからできることを移植実験から示した.その他の腰部体節は,肋骨のみならず,体壁筋も形成しないのである.(2)神経支配:ところが腹壁筋の支配神経は胸神経であった.筋の発生由来と支配神経の由来する分節が異なっており,支配神経からは筋の発生由来をいうことはできない.4.四肢形成と肋骨形成:胸部に四肢を誘導すると遠位肋骨胸骨部ができなかった.abaxial区画については,体壁と四肢が相補的に形成されるのである.5.中軸骨格原基の部域特異性の決定:体節形成の最も初期,原始線条から陥入する直前に,すでに決定されていることを,当該部位の移植と,そのHox遺伝子群の発現,形態形成能から示した.
著者
一戸 猛志 森山 美優
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸内細菌叢がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に役立つ理由は不明である。今回、36℃で飼育したマウスは、22℃で飼育したマウスと比較して、インフルエンザウイルス、ジカウイルス、SFTSウイルスの感染後に誘導される免疫応答が低下することを見出した。36℃で飼育したマウスは摂食量が低下しており、この摂食量の低下が免疫応答の低下につながる要因のひとつであった。そこで36℃で飼育したマウスに腸内細菌由来代謝産物である酪酸、プロピオン酸、酢酸やグルコースを投与すると、低下していたウイルス特異的な免疫応答が部分的に回復することを見出した。
著者
中俣 尚己 山内 博之 橋本 直幸 建石 始 小口 悠紀子 小西 円 堀内 仁 森 篤嗣 合田 陽子 加藤 恵梨 澤田 浩子 清水 由貴子 山本 和英
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年7月7日に京都教育大学で第1回ミーティングを行い、作業方針を固めた。以下、「新規コーパス構築」「既存コーパス分析」のそれぞれの作業について順番に実績を述べる。新規コーパス構築では、120ペア、240名の調査協力者を集めることにした。関西60ペア、関東60ペアで、さらに性別でも「男男」「男女」「女女」でバランスをとる。その上で、話題選定班の協力の元、『実践日本語教育スタンダード』を元に15の話題を選定し、各5分ずつの談話を録音することにした。調査に先立ち、協力者への説明や、同意の取り方、さらには指示の出し方など細かいプロトコルを定め、共有した。2018年度は120ペアのうち55ペアの録音を完了し、ほぼ半分の録音が完了した。2019年10月に全作業を完了する予定である。既存コーパス分析では、名大会話コーパスの全てのファイルを目で読み、『実践日本語教育スタンダード』をベースに話題の分割を行うことにした。プレ調査の結果、各ファイルにつき3名の作業者を当てることが妥当と判断した。分割のための書式を定め、結果を機械分析班が作成したプログラムで加工し、その後対面ですり合わせ作業を行う。全129ファイルを4分割して作業を進めることにした。現在、分割の作業進捗度は75%程度であり、全体の25%については2019年3月にすり合わせの作業を実施した。なお、代表者は全ファイルの作業をすでに終えている。作業の完了は2019年9月の見込みである。
著者
明石 博臣 吉川 泰弘 本藤 良 森川 茂 遠矢 幸伸 久和 茂
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究実績計画に基づき以下の研究を実施した。1)エボラウイルスおよびBウイルス研究エボラウイルスについては、核蛋白を安定的に発現するHeLa細胞を用いた蛍光抗体法とバキュロウイルス発現抗原を用いたELISAによる抗体検出法を確立した。この結果、霊長目の抗体調査が可能であった。Bウイルスについては、組換え抗原を用いてヒトヘルペスウイルスとの鑑別法が確立され、霊長目におけるBウイルス特異的抗体検出を行うことが可能となった。2)翼手目の免疫系解析抗コウモリIgG血清を用いたELISAの手法を開発した。この抗コウモリIgG血清は大翼手亜目、小翼手亜目ともに95%以上の高い交差性を示した。また、オオコウモリのCD4、IgFcRnについて蛋白コード領域を決定した。さらに、IFN-αの1subtypeとIFN-βのprotein cording regionの塩基配列を同定した。3)翼手目のウイルス病抗体検索法2)で確立したELISAを用いて、わが国でコウモリから分離されたヨコセウイルスの抗体調査を行ったところ、東南アジアのコウモリ血清151例中フィリッピンの1例(2.7%)、マレーシアの5例(19%)が陽性であった。陽性率が低かったため、ヨコセウイルスのコウモリに対する病原性を検討する目的で、ルーセットオオコウモリに実験感染を行った。ウイルス感染は成立したが、コウモリ体内での増殖性は悪く、ヨコセウイルスの自然宿主としてコウモリ以外の生物の存在が示唆された。
著者
上久保 靖彦 足立 壯一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本申請では下記A・Bプロジェクトを連動させて ○p53非依存性細胞死・細胞周期停止誘導を可能とする抗腫瘍コンセンサス配列の探索とそのターゲッティング法の提唱 ○MTp53難治性造血器悪性腫瘍及び固形腫瘍(膵臓癌・食道癌・トリプルネガティブ乳癌(TNBC)等制圧を目指す新規スーパーエンハンサー制御システムの確立を目的とした。A:人工転写因子ライブラリーを用いた抗腫瘍コンセンサスの同定 B:スーパーコンピュータシミュレーションによる創薬計算・スーパーエンハンサー制御低分子(FactorZ制御低分子)の同定とp53非依存性細胞増殖抑制メカニズムの解明A:ライブラリーより、MTp53難治性造血器悪性腫瘍(AML)と固形腫瘍(膵癌、大腸癌、MRT、Her2胃癌(Sci Rep. 2018)、悪性グリオブラストーマ、髄芽腫、神経芽細胞腫、CRPC-DNPC:外科的治療不応性AR-・NE-DN 前立腺癌)を効果的に抑制するいくつかのHIT-PI-Pを抽出し、そのバリデーションを行った。各種癌腫HIT-PI-P投与下でのアポトーシスアレイの施行し、各種癌腫で新規の腫瘍アキシスを同定した(Cancer Sci. 2018)。AMLのMRD(微少残存病変)を消失させるために、骨髄環境を制御可能なPI-Pを同定し、さらにそのメカニズムを解明した(Blood Adv. 2018)。B: 膵臓癌・大腸癌・トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、Complex karyotype AML、骨肉腫、MRTにてスーパーエンハンサー制御低分子HITをそれぞれ複数個抽出した。またHIT低分子がターゲットする遺伝子を各々の癌腫より同定した。A,Bで対象とした癌腫におけるTCGC症例GSE解析を行い、悪性化のメカニズムに重要なOncogenic Profilingを完成した。
著者
西嶋 一欽 丸山 敬 林 泰一 高橋 徹 友清 衣利子 伊藤 耕介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、台風に先回りして容易に設置可能な風圧計測デバイスを開発することで、台風通過時に建築物が密集した都市部に位置する低層建築物に作用する風圧を実測する。さらに、実測した建築物に対して、その周辺の遮蔽物の有無を段階的に変化させた風洞実験を実施し、実測値と比較することで、都市部に位置する低層建築物に作用する風圧特性を決定づける要因を類型化し、周辺環境の何をどこまで再現すれば十分な精度で風圧を評価できるかを明らかにする。得られた知見を用いれば、都市のどこに大きな風圧が作用し得るかを明らかにすることが可能になり、都市型強風災害リスク分析の高度化や耐風補強に関する意思決定に貢献できる。
著者
野村 武男 松内 一雄 榊原 潤 椿本 昇三 本間 三和子 高木 英樹 中島 求
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

工学分野で発展してきたPIV計測法(Particle Image Velocimetry)は、時々刻々変化する非定常な流れ場を可視化・解析することができる。これまでのこの手法を用いた研究は、細部の気流解析や魚などの小型遊泳動物、昆虫の飛翔メカニズムに関する研究のように測定領域が非常に小さいものしか行われていない。本研究では、PIV計測法を用いて、ヒト水泳時の身体周りの流れ場の可視化から流れの非定常性を明らかにし、競泳動作のダイナミクス解析、および泳シミュレーションモデルを作成する事で、ヒトの推進メカニズムを明らかにしようとした。ヒトを扱った測定領域の大きなPIV解析は世界的にも初である。PIV計測法を用いた研究結果から、ヒトは泳動作時に渦(運動量)をうまく利用し、効率よく推進力へと結び付けている事が明らかになった。泳者の手部および足部の複雑な動きは、それら推力発揮部位周りの循環の発生・放出と関係しており、特に手部の場合は、放出された渦と手部周りの束縛渦が渦対を作り、その渦対間にジェット流を生成し、運動量を作り出していることが分かった。この運動量の変化(増減)が推進力と結びついている。また、泳動作モデルの作成では、水泳時に身体各部位に働く流体力を算出するために用いられている3つの流体力係数(付加質量力係数、接線方向抵抗係数、法線方向抵抗係数)を分析の対象となる泳者の体型と泳動作に合うように調節することによって、水泳中のダイナミクスをシミュレーション上で再現することができ、水中ドルフィンキック泳動作中に発生する全身の推進力や各関節トルクなどを算出することができた。身体部位別の推進力を求めることによって、水中ドルフィンキックの推進力は主に足部によって発揮されていることがわかった。さらに、足部の柔軟性と泳パフォーマンスの関連性を示す事ができた。
著者
山岡 耕作 堀 道雄 関 伸吾
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

人工流水環境下、人工採苗、琵琶湖産、海産のアユ3系統81個体について、摂食観察を行った。観察は朝夕の1日2回、摂食行動を連続50回、計100回行った。観察後、アユは氷水中で死亡させた後、重力等の外圧に影響されないよう、個体を吊り下げる様にした固定装置を用いて10%ホルマリンで固定し、保存した。形態的利き手の判定は、ホルマリン固定した個体について、下顎関節が前方に位置する側を利き手として判定した。体軸の歪みも判定に用いた52個体で左右の顎の使用頻度に有意差が認められた(人工、右利き9個体、左利き10個体:琵琶湖、右10、左10:海産、右7、左6)。摂食行動に関して、3系統間に差はみられなかった。全ての個体について形態的利き手の判定を行った結果、摂食行動が右利きの個体では体軸が右に歪み、科学関節部位の左側が前方に位置し、形態的利き手は左利きとなった。それに対して摂食行動が左利きの個体は、体軸が左に歪み、下顎関節部位は右側が前方に位置し、形態的には右利きとなった。これらのことから、摂食行動の利き手と形態的利き手は逆の関係になることが明らかとなった。従って、下顎関節部の位置、体軸の歪み、説食行動の3形質が密な関係にあることが示された。左右の顎の使用頻度、顎部形態、体軸の歪みに関して、3系統間に差はみられなかった。3系統81個体の外部形態の計測を行った結果、胸鰭長、腹鰭長に左右差が全ての個体で認められた。胸鰭長は81個対中61個体において形態的利き手と胸鰭の短側が一致した。腹鰭長では81個体中55個体において形態的利き手と腹鰭短側が一致し、胸鰭、腹鰭ともに利き手側が短い傾向がみられた。形態的利き手と対鰭との密な関係がうかがわれる.。左右の腹鰭位置を測定した結果、81個体中65個体において形態的利き手側の腹鰭が後方に位置した。形態的利き手と腹鰭関節の位置は密接な関係にある可能性がある。櫛状歯、眼径及び左右の眼の位置については、形態的利き手との間には明確な関係は認められなかった。又、調べられた全ての外部形態の左右差に関して、3系統間で有意差は認められなかった。
著者
光谷 拓実
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

9年度、10年度と2年度にわたって採取した標本17本分は、心材部に続く辺材部(白太ともいう)がすべて失われており、その正確な枯死年代を求めることのできない形状のものばかりであった。年輪年代の結果は500年前後と1000年前後を示すグループに分かれた。そこで、失われたであろう辺材部の年輪数を推算してみると、500年前後を示すグループは600年を境に前後した枯死年代が、もう一方の1000年前後示すグループは1100年を境に前後した枯死年代が考えられる。ここで、過去に発生した大地震の古記録を見てみると、西暦599年と1096年に大地震が発生している。あくまでも推定ではあるが、調査した湖底木はこの2度の地震で急斜面に生育していた巨木が地滑りとともに、芦ノ湖の湖底に移動し、逆さスギが誕生したものと思われる。2年度にわたる調査結果を見ると、まず第1に湖底木の年輪年代から見て、この地域を襲った巨大地震は約500年の周期が考えられる、第2は、C^<14>年代法で推定していた年代(西暦350年頃、西暦900年ごろ)がいずれも約200年ほど新しくなることが明らかになり、C^<14>年代法の信頼度をクロスチェックできたことになる。本研究で得られた結果は、今後の箱根地域での地震予知を考える上で、貴重な年代情報を提供できたことになろう。現在、芦ノ湖を誕生させた神山の泥流中に埋没していたヒノキ材の年輪解析を進めている。これらの年輪年代が確定すれば、芦ノ湖の誕生した年が判明するであろう。
著者
李 富生 吉村 千洋 笠原 伸介
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

水中の微量有機物を除去することを主な目的として導入される活性炭吸着プロセスによるウイルスの吸着容量と吸着後のウイルスの生残性の変化を明らかにするため、活性炭によるモデルウイルスの吸着容量実験、吸着後のウイルスの誘出実験、実活性炭処理施設に対する調査実験を行い、ウイルスの吸着容量と生残性に対する活性炭細孔分布や共存有機物の影響を検討した。
著者
村上 恭通 佐々木 正治 笹田 朋孝
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

古くは蜀と呼ばれた四川省成都平原において、製鉄遺跡の発掘調査を実施した。成都市蒲江県鉄牛村遺跡では前漢代・後漢代、そして古石山遺跡では後漢代の製鉄関連施設を検出した。これらの発掘調査により、成都平原における漢代製鉄炉の特徴と生産物を明らかにした。
著者
村上 恭通 鈴木 康之 槙林 啓介
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2018年度は東寺領新見荘がおかれた岡山県新見市、弓削嶋荘がおかれた愛媛県上島町で次のような調査を実施し、研究成果を得た。新見市においては前年度、神郷高瀬地区で実施した踏査成果を前提に、5月に貫神ソウリ遺跡、鍛冶屋床遺跡において地中レーダー探査を実施した。その結果ではいずれの遺跡においても明確な構造物の輪郭が捉えられないため、10月、11月に試掘調査を実施し、貫神ソウリ遺跡では後世の土地削平、製鉄関連施設が根こそぎ滅失し、縁辺部にスラグ原のみを遺していることが判明した。これに対し、鍛冶屋床遺跡は石組の構造物を遺し、小舟状遺構の一部を確認し、地下構造が残存していることを明らかにした。放射性炭素年代測定により、前者が13世紀後葉、後者が15世紀後葉~16世紀前葉であることもわかった。これらの遺跡以外にも踏査により新畑南遺跡、永久山一ノ谷遺跡でスラグ原を確認し、スラグ噛み込み木炭を測定した結果、いずれも16世紀を中心とする遺跡であることが判明した。愛媛県上島町では8月に佐島・宮ノ浦遺跡(Ⅱ区)を発掘調査し、併行して上弓削・高濱八幡神社の調査も行った。宮ノ浦遺跡では10~11世紀の遺物をともなう灰白色粘土層と厚い焼土層を検出した。これらは粘土を用いた構造物で、なおかつ焼土を生成するような施設の残骸であり、生産活動に関連する可能性が考えられる。高濱八幡神社は2013年に小規模な試掘を行い、揚浜式塩田の浜床の可能性の高い硬化面を確認していたが、この発掘調査により、一定の面積を有し、砂堆上を整地して粘土を貼り付けた塩田浜床であることを実証した。浜床層に含まれる木炭を資料とした年代測定の結果、下層は9世紀、上層は12世紀を中心とする年代を示し、古代に造成された塩田が中世前期まで使用されていたと考えられるようになった。
著者
末松 和子 黒田 千晴 水松 巳奈 尾中 夏美 北出 慶子 高橋 美能 米澤 由香子 秋庭 裕子 島崎 薫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

欧米豪で進む高等教育の「内なる国際化」とりわけ留学生と国内学生の正課内外国際共修に着目し、国内の実態調査、海外施策・実践比較研究、日本をはじめとする非英語圏の高等教育現場に適した国際共修教授法の開発、また国際共修の効果検証を通して日本やアジアに特化した国際共修や「内なる国際化」の在り方を明らかにするという本研究の目的に沿って、日本における国際共修の実践実態の把握、「内なる国際化」が進む海外主要国の施策および実践比較研究を通して理論構築を行い、日本やアジア独自の国際共修を考察するための基礎研究を進めた。また、発展的・包括的な国際共修カリキュラムおよび教授法を開発し、国際共修の効果検証を正課外にも拡大することで海外留学の準備や代替としての国際共修を「内なる国際化」の枠組みで捉え、その有効性の明示と政策提言を行うための準備として、論文・学会発表で基礎研究の結果をタイムリーに発信した。具体的には、文献調査やペダゴジー研究を中心とした基礎研究の成果を国内外の学会で報告し、ワークショップでは、国際共修を実践する上での授業やシラバスのデザイン、教育実践者に求められるファシリテーション・コンピテンシー、課題及びその対処法、評価、について有益な議論を展開することが出来た。ワークショップの運営についても国際共修の研究者、教育実践者より建設的なフィードバックを得ることが出来、今後の研究の発展に資する知識基盤の形成につながった。また、国内における国際共修実態調査を実施するためのパイロット事例調査も実施した。日本の高等教育機関における国際共修の実践状況と課題を明らかにするために実態調査を計画しているがその準備にも着手し、来年度の発展研究に向けた下地作りを行うとともに、本年度実施したワークショップの発展版を国内外で実施するための申請作業を集中的に実施した。
著者
齋藤 智寛 佐竹 保子 冨樫 進 川合 安 堀 裕 長岡 龍作 斉藤 達也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

唐・道宣の編纂した中国の仏教史書『続高僧伝』玄奘伝について、テキストと内容の双方について総合的に研究する。テクスト研究としては宮城県の名取新宮寺一切経本について日本古写経諸本との関係を明らかにし、新宮寺一切経全体の解明の布石ともする。内容については、中国思想・歴史・文学、インド考古学、僧伝文学など分野横断的な記述をもつ玄奘伝の資料価値を最大限に発揮して考察をおこなう。
著者
野々山 恵章 小原 收 大嶋 宏一 今井 耕輔
出版者
防衛医科大学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

新生児乾燥濾紙血のTREC (T cell receptor recombination circles)とKREC (Kappa-chain recombination excision circles) 測定で、SCID, AT, XLAなどの先天性免疫不全症をスクリーニングできること、病態解析に有用であることを示した。また、分類不能型免疫不全症がTRECとKRECの陽性・陰性で4群に分けられること4群間で重症度が異なること、病態に即した治療法を選択できることを見出した。
著者
田畑 泉
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、まず身体トレーニングは低い強度でも高い強度でも疲労困憊に至るまで行えば、ミトコンドリアの新生の機序に関係のある核内蛋白質として注目されているPGC-1α(peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1)の骨格筋での発現には差がないこいことを明らかにした。しかし、この高強度・短時間トレーニング後のラット血中乳酸濃度は11mM以上に上昇し、疲労困憊に至るような運動であると考えられる。したがって、健康増進のための運動処方としては用いることができない。そのため高強度・短時間運動トレーニングを健康増進のための運動処方として用いるためには、より少ない運動セット回数でもある程度の効果が得られることを確認する必要がある。また、容量依存的に増加するか否かについても検討はなされていない。そこで、次に、SD系ラットに体重の18%の重りを負荷した、20秒間の水泳運動を3回,9回,14回、各セット感に10秒間休憩を挟み1日1回5日間行った場合の前肢筋epitrochlearisのPGC-1α発現を見た。その結果、疲労困憊に至らない3回の高強度間欠的運動トレーニング後のPGC-1αの発現量は、従来、運動トレーニングとしてPGC1α発現の最大刺激と考えられてきた疲労困懲に至る14回の間欠的トレーニング後のものと差はなかった。さらに、PGC-1αの発現の機序に関係していると考えられているAMPK活性は3回の間欠的運動後でも高い値であることが明らかとなり、PGC-1α発現は、AMPK活性が、それほど高くなくても、充分に高くなることが明らかとなり、さらにヒトを対象としても疲労困憊に至らないような最大下回数の高強度短時間間欠的運動トレーニングが効果的である可能性が示唆された。
著者
原 聖 藤井 毅 大黒 俊二 高田 博行 寺尾 智史 三ツ井 崇 名和 克郎 包 聯群 石部 尚登 HEINRICH Patrick 荒木 典子 岩月 純一 バヤルメンド クルマス フロリアン デフラーフ チアド 黄 行 フフバートル カムセラ トマシュ 中江 加津彦 落合 守和 オストラー ニコラス プルブジャブ スマックマン ディック 田中 克彦 許 峰 徐 大明 珠 麗 彭 韃茹翠
出版者
女子美術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本科研の重要な成果は、(1)書き言葉生成時にある程度の標準化が行われている、(2)欧州の初期標準規範においては、①文字化と②詩歌など韻律規則を伴う書記規範の生成の2段階を経る、(3)ラテン語文化圏でも漢字文化圏でも、権威をもつ文字をそのまま採用する場合と、その変種的な創作を行う場合がある、(4)欧州における新文字の生成は紀元前1千年紀から紀元後1千年紀であり、(5)漢字文化圏における漢字に類する新文字の生成は、やや遅れ、紀元後5世紀以降、表音文字の中東からの流入以降、中央集権の力が比較的弱まる宋王朝(10-12世紀)にかけてである。