著者
内山 精也 浅見 洋二 池澤 一郎 高橋 幸吉 種村 和史 東 英寿 保苅 佳昭 堀川 貴司 張 宏生 侯 体健 陳 広宏 査 屏球 王 水照 銭 志熙 羅 鷺 卞 東波 朱 剛 張 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

13世紀、宋(南宋)から元への交代期に、非士大夫層(江湖)詩人の詩作が一世を風靡した。本研究は、彼らを「中国伝統詩歌の近世化」という観点から照射する、全世界初の試みである。この3ヶ年の研究期間においては、まず対象のディテールを少しでも多くクリアーにし、具体的な問題を一つでも多く発掘することを目標とした。そのために、個別テーマを個人研究の形で進めたほか、毎年、国際シンポジウムを開催し、海外から関連の研究者を招聘し、意見交換する場をもった。また、今年度(2014)中に、勉誠出版の『アジア遊学』の特集号において、一般読者に向けて本研究の意義を発信してゆく予定である。
著者
玉田 芳史 相沢 伸広 上田 知亮 河原 祐馬 木村 幹 鈴木 絢女 滝田 豪 中西 嘉宏 日下 渉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)が世界を席巻している。SDGsが掲げる目標は首肯できるものばかりである。しかし、SDGsの目標群を冷静に眺めると、開発にとって重要な目標の欠落が分かる。その1つが政治の民主化である。途上国の非民主的な指導者が、国際社会に向かって、SDGs推進を謳う例が少なくない。SDGsを錦の御旗とすれば、民主化への外圧を和らげることができるからではないのか。SDGsは権威主義体制の温存に寄与するという副作用があるのではないか。本研究はこの問いに実証的に答えようとする。
著者
石川 健治 小島 慎司 宍戸 常寿 岡野 誠樹 西村 裕一 山羽 祥貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は,およそ,五・一五事件が生じた1930年代初めから,内閣に憲法調査会が設置された1950年代半ばまでを対象とし、そうした体制変革期における憲法および憲法学を考究する。その際、当該時代における日本の憲法学を連続するものとして捉えること,それらを歴史的・理論的に考究するだけでなく、そうした歴史研究と理論研究の有機的結合を試みること、の2点に注力する。それらの歴史的解明は,個々の論者の理論枠組みを踏まえてはじめて果たすことができる一方(「理論」を踏まえた「歴史」研究),個々の理論や解釈論も,当時の政治的文脈に置いてこそ、その真価を問うことができるからである(「歴史」を踏まえた「理論」研究)。
著者
吹田 浩 西浦 忠輝 米田 文孝
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

2003年8月にエジプト国古物最高評議会から、サッカラにあるイドゥートのマスタバ墓の地下埋葬室壁画を修復する正式な許可を得て、同年11月に第1次調査、2004年4〜5月に第2次調査をおこなった。調査の最大の意義は、イドゥートの壁画がギザ・サッカラ地域での初めての修復の試みであることにある。壁画の状態は予想をこえて悪く、1935年の報告書に比較して相当に剥落が進行していることを確認した。注意すべきは、クラックの存在と浸水による損傷である。天井・壁・床に多くのクラックがあり、南面の壁のクラックは、この70年の間に成長していることは明らかである。北面にはかつての浸水のあとが明瞭であり、東のシャフト入り口上部も浸水による損傷と考えられるあとが見られる。乾燥地帯にあるとはいえ、何回かの豪雨があり、浸水したものと思われる。正確な記録を作成するために、カメラとビデオによって壁画を撮影した。多くの壁画片が床面に落ちていたために、これらを回収した。これらの壁画片は、修復の際に本来の位置に戻すことがある程度可能である。壁画の劣化の原因を探るべく、化学分析(X線回折、岩石分析学、DTA分析、赤外線分析、断面分析法など)をおこない、埋葬室内と外部に温湿度計を設置している。調査の範囲では、温度と湿度とも極めて安定している。壁画と母岩の状態から、壁画は母岩からはぎ取る必要があると考えている。その際、埋葬室が閉鎖空間であることと、さらに日本独自の技術の有効性を確認するために、フノリと和紙(あるいは、レーヨン紙)による引き剥がし方法を検討している。2年間の調査によって、エジプトの遺跡管理当局と信頼関係を築くことができた。また、エジプト側の研究協力者が遺跡管理当局の修復部門のトップとなったことから、我々の調査が今後開発する修復技術は、エジプト側にすみやかに普及することが期待される。
著者
田坂 さつき 島薗 進 一ノ瀬 正樹 石井 哲也 香川 知晶 土井 健司 安藤 泰至 松原 洋子 柳原 良江 鈴木 晶子 横山 広美
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本学術会議第24期連携会員哲学委員会「いのちと心を考える」分科会委員のうち9名が参画し、同分科会委員長田坂さつきを研究代表者とする。本研究には、政府が主催する会議などの委員を歴任した宗教学者島薗進、倫理学者香川知晶に加えて、医学・医療領域の提言のまとめ役でもあり、ゲノム編集による生物医学研究の黎明期から先導的に発言してきた石井哲也も参画している。医学・医療領域におけるゲノム編集に関する提言に対して、哲学・倫理の観点からゲノム編集の倫理規範の構築を目指す提言を作成し、ゲノム編集の法規制の根拠となる倫理的論拠を構築することを目指す。
著者
藤原 卓 福本 敏 星野 倫範
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

DNAワクチンとは,抗原遺伝子を組み込んだ発現ベクターにより生体内で直接抗原タンパクを発現させ,免疫応答を惹起するもので,我々はグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)を標的とするDNAワクチンを構築する試みを行ってきたが,免疫反応を惹起する必要なタンパクレベルでの発現にいたらなかった.構造解析を行ってシグナル直下の約350AAの大きさの多型性領域に高い抗原性を決定し、そこを標的とする新たなDNAワクチン(pSecTag2-gtfB、pSecTag2-gtfC、pSecTag2-gtfD)を構築し,そこからさらにアデノウイスルのプロモーターをもつpAFC3をベースとしたDNAワクチンプラスミド(pAFC3-gtfB, pAFC3-gtfC, pAFC3-gtfD)を作成した.1.DNAワクチンの標的部位の抗原性の解析今回作成したpSecTag2-gtfB、pSecTag2-gtfC、pSecTag2-gtfDには大腸菌における発現プロモーターとしてLacプロモーターを持つので、大腸菌を用いてリコンビナントタンパクを発現させて、そのリコンビナントタンパクの抗原性を解析した.E.coli BL21-AI(Invitrogen)に形質転換し,0.2%のアラビノースを添加して発現を誘導した菌体を、抗GTF抗体をもちいてウエスタンブロットにて解析すると、すべてのDNAワクチンプラスミドで抗体との反応が認められたが、pSecTag2-gtfCが最も強く、pSecTag2-gtfBでは誘導されたタンパクの分解傾向が認められた.2.DNAワクチンプラスミドによる抗原タンパクの発現マウス由来293細胞に3種のDNAワクチンプラスミドを感染後、RNAを抽出し、それぞれのgtfに特異的なプライマーを用いてサザンプロットを行った.その結果、pSecTag2-gtfB、pSecTag2-gtfCに抗原タンパクの発現が認められたが、そのバンドはpSecTag2-gtfCが最も明確であった.これらの結果より、GTFに対するDNAワクチンプラスミドとしてGTFCを標的とすることが、最も効果が高い可能性が示唆された.今後は,pAFC3シリーズを用いて,in vitroおよびラット実験齲蝕系を用いたin vivoにおける抗う蝕作用を解析してゆく予定である.
著者
平野 均 坂元 薫 北村 俊則 苗村 育郎 湊 博昭 岡野 禎治 佐々木 大輔 田名場 美雪
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

【目的】(1)青年期の季節性感情障害(SAD)有病率と罹患者の特徴、ならびに(2)Global Seasonality Score(GSS)規定因子を解明し、治療法の確立を目指す。【対象と方法】(1)平成16〜17年度全国7大学新入生を対象とし、SAD有病率と罹患学生に認められる特徴を調査した。GSS得点13点以上(高GSS群)は全員を、12点以下(低GSS群)は40名から高GSS群数を引いた人数を無作為に抽出して構造化面接を実施した。(2)平成16年度全国8大学新入生を対象とし、GSS・TCI・出身高校所在地平年値日照環境との関係を調査した。【結果】(1)対象学生12,916名中、8,596名が回答に応じた。高GSS群202名中151名と低GSS群118名中110名がSCID-Iを用いた構造化面接に応じ、それぞれ7名と1名がSADと診断された。SAD有病率は0.96%で、罹患率に性差は無かった。また14名が社会恐怖(social phobia ; SP)と診断され、GSSは高得点であった。SAD罹患学生は、高率にSPを合併していた。(2)対象学生10,871名中、GSS・TCI・日照環境情報に不備が無かったのは61443名であった。GSS総点・平均日照時間・同日射量・TCI 7項目を変数として、パス解析を行った。その結果高GSS得点を規定したのは、低い自己指向性と協調性、高い自己超越・新奇追求・損傷回避で、分裂病型人格に該当した。日照環境とには関連は見出されなかった。【考察】構造化面接による今回の大規模調査から、SAD有病率は凡そ1%で性差が無いことが示された。罹患学生にSPが高率に併存すること、GSS得点が特定の人格傾向を反映することは、SAD・SPに共通する生物学的基盤が存在する可能性を示唆している。このことは両疾患の病態と成因を解明する上で、また治療法を確立する上で貴重な所見と考えられる。
著者
滝 充 宮古 紀宏 立石 慎治
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

21年間(1998~2018年)の実績と蓄積のある「いじめ追跡調査」について,これからの10年、20年の社会状況の変化に対応できるように見直しと充実を図った上で,従来のデータとの比較可能性を担保できるように配慮して3年間の追跡調査を実施し,調査票の最終版を開発する。これにより,文部科学省の「問題行動等調査」との完全な対応をとるとともに,学術的ないじめ質問紙調査の基準となる調査票と,併せて,海外のbullying researchのstandardとなる調査票(日本語版・英語版・スウェーデン語版)を完成させる。
著者
頼本 維樹 滝 充 藤平 敦 中野 澄
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の計画は,4年にわたる研究期間のうち,最初の3年間は意識調査実施期間として,18年間にわたって国立教育政策研究所が実施してきた「いじめ追跡調査」と同様の意識調査を行い,最終年度に21年間の全体を通した比較分析を行うことである。また,地域や学校の実情を把握しておくために,3年間の意識調査実施期間中に教育委員会と学校への訪問調査を年に2回ずつ行うことである。意識調査については,国立教育政策研究所が実施してきた18年間にわたる「いじめ追跡調査」を引き継ぐ形で,年に2回ずつのいじめに関する意識調査を行う。意識調査で用いる調査票については,原則として従前と同じものを用いる。また,記名式でありながら匿名性を確保するために,記入後,回答者自身で封入できる封筒を準備する点も,従前通りである。なお,調査対象者についても,従前通りで,小学校4年生から中学校3年生までの市内全域の児童生徒を対象とした悉皆調査とする。本年度(30年度)は,一昨年度から既に確保済みの2地点目の調査地点と併せた2地点の調査を実施した。6月末には本第1回調査を実施し,8月中にデータ入力を済ませ,単純集計結果を各学校に返送した。11月末には,第2回調査を実施し,1月にはデータ入力と単純集計結果の返送を行った。また,この調査結果について,ギリシアのコンスタンチナ・カパリ,アメリカのロン・アヴィ・アストルを訪問し,意見交換を行った。
著者
熊谷 一郎 村井 祐一 藤本 修平
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成30年度は,平成29年度に行った実験準備を基に以下の項目を実施した.①翼型気泡発生装置の深喫水船舶への拡張に関する実験研究代表者の熊谷(明星大学)は,10m/sの流速が得られる海上技術安全研究所の小型高速チャネルを用い,実船の巡航速度における翼型気泡発生装置の空気導入性能および気泡生成過程を調べるための実験を行った.その結果,流速9m/sにおいて,翼の負圧による空気導入流量が約50l/minに達することが確認できた.一方で,流速が5m/sを超える場合には,翼周りにair cavityが形成され,空気導入性能が低下することも確認された.しかしながらこの問題については,翼形状の最適化によって克服できることを明らかにした.さらに本実験では,新規開発した穴あき水中翼の空気導入性能に関する実験も行い,サブミクロンオーダーの微細気泡を大量発生させることに成功した.また研究分担者の村井(北海道大学)は,昨年度に引き続き,気液二相流の数値シミュレーションを行い,水面下を運動する翼による気液界面変形に関する計算を行った.次年度,実験成果との比較検討を行う予定となっている.②微小気泡による船舶抵抗低減法に関する船体壁面の傾斜や凹凸の依存性について研究分担者の藤本(海上技術安全研究所)は,ドック入り直後の船舶の表面を型取りし,その凹凸データを取得することに成功した.得られた壁面凹凸の特徴についての解析も行った.また,その結果を基に,気泡による船舶抵抗低減効果の船体壁面の凹凸の影響を調べるための実験準備を行った.具体的には,平成31年度(2019年度)の秋に,明星大学および海上技術安全研究所の水槽を用い,実船から得られた凹凸データから作成した模擬壁面を気泡流中に設置し,その抵抗低減効果について調べるための実験装置設計を行った.
著者
藤嶋 昭 寺島 千晶 鈴木 智順 鈴木 孝宗 安達 隆尋 小笠原 麻衣 加藤 華月
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日光の社寺等の文化財に用いられている漆を保護するための光触媒コーティング技術の開発を行った。紫外線による劣化を防ぎつつ,防カビ効果のある保護膜として,紫外線吸収剤を含んだ積層構造の光触媒膜をコーティングし,紫外線劣化による寿命を未処理の漆に比べ18倍向上させることに成功した。また,漆等の文化財および日光周辺に発生するカビの特定を行い,文化財由来株はPenicillium属とCladosporium属に近縁な一般的な建築物に発生する真菌であることを真菌叢の網羅的解析から明らかにした。
著者
甲田 勝康 河野 比良夫 中村 晴信 奥田 豊子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

「適応能」は生理人類学の中心的概念の一つである。ヒトはその歴史のほとんどを自然環境の中で過ごし、その環境に適応してきた。その結果、様々な生理的多型性が生まれヒトは全世界に分布した。諸民族の問にエネルギー代謝の違いがあることが報告されている。動物性タンパクや脂肪摂取の多いイヌイットは高い代謝水準によって寒さを凌ぎ、食糧事情の悪いアンデス高地の住民は代謝増大をできるだけ抑え断熱型の反応をする。しかし、このような相違が遺伝的要因により決定されるものなのか、もしくは短期的な機能馴化によるものなのかは十分には解明されていない。今回我々は、短期的な絶食および食事制限がエネルギー代謝や他の生理機能にどのような影響をおよぼすかについて検討し、ヒトの環境適応の過程にについて考察した。労働者の健康増進を目的として、軽度肥満者や軽度高脂血症者または健常者に餌や運動指導を行っている企業がある。本研究は、この企業の健康増進活動に参加したものを対象として行われた。対象者を中等度摂取エネルギー制限群および軽度摂取エネルギー制限群の二群に分け、摂取エネルギー以外の健康指導は両群とも同じとした。呼吸商は、エネルギー制限により低下し、エネルギー源が経口の炭水化物から体脂肪に移行していることが示唆された。基礎代謝量も減少し、その程度は中等度制限群において軽度制限群より大きかった。また、この基礎代謝の変化は体重の変化よりも大きかった。このことからエネルギー制限により、基礎代謝は敏速に減少することが確認された。さらに動物を用いた実験系で検証した。その結果、短期の絶食により代謝系を含む生理機能が変化することが観察された。この研究成果は、国内および国際学会で報告し、国内および国際誌上に発表した。以上のごとく、本研究は目的を達成することができた。
著者
土田 浩治 小島 純一 工藤 起来
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本から侵入したと考えられてきたニュージーランドのフタモンアシナガバチの遺伝的多様性を、日本の個体群の遺伝的多様性と比較した。比較した部位は、ミトコンドリアのCOI 領域である。全個体群からは26ハプロタイプが見つかり、そのうち、日本からは16ハプロタイプが、ニュージーランドからは19ハプロタイプが見つかった。両個体群に共通したのは9ハプロタイプのみであり、日本以外の地域からの侵入が有ったことが示唆された。
著者
松本 博 増田 幸宏 源城 かほり 近藤 恵美
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,観葉植物のもつグリーンアメニティ効果に着目し,植物の熱・湿気環境調整効果及び化学物質除去効果を定量的に評価し,模擬オフィスと実オフィスを対象とした被験者実験により,観葉植物がオフィスワーカーの心理・生理反応及びプロフダクティビティに及ぼす影響を定量的に解明し,その経済性評価法及び室内環境デザイン手法の開発を行った。その結果,室内植物の種類や量がオフィスワーカーのメンタルストレスの軽減やプロダクティビティの向上に与える影響を明らかにし,また,その経済性評価モデル及び室内環境デザイン手法の妥当性を検証した。
著者
高山 廣光 堀江 俊治 渡辺 和夫 相見 則郎
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

タイ国・マレーシアでモルヒネ代用薬として用いられてきたアカネ科植物のMitragyna sepeciosa葉部に含有されるアルカロイドの詳細な検索を実施し、特に、マレーシア産植物からは数種の新規インドールアルカロイド類を単離し、それらの化学構造をスペクトル解析法と合成化学的手法により決定することができた。一方、主塩基であるMitragynineの薬効解析の結果、本化合物はオピオイド系を介した鎮痛作用を発現することを見いだした。この知見を受けて、Mitragynineをリード化合物として、30を越える各種誘導体を合成し、これらの薬理活性評価の結果を基に、詳細に構造活性相関の検討を行った。中でも、Mitragynineの酸化誘導体であるMitragynine pseudoindoxyl及び7-Hydroxymitragynineはモルヒネよりも高いオピオイド受容体親和性を示すことを見い出した。さらに現段階ではこれら鎮痛性インドールアルカロイドはモルヒネ同様オピオイドμ受容体に選択的に作用していることがわかった。これらの知見を受けて、生体内での活性が最も強い7-Hydroxymitragynineを用いオピオイド受容体結合モデルを提唱した。更に、マウスを用いたin vivoの鎮痛試験において7-Hydroxymitragynineは皮下、経口投与でモルヒネをはるかに凌ぐ活性が確認された。特に経口投与での差は顕著であり、その有用性が大いに期待できる。これらの研究成果から、コリナンテ骨格を有するミトラガイナ属アルカロイド誘導体がオピオイドレセプターのサブタイプ選択的作動薬創製のための先導化合物として高いポテンシャルを有していることが示唆された。
著者
小林 和幸 奈良岡 聰智 大石 眞 森山 優 小宮 京 原口 大輔
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、「河井弥八関係文書」を中心として帝国議会・国会関係者の資料を総合的に分析・検討しようとするものである。本年度は、下記の通り、研究を進めた。まず、「河井弥八関係文書」の調査分析ならびに河井日記の刊行であるが、本年度は、河井日記中の昭和30年から32年について、翻刻と内容分析を行い『河井弥八日記 戦後篇4』を刊行した。また、河井日記の内、未刊行の明治、大正期の河井が貴族院書記官を務めた時期の日記についても翻刻作業を行った。なお、河井日記の昭和16年分についても研究分担者の森山優にグループが中心となって静岡県立大学の「Working Paper Series」により翻刻公開を行った。次に、「河井弥八関係文書」をより総合的立体的に分析するため、議会官僚や政治家の個人資料の調査・分析を行った。これでは、河井の女婿で、戦前の内務官僚で戦後衆議院議員を務めた舘林三喜男の日記の一部について、舘林家所蔵史料を複製収集した。さらに帝国議会貴族院関係では、貴族院議員多額納税者関係資料について長野県選出の「山田荘左衛門関係文書」につき調査し、初期の貴族院の政治会派に関する研究を進めた。また研究分担者の原口大輔は、河井弥八日記を利用した貴族院議長に関する研究書を刊行した。そのほか、研究分担者・協力者は、議会史に関する研究を進めている。なお、研究分担者間での連携を深めるために、2018年9月青山学院大学において研究会を行い、貴族院事務局に勤務し初代の参議院事務総長を務めた小林次郎の史料に関して、研究協力者の今津敏晃からの報告を聴取し知見を深めるなどの研究活動を進めた。さらに年度末の2019年3月には、静岡県掛川市の河井弥八記念館にて公開講演会と意見交換会を行い、河井弥八研究の進展を図った。
著者
古澤 拓郎 石田 貴文 塚原 高広 ピタカカ フリーダ ガブリエル スペンサー
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

海面上昇は各地で生活や生業に影響を及ぼしていた。ソロモン諸島の技術的・財政的事情により、調査期間内に移住計画が実行に移されることはなかったために、移住された後にどのような影響がでるかまでを明らかにすることはできなかった。一方、移住計画がなく、隔絶された地域で、人口過密、海面上昇、資源不足などを抱える社会ではメンタルヘルスの問題を抱えていることが明らかになった。都市部での生活習慣病リスクを抑えるととももに、このような地域でのメンタルヘルスを解消することも今後の公衆衛生上の課題である。そして海面上昇対策においては、これらの健康問題を解消する適応策が立案される必要がある。
著者
前橋 健二 久保田 紀久枝
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

味と香りの複合刺激並びに単一物質の複雑味の分子機構を明らかにするために、香気物質が味覚受容体の味応答に及ぼす影響、並びに単一味物質による複数味覚受容体への作用を調べた。官能評価によってカルダモン香気成分は匂閾値以下の濃度で茶カテキンEGCgの苦味を有意に抑制した。さらに、HEK293細胞を用いたセルベースアッセイにおいて、カルダモンの香気成分存在下ではEGCgに対する苦味受容体T2R14発現細胞の応答が抑制されることが示された。また、セルベースアッセイによって、清酒の甘味成分であるα-エチルグルコシドが甘味受容体T1R2-T1R3だけでなく各種苦味受容体も活性化することが見いだされた。
著者
谷川 建司 小川 順子 小川 翔太 ワダ・マルシアーノ ミツヨ 須川 まり 近藤 和都 西村 大志 板倉 史明 長門 洋平 木村 智哉 久保 豊 木下 千花 小川 佐和子 北浦 寛之
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本映画史上最大の構造的転換期・構造的変革期をなす1960年代末~70年代を対象とし、その社会経済的実態を次に掲げる問題群の解明を通して明らかにし、その歴史的位相を確定する。即ち、①スタジオ・システムの衰退・崩壊の内実とその産業史的意味、②大量宣伝・大量動員手法を確立した角川映画の勃興、③映画各社が試みた経営合理化と新たな作品路線の模索、④「ピンク映画」の隆盛の実態とその影響、⑤異業種からの映画産業界への人材流入の拡大とそのインパクト、である。上記の五つの括りに因んだ映画関係者をインタビュイーとして抽出し、研究会一回につき1名をゲストとして招聘し、精度の高いヒアリングを実施する。
著者
宇野 重規 谷澤 正嗣 森川 輝一 片山 文雄 石川 敬史 乙部 延剛 小田川 大典 仁井田 崇 前川 真行 山岡 龍一 井上 弘貴 小野田 喜美雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

研究の二年目にあたる平成30年度は定例の研究会を続け、通史的な視点の確立と全体的枠組みの決定を目指した。その目的は、共和主義、立憲主義、リベラリズムを貫く座標軸を見定めることにあった。この目的に向けて、まずは18世紀における共和主義と立憲主義の関係について集中的に検討を行った。その成果は、社会思想史学会において分科会「アメリカ政治思想史研究の最前線」を企画し、石川敬史が「初期アメリカ共和国における主権問題」報告することにつながった。この報告は主権論に即して、初期アメリカにおける思想対立をヨーロッパの思想との連続性において捉えるものであった。第二にプラグマティズムとリベラリズムの関係についても考察を進めた。具体的には研究会を開催し、研究代表者である宇野重規が「プラグマティズムは反知性主義か」と題して報告を行なった。これはプラグマティズムをアメリカ思想史を貫く反知性主義との関係において考察するものであり、プラグマティズムの20世紀的展開を検討することにもつながった。さらに小田川大典が「アメリカ政治思想史における反知性主義」と題して報告を行い、アメリカ思想史の文脈における反知性主義について包括的に検討した。さらに上記の社会思想史学会においては、谷澤正嗣が「A・J・シモンズの哲学的アナーキズム」と題して報告を行っている。これは現代アメリカのリベラリズム研究におけるポイントの一つである政治的責務論において重要な役割を果たしたシモンズの研究を再検討するものである。人はなぜ自らの政治的共同体に対して責務を負うのか。この問題を哲学的に検討するシモンズの議論は、アメリカ思想におけるリベラリズムと共和主義の関係を考える上でも重要な意味を持つ。シモンズを再検討することも、本年度の課題である通史的な視点の確立に向けて大きな貢献となった。