著者
山内 和也 山藤 正敏 吉田 豊 城倉 正祥 櫛原 功一 久米 正吾 中村 俊夫 増渕 麻里耶
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の目的は、シルクロードの交易拠点都市の成立と展開の実態を明らかにすることである。そのために、中央アジアのキルギス共和国北部に位置するアク・ベシム(スイヤブ)遺跡において発掘調査を実施し、考古学的な研究を行った。発掘調査によって都市のプランや構造を明らかにするとともに、周辺地域の調査によって、都市の成立と繁栄に不可欠な水利システムの存在を解明することができた。こうした成果によって、シルクロード沿いの拠点となる交易都市の成立と展開、そして同都市が位置する地域の発展過程について考察することができた。
著者
北垣 徹 山根 明弘 中馬 充子 川上 具美 田中 友佳子 K.J Schaffner
出版者
西南学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2017年5月に西南学院大学にて研究会議を開催し、研究代表者である北垣徹が司会を務め、先ず自身が、「労働する生-優生学の政治的無意識」と題する報告を行い、その後、研究分担者、連携研究者、及び、研究協力者が各自の研究計画を発表した。7月には西南学院大学生命倫理研究会分科会「生命倫理の学際的研究」を西南学院大学にて開催し、『日本が優生社会になるまで』(勁草書房, 2015)の著者である横山尊を招聘し、「拙著『日本社会が優生社会になるまで』が生命倫理の学際的研究に為しうることー相模原障害者殺傷事件から1年を踏まえて」と題する講演を行って頂き、研究分担者である中馬充子が討論者として、書評を含みつつ、この講演に対する批評を行った。その後、横山氏と参加者達との白熱した討議が展開された。当分科会には自立生活センター久留米代表の古川克介氏も招待し、障害者の観点からこの講演に対する感想を述べて頂いた。2018年3月には、西南学院大学大学院にて公開シンポジウム「優生保護法下で何が行われたのか」を開催した。立命館大学生存学研究センターの利光惠子氏、福岡合同法律事務所弁護士の久保井摂氏をシンポジストとして招聘し、前者は「戦後日本における障害者への強制的な不妊手術をめぐって」と題する報告を、後者は「優生保護裁判と国家賠償への展望」を題する報告を行った。また、前述の横山尊氏と分科会員である、日本薬科大学元教授、波多江忠彦氏にコメンテーターを務めて頂いた。加えて、前述の中馬充子もシンポジストとして登壇し、「優生思想を支えた戦後の保健科教育」と題する報告を行った。当シンポジウムにはマス・メディアの記者も招待し、熊本日日新聞の4月8日付けの記事でこのシンポの内容が紹介された。
著者
比嘉 充 遠藤 宣隆 垣花 百合子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

REDシステムを構成するモノリシック発電セル用の新規イオン交換膜はポリビニルアルコール(PVA)系ブロック共重合体から作製し、これらの膜は膜抵抗、イオン選択性において市販膜より優れた基礎性能を示した。また市販イオン交換膜を使用した大型RED発電装置は模擬海水として0.5MNaCl、模擬河川水として0.02MNaClを使用した場合、最大出力17.8W、出力密度0.45 W/m2を示した。この時の海水および淡水の供給圧と溶液流量から算出したポンプ電力は2.76 Wとなり、これより、15.1 Wの実効出力が得られた。この結果よりRED発電システムとしては将来のエネルギー源として期待できる。
著者
三浦 則明 桑村 進 一本 潔 馬場 直志 花岡 庸一郎 高見 英樹
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

補償光学(AO)は、地球大気ゆらぎの影響による観測像の劣化を実時間で補正する技術である。本研究では、京都大学飛騨天文台の 60cmドームレス太陽望遠鏡で多目的に使用できる AOの設計を行った。また、補償が有効に働く視野を広げるためのマルチコンジュゲート補償光学系(MCAO)の開発も進めた。MCAOの光学設計には上空ゆらぎ層の高さの情報が必要である。ここでは、従来夜の観測で二重星を用いて開発されてきた SCIDAR技術を太陽観測にも適用できるように修正した。この方法を用いて、飛騨天文台の上空ゆらぎ層の高さを測定した。さらに、上空波面センサの開発し、MCAO装置を太陽観測に適用した。
著者
岡村 秀典 稲葉 穣 船山 徹 向井 佑介 菱田 哲郎 今井 晃樹 稲本 泰生 廣川 守
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

雲岡石窟の研究に関連して、480年前後に北魏王朝が造営した方山思遠寺址などの仏教寺院址とその出土遺物を調査し、北魏仏教寺院址の全体像を明らかにした。また、北魏孝文帝が481年に奉納した舎利文物が河北省定州市で発見され、そこから出土した金属器とガラス器について蛍光X線分析をふくむ考古学的・理化学的調査を実施した。その結果、仏教文化の東伝にともなって新しい青銅器やガラス器の制作技術が西から伝わったことを明らかにした
著者
宮腰 哲雄 本多 貴之 吉田 邦夫 中井 俊一
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

歴史的な琉球漆器を科学分析したところ、日本や中国に生育するウルシの木の樹液やベトナムに生育するハゼノキ の樹液が利用され、これらはぞれぞれ単独に、あるいは混合して使われていた。琉球漆器からウルシオールが検出されたものは漆膜中のSr同位体比を分析したところ中国産の漆であることが分かった。また漆器の木質材料を分析したところ多くは中国産の杉「コウヨウザン」であることが分かった。このことから琉球の漆器作りは中国や東南アジアとの交流や交易の中で行なわれていたと考える。さらに琉球漆器の制作年代や加飾法の違いなどと漆の原材料の入手の関連を研究することが重要になってきた。
著者
小野 亮
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は、マウスの皮下に作成した癌腫瘍にプラズマを照射したときに、どのような経路でマウスの癌に対する免疫が活性化しているかを調べるため、プラズマ照射した癌腫瘍の病理解析を行った。マウスの皮下に皮膚癌メラノーマB16F10細胞を注射して腫瘍を作成し、そこにナノ秒パルスストリーマ放電を照射した。その後に腫瘍を切除し、細胞染色とフローサイトメトリーを用いて解析を行った。その結果、プラズマを照射した腫瘍には、免疫の活性化を表すキラーT細胞の発現を示すCD8と呼ばれる細胞表面マーカーが多く観測された。これは、プラズマ照射によって免疫が活性化したことを表す一つの証拠となる。フローサイトメトリーを用いた病理解析は今年度開始したばかりであるが、この手法を導入したことで、プラズマ照射による抗腫瘍効果のメカニズムを解明するための手段を獲得することができた。本年度は、メラノーマ以外の種類の癌に対するプラズマの効果の有無を調べる実験も開始した。具体的には、マウスの大腸癌細胞CT26をマウスに皮下注射して、先のメラノーマと同様にナノ秒ストリーマ放電を照射する実験を行った。本年度は、CT26の腫瘍の成長度合いやプラズマ照射後の影響をおおまかに見る予備実験を行ったため、来年度から本格的な実験を開始する予定である。動物実験以外に細胞実験も行った。プラズマのどの活性種が細胞に影響するかを調べるため、我々が開発した真空紫外光法とよばれる手法で所望の活性種を生成し、これを培養した癌細胞に照射した。その結果、H2O2の培養細胞に対する効果を定量的に測定することができた。プラズマの活性種をレーザー計測する実験も行った。プラズマ医療に用いられるストリーマ放電とヘリウムプラズマジェットに対して、プラズマ医療で重要と考えられているOHラジカルの密度をレーザー誘起蛍光法で測定した。
著者
渡辺 隆行 茂田 正哉
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

プラズマ中に豊富に存在するOHラジカル,酸素ラジカル,水素ラジカルを用いた廃棄物分解システムを開発した。このシステムは直流放電にて水のみから成る熱プラズマを用いて,有機系物質を分解するシステムである。排水処理を目的としたフェノール水溶液の分解,および難水溶性物質の1-デカノールをエマルションとした分解実験を行った。これらのプロセスは1万℃のプラズマ中における分解プロセス,1千℃程度における副生成物の再合成プロセスの反応機構に分けられる。有機物は水プラズマ中で迅速に分解されるが,その中間物質としてCHラジカルとCH3ラジカルの生成を確認し,これらが副生成物発生に重要な役割を果たすと考えられる。
著者
羽藤 由美 神澤 克徳 光永 悠彦 清水 裕子 坪田 康 桝田 秀夫 永井 孝幸 ヒーリ サンドラ 竹井 智子 山本 以和子 森 真幸 内村 浩 伊藤 薫
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

学校・大学等が入試や定期考査において,それぞれのアドミッション・ポリシー,教育目標,受検環境などに応じた英語スピーキングテストを開発・実施するためのガイドライン策定を目標として,以下の(1)~(5)を完遂した。(1)京都工芸繊維大学が独自に開発し,学内で定期実施しているコンピュータ方式の英語スピーキングテストシステム(毎年約700名が受験)について,リンガフランカ(共通語)としての英語運用能力を測るテストとしての妥当性を高めるために,評定基準と採点者訓練およびオンライン採点システムを改善した。(2)上記スピーキングテストを京都工芸繊維大学の平成30年度ダビンチAO入試に導入した実績に基づき,同じ仕様のテストを学内で能力診断テストとして実施する際と入学試験の一環として運営する際の違い(公正性・公平性の担保,システムの安定性維持,リスクマネージメント,情報セキュリティーのレベル等の違い)や,入試利用の際のこれらの点に関する留意点を明らかにした。(3)京都市立工学院高校の定期考査(「英語表現II」の1,3学期末試験)において,生徒とフィリピン在住の面接・採点者をスカイプで結ぶスピーキングテストを実施した。昨年度実施分から,テスト内容の改訂(ディベートとロールプレイの組み込み),採点基準・採点者訓練の改善,効果的なフィードバックのためのマニュアル作成を行った。(4)上記(1)~(3)の遂行状況をプロジェクトのホームページを通して広く社会に公表するとともに,実践報告や,実践を通して得たデータの分析に基づくリンガフランカとしての英語能力評価(特に,採点基準と採点方法)に関する研究成果を関連学会で発表した。(5)これまでのスピーキングテスト開発・運営の実績に基づいて,2020年度から始まる民間試験の入試利用(共通テストとしての活用)の問題点を明らかにし,関連のシンポジウムやブログ,twitterで発表した。
著者
千葉 功 山口 輝臣 長佐古 美奈子 季武 嘉也 熊本 史雄
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

「寺内正毅関係文書」については、作業の前提として必要な史料の撮影ないし画像ファイル化を平成28年度中に完了した。これら画像化ファイルした史料は、共同研究者に配布した。本研究課題の最終目標は、山口県立大学や学習院大学史料館所蔵の新出史料はもとより、従来から公開されていた国立国会図書館憲政資料室所蔵分においても、目録において通数しか記載されなかったために従来ほとんど利用されてこなかったB群の書簡群も含めて、寺内あての書簡群(通数にして約2770通)を悉皆翻刻して刊行するとともに、それをふまえて共同研究することである。ただし、書簡群の点数が膨大なため一度に全書簡を翻刻・刊行することも困難であるため、5巻本を想定して、平成29年度は第1巻として、発信者(五十音順)が青木周蔵~大久保春野の575通の翻刻を行うことにした。研究分担者にわりふりをした結果、8月には翻刻文をそろえることができた。さらに、巻末に、「寺内正毅関係文書」の伝来(寺内正毅・寿一が設立した桜圃寺内文庫から始めて)や概要、ならびに本刊行物出版の経緯を述べた解題を付したうえで、10月に科学研究費補助金の「研究成果公開促進費(学術図書)」に応募した。さらに、「寺内正毅関係文書」の翻刻作業をふまえて、6月に学習院大学で研究会を行った。寺内正毅ないし寿一の史料群に関する研究報告が4本行われ、翻刻作業を進めるうえで大きな刺激となった。「井上馨関係文書」については、井上馨宛ての書翰すべての電子式複写を完了した。また、翻刻も継続して進めているところである。
著者
湯沢 質幸 沼本 克明 小倉 肇 清水 史 二戸 麻砂彦 岡島 昭浩 佐々木 勇 肥爪 周二 蒋 垂東
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

成果の中心は次の4点にまとめられる。(1) 既に実験的に研究開発し終えた、日本漢字音データベース(大字音表)の根幹となるソフト及びデータについて、それが実用に十分耐えうるかどうかを実践形式を取り入れて検証したこと。(2)((1)を踏まえて)実用に耐えうるソフトの完成度を高めるとともに、それにのっとって日本漢字音研究における基礎中の基礎となる韻鏡データを実用に耐えうるまでに再構築し、一定の完成度に達したデータベースを作成したこと。(3) 将来における大字音表の発展・拡充を目指した基礎的な調査、研究作業を行うことができたこと。すなわち、近い将来における大字音表への複数資料の字音データ掲載を目指して一部資料について日本漢字音の整理を行えたこと。また、同様に、日本漢字音資料の発掘や調査、及び研究を行えたこと。(4) 国内外の漢字音研究者の研究の便宜を図って、実用に耐えうる『韻鏡』データを載せた日本漢字音データベースをインターネット上に公開したこと。
著者
近藤 浩代 藤野 英己 石原 昭彦
出版者
名古屋女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

糖尿病合併症は微小血管障害に起因する臓器の機能不全による. また, 微小血管において慢性炎症を引き起こし,毛細血管を退行させる. 一方, 運動による血流増加は毛細血管の退行を抑制させることができる. また, 経皮的な二酸化炭素の吸収はボーア効果による血流促進効果をもつことが報告されている. そこで本研究では二酸化炭素経皮吸収による筋毛細血管退行の予防効果を検証した.さらに超音波照射による炎症抑制や代謝促進効果についても検証する計画である.平成29年度は二酸化炭素経皮吸収による糖尿病性毛細血管退行の予防効果について検証した.慢性的な高血糖曝露は骨格筋のクエン酸シンターゼ(CS)活性の低下や毛細血管の退行を引き起こした.一方,経皮的二酸化炭素吸収は高血糖曝露によるCS活性低下や毛細血管退行を抑制し,血糖の上昇を抑制した.さらに骨格筋の代謝や血管新生に関するeNOS, PGC-1α, COX Ⅳ, VEGFタンパク質発現量を増加させ,血管新生抑制因子(TSP-1)の低下が認められた.これらの結果から経皮的二酸化炭素吸収は骨格筋の代謝や血管新生に関わる因子を増加させ,血管新生抑制因子を低下させることで高血糖曝露による骨格筋の酸化的リン酸化機能低下や毛細血管退行を抑制することが明らかとなった.また,超音波照射による効果を検証するためにC2C12筋芽細胞を使用して予備検討を実施した.C2C12筋芽細胞の超音波照射ではインテグリン/focal adhesion kinase (FAK)のリン酸化の増加が観察され,P38MAPKリン酸化が減少させ, 炎症モデルにおいてTNFaの発現を超音波照射で軽減させる効果を観察した.
著者
川合 伸幸 香田 啓貴
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒトは多くの対象に恐怖を感じるが、ある対象は進化の過程で獲得された結果、生得的に恐怖を引き起こすと考えられている。たとえば、高所やヘビがその代表とされる。従来の理論では、ヘビとクモが進化的に脅威を与える対象であるとされていたが、より近年の理論はヒトや霊長類の大脳はヘビを検出するために視覚システムを大きくしたと仮定する。そのことを実験室で育ち、ヘビを見たことがないサルと、ヒトを対象とした行動および脳波の実験で検証した。どの実験でも、ヒトやサルはヘビに強く注意を向けることが示されたがクモには注意を惹き付けられないことが明らかとなり、ヘビだけがヒトや霊長類の生得的な脅威の対象であることを証明した。
著者
沢田 康次 岡部 洋一 佐藤 俊輔 石川 眞澄 矢野 雅文 津田 一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は平成10年度発足の重点領域研究「脳型計算論と脳型計算システムの設計」準備の調査、企画のための研究である。総括班予定者による会議を3回(仙台1回、東京1回、大阪1回)と班員全員の研究会を1回(仙台)行った。会議においては脳化学の工学的手法とその組織づくりを討論すると共に前年度提出(平成9年度発足希望)の重点領域の申請がヒアリングまで審査に進んだが、採択まで至らなかった理由について徹底的に検討、平成10年発足の申請書にその内容を反映させた。その内容は以下の通りである。1)「脳を知る研究」と「脳を創る研究」を混在させないで本重点領域研究においては工学的観点から後者を強調する。即ち、工学的研究である「脳を創る」研究は脳の機能を参考にするが脳と一致する必要はない。逆に工学的研究においては目的を明確にする必要があり、脳型計算機は入力と出力を明確にし、叉その計算機の性能達成目標を明記すること。2)人工知能との関連と区分けを明確にする、。即ち、人工知能はプログラムによってトップダウン的に記号処理するが、脳型計算機はプログラムを用いることなくミクロな神経細胞の活動をベースにその柔軟性と超並列動作によって所望の機能を実現する。3)本研究を現時点で推進する必要性と本研究におけるプレイクスルーを明確にする。即ち、イメージング技術の発達による脳のアーキテクチャの解明が大きく進んだこと、脳計算論のために非線形力学が急速な進歩を見ていること、及び超微細電子技術と集積化技術が進歩し計算機実装の可能性が増大したことが挙げられる。
著者
吉田 正章 佐々木 武 岩崎 克則 三町 勝久 松本 圭司 趙 康治 花村 昌樹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

超幾何関数に関する以下の結果を得た。1)塩山積分に付随する捻表・裏路地群の交叉数を算出し塩山関数に新たな組み合わせ幾何的意味を発見した。またこの結果を共形場理論に応用し、共鳴する場合も調べた;これは単なる定理の改良でなく、応用上の要求に答えるためであった。2)共変関数論を創設した。河童関数を発見;従来保型関数・形式は第一種狐群のみを対象としてきたが、ここに第二種でも面白い物が(身近に)あることを例によって示した。従来の超幾何多項式とは異なる、3つの整数で径数付けられる新しい超幾何多項式系を発見。3)楕円芋蔓関数の乱舞だ関数の新しい無限積表示を発見(手多のそれとは全く異なる)。4)超幾何的黒三角形の内角が一般のときにその形を調べた。被覆面の表示法を工夫した。5)白頭絡補空間に入る又曲構造を又曲空間上の保形関数を構成して具体的表示に成功。6)超幾何的測多価群が一寸来群のとき堆肥村空間と係数空間の関係を調べた。7)超幾何的黒写像研究は百年以上続いてい、前世紀は高次元化がなされたが、ここに新たにより自然な的を持つ又曲黒写像を考案して、(特異点的微分幾何的)研究を始めた。8)3次元李群の働く曲面を調べた;特にSL(2,R)が働く曲面を詳しく調べた。知恵備匠多項式の超幾何的補間から生じる李代数が3次元になる条件を求めた。
著者
伊藤 正子 下條 尚志 小田 なら
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年度はハノイ、フエ、メコンデルタで華人と明郷についての調査を行った。まずハノイでは旧市街の元華人街を中心にインタビューを実施、短期間ではあったがしつこく何度も通ったかいがあり、水面下に残る華人ネットワークをたどって、1978年の中越関係悪化時に中国に戻らず、ベトナムに残っている人たちの証言を得ることができた。その結果、ベトナム人男性と結婚していた華人女性はベトナムに残ることができたが、それ以外の人々はほとんど残ることができず、ほぼ中国へ渡っていることがわかった。中部・南部からも難民となってベトナムから脱出した中国系住民は多いが、ハノイほど徹底して追い出されてはおらず、政治都市ハノイの厳格さと、北部から華人人口の大部分が出国したとされていた通説を確認することにもなった。さらに以前の教育状況や今は政府に接収されてしまっている会館の活動、華僑・華人大量出国の前後の状況など歴史を具体的に明らかにできた。ハノイに残った華人についての調査はこれまでないので貴重な資料を収集できたと言える。通常外部者は入れない、接収され小学校にされている元広東会館の建物内部も見ることができ幸運にも恵まれた。12月にはハノイ大のチン教授と分担者とともに、フエでインタビュー調査、フエ大学で華人に詳しい研究者と交流し文献資料収集を行った。フエは観光客で賑わうホイアンと同様、華人会館などの施設が揃っているにも関わらず、全く観光開発されていない。ホイアンやホーチミン市に比べ華人社会が衰退しつつあり、観光開発に関わるような人材も少ないことがわかった。行政側もフエには王宮関係の施設がたくさんあるために、ベトナム的でない華人施設に注目する必要がないと捉えているようだ。また阮朝に高官として仕えていた明郷の子孫が残っているのも古都の特徴で、抽象的にしか言われていない明郷のかつての活躍ぶりを具体的に明らかにできた。
著者
小野 悦郎 大竹 正剛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アフリカ豚コレラ(ASF)や豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、多様な抗原性を示すウイルスによる感染症であり、有効なワクチンの開発は極めて困難である。本研究課題では、そのような感染症の新たな制圧方法として、遺伝子改変技術によるAFSおよびPRRS抵抗性ブタの開発を目的に、先ず、CRISPR/Cas9システムを利用して、両ウイルスのレセプター分子であるCD163を本来のスカベンジャー機能は保存し、レセプター機能を削除するゲノム編集により両ウイルスに対する感染抵抗性を付与した細胞株を樹立する。次に、ゲノム編集細胞の核移植による体細胞クローン技術により、ASFおよびPRRS抵抗性MMPを作製することを目的とする。平成29年度は、以下のような成果が得られた。1. ゲノム編集マイクロミニピッグ(MMP)胎仔線維芽細胞(PEF)株の樹立にピューロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドを使用するとプラスミド配列のブタゲノムへの導入が起こり、体細胞クローンを作製するに当たり、予期せぬ副作用が生まれる可能性があったので、プラスミドに変えて、sgRNA、Cas9蛋白およびピューロマイシン抵抗性DNA断片を使用する方法を確立した。2. 1の方法により、抗ウイルス作用が期待される可溶型CD163を発現するゲノム編集MMP PEF株を樹立した。3. PRRSウイルスに対するレセプター活性を有するCD163の5番目のScavenger receptor cysteine-rich (SRCR5)ドメイン内のレセプター活性に重要と考えられるアミノ酸に点変異を導入するためのプラスミドおよびゲノム編集用sgRNAを構築した。4. MMPのPEFのiPS細胞への誘導では、ES細胞様の形態を有する細胞を樹立したが、初期化因子としては、Oct-4AおよびSox2の発現を確認するに留まっている。
著者
安藤 仁介 位田 隆一 西井 正弘 杉原 高嶺
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、冷戦構造崩壊後の国際秩序の再編と安定の時代における国際連合の機能変化と役割について、全体的に分析検討することを目的とした。安藤は、設立後50周年を迎えた国連の活動の全般的な再検討を行った上で、日本との関係にも目を配りつつ、人権分野を中心に研究を進めた。とくに人権の実効的保護に視点をおいて、B規約人権委員会で実践する傍ら、人権条約に対する保留の問題を検討し、また国際人権規約全般についてまとめた作業を発表した。杉原は、同じく国連50年をふりかえりつつ、紛争解決の分野、とくに国際司法裁判所の機能について、個別の判例研究をつづけ、また政治的紛争の司法的解決可能性について理論的検討を加えた他、最終年度に国際司法裁判制度全般について研究を集大成することができた。西井は、これまでの国際環境問題の展開を跡付けつつ、国際環境法の発展をたどるかたちで国連のこの分野での活動を捉らえようとしてきた。特に、単に自然環境のみでなく社会環境の視点で人権を捉えて、国際機構による人権保障制度の枠組みを検討した。位田は、一方で、リオ宣言や平和維持、開発協力、人権、海洋法などの諸分野を見渡して、国連の持つ国際法形成機構に着目して理論的研究を進め、他方で、国際機構による発展途上国問題の解決に焦点をあてて、資源国有化紛争の実効的解決や地域協力システムにおける持続的発展を検討した。本研究計画の全体のまとめとして統合した研究成果をまとめて発表するにはまだ至っていないが、安藤を中心とする研究体制は継続しており、機会を捉えて近い将来に総合的に21世紀の国連の役割を示唆できるであろう。
著者
山本 まゆみ 倉沢 愛子 Horton William.B 高地 薫 山崎 功 後藤 乾一 スリョメンゴロ ジャファール
出版者
宮城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

歴史研究では、政治体制の変化で時間軸を「分断」する傾向があり、インドネシア近現代史では、第2次世界大戦で歴史の流れを「分断」する研究が通例となっている。だが、人脈や教育、社会活動という点から通観すると、スカルノと日本軍政監部の関係、インドネシア国軍やPETAの軍事教練、そして現在も存続する「隣組」のように、「分断」ではなく「連続性」や「継続性」を見出せる。本研究は、日本占領期を、独立後のインドネシアの播種期と捉え、占領期の軍の人脈、教育、文化・社会活動が、戦後社会に与えた影響を検証することを目的とする。本研究は、研究の国際貢献を念頭に、占領期研究の多言語史料や研究成果を英語で発表する。
著者
道上 正規 清水 正喜 矢島 啓 檜谷 治 白木 渡 宮本 邦明
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

わが国では、現在では2000を越えるダムが存在しており、地盤条件あるいは降雨条件の厳しいわが国では、地震あるいは豪雨によって貯水池周辺で大きな崩壊が生じる確率は無視できず、崩壊土が貯水池に流入する可能性は低くない。多量の崩壊土が貯水池内に流入すると、イタリアのバイオントダムのように巨大な波が発生し、大災害を引き起こしかねない。このような災害は、大崩壊の発生確率とともに、貯水池数に依存しており、わが国でのその発生確率は年々高くなっていると考えられ、貯水池の流域管理が重要な課題である。そこで、本研究は、このような貯水池内での大崩壊にともなう段波形成について検討することを目的としたものであり、具体的には1)災害事例(特に眉山災害)に関する研究2)土砂崩壊の予測法に関する研究3)崩壊土砂の運動特性に関する数値解析的研究4)崩壊土塊の水域流入に伴う段波の形成と伝播遡上特性に関する数値解析的研究を実施するとともに、最終的に上記の研究を総合し、200年前島原で発生した眉山の大崩壊に伴う災害の数値シミュレーションを試み、大崩壊に伴う段波災害をある程度予測することが可能であることを実証した。