著者
中村 將 北野 健 野津 了 加賀谷 玲夢
出版者
一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

高水温飼育により不妊化したナイルティラピアの性行動を調べた。30日齢の幼魚を高水温飼育(37℃,50日間)した後25カ月齢まで飼育し供試魚とした。高水温飼育オス3尾と正常なメス5尾を一群として大型水槽に入れ、5日にわたって性行動を観察した。その結果、同じ実験を8回行なったうち6回で繁殖行動が観察された。正常オスを用いた対照実験においても同様な結果が得られた。実験に用いた高水温飼育した全てのオスの精巣は透明色で、組織学的な観察においても精子は認められなかった。以上のことから、高水温飼育オスは、処理後少なくとも25カ月にわたって不妊化が維持され、メスに対して正常な性行動を行なうことが明らかとなった。高水温飼育により不妊化したモザンビークティラピアのメスの長期飼育による生殖特性について調べた。ふ化後10日の幼魚を高水温飼育(37℃、56日間)した後約21カ月齢まで成長させた。高水温飼育メスは婚姻色を示さず、泌尿生殖突起も未発達で外見的に明らかに正常成熟メスと異なっていた。卵巣は著しく小さく糸状で卵は確認出来なかった。組織観察でも生殖細胞は全くみとめられなかったが、卵巣の特徴である卵巣腔が認められた。ステロイド代謝酵素の抗体による免疫染色では強い陽性反応を示す少数の細胞が確認された。血中の性ホルモンも正常成熟メスと比べても著しく低かった。このことから、不妊化メスはオスと異なり長期に渡り性的成熟が起こらないことが明らかとなった。メダカの生殖細胞増殖におけるHSPの役割を明らかにするため、hsp70.1過剰発現メダカ系統を作製して生殖細胞の増殖状況を調べた。その結果、孵化時期におけるこの系統の生殖細胞数は、野生型個体と比較して、雌雄ともに有意差は認められなかった。
著者
大場 真 戸川 卓哉 藤井 実 安田 肇 中村 省吾 村上 高広
出版者
国立研究開発法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本課題にて設定した以下サブテーマ(1)-(5)について、以下のような研究を実施した。(1)福島県三島町との連携研究を推進し、三島町内の住宅における地域ICTシステムの導入数を10件追加して17件とし、家庭における時間別のエネルギー消費量や太陽光パネルによる発電量等に関する基礎的データを取得した。(2)統合木質バイオマス利用モデルBaIMにおける、木質バイオマスコストにかかるパラメーターの検討を行った。(5)と関連して素材収集範囲や林業機械に対する習熟度などの新しい変数に関する検討を行った。(3)研究分担者らがこれまで開発してきたバイオマスガス化実験施設を拡張し、ガス化に供する原料の水分調整を実施した場合や未利用材の利用がガス化反応挙動に与える影響を明らかにする研究を継続した。(4)これまで開発した地域特性に応じた分散型エネルギーシステム設計プロセスのモデルのフレームワークによって、中山間地域での評価が可能な木質バイオマス資源に関連するシステムの拡張に引き続き着手した。地域ICTシステムで得られたデータも活用し、町内18集落におけるエネルギーの利用状況や望ましい地域エネルギーシステムに関する分析をとりまとめた「集落カルテ」のプロトタイプを検討した。(5)地域の木質バイオマス資源の利用促進が地域の産業連関構造に与える影響を定量的に計測するため、関連する統計資料を収集した。また、町が実施した山形県内を対象とした視察に同行し、木の駅や森林組合等の先進的な事例の現地調査を行った。森林組合には事後調査も実施し、三島町の森林を利活用した地域循環システムの構築に向けた基礎情報を収集した。三島町の産業連関表の精度を高めるとともに、奥会津地域における広域的な木質バイオマス資源の利用促進が地域循環・経済圏へ与える波及効果の検討を行った。
著者
庄司 洋子 菅沼 隆 河野 哲也 河東田 博 野呂 芳明 湯澤 直美 田中 聡一郎 百瀬 優 深田 耕一郎 酒本 知美
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「自立とソーシャルワークの学際的研究」と題し、自立についての規範的意味とソーシャルワークという実践との関連を包括的に検討した。その中で、社会福祉の領域で、中心的な議論であった経済的自立だけではなく、様々なフィールドで展開されている社会的な自立とソーシャルワークの重要性について明らかにした。
著者
中村 亮介 岡本 美孝 秋山 晴代 岡本 好海
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アレルゲン舌下免疫療法(SLIT)は、スギ花粉症等のアレルギー疾患の根治が期待できる非常に有望な治療法であるが、治療が長期に渡る一方、必ずしも全例が奏効するとは限らないことが問題となっている。そこで本研究では、SLITのメカニズムの解明に取り組むとともに、患者血清中からSLITによる治療の奏効性を早期に予測するバイオマーカーを探索することを目的としている。申請者は近年、培養細胞を用いる独自のアレルギー試験法「EXiLE法」を開発した。この手法は、特異的アレルゲンに対する血清中IgEの架橋活性だけでなく、血清中の中和活性を評価することも可能である。そこで今年度では、2シーズン以上に渡ってスギ花粉症のSLITを実施した患者38名における、血清中特異的IgE抗体価、血清中IgEによるEXiLE応答性および中和活性を経時的に評価し、患者の治療スコア(TNSMS)と比較することで、SLITの奏効性と相関するバイオマーカーを探索した。その結果、SLIT実施患者の血清中中和活性は治療開始2シーズン後に顕著に増加した。TNSMSの差(ΔTNSMS)をSLITの奏効性と定義すると、治療開始前のEXiLE応答性及びスギ花粉特異的IgE抗体価で患者群を層別化したときに、奏効性はカットオフの上下群間で有意に異なることが分かった。カットオフはそれぞれ2.0倍と10 UA/mLで、P値はそれぞれ0.00048と0.0021であった。この結果は、SLIT開始時の特異的IgE抗体価およびその架橋能はSLIT奏効性を予測するよいバイオマーカー候補であることを示唆している。症状発現へのIgEの寄与率が低い症例ほどSLITが効きにくい、というメカニズムが想定される。
著者
渋谷 和子 岩間 厚志
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

最近の研究により関節リウマチにおいて、Th1細胞とTh2細胞の不均衡が病態に密接に関与していることが明らかになってきた。Th1細胞とTh2細胞はともに同一のCD4陽性ナイーブT細胞から分化するため、Th1/Th2分化メカニズムの解明とその人為的制御法の検討は、関節リウマチの新しい治療法開発への基礎となる。CD4陽性ナイーブT細胞からTh1もしくはTh2細胞への分化の開始には、CD4陽性ナイーブT細胞が抗原提示細胞から抗原刺激を受けることが必須である。私達は、この時ナイーブT細胞と抗原提示細胞が接着することに着目し、ナイーブT細胞上に発現する接着分子からのシグナルとTh1/Th2分化との関係について検討した。その結果、私達はナイーブT細胞上に発現する接着分子LFA-1からの刺激によってTh1細胞が分化誘導されることを見いだした。これは、IL-12非依存性の新しいTh1分化誘導経路であった。以前に、私達はCD226分子がT細胞上のLFA-1と複合体を形成すること、LFA-1からの刺激でCD226の細胞内チロシンがリン酸化することを報告した。そこで、今回私達は野生型および細胞内チロシンをフェニルアラニンに置換した変異型CD226をレンチウイルスベクターにてナイーブT細胞に遺伝子導入し、LFA-1によるTh1分化誘導を検討した。その結果、変異型CD226を導入したナイーブT細胞では、LFA-1シグナルによるTh1分化誘導が著しく抑制された。このことより、LFA-1によるIL-12非依存性の新しいTh1分化誘導シグナル経路にCD226が重要な役割を担っていることが明らかになった。これらの結果をふまえて今後は、LFA-1/CD226複合体シグナルと生体内Th1/Th2バランス、関節リウマチ病態の関係を、疾患モデルマウスを用いて個体レベルで検討していく方針である。
著者
米原 謙 赤澤 史朗 出原 政雄 金 鳳珍 區 建英 松田 宏一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、近代日本のナショナル・アイデンティティの歴史的形成と変容を、中国や韓国と関連づけて、政治思想史の観点から明らかにしようとしたものである。この三国は、ともに「欧米の衝撃」によって国民国家形成の課題に直面したが、日本だけがいち早く欧米の政治文化を受容し、1890年には立憲政度を導入した。植民地となった韓国や、侵略と内戦によって国家統一に時間を要した中国に比べると、日本は順調に国民国家形成に成功したといえる。しかし日本の立憲主義は、「国体論」という一種の「市民宗教」(ルソー)とセットだったので、1930年代に国体論による立憲主義への逆襲が起こった。つまり政治思想や政策過程の内面まで立ち入ると、近代日本の政治は常に興亜論(アジア主義)-脱亜論、伝統-近代の間を動揺したことがわかる。こうした分裂の構造を、一方ではナショナル・アイデンティティという分析ツールを使うことで、他方では中国や韓国との構造的連関によって明らかにするのが、本共同研究の目的意識である。C・テイラーによれば、アイデンティティの形成は常に「重要な他者」を媒介にしている。近代日本にとって「重要な他者」はまず欧米だったが、中国や韓国は、日本にとって近代化のための反面教師であるとともに、ナショナル・アイデンティティの根拠となる「重要な他者」でもあった。本共同研究の参加者は、国体論・アジア主義・国粋主義・ナショナリズムなどを切り口にして、こうした問題にアプローチした。
著者
石川 真志 八田 博志 笠野 英行 小笠原 永久 山田 浩之 宇都宮 真
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は赤外線サーモグラフィを用いた大型の構造物の効率的な非破壊検査手法の開発を目標として検討を行った。実験の結果、アクティブサーモグラフィ検査時の加熱方法としてレーザー走査加熱を利用することで、10 m遠方に位置する対象物であっても内部の欠陥検出が可能であることが確認された。また、温度データへのフーリエ変換により得られる位相画像を利用することで、欠陥検出が容易となること、および高周波数の位相画像に注目して検査を行うことで検査時間の短縮が可能であることも確認された。これらの技術を組み合わせることで、高効率かつ高精度な検査の実現が期待される。
著者
海老原 清 岸田 太郎
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レジスタントスターチ・タイプ4(RS4)とは加工デンプンのことであり、各種の加工食品に利用されている。本研究では、RS4の消化性、発酵性、血糖およびインスリン応答、糖尿病発症抑制効果、消化管免疫に対する影響ついて検討した。その結果、置換基の付加により、1) RS4の消化性は低下し、発酵性血糖値およびインスリン分泌応答は改善され、その効果は置換基の種類および置換度によって影響された、2) RS4は2型糖尿病モデルマウスにおいて発症を抑制した、3) RS4はIgAの分泌を促進したことなどを明らかになった。本研究からRS4は糖代謝、消化管免疫機能に影響を与えるとともに、低エネルギー食品の開発に有用な素材であることも明確になった。
著者
西村 智貴
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

従来の薬物輸送システム(DDS)は、「薬」を運搬体に内包させ、がんなどの疾患部位へと送達する。しかし、運搬体からの薬の漏出に伴う副作用と薬効低下が問題となっており、安全かつ治療効果の高い、新しい医療戦略が求められている。このような背景のもと、本研究では、抗がん剤ざどの薬を必要とせず、がん局所で薬を合成する好中球類似のナノデバイスを創製し、従来型のDDSの課題を黒風した治療システムの構築を目的とした。本年度は、がん周囲のpHで親水化するポリマーの合成及び先行研究の糖鎖ポリマーとの混合により、がん局所でとう可能が更新するベシクルの構築を行った。先行研究で開発したベシクルは、イオン性親水性分子の透過が遅いため、酵素反応が遅い。そこで、がん周囲の環境でプロトン化し、親水化するポリマーを用いて透過性の亢進を試みた。そのために、弱酸性領域にpKaを持つDiisopropyle amineからなるポリマーを銅触媒リビングラジカル重合により合成し、糖鎖セグメントとのカップリングを行った。得られたポリマーは、弱酸性領域にpKaを持ち、そのpKa以下でポリマーの親水化することが判明した。このポリマーと先行研究で得られた糖鎖ポリマーを混合することにより、ハイブリッドベシクルを形成することを電子顕微鏡観察ならびに放射光小角散乱測定より確認した。
著者
山中 宏二 小峯 起 高橋 英機 三澤 日出巳 内匠 透 錫村 明生 竹内 英之 高橋 良輔 山下 博史 遠藤 史人 渡邊 征爾
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルマウスを用いて、グリア細胞の一種であるアストロサイトの異常に着目して研究を行った。ALS患者・マウスのアストロサイトでは、サイトカインTGF-β1が異常に増加し、グリア細胞による神経保護環境を阻害することにより、病態を加速していることが判明した。TGF-β1の阻害剤投与により、ALSマウスの生存期間が延長したことから、TGF-β1はALSの治療標的として有望であると考えられた。また、ALSマウスの病巣では異常に活性化したアストロサイトが見られ、その除去機構として、自然免疫分子であるTRIFが関与するアポトーシスが関与していることを見出した。
著者
石黒 直隆 岩佐 光啓 佐々木 基樹 本郷 一美 遠藤 秀紀 茂原 信生
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本海外学術調査は、ベトナムの野生イノシシと家畜ブタに関して形態的計測と遺伝学的解析により、東アジアに広く分布する野生イノシシや東アジアの家畜ブタの遺伝的な源流はベトナムにあることを検証することを目的として行った。平成14年〜16年の3年間にわたり、ベトナムの北部、北西部、中部の山岳地帯に生息する野生イノシシとベトナムの山岳少数民族にて長年飼育されているベトナム在来ブタについて調査を行った。形態的計測は、主に各部落の農家に保管されている骨や博物館等に保管されている骨について行い、遺伝学的解析は、骨から採取した骨粉のほかに、現生動物に関しては、毛根や肉片などからDNAを分離してミトコンドリアDNA(mtDNA)の多型解析により系統解析を行った。3年間でベトナム各地にて調査収集したサンプルは248検体であり、それを遺伝的に解析し以下の成果を得た。1)本海外学術調査のきっかけとなったリュウキュウイノシシの起源がベトナムであると言う仮説は、本調査により現在もベトナムにはリュウキュウイノシシと遺伝的に近い野生イノシシが生息していることが証明されたことから、上記仮説を遺伝的に検証した。2)ベトナムに生息する野生イノシシとベトナム各地で飼育されている在来ブタは遺伝的に極めて多型に富んでおり、東アジアの家畜ブタの基層を形成する遺伝子集団であることが証明された。3)ベトナムには粗食に耐えうる在来ブタから形態的に小さいミニブタまで広く飼育されていることから、東アジアのイノシシ属の起源にふさわしい遺伝子資源をベトナムの在来ブタは有していることが証明された。上記成果の一部は英文誌にすでに公表されており、平成15〜16年度に得られた成果については現在投稿準備中である。
著者
櫻井 庸司
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究において,カルシウムイオン電池用材料候補として数多くの1D,2D,3D構造化合物を合成・評価した。これら材料の物理化学特性ならびに電気化学特性評価により,Ca0.5CoO2およびNiFe-PBAはともに,Ca2+イオンの挿入・脱離反応を伴って充放電可能であることが初めて明らかとなり,カルシウムイオン電池用正極材料として有望であることがわかった。
著者
天野 英晴 並木 美太郎 中村 宏 宇佐美 公良 近藤 正章 鯉渕 道紘 黒田 忠広
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

誘導結合チップ間無線インタフェース(Through Chip Interface:TCI)を用いて小規模なチップを多数結合し、多様な大規模システムを構築する「ビルディングブロック型計算システム」のチップブリッジを用いたシステム統合方式について研究する。既に開発された複数のLSIチップを、チップ自体をブリッジとすることにより組み合わせ、様々な機能、性能、エネルギー要求を満足するシステム構成の構築法を確立することを目的とする。具体的には、安価なボンディングを用いて多数のチップを組み合わせる積層手法、ソフトウェアからアナログ技術までを駆使して性能、電力をチューニングする手法、チップ内のスイッチとアクセラレータを統合する機構について研究する。2018年度は、TCIを用いたIP(Intellectual Property)の動作検証と、実チップテストを行うためのTCITesterチップを開発した。このチップは、ルネサスエレクトロニクス社65nmプロセスを利用して、3mm X 3mmのサイズで実装した。TCIを装備する様々なチップの上に装着し、その電気的特性を計測し、連続運転試験を行うことができる。他のチップ上に積層するのに先立ち、開発したTCI Tester同士を積層し、TCI IPの転送可能周波数、電源ドロップを計測し、TCI IPを組み込む場合の指針を得た。また、TCI IPを装備したKVSチップ、SNACCチップ、CCSOTBチップそれぞれの単体性能を実チップで計測した。また、積層を行った場合の発熱の時間経過を計測するTHERMO2の積層を行った。様々なチップ積層の可能性を探るため、熱解析ツールの改良を行った。
著者
平石 界 池田 功毅 中西 大輔 横田 晋大
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2017年度は、「評価的条件付けによる風評被害の導出」実験、「確率見積りバイアスの検討」実験を進めつつ、本研究プロジェクトの基盤となった前プロジェクトによって収集したWeb調査データに継続させる形で本プロジェクトで収集したWeb調査データを合わせた分析を行った。「評価的条件付けによる風評被害の導出」実験については、分担研究者の池田(学振/中京大学)のもと、ネガティブな評価条件づけと脳波測定を組み合わせた実験のセッティングを進めた。「確率見積りバイアスの検討」実験について、前年度に作成した実験プログラムを用いて、クラウドソーシングを用いて一般サンプルからのデータ収集の予備実験を行った。大学生を対象とした実験室実験の場合と異なり、クラウドソーシングならではの問題点が浮かび上がる一方、より優れた実験デザインでの実施が可能となることが示されたため、実験プログラムのアップデートを進めた。2013年度より継続して、福島第一原発事故に関連して、放射能リスク認知にかんするWeb調査を行ってきた。2014年3月以来、2017年2月まで。放射能を含む様々な種類のリスク認知にかんして、同一サンプルからの、福島第一原発事故の3年後、4年後、6年後の継続データを取得してきたが、6年を経てもなお放射能へのリスク認知にほとんど変化は生じていないことが示された(池田・平石・中西・横田, 2017)。この知見の頑健さを確認するために、異なるサンプルに対して同一項目のWeb調査を2018年3月に実施した。一方、放射能リスク認知への科学リテラシーの影響については、3度のWeb調査を経て、一貫してリテラシーの高さが偏ったリスク認知を低減させないという結果が得られている(中西・横田・井川, 2017)。本知見については論文を投稿中である。
著者
渡辺 浩司 伊達 立晶 田之頭 一知 森谷 宇一 戸高 和弘 菊池 あずさ 石黒 義昭 萩原 康一郎 吉田 俊一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

キケロ、クインティリアヌスといった古代ローマの弁論家は、弁論術の学的な根拠を追求するわけではなく、学的な根拠は古代ギリシアのアリストテレスによって作られた弁論術を継承している。18世紀になると弁論術の学的な根拠はバウムガルテンによって書きかえられた。現代におけるレトリック復興は、古代の弁論術を継承するものではなく、古代の弁論術への誤解と「認識がレトリカルだ」とする現代の考え方とによる。
著者
川股 知之 渡辺 雅彦 成松 英智
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

難治性がん疼痛の新たな治療法として脊髄大麻受容体(CB1)に注目しその鎮痛機序とがん疼痛治療への応用について研究を行った.CB1は脊髄興奮性介在神経の軸索終末に特異的に発現しており,神経伝達物質放出抑制よって鎮痛に作用することが示唆された.骨がん疼痛状態では脊髄μオピオイド受容体は発現低下するがCB1発現に変化なく,CB1活性化により骨がん疼痛が減弱することが明らかとなった.CB1は骨がん疼痛治療の新たな標的として期待される.
著者
坂井 昇 坂野 喜子 中島 茂 郭 泰彦 岩間 亨 吉村 紳一
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

近年、脳虚血による細胞障害にアポトーシスが関与することが報告され注目されている。そこで我々は脳虚血の病態を解明するために、低酸素刺激による神経細胞死に注目し、アポトーシス関連因子を中心として細胞内シグナル伝達機構についての解析を行ってきた。従来、低酸素や虚血による細胞死はネクローシスと考えられてきたが、近年一部の細胞死がアポトーシスであることが報告されており、我々もこれまで神経系細胞のモデルとしてラット褐色細胞腫細胞株(PC12細胞)を用いた低酸素負荷でのシグナル伝達経路の解明を行った結果、低酸素によりアポトーシスとネクローシスの両方の細胞死が誘導され、その過程でセラミド産生とカスパーゼの活性化の関与を唱えてきた。さらにその後の研究でPC12細胞に存在するPLD2が低酸素刺激によって細胞が死に向かう前段階で活性化される知見を得ており、外因性のPLDによって細胞死が抑制されたことから、PLD2が虚血性脳血管障害において今後治療のターゲットとなる可能性が示唆された。また、抗酸化剤であるグルタチオン(GSH)の前投与によりセラミド産生に重要な中性スフィンゴミエリナーゼ(SMase)活性とともにその下流のカスパーゼ3の活性化が抑制されることで細胞死が有意に抑制されることが判明し、細胞の酸化・還元のレドックス制御をしているGSHが中性SMase活性の上流で細胞死を調節していることが推測された。これは一方で神経細胞死への活性酸素(ROS)の関与も示唆しているが、活性酸素種のひとつである過酸化水素によるPC12細胞の細胞死は低酸素刺激による細胞死とはセラミド産生の有無で異なり、同じ細胞でも低酸素と過酸化ストレスに対する細胞死の誘導には異なった経路が存在することとなり、低酸素負荷による神経細胞死のROSの発生との関連も併せて、今後の重要な検討課題考えられた。
著者
梶 茂樹 品川 大輔 古閑 恭子 米田 信子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

声調声調というと、東アジア大陸部のいわゆる単音節語をイメージすることが多い。しかしながら、これらをもって声調言語一般を語るわけにはいかない。アフリカにおいては多様な声調言語の類型が現れる。例えばコンゴのテンボ語のように、単語を構成する音節(あるいはモーラ)数に従って声調のパターンが等比級数的に増える言語もあれば、タンザニアのハヤ語のように互換の音節数に従って等差級数的に増える言語もある。さらにウガンダのニョロ語のように単語の音節数に関係なくパターン数2を保持する言語もある。さらにアフリカの声調・アクセント言語において重要なことは、声調の語彙的機能にも増して文法的機能が卓越していることである。
著者
田宮 菜奈子 森山 葉子 山岡 祐衣 本澤 巳代子 高橋 秀人 阿部 智一 泉田 信行 Moody Sandra Y. 宮田 澄子 鈴木 敦子 Mayers Thomas Sandoval Felipe 伊藤 智子 関根 龍一 Medeiros Kate de 金 雪瑩 柏木 聖代 大河内 二郎 川村 顕 植嶋 大晃 野口 晴子 永田 功 内田 雅俊 Gallagher Joshua 小竹 理奈 谷口 雄大
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18

誰もが満足できる人生の幕引きができるシステム作りのための、介護医療における実証研究およびそれに基づく提言を目的とした。まず、内外のガイドライン等レビューを行い、次に、我が国における医療・介護における実態・分析として、①看取り医療の実態と予後の検証(医療の視点)を救急病院での実態やレセプト分析により、②老人保健施設における看取りの実態(介護の視点)を、介護老人保健施設における調査から実施した。実態把握から根拠を蓄積し、本人の納得のいく決定を家族を含めて支援し、その後は、適切な医療は追求しつつも生活の質を一義としたケアのあり方を議論し、工夫実行していくことが重要であると考える。