著者
長嶋 祐二 原 大介 堀内 靖雄 酒向 慎司
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本研究では、手話の単語レベル、対話レベルから、言語学的な解析や手話工学分野で利用可能な、多用途型日本手話データベースを構築するための方法論の検討、並びに、データベースの構築を目的とする。令和元年度は、前年度までのテスト撮影の結果を踏まえ以下の項目に対して検討を行い本格的な3次元動作と映像のデータの収録を行った。(1)前年度までに撮影した言語資料 1,000単語の検証作業を行い、今年度撮影の方針を検討した。その結果、3次元動作データは、カメラ系と3次元系の同期解析、並びに、CG生成を考慮して、昨年度決めたフレームレートをとした。単語の収録では、表情などの非手指動作の詳細分析を考慮して、正面映像だけだった4Kカメラを左右の両側面を追加した。(2)今年度収録する言語資料は、7月までに手話母語者の研究協力者と共同で候補単語3,800単語のプロンプタ用の映像の撮影を終了した。これと並行して、対話撮影のためのテーマ検討も行った。本格的な収録は、8月から9月にかけて東映東京スタジオで収録した。対話撮影は、8テーマのデータベース収録候補の同期撮影を実施した。単語撮影は、3,873ラベルで総動作単語数では4,965単語の収録を行った。3年間で、合計4,873ラベルで総動作数では6,359単語の収録が完了した。当初の目標の5,000単語を上回る成果が得られた。(3)アノテーション支援システムでは、昨年度までに完成したビュワーの組み込みが完了して、支援部の3次元動作分析部分に着手した。(4)対話データ処理では、追加予算を含めて3対話の3次元動作データの生成が完了し、先行した部分は終了して、追加予算の部分は現在進行している。次年度のデータ公開へ向け単語収録データの分割並びにラベルの張替え作業も進行している。
著者
藤田 昌久 石川 義孝 中川 大 文 世一 森 知也 田渕 隆俊
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2001

以下の五つの研究課題を相補的に関連させながら、理論と実証分析の両面から研究を推敲し、以下の成果を得た。(1)一般的基礎理論:空間経済学を複雑系の視点から再構築した。特に、内生的成長理論との融合として、知識外部性の影響下での生産とR&D活動の集積、イノベーションの速度、経済成長の相互連関の分析、および、知識創造・伝播に繋がるコミュニケーションの「場」の形成メカニズムの定式化を行った。企業組織論との融合としては、交通・通信技術の発展、企業のグローバルな組織展開、世界経済の空間構造の変化の相互連関を分析し、さらに、経営戦略的観点の基づく「産業クラスター理論」の空間経済学的基礎を与えた。実証面では、産業集積度や個々の経済集積の空間範囲を検出する情報量基準の開発を行った。(2)産業集積のミクロ分析:IT産業等を対象に、集積と産官学連関の実際と研究開発活動の相互連関、および、集積と地域活性化との関連について実証研究を行った。(3)都市システム:開発したモデルを用いて、与件の変化に伴う都市システムの発展過程や、輸送の規模の経済下での経済立地と輸送技術の相互連関、さらに、経済発展に伴う、都市化、出生率、所得分布や格差の推移の相互連関について分析した。また、日本の製造業について集積を検出し、都市の産業構造と人口規模の関係を明らかにした。(4)国際地域システム:開発したモデルを用いて、産業の空洞化メカニズム、輸送密度の経済の影響下での貿易パターンと国際輸送網の相互連関、および、先進・途上国間での知識・技術のスピルオーバーに基づく、国際地域システムにおける雁行形態的産業発展過程等を説明した。(5)経済立地と交通・通信システム:交通経済学との融合により、輸送技術が経済活動の空間分布に依存して決まるメカニズムを明らかにし、さらに、都市空間における次善の料金政策の効果との連関等も分析した。また、交通整備水準と地域経済との関係に関するデータベースを構築し、交通整備の社会的便益の計測、交通施設整備財源の国際比較等を行った。
著者
加藤 泰浩 岩森 光 安川 和孝 藤永 公一郎 町田 嗣樹 大田 隼一郎 野崎 達生 高谷 雄太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

本研究は、海洋底の大部分を占める遠洋性粘土をキーマテリアルとして捉え、「化学層序プローブ」を用いて網羅的に解析することで、グローバル環境変動・物質循環のダイナミクスの全容を定量的に解明する研究である。また、有用元素の循環を定量的に議論することで、資源成因の支配プロセスの全体像を解明する。そして、環境変動や資源生成を統一的な枠組みで説明可能な,真に革新的なグローバル物質循環についての統合理論の創成を目指す。
著者
鬼柳 善明 加美山 隆 古坂 道弘 宇野 彰二 持木 幸一 篠原 武尚 木野 幸一 佐藤 博隆 長谷美 宏幸 甲斐 哲也 塩田 佳徳 岩瀬 謙二 矢代 航 大竹 淑恵
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

パルス中性子源を用いたエネルギー分析型透過イメージング法の高度化と応用分野の拡大を行った。まず、解析コードを改良し、焼き入れ鉄のマルテンサイト相、日本刀や新材料の結晶組織構造情報の分布を得、硬さ分布の非破壊測定法を見いだした。さらに、CT法の開発を行った。水素貯蔵合金への適応可能性を示すとともに、小角散乱イメージング法を開発し、共鳴吸収スペクトルの定量解析を可能とした。磁気イメージング法の定量性の評価と磁性薄膜への応用、さらに、世界初のパルス中性子による位相コントラスト測定を成功させた。また、高計数率2次元検出器やカメラタイプで短時間チャンネル飛行時間測定ができる検出器の開発に成功した。
著者
金銅 誠之 江口 徹 伊藤 由佳理 伊山 修 馬 昭平 菅野 浩明 長尾 健太郎 向井 茂 島田 伊知朗 小木曽 啓示 吉川 謙一 宮本 雅彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2010-04-01

いくつかの方程式の共通零点の集まりとして定まる図形(代数多様体)の構造や対称性および図形のある種の分類(モジュライ空間)を行うことが代数幾何の大きな問題である。楕円曲線の2次元版としてK3曲面と呼ばれる代数多様体が19世紀に発見され、現在、数学および数理物理でも興味を持たれている。本研究において、K3曲面のモジュライ空間の構造の解明や、K3曲面の対称性を表す自己同型群の記述などの成果を得た。またK3曲面の対称性とマシュー群と呼ばれる有限単純群との間の不思議な関係を示唆するマシュームーンシャイン現象と呼ばれるものが関心を集めているが、この方面での研究においても成果をあげた。
著者
金銅 誠之 島田 伊知朗 小木曽 啓示 伊山 修 馬 昭平 菅野 浩明 江口 徹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

研究代表者は標数2、Artin 不変量1の超特異K3曲面を標準被覆に持つエンリケス曲面は3種類に限ること、およびそれらの具体的な構成を与えた。分担者 馬はジーゲルモジュラー多様体上の普遍アーベル多様体やそのコンパクト化上の多重標準形式とジーゲルモジュラー形式の対応を与え、久我族の小平次元の評価を得た。分担者 菅野は複素 Chern-Simons 理論の正準量子化から導かれる U(1) 同変な変形 Verlinde 代数とある種の 4 次元超共形場理論の超共形指数が定める2次元位相的場の理論の対応関係に関して研究を行った。分担者 島田は超越格子のディスクリミナントが小さい特異K3曲面上のエンリケス対合を分類し、さらに階数10の双曲的ユニモジュラー偶格子の交点形式を2倍にしたものから階数26の双曲的ユニモジュラー偶格子への埋め込みを分類した。分担者 小木曽は複素Enriques曲面の自己同型の正エントロピーの最小値を決定し、さらに素体上超越次数が正である任意の奇素数標数の代数閉体上、K3曲面と双有理な滑らかな射影代数曲面でその全自己同型群が非有限生成であるものの存在を示した。また、素体上超越次数が零である任意奇素数標数の代数閉体上では、K3曲面と双有理な滑らかな射影代数曲面の全自己同型群は常に有限生成であることも示した。近年のCohen-Macaulay表現論は、導来圏・三角圏を制御する傾理論の影響を大きく受けて発展していが、分担者 伊山は主要な研究成果に関するサーベイをICM 2018のproceedingsに執筆した。
著者
佐藤 勝彦 橋本 正章 鈴木 英之 山田 章一 長滝 重博 固武 慶 滝脇 知也 渡辺 元太郎 大西 直文 住吉 光介 藤本 信一郎 木内 健太 岩上 わかな 澤井 秀朋 安武 伸俊 西村 信哉 諏訪 雄大 中里 健一郎 長倉 洋樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では大質量星が進化の最後におこす重力崩壊型超新星及びガンマ線バーストの爆発機構・源エンジンについて世界最先端の研究を行い、多くの成果を挙げた。大規模数値シミュレーションによる研究を豊富に行い、場合によっては京コンピュータを用いた世界最高レベルの数値シミュレーションを実現した。またこれらの現象に付随して起こる重力波・ニュートリノ放射、r-process元素合成を含めた爆発的元素合成、最高エネルギー宇宙線生成、等々について世界が注目する成果を数多く挙げた。以上の様に本研究課題では当初の予想を上回る、世界最先端の成果を修めることが出来た。また同時にこの分野に於ける将来の課題・展望を提示しつつ5年間のプログラムを終了した。
著者
白波瀬 佐和子 盛山 和夫 ホリオカ チャールズ・ユウジ 杉野 勇 上野 千鶴子 武川 正吾 赤川 学 中田 知生 村上 あかね
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、日本の急激な人口高齢化が社会の階層構造に及ぼす影響を、社会調査データによって実証的に明らかにすることにあった。そこで本研究では、2010年に50~84歳を対象にした「中高年者の生活実態に関する全国調査」(有効サンプル6,442ケース)を実施し、2年後にはその3,193ケースについて追跡調査を行った。高齢期の階層は、所得や仕事内容、資産といった経済的要因のみならず、だれと暮らすか(世帯構造)と密接に関連していた。
著者
横山 順一 カンノン キップ 仏坂 健太 伊藤 洋介 茂山 俊和 道村 唯太
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

重力波を用いた宇宙物理学の研究を包括的に展開します。具体的には、①独立成分解析によってノイズを効率的に除去し、KAGRAによる重力波の初検出を目指します。②連星ブラックホールの質量分布関数とパルサーの周期擾乱で観測される長波長重力波背景放射を用いることにより、予想外に多数存在することがわかったブラックホールの正体を明らかにします。また、③連星中性子星合体については、マルチメッセンジャー宇宙物理学において、光学対応物となるガンマ線バースト及びキロノバの物理過程を数値相対論によって明らかにすると共に、r過程元素合成を計算し、銀河の化学進化の観測と照らし合わせて、金や銀などの起源を明らかにします。
著者
飯野 雄一 石原 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

線虫C.エレガンスは環境中の塩の濃度と餌の有無を連合して学習し、経験した塩濃度に向かう、あるいは避ける行動を示す。本研究はこの際の行動反転の分子・神経機構を明らかにすることを目的としている。この行動制御に重要であると以前の研究より分かっていたのがDAGシグナル伝達経路である。神経細胞内で、酵素ホスホリパーゼC(PLC)によりジアシルグリセロール(DAG)が生成される。生成されたDAGはプロテインキナーゼC(PKC)などの酵素を活性化する。このシグナル伝達経路が塩を感じる感覚神経(ASER神経)内で活性化されると線虫は高塩濃度方向に進み、不活性化されると低塩濃度方向に進むことが分かっていた。そこで、実際にDAGの量がどのように変化するかを調べた。このためにDownward DAG2とよばれる蛍光プローブをASER神経に発現させ、蛍光の変化を顕微鏡で観測することによりシナプス部位のDAG量を測定した。この結果、感覚入力としての塩濃度の変化に応答してDAG量が変化することが観察された。塩濃度が上昇するとDAGは低下、塩濃度下降時にはDAGは増加した。DAGの増減はASER神経の感覚受容に依存し、カルシウム、PLCに依存することもわかった。さらに、飢餓を経験した線虫ではDAG量の変化が小さかった。この単純な機構により、DAGは過去に経験した塩濃度と現在の塩濃度の差をコードできることがわかり、塩走性の反転機構の一部が説明できた。また、飢餓による行動変化におけるfoxo型転写因子の役割と働きかたについての研究を進めるとともに、ASER神経から下流の介在神経への情報伝達をカルシウムイメージングで解析した。さらに、全神経の活動の同時観察のための4Dイメージングシステムの導入を進めた。
著者
小泉 宏之 船瀬 龍 鷹尾 祥典 中野 正勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本研究の目的は,推進剤として水を活用し3種類の高効率/大推力/多軸制御可能なスラスタを統合させたオールラウンド超小型推進系を実現させることである.この目的に向けて平成29年度の下記3つの柱の研究を進めた.1.水イオンスラスタ.本年度は下記4項目の実験および数値計算研究を実施した:1A:実験におけるイオン生成コストの低減,2B:電子電流増加のための基礎実験および作動モード確認,1C:3D-Full-PICプラズマ解析コードの発展(昨年度の多種イオンの強化および負イオン導入準備)および同コードを用いた推進剤流入位置検討,1D:全孔ビーム計算の確立.特に,1Aにおいてはイオン生成コストの143 W/Aまでの低減に成功し,1Dにおいては世界的にもイオンスラスタとして初となる全孔計算の成功とその必要性を示すことに成功した.2.水レジストジェットスラスタ.同スラスタの微小・希薄ノズルにおける低Re数の効果として,先行研究科から指摘されている境界層(粘性)の他に,背圧依存性が大きいことを見出した.また,水質量のリアルタイム測定方法を確立し精度の高い比推力評価方法を確立した.実応用面では気化室を統合したBBMおよびEMによりスラスタ作動の実証に成功した.3.排熱利用衛星設計.最終目的は,衛星システムの排熱を本スラスタへ利用するための最適な気化室設計とコンポーネント配置設計を行い,実機モデルを用いて実証することである.このために本年度は,昨年度に実施した6U CubeSatの水レジストジェットスラスタの熱設計結果を最適化するとともに,そこで得られた知見を,CubeSatの機器配置設計と熱設計の同時最適化手法としてまとめた.これにより,他機器の排熱を最大限活用した,衛星全体の電力使用量の最適化(最小化)が可能となった.
著者
福田 正己 町村 尚 平野 高司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

現地観測の結果東シベリアヤクーツクのタイガ内に攪乱と不攪乱個所のキャノピーを超える観測タワーを設置し、水・熱・二酸化炭素収支の連続モニタリングを行った。そのための機器(CO2/H2Oアナライザー、超音波風速計、土壌水分計)を用いた。毎年4月末に現地入りし、2本のタワーを設置して10月までの連続観測を実施した。更にオープントップチャンバー法により土壌呼吸の連続観測を行った。永久凍土融解過程をモニタリングするために、対象サイトでボーリング調査を毎年実施した。伐採前にはNEPとして86mg/m2・dayの二酸化炭素が森林に吸収されていた。しかし伐採後には日射の増加で地中温度が上昇し、土壌中の有機物分解が促進されて大気側への二酸化炭素の放出に転じた。更に撹乱で地表面での熱収支バランスが乱れ、永久凍土の上部での融解が進行した。その結果地中への伝達熱が増加し永久凍土は約10%より深くまで融解した。こうした融解では上部に含まれるメタンガスの放出を促す。攪乱による温暖化の促進タイガの攪乱のおもな原因は森林火災である。本研究では森林火災の代わりに全面伐採による影響評価実験を行い、タワー観測・土壌呼吸観測・永久凍土融解観測を行った。それらの結果から地球温暖化へ多大の影響を与えることが明確になった。(1)火災時の直接的な二酸化炭素放出(2)火災後の土壌呼吸増加による二酸化炭素の放出(火災後数十年間)(3)火災跡地での凍土融解によるメタンガス放出(火災後数百年間)いずれも地球温暖化を加速させる効果となる。
著者
川畑 貴裕 久保野 茂 伊藤 正俊 松田 洋平 秋宗 秀俊
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

4He(アルファ粒子)が2つのアルファ粒子を逐次捕獲して12Cを合成するトリプルアルファ反応は、宇宙における元素合成過程において最も重要な反応のひとつである。しかし、高温あるいは高密度な極端環境下におけるトリプルアルファ反応率には、既知の値に比べ数倍から100倍も増大する可能性が指摘されており、大きな問題となっていた。本申請課題では、・逆運動学条件下における12Cからのアルファ非弾性散乱の測定・新しいアクティブ標的を用いた12Cからの中性子非弾性散乱の測定により、極端環境下におけるトリプルアルファ反応率を決定し、宇宙における元素合成過程を明らかにすることを目指す。
著者
伊香賀 俊治 満倉 靖恵 小熊 祐子 福永 興壱 星 旦二 伊藤 史子 苅尾 七臣 星出 聡 藤野 善久 久保 達彦 中村 裕之 福島 富士子 鈴木 昌 渡辺 麻衣子 白石 靖幸 安藤 真太朗 川久保 俊 山川 義徳
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

超高齢化の進行に伴う医療費・介護費等の増大は、先進各国共通の課題であり、疾病・介護予防へと政策が転換され始めている。個人の努力による生活習慣改善に限界が指摘される中で、本研究では住環境(住宅や地域)の改善によるCo-Benefit である健康寿命延伸効果に着目し、大規模なフィールド調査と追跡・介入調査によって住環境と脳情報や要介護状態等、新たな客観データによる健康影響の客観的論拠の獲得を進めている。本年度は、さまざまな世代を対象として自宅と自宅以外の環境が居住者の健康に及ぼす影響の調査を目的とした横断面調査の補充ならびに、研究代表者らの科研費基盤A(23246102、26249083)から実施してきた経年調査(縦断面調査)、住環境・執務環境の建替・改修前後調査(介入調査)を実施した。具体的には、青壮年期~中年期を対象とした調査では、自宅環境と居住者の健康(客観指標:家庭血圧、脳MRI撮像データ、睡眠状態、体温、身体活動量、心拍、IgE抗体等)との関連の検証に加え、オフィスでの知的生産性の検証を行った。日中の知的生産性はオフィス環境そのものの影響のほか、前日の自宅での睡眠・休息が影響するため、良質な自宅・オフィスの環境がもたらす相乗効果に関する被験者実験を行った。また、自宅と自宅以外の環境の相乗効果は幼・少年期にも存在するため、幼稚園・小中学校での活発な身体活動と自宅での良好な睡眠が、病欠確率と学習効率への影響を調査・分析した。環境側の調査項目としては温度・湿度、(一部の調査で光・音・空気環境、カビ・ダニ)測定等を行った。今年度の調査対象地は、高知県(梼原町、高知市)、山口県(長門市)、福岡県(北九州市)、東京都(23区内)、神奈川県(横浜市、藤沢市)、山梨県(上野原市、大月市)、広島県(広島市)、三重県(津市、伊勢市)、熊本県(熊本市)、石川県(志賀町)等であった。
著者
林 祥介 高木 征弘 榎本 剛 はしもと じょーじ 杉本 憲彦 今村 剛 堀之内 武 三好 建正 石渡 正樹
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

世界初の本格金星気象撮像探査機「あかつき」の軌道投入以前、金星大気の観測は断片的であり、数値モデルには仮定が多く、スーパーローテーション(四日循環)の存在に象徴される金星大気の循環構造はほとんど未知であった。本研究では、我々が開発を進めてきた地球シミュレータ上の金星大気大循環モデル(AFES-Venus)を元に金星大気データ同化システム(ALEDAS-V)を構成し、「あかつき」観測と矛盾せず力学的に辻褄のあった金星大気循環場の生成を試みる。金星大気中の未知な擾乱を同定し、その分布と角運動量輸送、物質輸送と雲構造などを明らかにしスーパーローテーションにいたる金星大気大循環の構造を解明する。
著者
小泉 政利 安永 大地 木山 幸子 大塚 祐子 遊佐 典昭 酒井 弘 大滝 宏一 杉崎 鉱司 Jeong Hyeonjeong 新国 佳祐 玉岡 賀津雄 伊藤 彰則 金 情浩 那須川 訓也 里 麻奈美 矢野 雅貴 小野 創
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

主語(S)が目的語(O)に先行するSO語順がその逆のOS語順に比べて処理負荷が低く母語話者に好まれる傾向があることが報告されている。しかし,従来の研究はSO語順を基本語順にもつSO言語を対象にしているため,SO語順選好が個別言語の基本語順を反映したものなのか,あるいは人間のより普遍的な認知特性を反映したものなのかが分からない。この2種類の要因の影響を峻別するためには,OS語順を基本語順に持つOS言語で検証を行う必要がある。そこで,本研究では,SO言語とOS言語を比較対照することによって,人間言語における語順選好を決定する要因ならびに,「言語の語順」と「思考の順序」との関係を明らかにする。
著者
大木 研一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

研究の目的であげた二つの目的を実行するため、光遺伝学を駆使してスパインレベルの機能イメージング法を開発し、個々のシナプスに入力する情報を可視化し、その変化を継続的に観察し、脳の情報処理の素過程と、学習・記憶の素過程をシナプスレベルで解明する。さらに、細胞集団のイメージングと組み合わせて、これらの素過程がネットワーク全体としての学習にどのように寄与しているのかを解明する。最後に、細胞集団を光遺伝学を用いて人工的に活性化し、細胞集団の活動が知覚・学習と因果関係を持つかどうかを検討する。
著者
小薗 英雄 隠居 良行 久保 英夫 三浦 英之 前川 泰則 芳松 克則 木村 芳文 金田 行雄 小池 茂昭
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

1. 非定常および定常Navier-Stokes 方程式の調和解析学的研究:3次元空間内の有限個の閉曲面で囲まれる多重連結領域における定常Navier-Stokes 方程式の非斉次境界値問題に対して,可解性と安定性について論じた.特に与えられた境界値が一般化された流量条件を満たす場合に考察し,領域の調和ベクトル場に関係するある変分不等式を満たせば可解であることを証明した.この結果は,Leray-Fujita の不等式による既存の存在定理をすべて含むものである.安定性に関しては,主流が剛体からの摂動であれば,大きな流れであっても漸近安定であることを示した.また,境界がコンパクトではい一般の非有界領域において,通常のLp-空間とは異なる新たな~Lp-空間を導入し,Helmholtz 分解の一般化とStokes方程式の最大正則性定理を確立した.応用として,任意のL2-初期データに対して強エネルギー不等式をみたす乱流解を構成した.2.非圧縮性粘性流体中における走化性方程式系の適切性:n 次元ユークリッド空間Rn において,Keller-Segel 方程式系とNavier-Stokes 方程式の双方が混合した場合について考察し,小さな初期データに対して時間大域的軟解の存在,一意性およびその時間無限大における漸近挙動を証明した.解のクラスとしては,スケール不変な函数空間におけるものであり,特に弱Lp-空間が基礎となっている.応用として,斉次函数である初期データに対する自己相似解の存在が得られた.3.3次元空間における定常Navier-Stoes方程式におけるLiouville型定理:3次元空間においてDirichlet 積分有限の範囲で,定常Navier-Stokes 方程式の解のアプリオリ評価を,同積分と同じスケールを有する渦度ベクトルの無限遠方の挙動によって確立した.その応用として,渦度が無限遠方で距離の5/3乗よりも早い減衰を示すならば,自明解に限るというLiouvelle型定理を証明した.
著者
森 裕司 武内 ゆかり
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

牛乳は国民の健康に欠かせない重要な生鮮食料品であるが、牛乳を生産する乳牛の繁殖障害は年を追うごとに深刻化しており、その克服が喫緊の課題となっている。本研究では、従来のホルモン等を用いる方法に代わる新たな乳牛の繁殖障害の治療・予防手段を開発することを念頭に、フェロモンを活用するための基盤研究として雄牛フェロモン(Bull Pheromone)を同定することを目的とし、さらには天然フェロモンの分子構造に関する情報をもとに人工フェロモンを合成したうえで、容易に着脱可能なフェロモン徐放デバイスを開発し、雌牛の生殖機能に対する雄牛フェロモンの効果を検証する。こうした一連の研究により、牛の繁殖障害に対するフェロモンを用いた斬新な予防・治療方法を開発するための基盤技術を確立する。平成26年度には、現時点で雄牛フェロモンが存在すると考えられる雄牛の被毛採材を、(独)家畜改良センター(ホルスタイン種)および岐阜県畜産研究所飛騨牛研究部(黒毛和種)にお願いして入手した。これらの被毛サンプルを分包し、東京大学附属牧場および東京農工大学(ホルスタイン種)と(独)畜産装置試験場および名古屋大学附属農場(黒毛和種)における雌牛の発情周期を同期化した上でそれぞれ卵胞期と黄体期に雄牛被毛を暴露し、その前後4時間について10分ごとの頻回採血を行った。残念ながら本実験途中で課題が廃止となったために、血液中の黄体形成ホルモン濃度を測定できず、現時点で雄牛フェロモン効果の有無は判定できていない。また、フェロモンを分析する上で不可欠となるガスクロマトグラフ質量分析計と水素発生機を導入し、分析のための基礎検討を行ったが、こちらについても課題廃止のために実際のフェロモン分析までには至っていない。