著者
中尾 充宏 栄 伸一郎 田端 正久 長藤 かおり 村重 淳 山本 野人 渡部 善隆 大石 進一
出版者
佐世保工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

非線形偏微分方程式に対する解の数値的検証法の開発とその適用を中心として研究を進め、特に、これまでほとんど研究例を見ない非線形発展方程式に対し、十分有効な数値的検証原理を見出すことに成功した。また、従来から蓄積してきた楕円型方程式の解に対する解の検証方式に新たな知見を加え、その拡張・改良を行うとともに、流体方程式をはじめ理論解析が困難な実際問題に適用して数値的証明を行い、その有効性を実証した。
著者
安藤 寿康 戸田 達史 河合 泰代 藤澤 啓子 大野 裕 平石 界
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009

本研究は児童期と青年・成人期の2つの双生児コホートによる縦断調査により、社会性とメンタルヘルスの形成・変化の過程におよぼす遺伝と環境の影響の解明を目指した。認知能力の発達や問題行動の発現、メンタルヘルスの変化に遺伝要因のそのものの発現の変化、ならびに遺伝と成育環境や文化環境との間のさまざまな交互作用が関わっていることが見いだされた。また認知機能の個人差に関わる遺伝子とその発現、さらには脳の構造と機能との関係を明らかにするための研究基盤が確立された
著者
廣瀬 通孝 鳴海 拓志 北川 智利 広田 光一 雨宮 智浩 谷川 智洋 青山 一真
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

本研究の目的は,バーチャルリアリティ空間で複数人が一つの身体(融合身体)を使用して私(I)でも我々(We)でもある身体運動を遂行する環境での検証から,共同行為が自らの寄与によるという感覚(行為主体感)が生じるメカニズムと,身体動作遂行に必要な潜在的知識(身体図式)が変容する条件とそのメカニズムを明らかにすることである.さらに,この知見に基づいて,行為者間の無意識的な意図伝達や動作同期が起こる融合身体の構成法を確立し,融合身体を介して教師から学習者への身体スキルを効率的に転移させることが可能な新しい身体スキル伝達手法を実現することを目指す.
著者
加藤 泰史 小松 香織 前川 健一 松田 純 宇佐美 公生 石川 健治 竹下 悦子 上原 麻有子 清水 正之 齋藤 純一 松井 佳子 後藤 玲子 小倉 紀蔵 村上 祐子 中村 元哉 小島 毅 品川 哲彦 水野 邦彦 林 香里
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

平成30年度の研究計画にもとづき、8月に一橋大学で分担者および協力者(国内)と研究打ち合わせを行い、平成30年度の計画を確認すると同時に、分担者の村上祐子氏が研究発表を行った。また、分担者および協力者の何人かに、『思想』2019年3月号および4月号の特集で研究成果の一部を発表してもらうように再度依頼して確認した。なお、代表者の加藤は8月にWCP北京大会に参加してプレゼンテーションを行った。10月に代表者が渡独してシェーンリッヒ教授(ドレスデン工科大学)らと論文集の編集およびそれに関連した国際ワークショップ企画に関して打ち合わせを行うとともに、11月に一橋大学で網谷壮介氏(立教大学)らを招聘して概念史的研究の一環である「第7回スピノザ・コネクション」を開催した。12月に東京大学で、非欧米圏担当の分担者および協力者と研究打ち合わせを行うと同時に、金光来研究員(東京大学)の講演会を行った。平成31年1月に代表者が、10月に一橋大学で開催予定の国際ワークショップの企画および論文集編集の件で再度渡独し、クヴァンテ教授(ミュンスター大学)・ポルマン教授(ベルリン・AS大学)らと研究打ち合わせを行うと同時に、シェーンリッヒ教授の主催する研究会に参加した。3月に京都大学で、科研費のワークショップを開催し、代表者の加藤と分担者の小島・小倉両氏が研究発表を行い、またニーゼン教授(ハンブルク大学)・マリクス准教授(オスロ大学)・バーデン教授(イリノイ大学)・デルジオルジ教授(エセックス大学)を招聘して一橋大学で国際ワークショップと、さらに手代木陽教授(神戸高専)らを招聘して「第8回スピノザ・コネクション」を開催すると同時に、『ドイツ応用倫理学研究』第8号を刊行するとともに、科研費のHPも完成させた(http://www.soc.hit-u.ac.jp/~kato_yasushi/)。
著者
藤原 晴彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

体表の紋様や体色により捕食者を撹乱する擬態は広範な生物種に認められるが、その形成メカニズムはよくわかっていない。擬態のような複雑な適応形質は1遺伝子の変異ではなく、染色体上の隣接遺伝子群「超遺伝子(supergene)」が制御しているという仮説がある。我々はシロオビアゲハのベイツ型擬態の原因が130kbに及ぶ染色体領域にあり、さらに染色体の逆位によってその領域が進化的に固定されていることを見出した。そこで、本研究では複数のアゲハ蝶をモデルとして(1)supergeneの構造と機能、(2)染色体上のsupergeneユニットの出現と安定化機構、(3)近縁種でのsupergeneの進化プロセスを解明する。転移因子の関与なども含め上記の結果を統合し、ゲノム再編成による擬態紋様形成機構を体系的に解明することを目的とした。本年度は、シロオビアゲハの擬態型dsx-Hが、非擬態型の淡黄色を擬態型雌に特有な淡黄色に切り替えるメカニズムを明らかにするために、両者の合成経路に関与する遺伝子の機能解析を行うとともに、紫外線に対する応答性の違いとそれに関与する遺伝子の働きを解析した。非擬態型淡黄色は紫外線を吸収して青い蛍光を発するのに対し、擬態型淡黄色は紫外線を反射するが、シロオビアゲハの擬態型翅で擬態型dsx-Hをノックダウンするとその領域において紫外線に対する応答性が擬態型から非擬態型に切り替わった。非擬態型の淡黄色papiliochromeIIを作るNBADとキヌレニン合成経路の各遺伝子をノックダウンしたところ、紫外線応答性が切り替わるとともに、鱗粉の電子顕微鏡像も変化したことから、色素合成のみならず物理的な性質もこれらの遺伝子によって制御されていることが明瞭となった。さらに、ナガサキアゲハの擬態型dsx-Hの機能解析を行い、シロオビアゲハの擬態型dsx-Hの機能との比較を行った。
著者
森脇 淳 中島 啓 望月 拓郎 立川 裕二 吉川 謙一 入谷 寛 尾高 悠志 向井 茂 並河 良典
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本年度は数理物理学と代数幾何学との結びつきを重要視し,ミラー対称性とそれの周辺に関するシンポジュームを11月11日から11月15日にかけて京都大学にて国際シンポジュームを開催し,多くの最新の知見の交流を行うことに成功した.それ以外にも2班から構成する研究グループは活発に研究を進めており,以下のような成果をあげている.第一班:(中島)アファイン・グラスマン多様体上の構成可能層の性質を抽象化し、ring object として定式化した.特に,幾何学的佐武対応を通じて正規表現に対応する ring object を構成要素として,Moore-立川によって予想されていた新しいシンプレクティック多様体の構成を与えた.(並河)錐的シンプレクティック多様体の中で複素半単純リー環のべき零軌道閉包の特徴付けを行った.(望月)円周と複素直線上の特異モノポールについて,``一般化されたCherkis-Kapustin型(GCK型)''という条件を導入し,そのような特異モノポールと安定パラボリック差分加群との間の小林-Hitchin対応を確立した.(入谷)トーリック軌道体の標準類を保たない双有理変換の下での量子コホモロジーD加群の変化を研究した.(立川)様々な次元の超対称場の理論の数理の研究を続けるとともに,超対称場の理論とトポロジカルな場の理論の関連をしらべることをはじめた.第二班:(森脇)Paris7大学のHuayi Chen氏との共著の本の執筆を中心に研究を進め,非被約なスキームに対する半ノルム付き拡張定理の証明に成功した,(向井)2変数クレモナ群の研究を続け、射影平面内の6直線の分解群や上野・CampanaのCoble曲面の自己同型群を決定した.(吉川)高次元エンリケス多様体の不変量を解析的捩率を用いて構成し、それにより,ヴェイユ・ピーターソン計量のポテンシャル関数が得られた.
著者
山岸 俊男 坂上 雅道 清成 透子 高橋 伸幸 阿久津 聡 高岸 治人
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

平成29年度には、行動・心理・脳構造・遺伝子多型データセットの解析を進め、ゲーム行動と脳構造の関連性に関する実験を行った。その結果、以下の知見を含む複数の知見を論文化した。知見1:社会的規範の逸脱者への罰は、従来の研究では社会的公正動機に基づく利他的な行動と考えられてきた。しかし本研究の結果、規範逸脱者へ単に苦悩を与えたいという公正さとは無縁な攻撃的動機に基づく罰行使者もかなりの比率で存在することが明らかになった。さらに攻撃的罰行使者は左尾状核が大きいという脳形態的特徴があり、この尾状核は線条体に含まれることから、罰行使で何らかの満足を得ている可能性が示唆された。知見2:攻撃性と社会規範成立との関係については、学生参加者による検討から社会的地位の高さとテストステロン量の多さが、相手への支配的行動を強めることも明らかにされている。本研究の知見は、複数の罰行動の背後にある心理・神経基盤を混同してきた従来の研究へ警鐘を鳴らし、攻撃的な罰が社会的公正の達成へ正負いずれの方向に機能しうるかという観点からの研究の重要性を示唆するものである。海外の研究者と共同で信頼ゲーム実験を17カ国で実施し、ペアの相手の集団所属性について国を単位として内集団・外集団・不明集団で操作したところ、偏狭的利他性(内集団成員をより信頼・協力する)が文化・社会を超えた普遍的な心理的基盤である可能性と、そうした利他性は評判に基づいた間接互恵性によって相殺される可能性も併せて示された。これにより関係形成型独立性へと移行する社会制度設計に評判が重要な役割を果たすことが示唆された。本研究の最終目的につながる文化形成実験は、社会的ニッチ構築の観点からの心の文化差の説明を検証する世界初の本格的実験であるが、プレテストを繰り返し実施する中で適切な実験デザインを確定し、社会的ニッチ構築理論の精緻化を進めた。
著者
保谷 徹 松井 洋子 柴山 守 谷本 晃久 岡 美穂子 五百籏頭 薫 原 正一郎 原山 浩介 須田 牧子 小野 将 山田 太造 横山 伊徳 佐藤 雄介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

本研究では、東京大学史料編纂所の海外史料マイクロフィルム約150万コマ等をデジタルアーカイヴ化し、国内採訪史料とともに学術資源として閲覧公開をはかる。また、在外日本関係史料の調査・収集を進め、マルチリンガル、マルチアーカイヴァルなプロジェクト研究を推進する。①デジタルアーカイヴ構築の面ではマイクロフィルム全2739本からのデジタル画像データのサーバ登録を完了し、このうち約85%については簡易目録ベースでの公開を開始している。今年度は新規収集分を含めて約38万コマを公開データに追加し、累計185万コマとなった。②社会連携・地域連携の試みとして、英国外務省文書FO46(TNA原蔵)に続き、横浜開港資料館所蔵FO262(英国外務省駐日公館文書)マイクロフィルム(約20万コマ)をデジタル化した。史料編纂所と開港資料館でのFO262全体(28万コマ)の検索・閲覧を実現する。③ロシア国立歴史文書館長らを招聘した「日露関係史料をめぐる国際研究集会」をした(5月、東京本郷、日本学士院・東京大学史料編纂所で共催)をはじめ、計3回の国際研究集会を実施して研究成果を発表・発信した。④『ロシア国立海軍文書館所蔵日本関係史料解説目録2』を刊行し、ロシア国立歴史文書館所蔵東アジア三国関係史料解説目録の作成・提供を受けた。⑤各重点プロジェクトで日本関係史料調査と目録研究を実施し、とくに、ロシア両文書館での継続的な史料収集やロシア国立サンクトペテルブルク図書館での史料画像データ収集、ハワイ州立文書館での新規撮影約3500コマなど、さらに古写真史料集『高精細画像で甦る幕末・明治初期日本―ブルガー&モーザーのガラス原板写真コレクション―』(洋泉社)の刊行などの成果があった。⑥前項の海外史料調査・収集の成果に対する社会的反響は大きく、今年度も毎日新聞・読売新聞・朝日新聞・NHK報道などで大きく取り上げられた。
著者
林 譲 横山 伊徳 加藤 友康 保谷 徹 久留島 典子 山家 浩樹 石川 徹也 井上 聡 榎原 雅治 遠藤 基郎 大内 英範 尾上 陽介 金子 拓 木村 直樹 小宮 木代良 近藤 成一 末柄 豊 藤原 重雄 松澤 克行 山田 太造 赤石 美奈 黒田 日出男 高橋 典幸 石川 寛夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008-05-12

東京大学史料編纂所が60年間にわたって収集・蓄積した採訪史料マイクロフィルムをデジタル化し、ボーンデジタルによる収集の仕様を確立し、一点目録情報などのメタデータを付与したデジタルデータを格納するアーカイヴハブ(デジタル画像史料収蔵庫)を構築し公開した。あわせて、デジタル画像史料群に基づく先端的プロジェクト・歴史オントロジー構築の研究を推進し、研究成果を公開した。
著者
筒井 和義 南方 宏之 浮穴 和義 田中 滋康
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

我々は新規脳ホルモンである生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(gonadotropin-inhibitory hormone;GnIH)を鳥類から発見した。本研究では、GnIHはヒトなどの霊長類から無顎類に至る全ての脊椎動物に存在することを明らかにした。さらに、GnIHは生殖腺刺激ホルモンの合成と放出を抑制して生殖腺の発達と機能を抑える働きがあることを明らかにした。本研究により、この新規脳分子による新しい生殖制御機構の大略が解明された。
著者
赤林 英夫 妹尾 渉 敷島 千鶴 星野 崇宏 野崎 華世 湯川 志保 中村 亮介 直井 道生 佐野 晋平 山下 絢 田村 輝之 繁桝 算男 小林 雅之 大垣 昌夫 稲葉 昭英 竹ノ下 弘久 藤澤 啓子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

本研究では、経済格差と教育格差の因果関係に関するエビデンスを発見するために、親子を対象とした質の高い長期データ基盤を構築し、実証研究と実験研究を実施した。さらに、経済格差と教育格差に関する国際比較研究を実施した。具体的には、テスト理論により等化された学力データを活用し、学力格差と経済格差の相関の国際比較、親の価値観が子どもの非認知能力に与える影響の日米比較の実験研究、子ども手当が親の教育支出や子どもの学力に与える影響に関する因果分析等を実施した。
著者
岡本 仁
出版者
国立研究開発法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2016-05-31

手綱は、進化的に最も保存された脳の部分の 1 つであり、嫌悪刺激に対処するための行動の制御における役割で知られている。 ゼブラフィッシュでは、社会的闘争において支配的か服従的に行動するかの選択の制御において、背側手綱からその標的である脚間核までの2つの平行な神経経路が重要な役割を果たす。それぞれの経路は、その結合強度が空腹などの魚の内部状態に応じて可変的であり、注意を自分自身か外部に向けるかにおいても重要な役割を果す。 即ち手綱核が、自分自身の身体の状況に注意を払う勝者として、または他者や外界に注意を払う敗者として振る舞うかを制御するスイッチボードとして働く可能性が明らかになった。
著者
上野 健爾 加藤 文元 川口 周 望月 新一 高崎 金久 桂 俊行 木村 弘信 山田 泰彦 江口 徹 森脇 淳 加藤 和也 吉田 敬之 三輪 哲二 丸山 正樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

上野のグループは複素単純リー代数をゲージ対称性に持つ共形場理論(WSWN モデル)とアーベル的共形場理論を使ってモジュラー函手を構成し、このモジュラー函手から構成される位相的場の理論の性質を解明した。また、共形場理論で登場するモジュラー変換を記述するS行列が種数0のデータから完全に決まることを示した。さらに共形場理論の応用として4点付き球面の写像類群のNielsen-Thurston分類を考察し、この分類が正整数n≧2を固定したときに量子SU(n)表現から決定できることを示した。加藤文元のグループはこれまで提案されている中では一番広い意味での剛幾何学の建設を推進し、モジュライ空間の幾何学のもつ数論的側面を代数幾何学的に極限まで推し進めた。望月新一は代数曲線とその基本群との関係およびabc予想の定式化を巡って、代数曲線のモジュライ理論に関する今までとは異なる圏論的なアプローチを行い、函数体や代数体の被覆や因子の概念の圏論的に一般化して捉えることができるFrobenioidsの理論の構築、エタール・テータ函数の理論の構築など、今後のモジュライ理論のとるべき新しい方向を示唆する重要な研究を行った。さらに、モジュライ空間の代数幾何学的・数論幾何学的研究で多くの新しい成果が得られた。無限可積分系の理論に関しては、高崎金久のグループは種々の可積分系を考察し、モジュライ空間がソリトン理論でも重要な役割をしていることを示した。また、パンルヴェ方程式とモジュライ空間との関係、無限次元代数と関係する統計モデルの考察、旗多様体の量子コホモロジーに関して種々の重要な成果が得られた。本研究によってモジュライ空間が当初の予想以上に深い構造を持ち、また数学の基礎そのものとも深く関わり、その理解のためには、さらに数学的な精緻な道具を作り出していく必要があることが明らかになった。また、そのための準備やヒントの多くが本研究を通して明らかになった。
著者
八坂 哲雄 麻生 茂 宇田 暢秀 西田 迪雄 安倍 賢一 田中 卓史 永山 邦仁 室園 昌彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

惑星探査機の搭載機器能力を大きく向上させる方式として、惑星周回軌道に投入する際にアエロブレーキを用いることを目的とし、その基本技術として、地球周回軌道で小型人工衛星を用いた実証をすること、水素を主成分とする惑星大気の力学を極めることを柱として研究を行ってきた。最終年度には、地球周回実証機の打ち上げ機会が得られなかったので、フライトモデルにプログラム書き換え機能を付与すること、ユニットの統合などによる軽量化を計ることなどの高機能化を行った。非火薬分離機構の研究では、切り離し実験を進め、実用システムとしての可能性を見出した。釣竿を利用した伸展ロッドは環境試験を実施して実用の確認をした。姿勢・軌道の制御ではテザーの運動を利用して効果的な軌道制御を実現する理論を確立した。気体力学では、水素極超音速希薄流の解析を行い、水素分子の回転緩和、振動緩和、解離反応を考慮し、木星大気を対象としたエアロキャプチャーが実現できる見通しを得た。実験的にはデトネーション駆動型イクスパンションチューブを用いて水素極超音速流の発生を試み、8km/sを達成した。また、炭素系アブレータをアーク加熱空気流に曝し、分光分析によりCN Violet、C_2 SWANバンドをアブレータの上流側で観測し、スポーレーションの発生を確認した。さらに、惑星大気に突入したときの強い衝撃波を含む非定常大規模乱流を解明するため、精度向上を達成できるLES/RANSハイブリッド乱流モデルを検討し、新たなモデル表式を確立した。
著者
横尾 真 神取 道宏 田村 明久 船木 由喜彦 関口 格 坂井 豊貴 平山 勝敏 尾山 大輔 安田 洋祐 岡本 吉央 岩崎 敦 川崎 雄二郎 小野 廣隆 櫻井 祐子 東藤 大樹 上田 俊 伊藤 孝行 小島 武仁 小原 一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究プロジェクトでは、我が国の持続可能な発展のために、計算機科学とミクロ経済学の技術を統合/発展させ、経済的、社会的、環境的な観点からの要求をバランスした、希少な資源の望ましい配分を実現するメカニズムの設計理論を構築することを目的としている。具体的には、資源配分メカニズムの設計、解析、表現技術に関して研究を推進し、特に、制約付き両方向マッチングにおけるメカニズム設計、ノイズのある繰り返しゲームの均衡解析、協力ゲームに関する表現技術に関して顕著な成果が得られている(査読付き国際会議87件、国際論文誌74件、国内論文誌11件、著書8件、教科書の執筆4件、招待講演40件)。
著者
仲田 泰祐 藤井 大輔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2022-04-27

「感染症対策と経済活動の両立を考えるためのモデル研究・コロナ禍における政策の事後検証・コロナ危機の中長期的な社会・経済影響」の3本柱で研究を行う。コロナ危機のようなPandemicは公衆衛生の危機であると同時に社会的・経済危機である。「感染症対策と社会・経済活動をどのように両立させていくか」という問いに答えためのフレームワークが、コロナ危機前には存在しなかった。上記した3つの柱を軸に研究を行うことで、次のPandemicが来る前にこの問いに対して少しでも多くの知見を提供したい。
著者
鈴木 譲 菊池 潔 末武 弘章
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

全ゲノムが解読された最初の食用魚であるトラフグを用いて,有用形質を支配する遺伝子の特定めざした.トラフグとクサフグなどの種間交雑を進めて解析することにより,体サイズ,脊椎骨数,鱗の有無,寄生虫耐性,警戒心の強さ,淡水適応能力に関する遺伝子の染色体上の位置が特定され,ゲノム情報に基づく優良個体選抜育種への道筋をつけることができた.また,性決定遺伝子の特定に成功し,雄の価値が高いこの魚における性制御技術の開発に成功した.
著者
齋藤 政彦 山田 泰彦 太田 泰広 望月 拓郎 吉岡 康太 Rossman W.F 野海 正俊 大仁田 義裕 三井 健太郎 佐野 太郎 小池 達也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

本年度は、代数曲線上定義された放物接続や放物Higgs束のモジュライ空間の代数幾何学的構造の研究を継続して行った。また、付随するリーマン・ヒルベルト対応の幾何学、モノドロミー保存変形の微分方程式のパンルヴェ性などについても研究を行った。特に、現在残された一般の分岐的不確定特異点を持つ場合のモジュライ問題の設定、モジュライ空間の構成、次元公式、非特異性、シンプレクテック構造などについては、稲場がすでにプレプリント「Moduli Spacs of irregular singular parbolic connections of generic ramified type on a smooth projctive curve」において、肯定的な解答を得ている。また、確定特異点でスペクトル型を固定したときのモジュライ空間の構成、モノドロミー保存変形に関わる方程式のパンルヴェ性の証明についての論文を出版する予定である。岩木・小池は位相的漸化式とWKB解析の関係において、具体例による研究を進め、新しい例を構成しつつある。名古屋は、第6q差分パンルヴェ方程式のタウ関数がq共形ブロックでフーリエ展開で得られるという結果を得て、論文を発表した。また、この分野の国際研究集会を11月に神戸大学で開催した。望月は、円周と複素直線上の特異モノポールについて、色々な角度から研究し、新たな結果を得た。大仁田は、微分幾何学と可積分系の関係、特に調和写像の分類問題を研究した。山田は、多変数モノドロミー保存変形について、パンルヴェ方程式の退化や、パデ法の応用研究を行った。入谷はトーリック軌道体の標準類を保たない双有理変形の下での量子コホモロジーD加群の変化を研究した。また高種数グロモフ・ウイッテンポテンシャルの保型性を調べた。細野は、カラビ・ヤウ多様体のミラー対称性について詳細な研究を行った。
著者
原田 尚美 西野 茂人 広瀬 侑 木元 克典
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

本研究の目的は、極域に生息する海洋生物特に、食物網の底辺を支える植物・動物プランクトンに着目し、昇温や海洋酸性化に代表される環境の激変に対してこれら低次生物がどのように応答するのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、西部北極海を研究対象海域とし、1)酸性化の脅威にさらされている炭酸塩プランクトンの応答の定量的評価、2)亜寒帯域に生息する植物プランクトン種の温暖化による極域進出の可能性の把握、3)他の海域に生息する種には見られない極域プランクトン種の特異的な機能を明らかにすることを目的としている。平成30年度は以下の研究を実施した。1海洋観測:西部北極海に2点設置したセジメントトラップ係留系の回収ならびに再設置とともにCTD/採水観測、各種センサーによる観測も行う。また、回収された係留系に蓄積された1年分の各層の流向・流速データについて衛星観測による海氷広域分布データとともに時系列の解析を行う。以上の計画どおり実施した。2海洋観測試料分析/データ解析ならびに遺伝子分析手法開発:回収された時系列セジメントトラップの生物起源粒子について検鏡による群集組成と18SrRNA配列を用いた定量的群集解析を実施する計画であった。検鏡観察による群集組成解析はほぼ計画通り実施したが、遺伝子解析については、再度、ホルマリン試料からの遺伝子レスキューの過程の見直しを実施しているところである。3プランクトンの培養・飼育実験ならびにMXCT法開発:北極海由来のプランクトンの炭化水素合成系酵素遺伝子について、現在も引き続き探索を行なうとともに、炭化水素合成量がこれまでより単位細胞あたり1桁多くなるような生育培養条件を見出す事ができた。MXCT法については、新たにオートサンプラー開発を行い、プランクトンの骨格密度測定の効率を上げ、高精度な解析が短時間で可能になるようシステムの高度化を行った。