著者
船山 道隆 小嶋 知幸 山谷 洋子 加藤 正弘
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 : 日本高次脳機能障害学会誌 = Higher brain function research (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.329-341, 2008-09-30
参考文献数
33
被引用文献数
1 3

&nbsp; 症例は56 歳右利きの男性である。50 歳から英語が読みづらくなり,52 歳より喚語困難が出現し,徐々に音韻からの意味理解障害や顕著な表層失読や表層失書を伴う語義失語を呈するに至った。言語によるコミュニケーションに支障をきたし仕事から退いたが,日常生活は自立している。物品使用の障害を認めず,人物認知の障害は軽度にとどまった。視覚性の意味記憶検査では生物カテゴリーと加工食品では成績低下を認めたが,それらのカテゴリーで日常生活に支障をきたすことはほとんどなかった。非生物カテゴリーでは意味記憶障害は認めなかった。頭部MRI では左側頭葉の前部から下部を中心に萎縮が認められた。<br>&nbsp; 少なくとも現時点での本症例において,非生物カテゴリーでの意味記憶は保たれており,語彙の理解および表出の障害は失語の範疇で捉えることが妥当であると考えた。一方で生物カテゴリーにはわずかながら意味記憶障害が存在した。また,語義失語は語彙の貯蔵障害という見解が多いが,本症例の障害の中核は,語彙と意味記憶の間の両方向性のアクセス障害にあると考えた。
著者
髙倉 大匡
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.552-556, 2015-12-31 (Released:2016-02-01)
参考文献数
36
被引用文献数
4 5
著者
河内 佐智子
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
no.6, pp.52-68, 1988-12

藤原不比等については、『日本書紀』・『続日本紀』をはじめとする史料を綜合して、多くの検討が加えられ、さまざまな人物像が描かれている。一般的には、藤原鎌足の後継者で、大宝律令の制定に関与し、養老律令の撰定、平城遷都などの推進者として、八世紀初頭の律令体制の中心に位置し、政治面に大きな権力を保持していた人物であるとされている。しかし、鎌足と不比等の継承関係も、父子であること以外には明瞭にされておらず、『家伝』の「大織冠伝」と『日本書紀』との関係をはじめとする史料批判も完了しているとはいえない。また、野村忠夫氏・上田正昭氏等によって指摘されてきた「不比等の絶対的な権力」についても、再検討を必要とするという動きがみられる。さらに、佐藤宗諄氏は、不比等についても仲麻呂の造作がかなり為されているので、この詔で不比等に与えられた「五千戸」という封戸の数についてもおそらくは仲麻呂の造作であろうと指摘しておられる。第一に藤原氏が確定〔文武二年(六九八)に不比等のみ藤原氏と称することが許されるようになってからという意であろう〕してから未だ十年にも満ちていないこと、第二に不比等の上位には右大臣石上朝臣麻呂が健在であることをあげておられる。つまり佐藤氏は、それまでの不比等の経歴からでは彼が五千戸を与えられ得るだけの力量と基礎をもっていたとは考えられないのではなかろうかと主張しておられる。『続日本紀』の本文批判は、まだ『日本書紀』に対してのようには厳密には行われていない。そのなかでは、佐藤氏の見解は特異なものである。本稿では、藤原不比等の「功封」を中心にして、それが賜与された慶雲四年(七〇七)ごろの不比等についても考察を加えて行きたい。
著者
遠藤 寛子 湯川 進太郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.458-467, 2013-12-25 (Released:2014-03-01)
参考文献数
43
被引用文献数
4

Endo and Yukawa (2012) investigated the process of maintaining anger and demonstrated that a sense of unintegration of thoughts maintained anger by promoting recurrent thinking and avoidance behavior. Our present study examined how personality characteristics and situational factors affected the process of maintaining anger. Undergraduates (N=713) wrote about an anger episode, and completed questionnaires assessing their sense of unintegration of thoughts, recurrent thinking, avoidance behaviors, and maintaining anger. The questionnaires also assessed personality characteristics such as difficulty in identifying feelings, and situational factors such as the need for maintaining relationships, anger arousability, and meaning-making for the anger episode. The results of covariance structure analysis indicated that difficulties in identifying feelings and anger arousability contributed to maintaining anger by increasing the sense of unintegration of thoughts just after the episode. However, the need for maintaining relationships directly reduced the sense of unintegration of thoughts just after the episode, and indirectly decreased the present sense of unintegration of thoughts by meaning-making. Moreover, although recurrent thinking promoted the current sense of unintegration of thoughts, it also provided meaning.
著者
北村 美和子
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.s31-s32, 2020

<p>2020年発生したウイルスCovid-19の影響のため多くの災害メモリアルイベントの自粛要請が行われた。震災から9年経た2020年岩手県大船渡では震災を伝えるための語り継ぎイベントが初めて岩手県で開催される予定であった。しかしこのイベントもパンデミックを抑えるために観客無しで行うことになった。このような緊急時のイベント開催であった。語り継ぎイベントを主宰した東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)では「みちのく震録伝」の活動により災害情報のデジタル化や震災イベントの動画中継などを行なっていた。このため、今回のパンデミックによる緊急事態への備えも充分にできていた。本研究では災害アーカイブのデジタル化による有効な活用方法や記録継続の必要性や無観客イベントのストリーミングの重要性について述べる。</p>
著者
本多 淳也 小宮山 純平 前原 貴憲 横山 大作
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.3A25, 2017 (Released:2018-07-30)

人間の嗜好や競技の優劣といったものを評価する場合、個々の候補の良さや強さを絶対評価をすることは困難で相対比較のみが可能である場合が多く存在する,このような相対比較に基づいてK個の候補のうちランキングを誤り確率p以内で推定する問題に対し、本研究では新たに O(K log K/p)の平均比較回数を達成するアルゴリズムを提案する.
著者
岡﨑 孝博 吉本 亮子 上田 幸男 浜野 龍夫
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.2-8, 2014 (Released:2014-01-29)
参考文献数
27
被引用文献数
3 3

価格差の要因を明らかにするために,徳島産および韓国産ハモの体成分を分析した。韓国産の脂質含量(7.7~10.4%)は,徳島産(1.4~3.0%)に比べて顕著に高かった。呈味に関与する遊離アミノ酸の含有量に有意差は見られなかった。体重 0.3~0.8 kg の雌で比較したところ,韓国産は肥満度および比肝重量が高く,産卵期にすべて未成熟であったが,徳島産の一部は成熟していた。韓国産は,より低水温域に生息し,成熟開始年齢が高く,脂質を多く蓄えるため,旨味が強く,より高値で取引されると推察された。
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会誌 (ISSN:13405551)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.85, 2009-02-01 (Released:2009-02-01)

本記事に「抄録」はありません。
著者
大庭裕介著
出版者
同成社
巻号頁・発行日
2020
著者
阿江 数通 小池 関也 川村 卓
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.635-649, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
41
被引用文献数
8 2

The purpose of this study was to clarify the kinetic features of the trunk under different hitting-point height conditions (high, middle, and low) in baseball tee-batting. Twenty-three collegiate male baseball players (age: 19.8±1.3 yr, height: 1.74±0.04 m, whole-body mass: 74.1±6.2 kg, athletic career: 12.0±2.1 yr) participated. Three-dimensional coordinate data were captured using a VICON-MX system (12 cameras, 250 Hz), and kinetic data for the individual hands were collected using an instrumented bat equipped with 28 strain gauges (1000 Hz). Three kinds of tee-batting heights were set for each participant based on the upper and lower limits of the strike zone according to the baseball rule. The torso was modeled with the rigid upper and lower trunk segments connected by a torso joint with three axes: the ante/retro flexion, right/left lateral flexion, and right/left rotation axes. Kinetic variables, e.g. joint force and torque, mechanical power, and mechanical work, were obtained by inverse dynamic calculation. These data were expressed for a right-handed batter and normalized by the time of the forward swing from the swing start to the ball impact as 0-100%, and the time was divided into down-swing and level-swing phases in order to evaluate the mechanical work. From the last half of down-swing phase until ball impact, the retroflexion torque under the low condition was significantly larger than those under other conditions. The left rotation torque and positive torque power showed particularly large values in the level-swing phase regardless of the hitting-point height. The mechanical energy flow generated by the torso joint torque showed inflow from the lower trunk to the upper trunk, and outflow from the upper trunk to the individual upper arms regardless of the height condition over the forward swing. In addition, there were significant positive correlations between the positive mechanical work done by the joint torque about the right/left rotation axis and the maximum bat-head speed during the level-swing phase under the middle and low conditions. These results indicate that 1) the ante/retro flexion axis torque is needed to maintain the configuration of the upper trunk against the large centrifugal force exerted along the bat around the moment of ball impact, 2) the right/left rotation axis torque contributes to the generation of the large mechanical energy, the transfer of energy to the upper limbs, and the generation of the bat-head speed regardless of the height condition.
著者
五十嵐 ゆかり 小黒 道子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.250-259, 2014
被引用文献数
1

<b>目 的</b><br> 日本に在住する難民女性への支援の向上を目指し,難民女性のリプロダクティブヘルスの現状や課題を明らかにすることである。<br><b>対象と方法</b><br> 日本に在住する難民,難民認定申請者で,成人女性,出産可能年齢(15~49歳)7名とした。研究協力者の母語に堪能な通訳者を介し,半構成的インタビュー法で面接を行い,質的記述的研究方法により分析を行った。<br><b>結 果</b><br> 難民女性は【困難な状況が複合化している存在】であり,【行き(生き)場がない,ここしかない】という社会的,心理的状況であった。そのため【孤独】を感じ,【信仰だけが与える安寧】に依存しながら生活していた。リプロダクティブヘルスの実状としては,難民女性は出身国の情勢や経済的な理由から,そもそも【もともと無いリプロダクティブヘルス・ライツ】といった状況にあった。来日後は【寂しさが誘起する安易な性行動】から知り合ったばかりの人との性行為に至り,結果【シングルマザー】となっている女性が多かった。生活が困窮していても【信仰を基盤とした妊娠継続の意思決定】をし,【心の拠りどころは子ども】となって,強い孤独感の中で喜びを感じていた。しかし,妊娠期を健康的に過ごすための経済基盤の脆弱性や,医療者とのコミュニケーションの難しさから,【母児の困難な健康維持】という状況にあった。難民女性のリプロダクティブヘルス・ライツを向上させるために,まずは【偏見なくひとりひとりと向き合う】,【それぞれの持つ背景を知る】ことが不可欠であり,健康状態が深刻化していても【帰国を勧めない】こと,また【確実な情報提供】をすることも重要であった。<br><b>結 論</b><br> 難民女性は,ひとりという孤独感と難民への関心が薄い社会での疎外感から,壮絶な寂しさの中にいた。心理,経済,教育など複数の課題が混在し,自国においても日本においても難民女性のリプロダクティブヘルス・ライツは脆弱であった。ケアの方略は,まずは医療者が難民女性を理解する努力をすることであり,対象の背景を知ろうとする姿勢を持つ重要性が示唆された。

1 0 0 0 思想

出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
vol.(2), no.812, 1992-02

1 0 0 0 OA 孫過庭・書譜

著者
興文社 編
出版者
興文社
巻号頁・発行日
1941
著者
柿崎 藤泰 根本 伸洋 角本 貴彦 山﨑 敦 仲保 徹 福井 勉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0312, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】体幹の運動機能を評価する過程で、骨盤との運動連鎖に注目した評価は重要であり、臨床でも良く行われる評価であると考える。しかし、体幹機能の評価で、肋骨の分節的な評価や、他の分節との運動連鎖を観察する一般的な評価はあまりにも少ない。呼吸器疾患をはじめ、他の運動器疾患でもより効果的な理学療法治療を展開するうえで、体幹の運動機能を障害するファクターとしてなりうる胸郭運動の病態把握は重要であると考えている。今回我々は、体幹の複合動作である回旋運動に着目し、胸郭の歪みを形成する肋骨の動きを検討したので報告する。【方法】対象は特に整形外科的疾患をもたない健常成人10名(男性9名、女性1名)で、平均年齢は25.2±3.9歳であった。 計測はzebris社製の CMS20S Measuring system を用いた。マーカーポインターにより測定した部位は、両側肩峰部、両側上前腸骨棘、胸骨柄、剣状突起下端部、第1、3、7、12胸椎棘突起部の各部分であった。各部位の測定では、部分の凹凸に対し、最も陥没している部位、または最も突出している頂点部分にポイントするよう注意を払った。被験者には両手を頭の後に組んだ状態で、40cmの椅子に座ってもらった。静止座位と体幹回旋位で2回の測定が行われた。体幹回旋角度の規定は特に設定せず、骨盤中間位にて、上半身のみの回旋運動で、無理なく運動が遂行できるところまでとし、被験者の任意の角度で測定した。肋骨の動きは、胸骨の長軸を通る直線と第1から第3胸椎、第3から第7胸椎、第7から第12胸椎の各々を結ぶ直線とを前額面上で投影させ、その2直線の交差する角度で判定した。【結果】胸骨長軸直線と各々の胸椎直線との間に、共通した関係はみられなかった。しかし、胸骨長軸直線と第3-7胸椎直線とを投影する角度が、安静座位で2度未満(平行状態に近い)のものが5例、安静座位の時点ですでに4度以上の角度で交差しているものが5例いた。4度以上の5例では、安静時に比べ、回旋位での2直線の角度が全例で減少した。また、対照的に2度未満の5例では、安静時に比べ回旋位での2直線の角度が全例で増加した。そして、2度未満の5例の任意の平均回旋角は4度以上の5例に比較し、より大きな値を示した。【考察】今回の検討にて、胸骨長軸直線と胸椎の各文節との間には明確な関係はみられなかったが、胸骨長軸直線と第3-7胸椎直線との正中化が得られている場合、胸郭形態を無理なく歪ませることのできる機能を有しており、そのことは体幹の回旋運動に有利な条件となることが示唆された。理由として、肋間筋の体幹の回旋作用を指摘する報告もあり、予め胸郭形状に変化が生じている場合、肋間筋の長さにも影響を及ぼし、回旋動作障害に起因する可能性もあること、また第3-7胸椎の中間的役割としての機能が低下することなどが考えられる。