著者
相澤 亮太郎
出版者
人文地理学会
巻号頁・発行日
pp.20-20, 2003 (Released:2003-12-24)

かつて人文主義地理学が扱ってきた主体の内面性や情緒性は_丸1_場所本質主義的である_丸2_場所のダイナミズムを捉えられない_丸3_主体の知覚を超えた範囲からの影響を扱いきれない、などの批判を受けてきた。だが、たとえば地域対立やナショナリズム、またはまちづくりにおける住民参加の問題などを考えれば、主体と場所の情緒的な関係であっても無視することはできない。それらの問題を乗り越えるために、本研究では地蔵を事例としながら、記憶を媒介として場所が再生産される過程を描き出すことを目的とする。 1995年の阪神大震災以後は、地蔵が震災復興における象徴的な存在としてメディアにしばしば取り上げられてきた。都市インフラや住環境などの物的環境の復興ではなく、文化的・精神的なものの復興を象徴する存在として、地蔵は震災後に「再発見」された。地域住民にとって地蔵の意味は極めて多様であるが、地蔵の由緒が不明なものが多いにも関わらず祭祀が継続されているのは、特筆すべき点である。震災犠牲者の慰霊や現代的な御利益など、新たな意味や記憶が付与されながら、地蔵祭祀は継続されている。地蔵祭祀は廃れゆく伝統習俗であるとは一概に言えない。ただし当初の祭祀者を失った地蔵は、像そのものが残存しても、固有の記憶は残らない。地蔵をめぐる祭祀組織や所有形態、設置場所等が柔軟に変化しながらも、地蔵祭祀は継続されている。 地蔵は、場所と記憶の再生産装置として機能する側面を有しているが、地蔵そのものだけを取り上げて、安易に場所や記憶の再生産装置であると位置づけることはできない。地蔵祭祀は、場所の変化や社会状況に合わせて変化していく。場所が社会的構築物であるならば、地蔵も社会的に構築/再構築される存在であると考えられる。
著者
高山 倫明
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.35-46, 2003-04-30 (Released:2017-08-31)

This paper reviews the previous studies on important topics in Japanese historical phonology, introducing both classic works and newer publications. The paper then points out some of the significant issues requiring further elaboration, e.g., (1) distinctive features of /g, z, d, b/ in Old Japanese (OJ), (2) historical development of Modern Japanese /h/, (3) merging process of */di/ vs. */zi/ and */du/ vs. */zu/, (4) phonotactic constraints avoiding hiatus or word-initial /g, z, d, b, r/ in OJ. The reasons why these topics represent particularly important questions, especially with regard to the phonetic naturalness of sound change, are then explored.
著者
中田 考
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.281-308, 1990-03-31 (Released:2018-03-30)

The Sunnite jurisprudence defines the rbellion as "revolt against the ruler by force according to their ta'wil." Jurists come to this notion through their understanding of the wars following the death of the Prophet. Ibn Taimiya says that they confound wars of three different categories, i.e., Abu Bakr's wars against the Apostates, the Civil wars, and 'Ali's wars against the Kharijite, and consequently they consider all of them revolts against the ruler, and that subjugating them is obligatory, if they persist. Ibn Taimiya criticizes this conception, and says that the apostates and Kharijite must be subjugated, but as to civil wars, withdrawal from them is better. According to Ibn Taimiya, jurists' idea of "rebellion" stems from this confusion, and it is supposed to be treated as a civil war from which muslims had better abstain. Ibn Taimiya does not only criticize jurists, but also presents his alternative, which is "deviation from the shari'a," namely, muslims must fight not "rebels against a certain ruler," but "factions deviating from the shari'a."
著者
大沢 真理 シャイア カレン マルガリータ エステベス=アベ 阿部 彩 金 英
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21 (Released:2013-10-24)

日本の生活保障システムは、先進諸国の中で最も強固な「男性稼ぎ主」型であり、政府の所得再分配が貧困を削減する効果が、就業者の多い世帯や子どもにとってきわめて弱く、効果がマイナスである場合も少なくない。労働力人口の減少が憂慮される社会としてきわめて非効率で不合理なシステムであること、しかし所得再分配の効率性を高めれば、税・社会保障負担を増すことなく国民の生活を改善できることも、明らかになった。2014年2月には福井県において社会的排除に関するアンケート調査を実施した。働き者の福井の女性が、より働きがいを感じ、地域活動にも参加する条件について示唆を得られた。
著者
榊 和良
出版者
日本南アジア学会
雑誌
南アジア研究 (ISSN:09155643)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.22, pp.277-284, 2010-12-15 (Released:2011-09-06)
参考文献数
19

4 4 4 4 OA 軍事と科学

著者
池内 了
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.7_40-7_46, 2017-07-01 (Released:2017-11-03)

4 4 4 4 OA 白鳥傑作集

著者
正宗白鳥 著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
vol.第2巻, 1926
著者
池本 淳一
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.75-87, 2010-05-29 (Released:2017-09-22)

武術学校とはスポーツ化した中国武術である「競技武術」の専門課程をもつ私立体育学校である。その特徴として、その多くが都市にあるにもかかわらず、生徒の多くが小学校時代に農村の公立校から転入学してきている点があげられる。本論の目的は、この都市における武術文化と農民層との結びつきを明らかにすることで、中国における「スポーツと社会階層」の結びつきの一例を示すとともに、この結びつきを生み出した中国の社会構造を浮き彫りにすることである。具体的には以下の内容を明らかにした。第1に、武術学校はスポーツを通じた中等学歴の取得を可能にする場となっていた。第2に、武術学校は衛生的で安全な寄宿舎が完備されていた。この寄宿舎は、農村から子どもを連れて都市へ出稼ぎにきたものの、低賃金・長時間の労働に従事しているために、安全で清潔な住環境や子どもの世話を見る時間を確保できない農民工家庭の児童にとって、都市の「滞在先」として利用されていた。第3に、武術学校は農村の小学校や都市の民営校である民工子弟学校と比べて、充実した教育環境にあった。それゆえ都市に連れ出したものの、制度的・経済的・学力的な理由により都市の公立学校に転校できなかった児童にとって、そこは最適な都市の「転校先」の1つとなっていた。最後に、これらの結びつきを生み出した中国の社会構造と、その構造を生み出した戸籍制度について指摘した。
著者
池本 淳一
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.169-186, 2013 (Released:2014-09-30)
参考文献数
33

武術学校とはスポーツ化した「競技武術」の専門課程をもつ中国における私立の体育系学校であり, 1980年代までの間に大学やナショナルチームを中心に発展してきた. 本稿は武術学校における再生産戦略とアイデンティティ構築に着目し, 競技武術の民間普及をもたらした社会的背景と, 実践者にとっての競技武術の意味を明らかにする. 具体的には以下の点を明らかにした.第1に, 武術学校への転入学は農村の教育問題や都市の住居問題を解決するために, 農民や農民工の親によって決定された再生産戦略の一部であったこと. 第2に, 武術を学歴取得や就職のための技能として受入れ, 親の用意した再生産戦略を自分自身の戦略として受け継いだ生徒のみが, 中学部以上に進学していくこと.第3に, 卒業生の多くは武術教師や警備員として都市で就職していくこと. 他方で豊富な身体資本を蓄積した生徒はステート・アマに, 豊富な文化資本を蓄積した生徒は体育大学・教育大学の武術科の大学生となること.第4に, 卒業後, 武術は本人の出世と親子での都市移住を達成させるための経済資本となること. くわえて武術に打ち込むことで, 武術がナショナルかつ私的なアイデンティティを生み出す「身体化された文化資本」となること.最後に競技武術の民間化をもたらした社会的背景, 武術文化が生み出す公的で私的な文化的アイデンティティ形成の可能性と危険性, 武術のローカリゼーションに関する諸問題を指摘した.