著者
元木 靖
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

今日の「都市型社会」の形成は、農林業地域に対して労働力不足や生産者の高齢化、生産物価格等の面で深刻な問題を提起している。本研究では稲作以前からのわが国の土地利用型作物であるクリを事例として、その歴史的動向の整序と今日の実態解明をすすめた。(1)日本列島ではほぼ全国に自生するシバグリが、縄文時代以来高度経済成長期に入る頃まで、食糧や木材、薪炭材等に多面的に活用されてきた。一方、稲作導入以後畿内の古代都市周辺に大粒の丹波系クリの生産が萌芽し、藩政時代にはそれが関東周辺にも普及した。こうした丹波系のクリの栽培は、明治以降とくに昭和初期頃には果樹として注目され、戦後の高度経済成長期になると遠隔の中山間地域をはじめ全国的に増殖され、飛躍的な発展をみた。(2)しかし、高度成長終焉後の都市型社会が進展する過程で、クリ生産は一転して減少をみるようになり、今日ではその栽培地域も急速な縮小基調にある。ただし、クリ生産を持続している地域では、従来のクリ栽培のイメージを一新するような対応を取り始めていることが明らかになった。クリの低樹高栽培の技術が確立され、その方式が各地に普及したことが、大きいな特徴である。そこには、良質グリを求める実需者(菓子メーカー)の期待と生産者の課題を同時に解決する意味が込められている。(3)新しい経営の傾向として、地域により (a)低樹高のクリを機械管理する専業的クリ生産のタイプ、(b)実需者が独自にあるいは生産農家を支援するタイプ、(c)低樹高栽培を取り入れ、限界的な山間傾斜地の生産者が実需者と契約栽培するタイプ、等が見いだされた。これらのうち(c)は生産を期待されながらも、労働力流出間題が深刻で、発展は望めないかもしれない。しかし(a)と(b)の両タイプは将来の農業の展開を考える上で、重要な方向性を示唆しているように思われる。
著者
菊地 立 佐久間 政広 元木 靖 佐藤 信俊
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

地球温暖化防止を目指した京都議定書が2005年2月に発効した。我が国に科せられた二酸化炭素排出量の削減目標(1990年比-6%)を達成するための重要な施策として,植物の二酸化炭素吸収を組み入れ海外で植林活動を行っている。一方国内では,伝統的な屋敷林が継続的に減少しており,屋敷林が蓄積していた二酸化炭素が大気中に放出されている。この現状をふまえ,我が国の屋敷林中心地の一つである仙台平野中部を主たる対象地域として,以下のような現地調査を試みた。(1)現在の屋敷林の分布,規模,構成樹種(2)屋敷林の気候緩和機能の調査(3)屋敷林植生による大気浄化機能の調査(4)屋敷林の樹木が蓄積する二酸化炭素量の推定(5)屋敷林面積の減少(6)屋敷林を持つ農家の意識調査本研究の結果,仙台平野中部には多くの屋敷林が現存しているが,仙台市の拡大にともなう都市化の波により,過去40年間における屋敷林面積の減少が約40%に上ることが判明した。屋敷林は二酸化炭素の蓄積にとどまらず,気温や風に対する環境緩和効果および大気汚染の浄化機能も顕著であることが確認され,今後とも屋敷林を保護・育成することが重要であることは明らかであるが,住民の意識調査では高齢層は維持の方向,中年層は伐採と開発の方向と2極分化しており,今後の推移は楽観を許さない。何らかの体制的支援策が必要と思われる。
著者
藤田 幸一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

1990年代以降、最近まで15~20年間のバングラデシュ農村経済の変容を、異なる地域の2つの農村の再調査によって明らかにした。変化を生み出した主な原動力は、管井戸普及による農業集約化、農村内および周辺地域における非農業部門(特に第3次産業)の発展と雇用吸収、ダッカなど都市への出稼ぎの増大、海外出稼ぎの増大などであった。こうした農村経済の発展に伴って所得分配は悪化した形跡があるが、貧困削減は着実に進み、最近の農村では労働力不足の兆候さえ見られるようになった。
著者
東 達也 西井 龍一 加川 信也
出版者
滋賀県立成人病センター(研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

腫瘍診断の領域で広く用いられるFDG-PETの欠点である炎症性疾患への偽陽性を克服するため、システムA輸送体を介した人工アミノ酸製剤である[N-methyl-^<11> C] MeAIB ;α-methylamino-isobutyric acidを開発、安全性を確認、薬剤合成法を確立し、腫瘍診断法としての基礎を確立した。ヒト癌患者を対象とした臨床的な研究を推進し、合計200例以上の脳腫瘍、胸部腫瘍、前立腺腫瘍患者を検討し、良悪性鑑別診断として一定の評価を得た。
著者
阿部 宏慈 中村 三春 大河内 昌 清塚 邦彦 阿部 成樹 中村 唯史
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本、英米圏、フランス、ロシア(ソ連)等で蓄積されてきた記号論的分析の成果をもとに、視覚表象が優越する芸術諸ジャンル(絵画、写真、映画、マンガほか)とその周辺領域における「リアル」の意義と機能を明らかにすることを目的として実施された。その目的を達成するため、山形大学人文学部人間文化学科の、特に芸術、表象文化論、視覚表象の理論に関わる研究に携わっている6人の研究者がそれぞれの課題にしたがって分担しつつ、共同で研究をすすめた。その中で、阿部宏慈は主としてドキュメンタリー映画における表象不可能性の問題と「リアル」の概念をめぐる理論的研究と分析をおこなった。中村三春は、映画と文学における「リアル」の表象の問題をむしろフィクション映画を対象として研究した。大河内 昌は、英国十八世紀におけるピクチャレスクの美学とリアルの問題の理論的研究をおこなった。清塚邦彦は、写真における「リアル」の問題を、ウォルトンの哲学的分析を中心に研究した。阿部成樹は、ダヴィッドの「マラーの死」をはじめとする新古典主義絵画における「リアル」の表象を研究した。さらに、中村唯史はマンガにおける「リアル」の問題を、特に最新の理論的成果をもとに研究した。如上の研究を通じて、「リアル」の表象に対する基盤を異にするアプローチを突き合わせることによって、表象をめぐる学際的な研究の可能性が開かれたことが何よりも大きな成果である。表象文化論のアプローチを絶えず純理論的な枠組と芸術史に基づく正確な理解に照らしつつ検証することで、分析の精度を高めることができた。
著者
合田 典子 片岡 則之 奥田 博之 梶谷 文彦 山本 尚武 清水 壽一郎
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

研究目的:本研究では、エストロゲンの血管内皮細胞に対する作用を実時間で解析するため、ECIS(Electrical Cell -substrate Impedance Sensing)法を用い、細胞-細胞間隙と細胞-細胞下基質間隙および細胞自体の挙動をナノオーダーで定量的に計測した。さらに、これらナノ細胞挙動を引き起こす基礎となる細胞骨格や接着因子のダイナミックな変化を共焦点レーザー顕微鏡と原子間力顕微鏡を併用して観察し、エストロゲンの血管内皮細胞に対する作用を総合的に解析した。研究の成果:種々の濃度の17β-Estradiol(E_2)付加後の内皮細胞の微細動態(細胞-細胞間隙,細胞-細胞下基質間隙,細胞自体の挙動)をECIS法にて経時的に計測したところ、高濃度のE_2の負荷によりインピーダンスは減少し、細胞-細胞間隙が拡がったことが示唆された。原子間力顕微鏡(AFM)を用いて機械的な弾性特性を測定した結果、高濃度のE_2による内皮細胞辺縁部の弾性は変化せず、成熟女性の生体内濃度(E_210^<-10>及びE_210^<-11>mol)では同部の弾性率を各々61%,56%低下させ、生理的濃度のE_2が内皮細胞の細胞ミクロメカニクスを有意に変化させた。また、動脈硬化症の危険因子として注目されている酸化LDLを培養内皮細胞に作用させた実験を併せて行った。健常者の酸化LDLはヒト血漿LDL画分中の0.01%程度とされるが、その影響を強調するため50μg/ml,100μg/ml及び200μg/mlの高用量を20時間作用させた。インピーダンスは全体として11%増大し、細胞-細胞間隙、細胞-細胞下基質間隙共に増大することが示唆された。また内皮細胞辺縁部弾性率はコントロール群に比べ、70〜80%の低下を示し、酸化LDLは細胞内皮の透過性の上昇及びバリア機能の低下を引き起こすことが示唆された。今後、酸化LDLが内皮細胞に及ぼすこれらの作用に対するエストロゲンの効果を検討する予定である。
著者
玉城 陽子
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.大学在学時に測定・記録した基礎体温(BBT)と頸管粘液の変化について、1983〜1986年度入学学生(1G)105人、1988〜1990年度入学学生(2G)73人、1998-1999年度入学学生(3G)72人計250人ついて比較し、年代的な差異があるのかを明らかにするために分析した。1)排卵と無排卵(V型の一部・VI型)の両方の周期をもつ者は1、2、3Gそれぞれ24.7%、15.7%、33.8%であり、全周期無排卵型であったのは1、2、3Gそれぞれ8.6%、11.4%、12.3%と年代が上がって行くに従い高率になっている。2)黄体機能不全の可能性がある周期がある者は、1、2、3Gそれぞれ27.6%、26.6%、50.0%であり、全て黄体機能不全の可能性がある者は、1、2、3Gそれぞれ46.0%、48.4%、32.8%であった。3)低温水準の平均については、1、2、3グループそれぞれ36.29±0.18、36.33±0.13、36.24±0.17であり3Gが最も低温であった。4)頸管粘液については、牽糸状粘液が排卵日と一致した周期はどの年代も約半数であった。2.現在30代前半〜40代前半である1、2G学生178人のうち現住所が把握できた151人に対し郵送にてアンケートによる追跡調査を行い、返答があった69人(回収率45.7%)について分析した。1)169人中50人(72.5%)が既婚者であり、既婚者中14人(28.0%)が不妊治療の経験者であった。この14人についての学生時のBBTは、無排卵周期が1回でもあった者は50.0%、黄体機能不全の可能性がある周期が1回でもあった者も、50.0%であった。このうちの1人は、学生時より無排卵のため治療していた。2)学生時の生活習慣の振り返りで見てみると、排卵に影響していたのは、ダイエットの経験、飲酒の機会であり、黄体機能に影響していたのは、ダイエットの経験、外食の機会であり、過短・過長月経など周期へ影響したものは、外食の機会、ストレスの有無であった。
著者
松本 尚英 小川 芳弘 中村 政明 島本 知茂
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

光、温度などの外部情報で制御できる新しい物質群を創生した。1、外部摂動により高スピンと低スピン状態間を相互変換するスピンクロスオーバー分子。2、一つの分子が磁気履歴をもつ単分子磁石、単一次元磁石。1では特異な性質を示す新しい錯体群を見出した。(A)イミダゾール含有直鎖上配位子の鉄錯体で一次元集積構造と熱履歴をもつスピンクロスオーバー錯体を合成した。(B)3座配位子鉄錯体に水素結合とπ-π相互作用を導入して熱履歴を実現した。(C)鉄錯体で2段階スピン転移をもち、さらにこの中間状態が異常に安定な錯体を合成した。(D)組成式[Fe(H_3L)]CIXをもつ一連の三脚型鉄錯体を合成した。塩化物イオンとイミダゾール基間の水素結合が2次元層構造を形成する。層間を埋める陰イオンXの大きさ、形状によりスピン転移挙動は大きく変化し、一段階、二般階スピン転移をはじめとする多なスピン転移を陰イオンの選択で実現した。さらに高スピンと低スピンが共存する中間般階ではキラリティが発現した。(E)(D)の系では、掌性の起源をさぐるアイデアが生まれた。もともと三脚型鉄錯体は右巻きと左巻きの分子があるが、高スピン状態では右巻き分子の隣に左巻き分子が水素結合で連結して二次元層構造を形成していた。右巻きと左巻きのキラリティ以外では構造的違いがない。ところが中間状態では、右巻き分子は高スピンのまま、左巻き分子は低スピンへと変化し、光学活性な空間群へと変化したと解釈された。しかしこのときのFlack値は0.5であり、外部摂動によるFlack値の偏りを探る研究の端緒となる。一方、単分子磁石、単一次元磁石の研究では、希土類の磁気異方性を利用して一次元鎖錯体をいくつか合成した。この分子系の分子修飾により新しい単一次元磁石を模索した。
著者
寺内 信 佐藤 圭二 山本 剛郎 安田 孝 馬場 昌子 西島 芳子
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

近代産業都市の住宅地形成を日本の長屋建住宅とイギリスのテラスハウスの比較研究として実施した。日本では大阪と名古屋の都心周辺部における長屋建住宅地の形成過程と第2次世界大戦後の変容、消失実態を明らかにした。イギリスではリバプール、バーミンガム、リーズを主として、テラスハウス地区の形成過程、戦後の改善過程、改善主体や改善手法について考察した。また、老朽住宅の建て替えや、居住者の高齢化に伴う高齢者居住対策の活動について、およびバーミンガムにおける居住者分布のパターンについて分析している。日本の長屋建て住宅は19世紀末からの近代産業都市建設の過程で、庶民住宅として供給されたが、第2次大戦後は社会経済的争件の欠落により減少した。一時的に非木造テラスハウスとしての普及が試みられたが、成功しなかった。都心居住の再生が推進されつつある今日では、新たな再建の方法とルールが必要とされている。イギリスでも戦後の住宅建設では増加していないが、1960年代以降の居住地改善活動によって、改善・維持がすすめられた。その過程で重要な役割を果たしたのがハウジング・アソシエーションである。しかし多様な主体による居住地再生活動にもかかわらず、テラスハウスの高齢者・障書者対応の改造は進展せず、新たな改修方法の開発と実験が必要と考えられる。
著者
齋藤 和也
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日常生活における歩行は、 周囲の環境に応じて方向転換や歩行停止などに切り替えられる。本研究の目的はこの変換の神経機序を調べることによりパーキンソン氏病で観られる歩行障害の病態生理を解明することである。メダカ成魚において仮想遊泳中の脳活動を光計測することに成功した。また実験モデルとしてメダカ成魚の脳眼球脊髄摘出標本の作製も試みたが、網膜機能の低下などの課題が残った
著者
芹沢 昭示 功刀 資彰
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

内径20μ、25μ、50μ、80μ、100μのsilica tubeまたはquartz tubeを用いた空気-水系(一部蒸気-水系)気液二相流実験とその可視観察を行った。可視観察では倍率150倍の実体顕微鏡、テレビモニター及び高速ビデオカメラを用い(空間解像度0.4μ)、更に超精密レーザー変位計(空間解像度0.4μ程度)を用いた確認実験も行った。以下は得られた研究成果である。1)100μ径以下の超微細マイクロチャンネルを含むキャピラリー管内気液二相流に共通する流動様式として気泡流、スラグ流、液塊流、リング状液膜流、環状液膜流、噴霧流等を観察した。中でも、リング状液膜流れは本研究によって始めてその存在が観察・報告されたもので、従来の知見にない新しい発見であった。2)微細マイクロ流路内の気液二相流挙動が管内壁の表面状態(汚れや濡れ性)に大きく依存することを明らかにした。特に、物理的、化学的に清浄処理した場合には、幾つもの気体スラグがstem状の気体柱によって焼き鳥状に串刺しされた流れが観察された。これは、従来全く観察例が報告されておらず、本研究ではこれをskewered slug flowと命名した。3)20μ径マイクロチャンネルにおける二相流流動様式遷移を纏めて線図として提案した。4)気液二相流の管断面平均ボイド率及び圧力損失実験結果等を検討し、夫々Ahmandの式及び修正Chisholmで近似できることを示した。5)マイクロ気泡運動に関する数値シミュレーション及び実験観察を行い、気泡間干渉に係わる近距離力と遠距離力を考慮した気泡干渉モデルを提案した。
著者
河合 克宏
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

IRBITによるCaMKIIα活性制御の分子機構およびその生理的意義を明らかにし、脳神経系におけるIRBITの役割を解明するため、in vitro kinase assay,細胞株発現系、培養神経細胞およびIRBITを全身で欠損したIRBIT KOマウスを用いてIRBITがCaMKIIα活性に及ぼす効果を検討した。いずれの実験系においてもIRBITがCaMKIIα活性を抑制する事を明らかにした。さらにIRBIT KOマウスが学習行動試験や社会性行動試験等の行動実験において行動異常を示す事を明らかにした。
著者
吉村 光敏 白井 豊
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

(目的)既存の干葉県・埼玉県・栃木県・群馬県・神奈川県等の道標データに新発見の神奈川県、茨城県、干葉県内データを加える。東京都の道標のデータベース化を行う。(作業内容)1。資料収集:東京都、神奈川県の道標所在調査データの収集を図書館等で行った。2。現地調査:特に千葉県・埼玉県内の道標につき、-部地域について道標の旧位置確認や銘文の不明瞭個所の再検討作業を行った。3。データベース入力:東京都を除く関東各都県(主に神奈川県)のデータ入力を行う。(データ処理)1。関東地方の都市交通圏図の作成を行いつつある。2。千葉県北東部の道路網図(近世中期、後期)を作成した。(結果)1。関東地方の都市の都市交通圏は径15-20キロの略円形の交通圏をもつ、地方中心都市の交通圏が併存していることが確かめられた。2。江戸の近傍には日帰り、1泊の参詣旅行ルートに対応した網の目状の交通路が近世後期に発展した。それに対し、より遠方では、主な街道沿いの通過交通を主とした交通網が形成された。この道路網の形態は単線状で、主要霊場あるいは湯治場を結ぶ道であった。この道に沿道の寺社霊地が組み込まれた交通網が形成されたらしい。3。収集したデータをもとに、処理作業中であり、図の完成には至っていない。
著者
清水 夏樹
出版者
独立行政法人農業工学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.事例調査による有機性資源循環管理システムの阻害/推進要因の把握とシステム成立のために補完・整備すべき要素林業・製材を主産業とする中国地方の中山間地域および都市近郊農畜産業の盛んな千葉県北東部での事例調査により,有機性資源の発生・再資源化・再生資源の利用等の各段階の担い手となる組織について,各組織の役割や組織間の関係の実態を把握した。その結果,発生-再資源化までの段階は,関与主体の活動や行政による支援によって円滑に進み,循環管理システムの空間的広がりは,ほぼ旧町村(大字)までの単位で成立しうることが明らかとなった。再資源化-再生資源の利用段階(家畜ふん尿の堆肥化-堆肥の農地還元)の推進においては,それ以降の段階(農産物の流通・販売-消費)に関わる主体との連携が確立されていることがシステムの推進要因となっていた。また,再生資源の利用段階が円滑に進むための循環管理システムの空間的広がりは,現在(市町村合併前)の町域を越えた広範囲となることが示唆された。さらに,イタリア中部において,農産物加工業者や消費者(観光客も含む)を循環管理システムに関わる主体として位置づけ,これらの主体からシステムを支援する投資行動を導く仕組みについて調査し,日本における適用性を検討した。日伊間の土地所有制度や歴史的背景の違いに由来する要素も多く,全ての代替要素を示すことは困難であったが,農産物の流通・販売システムをサブシステムとして有機性資源循環管理システムに組み込むなど,システム拡張の必要性が示唆された。この新システム構築については,千葉県北東部において実証研究を継続する予定である。2.行政等によるシステム支援のための情報提供有機性資源の循環管理システムを支援する主体(行政やNPO,民間企業等)への情報提供のため,受入研究機関において実施された関連研究成果を含めた書籍の分担執筆・編集を行った。
著者
飯田 恭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

19 世紀前半のプロイセン農業改革の過程において、農民の領主に対する建築用木材の請求権の償却が重要な争点の一つになっていた、ということが本研究の第一の発見である。この発見を出発点としつつ、本研究は、領主の農民に対する建築用木材下付の史的展開を、17-19 世紀のより長期の歴史的展開の中で論じた。これは従来農業史的文脈のなかで論じられてきたグーツヘルシャフトの歴史を森林史的文脈において論ずる新しい試みである。また以上のプロイセン史に関する実証的知見をもとに、日本とプロイセンの近代林政史の類似性を強調する研究への若干の反論を行った。
著者
宇野 瑞木
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度(4月から10月末まで)は、主として、次の二つの研究活動を行った。1)本研究の中心課題である<二十四孝>説話をめぐる孝の表象に関して、とくに前近代までの中国と日本における展開をまとめた博士学位論文(東京大学大学院総合文化研究科にて受理)を出版物として公開するための準備を行ってきた。本書は、既に今年度の出版助成金(学術図書)を受けることが決定しており、今年度末までに『孝の風景――説話表象文化論序説』(仮タイトル)として、勉誠出版株式会社から刊行される予定である。本論の構成は以下の通り。第一部 図像の力(第一章 後漢墓の孝の表象――山東省嘉祥県武氏祠堂画像石を中心に/第二章 六朝時代以降の孝子図――墓における複数の世界観と孝との融合/第三章孝子図から二十四孝図へ――遼・宋代以降を中心に)第二部 語りが生起する場(第一章 郭巨説話の母子像――唐代仏教寺院における唱導を中心に/第二章 郭巨説話の「母の悲しみ」――日本中世前期の安居院流唱導を中心に/第三章 日本中世の祖先供養の場と孝子説話――『金玉要集』の孟宗説話を中心に)第三部 出版メディアの空間(第一章 和製二十四孝図の誕生――日中韓の図像比較から/第二章 蓑笠姿の孟宗――日本における二十四孝の絵画化と五山僧/第三章 江戸期における二十四孝イメージの氾濫/反乱――不孝、遊戯を契機として)さらに「基礎資料編」として、孝子説話関係の画像資料を、1渋川版と嵯峨本の図像、2渡来テキストの図像、3漢~金元墓の図像、4大画面制作、御伽草子の四項目に分類し掲載する。本書の大きな特徴として、孝を表象から捉えるという目的のもと、さまざまなメディア・地域・時代にわたる孝子説話関連の図像を蒐集・整理し、一挙に掲載している点が挙げられる。本書が刊行されれば、文学、美術史、さらには思想史やジェンダー研究など多方面の関連分野へと寄与できるものと考えている。2)研究対象とする地域の拡大という目標にむけて、前年度から引き続き朝鮮やベトナムといった中国周辺諸国の漢文テクストを読解してきた。4月25日には、立教大学で開催された朝鮮漢文研究会において、『海東高僧伝』から恵輪という求法僧の伝について発表した。
著者
水嶋 一憲
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、A・ネグリとM・ハートによる帝国論の新展開と人文・社会諸科学における情動論的転回が共有する意義と射程を明らかにしつつ、今日のグローバル資本主義の中で情動が果たす極めて重要な働きを分析した。特にネグリとハートの『コモンウェルス』を翻訳するとともに、メディア理論の最新の成果も取り入れつつ、(1)〈帝国〉の情動諸装置のメカニズム、(2)グローバルな制御社会における情動の流通と調整、(3)ソーシャル・メディアによる情動の捕獲等について、研究を進めることができた。これらの研究成果は、今日のグローバル化したネットワーク社会の中で情動の諸相を探究するためのプラットフォームを提供するものである。
著者
田口 洋美 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 三浦 慎悟 高橋 満彦 原田 信男 白水 智 佐藤 宏之 辻 誠一郎 佐々木 史郎 原田 信男 白水 智 三浦 慎悟 神崎 伸夫 前中 ひろみ 高橋 満彦 岸本 誠司 中川 重年 梶 光一
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究が開始された翌年平成18年度においてクマ類の多発出没が発生し、捕殺数は約5000頭、人身事故も多発した。本研究はこのような大型野生動物の大量出没に対する対策を地域住民の歴史社会的コンテクスト上に構築することを主眼とし、東日本豪雪山岳地域のツキノワグマ生息地域における狩猟システムと動物資源利用を「食べて保全」という市民運動へと展開しているドイツ連邦の実情を調査し、持続的資源利用を含む地域個体群保全管理狩猟システムの社会的位置づけとその可能性を追求した。
著者
柿岡 諒
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

コイ科タモロコ属魚類の形態における適応進化に関する研究を進めるため,本年度は,1)タモロコ属野外集団の系統的・系統地理的解析,2)タモロコとホンモロコのF2種間雑種を用いた連鎖解析を主に行った.1)については,ミトコンドリア遺伝子の塩基配列を用いた系統・集団遺伝学的解析を昨年度から引き続き行った.その結果,属内における系統の多様化とタモロコ種内の隠蔽系統が明らかにされるとともに,湖沼集団の成立が複数回独立に生じたことを明らかにすることができた.この結果については論文執筆を行い,投稿した.河川から湖沼に進出した魚類では遊泳・採餌関連形質に適応的変化が生じることが示唆されており,この変化がタモロコ属魚類でもホンモロコに生じたことが考えられた.この適応的な形態分化の遺伝的基盤を明らかにするため,タモロコとホンモロコのF2交配家系を用いた連鎖地図の作成と湖沼適応に関連したQTL(量的遺伝子座位)解析を行った.遺伝マーカーを探索するに当たっては,次世代シーケンサーを利用してゲノムワイドで高効率に大量のSNP(一塩基多型)マーカーを作成できるrestriction-site associated DNA sequencing (RAD-seq)を採用した.Illuminaシーケンシングにより得られたRAD-tagマーカーを用いて,高密度連鎖地図を作成することに成功した.さらに得られた連鎖地図と形態計測データをもとにQTL解析を行ったところ,湖沼型のホンモロコと河川型のタモロコ間での形態の差に差に関わる遺伝領域とその効果が検出された.ホンモロコとタモロコ間における採餌関連形質や体型の違いの多くは,効果の小さい複数の遺伝子座に支配されることが示唆された.