著者
長野 泰彦 菊澤 律子 西尾 哲夫 武内 紹人 高橋 慶治 立川 武蔵 白井 聡子 池田 巧 武内 紹人 池田 巧 高橋 慶治 立川 武蔵 白井 聡子 本田 伊早夫 桐生 和幸 R. LaPolla M. Prins 戴 慶厦 G. Jacques 才譲 太 S. Karmay M. Turin 鈴木 博之 津曲 真一
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2004

チベット・ビルマ語族は、中国・青海省からパキスタン東北部にわたる広い地域に分布する。この語族の歴史はその大枠がようやく明らかになってきたものの、未解読文献言語や記述のない言語が多数残っている。本計画は(1)未記述言語の調査、(2)未解読古文献(シャンシュン語)の解読、(3)チベット語圏の言語基層動態解明、を目標として研究を行い、幾つかの知られていなかった言語を発見して記述、新シャンシュン語(14 世紀)語彙集集成、古シャンシュン語の文法的特徴の抽出、に成功しただけでなく、歴史言語学方法論に接触・基層という視点を導入することの意義に関して提言を行うことができた。
著者
恒川 篤史 鈴木 雅一 森田 茂紀 飯山 賢治 篠田 雅人 西田 顕郎
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、多様な生態系を対象としてさまざまなタイプの数値シミュレーションモデルを適用し、その生態系で生じている現象の理解を深め、新たな現象を解明すると同時に、モデル自体についてもさまざまな改良や開発を続けてきた。主要な研究対象と成果は以下の通りである。1.日本の代表的な森林であるスギ・ヒノキ人工林の東京大学千葉演習林において、Komatsu et al.(2006)によって開発された生態系プロセスモデルを用いて、斜面部による蒸散開始時刻の違いがどのような要因によって生じるかを解明した。2.米国モンタナ大学で開発されたBiome-BGCを日本の代表的な森林であるスギ・ヒノキ人工林の東京大学千葉演習林袋山沢に適用した結果、幹材積炭素含有量の、植栽から現在までのモデルによる計算値の推移は、千葉演習林のスギの収穫表と袋山沢での観測値をほぼ再現した。3.Centuryモデルを富士山における一次遷移のデータに適用し、その適用性を検討した。いくつかのパラメータを変更する必要があったが、パラメータを変更することでCenturyモデルは富士山における一次遷移のデータを良好に再現することができた。4.Biome-BGCモデルをモンゴル中央県のバヤンウンジュールの典型草原に適用した。さまざまなチューニングにより実測値の正確な予測が可能となった。このモデルを用いて干ばつに対する植生影響のシミュレーションを試みた。5.広域スケールの生態系プロセスモデルとして、光合成有効放射吸収率(FPAR)、葉面積指数(LAI)、4種類の気候データ(純放射、日最低気温、日平均気温、飽差)および土地被覆図を用いた生産効率モデルを用いて、1982年から1999年までの全球陸域NPPを推定した。
著者
本田 弘之 泉 文明
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3年間にわたり、5回、のべ3ケ月にわたるフィールドワークをおこなった。フィールドとして選定したのは、中国黒龍江省および遼寧省である。他に対照地域として、吉林省、上海市などでも調査をおこなった。調査の内容は、日本語教育機関における参与観察と日本語教員に対するインタビューである。「満州国」時代、日本語教育は日本人によって、侵略政策の一環としておこなわれた。したがって、1945年以降、日本語教育は一度消滅する。しかし、文化大革命が終了した1980年代はじめ、中国で外国語教育が再開された。朝鮮族の民族中学では、1945年以前に日本語を学んだ人々が教師となり、ふたたび日本語を学びはじめた。日本語と朝鮮語は統語構造が類似しているため、朝鮮族にとって学びやすい言語である。そこで、朝鮮族の人々は、自分たちの民族教育を発展させるために、日本語教育を選択したのである。そして、その日本語教育は、時代とともに、大きく変容してきた。本研究により、いままで日本語教育史研究の空白となっていた、「満州国」における朝鮮人に対する日本語教育と、現在の中国朝鮮族の民族中学における日本語教育の関連性が、はじめて具体的に明らかになった。また、その日本語教育が、どのように変容し、自律していったかを、詳細に明らかにした。また、その調査にフィールドワークとライフヒストリー調査という質的研究法を用い、「学習者の立場から日本語教育史を考える」という新しい発想を具体化することができた。
著者
村松 潤一 井上 善海 盧 濤 原口 恭彦 奥居 正樹 加藤 厚海 秋山 高志 上林 憲雄 三崎 秀央 柯 麗華
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

発展著しい中国には早くから日本企業が進出し、製造業を中心とした産業集積が形成されてきた。本調査研究は、そうした産業集積に焦点をあて、メーカーとサプライヤーがどのような関係を構築しているか、また、その基盤としての組織内マネジメントがどのようになされているかについて現地調査した。その結果、日系企業間での強い結びつき、また、日系企業の人的資源管理はプロセスコントロールを重視していることが明らかとなった。
著者
牛島 恵輔 GAD Mohamed El?Qady
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

現在、地下浅部の埋設物の探査方法としては、磁気探査、電磁誘導、地中レーダー、電気探査など種々の物理探査法が開発されている。しかし、いずれの探査手法においても長所、短所および探査限界がある。このため、地雷や不発弾を確実に漏れなく発見するためには、各物理探査の方法の特徴を考慮し、埋設物の物性値、埋没深度に応じて複数の手法を組み合わせて探査することが重要である。そこで、著者らは、まず広域を迅速に探査するための手法として時間領域電磁法(Transient Electromagnetic Method)を適用し、次いで、異常が検出された地点を高精度に調査する方法として、電気探査比抵抗法(Electrical Resistivity Method)を採用することにした。このように、マクロからミクロまでのフィールド調査をセンサー・フュージョンにより実施すれば、地下埋設物の3次元分布のみならず、地下埋設物の材質および3次元形状までも把握できるものと考えられる。そこで、平成15年度は、空中からTEM法を実施するためのシステム開発を目的として、まず概査用の送信・受信ループおよび精査用の送信・受信ループを試作した。次いで、実際に地下に物性値(導電率)およびサイズ(規模)が異なるモデル(地雷)を埋設して、これらの送信・受信ループの対地高度を変化しながらフィールド実験を行った。これらの一連のフィールド実験の結果、TEM法の概査用としては50cmのコインシデント・ループが適しており、精査用としては20cmのコインシデント・ループが最適であることが明かになった。一般に、広域のフィールド調査では、対地高度を一定(50cm)にして、複数の矩形ループを併用することにより、マクロからミクロまで効率良く、漏れなく埋設物探査が実施できることを確かめた。
著者
前林 清和
出版者
神戸学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、地雷被害が続くカンボジアにおける地雷回避教育を推進するための研究である。まず、カンボジア北部地域、特にポイペト市において、地雷被害調査と地雷教育の実情を調査し、その不備も含めて明らかにした。そのうえで、実際の地雷回避教育プログラムおよび教材を開発した。開発した「地雷ノート」をポイペト市にある小学校3校の子どもたちに配布し、地雷回避教育を実施し、その効果を明らかにした。
著者
立木 茂雄 林 春男 重川 希志依 田村 圭子 木村 玲欧 山崎 栄一 上野谷 加代子 柴内 康文 牧 紀男 田中 聡 吉富 望 高島 正典 井ノ口 宗成
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

人と環境の相互作用の視点から災害脆弱性をとらえ、地理情報システ ム(GIS)の活用により、平時における災害時要援護者の個別支援計画の策定や、災害時におけ るり災情報と支援策の重ね合わせによる支援方策の最適化等に資する標準業務モデル群を開発 した。開発成果は東日本大震災被災地および被災地外の自治体で実装した。併せて、東日本大震 災の高齢者・障害者被害率と施設収容率との間に負の相関関係があることを見いだした。
著者
平川 守彦
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「亜熱帯における島嶼型アグロフォレストリーシステムに関する研究」の一環として下記の通りの成果を得た。本研究の実験現場は,今なお,大戦時の不発弾が多数存在するため機械による造成はひじょうに危険である。そのため蹄耕法(不耕起造成)により野草地を利用している。しかし,自生する野草は放牧牛にとって嗜好性が悪く,また,栄養価や再生力も劣るため改善する必要がある。その改善策として,短草型牧草であるセントオーガスチングラス(St.Augustine grass)の導入を試みた。方法は,(1)過放牧後(草高約5cm)(2)火入れ後(3)裸地(地際除草)の区画に30×40cmのセントオーガスチングラス張芝を植え,積算優占度,草量の推移を調査した。その結果,セントオーガスチングラスの積算優占度は,火入れ区において常に70%を維持していたのに対して,裸地区・過放牧区においては低く,20%であった。乾物重は火入れ区,裸地区,過放牧区の順に多かった。火入れ区以外は雑草の占める割合が高かった。以上のことから,火入れ後に張芝を植える方法が,雑草の侵入を防ぎ,セントオーガスチングラスの生育に良い効果をもたらすことがわかった。今後はセントオーガスチングラスの生育を長期間調査し,その牧草の導入が野草地の造成を可能にすることができるかどうかを調べる必要がある。また,アヒルと食肉鶏を利用したウコン畑の雑草防除を比較行動学的に調べた結果,両家禽ともウコンより雑草を好んで採食するため除草作業の一役を担うことがわかった。しかし,アヒルでは休息行動が多くみられ,踏み倒し行動による雑草防除,一方,食肉鶏では,探査行動が多く,つつきによる防除が認められた。
著者
里井 洋一
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

今研究において二つの目標を設定した。一つは一つの爆弾の被害状況がわかる教材をつくることであり、二つめは太平洋地域における爆撃被害の質的、量的状況の分布教材をつくることにある。1、爆弾被害典型教材として「不発弾」教材を開発した。「不発弾」教材は次の三つの教材性をもつ。(1)砲弾や爆弾が不発弾となった時点で、加害者(国家等)の政治的な意図と関係なく地域民衆に潜在的な脅威をあたえること。…潜在性(2)不発弾を地上から一掃しても、地中に半永久的に眠っているということ…永続性(3)不発弾は日本国内はもちろんのこと世界いたるところに存在していること…世界性2、米軍爆撃資料および空襲体験から、第二次世界大戦における太平洋地域被爆弾体験教材を開発した。この教材は次のような三つの性質をもつ。(1)米軍が太平洋地域に落とした爆弾の三分の二は、日本国内でなく日本が侵略した地域に落としたこと。(2)日本への爆弾の絶対多数が都市地域に対する焼夷弾であるのにたいして、侵略地域の爆弾は高性能爆弾が圧倒的に多く、その被爆地域は都市部にかぎらず全領域にひろがっていること。(3)(2)の性質は、日本国内唯一地上戦を体験した沖縄と共通すること。
著者
菅井 清美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

20歳から64歳の年齢の異なる被験者8名を用いて、着用衣服素材の身体局所の皮膚温および衣服気候におよぼす影響を検討した。環境温度34℃、湿度45%、気流0.1m/secに調整した人工気候室内で、環境湿度のみを変化させた安静座位実験を行なった。着用衣服は綿/ポリエステルの二層構造からなるトリコット布で作製したシャツとズボンで肌側への着用の仕方をかえて、環境湿度変化の影響を比較した。実験開始約1時間前に人工気候室に入室した被験者は約10分間安静の後、裸体と下着の重量を測定し、シャツとズボンを着用した。温湿度センサ-と購入した皮膚温測定センサ-を装着後、ベッドスケ-ル上の椅子に安静座位状態をとった。実験時間は120分で、20分後に環境湿度を70%にセット上昇させ、70分に再び45%にセット下降させた。各センサ-を購入したサ-ミスタ温度デ-タ収録装置とさらにパ-ソナルコンピュ-タに接続して1分ごとに皮膚温と衣服気候値を得た。本実験環境は比較的暑く、環境湿度を上昇させることによって非常に蒸し暑くなり、間接的な身体加熱の状態となる。多量の発汗の後、環境湿度を低下させると汗の蒸発はその部位から熱を奪い、冷却する。身体から環境への放熱は、発汗とともに体深部から末梢部への血流の増加によって行われ、いずれも皮膚温に大きな影響を与える。皮膚温測定6部位のうち、躯幹部と末梢部をそれぞれ3部位ずつ測定した。初期安静時の皮膚温を放射状グラフで比較した結果、高齢者は躯幹部より末梢部の方が高く、若年者は躯幹部の方が高かった。高齢者の熱に対する耐性が若年者より小さいという事実は、こうした環境に対する生理的な適応からきている可能性が示唆された。素材の比較では綿側を肌側にしたほうが発汗後の温度低下は大きかった。購入したデ-タ収録装置は多点測定ができるので、測定点をふやして高齢者の生理変化を追うつもりである。
著者
形本 静夫 青木 純一郎 内藤 久士
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ソフトボ-ル部活動が児童の体格および体力、特に健康に関連した体力要素に及ぼす影響を1年間にわたり追跡研究した。また、同時に練習時の運動強度およびエネルギ-消費量ならびに練習による尿中成分の変化についても検討を加えた。被験者にはソフトボ-ル部活動に定期的に参加している小学校4年生男子7名と5年生男子6名の計13名と日頃規則的に身体活動を行なっていない5年生男子6名を用いた。なお、5年生部員は翌年の8月の時点でトレ-ニングを中止した。練習時間は冬季が約2時間、夏季は4〜5時間であった。部員が冬季および夏季にそれぞれ平均1時間53分および4時間31分練習に参加したときの運動強度は、被験者のVo_2maxの46±11および39±13%に相当し、冬季の方が高い傾向にあった。また、1時間当たりのエネルギ-消費量も冬季(235±62kcal)が夏季(200±59kcal)よりも高い傾向にあった。しかし、部員が夏季に1日5時間の練習に参加したときのエネルギ-消費量は彼らの1日のエネルギ-所要量の約1/2の1000kcalに達し、栄養学的な配慮が不可欠であることが示唆された。また、練習による蛋白尿の出現は冬季に17例中8例(±〜+)、夏季に18例中11例(±〜++)に認められたが、++の反応(3例)は夏季のみにしか観察されなかった。1年後、トレ-ニングを継続した4年生部員の身長、体重、除脂肪体重、握力、背筋力、垂直跳び、反復横跳びおよび最大換気量ならびにVo_2maxの絶対値には有意な改善が認められた。しかし、体脂肪率や体重1kg当たりの最大換気量およびVo_2maxに有意な変化は見られなかった。このような傾向は夏以降トレ-ニングを中止した5年生部員や対照群の児童にも観察され、定期的なソフトボ-ルへの練習参加が児童の体格や健康に関連した体力要素に及ぼす影響は必ずしも明らかではなかった。
著者
齊藤 愼一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、持久性運動後に低下した筋グリコーゲンの回復について、炭水化物摂取タイミングの栄養効果をヒトで明らかにすることに加えて、もっと簡便にその効果を知ることのできる方法の開発にある。平成9年度には、夕方の練習で低下した筋グリコーゲンを翌朝の早朝練習の前までに充分回復させるために、夕食のタイミング(練習終了後から夕食まで)のあり方に目標を絞って、以下の様に検討した。すなわち、健康な成人男子を用いて、1週間の間隔をとって2回、2日間づつの実験日を設けた。いずれの実験でも第一日の夕方に10キロメートルを負荷し、その直後にウエイトトレーニングを負荷した後に、調製した夕食を運動負荷終了後1時間以内と、3時間後の場合の2つに分けて実験を行った。いずれの実験でも一夜安静に休養させた後の翌朝の朝食前に大腿筋より筋サンプルを採取した。また、前日の運動直後にも大腿筋より筋サンプルを採取した。これらのサンプルの筋グリコーゲンを分析した。その結果、運動直後に夕食をとると翌朝の筋グリコーゲン量は高くなり有意に回復したが、運動3時間後に夕食をとると回復が不完全なものが認められた。したがって、夕方の練習で低下した筋グリコーゲンを、翌朝の朝練習前までに回復させるには確実性が高いことがわかった.平成10年度は、平成9年度とほぼ同じ実験をおこなった.第一日の夕方のトレーニング後に、調製した夕食を運動負荷終了2時間後にとる条件で、1つは運動直後に高糖質食のコーンフロステをとる場合ととらない場合の2つに分けて実験を行った。いずれの実験でも一夜安静に休養させた後の翌朝の朝食前に血液を採取し、その後に調整食をとらせ、その後15,30,60,90分に採血した。その結果、運動直後に高糖質の補食をとっても翌朝の朝食後の血糖反応に差はなかった。
著者
岩崎 竹彦
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

現在、各地の地域博物館で行われている回想法について、博物館の関与の在り方から3タイプに分類し、それぞれの長所、短所を明らかにした上で望ましい実践方法を提言した。民具がなぜ高齢者の豊かな回想を引き出しうるのかを展覧会を開催することで広く社会に周知すると共に、民具の文化財価値の啓蒙普及に努めた。また、そうした活動を通して回想法は博物館振興につながることを明らかにした。さらに現代人の記憶から時々の社会・時代を象徴するモノが見えてくることを提言し、歴史博物館の現代史展示及び近現代の生活文化にかかる資料収集に有効な事例を収集した。
著者
松本 卓也
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

走査トンネル顕微鏡で分子や表面の励起過程を観察しようとするとき、試料基板に電気伝導性が必要であるため、基板への脱励起が深刻な影響を及ぼす。これに対して、原子間力顕微鏡は、絶縁体上での測定が可能であるので、素電荷を容易に検出できる。しかし、原子間力顕微鏡は力学応答を基礎とするため、時間分解能は極めて低く、動的な過程の検出には不向きであると考えられてきた。本研究では、近年、急速に発展した非接触原子間力顕微鏡をベースに、カンチレバーの振動とパルスレーザーを同期させることにより、ミリ秒以下、サブマイクロ秒に及ぶ時間分解能で試料-探針間に働く力を検出することに成功した。非接触原子間力顕微鏡では、局所的な力は、試料が探針に最近接したおよそ1マイクロ秒程度の時間しか働かない。この事実を応用して、パルスレーザー照射による電荷生成の後、ある遅延時間で探針が試料に対して最近接するように制御すれば、時間分解力検出が可能になる。実験では、シリコン基板上に形成した銅フタロシアニン薄摸を試料とし、励起光源として半導体励起YAGレーザーを試料-探針間に浅い角度で照射した。高い感度と空間分解能が得られる非接触原子間力顕微鏡では、探針の振動は自励発振で、その周波数は変動する。従って、外部のトリガーでカンチレバーの振動とパルスレーザー照射のタイミングを制御することはできない。そこで、制御回路を自作し、カンチレバーの振動を一周期ごとに検出し、これをもとに次の周期の運動とのタイミングをとることで、一定の遅延時間制御を実現した。この方法により、実際に遅延時間に対して、半値幅約2マイクロ秒の力学応答を検出することに成功した。
著者
寺川 進 阿部 勝行 櫻井 孝司
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

取り扱いが容易でかつ最も高性能の、超高開口数対物レンズ使用のエバネッセンス顕微鏡を目指して、その照明用光束の導入法について調べた。レーザー光直接方式、円錐ミラー方式、単一モードファイバー方式を比較したところ、単一モードファイバー式が安全性、視野の広さ、簡便性において優れていた。この方式はメーカーの採用するところとなった。しかし、装置は高価で、やや不安定性があり、直接方式にも利点があった。エバネッセンス法を用いて、クロマフィン細胞やβ細胞の開口放出の動態を調べた。両細胞で顆粒内の蛍光物質がフラッシュ反応を伴って放出され、その大きさは顆粒によって大きく異なることが明らかとなった。このフラッシュは、顆粒内から細胞外へ向かう水の噴出を示していた。レーザートラップ法で細胞近傍に微小ビーズを把持すると、分泌に伴いビーズがパルス状に動くことが確認できた。従って、顆粒の内容物は単に拡散で外に出るのでなく、穎粒から同時に噴出する水に乗って外に出ることが分かった。この水流の強さは顆粒膜に在るClチャネルの密度で決まり、抗体法によって観察したチャネル密度は顆粒によって大きくばらついていた。Clチャネル阻害剤は開口放出を抑えずにフラッシュ反応を抑えた。これらのことより、顆粒ごとにその放出の強さが大きく異なっていることが明らかになった。さらに、β細胞においては、顆粒からの放出直後にも、顆粒は細胞膜に結合したまま横方向に移動することが明らかになった。顆粒内物質は完全に放出されずに残留し、リサイクル後に再充填される可能性が示唆された。以上の結果を、すでに観察した共焦点顕微鏡による顆粒蛍光の段階的な減少の観察結果と合わせると、内分泌系の細胞では、開口放出に際しての信号物質の放出は量子的には起こっていないことが結論され、いわゆるquantal仮説は成り立たず、より複雑な調節作用が存在することが結論された。
著者
森 あおい
出版者
広島女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、メインストリーム社会から無視され、沈黙を強いられてきた人々の社会・文化表象を考察し、再評価することで、権威主義に対抗するマイノリティ・ディスコースの理論を構築することを目的とし、社会的に周縁化されてきた人々の存在を回復し、多様な価値観の上に成り立つ、他者を受け入れる寛容な社会を実現する可能性を明らかにした。
著者
本條 毅
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

都市気候の形成による環境の悪化に対して、有効な対策は非常に少ない。特に日本の場合、夏期の冷房による電力消費の増大とそれによる気温の上昇は、深刻な都市問題の一つであり、地球温暖化の原因の一つでもある。都市内の緑地は、植物の蒸発散による潜熱放出が大きいため、高温乾燥化を緩和する機能を持つと考えられ、緑地の存在は、いわば、パッシブな冷房装置として、都市の高温化に対する数少ない対策の一つである。保水性のよい材質で、道路や壁面を覆うのも同等の効果が望まれる。都市緑地や保水性材料舗装面(以下まとめて緑地とよぶ)の微気象の測定は、気温、湿度分布の測定、熱収支の測定などが多く行われており、緑地などが低温であることや潜熱輸送量が大きいことが示されてきたが、緑地の影響がどの程度の範囲まで及ぶかや、緑地による冷却効果がどの程度などの、都市計画に必要な知識については、まだ不足している部分が多い。本研究では、従来の地上部を中心とした測定に加えて、従来測定例の少ない地下部の温度分布にも着目した。地温は深ければ深いほど、長期の地表面上温度を平均、平滑化した値となるため、長期の地上部での気温の影響を地温分布測定からある程度推定することが可能である。長期的な緑地による冷却効果も、緑地内外の地温分布から推定できる可能性がある。新宿御苑を対象として、緑地内外での気温、地温分布、風速、熱収支などの測定を行った。このような測定をもとに、都市緑地での地温分布の実態や、熱収支の推定を行った。
著者
川村 千鶴子 中本 博皓 石橋 春男 山口 由二 北澤 恒人 福島 斉 貫 隆生 冨田 祐一 川村 千鶴子
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.現地環境調査の実施:グローバル化の影響によって大量消費社会となった太平洋島嶼諸国がどのような環境問題を抱えているのか、その実態を多面的に調査し、課題と問題解決への道を研究した。特に医療面と健康の被害、伝統文化の破壊と消滅、自動車の普及と廃車問題、廃棄物と廃車処理問題、環境教育の進展に主眼をおいた。それらの結果をまとめた調査報告書はすべて学会誌『環境創造』4,5,6,7,8号に収められている。2.調査対象国:トンガ王国、サモア、ツバル、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国、キリバス、ミクロネシア連邦、フィジー共和国、その他移民先の国々。日本国内では離島の廃車事情、自動車リサイクル工場を見学3.海外での研究発表:第9回太平洋芸術祭シンポジウム基調講演(2004年7月24日パラオ共和国)川村千鶴子 テーマ"Environmental Issues through a Global-Ethnoscape Point of View"4.ネットワークの構築:これらの調査国において環境問題に関わる研究者・実践者・行政・企業・国際機関などの人々との連携を深めることができ、そのネットワークをもとに国際シンポジウムを開催し広く実態を報告した。シンポジウム・パシフィックウエイ開催(3年間の研究結果を発表、英語・日本語通訳・翻訳)テーマ「太平洋島嶼諸国の連帯と環境問題への取り組み -廃棄物・廃車問題への日本の貢献-」日時:2005年2月14日 場所:大東文化大学板橋校舎、後援:日本島嶼学会、太平洋学会、日本オセアニア学会、太平洋諸島センター、(社)太平洋諸島地域研究所、NPO法人 汎太平洋上級教育推進機構基調講演:天野史郎(SPREP 南太平洋地域環境計画)、講演:カシオ・ミダ特命全権大使(ミクロネシア連邦共和国)、シンポジウム・パネリスト:川嶋正和(ミクロネシア振興協会事務局長)、竹内啓介(全日本自動車リサイクル事業連盟副理事長)、長嶋俊介(鹿児島大学多島圏研究センター教授)、石橋春男(環境創造学部学部長)、川村千鶴子(研究代表)5.さらに座談会の開催し、自動車リサイクルの専門家との連携からいくつかの解決策を提案:3月10日(司会:川村千鶴子)J・フリッツ公使(ミクロネシア連邦大使館)、竹内啓介、川嶋正和、貫隆夫、貫真英6.以上の研究論文と調査報告書、シンポジウム、座談会を編集し、研究成果報告書にまとめ製本した。国内の関係者はもとより海外の関係者にも配布。2006年に予定されている太平洋島サミットの基礎資料としても役立にたち、多数のNPO法人の実践者、マスコミ関係者、他大学との連携も深めることができた。
著者
大野 和彦 中島 浩
出版者
三重大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本課題の目的は、ITシステム基盤を支える実用技術の一環として超大規模計算タスク群のスケジューリング手法を開発することであり、高精度でスケーブルかつ他の基盤技術との協調を目指しでいる。従来の研究成果であるタスクの実行性能モデリング技術と、それ利用したスケジューリング手法をベースとし、これを発展させる形で研究を行っている。本年度は実環境の性能変動に対応するため、動的スケジューリングの研究を行った。動的な変動に対し良いスケジューリング長を保ち続けるには変動のたびに静的スケジューリングを再実行する動的再スケジューリング手法が有効であるが、頻繁に変動が生じる実環境ではスケジューリングコストが大きく実用的でない。そこで、変動をトリガーとする従来の手法に対し、タスクの終了をトリガーとする手法を提案した。さらに、スケジューリング結果に大きく影響するタスクの終了時のみをトリガーとすることで、再スケジューリング回数を大幅に削減した。シミュレーション評価の結果、提案手法により再スケジューリング回数が数百分の一に抑えられる一方で、スケジューリング長の悪化は5%程度にとどまった。また、前年度の成果である大規模ワークフローの縮約手法について、詳細な設計および実装・評価を行った。性能評価の結果、完全縮約可能な場合の必要メモリ量は規模に依らず、ランダムなワークフローで80KB程度、単純な実ワークフローでは2KBであり、100万タスクで200MBほどを必要とする従来手法に対し、大幅に削減できた。さらに、性能モデルの高性能計算への応用として、多次元配列を時間方向にタイリンゲすることでキャッシュを有効活用する最適化手法を時間発展シミュレーションに適用する際の最適パラメータ推定を行った。京大のT2K Open Supercomputer上で評価した結果、2次元拡散方程式の陽的求解や3次元FDTD法においてほぼ最適なパラメータが得られ、前者ではタイリングを使用しない場合に対して約2倍の速度向上を得ることができた。
著者
長岡 伸一 長嶋 雲兵 今村 隆史 小谷野 猪之助
出版者
愛媛大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

真空紫外光を用いて有機金属化合物の金属の内穀電子を励起すると,金属イオンが選択的に極めて効率よく生成する。本研究では,このような選択的かつ高効率な金属イオン生成の最適条件を求め,真空紫外光を用いた半導体製造プロセスにおける効率の高い化学気相蒸着(CVD)の方法を開発することを目的とする。2年間の期間で次のような研究を行なった。1。本研究を行なうためには,高強度高収束性の単色真空紫外光源が必要であり,それには分光器に光を導く前置光学系が重要である。そのために新たに非ガウス光学に基づく収差補正型の高反射ミラ-システムを設計製作し,分子科学研究所極端紫外光実験施設のBL3Bビ-ムラインのTEPSICOーII装置に装着した。新たに製作した高反射ミラ-システムは従来のものに比べて飛躍的に光強度が増大し,研究効率が著しく向上した。2,種々の有機金属化合物において,最も外のd内殻イオン化後には金属イオンとモノメチル金属イオンが生成し,解離パタ-ンは混成軌道を用いて説明できることが示された。3,中心金属の深い内殻を励起するとカスケ-ドオ-ジェが起こり多価イオンが生成し,リガンドの内殻を励起するとKVレオ-ジェが起こり2価イオンが生成するというような励起サイトに依在した解離過程が観測された。4,三メチルアルミニウムのAl:2P内殻付近においてアルミニウムイオンを含むイオン対の生成が増大することが見いだされた。