著者
橋本 寿夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.837-839, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
1
被引用文献数
2

鹿沼市は麻の生産量日本一の産地。優れた品質の「野州麻」を古くから全国各地に出荷してきた。しかし代替繊維の台頭などにより栽培面積は激減。幻覚成分が含まれる麻の盗難も相次ぎ野州麻が存続の危機に。そうした中、栃木県農業試験場が無毒麻「とちぎしろ」の生育に成功。現在も無毒性維持のための栽培を続けている。後継者不足から産地としての存続が危ぶまれているが、最近、麻の栽培技術継承の動きや付加価値を付けての商品化などの取り組みも生まれてきている。
著者
永田 純子 後藤 優介 高木 俊人 兼子 伸吾 原田 正史
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.63-73, 2022 (Released:2023-02-15)
参考文献数
61

As the number of sightings of Japanese sika deer (Cervus nippon) increases in Ibaraki Prefecture, Japan, male sika deer have recently appeared in Tsukuba City (2015 and 2016) and Yuki City (2019), located in the southwestern part of the prefecture (ISW). We analyzed the mitochondrial DNA control region sequences of three individuals and compared them with those of sika deer in the neighboring areas to infer their areas of origin. The three individuals shared an identical haplotype 6TCG1 and repeat motif TD-2. Pairwise FST and Exact Test suggested significant genetic differentiation in the Nasu-Yaita/Boso Peninsula/Kanto Mountains and ISW. Based on these results, the most possible area of origin of these deer was Nikko in Tochigi Prefecture, which was the only area with the identical haplotype-repeat motif “6TCG1-TD-2”. The areas where we obtained the three deer are all very close to the Kokai River, which originates in the Nasu area, Tochigi Prefecture, and the Kinu River, which has its upper reaches in Nikko and northern Tochigi Prefecture. The sika deer in ISW may have migrated from Tochigi Prefecture using the green areas along these rivers as corridors.
著者
牛垣 雄矢 木谷 隆太郎 内藤 亮
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.85-97, 2016 (Released:2016-06-23)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

本研究は,東京都千代田区秋葉原地区を対象に,2006年と2013年に行った現地調査結果を基に,商業集積の特徴と変化を考察した.同地区ではメイド系店舗が集積し,飲食・サービス業化が進んでいる.アイドル関係の小売店や劇場も増加し,アニメ女性から実在する女性を嗜好する消費者へとターゲットが移りつつある.家電業界における企業再編の影響を受け,秋葉原駅付近の表通りでは戦前・戦後直後に開業した店舗が閉店して娯楽・飲食系のチェーン店が進出し,商業空間の均質化が進んでいる.街の飲食・サービス業化や街と関係性の薄い業種の店舗が集積したことで,消費者の関連購買行動が弱まり,商業集積地としての強みも減じている.一方,雑居ビルで構成される裏通りでは,メイド系店舗が多数入居して特徴のある空間を維持している.その雑居ビルでも残存・成長できる店舗は少なく,少女アニメ関係やメイド系店舗は激しく入れ替わる形でその集積を維持している.
著者
武村 正義
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.367-368, 1981-05-30 (Released:2010-03-18)
著者
Seiji Kobayashi Kazunori Fugo Ryo Hatano Kazuto Yamazaki Chikao Morimoto Hiroyuki Terawaki
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.1027-22, (Released:2023-02-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

As coronavirus disease 2019 (COVID-19) vaccine booster campaigns progress worldwide, new reports of complications following COVID-19 vaccination have emerged. We herein report a case of new-onset anti-glomerular basement membrane (GBM) disease concomitant with myeloperoxidase-antineutrophil cytoplasmic antibody positivity concurrent with high levels of interleukin (IL)-26 following the second dose of the Pfizer-BioNTech COVID-19 vaccine. The temporal association with vaccination in this case suggests that an enhanced neutrophilic immune response through IL-26 may have triggered necrotizing glomerulonephritis and a T-cell-mediated immune response to GBMs, leading to the development of anti-GBM antibodies, with an enhanced B-cell response after the vaccination triggering anti-GBM IgG and the onset of anti-GBM disease.
著者
中野 綾子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.22-34, 2012-11-10 (Released:2018-01-12)

本論は、学徒兵として戦場に行く可能性のあった学生の読書行為を視座とし、日本出版文化協会による読者層別図書推薦運動の言説を学生メディアなど多様な資料をもとに分析することで、戦場と読書が結びついていくさまを明らかにした。そこからは、従来のロマン的で典型的な学徒兵の読書イメージではない、戦場における「望まれていた書物」と「望んでいた書物」、「読める書物」の三つが複雑に絡み合った複数の読書イメージの可能性が立ち上がってくる。
著者
川越 敏司
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.15-25, 2019-01-18 (Released:2019-01-19)
参考文献数
30

実験経済学においては被験者の選好統制を行うために報酬を支払うが,これまで使用されてきた様々な報酬支払法のどれにも問題があり,これらの問題を回避するには1回限りの実験を行う必要があることを提案する.
著者
吉村 彰大 松野 泰也
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会誌 (ISSN:18802761)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.54-69, 2019 (Released:2019-01-25)
参考文献数
47
被引用文献数
1 1

鉄道は環境負荷の小さい交通機関であり、低炭素社会の構築に重要でありながら、近年は赤字路線の廃止と他輸送機関への代替が続いている。近年、費用便益分析が鉄道存廃の判断基準に用いられているが、鉄道の廃止に伴う周辺道路への影響や交通権の保障などの観点から、費用便益分析のみを判断基準とするのは好ましくない。そのため本研究では、鉄道路線の廃止が並行道路に与える影響の評価と、それに伴う経済的 / 環境的負担の比較、検討を通じて、路線が持つ社会的な存在意義の評価に新たな切り口を提供することを目的とした。具体的には、鉄道の存廃による並行道路の混雑変化への影響と、CO2排出量変化を評価した。さらに、路線の赤字と廃止によって必要となる道路改良費を比較した。対象は、既に廃止された2路線と、経営安定性の低い13路線とした。その結果、廃止された2路線では、利用者の80%が自動車利用に転換しても道路混雑は悪化しないと推計され、実際の道路状況とよく一致した。現存する13路線では、7路線が廃止によって並行道路の混雑を悪化させると予測され、うち6路線では大幅な悪化が予想された。この6路線では、鉄道の赤字額が周辺道路の道路改良費を下回ったことから、路線の維持がより合理的であることが示唆された。CO2排出量では、利用者数の最も少ない阿佐海岸鉄道を除いて鉄道の運行によって軽減できていると推計された。この結果から、鉄道の運行によってCO2排出量を削減するためには、一定以上の利用が必要であるという既存研究と同様の結果が確認された一方、排出量の削減効果と経営安定性との相関は、混雑変化と経営安定性に比べ弱いことが示唆された。本研究を通じ、並行道路の混雑変化と財政負担、CO2排出量変化を個々に比較、検討することが、地方鉄道の社会的な存在意義を評価する新たな切り口となることが示唆された。
著者
砂原 秀樹 村井 純
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.571-581, 2013-12-01 (Released:2013-12-01)
参考文献数
14

1984年10月,東京工業大学,慶應義塾大学,東京大学のUNIXマシンが接続され,JUNETとよばれるネットワークが誕生した。JUNETは,電話網の上に構築されたネットワークであったが現在のインターネットの基礎となったネットワークである。単にサービスを提供するだけでなく,人と人のつながり,つまりコミュニティーを生み,そこから次世代の計算機環境を考えるグループが誕生した。これがWIDEプロジェクトである。ここではInternet Protocol version 6(IPv6)の開発に関わる活動をはじめとして,グローバルなインターネットに資するさまざまな研究が進められてきた。本稿では,今年25年を迎えるWIDEプロジェクトの取り組みの歴史と成果,今後の展望について述べる。
著者
近藤 日出夫
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.157-176, 2008-10-20 (Released:2017-03-30)

女子少年による殺人で,最も多いのは今も昔も嬰児殺である.近年,妊娠中絶,できちゃった婚,シングルマザーなど望まない妊娠に対する選択肢が増加したにもかかわらず,女子少年による嬰児殺は横ばいのまま推移し,根絶させるに至っておらず,現在でも女子少年による嬰児殺の背景にある問題は十分に解決されたとはいえない.そこで本稿では,最近5年間に嬰児殺を犯した女子少年について,資質的特徴に基づいて,抑制型,不安定型,未熟型の3つのタイプに分け,それぞれのタイプごとに異性関係の持ち方,家族関係の特徴などから嬰児殺に至る背景要因を分析した.親に過剰な気遣いをするなど,自らの率直な感情表現を抑えがちであったタイプを抑制型,家庭的な問題を背景に情緒面での安定が図られてきていないタイプを不安定型,困難場面における問題解決能力に劣り,状況に依存した受動的な生き方を選択してきたタイプを未熟型とし,分析した結果,タイプごとに妊娠から犯行までの経緯もそれぞれ特徴があることを明らかにした.
著者
新美 明夫 植村 勝彦
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.1-12, 1984-09-30 (Released:2017-07-28)

先に構成した学齢期心身障害児をもつ父母のストレス尺度(植村・新美、1983)について、その因子構造と、障害児の加齢に伴う変化を明らかにすることを目的として、調査・分析を行った。父母各31下位尺度について、主因子解/バリマックス回転の結果、母親は、問題行動と日常生活、将来不安、人間関係、学校教育、夫婦関係、社会資源、療育方針の7因子、父親は、人間関係全般、現状と将来、社会資源と地域社会、学校教育、問題行動、健康状態の6因子を抽出した。次に、障害児の加齢に伴う因子構造の変化を探るべく、障害児の学年によってサンプルを父母各3群に分け、おのおのの因子構造を比較した。その結果、母親は7因子中5因子、父親は6因子中4因子が、3群すべてに共通する因子と判断された。他の因子については、障害児の加齢に伴って因子構造に変化がみられ、その多くが小学校低学年と高学年の間に起こることが指摘された。
著者
井上 奈津美 井上 遠 松本 斉 境 優 吉田 丈人 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2019, (Released:2021-05-24)
参考文献数
61

樹洞は、多くの生物がねぐらや営巣場所として利用する森林生態系における重要なマイクロハビタットである。気候帯や地域に応じて樹洞の現存量や、樹洞の形成に関わる要因は大きく異なっており、樹洞利用生物の保全のためにはそれらを明らかにすることが重要である。本研究では、奄美大島の世界的にも希少な湿潤な亜熱帯照葉樹林を対象に、伐採履歴が異なる 2つの森林タイプ(成熟林と二次林)において、樹木サイズや樹種構成、樹洞の現存量を明らかにするとともに、樹種ごとに形成される樹洞の特徴を把握した。奄美大島の亜熱帯照葉樹林は、他の地域の熱帯林または亜熱帯林と比較して樹洞の現存量は多く、キツツキの穿孔による樹洞と比べて腐朽による樹洞が高い割合を占めていた。胸高直径( DBH)30 cm以上の樹木において、成熟林では二次林と比較して、ヘクタールあたりの幹数、樹洞を有する幹数、樹洞数が有意に多かった。いずれの森林タイプにおいてもスダジイが最も優占しており(胸高直径 15 cm以上の幹に占める割合は成熟林で 48%、二次林で 66%)、成熟林では次いでイジュ( 10.8%)とイスノキ(10.3%)、二次林ではイジュ( 9.9%)とリュウキュウマツ( 7.6%)が優占していた。記録された樹洞について、一般化線形混合モデルを用いて幹ごとの樹洞数に影響する要因を検討したところ、胸高直径が大きくなるほどそれぞれの幹が有する樹洞数が多かったほか、樹種ではイスノキで最も樹洞数が多く、スダジイ、イジュがそれに続いた。確認された樹洞の 90%はスダジイとイスノキに形成されており、イスノキに形成された樹洞はスダジイに形成された樹洞よりも地面から入口下端までの高さが有意に高かった。 CCDカメラを用いて一部の樹洞の内部を観察したところ、ルリカケスもしくはケナガネズミの利用の痕跡および、リュウキュウコノハズクの繁殖が確認された。樹洞が形成されやすいイスノキの大径木を含めて成熟した亜熱帯照葉樹林を優先的に保全することが、樹洞を利用する鳥類や哺乳類の重要な繁殖・生息場所の維持、保全につながると考えられた。
著者
新谷 洋二 堤 佳代
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.113-119, 1987-06-20 (Released:2010-06-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

封建都市城下町が近代都市へと再編し発展する際、近代の代表的交通機関である鉄道が及ぼした影響は大きい。交通は都市そのものの構造を大きく規定するものであり、この構造如何によって、都市の発展は大きく左右されるものである。本研究では、鉄道がどのようにして城下町の近代都市化を促進していったかを、地図上に見られる形態的変化を追うことにより明らかにしようとした。その結果、次の事が明らかになった。鉄道は確かに都市の発達を助長した。それは、どの都市でも鉄道駅に向かって市街地が伸びていることからも明らかである。しかし、その市街地の伸展の度合や時期は、各都市で大きく異なる。それには、鉄道建設当時に都市のもつポテンシャルが各都市ごとに異なり、鉄道を利用して発達できる力をもっていたか否かによって、差が生じたものと考えられる。さらに、市街化の進む過程において、鉄道路線が壁となり、そこで市街化の進度が鈍くなる都市と、それを一早く乗り越えていく都市とがみられる。これにも同様の理由が挙げられる。付け加えて、そのポテンシャルが近世以来のものだけでなく、近代以降形成されたものをも含む。つまり路線を越える力は、近世の石高とか産業に左右されるものではなく、駅方面へ市街化が進む過程で形成された工場及びその関連施設の立地に大きく影響されている。そして、駅の表と裏を結ぶ地下道等の建設がこれを促進している。また、その際、市民性、風土といった目に見えないものも無視できない。