著者
倉本 充子 西田 晴美 越智 徹 釣井 千恵 ホーソン ティモシー・フロイド
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

2年にわたり実施したコンピュータによる英文理解力テストを含む数種の調査と面接で得られたデータの質的分析を総合的に比較検討した結果、本研究において開発したタイプBの英文理解力テストは、学習者の英文理解力を予測するテストとして、限られた時間内で実施でき、かつ、十分な説明力があることが示唆された。これをWBT学習支援システムに組み込むことで、授業に参加する異なるレベルの学習者の自律学習習慣の形成を補助することが可能となった。
著者
服部 哲弥 南 就将 安田 公美 厚地 淳 服部 久美子 竹田 雅好 鈴木 由紀 針谷 祐
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

ウェブで見られるランキングの時間発展のモデルとなる確率順位付け模型の位置ジャンプ率結合経験分布の大数の法則(流体力学的極限)と軌道についてのカオスの伝搬を一定の仮定の下で証明した.結果はオンラインストアのロングテール構造の解析に適用できる.成果は学術論等の専門的な場での発表の他に「Amazonランキングの謎を解く」(服部哲弥著,化学同人出版)で紹介した.
著者
平野 吉直 小林 祥之 大日方 彩香
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、 中1ギャップ対策としての野外教育活動の成果を明らかにすることである。本研究では、野外教育プログラムを企画し、3中学校を対象にプログラムを実施した。また、中1ギャップを乗り越える力を測定する調査用紙を作成し、プログラムの実施前後の調査をとおしてプログラムの成果を分析した。さらに、プログラム直後に実施した生徒へのふりかえりシートの内容と、研究対象校の引率教諭へのインタビュー調査を通して、プログラムの成果を分析した。
著者
遠藤 邦彦 宮地 直道 高橋 正樹 山川 修治 中山 裕則 大野 希一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

火山防災上,防災担当者や住民にとって真に役立つ活動的火山の次世代型ハザードマップの構築を目指し,7項目の目標に対してそれぞれ以下の成果を得た.主に富士山,比較で浅間山,箱根山を対象とした.1.漏れのない噴火履歴の解明:重点的な現地調査により,データの充実化を進めた.2.噴火発生確率のより正確な見積りとデータベース:噴火発生娘串の重要判断材料である富士山の階段ダイアグラムを新しいデータに基づいて改定した.また,データベースを充実させた.3.噴火のさまざまな癖:火口の位置やタイプ,火砕流の発生など,新資料を得た.4.発生確率は低いが影響の大きなイベント:富士山の代表事例として御殿場岩屑なだれ,滝沢火砕流を詳細に解明した.5.多様な噴火シナリオから災害リスクの検討へ:爆発的噴火のタイプ,溶岩流出のタイプの典型として宝永噴火,貞観噴火の詳細な検討を行い,前者について災害リスタの検討を進めた.6.大気や地表の熱情報から:富士山監視カメラシステムを継続的に運用し,雲や降雪状況の変化をホームページに公開した.地表面温度分布の分析成果を公表した.以上のa-fについてその成果を単行本「富士山のなぞを探る」として公表した.7.役に立つハザードマップヘ:噴火が近づき,あるいは始まった時に機器観測,監視カメラ,目視情報をはじめ,大気情報や地表の熱などを含め,多様な情報がリアルタイムに捉えられ,またハザードマップ上に迅速に示されるGISを利用したシステムを,防災担当者および研究者間で運用するDGI-RTSシステムとして構築し,一部を「富士山観測プロジェクト」としてウエブページに公開した[http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/quart/fuji-p/].これは公開済みの「富士山監視ネットワーク」と,さまざまな災害情報に関する「自然災害と環境間題」のページにリンクしている,
著者
勅使河原 可海 望月 雅光 高木 正則 南 紀子 関田 一彦 安野 舞子 川崎 高志
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、問題を作成することによって学習する学習手法において、教科書等から問題にできる箇所を探す作業や、作成した問題を見直す作業が、学生自身が感じる主観的な学習の役立ち度合いの向上に寄与できることが示唆された。また、学生による作問が可能な学習支援システム「CollabTest」の効果的な活用方法として、(1)授業内で作問と相互評価を実施する方法、(2)複数の科目を連動させた方法、(3)システム上の演習と教室の演習を融合させた方法、等が明らかになった。
著者
秦 邦生
出版者
津田塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、<情動>についての近年の批評的関心の台頭を踏まえて理論的枠組みを構築しつつ、英国モダニズム文学が同時代の「公共性」の変容過程に積極的に参入するさまを検証した。<情動>を個別作品の内面性や自律性を掘り崩す要素と見なすことで、シンクレア、ワイルド、ウルフなど、さまざまな作家の作品が同時代社会に批評的に介入し、それらが共同体の再編に向けたユートピア的衝動に駆動されているさまを浮き彫りにした。
著者
菊野 亨 水野 修 水野 修
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ソフトウェア開発のプロジェクトにおける混乱状態回避を目的として,プロジェクトに関するメトリクスから混乱するかどうかの診断手法を開発した.実際のソフトウェア開発プロジェクトにおいて収集されたメトリクスデータを利用して,その有効性を示した.
著者
守本 晃 芦野 隆一 萬代 武史
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

パーティ会場のような,複数の音声やノイズの混じった喧噪な環境でも,我々は会話を楽しめる.つまり,入り混じった音声信号から特定の話者の会話を分離できる.この聴覚の能力をカクテルパーティ効果という.カクテルパーティ効果を工学的に解釈すると,複数個のセンサーで捉えた複数の観測信号から信号源の個数と位置を決定し信号源を再構成する逆問題になる.この逆問題をブラインド信号源分離と呼ぶ.これは自動受け答えロボットなどを開発する際には,「だれがどんな質問をしているのか」を特定するために必要な技術である.従来の研究は,独立成分分析という手法を用いて信号源分離を行ってきた.ブラインド信号源分離問題は,信号源と観測信号の間の数理モデルに対して,空間的混合問題,時間的混合問題,時空間的混合問題の3種類に分類される.本研究課題では,ウェーブレット解析という信号を時間と周波数の情報に分離する方法論を用いて信号源分離問題を取り扱った.空間的混合問題と一番簡単な時空間混合問題に対しては,数値シミュレーションを行い,我々の提案した方法の利点が1.信号源の数が最初に推定できること2.推定した信号源の数を用いて,他のパラメータも高精度に推定できること3.再構成した信号源の誤差が小さいことであることを確認したさらに空間的混合問題の場合に,複数種類のウェーブレット関数を用いることでノイズに対して精度良く分離できることも示した.時空間分離問題の場合には,信号の到着時間の時間差から信号源の位置を推定する方法について考察した.また,解析信号とウェーブレット解析・短時間フーリエ変換の関係についても調査した.
著者
久保 雅義 小林 英一 林 美鶴 原田 賢治 辻 啓介
出版者
大島商船高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、津波が沿岸・港湾域に来襲したときの船舶の被害を最小限にとどめる対応方策を検討することを目的として実施した。まずAIS(船舶自動識別装置)データの活用により、実際の航行および在港船舶の実態が把握でき、津波来襲時に船舶がとるべき行動解析のための基礎データが収集できた。次に今回開発した多数船舶が同時に避難行動をとる場合の挙動シミュレーション手法により、このAISデータをベースとして船舶避難シミュレーションを実施した結果、備讃瀬戸海域では今回想定した避難水域へ船舶が安全に避難できることが分かった。またLNG船について、津波来襲時の避難挙動の解析をシミュレーション計算により実施した結果、接岸場所よりある程度離れた場所で津波発生を認知した場合には、概ね安全に津波から逃れることができることが分かった。一方で入船係船状態からの港外避難では、途中で津波と遭遇する可能性も示唆されたが、出船係船とすることにより安全に避難できることを示した。さらに津波来襲時に係留中のLNGがその係留状態のままやりすごす状態について検討を行った。この計算を実施するに先立ち、係留状態の把握・検証用データ取得のため係留LNGについて現地実験を実施した。計測された係留張力や船体動揺のデータを計算結果と比較することにより、今回使用する係留シミュレーション手法の妥当性を検証するとともに、実係留状態での津波来襲時の挙動解析を行い安全性の検証を行った。また今回複数船舶が相互に係留された状態で津波来襲を受ける場合の挙動解析コードを開発した。これを用いた解析ではシンカー係留では係留索張力が課題となり安全使用荷重を超える懸念があるものの、たとえばアンカー係留に変更することなどにより係留索破断を避けることができることも分かった。今回開発した津波来襲時の船舶挙動解析手法群は、様々な状態での津波来襲時の挙動を解析でき、この結果を活用して津波対策指針策定につなげることができることが分かった。
著者
安藤 邦廣
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1金沢市湯涌の茅場(カリヤスモドキ)と茅葺き技術石川県金沢市湯涌のメガヤと呼ばれるカリヤスモドキの茅場の現地調査を行い、その利用体系を明らかにした。また、標高の高い地域にカリヤスモドキが自生しており、それを利用して近年まで屋根が葺かれていた。これまでカリヤスの類いは、白川郷や五箇山のようなごく限られた山村でのみ使われてきた材料と考えられていたが、北陸や信越の比較的標高の高い地域に広く分布する材料であることが明らかになった。2岐阜県宮川村種蔵集落における茅の利用体系岐阜県宮川村種蔵集落における茅の利用体系について現地調査および聞き取り調査を行った。その結果、この地域では、民家はすべて茅葺きであり、養蚕業の隆盛とともに、屋根裏空間の拡大が見られた。その後、昭和初期に養蚕業から農耕馬の飼育貸し付けに生業が変わると、茅の利用は農耕馬の飼料にむけられ、屋根はクリの木羽葺きに変わった。その際に屋根裏は養蚕の蚕室としての拡大されたときよりもさらに冬期間の飼料の保存場所として拡大され、クリ木羽葺きの三層構造の民家に変遷した。3岐阜県山之村のコウガイ棟岐阜県山之村のコウガイ棟の現地調査および職人への聞き取りを行った。コウガイ棟は、白川郷や五箇山の合掌造りとその下流域から能登半島にかけて分布すると考えられてきたが、岐阜県の山間部全域にその分布が広がっていることが分かった。4能登の炭焼き小屋における逆葺き技術能登に現在もつくられている炭焼き小屋の現地調査と聞き取り、逆葺きの技術体系を明らかにした。5 田麦俣の甲造りの多層民家山形県田麦俣の多層民家の甲造りの茅葺きの現地調査を行い、道具、材料、葺き方の詳細を明らかにした。
著者
楠原 庸子
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

ギムネマシルベスタという植物に含まれるペプチドのグルマリンは、マウスの鼓索神経(CT:舌前方支配神経)の甘味応答を抑制する。当研究室の研究から、マウスの甘味受容経路にはグルマリン感受性(GS)と非感受性(GI)が存在しており、GS経路にはGustが関与していることが明らかとなっている。さらに、うま味物質に核酸のIMPを混ぜることによるうま味の相乗効果はGS経路を経ることが示唆されている。また、マウスのCTを挫滅させると、GI応答は3週目から、GS応答は4週目から再発現することが明らかとなっている。このことから、GS、GI経路の味細胞-味神経間連絡に関わるガイダンス分子の解析に挑む。野性型マウス(WT)にて様々な味刺激によるCT応答を記録した。続いてマウスのCT挫滅後1~5週目の1週ごとに、CT応答を記録した。うま味応答は3週目からうま味の相乗効果は4週目から検出され、グルマリン感受性応答の発現時期と一致した。Gタンパク質共役型受容体であるTIR1はTIR3と二量体をなすことでうま味を受容し、T1R2とT1R3の二量体は甘味を受容することが知られている。T1R1を遺伝的に欠損させたT1R1-KOマウス(KO)を用いて、様々な味刺激に対するCT応答を記録した。うま味の相乗効果はWTに比べてKOで大きく減少していた。さらに甘味に対するCT応答もWTに比べてKOマウスでは有意に減少した。このことからも、うま味の相乗効果はGS経路を経る可能性が示唆された。またKOマウスの単一味細胞での応答においても、うま味の相乗効果は減少していた。味細胞のSingle cell RT-PCRにおいて、T1R1、T1R2、T1R3が同一の細胞に発現していることがわかった。このことから、うま味の相乗効果と甘味の一部は細胞レベルでも同一のGS経路を経ている可能性が示唆された。
著者
長尾 朋子
出版者
東京女学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

霞堤や水害防備林は,地域社会と河川が共生する視点に立脚した伝統的氾濫許容型治水システムであり,水防機能や立地に関する地域住民の理解と,地域社会による維持管理が必要になる.地域コミュニティの解体と相まって維持管理体制が形骸化しつつあるが,河川が本来保有するシステムを壊さない解決法の1つとして,持続可能な維持管理システムが重要であるため,行政ではなく地域住民主体による維持・管理される伝統的工法が再評価され,推奨されつつある.このような環境調和型の住民主体の治水システムは海外ではほとんど知られていなく,本邦から海外に発信することが可能な「環境共生型治水システム」のモデルとなりうる存在である.豪雨災害からの復興にあたって河川の地形変容プロセスを定量化し,伝統的治水工法の地形プロセスに与える影響、地域防災に与える影響を再評価した.水害防備林は地形プロセスと対応し治水機能をより発達させる事例が確認されていることから,地形条件の異なる諸河川において,伝統的治水構造物の実態と地形プロセスと治水機能を発達させる条件との関係を明らかにし比較検討した.宮崎県北川の激特事業は伝統的治水工法が採用されたが,2004年福井豪雨災害からの復旧計画では,足羽川では工事に伴って機能を認識しつつも伝統的治水工法はほぼ消滅した.また、近年は豪雨災害が起きていないが、伝統的治水工法が地域に根付いていた木津川,大都市河川として地域水防が消滅し,2007年被災寸前となった多摩川下流域と比較した.また,地震によって被災した北上川,ゲリラ豪雨による神戸の都市河川を調査した.地域住民の防災意識は、治水システムの変遷や水防組織と密接に関連していた.大規模水制の設置に伴い,地域住民の防災に対する意識は減退する傾向が強く,氾濫許容型をとりいれることは,地域住民防災意識を向上させる点にも意義がある.
著者
南石 晃明 木南 章 伊東 正一 吉田 泰治 福田 晋 矢部 光保 堀田 和彦 前田 幸嗣 豊 智行 新開 章司 甲斐 諭 樋口 昭則 石井 博昭 松下 秀介 伊藤 健 亀屋 隆志 八木 洋憲 森高 正博 多田 稔 土田 志郎 後藤 一寿 佐藤 正衛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

食料・農業・環境に関わる諸問題は,相互に密接に関連しており,その根底には「リスク」が深く関与している.このため,食料・農業・環境に関わる諸問題の解決には,「リスク」に対する理解が不可欠である.食料・農業・環境に潜むリスクには,どのようなものがあり,それらはどのように関連しており,さらにどのような対応が可能なのか?本研究では,学際的かつ国際的な視点からこれらの点について明らかにした.
著者
篠田 謙一 加藤 克知 北川 賀一 米田 穣
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではプレインカからインカ帝国成立期の人骨試料を用いて、集団の系統関係の解明と古代社会の多元的な復元を試みた。その結果、アンデス南海岸地域では、紀元前には北部海岸地域と遺伝的に似ているが、時代とともに山岳地域からの集団の移入を受け,インカ時代には集団の置換が起こったことが判明した。一方北海岸においては人口規模の違いから、集団の遺伝的組成に変化はなく、文化変容が遺伝的な変化を伴わないものであることが判明した。これらの結果は古代アンデスにおける文化変容を解釈する際に新たな重要な情報を付け加えることになった。
著者
黒澤 耕介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究では、天体衝突によって原始無生物地球上に生命前駆物質を供給する可能性について実験的に検証することを目的としている。先行研究から原始地球環境下では、天体衝突による生命前駆物質の合成効率は低く、生体関連分子までの化学進化を起こすのは難しいと考えられている。これは端的には、隕石中には窒素がほとんど含まれていないことが原因である。本研究では衝突天体物質に含まれる炭素と原始地球に豊富に存在したと考えられる窒素が効率よく反応する過程を提唱している。直径1km以下の天体が、低角度斜め衝突を起こした場合、衝突で粉砕された天体が下流側に飛び出し、周辺大気と激しく混合する。この過程は生命前駆物質として最重要物質であるシアノ化合物を効率よく生成できる可能性があるが、複雑な過程であるため、再現実験によるデータをもとにしたモデル化を行うことが求められている。今年度は、宇宙科学研究所の2段式軽ガス銃を利用し、再現実験を行う技術開発を行い、予備的な結果を取得した。従来加速銃を用いた実験では加速ガス、ガンデブリのために生成ガスの化学分析を行うことは困難であったが,これらの化学汚染を極力抑える手法を開発し、ガス分析を行う技術を確立することに成功した。弾丸,標的ともに酸素を含まないプラスチックを用いて、窒素中で衝突を起こした。最終的に生成された気体を簡易ガス検知管で分析したところ,およそ0.1%の蒸発炭素がシアノ化合物に変換されていることがわかった.シアノ化合物は生命起源に最も重要な役割を果たしたと考えられている。今後は実際の隕石試料を標的に用い、シアノ化合物の生成効率を計測する。またパラメータ依存性を調べることで現象のモデル化を行い、実際に原始地球表層環境での天体衝突によるシアノ化合物の合成量を推定していく。
著者
村上 悟 神谷 茂保 濱谷 義弘 長渕 裕 田中 敏 示野 信一
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

時間遅れをもつ方程式の典型例である関数微分方程式,積分微分方程式,ボルテラ差分方程式を中心に研究した.関数微分方程式に対する相空間における定数変化法の公式を利用して,摂動項をもつ関数微分方程式の解の漸近挙動を調べた.また,非線形関数微分方程式に対し,いくつかの不変多様体の存在定理を確立した.さらに,積分微分方程式を中心に,方程式の正値性を調べ,正値方程式に対する安定条件をより明確な形で与えた.
著者
森本 善樹 土江 松美
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

生物の二次代謝産物である生物活性天然有機化合物トリテルペンポリエーテルとアルカロイドの分子科学的研究を進展させるために、それらの化学合成研究を行った。その結果、オマエザキアノールの不斉全合成による全立体構造の決定、イソデヒドロチルシフェロールの化学合成法の開発、テウリレンとエケベリンD4の仮想生合成様オキサ環化反応の化学的再現に成功した。またハウアミンBのインデノテトラヒドロピリジン骨格の効率的合成を達成した。
著者
大高 明史
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

新たな採集によって得られた標本と博物館などに保管されている過去の標本の分類学的検討によって,日本列島に分布する50の淡水湖沼の深底部から,5科にわたる35分類群の水生貧毛類を記録した。貧毛類の群集構造は,湖沼の生物地理学的位置や栄養状態によって大きく異なっており,貧栄養湖では,密度は低いものの多様性の高い群集が見られた。一方,富栄養化の進行に伴って,ミズミミズ科イトミミズ亜科の特定の種群が高密度になって優占する群集に収れんする傾向が指摘された。この点から,深底部の群集構造の変化を追跡することで,また深底部と集水域の群集構造を比較することによって,湖底環境の変化や富栄養化の進行を監視できると考えられる。
著者
近江 崇宏
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究課題は、空間的に広がったシステムが示す協調的なダイナミクスのモデルリングを目的としている。主な対象として神経細胞集団のスパイク発火を想定している。しかしながら近年、神経細胞のスパイク発火と地震発生の現象論的な類似性が指摘されており、より発展的な観点から地震時系列についても対象として、研究を行ってきた。本研究課題1、2年目においては、主に成果の出ていた地震の時系列解析の研究について報告した。本年度の報告では、本課題の中心テーマである神経細胞集団のスパイク発火についての解析の研究についての詳細な報告を行う。まず単一の神経細胞のスパイク列の発生率をヒストグラムを用いて精度よく推定する手法の開発を行った。既存の手法はスパイクがポアソン過程に従って生成されているという想定に従っているが、実験で観察されるスパイク列はポアソンではないことがわかっている。そこで本研究では現実のデータに適用可能なように、既存の手法をより一般の場合への拡張を行った。そして、数値実験、実データを用いて、提案手法の有効性を示した。スパイクデータからの発生率推定は神経科学では実験データ解析の標準的手続きである。さらに本手法は簡潔であり、統計解析の基礎知識を持たない研究者でも容易に実装が可能になっている。そのため今後本提案手法が多くの研究者に使われると考えられる。また本研究は理論神経科学の一流紙Neural Computation誌から出版され、2011年度の神経回路学会において大会奨励賞を与えられた。二つ目の研では神経細胞集団のスパイク列から動物が将来起こす行動のタイミングを予測する研究を東北大学医学部のグループと共同で行った。24個の補足運動野の神経細胞のスパイク列から約1秒のタイミングで行動タイミングの予測が可能であることを明らかにした。この結果は脳信号を用いた外部機器の操作(BMI)への応用においても重要な結果であると考えられる。
著者
大園 真子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は,2008年岩手・宮城内陸地震後に観測した長期・広域の余効変動を説明するための粘弾性構造モデルの構築を試みた.また,先行研究との比較,モデルで説明できない部分についての考察を行い,博士論文としてまとめた.2010年8月31日までの稠密GPS観測から,水平成分で太平洋側から日本海側に至る広い範囲で10mm以上の変位が,上下成分で震源域近傍の顕著な沈降が見られた.この余効変動の主要因が粘弾性緩和であると判断し,粘弾性構造モデルによる推定を行った.上部地殻に対応する弾性層と下部地殻以深の粘弾性層から成る球殻成層構造を仮定し,弾性層の厚さHおよび粘弾性層の粘性係数ηの最適値を探索した.震源域近傍は他の要因による影響の可能性が考えられたため,試行錯誤の末,震央距離35km以上に分布する観測点のみを推定に用いた.2期間について調べた結果,本震後2ヶ月-1.5年間の観測値は,H=19.5-25.5km,η=2.4-3.4E+18Pa・s,2ヶ月-2.2年間の観測値は,H=17.0-23.5km,η=3.1-4.8E+18Pa・sとした時に最も良く説明される.推定した弾性層の下端の深さは,本研究対象領域の地震発生領域の下端に概ね対応している.粘性係数は,1896年陸羽地震後の余効変動から推定された結果の約1/3となる.この違いは,奥羽脊梁山脈直下の局所的低粘性領域を反映していることや,定常状態に戻る前の時間変化を見ていることなどの可能性が考えられるが本研究では結論づけられない.粘弾性緩和モデルのみでは説明できない残差が震源域近傍で生じるが,震源断層直上の2点については,この残差の約7-8割が余効すべりで説明でき,先行研究の推定とも概ね一致する.今後は,他の測地観測データと共に,地震波低速度域や火山の存在を考慮した,水平方向にも不均質な粘弾性構造モデルによる推定が重要となる.