著者
森 浩禎 BARRY L. Wanner
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

網羅的に遺伝的ネットワークを解明することを目的に、2重欠失株作製の系の開発と解析の評価を行った. 2重欠失の為の既存の欠失株ライブラリーにさらにもう1種類の欠失株ライブラリーの構築、単一欠失の接合による2重化のツールの開発、2重化のhighthroughput化、解析システムのそれぞれの開発を行った. 新規欠失株ライブラリーには、20ntのbarcodeを挿入し、創薬等のhighthroughputスクリーニングへの道も開いた.
著者
重信 秀治
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

生殖細胞の形成機構の普遍性と多様性-すなわちその進化-を理解するために,モデル生物ショウジョウバエでこの過程に働く遺伝子をゲノムワイドに同定し,他の生物種との比較を行った.まず,マイクロアレイを利用してショウジョウバエ生殖細胞の詳細な遺伝子発現プロファイルを得た.次に生殖細胞形成に関わる遺伝子群を他の昆虫と比較したところ,その多くは昆虫の間で保存されているが,ショウジョウバエ特異的な遺伝子(oskarなど)やnanos, vasaの種特異的な遺伝子重複(アブラムシ,カイコ)が明らかになった.
著者
松沢 哲郎 友永 雅己 田中 正之 林 美里 森村 成樹 大橋 岳
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008-06-04

人間の認知機能の発達をそれ以外の霊長類と比較した。進化的に最も近いチンパンジーが主な対象である。チンパンジーの子どもには人間のおとなより優れた瞬間記憶があるという新事実を見つけた。いわばチンパンジーは「いま、ここという世界」を生きているが、人間は生まれる前のことや死んだあとのことに思いをはせ、遠く離れた人に心を寄せる。人間の「想像するちから」はそれ以外の動物には見出しがたいことが明らかになった。
著者
小林 酉子
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

チューダー朝初期に王侯貴族のお抱え劇団が誕生してからエリザベス時代に至って商業劇団が最盛期を迎えるまで、この間の演劇がどのような演出の下で、どのような衣装で演じられたかを明らかにした。宮廷饗宴を演じていた俳優たちが宮廷外でも演じるようになると,饗宴衣装が民間の商業劇場へ流れ,ロンドンの市井の劇場でも使用された可能性が高い。本研究では,チューダー朝期を通じての演劇の演出と衣装の変化を追って,英国ルネサンス盛期の商業劇場の舞台がどのような有様であったかを検証した。
著者
有吉 哲也 有馬 裕 馬場 昭好
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

現在、多種多様なカラー撮影方法が研究・実用化されている。カラー情報をより容易に、同時に偽色やモアレを生じさせること無く簡単な画素構造にて得ることが求められている。本研究では、シリコン基板の側面に光を照射してカラー撮影を行う「側面照射型カラー撮像素子」の原理に基づき新しいカラー撮影の検討を行い、その基礎を確立して実現可能性を示した。
著者
岩本 諭
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

商品購入に併せて提供されるポイントは、EU・ドイツの競争法では「景品」として扱われ、ポイント提供は、「抱き合わせ取引」に該当する。2010年の欧州裁判所判決は、ポイント提供型抱き合わせを「公正競争・取引」の観点から原則自由とした。「自由競争」の観点からはポイント提供型抱き合わせが市場に与える競争制限効果が問題となる。日本では景表法の景品規制、独禁法の不公正な取引方法(一般指定9項)の規制枠組が考えられる。また、ポイントサービスの会計ルールを定める予定の国際会計基準の動向が注視される。
著者
古津 年章 児玉 安正 高薮 縁 柴垣 佳明 下舞 豊志
出版者
島根大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究課題は,スマトラにおける赤道大気レーダ(EAR)を中心にして熱帯積雲対流活動を総合的に観測し,対流活動の階層性ならびに対流圏起源と大気波動の振舞いを明らかにすることを目的とする.そのため,風の鉛直プロファイルを観測するEARと同時に気温や水蒸気密度の鉛直プロファイルや降雨の3次元構造を観測する機器,更に様々な地上測器を設置し,それらによる観測を実施してきた.取得されたデータ解析をすすめ,赤道スマトラ域を中心とした対流活動の特性ならびにそれに起因する大気擾乱や重力波に関して以下のことが明らかになった.1. 海洋大陸では,全赤道域平均に比べて,海洋と陸域の降雨特性が混合されて表れていることが見出された.この特徴は,雷活動にも現れていた.2. 赤道域特有の季節内変動であるMadden-Julian振動(MJO)やスーパー雲クラスター(SCC)に対応して, 3次元降雨構造が大きく変化する.大規模対流活動抑圧期には,却って水平規模が小さく背の高い対流が支配的になる.3. 大規模擾乱の内部にメソスケール雲クラスター(CC)が明確に現れる。SCCの東進はCCの連続的な発達の結果として生じており,西スマトラの山岳地形とも関係する.4. 対流活動の微物理過程の帰結として生じる雨滴粒径分布は,顕著な季節内変動,日周変化を示す.5. 上に述べた対流活動の時空間変動に伴い,雷活動度や熱源の鉛直分布が明確に変化する.これは,陸上と海上で異なる特性を示す.更に,短周期の鉛直流変動にも顕著な日周変化,季節内変化が現れる.
著者
新保 輝幸 三浦 大介 交告 尚史 深見 公雄 山岡 耕作 友野 哲彦 婁 小波 新保 輝幸
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

自然科学的アプローチ深見は、柏島周辺に設けた測点において、周年に渡って水質や微生物群集に関する調査を行った。その結果、同海域では基本的に貧栄養な環境であるものの、冬季には栄養塩濃度が、また夏季の底層付近では有機物濃度がそれぞれ増加する傾向が見られた。水質の変動は月齢や潮汐でも観察され、小潮の下げ潮時に栄養塩濃度や微生物の生物量が上昇することがわかった。以上の結果から、柏島周辺海域では基本的には貧栄養な黒潮の影響を受けているものの、短期的には貧栄養な内湾水が流入することもあり、これらが同海域の豊かな生物群集を支えている可能性があることが示唆された。山岡らは、後浜西部にラインセンサス区を設定し、底質によってゴロタ区、サンゴ区、死サンゴ区の3区に分け、2002年9月と3月に魚類生態について調査を行った。その結果、9月の調査では137種2,266個体が観察された。この種数は、以布利の同時期の出現数約70種のおよそ2倍に達し、柏島の魚類相の豊かさを証明する結果になった。3区の内では、サンゴ区で最多の種数が観察された。また以上のような調査を通じて調査海域の生物多様性に関する基礎データを蓄積中である。社会科学的アプローチ現地において、地域住民、漁協、ダイビング業者・ダイビング組合、町役場などの地域の利害プレイヤーに対するヒアリング調査と、関係諸機関からのデータ収集を行い、地域の実態の把握を行った上で、次のような研究を行った。交告らは、漁業とダイビング等の海洋レクリエーションの間でどのような利用秩序を構築するのが望ましいかを分析し、主体間で海面の利用調整を行うルールについて検討した。そして、そのルールにどのように法的な効力を持たせるかという点を追究した。新保らは、アンケートを用いた仮想状況評価法(CVM)および仮想旅行費用法によって、それらの自然資源の経済価値を評価するとともに、付け根方程式を推定してデータの信頼性を検証した。アンケートは、近隣で柏島への訪問客が多い岡山市、高松市、高知市の住民に対する郵送調査で行った。また友野は、オンサイトのアンケート調査を行い、これらの自然資源をダイビング等の海洋性レクリエーションで利用する場合の利用価値について、ゾーン・トラベルコスト法により評価した。婁は、柏島にとどまらず、沖縄や三浦半島など漁業とダイビング業の関係が問題となっているその他の地域についても調査を重ね、地域の自然資源を地域住民が多面的かつ持続的に利用して暮らしを立てていく「海業」という概念を提示し、従来の漁業・ダイビングサービス業の枠組みを超えた新たな形に産業構造を転換し、地域振興をはかっていくべきであるとして、その具体案を検討した。
著者
朝日田 卓 山下 洋
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

従来の形態学的手法では種判別が困難であった甲殻類消化管内容物から、ヒラメDNAを種特異的PCR法により効率的に検出する手法を開発した。また、実際のフィールド調査の際に欠かせない、大量のサンプルを効率的に処理することが可能な検出法の開発に、DNA-DNAハイブリダイゼーション法とELISA法を応用することにより成功した。本手法は、エビジャコ等の肉食性甲殻類による捕食後(水温20℃の条件下)8〜10時間程度までのサンプルからヒラメDNAを検出可能であり、PCRによる増幅後最大2000サンプル程度まで一回の検出反応で処理可能である。エビジャコ胃内容物の顕微鏡による観察においてほとんど内容物が確認できなかったサンプルからもヒラメDNAを検出できたが、消化が進んで内容物が確認できないサンプルからの検出は一般に不可能で当たり前と考えられる。この結果は、消化によるDNAの検出阻害の影響を極限まで排除できたことを示しており、従来捕食後4時間程度までのサンプルが限界であった検出可能範囲を大幅に拡大することが可能となった。これにより、ヒラメ被食生態の解明のためのフィールド調査への適用が可能となった。ヒラメの天然稚魚および放流種苗の被食実態の一端を明らかにする目的で実施したフィールド調査結果から、被食者および甲殻類捕食者の生態学的知見などを得ることが出来た。宮古湾の調査結果からは、ヒラメ稚魚の着底時期や砂浜浅海域での成長、エビジャコの生息密度や体長組成、ヒラメ稚魚とエビジャコとの生態的関係などについて新知見を得た。若狭湾の調査からは、キンセンガニが積極的捕食者ではなくスカベンジャー的な生態的地位を占めることや、カミナリイカや他の魚類などがヒラメ放流種苗の強力な捕食者であることなどの新知見を多く得た。これらの情報は、異体類被食研究やより効果的な種苗放流技術の開発に非常に有用であると考えられる。
著者
持田 邦夫 小林 浩之 横山 保夫
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ゲルマニウム-ゲルマニウム結合を骨格とする新しいσ共役系ポリマー(ポリゲルマン)を合成し、その薄膜における有機感光体としての評価を行った。以下、成果をまとめる。(1)σ共役系ポリゲルマンおよびその関連化合物の合成…従来のジクロロゲルマンのナトリウム金属還元法の他、ヨウ化サマリウム(II)による還元法や触媒による開環重合法の開発、さらにはπ系の置換したゲルマニウム-ゲルマニウム結合を骨格とする新しいポリマーの合成にも成功した。(2)ポリゲルマンは薄膜の物性研究…合成したポリゲルマンの可視・紫外吸収極大(300-350nm)やイオン化ポテンシャル(5-6eV)の物性研究を行った。(3)キャリヤ-輸送能力の検討…TOF法を用いて、その値が10^<-4>-10^<-5>cm^<-2>/V.sであることを見いだし、感光体として従来にない能力を有することがわかった。(4)イオンラジカルの研究…キャリヤ-輸送を理解するため必要なポリゲルミル陽イオンラジカルの研究を放射光を用いて行なった。発生した陽イオンラジカルの吸収極大は可視・紫外部に存在し、その分子量が伸びるに従い吸収極大が長波長にシフトをすることを見いだした。(5)ポリゲルマン薄膜の光、熱分解特性…溶液状態と比較しながら検討した。
著者
管原 正志 田井村 明博 中垣内 真樹 上平 憲 中路 重之
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、暑熱・寒冷環境下での脊髄損傷陸上および水泳競技者に対する運動ストレスが体温調節反応、ホルモン反応、免疫反応に及ぼす影響を明らかにすることである。被験者は、研究の主旨を十分に説明した上で同意を得た、脊髄損傷の男子車椅子長距離競技者5名(車椅子陸上競技者)及び脊髄損傷の男子水泳競技者5名(脊髄損傷水泳競技者)、健康な男子大学長距離競技者5名(大学陸上競技者)及び男子大学水泳競技者5名(大学水泳競技者)である。測定時期は、2007年9月及び12月~2月と2008年9月~12月、2009年は9月と12~3月である。測定条件は、2007年は28℃、60%RHの人工気象室で運動負荷した。2008年は28℃、60%RHの人工気象室でコントロールチュービングスーツ内の温度負荷を15℃の冷水及び42℃の温水を循環させる条件下で運動負荷した。2007年および2008年の運動負荷は、arm crankingエルゴメータを用い60%Vo2maxで60分間実施した。2009年は、400m陸上競技場及び50m室内プールで実施した。夏季の環境温度は、陸上競技場が気温27℃、WBGT29℃、室内プールが水温30℃、WBGT28℃であった。冬季の環境温度は、陸上競技場が気温12℃、室内プールが水温32℃であった。陸上運動は10,000m走を車椅子陸上競技者が25分以内、大学陸上競技者が45分以内、水泳運動は1,000mを自由形で脊髄損傷水泳競技者、大学水泳競技者ともに40分以内で終了するようにした。測定項目は、体温調節系(発汗量、食道温、平均皮膚温、浸透圧など)、ホルモン(カテコールアミン)、免疫(好中球の活性酸素産生能)である。結果は、以下に示した。A.暑熱順応下(夏季)における運動負荷では、体温調節系反応、ホルモン反応において、車椅子陸上競技者及び脊髄損傷水泳競技者と大学陸上競技者及び大学水泳競技者の各群間に差異がなかった。しかし、免疫反応は、陸上運動で車椅子陸上競技者が大学陸上競技者より亢進傾向が示された。寒冷順応下(冬季)における運動負荷では、各群間に差異がなかった。B.全身をコントロールチュービングスーツで15℃(冷水)と42℃(温水)暴露下での運動負荷での体温調節系、ホルモン、免疫の各反応は、冷水において各群間に差異を認めなかった。温水では、車椅子陸上競技者及び脊髄損傷水泳競技者が大学陸上競技者及び大学水泳競技者より体温調節系反応が劣る傾向にあった。免疫反応は、群間に差異がなかった。C.競技形態下での夏季の体温調節系反応は、車椅子陸上競技者が脊髄損傷水泳競技者より劣る傾向であった。冬季において各群間に差異がなかった。以上の結果は、脊髄損傷車椅子運動競技者の夏季や高温下での運動の際に発汗機能低下による熱障害が危惧され、その対策として冷却ジャケット等での対策が望まれる。また、脊髄損傷車椅子運動競技者の発汗機能障害の程度を知ることが重要である。
著者
木下 浩作 雅楽川 聡
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

敗血症から多臓器不全への進展には神経内分泌免疫系の破綻と全身性血管内皮傷害の関与が示唆される。体温が上昇した環境での高血糖が血管内皮細胞に与える影響についての検討はない。本研究結果から高温・高糖環境が血管内皮細胞における炎症性物質(炎症性サイトカイン:IL-6)産生を増加させることが明になった。この反応はエンドトキシン存在下で促進される。従って、高体温患者にみられる高血糖は、血管内皮細胞からのIL-6産生などの炎症反応を増大させ、二次性組織傷害を悪化させ、多臓器不全進展の危険因子となり得ると考えられた。高体温の敗i血症患者では、早期からの血糖管理と体温管理が重要な管理項目と考えられた。
著者
高波 鐵夫 本谷 義信
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

札幌市の北部一帯で1834年石狩地震(M6.5)による液状化跡が発見されていることから、この地震で震度5以上の地域があったことは確実である.しかし札幌市が大都市になってから直下に地震が発生していない.しかし、札幌市で震源があるか、あると推定される地震で、札幌で有感になった地震は1900年から現在まで34回報告され、札幌市直下にも定常的な地震活動があると言える.しかし1950年以降は地震が少なくなるとともに地震の規模が小さくなる傾向がみられる.このように過去に大地震が発生した可能性のある札幌市で直下型地震を想定した都市災害のシミュレーションを行うことは十分に意義があり、今回は過去に発生した地震の震源分布や震源メカニズムから、地震の断層面および破壊過程を幾つか仮定し、かっての石狩地震相当が起きた場合の札幌市内各地での理論地震波形を計算した.また理論加速度波形から理論震度を推定した.その結果、地震メカニズムによって各地の震度分布に違いがみられた.さらに地盤特性に依存した震度分布の地域性が見い出されているので地盤特性を考慮した詳細な地震被害想定図を作成しておくことが大変重要であることが明らかになった.場所によっては理論震度以上に大きな揺れを生じる地域も想定され、この種の研究の重要性があらためて確認された.さらに現実に近い想定地震を求めるべく研究をすすめている最中である.
著者
行谷 佑一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

地震時に大きな断層すべり量を発生させる領域の位置が地震によらず固有であるかどうかを知るためには、少なくとも2例の地震を解析する必要がある。将来の発生が予測されており社会的にも深く関心が持たれているプレート境界型の南海地震では、観測器による時系列データが1946年昭和南海地震にしか存在しないため、それよりも前に起きた1854年安政南海地震などに対して従来のインヴァージョン解析手法が適用できず、歴代の南海地震のアスペリティ領域が一致するかどうかは不明であった。ところで、1854年安政南海地震に関しては、時系列データは存在しないが、おもに古文書記録といった歴史史料から地震の被害震度、津波の高さ、および地殻変動量の3種類のデータを推定することができる。そこで、本研究では歴史記録から得られた津波の高さデータおよび地殻変動量を入力データとして、アスペリティ領域すなわち断層すべり量分布を推定する同時非線形インヴァージョン手法を提案・確立し、それを安政南海地震に適用した。具体的には、南海地震発生領域を小断層群に分け、その小断層群から発生する津波高の時系列データの時間方向最大値を計算し、それと史料による津波高さとの残差自乗和が最小になるような断層すべり量分布を、Powell(1970)によるHybrid法を用いて求めた。その結果、安政南海地震の断層すべり量分布は、津波時系列データをインヴァージョン解析した1946年昭和南海地震と同様に、高知県須崎市南方沖、徳島県宍喰町南方沖、および和歌山県紀伊半島南方沖に大きなすべり量があったことがわかった。すなわち、両者の地震のアスペリティ領域の位置はおおむね一致するという結果を得た。また、この断層すべり量分布を用いて経験的グリーン関数法により地震動を推定すると、計算震度分布と史料から得られる震度分布がおおむねよい一致をすることがわかった。
著者
北 敏郎 田中 敏子
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

異常環境下により発症する熱中症発生メカニズムを検討した。ラットを用いた熱中症モデルで腸内細菌の侵入(BT)の発生が認められた。次に,熱中症における肝臓障害発生に果たすLPSの役割を検討し,熱中症による臓器障害発生にLPSの関与が示唆された。その結果,熱中症の発生因子のPrimary factorとしてLPSが考えられ,Secondary factorとして蓄熱による直接的障害が発生している可能性が考えられた。
著者
太田 雅春
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

日本企業の今後の課題として、国内産業の空洞化対応、新情報技術対応、環境問題対応、想像型企業への脱皮等に対処できるように組織および業務の変革を図っていく必要がある。本研究の目的は、これらの背景に基づく要請に応えるため、企業転換もしくは社会共生を目指す企業がその方向に向けて自らをスムースに移行することを支援する情報システムがあるとして、それを構築するための環境整備とシステム構築の指針もしくは理論の検討を行い、次の結果を得た。1.企業転換もしくは社会共生を目指す場合、まずは業務改革・改善が必須事項である。まず、製造業の業務構造をその成立の歴史等を振り返って検討し、特にアジリティーという視点にたった場合、業務構造の変革をどのような方向に向けて行うべきかをプリミティブな立場から検討した。2.インターネット等の情報技術の普及も考慮に入れた近年の実務界で注目されつつある業務改革のコンセプトついて、それらが製造業の業務構造のどのような構造に焦点をあててその変革をはかるものであるかを、プロダクション・プロセスマトリックスという概念を導入して検討を行った。3.近年の業務改革は、情報技術の発展、利用をその念頭においたものであることから、業務改革の成否はそのパフォーマンスに影響されると言っても過言ではない。その視点にたって、組織情報システムの性能評価の方法について検討した。4.社会共生企業への向けての業務改革は重要な業務改革の方向性でもある。それに向けて業務改革を行っていく場合、既存の生産性重視、利益重視の価値観から脱却して、社会との共生、具体的には環境との調和という新たな価値観を組織に根付かせる必要があることから、それを行っている先進企業について事例研究を行い、社会共生企業へ向けての価値観の転換手続き、それを支援する情報システムのあり方等を含むその一つの方向性を提言した。
著者
坂野 潤治 馬場 康雄 佐々木 毅 平石 直昭 近藤 邦康 井出 嘉憲
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

本研究は昭和62年度の総合研究「政治過程における議会の機能」の成果を前提にしつつ対象を限定し、議会政の成立・発展の歴史過程を社会経済的・思想的背景との関連でより詳細に検討することを目的とした。研究目的の性格から研究対象が各人の得意とする分野に細分化されるおそれがあったが、その欠を補うために、比較の観点を意識的に打ち出し、そのために異なった分野を対象とする研究者から成る研究会を頻繁に行って意見交換をすることに留意した。主たる研究発表の場である「比較政治研究会」は東京大学社会科学研究所において月一回のペースで行われた。そのさいメンバー以外の研究者も招いて発表をお願いした(福沢研究の高橋眞司氏他)。この研究のメンバーはほぼ一巡して報告を終えたが、主な研究は次のようなものである。まず日本については、坂野が明治憲法体制の成立史という永年の研究視角を深め、植木や兆民との対比において福沢を経済的保守主義の源流として批判的に位置づけた。一方平石はイギリス的議院内閣制の導入における画期的意義を福沢に認め、福沢が用いたバジョット・トクヴィルら西欧政治思想との関連において日本啓蒙思想を読解する視角を示した。西欧に関しては、馬場がイタリアにおける普通選挙法成立の政策過程と権力過程の分析を通じて第一次大戦前のイタリア議会政の構造を明らかにした。また佐々木はシヴィック・ヒューマニズムやスコットランド啓蒙との関連からフェデラリストのアメリカ憲法論を精読し、理念が時代状況のなかでいかに制度に結晶するかを跡づけた。森はヘーゲル学派を材料にドイツ自由主義の特色とその挫折とを検討した。以上の研究成果はその一部がすでに公刊され、他も発表誌未定ながら公刊を想定している。研究の性格上統一的な結論めいたものはあり得ないが、今後ともこの方向で研究を深めてゆきたいと考える。
著者
クラインシュミット ハラルド 竹沢 泰子 山田 直志 波多野 澄雄 岩崎 美紀子 秋野 豊 岡本 美穂
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究グループは、地域統合の問題を理論的側面と現実的側面の二つのレベルにおいて共同研究を進めてきた。従来の地域統合理論では、ヨーロッパ以外に地域における統合の動きを分析しえず、アフリカやアジア・太平洋地域における統合の動きや、さらに1989年以降のヨーロッパにおける統合をめぐる激しい変化に対応できなくなり、新たな地域統合理論が必要であった。平成4年度は、研究最終年度であることから、平成3年度に行った従来の理論研究の再検討、およびそれを踏まえて構築した基本的フレームワークをもとに、各研究者が個別研究を行い、共同研究の総括をした。個別研究は下記の内容についてそれぞれ論文にまとめた。ハラルド・クラインシュミット 東アフリカにおける国家建設と地域統合岩崎美紀子 アンチ・ダンビング領域における統合の形態早坂(高橋)和 チェコスロバキアの連邦制竹沢泰子 アメリカ合衆国における民族集団の統合化波多野澄雄 近現代日本における地域統合論とアジア・太平洋秋野豊 東欧における地域協力ーカルパチア協力をめぐってー大島美穂 北欧会議とEC統合山田直志 EC統合と日本企業の海外進出これら個別研究の成果は、平成3年度に行った理論研究の成果とともに、同文館から『地域統合論のフロンティア』として出版される。
著者
竹中 興慈 落合 明子 小原 豊志 井川 眞砂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、アメリカ合衆国における「白人性」whiteness意識の構築とその展開過程を社会史的、文化的、思想史的側面から学際的、総合的に検討した。全年度を通じて、毎週1回、2〜3時間程度の研究会を開催した。研究会では、主としてD.Roediger, The Wages of the Whiteness(白人性の代償)をテキストにして、その内容理解とともに、諸問題に関するディスカッションを行った。そのなかで浮上した様々な問題点の解決、および各研究分担者の関連諸テーマを深めるための資料収集、およびアメリカ合衆国の研究者との意見交換のために、平成13年度に竹中興慈がイリノイ州シカゴ、平成14年度に井川眞砂がニューヨーク州エルマイラ、平成15年度に小原豊志がノースカロライナ州チャペルヒルへ出張した。研究補助金による研究の締めくくりとして、『アメリカ社会における「白人性」成立の学際的総合研究』を公刊した。各研究分担者が執筆した内容は、1.竹中が「日本における『白人性』研究の現状と展望」というテーマで、日本における「白人性」研究の持つ問題点と展望を考察した。2.井川は「『ハックルベリー・フィンの冒険』をめぐる人種主義論争-19世紀アメリカの白人作家が描写した黒人像」というテーマで、今日のアメリカ合衆国で展開されている本作品の人種主義論争に関わる黒人描写を検討した。3.小原は「アメリカ合衆国における黒人選挙権問題の19世紀的展開-選挙権における『白さ』の研究-」というテーマで、南北戦争を画期にした選挙権のおける「白さ」の構築・解消・再構築の過程を追究した。4.落合は「人種と記憶-『記憶の場』としての映画『グローリー』-」というテーマで、南北戦争をめぐる記憶の形成と、黒人の排除によって成立した白人性の構築との関係を検討した。
著者
中村 睦男 大石 眞 辻村 みよ子 高橋 和之 山元 一 岡田 信弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本共同研究は、欧州統合の下におかれたフランス現代憲法の総合的研究を、日本や他のヨーロッパ諸国との比較憲法的視野で行うものである。各参加者は、人・モノ・資本・情報のボーダーレス化の進展によって、従来の国民国家の枠組み、そして、人権保障と民主的な統治機構を目指して構築されてきた近現代の憲法学にもたらされた変容を考察した。具体的には、(1)フェデラシオンと主権という枠組みにおけるEUの内部構造、(2)欧州統合と憲法改正、(3)欧州統合下の意思形成と「国民主権」、(4)憲法54条手続きによる事例を中心としての、EC諸条約と憲法院、(5)EC法の優位と憲法の対応についてのフランス型とドイツ型の比較、(6)フランスの安全保障とEU、(7)フランス自治体憲法学における国際的影響、(8)D.Schnapperの所説におけるNationとCitoyennete、(9)「公的自由」から「基本権」へという、フランス憲法学における人権論の変容、(10)ジョスパン政権下の外国人法制、(11)フランスにおける男女平等、とりわけパリテを正当化する理論、(12)欧州統合の下でのフランスの言語政策、とりわけ『地域・少数言語に関するヨーロッパ憲章』批准問題、(13)多元的ライシテとヨーロッパ人権法の関係、(14)フランスにおけるコミュニケーションの自由の憲法上の位置、(15)フランス憲法における社会権の保障、(16)EUとフランスの社会保障、(17)EUによる規制(公衆衛生政策・営利広告規制)と人権、について考察し、グローバリゼーションの下でのあるべき憲法ないし立憲主義の構造について一定の見通しを得た。本研究成果報告書に掲載している研究報告の多くは、まだ中間報告の段階にある。研究論文としては、研究会での討論の結果を踏まえ、平成13年9月に完成する。その後、平成14年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)を申請し、1冊の著書として出版する(出版社の内諾を得ている)。