著者
山田 雄三
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イギリスのニューレフトと呼ばれる文化・政治運動が、実は1930年代に始まるモダニズムの理念や発想に基づいているという仮説を、これらの研究を通して提唱することができた。それにより、政治学や社会学で考えられてきたように、ニューレフトは冷戦構造と高学歴社会における一時的な現象であったのではなく、近代の産業構造の変化にともなう文化的な反応であったことが立証できた。とりわけ、ニューレフトが理性中心の西欧思想を批判する中で、感情の基づく新しい形式を文学やアートの制作を通して模索していた様態を明らかにすることができた。
著者
東海林 健二 森 博志
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、対象物体や人物を手持ちのカメラで同時に撮影したスナップ写真群から少ない手間で対象物体形状を得ることを目指し、視体積交差と投影を繰り返すことにより、カメラ撮影画像から物体のシルエットを矛盾の少ない形で取り出す方法と、視体積交差のためのカメラ姿勢を最適化する方法を提案した。また、視体積交差のためのよいカメラ配置とは、各カメラから得たシルエット形状が相互に異なり、なるべく複雑であるようなカメラ配置であることを実験的に示した。
著者
宮本 圭造 伊海 孝充 高橋 悠介 石井 倫子 山中 玲子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

能楽を伝える最も古い家系である金春家伝来の文書は、能楽資料の宝庫である。今回の研究プロジェクトでは、同文書を総合的な観点から研究するために、金春家旧伝文書の中核を占める般若窟文庫の文書目録をデータ化するとともに、約二千点に及ぶ文書資料のデジタル撮影を行った。これらの成果に基づき、般若窟文庫のほぼ全ての文書の検索と、ウェブ上での画像閲覧が可能な「金春家旧伝文書デジタルアーカイブ」を作成した。また、関連文書の調査として、秋田家文書の秋田城介関連能楽伝書、毛利博物館蔵能楽伝書、吉川広家旧蔵笛伝書などの調査を行った。
著者
出口 徹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は矯正歯科治療に伴う痛みに対するCO2レーザーの軽減効果のメカニズムを解明することである。本研究において、実験的歯の移動時におけるCO2レーザーの疼痛軽減の効果を中枢側(中脳路核)および末梢(歯髄、歯根幕)において検証を行った。その結果、歯の移動時に伴い、中枢側において増加した痛み発生物質(c-fos)の発現がCO2レーザー照射後に有意に減少する事が明らかとなった。一方、末梢側においては、実験的歯の移動後、末梢神経組織のマーカーとしても知られるカルシトニン遺伝子関連ペプチド: CGRPおよびPGP9. 5の発現はわずかに増加した。CO2レーザー照射後においては、CGRPおよびPGP9. 5の発現に全く変化を認めなかった。さらに、CO2レーザー照射後の温度変化を計測した結果、いずれの照射強度、時間においても40°を超えることはなく、人体に影響を与えることはないことが示唆された。以上よりCO2レーザー照射は、中枢に発現するc-fos蛋白の発現を抑制することにより、歯の移動時に認める痛みを末梢組織の損傷等を起こさずに軽減する可能性が示唆された。
著者
石田 佐恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

近年急速に映像メディアの文化、インターネットをはじめとする現代メディアの文化が、世界的な規模で共有されつつある。その状況は急速に変化しているが、個別の文化の具体的なありようや展開、人びとの日常生活に及ぼす影響については十分に明らかではない。本研究では、現代メディアが日常生活に占める位置とそれがどのような形で諸個人の日常生活に現れてくるのかという観点から、現代メディア文化のさまざまな諸相についてクロス・カルチュラルな研究を試みた。平成9年度は、世界規模で共有されつつある現代文化のグローバリゼーションの成立過程について考察した。特に受け手の意味構造と社会全体の変容とに着目した。平成10年度の研究は、その継続研究に当たる。西洋的な脈絡との比較で考える観点と、アジア・アフリカ諸国との比較から考える観点の2つを併用して行われた。その考察の結果、「現代メディアの文化」と呼ばれるものには、インターネットや携帯電話のように「無国籍文化」としてとらえられるものと、マンガやアニメ、コンピュータ・ゲームのように特に「〈日本〉文化」と関連づけられて語られるものとがあることが明らかになった。クロス・カルチャー、グローバリゼーションという視点から見た現代メディアの文化は、それぞれの国々の日常生活のレベルで個別に生きられるものであると同時に、国際的な文化商品の輸出入・翻訳という観点から考察されるべきであるとの結論に達した。
著者
新保 寛 千原 猛 金児 孝晃 戸松 亜希子 若松 一雅 新里 昌功
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アロエエモジン(AE)は抗がん活性や抗炎症効果を有することが報告されている。我々はApcMin/+マウスの大腸腫瘍発症のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)処置の有無に対する低用量AEの修飾作用を調べた。その結果、低用量AEの混餌投与は、DSS未処置・処置の双方でMinマウスの大腸腫瘍の発生を低下させた。さらに、低用量AE投与はMinマウスの大腸粘膜の細胞増殖能を抑制した。
著者
与謝野 有紀 大西 正曹 高瀬 武典 林 直保子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、商店街等における信頼生成過程の詳細な聞き取りによって、組織に対する信頼感の人工的生成は困難であり、組織は信頼生成の必要条件としかならないことを明らかにした。また、地域メッシュ統計をもちいた全国の不平等分布の検討から、不平等が社会の正当性の承認を破壊し、一般的信頼の阻害要因となることを明らかにした。また、動画を用いた信頼性見極め調査システムの開発し、その過程で、特定の他者との関係が築かれると一般的他者への信頼性が上昇することを明証した。
著者
安藤 秀俊 伊藤 和貴 伊藤 和貴
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

植物のバイオマス生産に関する教材開発とその指導プログラムの検討を目的として, (1)教員養成課程の大学生における植物栽培とその生産に関する意識調査, (2)小学校教科書に掲載されている種子発芽の実験の検討, (3)全国第2位の生産量を誇る福岡県におけるイグサの教材化, (4)植物の遺伝教材としてのファストプランツの有効性の検証, (5)バイオマス教材としてサトウキビの利用方法の開発と指導プログラム, の5点について調査, 実験などを行い, 更に授業実践を行ったところ, いくつかの新たな知見と指導プログラムの有効性が確認できた。
著者
松原 渉
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究では,データ圧縮を単に保存領域の削減にとどまらず,処理の効率化を目指して,圧縮文字列のための文字列アルゴリズムの開発を行った.とりわけ,文字列の繰り返し構造に着目し,圧縮文字列から繰り返し構造を検出するアルゴリズムの開発を目指して研究を行った.ひとつに,繰り返し構造に込められた制約をより明確にするために,繰り返し構造から,もとの文字列を推測するという逆問題に取り組んだ.本年度は,繰り返し構造の中でも局所周期に着目して逆問題に取り組み,部分的な成果を得た.結果として,計算複雑性がアルファベットサイズに依存して変化し,アルファベットサイズに制約がない場合か,アルファベットサイズが2以下であるとき,効率良く逆問題を解くアルゴリズムを与えた.アルファベットサイズが3以上の定数である場合の計算複雑性を明らかにすることが今後の課題である.本研究の成果は,学術論文誌Discrete Applied Mathematicsの特集号に投稿済であり,査読中である.ふたつに,圧縮文字列照合について,文字列に含まれる繰り返し構造を求めるアルゴリズムの開発に取り組んだ.既存研究として,圧縮データ長をn,展開文字列長をNとしたとき,繰り返し構造の存在判定を行う0(nlogN)時間アルゴリズムが知られている.本研究では,この結果をベースとして,スクエア(2回繰り返し部分文字列)および連(極大な周期的部分文字列)の個数を求めるアルゴリズムに拡張した.この成果について,国際学会への投稿を準備している.
著者
待鳥 聡史
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は2年間にわたる科学研究費補助金の第2年度に当たる。前年度の成果を受けて、当初からの研究課題と今年度の研究計画に沿った成果を出すことが目指された。具体的には、政党再編期における参議院について、会派変動と議員行動の因果連関を解明するという観点から、計量データに依拠した実証分析を行うという試みであるこの試みは、2つの成果となってあらわれた。1つは研究論文「参議院自民党と政党再編」である。ここでは、従来ほとんど分析がなされていなかった自民党参議院議員の離党及び会派残留行動について、衆議院自民党の分裂を説明するための諸モデルよりも、参議院自民党において歴史的に形成された文脈を重視したモデルの方が、よりよく説明できることを明らかにした。すなわち、参議院自民党では長らく佐藤派-田中派-竹下派の圧倒的優位が続いていたが、それが少なくとも一時的に弱まったのが、1989年選挙による大幅な議席減から93年の分裂にかけての時期であった。他派閥の所属議員は、竹下派優位が弱まった状況の下では、以前に比べて党内昇進などで有利になっていたと考えられるが、分裂に際して、そのことが明らかに離党を抑止する要因として作用したのである。もう1つの成果としては、参議院議員の総合的データベース構築に着手できたことである。上に挙げた論文の中では1993年分のデータの一部しか利用しておらず、現時点でもデータベースとしては未完成の段階である。しかし、幸いにも衆議院に関して同様のデータベース構築を進めている研究者(建林正彦・関西大学助教授、エリス・クラウス・カリフォルニア大学サンディエゴ校教授)や国会の計量分析に実績のある研究者(川人貞史・東北大学教授、増山幹高・成蹊大学助教授、福元健太郎・学習院大学助教授)との共同研究にも見通しが立っているので、今後とも作業を継続する予定である。
著者
長谷川 紘司 加藤 伊八 池田 克己 高江洲 義矩 末高 武彦 加藤 熈
出版者
昭和大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

歯周炎予防プログラム作成に当たり最も重要な基礎的知見はその自然史である。岡本、長谷川は各々異なる特性集団にて、同一個体の経年的調査を行った。長谷川の調査ではポケットの変化よりもアタッチメントレベルの変化が大きく、年齢とともに増加し、特に25才以降で顕著であった。またポケットが深い方が浅い方よりもアッタチメントロスがおきやすかった。岡本の調査では、歯周病の進行は個人差、部位差が大きく、高齢者ほど進行が顕著であった。また歯肉炎から歯周炎への変遷を明解にし、若年者からの予防対策が必要である。この観点から、堀内、高江洲は若年者における歯周病変の実態とコホート調査および予防処置の効果について検索した。同時にCPITNの問題点の指摘も行われるとともに、被予防処置群では全体的には指標の改善が見られたことが報告されている。末高、加藤熈は成人の多数集団についてCPITNの調査を行った。その結果、年齢階級が高まるにつれて最大値が高くなり、さらに口腔清掃状態との関連についてその強い相関を報告している。高齢者における歯科的所見について中垣はケースコントロールスタディーで面接法にて報告している。その結果、残存歯は前歯部が、欠損歯は臼歯部に多く、8020達成者においては、若い時期における甘味に対する依存度や間食傾向がその残存歯数に大きく影響していることが示された。岩山は咬合回復可能年齢を検討した結果、50才前半で治療を行うことが安定した臼歯部の咬合支持を維持するのに必要だと示唆した。歯科保健状況については地域差が極めて大きい。これについては加藤伊八が高齢化地区でかつ常勤歯科医師の存在しない離島にて調査し、残存歯が歯科疾患実態調査と比べ著しく悪いことを報告し、現在は口腔衛生指導実施による改善程度について検索している。池田は歯周炎患者の生活習慣・環境と病変の進行程度との関連を調査し、環境要因としては、居住地域、職業、喫煙、飲酒、歯磨き習慣や歯磨き時の出血、宿主要因としては性別、全身健康総合判定などが、歯周病の進展程度と強く関連していることを示唆している。集団保健指導のあり方は、個別指導と異なる点が多くその有効性からの検討が渡邊により実施された。その結果、歯科保健指導は毎月一回、三回行うことが有効であった。宮武は歯科疾患実態調査、国民生活基礎調査、患者調査などの結果を分析し、有所見者率が高率であるにも関わらず、有訴者率が低率であることを指摘した。しかし近年歯周病の有訴者のうち、受療者は43.1%(1986)から59.0%(1992)と増加していた。これは歯科保健事業の拡大の結果とも考えられ、今後さらに進展が期待される。歯周病に対する行動科学的状況について、岩本は自己記入式質問紙(デンタルチェッカー(R))の結果と歯周病の状況に高い関連性を認め、また集団への利用により歯周病の自己確認や予防プログラムの確立への可能性を示唆した。以上の結果より、歯周病予防を行う上では比較的若年者を対象とした方が予防効果が高いと思われた。また歯周病の自己認識も乏しいことから集団を対象とした質問用紙などの利用により、疾病の自己認識を高めていくことも予防を行う上で重要であると思われる。
著者
小川 寿美子 等々力 英美 有泉 誠 吉田 朝啓 糸数 公 鄭 奎城 崎原 盛造
出版者
琉球大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究は過去3年間の研究成果として、論文9本、学会発表17演題、図書3冊、視聴覚教材ビデオ8本、データベース(CD)8枚が産出された。特に最終年度には以下のような具体的な研究実績の収束に努めた。(1)第2回ケース・メソッド研修の実施(平成14年6月30日) 昨年度の第1回同研修に引き続き問題解決型開発教育モデル制作の研修を実施した。受講者は本研究協力者で、この研修後、6本のケース教材が完成した。同教材は、(5)のビデオ教材のジャケットに納める小冊子に添付され、国際協力用の教材として広く活用されている。(2)保健人材班ワークショップ開催(平成14年7月6/7日) 過去3年間でまとめた沖縄の保健人材に関する量的データを用い、システムダイナミックス・シミュレーションモデル策定のワークショップを開催した。結果は(7)で発表した。(3)国際協力への実用化-途上国の保健医療人に対する研修への応用(平成14年4月15/16日,平成15年1月17.23-25日) JICA(国際協力事業団)の研修へと多岐にわたり応用された。4月は九州・久留米市の聖マリア病院での地域保健指導者研修コースで、1月には沖縄国際センターでの島嶼保健医療政策研修コースにて、本研究にて作成された視聴覚教材とケース教材を用いた授業が展開され、受講生(途上国の医師・看護師・助産師)から好評を得た。(4)論文、学会発表、図書 今年度は本研究に関する論文が8本、学会抄録は8本、図書は1冊が産出された。これらは、初年度からの業績も含め、広く世界の研究者と共有すべく、英語に翻訳して、報告書並びに本研究のwebページで情報を開示する作業を進めている。(同年5月末完成予定)(5)視聴覚教材の制作 前年度の2本のビデオ制作に引き続き、今年度は6本のビデオを制作。ビデオ検討会議(各6本分のビデオに関する内容検討会議を、年3回、各6本分のビデオ開催)を経て、平成15年1月に日本語版と英語版が完成。JICA研修((3))をはじめ、日本や諸外国の大学・研究機関にて活用されつつある。(6)データベース(CD) 米国民政府の公衆衛生関連資料をまとめたDB、沖縄県復帰前の保健医療関連新聞記事をまとめたDB、昭和35年から現在までの衛生統計データをまとめたDB、今まで制作した計8本分のビデオ教材をパワーポイント化したDB、の計4種のCDに関して本科研費を用いて作成した。(7)国際シンポジウムの開催(平成15年1月24-26日) 過去3年間の集大成として、国際シンポジウム「沖縄における保健医療人材確保の経験から〜過去50年の検証」を開催。内外からシンポジストを迎え、ビデオ会議、同時通訳付で活発なる意見交換が行われた。同シンポジウムの本番記録は、本研究Webページで公開されている。また、現在、CDにまとめる作集を行っている。(8)最終報告書(英語版)の作成 計418ページにわたる報告書を英語版で作成し、3年間の研究・実践の成果を広く世界の研究教育機関にアピールする。
著者
中澤 淳 山田 守 野間 隆文 伴 隆志
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

神経・筋などの興奮性細胞において活動電位の発生に寄与するナトリウムチャネルについては、その一次構造が明らかにされてはいるが、チャネルブロツカ-としてのフグ毒(テトロドトキシン)のチャネル上の結合部位はまだ明らかにされていない。本研究ではフグ毒に耐性を示すフグ自身のナトリウムチャネルの解析によりその結合部位を推定する。トラフグの脳組織を材料として、λgt10ベクタ音引きを用いて、オリゴdtとランダム配列DNAをプライマ-として、2種類のcDNAライブラリ-を作製した。PCR法により作製したDNA断片ならびに分離したcDNAの断片をプロ-ブとして、合計9個のcDNAクロ-ンを得た。これらはいずれも単独ではmRNAの全長には及ばなかったが、配列をつなぎ合わせると全コ-ド領域をカバ-できた。えられたクロ-ンの塩基配列をもとにして分類すると、フグの脳には少なくとも3種のナトリウムチャネルが存在することがわかった。今回えられたフグ脳のナトリウムチャネルのアミノ酸配列を、ラット心臓、ラット器機筋、ヒト心臓のテトロドトキシン耐性チャネルならびにラット胞のテトロドトキシン感受性の3つのチャネルのアミノ酸配列と比較検討したところ、テトロドトキシン耐性のものでは、チャネルの4つの繰り返し領域の第1着目の領域中、セグメント5(IS5)とセグメント6(IS6)の間の部分に欠失が存在することがわかった。この部分は細胞外に突出していると考えられるところで、多数の糖鎖の修飾部位が存在する。単一アミノ酸残基の変化がテトロドキシン飽和性に寄与するという報告があったが、これらの残基はすべてフグのナトリウムチャネルでは、トキシン感受性のものと同じであった。従って、テトロドトキシン感受性を規定するのは単一アミノ酸残基というよりは、上述のようなIS5とIS6の間の領域の欠失ではないかと思われる。
著者
武田 清香
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

はじめに、PCMと躯体蓄熱を併用した床吹出し空調システムについて、数値シミュレーションにより夏季冷房時のピークカットに有効な運転方法について検討した。1)午前中に循環風量を少なくすることで、床下からの過剰な放熱および室温の低下を防止できることを示した。今回の計算においては、最大32m^3/h/m^2に対し、70%の22m^3/h/m^2で送風する場合、良好な蓄放熱特性および室内環境が得られることがわかった。2)夜間10時間に加え、午前中にも冷凍機を運転して蓄熱を行うことにより、PCMからの放熱をピーク時間帯まで持続させる方法を提案した。6kg/m^2以上のPCMを用いる場合には、シーズンを通して高い夜間移行率でピークカットを行えることを示した。3)設定室温が28℃のとき、26℃の場合に比べ、午前中の室内温熱環境が改善される様子が確認できた。このときピーク負荷時間帯にもPMVはほぼ中立を示し、シーズンを通して快適な室内環境となることがわかった。続いて、同システムにおいて省エネルギー性を維持しながら外気処理(除湿)機能を付加することを目的とし、夜間蓄熱時の低温排熱を用いた潜熱顕熱分離空調システムを提案した。1)シリカゲル製ハニカムを用いた吸脱着実験から、総括物質伝達係数を1.0×10^<-5>m/sと同定した。2)デシカントシステムの給排気出口温湿度を算出する数値計算プログラムを作成し、デシカントシステムにおける低温排熱の利用可能性について検討した。40℃排熱を用いて再生を行うと、1段除湿の場合は必要除湿量の約4割、2段除湿の場合には約8割を賄えることが示された。また、デシカントシステムのみで全て除湿する場合、1段除湿で約90℃、2段除湿で約53℃の再生温度が必要であることがわかった。
著者
瀬戸口 剛
出版者
北海道大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

北海道のように冬季の積雪が多い寒冷地では、駅やバス停など公共交通機関の交通結節点の計画において雪や寒さへの対策が必要で、都市デザインにおいて重要な課題である。本研究では積雪寒冷の都市を対象に、積雪シミュレーション実験を行い、冬季に吹雪の影響を受けにくい交通結節点(駅やバスターミナル)のデザインを研究し、交通結節点における都市デザイン手法を確立した。わが国では、積雪時の都市デザインシミュレーションを行った研究は、筆者以外には無い。本研究では、稚内駅および中心市街地を対象に、積雪インパクトの評価を大型風洞実験装置による積雪シミュレーションを用いて行った。実験装置は、旭川市にある北海道立北方建築総合研究所が所有するものを利用した。積雪シミュレーションにより、稚内駅舎のデザインや建物配置、乗客動線システムを具体的に計画し、実際に設計に反映できる結果を得られた。積雪シミュレーションにより、稚内駅舎計画に反映した内容は以下の3点である。(1)稚内駅舎は歩行者動線に吹きだまりをつくらないよう、曲面型のファサードとした。(2)駅前広場に雪の吹きだまりが溜まるため、堆雪スペースを中央に設ける。(3)線路の先端部分に雪の吹きだまりができにくいよう、吹き払いができる駅舎設計にするとともに、除雪がしやすいようにする。さらに、積雪シミュレーション結果を実際の設計プロセスに反映させるための、デザインガイドラインを開発した。
著者
茶谷 直人 中尾 佳亮 村上 正浩 岩澤 伸治 伊東 忍 川口 博之 真島 和志 後藤 敬 城 宜嗣 林 高史
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究は、当初予定していた以上の成果を挙げることができました。領域全体として、5年間で発表した論文数は、1400報近くあり、多くの特許申請もありました。本領域は若手育成に積極的に取り組んできました。例えば、若手研究者の海外講演派遣・国際若手セミナーの開催をおこないました。企業との交流や共同研究への展開を促進することを目的として、企業班友を設立しました。HPだけでなく、班員の研究、トッピクスなどを紹介するニュースレターは、毎月1回、50号まで発行しました。さらに、国際シンポジウムの開催や分子活性化に関連するシンポジウムやセミナーなども主催あるいは、後援し、分子活性化の活動をサポートしてきました。
著者
加藤 みゆき 大森 正司 長野 宏子 加藤 芳伸
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

阿波晩茶製造工程中の桶漬けにおいて微生物を分離した。その中でも乳酸菌に分類されるLactobacillus pentosus, Lactobacillus plantarum, Enterococcus fecium and Enterococcus avium.を分離同定した。この DNA を解析した結果 1494bp の塩基配列が明らかとなった。阿波晩茶から分離した微生物の中にコラゲナーゼ活性を有している微生物が明らかとなった。阿波晩茶の浸出液中に抗酸化性を示す物質があることが明らかとなった。
著者
妹尾 弘子
出版者
武蔵野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的はイタリアの精神病院の閉鎖に伴う看護師の地域精神保健活動の実態を明らかにすることである。当時イタリアのトリエステで改革に携わった看護師等にインタビューを行い内容の分析を行った。看護師達は改革に伴い、患者を地域に戻すために病院内から自分達も積極的に地域に出ていき、住民に理解を得るためのミーティングや訪問を頻回に行うなど、院内での看護にとどまらず生活者としての当事者を支えた。
著者
角尾 篤子
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1.戦後の教育改革の中で、CIE内部にも高等教育についていわゆるヨーロッパ型教育を提唱する者と、より幅広い大衆に対する高等教育を考えるアメリカ型の考え方を推進する二つの考え方が存在した。2.1の問題については、当時の文部省内における考え方とも連携しており、旧制の専門学校についての短大構想とも結びついていた。3.Holmesと教育課で一緒に教育改革の仕事をしていたWiggleswirthの帰国後、米国で短期大学連盟の理事をしていたEellsがその後任として着任し、今までの、教育課の政策からはずれた様々な見解を展開し、Holmesの4年制新制大学推進案と鋭く対立し、高等教育プロジェクトが停滞させられた。4.戦前日本の教育事情を実際に体験していたHolmesは、大学が自ら大学設置基準を策定し、日本の高等教育を推進していく為の大学基準協会を創立させた。5.Holmesは、加えて日本の女子高等教育の必要性から、二つの国立女子大学の創設、私立の女子大学の設立、家政学部の創設に重要な役割を果たした。6.民主主義を推進するためには、草の根からの日本社会の変革が必要と考えたHolmesは、大学婦人協会、全国女子学生連盟などの組織化に尽力した。7.女子に対する差別教育を撤廃するために、小学校から男女共修の家庭科を履修させるカリキュラムを、Holmes,Donovan,山本松代等が中心になって作り上げた。
著者
室伏 誠
出版者
日本大学短期大学部
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

魚類の性染色体分化について明らかにする目的で、染色体調査を行った。分析を行った魚種は、トラギス科、ハタ科、ネンブツダイ科、スズメダイ科、ツバメコノシロ科、タカベ科、アジ科、タイ科、イシダイ科、タカノハダイ科、カワハギ科、セミホウボウ科、ゴンズイ科の計13科21種である。染色体調査は、著者らが確立した鰭組織の初代培養法によって得た培養細胞を用いた。染色体数は、クラカケトラギスの2n=26から、ツバメコノシロの2n=50の範囲に含まれ、このうち48が最も多く12種であった。一方、核型は、すべて単腕型を示したコウライトラギス他7種から、すべて両腕型であったクロホシイシモチ他1種までさまざまであった。このうち、NZ産カワハギについては日本生物地理学会誌(1989)に、同国産ブル-モキについては同学会第45回大会において発表した。中でも、性染色体分化に関する興味深い知見がスズメダイ科1種において観察された。すなわち、スズメダイでは、対をなさない大型のM型染色体をもつ2n=47の雄個体と、それを含まずA型染色体が1対多い2n=48の雄および雌個体が観察された。雄に見られた2つのタイプは、複合性染色体機構の派性過程にあるため、XYとXXYの両タイプが混在するものと考えられた。本結果については近く関連学会で発表の予定である。次に染色体判別のためNOR's分染を行ったところ、15種のうち13種において1ないし23対の染色体に濃染部が認められた。その他の分染法も含めマ-カ-染色体の調査が今後課題である。一方、異形を示すマダイのST染色体について、50個体の稚魚を用いてその変異を調査した。その結果、染色体が観察された41個体のうち、短腕部の大きなL型と小さなS型の出現状況は、SS型22個体、LS型7個体、不明12個体であった。これらの変異は、雌雄差による可能性も考えられ今後さらに調査を行う予定である。これら結果は日本水産学会平成2年度大会においてその概要を報告した。