著者
樽田 誠一 齋藤 直人
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カーボンナノチューブ(CNT)を1.5SBF(無機イオン濃度が体液のそれよりも1.5倍高い溶液)へ浸漬させ、アパタイトの析出を検討した。CNTにアパタイトを短時間で均一に析出させるには、リン酸あるいはCaCl_2水溶液などで前処理した少量のCNTを1.5SBFへ均一に分散させることあると結論付けられた。また、CNTとアパタイト粉末を用い焼結法で複合化を行った。CNTが均一に分散した緻密な複合体が得られ、一般的なアパタイト焼結体と比べ、複合体の破壊靭性は向上したが、焼成中に発生したクラックにより曲げ強度は低下した。
著者
江口 信清 藤巻 正己 ピーティ デヴィッド 山本 勇次 村瀬 智 瀬川 真平 池本 幸生 石井 香世子 四本 幸夫 古村 学
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、社会的弱者が、不利益をもたらされがちであった観光現象を逆手にとって、自立化・自律化の途を進み、かつ近代化の過程で喪失してきた自信やプライド、そして「伝統」を回復することはできるのだろうか。社会的弱者の自立的な生き方に観光がどのような意味を持つのかについて、世界の多様な地域の事例の比較分析し、考察をすることにある。比較研究の結果、少なくとも4つの結論を得た。(1) 途上国における社会的弱者は、観光にかかわるだけでは自立しえないであろう。(2) 外部で作られた観光の概念やスタイルと現地の人たちの理解するそれらの間には、しばしば齟齬がある。(3) 自生的なリーダーとこの人物を支えるフォロワー関係の存在が、観光開発の成否やコミュニティの福祉の改善に大きくかかわる。そして、(4) 女性の役割がたいへん重要であるということである。
著者
渡辺 守
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

本研究は申請者らが独自に研究を展開してきた腸管上皮細胞による粘膜免疫の機能調節に注目し、自然炎症の調節異常がもたらす炎症性腸疾患の発症メカニズム解明と新規治療法の開発基盤を目指すものである。その解析には細胞株を用いた解析系よりも腸管上皮細胞の初代培養細胞が理想的である。我々は当該研究期間において、大腸組織から単離した上皮細胞の初代培養系を確立することに世界で初めて成功した(Nat Med 2012)。その培養技術の特徴は、マウス大腸組織から正常上皮を単一細胞として単離し、3次元的にsphereを形成させながら長期に亘って継代培養が可能なものである。本研究期間で我々はこの技術をさらに応用し、腸管上皮細胞によるエンドサイトーシスおよびトランスサイトーシスの解析系を構築することに成功した。この解析系の樹立によって、これまで困難であった腸管上皮細胞に特徴的な膜輸送の生理的アルゴリズム解析が可能になったといえ、今後さまざまな免疫学的解析に応用できると期待する。さらに現在我々は、Lgr5陽性上皮細胞から吸収上皮細胞、神経内分泌細胞、杯細胞など各々の系統に分化した細胞における自然炎症調節機構を詳細に解析している段階である。こうした研究結果は、これまで明確に把握し得なかった腸管上皮細胞における自然免疫応答を、より生理的で正確に解析できる重要な手がかりになると期待できる。またこうして得られる解析結果をもとに、既に我々が確立した腸管上皮の移植実験系に応用し、in vivoにおける評価に直ちに結びつけることが可能であると我々は確信している。
著者
由井 義通 若林 芳樹 神谷 浩夫 古賀 慎二 宮内 久光 加茂 浩靖 中澤 高志 久木元 美琴 久保 倫子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

労働の女性化の実態を把握するために,労働市場,就業先における労働状況,終業後の生活時間,家族状況などの相互の側面を関連づけながら,労働力の女性化の実態について多面的な解明を試みることによって,経済のサービス化とグローバル化を原因とした労働の女性化について明らかにした。研究の意義としては,労働力の女性化に対して多様な女性就業の実態を捉えるとともに,住宅問題や保育問題を関連させて分析した点である。
著者
上北 恭史 花里 利一 稲葉 信子 松井 敏也 小野 邦彦 箕輪 親弘
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は2006年5月27日に起こった地震によって被災したインドネシア共和国ジャワ島中部の世界遺産プランバナン遺跡群及びその周辺の石造による組積造建造物遺産の破損メカニズムと修復計画策定の手法の開発を行うものである。研究は、1)常時微動測定と亀裂変位測定をシバ祠堂を中心に行い、2)シバ寺院内部構造解明のため、植民地時代に修復された記録をオランダの国立図書館にて調査を行い、3)遺跡公園の観光マネジメントの調査を行った。研究の結果、シバ祠堂は構造的に安定していることが明らかになった。またシバ祠堂に内部構造を示す歴史的資料はオランダにも現存していないことがわかったが、一部の資料からシバ祠堂の内部はコンクリートで補強されていることが想定される。そして遺跡公園を訪れる観光客の多くはプランバナン遺跡の中心であるロロ・ジョングラン寺院に集中して訪れているため、災害時の避難のためのガイドラインが必要なことが明らかになった。
著者
吉野 正史 滝本 和広 滝本 和広
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ベクトル場の標準形理論にあらわれる形式変換の発散現象をDiophantine条件を用いることなく,解析的に扱う方法をしめした.方法は,漸近解析の考え方に沿い,ボレル総和法を拡張して発散級数を適当な部分領域で意味づけて行った.さらに.解析的非可積分性と滑らかな可積分性が同時におこるようなハミルトン系で,発散する第一積分をボレル総和法の観点から意味づけた
著者
中山 充
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

干潟など海域については、漁民・住民が環境共同利用権を持つことが認知されるべきであり、国と地方自治体はその海域について環境保全と適切な共同利用のための調整を行なうべきである。漁民・住民は、権利者として海域の管理への参加と情報公開を求めることができるとともに、誤った決定や管理の差止めを請求できる。差止請求を認容した様々な判決の分析、検討により、このような環境共同利用権の概念の有用性が明らかになり、差止請求権の根拠に関する考察が進展した。
著者
中村 博之
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、最近めざましい急進展を見せる在中国日本企業子会社において、数々の成功事例があることから、そのような実態の把握に努めた。さらにそれに基づき、今後の経営環境変化に対応する新たな日本企業子会社の管理会計システムの構築を行った
著者
石河 晃 舩越 建 石井 健 大内 健嗣 清水 篤
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

落葉状天疱瘡は全身の皮膚に水疱、びらんをきたす自己免疫疾患であるが、自己抗体が抗原に結合してから水疱発生までの機序は明らかではない。本研究では正常ヒト皮膚器官培養にクローン化した抗体を局所注射し、経時的に超微細組織変化を観察した。病原性抗体注射後2時間後にはデスモソームの減少が見られ、22時間後にはデスモソームの消失と細胞離開が見られた。デスモソームの数が減少することによる細胞離開の経路が存在することが推察された。
著者
鈴木 直義 松浦 博 湯瀬 裕昭 池田 哲夫 渡邉 貴之 武藤 伸明 岡本 恵理 佐藤 智子 福田 宏 柴田 義孝 橋本 浩二 青山 知靖 葛岡 英明 高橋 勇
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

看護師のフィジカル・アセスメントスキル学習や書道の学習など、動作を伴う学習の遠隔指導支援を目的として、(1)学習時の各種の動作に伴う圧力などの客観的フィードバック情報を学習者や指導者に効果的に提供する方法、(2)打診音を自動識別し実習者に指標を提示するeラーニングシステム構築のための検討、(3)概念モデリングを学習者自身に行わせる方法の熟練者育成へ導入、などの研究成果を得た。
著者
保地 眞一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

凍結乾燥(FD)ウシ精子を長期間冷蔵保存した後、受精シグナルを発する各種能力がどの程度正常に維持されているのかを調べた。排卵マウス卵子を用いた異種顕微授精系において、FD区では対照区よりも精子由来卵活性化因子の活性が劣る傾向があったが、致命的とまでは言えなかった。同種顕微授精系で作製した前核期卵の解析では、FD行程が精子に加わることは雄ゲノムに能動的脱メチル化が誘起される時期や脱メチル化のレベルに問題を引き起こさなかった。精子中心体の微小管形成中心機能についてもFD行程による問題は認められず、FD精子のDNA断片化もコメットアッセイでは観察されなかった。
著者
京兼 純 堤 保雄 片倉 勝己
出版者
明石工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

色素増感太陽電池(DSC素子)は一般に液体電解質を利用して発電しているが、本研究では液体電解質の持つ欠点を克服し、高い電気伝導が期待できるゲル電解質に着目し、変換効率の向上と長寿命化を目指して実施した。ゲル化にあたっては、フッ素系オリゴマーとポリエチレングリコールを基盤とした2種類の材料を使用した。特にフッ素系ゲル電解質を用いたDSC素子の諸特性は、開放電圧Voc=0.6 [V] , 短絡電流Jsc=5.8 [mA/cm^2], Fill Factor:FF=0.56, 変換効率η=4.4 [%] となり、変換効率に関しては2006年度の研究開始時におけるDSC素子に比べ、1.6倍強程度まで向上し当初の目標(変換効率η=5 [%])に近づけることが出来た。
著者
水本 信一郎 辻 元 志賀 啓成 黒川 信重 中山 能力 服部 俊昭
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

4個以上の楕円保型形式に付随したよい性質をもつディリクレ級数をみつけることは、保型形式の理論において基本的であり、同時に困難な問題としてよく知られている。水本は、ディリクレ級数と限らない一般の級数まで範囲を広げれば、2n個の楕円保型形式からよい性質をもつ級数が得られることを発見した。この級数は新しい特殊関数を含み、解析接続と関数等式を持つ。このような関数を数論的に研究することは現時点では殆どなされていない。今後の研究により未知の性質の解明されることが望まれる。黒川は多重三角関数を構成し、研究した。さらにその発展として、多重三角関数のq-類似、絶対テンソル積、絶対微分、圏のスペクトルを研究した。志賀は境界付きリーマン面が擬等角写像で変形されるとき、境界上の連続関数に対する第1種境界値問題(ディリクレ問題)の解の変動を調べ、パラメータに関する実正則性などを証明した。またリーマン面が退化するときの解の変分についても考察した。辻は随伴直線束の正則切断の拡張定理をsubadjunction theoremの形にまとめて、多重種数の変形不変性の結果を拡張した。またモジュライ空間の準射影性を完全に一般な形で証明した。服部は双曲幾何のディオファントス近似への応用を研究した。中山はlog Hodge理論の研究を行った。主結果はbaseがlog smoothのときのlog Hodge構造のvariationの関手不変性である。またlogアーベル多様体論の研究を行ったが、その解析的理論はほぼまとまり、論文を準備中である。
著者
白瀬 由美香
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、イギリスの医療保障制度NHSの変遷について、医療圏と地域医療連携の展開という観点からその特徴について歴史資料等をもとに検証を行った。具体的には、(1)病院と診療所の関係、(2)医療従事者の業務内容の変化、(3)医療と生活支援との連携、(4)医療システムと患者との関係などにまつわる検討をした。患者の医療アクセスや医療機関の機能分化、医療従事者が果たした役割の変容を浮き彫りにすることにより、時代ごとのNHSの特性を多面的に示すことができた。
著者
成田 剛 黒河内 宏昌 スカン チットパンヤー ピシット シハラート
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究により,これまでの報告をはるかに超える数の仏教寺院がシェンクアン地域に存在し,ルアンパバーンをはじめとする他の建築様式には認められない形式の仏堂(小規模で入母屋屋根を載せる)が存在することが明らかとなった。屋根形態を切妻から入母屋に改修したことが,遺構に残る痕跡から明らかな仏堂が存在する背景には,仏堂建築におけるシェンクアン様式の成立が関わっているものと考えられる。
著者
小湊 慶彦 中島 たみ子 佐野 利恵 浅尾 高行
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ABO式血液型は個人識別に重要な指標として法医学、犯罪鑑識において利用されている。しかし、ABO式血液型遺伝子の転写調節機構は不明である。そこで我々はENCODEプロジェクトから明らかにされた赤白血病細胞K562におけるDNaseI高感受性領域に基づき、レポータープラスミドを作製した。K562細胞を用いたプロモーターアッセイから、ABO遺伝子第1イントロン内に赤血球特異的エンハンサーを同定し、その領域にGATA転写因子が結合することを証明した。また、B_m型およびAB_m型112例中111例に第1イントロンのエンハンサー領域を含む約5.8kbの欠失を見出したが、通常の血液型1005人において欠失はなかった。また、欠失がないB_m型一個人ではエンハンサー内のGATA結合サイトに一塩基置換があり、その一塩基置換によりエンハンサー領域へのGATA転写因子の結合を阻害され、エンハンサー活性が完全に消失していた。以上から、エンハンサーの欠失や塩基置換に基づくエンハンサーの機能喪失から転写活性が低下し、血球系細胞におけるB抗原量の産生低下からB_m型が生じたと考えられた。従って、上記の赤血球特異的エンハンサーが細胞内において機能することが推測された。一方、B_m型は血液型亜型の半数を占めるものであり、その遺伝子診断が可能となったことから、本研究はABO式血液型の遺伝子診断の実現に貢献したと考えている。
著者
有木 進 加籐 周 谷崎 俊之 庄司 俊明
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Lie理論において重要な役割を果たしているヘッケ代数と呼ばれる有限次元代数の表現論を研究した。とくに数理物理由来のフォック空間を有限次元代数で圏化する研究は近年大きな進展のある研究であり、その進展に寄与する結果もいくつか得た。具体的には、アフィンA型ヘッケ代数の既約加群の幾何的実現と代数的実現の同定、変形フォック空間の圏化による量子シューア代数の次数付分解係数の計算理論等が得られた。
著者
保 智己
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

松果体と副松果体の神経節細胞は脳の3か所に投射しており、特に松果体は脳の深部にまで軸索を伸ばしていた。最も背側の投射部位では脊髄へ投射している巨大ニューロンの樹状突起と結合していた。さらに電気生理学的な実験からこの経路が波長(「色」)情報を伝達していることが示唆された。また、波長識別に関与する緑光受容細胞の視物質も紫外光受容細胞と同様に光再生している可能性が示された。明暗情報に関しては少なくとも遊泳活動リズムへの関与が示された。
著者
加藤 哲男 君塚 隆太 岡田 あゆみ
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

歯周病は口腔の主要な感染症であり、その原因となっているのは口腔内バイオフィルムであるデンタル・プラーク中に存在する細菌である。本研究は、歯周病原性バイオフィルムの形成に関わる因子について解析するとともに、その形成を抑制あるいはバイオフィルム細菌に対して抗菌性を発揮するような機能性タンパク質について検索した。培養細胞やマウスを用いて、シスタチンやガレクチンなどの機能性タンパク質のバイオフィルム形成抑制作用や内毒素活性抑制作用などを解明した。
著者
木村 伸吾 北川 貴士 銭本 慧 板倉 光 宮崎 幸恵
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ニホンウナギの回遊生態と生息環境の解明を目的として、産卵域が位置する北赤道海流域および代表的な生息水域である利根川水系での調査を中心に研究を実施したものである。その結果、レプトセファルス幼生は表層で懸濁態有機物を摂餌し、同じ形態を有していても種によって摂餌する水深が異なっていること、幼生の輸送過程は大西洋と大きく異なること、成魚は餌生物が多様な自然堤防域を好んで生息することなどを明らかにした。