著者
菅野 友美 青木 里奈
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的</b> 近年,児童の多くが野菜を苦手に感じており,野菜離れが進んでいる.本研究では,児童の野菜への苦手意識を減し,積極的に野菜を摂取することを目的として,野菜の苦手意識の要因をマスキングする調理法を検討した.そして食育教室を実施して親子で野菜を用いた菓子を製作・試食し,野菜の認知と苦手意識について調査した.<br><b>方法</b> 苦手意識の強い野菜を試料とし,蒸す,炒めるなどの調理後,順位法を用いて官能検査した.野菜の苦手意識要因のマスキング効果があった野菜ペーストを用いてクッキーを開発した.食育教室で,3種類の野菜ペーストを使ったクッキーを作製した.対象は4~11歳の児童9名とその保護者6名である.作製・試食後,野菜の苦手意識に関するアンケートを行った.調査は質問紙方で行い,回答は無記名・自記式とした.<br><b>結果</b> 野菜を砂糖などの調味料と一緒に調理することで野菜の苦味をマスキングすることができた。また一度冷凍し、凍結のままペースト状にして加熱することで野菜の香りや食感を改善することができた。そこで3種類の野菜を凍結後ペーストにし、砂糖で煮詰めた野菜ペーストを用いて親子でクッキーを作製した。クッキーに入っている野菜の種類をあててもらったところ,正解率の平均は22%であり,児童は苦手な野菜も摂取していたことから,苦手意識を克服できたといえた。また親子で作製するというコミュニケーションも苦手意識の克服に必要であることがわかった
著者
Toshitaka KANEI Munetaka IWATA Hiroaki KAMISHINA Takuya MIZUNO Sadatoshi MAEDA
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
pp.21-0468, (Released:2021-12-03)

C-C chemokine receptor 7 (CCR7) contributes to cell homing to lymph nodes (LNs). Recent studies reported that CCR7 is also expressed in tumor cells, which correlates with LN metastasis in various cancers. However, the expression of CCR7 in tumor cells is unknown in dogs due to the lack of appropriate antibodies. In the present study, a fusion protein of C-C chemokine ligand 19 (CCL19) was employed as an alternative method to CCR7 antibodies. The fusion CCL19 protein specifically detected CCR7 expressed in canine lymphoma cell lines, which showed active chemotaxis to both canine and mouse ligands. The present study will help further research on the involvement of canine CCR7 in LN metastasis.
著者
川崎 寛也 笠松 千夏 野中 雅彦 Thomas Arnaud Schlich Pascal
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 飲料や食品を一食分摂取する間に知覚される官能特性は経時的に変化し、その摂取物に対する嗜好や飽きに影響すると考えられる。そこで、市販スープをベースにして、知覚される官能特性に違いを持たせた複数の試料を用い、一食摂取条件で、複数官能特性の経時的変化を1回の評価で捉えられるTemporal Dominance of Sensations(TDS)法と嗜好(liking)および飽き(satiation)との関連を解析し、嗜好と飽きに影響する知覚経時変化の要因を探索した。<br />【方法】 フランス人消費者84名を対象とし、一食摂取条件におけるTDSとlikingおよびwanting(satiationの対義)の時間的変化をTimeSenscにより計測した。サンプルには、市販野菜クリームスープにうま味としてのグルタミン酸ナトリウム(MSG)、脂質としての生クリーム、野菜風味としての野菜ペーストをそれぞれ1%、10%、1%添加したスープを用いた。<br />【結果と考察】 一食摂取する条件でドミナントに感じる味・風味要素のTDS、liking、wantingの時間的変化を得た。また、摂食前半、中盤、後半と全体でlikingおよびwantingに影響を与えるドミナントな味・風味要素(Temporal drivers of liking、Temporal drivers of wanting)を知るための手法を構築した。本手法により一食全部摂取する条件において、味風味の印象がどのように変化するか、後半に嗜好性が低下した場合の要因等を広く考察すること等が可能となった。
著者
福原 武 福田 博之
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.494-499, 1965-06-25 (Released:2018-02-09)

Utilizing Trendelenburg's as well as Magnus' method the influence of TTFD upon the movement of the isolated small intestine of guinea pigs, rabbits, cats and dogs were studied. The results were summarized as follows : (1) At the concentration of 5 × 10^<-5> g/ml TTFD produced, on the one hand, a lowering of the tone, prolongation of the period of rhythmic contraction waves and on the other hand, a remarkable increase of the amplitude of the waves. (2) After the administration of atropine, the excitatory effect of TTFD was reversed to the inhibitory. (3) After successive administrations of atropine and hexamethonium, no action of TTFD was remarked. (4) TTFD had no effect on the small intestine isolated from cats treated with reserpine and atropine. (5) From the results described above, it may be concluded that TTFD exerts an exciting action upon both the excitatory and inhibitory neurones residing in Auerbach's plexus, whereas it exerts no action upon the intestinal muscle. It could be considered that the effects described in (1) were the results of a mutual coordination of the function of two kinds of neurones described above.
著者
堀本 佳誉 粥川 智恵 古川 章子 塚本 未来 大須田 祐亮 吉田 晋 三和 真人 小塚 直樹 武田 秀勝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb1180, 2012

【はじめに】 脳性麻痺(以下CP)児は乳児期に、健常児と比較してより多くのDNA損傷が引き起こされていることが報告されている。健常児の場合、DNA損傷修復能力は発達とともに高まることが示されているが、乳児期以降のCP児に対する研究は行われておらず、発達による変化が見られるかどうかが不明である。また、一般的に健常成人では、過負荷な運動が過剰なDNA損傷を引き起こす。さらに加齢とDNA損傷修復能力には関連性があり、修復できないDNAの蓄積が老化を促進する。CP児は、臨床的に見て加齢が早いと言われてきたが、「生涯にわたる非効率で過負荷な運動による過剰なDNA損傷」と「運動量の不足によるDNA修復能力の低下」が悪循環し、修復できないDNAの蓄積速度が健常者より早くなるために、早老となっている可能性が高い。DNA損傷修復能力を高めるためには、定期的で適度の運動量が必要であるとされている。このためCP児のDNA損傷修復能力を高めるためには、過負荷な運動にならないように、慎重に運動量の決定を行う必要がある。DNA損傷修復能力という視点から、CP児の最適な運動量・頻度を判断し、早老を予防するための研究基盤を確立することを目的に、今回は安静時のCP児のDNA損傷修復能力の解明に焦点を絞り研究を行った。【方法】 対象は、学齢期の脳性麻痺児12名(13.8±4.3歳、6歳~18歳、男性6名、女性6名、Gross Motor Function Classification レベル1 4名、レベル2 2名、レベル3 6名)とした。脳性麻痺児と学年、性別が一致する健常児12名(14.8±4.4歳、6歳~18歳、男性6名、女性6名)を対照群とした。DNA損傷修復能力の指標として、尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(以下8-OHdG)濃度の測定を行った。測定には早朝尿を用いた。尿中8-OHdG濃度の測定にはELISA法による測定キット(日本老化制御研究所)を用いた。また、尿中クレアチニン濃度を測定した。8-OHdG濃度をクレアチニン濃度で割り返し、クレアチニン補正を行った。 統計学的検討にはR2.8.1を用いた。シャピロウイルク検定を行い、正規分布が確認された場合はt検定、確認できなかった場合はマンホイットニーの検定を行った。危険率は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者と保護者に対し、書面・口頭にて本研究への協力を要請した。本研究への協力を承諾しようとする場合、書面および口頭にて研究の目的や方法などを説明し、対象者・保護者に質問などの機会を十分与え、かつそれらに対して十分に答えた上で文書にて同意を得た。本研究は千葉県立保健医療大学倫理委員会の承認を得た上で実施した。【結果】 脳性麻痺群の8-OHdG濃度は11.4±2.0 ng/mg CRE、健常群は8.2±0.9 ng/mg CREであった。シャピロウイルク検定の結果、正規分布は確認できなかった。2群間の比較のためにマンホイットニーの検定を行ったが、有意な差は認められなかった。【考察】 Fukudaらは、本研究と同様にDNA損傷修復能力の指標として尿中8-OHdG濃度の測定を行い、脳性麻痺児は乳児期に健常児と比較してより多くのDNA損傷が引き起こされていると報告している。Tamuraらは健常児の尿中8OHdG濃度の測定を行い、発達に伴い尿中8-OHdG濃度が低下することを示している。乳児期のCP児で、尿中8-OHdG値が高値にであったのは、一時的に強い酸化ストレス下にあるのか、何らかの原因でDNA損傷修復能力が低いのか、それとも両方が原因であるのかは不明である。今回の結果では、同年代の健常児と比較し、有意な差は認められなかった。このことより、脳性麻痺児は乳幼児期には一時的に強い酸化ストレス化にあるか、DNA損傷修復能力が低いため尿中8-OHdG濃度が高値を示すものの、その後健常児同様に発達に伴いDNA損傷修復能力が高まることにより尿中8-OHdG濃度が低値となり、健常児と有意な差を認めなくなったと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 今後、運動負荷量の処方を尿中8OHdG用いて決定できるかどうかの研究や、DNA損傷修復能力を向上させるための適切な運動負荷量の処方を検討するための研究、CP者の加齢のスピードを遅くするための運動負荷量の処方のための、基礎資料となる点で意義のある研究であると考える。謝辞;本研究は、本研究は科学研究費補助金(若手 スタートアップ 2009~2010)の助成金を受けて実施した。
著者
戸塚 唯氏 早川 昌範 深田 博己
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.26-36, 2001-12-25 (Released:2010-06-04)
参考文献数
16

防護動機理論 (protection motivation theory: PMT) とはRogers (1983) によって提唱された脅威アピールの説得効果を説明するための理論である。本研究の目的はPMTに基づいて, 環境ホルモン (擬似エストロゲン物質) の対処行動意図を促進, あるいは抑制する要因を検討することであった。独立変数は, 脅威 (高・低), 反応効果性 (高・低), 反応コスト (高・低), 性 (男性・女性) であり, 400人の被験者 (男性200人, 女性200人) を16条件のうちの1つに割り当てた。その後被験者に説得メッセージを呈示し, さらに質問紙に回答させた。分散分析の結果, 脅威と効果性, 性の主効果が見いだされ, 脅威や効果性が大きいほど, また男性よりも女性の方が, 環境ホルモン対処行動意図が大きいことが明らかとなった。次に実験的検討を補うために, PMT認知要因 (深刻さ, 生起確率, 効果性, コスト, 自己効力, 内的報酬), 性, 恐怖感情を順に説明変数に投入する階層的重回帰分析を行った。その結果, コストを除いたPMT要因と性, および恐怖感情が環境ホルモン対処行動意図に影響を与えていることが明らかとなった。
著者
梶原 大督 菊池 輝 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-8, 2014 (Released:2014-01-20)
参考文献数
31

人々が,政府の基本政策に対して如何なる態度を示すかは,土木における諸政策を検討する上で重要な問題である.この認識の下,これまで「政府に対する批判」の原因を探る様々な研究が行われてきたが,これらが明らかにしてきた諸要因だけでは,政府に対する態度全般を完全に説明しているとは必ずしも言えないのが現状であり,政府に対する態度の要因を探る研究は未だ必要である.本研究では,政府や政府の政策方針に影響を及ぼす基礎的な変数の一つとして「人は皆,純粋なる利己主義者である」という信念,「利己主義人間観」が存在しているという議論に着目し,アンケート調査により,政府に対する否定的態度の形成に関する理論仮説を検証した.その結果「政府に対する批判」の背景に利己主義人間観が一つの要因として存在している可能性が示唆された.
著者
大島 伸一 藤田 民夫 小野 佳成 加藤 範夫 松浦 浩 竹内 宣久 西山 直樹 水谷 一夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1673-1678, 1994
被引用文献数
2

多発性嚢胞腎疾患症例における腎機能廃絶後の透析期の腎盂腎炎および嚢胞感染, 嚢胞出血等の発生頻度とそれらの治療における腎摘出術の有効性を検討した. 対象は透析をうけている多発性嚢胞腎疾患症例41例で, 男性25例, 女性16例, 平均年齢は55歳, 平均経過観察期間69ヵ月である. 腎盂腎炎および嚢胞感染は13例 (32%) 21回が, 嚢胞出血は13例 (32%) 16回にみられた. ともに保存的治療に反応しない場合やくり返す場合には腎摘出術を行った. それぞれ両側腎摘出術を10例, 片腎摘出術を1例に, また, 両側腎摘出術を5例, 片側腎摘出術を2例に施行した. 手術死は1例にみられた. 不明1例を除く14例の術後平均観察期間70ヵ月であったが, 両側腎摘出術後の無腎状態から生ずる貧血は13例93%に, 低血圧は5例33%にみられた. 以上の結果より維持透析をうけている多発性嚢胞腎疾患では, (1) 腎盂腎炎および嚢胞感染, 嚢胞出血等の合併症が高頻度で生ずること, (2) これらの合併症が腎機能廃絶後では透析と相まって保存的治療では治療困難であること, (3) 貧血や低血圧に対する治療は必要となるものの両側腎摘出術は有効な治療法となりうることが示唆された.
著者
左高 真理雄 原田 元 岡崎 幸紀 竹本 忠良 飯田 洋三 榊 信広 小田原 満 永富 裕二 斉藤 満 後藤 一紀 竹内 一憲 多田 正弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.739-744_1, 1982

胃Xanthomaの発生機序をうかがうため,その背景粘膜との関係に注目し,内視鏡的コンゴーレッド法,メチレンブルー染色法および直視下生検を行ない,内視鏡学的,組織学的に胃Xanthomaの発生胃粘膜について検討した. その結果,Xanthomaは萎縮性胃炎の高度な胃に多く存在するが,萎縮性胃炎の比較的軽度と思われる胃粘膜にも少数ながら存在した.さらに,コンゴーレッド変色帯内にも75個中4個(5.4%)存在した.この4個の胃底腺領域のXanthomaを検討すると,Xanthoma上皮および周囲粘膜に組織学的にも軽度ないし中等度の萎縮性変化が認められ,胃底腺領域内といえども萎縮性胃炎を発生母地としていることも示唆された.また,Xantho-ma上皮および近接粘膜は腸上皮化生がみられないか,軽度である例が多く,Xanthomaの発生には腸上皮化生は関係しないと考えた.
著者
神作 博
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会雑誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.684-690, 1967-11-25 (Released:2011-07-19)
参考文献数
27
被引用文献数
2

Attractiveness of colored lights was investigated through cinematograghic records of eye movements and verbal reports of ten observers obtained in the situation of paired presentation of colored lights.Three indices of attractiveness were used; the initial direction of eye movement, the dominant direction of eye movement, and verbal report.The main results are as follows:(1) Three indices of attractiveness were almost consistent with each other.(2) When the luminance was held constant (64 nt) and high purity colors were used, the order attractiveness of colored lights of five different hues was Red, Blue, Yellow, Green, and White (Illuminant A).(3) When the excitation purity was kept constant, the attractiveness of red light decreased as its luminance decreased.(4) When the luminance was kept constant, the attractiveness of red light decreased as the excitation purity decreased.(5) Five red lights having various luminances and purities were compared with the above mentioned high-purity colors whose luminance was constantly 64 nt. The obtained order of attractiveness was as follows: R (64 nt, 99%), B, Y, R (32 nt, 99%), R (64 nt, 84%), G, W, R (32 nt, 84%), and R (16nt, 99%).
著者
杉岡 正敏 青村 和夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.3, pp.471-476, 1973
被引用文献数
2

いろいろの固体触媒によるエタンチオール(ET)の接触分解をパルス反応器を用いて行なった。この結果,エタンチオールの分解に活性を有している触媒はB酸点を有しているNHY-ゼオライト,固体リン酸(SPA),シリカ-アルミナ(SA)ばかりではなく, Al,08およびアルカリ金属ゼナライト,MeY(Me=Li, Na, K, Rb, Cs)のようにB酸点を有していない触媒もまた分解活性を示すことがわかった。しかしながら,CaO, MgOのような固体塩基は不活性であった。エタソチオールの分解生成物はNH,Y, SPA, SAおよびMeYではエチレンと硫化水素のみであったが, A130,ではエチレンと硫化水素とともにかなりの量のジエチルスルフィドが生成した。<BR>NH,Y, SPA, SAおよびA1203によるETの分解はピリジンで被毒されたが, MeYでは被毒されなかった。さらに,NH,YとSPAのエタンチオール分解活性は触媒の焼成温度の上昇とともに低下し,その活性低下はクメン分解の活性低下とよく対応していた。<BR>以上の結果から,エタンチオールの分解に対するNH,Y, SPA:およびSAの活性点はB酸点であるが,A1203とMeYではB酸点とは異なると考えられたので,その活性点に関して考察を加えた。
著者
山本 梨絵 林 明子 高畑 卓子 芝山 和則 高橋 久恵
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.263, 2015 (Released:2021-03-10)

目的 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は不安や気分障害、中枢の機能障害のために睡眠リズムが不整でしばしば不眠が見られる。オルゴール音楽は睡眠障害に有効との研究があるため、重症児(者)にもオルゴール音楽が催眠効果や中途覚醒に有効か検証する。 方法 消灯から入眠までに1時間以上を要する、または中途覚醒があり睡眠時間が継続しない重症児(者)10名を選出。オルゴール音楽のCDを20時から4時まで流す。第1期:音楽非介入期、第2期:音楽介入期、第3期:音楽非介入期に分け、各28日間、21時から4時まで1時間毎に睡眠状態を記録。消灯から熟眠に要する時間は、測定開始から熟眠判定した時間を算出。睡眠状態については覚醒3点、浅眠1点、熟眠0点で調査し、中央値の比較とウィルコクソン検定を行う。 結果 消灯から熟眠に要する時間において、第1期と第2期では中央値は1.5時間から0.75時間となり熟眠までに要する時間は短縮された。第2期と第3期を比較し、中央値は0.75時間から2時間となり熟眠までに要する時間が延びた。睡眠状況において、第1期と第2期では中央値は9.5点から7点となり、熟眠、浅眠が増加した。第2期と第3期の比較では中央値は7点から9点となり、オルゴール音楽を中止した後も効果の持続がみられた。 考察 重症児(者)は中枢神経系に障害を持つことから、睡眠−覚醒パターンを整えるケアは重要である。今回、オルゴール音楽を睡眠前に流すことでヒーリングミュージックによるリラクゼーション効果が導かれ、副交感神経優位の状態に変化したと考えられる。また、侵襲が少なく簡易的なオルゴール音楽を取り入れたことで重症児(者)の心理的安定を促進し催眠状態に導くことが出来たと考える。 結論 睡眠前よりオルゴール音楽を取り入れることで、睡眠−覚醒パターンに変化が見られたことから、重症児(者)に対しても有効であることが明らかになった。
著者
平山 博史 竹内 徳男 福山 祐三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.93, no.478, pp.9-16, 1994-02-18

菅らが提唱した心臓可変弾性体モデルの妥当性を立証するため、心臓血管系の数学的電気的等価回路を用いて大動脈および末梢血管血流を再現した。収縮要素としてのE(t)は可変コンプライアンスとしてあらわし動脈系は慣性、コンプライアンス、抵抗で構成された。再現された大動脈波形は生理的であったが、末梢血管血流は対称であった。最大血流量は動脈血流抵抗、心筋内抵抗、特性抵抗とともに減した。また大動脈最大血流量は大動脈コンプライアンスとともに増大したが末梢血管血流は大動脈コンプライアンスとともに減少した。可変弾性体モデルは循環器系の血行動態を統合的に表現できる優れた概念である。
著者
安田 真紀子
出版者
奈良大学史学会
雑誌
奈良史学 (ISSN:02894874)
巻号頁・発行日
no.23, pp.33-56, 2005

近年、街道や旅に対する関心の高まりもあって、交通史も多岐の分野にわたって研究が進められている。中でも、旅のルート・観光コースに関する研究は、歴史学のみならず、地理学や観光学の見地からも注目されてきている。奈良・三重問においても、伊勢街道を中心に実地調査や参宮ルートの研究が行われ、その成果も報告されている。その一方で、開発や荒廃等により街道のルートや存在も曖昧になってきつつある。また、同一の街道であっても地方によって呼称が異なっており、研究者や自治体等によって、各街道にさまざまな名称が付けられた結果、混同を招き、街道自体の姿をより複雑なものにしている。そこで、本稿では、今一度、江戸時代の大和における伊勢街道の整理を行い、道中案内記類から、大和と伊勢を結ぶ参宮ルートの変遷や、参宮と大和巡りとの関係について事実を確定し、考察したい。とくに、伊勢参宮に古くから利用されていた「伊勢本街道」を中心に、現地調査も踏まえて考察を加え、その歴史的な位置付けを明らかにしていきたい。
著者
鈴木 誠史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.291, pp.25-30, 2002-08-22
参考文献数
29

筆者は、1955年に郵政省電波研究所(現独立行政法人通信総合研究所)に入所して、情報通信、音声情報処理の研究を始めた。これらの分野の黎明期であったため、限られた情報源から、広い関連分野を学びながらの実験的研究を進めた。音声研究を主としたが、その方向性は手探り状態だった。中田和男氏がMIT留学から帰国後、ホルマント合成方式の合成器を制作し、母音.半母音・子音の合成音による言語音知覚の実験を行った。引き続き、母音、数字語の認識装置を試作した。ハードウェアによる限界を知り、1960年頃からは、計算機処理による分析、認識を開始した。これらの研究は、研究法が定式化していない時代としては、正鵠を得ていたと思う。1965年頃には連続音声認識、神経回路による分析などを手がけた。FFTを導入するとともに基礎的研究を指向した。音声、通信、信号処理の境界領域のプロジェクト的研究も行った。ヘリウム音声の性質の解明.了解性改善、騒音や雑音で妨害された音声の品質向上などがあげられる。研究テーマが早すきたり、技術が追いつかなかったことも多い。ほとんどの研究が初めてチャレンジするもので、研究・開発に際しての考え方等は、今の研究者の参考になるであろう。
著者
田谷 博吉
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.261-279, 1973
被引用文献数
1

During the Edo period, the leading currencies were gold, silver, and copper coins issued by the Tokugawa Shogunate. Though various kinds of paper money were issued by territorial lords (Daimyo) especially in the latter half of the Edo period, it was necessary to obtain the permit of the Shogunate to issue money. In commercial transactions, the most important currencies were gold and silver coins of the Shogunate, which were produced in more than 40 different kinds. In order to study the monetary transactions of the period, it is therefore necessary to classify these various sorts of coins by the time of issue (Keicho, Genroku-Hoei, Shotoku-Kyohou, Genbun, Bunsei, Tenpo, Ansei-Manyen) and show the date of issue, the years of circulation, the weight and fineness, the amount of issue, etc. There are two kinds of currency table showing the above items : one made by Chuzaburo Sato, an official of the mint of gold coins of the Shogunate, in 1873; and the other by the Osaka Mint of the Meiji government in 1921.Though the one made by Chuzaburo Sato is more useful to the study of Tokugawa currency, his table is based on the materials in the last part of the Edo period. The present writer constructs a new table using earlie source materials in this paper.