著者
大島 登志彦
出版者
日本地理教育学会
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.1-24, 1983-09-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1
著者
大内聡
出版者
財務省
雑誌
ファイナンス
巻号頁・発行日
no.475, 2005-06
著者
大塚 淳
出版者
日本科学哲学会
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.29-41, 2007-07-30 (Released:2009-05-29)
参考文献数
30
被引用文献数
1

Much of the controversy of function revolves around two concepts, namely selected effect (SE) function and causal role (CR) function. Each of these proposals and its reciprocal critiques are examined, and it is shown that each concept embodies two different research strategies in biology, one the search for adaptation (SE function) and the other the reduction of biological phenomena (CR function). But this conceptual difference does not entail a separation in scientific practice. The proper attribution of SE function to a trait requires careful analysis of CR function in its developmental origin -- this is the idea of developmental modularity. It turns out that the ideal condition for developmental CR function analysis (i.e. near decomposability) also facilitates the mosaic evolution of -- and thus the attribution of SE function to -- organismal characters.
著者
佐々木 哲也 中垣 慶子 佐栁 友規 真鍋 朋子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒトの脳では、新生児から子供の時期にかけてシナプスが急速に増えた後、大人になるにつれて減っていく。自閉症患者の脳では、シナプスの刈り込みがうまくいかず、余分な神経回路が残っていると考えられている。私たちは霊長類であるマーモセットを使って自閉症の原因に迫ろうとしている。まずマーモセットの脳で「刈り込み」が起こっていることを確認し、さらにバルプロ酸を妊娠しているサルに与えて自閉症の症状を示す霊長類モデルを作り出すことに成功した。本研究では、その脳でシナプスの「刈り込み」が不十分であることを見つけた。ヒト自閉症脳の特徴を反映したサルを用いることで、新しい治療法の開発に貢献できると期待される。
著者
小林 信一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.26-36, 2008-09-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
13

イノベーションを促進するために大学に対する研究資金を「選択と集中」の原則に基づいて配分すべきだという議論がある.本稿は「選択と集中」によるイノベーションという考え方の妥当性を,アメリカにおける科学技術政策の歴史的検討,実態分析を通じて検討するものである.分析結果は,「選択と集中」は,すべての経済主体のための研究基盤の強化を指向するイノベーション政策と相容れないことを示唆している.
著者
吉田 拓弥 古久保 拓 三宅 瑞穂 和泉 智 庄司 繁市 山川 智之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.533-539, 2022 (Released:2022-09-28)
参考文献数
9

低酸素誘導因子―プロリン水酸化酵素阻害薬ロキサデュスタット(ROX)投与後に血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)レベルが低下した血液透析(HD)患者の症例が報告されている.白鷺病院で維持HD を施行し,ROX を開始したHD 患者11 例(71±15 歳)を対象とし,血清TSH および遊離サイロキシン(FT4)レベル低下の頻度や程度について調査した.血清TSH レベルは,ROX 開始後11 例中9 例で低下し,3 例が基準値以下となった.血清FT4 レベルは,ROX 開始後11 例全例で基準値以下まで低下した.ROX 開始前後の血清TSH 変動と血清FT4 変動の間には強い正相関が認められた(ρ=0.838,p=0.001).影響が顕著だった1 例では,ROX 開始12 日後,血清TSH レベルは8.81 から1.04 μIU/mL,血清FT4 レベルは1.05 から0.38 ng/dL へ低下し,ROX 中止後に正常範囲まで改善した.ROX はHD 患者において高頻度で血清TSH レベルおよびFT4 レベルの低下を起こし,症例によってはその急速な発現や症状を伴う可能性に注意が必要であると思われた.
著者
形井 秀一 篠原 昭二 坂口 俊二 浦山 久嗣 河原 保裕 香取 俊光 小林 健二
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.576-586, 2007-11-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
21

1. はじめに2006年10月31日~11月2日の3日間、9カ国2組織が参加してWHO/WPRO (西太平洋地域事務局) 主催による経穴部位国際標準化公式会議がつくば市の国際会議場で開催された。会議のアドバイザー (発言権のある参加者) は、9カ国 (日本、中国、韓国、モンゴル、シンガポール、ベトナム、オーストラリア、アメリカ合衆国、英国) と2組織 (WFAS=World Federation of Acupuncture Societies, AAOM=American Association of Oriental Medicine) から計20名であった。この会議で、過去3年間日中韓で検討してきた経穴部位案が正式に決定された。2. 経穴部位の合意本会議で決定された経穴部位は361穴であり、これまで日本で教育されてきた354穴より7穴多い。これまでの教科書と変更になるのは、 (1) 奇穴から正穴となったもの (2) 前腕長などの骨度の分寸の変更によるもの (3) 個別の理由で変更になったもの、などであった。また、最後まで一部位に決定出来ずに2部位併記経穴が6穴 (迎香、禾〓、水溝、中衝、労宮、環跳) あった。3. 今後の動きつくば会議で最終的な経穴部位標準化が達成されたが、WPROは、経穴部位のみでなく、 (1) 東洋医学用語の標準化、 (2) 東洋医学の医療情報の標準化、 (3) 鍼灸研究法のガイドライン作りなど、多岐にわたる標準化を進め、東洋医学全体の用語や考え方、枠組みの標準化を行い、それらを東洋医学の世界的な研究、臨床へ活用しようとしている。4. 経穴部位決定後の課題今後の課題としては、 (1) 経穴部位のより厳密な再検討。 (2) 標準化部位の国内普及。 (3) 「日本鍼灸」の明確化と世界への普及。などが上げられる。
著者
武原 弘典 松川 義純 田中 裕 山本 修平 堀谷 亮介 西森(佐藤) 婦美子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.246-251, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
13

発達障害に合併する睡眠障害に対して漢方治療が有効であった2例を報告する。症例1はアスペルガー障害の15歳女子で,主訴は起床困難,入眠困難,易疲労性であった。陰血不足で肝気の昂りが抑えられず,緊張興奮状態に陥り易く上記症状が生じると考えた。抑肝散に甘麦大棗湯を併用し,起床困難は改善し毎日通学できるようになった。症例2は注意欠如多動性障害の17歳男子で,起床困難や倦怠感,易疲労性が主訴でしばしば緊張興奮状態となった。小建中湯内服で症状はやや改善傾向があったが,肝気を巡らす四逆散を併用後は毎日通学できるようになった。漢方医学では睡眠も含め精神の安定には血が重要であり,また幼少期は気血の不足がおこりやすいと捉えており,発達障害における二次障害の治療に際し補陰血に着目することが有用であると考えた。
著者
田崎 勝也 申 知元
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.32-42, 2017 (Released:2017-04-25)
参考文献数
43
被引用文献数
22 26

This study attempts to identify response styles of Japanese students by cross-level and cross-national analyses. Tasaki and Ninomiya (2013) demonstrated the existence of an acquiescence response behavior of Japanese students based on the model by Billet and McClendon(2000), who measured latent response characteristics as “style factor.” In this study, we used a different response style measurement model proposed by Weijters, Schillewaert, & Geuens (2008) positing that response styles are psychological constructs and observed response style variables are summary indicators derived from sets of various, but independent, test items. Results of cross-national analyses indicated that Japanese and Korean participants were more likely to choose a mid-point response (MRS) and less likely to choose an acquiescence response (ARS) than American counterparts, but no significant difference was observed for an extreme response (ERS) among participants from the three nations. Within the Japanese response style model, cross-level analyses showed that ARS scores were significantly higher than ERS scores, indicating that Japanese participants had an acquiescence response style, consistent with the findings from Tasaki & Ninomiya (2013).
著者
上谷 直克
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.1-18, 2022 (Released:2022-01-31)
参考文献数
35
被引用文献数
2

2019年に大規模な社会騒乱を経験したラテンアメリカ諸国は、そのさなかにCOVID-19に襲われ、感染者や死者が断続的に増加するなか、多くの国で厳格なロックダウンが施行された。しかし、もちろん各国の政治は政治であるがゆえにその動きを止めることはなく、極端にはハイチの大統領暗殺事件など、多様な政治事象が生じている。本稿では、このように「混乱するラテンアメリカ政治」の今を捉えるべく、複数のラテンアメリカ諸国の事例を対象にさまざまなデータを用いつつ、「国家の脆弱性」「政治体制の変動」「代表制の危機」などいくつか政治学の重要テーマに絞って、問題や論点の明確化と整理を試みる。
著者
井川 雅子 山田 和男
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.17-22, 2017 (Released:2019-04-24)
参考文献数
32

身体の様々な部位の異常感を奇妙な表現で訴える症例を,一般にセネストパチー(cenesthopathy)と呼ぶ.歯科を受診する本疾患の患者のほとんどは高齢者で,口腔内の異常感を単一症状的に訴える狭義のセネストパチーである.セネストパチーは従来より難治と考えられてきたが,その半数は治療で改善するという報告もある.本報告では向精神薬が著効した3例を供覧し,その病態生理と治療法について考察する.症例の概要:①65歳,男性.歯肉から糸やコイル状の金属が出ると訴えていた.アリピプラゾール6mg/日で9か月半後に症状はほぼ消失した.②60歳,男性.上顎左側側切歯から左胸部にかけて“神経の糸”のようなものがつながっており,ぐるぐる回ると訴えていた.うつ病治療のために服用していたアミトリプチリン50mg/日に,新たにリスペリドン1mg/日を加えたところ1年後に症状はほぼ消失した.③45歳,女性.下顎左側臼歯部に痛みの電流が流れ円を描いて回っていると訴えていたが,アミトリプチリン75mg/日で3か月後に症状はほぼ消失した.考察:高齢者に多い口腔内セネストパチーには,統合失調症圏またはうつ病圏の病態に加え,加齢に伴う脳器質的変化が体感異常に関与している可能性がある.結論:治療の第一選択として向精神薬療法を用いること,また治療薬としては,抗精神病薬のみではなく,抗うつ薬も選択肢に入れることを検討すべきであろう.
著者
小川 新吉 古田 善伯 山本 恵三 永井 信雄
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.45-55, 1973-06-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

巨大な体格, 豪力の持ち主であると考えられている現役上位力士) (関取) の形態, 機能の測定および調査を行ない, 種々なる検討を試みた。形態的な測定1.関取の平均身長は180.2cmと, 日本人としてはずばぬけて大柄な集団であるが, スポーツ選手の大型化を考えるとき, 特筆すべき特徴とは考えられない。2.体重は平均122.2kgと超重量級で, ローレル指数も平均210.5と異常に近い充実度を示し, この超肥満体に力士の特徴がみられる。身体の軟組織に富む周囲径, 特に腰囲は, 114.9cm, 臀囲は115.7cmと著しく大きく, 皮脂厚 (3部位の合計) も109.9mmと驚くべき肥厚を示し, 力士の体型の特徴は皮脂厚の異常なまでの発達にあることがわかる。機能の測定3.背筋力の平均は181kg, 握力左右平均47.9kgと予想したほど大きくなく, オリンピックの重量挙や投擲選手以下である。筋力の測定方法等に問題があるにしても, 筋力は形態に比べ予想外に発達していないと考えられる。5.垂直とび47.9cm, サイド・ステップ35.1回, 腕立屈伸21.4回と, 体重が負荷となるテストでは体重の影響が問題となり, スポーツ選手としては著しく小さい。6.しかし, 身体の柔軟性や全身反応時間等は肥満体にもかかわらず, さして劣っていない。7.被検力士の平均肺活量は4918.6mlで, 巨体の割には小さい。8.ステップ・テストの評点は平均49.4, 体重増が負担となり, 同年令成人より著しく劣っている。総体して, 形態の発達に比べて, 呼吸循環器系機能の発達が明らかにアンバランスになっていると考えられる。力士の発育・発連9.一部関取の形態につき, 過去4年間の測定結果を追跡調査した結果では, 身長の伸びはほとんどみられないが, 体重, 胸囲の発達は著しく, 特に体重では6~29kgの著明な増大がみられた。10.上位と下位の力士を比較すると, 上位力士は形態, 特に体重, 周囲径が優れており, 機能面では上位と下位の間にそれほど著明な差違は認められない。したがって, 相撲競技では, 形態の大小が勝負に大きく関与していると考えられる。11.以上の結果を総括してみると, 力士は形態の発達には著しい特徴が認められるが, 機能面では, 他種目の一流スポーツ選手と比較し, 伸びが著しく劣っている。これらについては, 伝統的な練習方法や稽古, 生活様式等に考慮すべき問題があると考えられる。謝辞: 本研究は文部省の特定科学研究費, IBP.HA班の研究助成金をえて実施されたことを銘記しておく。なお, 本研究について, 多大の理解と好意を賜った日本相撲協会の武蔵川理事長, 故秀の山監事, さらに直接御協力を願った各部屋の親方, 責任者, 関取衆に感謝の意を表するものである。
著者
小川 雄太 宮本 行庸
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.252-259, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
17

本研究では全盲の視覚障害者がテレビゲームを楽しむための必要な支援について,スーパーファミコンを用いた実践を通して明らかにした.3つのソフトについて具体的に検討したところ,構成や付加されている音声情報によっては支援がほとんど無くとも,全盲の視覚障害者がプレーできることが分かった.また,晴眼者からの必要最小限の支援によって全盲の視覚障害者と晴眼者が共に楽しめる可能性を見出すことができた.
著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。
著者
坂本 勇太 齋藤 駿太
出版者
公益社団法人 北海道作業療法士会
雑誌
作業療法の実践と科学 (ISSN:24345806)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.111-117, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
9

クライエント(以下,CL)中心の作業療法(以下,OT)を実践するためにCLとの協業が必須であるが,CLがOTに拒否的な態度を示すこともある.今回,入院により主婦の役割を剥奪され,OTを拒否する高齢女性のA氏を担当した.A氏はマズローの欲求段階による評価から安全欲求が不足していたため,趣味である音楽鑑賞により欲求の充足を行い,CL中心の可能化のカナダモデル(以下,CMCE)を用いて介入した結果,A氏の必要な作業である「炊事」の可能化に至った.OTを拒否するCLの作業を可能化するためには,CLの欲求段階を踏まえた上でCMCEを用いた介入が有用であることが示唆された.
著者
伊地 俊介 Chandra S. K. Mayanil 富田 忠則
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.256-268, 2013 (Released:2013-04-25)
参考文献数
84
被引用文献数
1 1

ヒト二分脊椎の原因は, 葉酸代謝関連遺伝子異常や母体の糖代謝関連遺伝子異常をはじめとするgeneticな要因や, 抗てんかん剤内服によるNTDリスク上昇などnon-geneticな要因が複合的に関与 (gene-environmental interaction) し, multifactorialであるといわざるをえない. 1998年から小麦製品への葉酸添加が始まった北米では着実に罹患率が低下し, 栄養強化政策は世界各国に広がりつつあるが, 逆に本邦では徐々に罹患率が上昇している. 葉酸によるNTD予防の機序にはepigeneticな遺伝子発現調節の機構が深く関与し, 神経堤幹細胞の増殖や分化にもかかわっている.
著者
中谷 こずえ 五十嵐 石塚
出版者
人間福祉学会
雑誌
人間福祉学会誌 (ISSN:13465821)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.67-74, 2021 (Released:2022-12-06)

矯正施設で社会復帰を目指す成人男性受刑者の健康実態と健康意識の現状を明らかにし、健康問題の観点から 健康を維持増進するための看護支援を明らかにすることを目的とした。全国56箇所の成人男性受刑者708名に対して、健康実態と健康意識についての質問紙調査を郵送法で行った。調査内容は、基本属性(年齢、施設での生活歴、前職業、過喫煙歴、BMI、現在歯数など)と、健康状態(精神・睡眠状況、食欲、身体活動量、・生きがい意識など)で構成した。統計解析には、275名(有効回答率38.8%)のデータを使用し、調査項目ごとに記述統計量を算出し、t 検定、相関関係、さらに関連要因を探索するため、重回帰分析も用いた。研究参加者の平均年齢は45.5±10.71歳であった。入所期間は、 5 年以上が半数(58.9%)であった。受刑前職業種では、土木業者や専門・技術職者(67.6%)が半数以上を占めていた。年代別現在歯数を一般値と比較した結果、30から50歳代(p<0.001)と70歳以上(p<0.05)は有意に低いことが示された。現在歯数を従属変数として重回帰分析では、年齢、排便習慣、食事摂取量が有意な負の標準回帰係数を示した。医療体制が十分ではない刑務所という環境下において、刑期が長期にわたり、加齢による変化は避けられない。また、歯の損失により、十分にかみ砕くことができないため、食事摂取量やさらには、排泄にも直接的に影響を及ぼすことが明らかになった。社会復帰を目指すためには、健康が保たれなければならない。そのため、精神・睡眠・身体活動量や生きがい意識にも働きかけながら、矯正施設内でも行える歯周病などの病気発症の予防ケアが求められていると考えられた。
著者
麦山 亮太 西澤 和也
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.214-227, 2017 (Released:2018-03-27)
参考文献数
37
被引用文献数
2

本稿の目的は,新卒求人情報サイトのデータから,企業が新卒者に対して求める能力の構造を明らかにするとともに,その企業規模による違いを検討することにある.先行研究は,近年ほど企業が学生へ自律的な能力を求めるようになってきたと主張する.しかし,これまでの研究は大企業を中心に検討されており,企業規模間での差異は十分に明らかにされてこなかった.そこで本稿は2016年に新卒求人情報サイトより収集した大小含む20859企業の「求める人物像・採用基準」に関する自由記述データを用い,企業の求める能力が企業規模によっていかに異なるのかを検討する.トピックモデルを用いた分析の結果,企業が新卒者に提示する能力は多様であるのみならず,企業規模によって重視される点が異なっていることが示された.大企業においては主として新たな課題や価値を創り出し解決していく自律的な能力が提示される.一方で中小企業においては,チャレンジ精神やアピアランスといった,真面目さや規律の遵守と結びつく能力が提示される.とくに中小企業においては,先行研究で増加していると指摘されてきた自律的な能力とは別様の能力が重視されていることを明らかにした.
著者
奥本 牧子 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1083, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】 煮物の味は冷めるときに染み込む、と一般にいわれているが、それを確かめるために実験を行なった。前報では、3種の食品を1% NaCl溶液中で加熱し、温度降下速度をかえて、一定温度で保温し、食品中の食塩の濃度を測定した。その結果、温度が高いほど食品中のNaCl濃度は高く、冷めるときに味が染み込むということは確認出来なかった。そこで、さらに温度降下条件を急速にし、煮汁の温度が冷めるときに味が染み込むかどうか確かめることを目的とした。さらにソレー効果との関係を考察した。 【方法】 試料として前報同様ジャガイモ、ダイコン、コンニャクを用い、一辺2cmの立方体に成型し1% NaCl溶液中で一定条件で加熱した後、とりだして、予め、0,30,50,80,95℃に設定した1% NaCl溶液に移し、5,10,30分後に取り出し、前報同様に内層(表面より3mm内側)と外層(表面より3mmまで)に分けて、イオンメーターでClイオンを測定し、NaCl濃度を算出した。 【結果】 いずれの場合においても高温に保った方がNaCl濃度は高い傾向にあった。今回の実験でも冷めるときに味が染み込むことは確認出来なかった。ソレー効果は温度が定常状態の場合に液体中のNaCl濃度が移動するという現象で、濃度によって温度は異なるが、ある特定の温度(海水程度では12℃)を境にしてNaClは高温側から低温側、あるいは低温側から高温側に移動するという現象で、煮物の味の染み込みを説明するには無理があるのではないかと考えられる。