著者
塩田 昌弘 Masahiro SHIOTA
出版者
大手前大学
雑誌
大手前大学論集 = Otemae Journal (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
no.13, pp.101-125, 2013-03-31

明治・大正・昭和を通して、実業界で活躍し、阪急電鉄、阪急百貨店、東宝映画、宝塚歌劇、阪急ブレーブス、コマ・スタジアム、逸翁美術館、マグノリアホール、池田文庫、小林一三記念館等の創設の基礎にその才能・才覚を発揮した不世出の実業家・小林一三(1873〜1957)について紹介する。 特にこの小論では、小林一三の成した事業のうち、文化・美術方向を中心に逸翁美術館に焦点をあて論考しようと思う。本来、事業はそれを成した人の人格の反映と考えられる。後年、今大閤と言われた小林一三であるが、幼年期は、愛情の薄い家庭に育った。だが、その小林一三がどの様にして、その才能を開花させていったのか。小林一三の志とは何か、逸翁美術館成立の礎となったコレクションを貫流する美とはどの様なものか、これらについて考察する。
著者
Hiroshi Tateishi Mika Tateishi Mohamed O Radwan Takuya Masunaga Kosuke Kawatashiro Yasunori Oba Misato Oyama Natsuki Inoue-Kitahashi Mikako Fujita Yoshinari Okamoto Masami Otsuka
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1123-1130, 2021-11-01 (Released:2021-11-01)
参考文献数
41
被引用文献数
12

A disintegrin and metalloproteinase 17 (ADAM17) is a zinc-dependent enzyme that catalyzes the cleavage of the extracellular domains of various transmembrane proteins. ADAM17 is regarded as a promising drug target for the suppression of various diseases, including cancer metastasis. We synthesized a new ADAM17 inhibitor, SN-4, composed of a zinc-binding dithiol moiety and an appendage that specifically binds to a pocket of ADAM17. We show that SN-4 inhibits the ability of ADAM17 to cleave tumor necrosis factor α (TNF-α) in vitro. This activity was reduced by the addition of zinc, indicating the importance of the zinc chelating dithiol moiety. Inhibition of TNF-α cleavage by SN-4 in cells was also observed, and with an IC50 of 3.22 µM, SN-4 showed slightly higher activity than the well-studied ADAM17 inhibitor marimastat. Furthermore, SN-4 was shown to inhibit cleavage of CD44 by ADAM17, but not by ADAM10, and to suppress cell invasion. Molecular docking showed good fitting of the specificity pocket-binding group and one SH of SN-4 and hinted at possible means of structural optimization. This study provides clues for the development of potent and selective ADAM17 inhibitors.
著者
浦田 隆広
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.43-60, 2000

<p>品質原価計算に関する研究の多くは,当該技法の技術的側面に焦点をあてたものであり,同技法のもつ社会的・経済的機能について包括的な検討を試みた研究は少ない.そこで本稿では,品質原価計算は歴史的所産であり,その存在は社会的・経済的要因に規定されるとの観点から,既存の研究成果を踏まえた上で,実在する企業における品質原価計算の実践過程を取り上げ,それを要請する社会経済的背景とともに,当該技法の構造と機能について分析を行った.</p><p>Xerox社の品質原価計算は,アメリカ複写機市場をめぐる資本間競争を背景として構築された管理会計技法である.同社は,1960年代,電子複写原理・技術の商品化を契機に,経済的成長の基盤を確立し,アメリカ複写機市場における独占的地位を獲得した.しかし,1970年代以降,反トラスト法の適用による特許技術の公開や高品質・低価格戦略を経営戦略の支柱とする競争企業の参入によって,Xerox社の独占的支配力は低下した.同社の経営層は,品質向上と原価低減の同時的達成を企図した経営戦略への転換を余儀なくされ,それは品質原価計算の導入というかたちで具現化されるに至ったのである.</p><p>同社の品質コストは,ASQCの推奨するPAF接近法に依拠しながらも,それに拘束されることなく,同社の戦略的基盤となるTQMを反映して定義された.同社の機会喪失コストにそれがあらわれており,外部失敗コストから敢えて分離・独立させ,その測定と管理を試みていた.また,品質コスト管理の技術的主流は,実際品質コストの期間比較にあったが,同社の場合,予算を適用し,実際との比較を可能にすることで,差異分析を試みており,さらにはその成果を全社組織的に浸透させるべく,非製造部門へ展開されている.</p><p>品質原価計算の基底には,競争戦略としての品質の重要性が存在している.当該技法は,経営管理の用具として,労働者および下請企業の管理強化に寄与することによって,品質向上と原価低減の同時的達成に貢献したのである.</p>
著者
下村 祐介 南條 千人 熊崎 大輔 大工谷 新一 高野 吉朗
出版者
社団法人 日本理学療法士協会近畿ブロック
雑誌
近畿理学療法学術大会 第49回近畿理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.31, 2009 (Released:2009-09-11)

【はじめに】 運動プログラムを立案する際に筋力増強訓練と有酸素運動を組み合わせることが多い。先行研究では血液検査を用い、筋力増強訓練後に有酸素運動を実施した方が筋力強化に対し効果的であるという報告もある。今回の研究目的は、筋力増強訓練と有酸素運動の実施順序を変える事により、筋力および心肺機能に対してどのような効果の違いを明らかにする事とした。 【対象者と方法】 対象は、研究の説明を受け、同意書に署名した実験上支障が無いと判断された成人男子10名(21.1±0.3 歳)20脚である。運動期間は4週間とし、運動期間の間は2ヶ月間の無運動期間を設けた。有酸素運動(Aerobics training以下、AT)後に筋力増強訓練(Muscle training以下、MT)を行った期間をAM期とし、MT後にATを行った期間をMA期とした。MTは、下肢筋力強化マシンを用い、膝伸展運動を実施した。運動負荷量は、膝関節60度屈曲位での等尺性収縮にて測定した最大膝伸展筋力値(100%MVC)の70%とした。ATは自転車エルゴメーターを用い、運動強度はカルボーネン法を使用し、目標心拍数を50%に設定した。筋力増強の効果判定は大腿周径、最大膝伸展筋力を測定すると同時に、表面筋電図にて大腿直筋、外側広筋の筋積分値(IEMG)を測定した。ATの効果判定はトレッドミルを使用し、呼吸代謝モニターにて最高酸素摂取量(peak VO2)を測定し、AT Windowデータ解析ソフトを用い解析した。統計解析は、大腿周径、最大膝伸展筋力、IEMG、peak VO2についてAM期、MA期での運動実施期間の開始時と終了時の値を各々対応のあるt-検定にて比較した。 【結果】 大腿周径及び最高酸素摂取量はAM期、MA期とも有意差を認めなかった。IEMGは、AM期、MA期各々285.6±171.5V・Sから316.0±248.9V・S、318.8±174.5V・Sから347.3±196.1V・Sと増加したが有意差は認めなかった。膝伸展筋力はAM期に232.3±46.4Nmから209.9±46.0Nmへと低下傾向を認め、MA期は221.7±54.1Nmから276.2+53.8Nmへと有意な増加を認めた(p<0.01)。 【考察】 心肺機能はAM期、MA期ともに有意な効果は認めなかったが、筋力はMA期で増強が認められた。今回の筋力増強は大腿周径に変化はなく、IEMGが増加傾向を示したことから、運動単位動員数の増加によるものであると考えられた。先行研究では、筋力増強訓練の前に有酸素運動を行うことで、筋力増強に必要な成長ホルモンの分泌を抑制するという報告もあり、今回AM期と比較してMA期に筋力増強効果が得られたと考えられた。
著者
海老塚 良吉
出版者
公益社団法人 都市住宅学会
雑誌
都市住宅学 (ISSN:13418157)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.23, pp.104-107, 1998-10-31 (Released:2012-08-01)
参考文献数
3

This study attempts to analyze the social housing organizations of four foreign countries; the United Kingdom, the United States of America, Germany and France. The ratio of social housing in the all housing units varies from 2% in USA to 23% in UK. Although Public housing is decreasing in USA and in UK, NPO sector is increasing. Public budged to social housing is about half of development cost except France.
著者
伊藤 洋一 板垣 博 テフェラ ウオンデ
出版者
日本熱帯医学会
雑誌
Japanese Journal of Tropical Medicine and Hygiene (ISSN:03042146)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-5, 1973
被引用文献数
1

エチオピア産<I>Biomphalaria</I>属の2種の貝にエチオピア人の患者から分離したマンソン住血吸虫ミラシジウムを実験的に感染させ, その感受性を比較した。その結果, 各地から採取した<I>B. Pfeifferi rueppellii</I>では67~100%の感染率が得られたのに比し, <I>B. sudanica</I>ではわずかに9%の感染率しか得られなかった。また両種のエチオピアにおける分布状態を調査したところ, <I>B. Pfezlfferi rueppellii</I>はエチオピア全土に亘り分布しているのに比し, <I>B. sudanica</I>は南部湖水地区の一部の湖水にしかその棲息が認められなかった。<BR>これらの結果より, エチオピアにおけるマンソン住血吸虫の主要な中間宿主は<I>B. Pfezifferi rueppellii</I>であると考えられる。
著者
横田 智 山尾 僚 鈴木 信彦
出版者
一般社団法人 日本昆虫学会
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.252-263, 2012-10-05 (Released:2018-09-21)

ワーカー多型の進化とその生態学的意義を解明するために,ワーカーに二型(メジャーおよびマイナーワーカー)がみられるオオズアリの分業体制を定量的に解析すると共に,メジャーの重要性が高い餌条件下で,カースト比やメジャー形態の可塑的変化が生じるのかを検証した.室内でサイズの異なる餌(大きい餌:フタホシコオロギ成虫,小さい餌:大きい餌を凍結粉砕したもの)を与え,餌場に現れたワーカーの個体数やメジャー比,行動様式,餌の解体の有無などを観察した.大きな餌を与えた場合,メジャーが餌場に多く現れ,マイナーが運搬行動に従事し,メジャーが解体行動に従事するという明確な分業がみられた.メジャーがいるコロニーでは,ほとんど場合餌が解体されたのに対し,メジャー不在のコロニーでは解体が生じたのはわずかであり,いずれも女王によるものであった.63日間,大きな餌を与えたコロニーと小さな餌のみを与えたコロニーのメジャー比及びメジャーの頭幅を比較したところ,メジャー比には違いはみられなかったが,頭幅には餌の大きさに相関した違いが生じた.腹部に栄養を貯蔵したメジャーがいるサブコロニー,貯蔵していないメジャーがいるサブコロニー,メジャーがいないサブコロニーをそれぞれ飢餓条件に置いて生存率を記録した結果,貯蔵したメジャーがいるコロニーが最も生存期間が長かった.以上の結果から,オオズアリの採餌におけるワーカーの明確な分業体制とメジャーによる食物貯蔵機能が明らかになり,メジャー形態の可塑的変異も確認された.メジャーカーストは餌の解体や栄養貯蔵に重要な役割を担っており,餌資源の獲得や維持に大きく貢献していると考えられた.
著者
関根 有紀 川崎 寛也 笠松 千夏 野中 雅彦
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】昨年我々は複数の官能特性の経時的変化を1回の評価で捉えられるTemporal Dominance of Sensations(TDS)法を用い、従来の強度評定法では見いだせなかった食品の官能特性に関わるパラメータを報告した。このTDS法では結果がTDSカーブで図示され、官能特性の経時変化が見える化されるため、どのように味や風味をデザイン(設計)するかについて議論可能となる。本発表では、この活用例としてトップショコラティエである小山進氏(パティスリー エス・コヤマ)とのコラボレーションにより、和のフレーバーを活かしたチョコレートを作成した事例を報告する。<br>【方法】市販チョコレートのTDS評価結果を元にオリジナルチョコレートの試作を小山氏に依頼した。試作チョコレートのTDS評価を行い、フレーバーデザインについて議論を行うというサイクルを進めた。TDS評価は、担当者で言葉出しを行った14語を用いて行った。チョコレート片(13&times;20&times;9mm)を味わい、最もdominant(支配的、最も注意が向けられた、印象的)に感じられた「味」と「風味」について経時的に回答した(n=7~9)。<br>【結果】チョコレートの素材としてほうじ茶や賀茂なすのしば漬けなどを用いた、うま味が特徴的に余韻(後半に有意にdominant(p<0.1))として残るオリジナルチョコレートを作成することができた。これまでショコラティエが感覚的に設計してきたフレーバーデザインの過程を、TDSカーブとして具体的に記録することができた。このようにTDS法は、時間軸を導入したフレーバーデザインツールとして活用できることが示唆された。
著者
山形 陽一 丹羽 誠
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.5-11, 1979-05-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
13

1) 水温25℃におけるウナギに対する亜硝酸の急性毒性と低濃度の亜硝酸溶液中でウナギを長期間飼育した場合の成長および生理状態におよぼす影響について検討した。2) A.japonicaおよびA.anguillaに対する亜硝酸態窒素の24時間TLmは, 460mg/lおよび351mg/lとなり, 0いずれの魚種も亜硝酸に対して強い抵抗性を示した。また, これら致死濃度の亜硝酸溶液中においたウナギは, 鰓および肝臓組織に変性がみられた。3) 9週間の飼育結果から, A.japonicaの成長を阻害する亜硝酸の濃度は30mg/lNO2-Nであることが判った。この濃度ではヘマトクリット値・血色素量・赤血球数が著しく低下し, 鰓組織にも変性がみられた。4) A.japonicaに対する亜硝酸の安全濃度は, 本実験条件では10mg/l NO2-Nと考えられる。
著者
井上 洋一 井上 洋一 仁平 典宏 仁平 典宏 石坂 友司 石坂 友司 浜田 雄介 浜田 雄介
出版者
奈良女子大学スポーツ健康科学コース
雑誌
奈良女子大学スポーツ科学研究 (ISSN 2434-0200) (ISSN:24340200)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-77, 2019-07-03

奈良女子大学生活環境学部心身健康学科スポーツ健康科学コース主催「第6回 奈良女子大学オリンピック・公開シンポジウム「オリンピックとスポーツボランティア」(2018年11月17日(土)14時~16時15分、奈良女子大学G棟101教室)の採録。シンポジスト:仁平典宏(東京大学準教授)「オリンピックボランティアと「物語」の動員ー「やりがい搾取」論を問い直す」、石坂友司(奈良女子大学準教授)「長野オリンピックからみたスポーツ・ボランティア」、浜田雄介(京都産業大学講師)「トライアスロン大会におけるボランティアとは」、コーディネーター:井上洋一(奈良女子大学教授)本報告は,2018年11月17に行われた第6回奈良女子大学オリンピック・公開シンポジウム「オリンピックとスポーツ・ボランティア」(奈良女子大学生活環境学部心身健康学科スポーツ健康科学コース主催,G棟101教室,14時~16時30分)の採録である.オリンピック開催に向けたボランティアの募集に関して,「やりがい搾取」と批判される問題の検証、ボランティアの社会的意義、スポーツ・ボランティアの特殊性とは何かといった切り口から議論を深めた.
著者
須藤 俊夫
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.298-303, 2002-05-01 (Released:2010-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1
著者
竹田 伸也 井上 雅彦 金子 周平 南前 恵子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.63-72, 2016-01-31 (Released:2019-04-27)

本研究の目的は、子どもに応じたアセスメントから対応まで実施できる認知行動療法プログラムを作成し、養護教諭のストレス反応や自己効力感に与える影響について検討することであった。19名の介入群と27名の統制群からなる46名の養護教諭を対象とした。介入群の養護教諭に対して、認知行動療法を応用した子どもの抱える問題のアセスメントと対応についての2時間からなるワークショップと90分からなるフォローアップ研修を実施した。その結果、本プログラムは子どもへの対応についての自己効力感を改善させることが示唆された。一方、無気力と一般性自己効力感は介入群と統制群双方で向上し、無気力以外のストレス反応は介入群と統制群双方で変化を認めなかった。
著者
末廣 忠延 渡邉 進
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb0501, 2012

【はじめに、目的】 近年、腰痛患者や腰部手術を受けた患者はローカル筋群の機能不全が生じることが報告されている。これらのローカル筋群の機能不全が長期間に渡る腰痛悪化の原因となる可能性を示し,またさらなる損傷を受けやすい状態を招くとされており,早期より体幹筋のローカル筋を中心とした腰部安定化運動が実施されている。腰椎術後の腰部安定化運動では安静・固定を目的にコルセットを装着したままでしばしば施行される。しかし,コルセット装着下での腰部安定化運動中の筋活動を調べた報告はない。そこで本研究では,コルセットの使用の有無が腰部安定化運動中の体幹筋活動に及ぼす影響を検討することを目的に実施した。【方法】 対象は,健常な男性10名(平均年齢21.3±0.5歳)とした。測定課題はブリッジ,下肢伸展挙上の2種目とし,下肢伸展挙上は左右両側行った。ブリッジは背臥位で腰椎を中間位に保持したまま股関節伸展0°まで挙上し保持させた。下肢伸展挙上は背臥位で非挙上側の股関節を屈曲45°とし,挙上側の膝関節を伸展位で踵が床から30cmになるまで挙上し保持させた。測定条件は,コルセットを装着しない条件(以下,コルセットなし条件)とコルセットを装着した条件(以下,コルセット条件)との2条件とし,装具はダーメンコルセット(以下,コルセット)を使用した。筋活動量の測定には表面筋電計(Vital Recorder2:キッセイコムテック株式会社製)を用い,サンプリング周波数は1000Hzとした。測定筋は右側の腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,胸部脊柱起立筋,腰部脊柱起立筋,腰部多裂筋とした。得られた筋電波形は筋電図の解析ソフト(BIMUTAS2: キッセイコムテック株式会社製)を使用し,バンドパスフィルター(10 ~ 500 Hz)処理を行った後,全波整流し,中間3秒間の平均積分筋電値(IEMG)を求めた。各測定筋について, MVC時のIEMGで正規化し%MVCの値とした。統計はSPSS ver. 16.0 を用い,Wilcoxsonの符号付き順位検定を用いて比較した(p<0.05)。【倫理的配慮、説明と同意】 被験者全員に対し本研究について十分な説明を行い,同意を得た。【結果】 (コルセットなし条件,コルセット条件)の順で数値を示す。ブリッジの内腹斜筋(6.2±7.4%,4.2±4.0%)では,コルセット条件がコルセットなし条件に対して有意に筋活動量の低下を示した。その他の5筋は有意差を示さなかった。また同側の下肢伸展挙上の腹直筋(7.1±3.5%,5.1±2.3%)と内腹斜筋(27.9±17.9,25±16.3)でコルセット条件がそれぞれコルセットなし条件に対して有意に筋活動量の低下を示した。その他の4筋は有意差を示さなかった。【考察】 内腹斜筋の活動は,コルセットの使用によりブリッジ,同側の下肢伸展挙上において有意に低値を示した。これは内腹斜筋の鼡径靭帯からの線維が関与していると考えられる。この筋線維は腸骨と仙骨に圧迫を加え,仙腸関節の剛性を高めるように作用する。Snijdersらは,足を組んだ座位姿勢では足を組まない座位姿勢と比べ仙腸関節の圧迫力を強め,骨盤の安定化を代償し内腹斜筋の活動が低下することを報告している。本研究でも,コルセットの使用により受動的に仙腸関節の圧迫力が働いたと考える。これにより仙腸関節の安定化が図られ,内腹斜筋の働きが代償されたために筋活動量が低下したと考える。また,同側の下肢伸展挙上ではコルセット条件で腹直筋の活動量も低下した。下肢伸展挙上の主動作筋である腸骨筋,大腿直筋,長内転筋は,下肢挙上時に骨盤を前方回旋させるトルクを発揮する。これを阻止するために腹直筋や対側の大腿二頭筋が働くことで骨盤の前方回旋を防止する。しかし,コルセット条件では,コルセットが上前腸骨棘から肋骨弓までを覆うことにより,骨盤の前方回旋に対してコルセットが拮抗するように働き,骨盤の前方回旋を阻止する腹直筋の活動量が低下したと考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究より,腰部安定化運動中の体幹筋活動はコルセット使用で内腹斜筋の活動量が低下することが示された。このことから腰部術後など急性期でコルセットの使用が余儀なくされる場合ではコルセットを装着していない時よりもより頻回に腰部安定化運動を行い,ローカル筋群の賦活を促していく必要性が示唆された点で意義がある。
著者
志渡岡 理恵
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学下田歌子記念女性総合研究所 年報 = The Annual Bulletin of the Shimoda Utako Research Institute for Woman (ISSN:24342718)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-13, 2021-03-15

This paper examines the policies and practices of Newnham College, one of the oldest women’s colleges at the University of Cambridge. Newnham and the other women’s colleges—Murray Edwards and Lucy Cavendish—have made various efforts to redress persisting gender inequality. Considering that many women continue to be treated unfairly and that there is a need for a college that focuses specifically on women’s learning, these colleges provide their students with academic, pastoral, and financial support. In addition, their alumnae guide current students in finding work and choosing a career. Newnham College also propagates gender equality via its homepage. It presents accounts of the projects carried out on International Women’s Day. For example, to mark Women’s Day in 2017, it held a Wikipedia edit-a-thon to make the Internet less sexist by creating profiles of eminent women. Furthermore, it founded the Woolf Essay Prize, which is open to girls aged 12 in UK schools and designed to give them the opportunity to think about gender equality. In 2011, it established a Literary Archive, collecting rare books, letters, drafts of published work, memoirs, and photographs to inspire students to write. Through such initiatives, Newnham College continues to provide students with an academic, active, and stimulating environment, and supports them in multiple ways. It has thus produced independent women, having helped them to prepare for work and life.