著者
川村 邦光 荻野 美穂 杉原 達 冨山 一郎 真鍋 昌賢 落合 恵美子 荻野 美穂 落合 恵美子 才津 祐美子 重信 幸彦 杉原 達
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の家族写真は、当初西洋の影響を受けていたが、独自の展開をしてきたことを明らかにした。家族写真が人生儀礼や年中行事において撮影され続け、民俗的慣行として確立され、民俗資料として有効であることも明らかにした。現在では、特に年賀状に家族写真が載せられて、友人・知人に向けて発信され、家族の共同性を確認する機能を果たしている。本研究は家族写真に関する初めてのまとまった本格的な研究であると考える。
著者
倉橋 正恵
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度は、日本国内において早稲田大学演劇博物館、立命館大学アート・リサーチセンター、国外においてはボストン美術館(アメリカ合衆国)、ヴィクトリ&アルバートミュージアム(イギリス)に所蔵されている演劇関係資料の調査に行った。調査対象とした資料は、下記のようである。(1)歌舞伎役者関係資料(2)初代歌川国貞を中心とした、江戸後期浮世絵作品(3)歌舞伎上演年表類(4)幕末期の歌舞伎劇場内部資料これらの資料についてはそれぞれに詳細な所蔵・書誌調査を行い、とりわけ(4)幕末期の歌舞伎劇場内部資料については、「幕末江戸歌舞伎の興行形態と劇場運営」(早稲田大学21世紀COE<演劇の総合的研究と演劇学の確立>国際シンポジウム、於早稲田大学、2005年12月)として研究成果を発表した。また、(1)(2)(3)の資料については、2004年度から継続して研究と展示準備に携わっていた「Kabuki Heroes on the Osaka stage 1780-1830」展(「日英交流 大坂歌舞伎展」、大英博物館・大阪歴史博物館・早稲田大学演劇博物館を巡回)において、その研究成果を示すことができた。
著者
高橋 真理
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、妊娠期女性の夢(睡眠中にみた夢:以下夢)の特徴を定量的に明らかにするとともに、ストレスフルなイベントと関連する不快な夢に対する認知行動療法の有用性を定性的に検討することである。1)妊婦50名、非妊婦12名を対象に、prospectiveに1週間にみた夢想起の特徴(頻度、夢の鮮明度、夢の内容)について検討した。夢をみた平均日数は、4.8日/週であり、妊婦と非妊婦および妊娠時期別での相違はなかった。また、夢の内容は、「妊娠・出産・赤ちゃんに関すること」、「家族とのこと」、「仕事・職場のこと」、「友人のこと」、「TV・アイドルのこと」、「日常の出来事」、「幼い頃、昔のこと」、「奇異な出来事」のカテゴリーに分類された。さらに、「妊娠・出産・赤ちゃんに関する夢」について、妊娠時期別に夢想起の頻度を比較すると、妊娠初期では多い順に7番目のカテゴリーであるのに対し、妊娠中期は3番目、妊娠末期では2番目であり、妊娠の経過とともに、妊娠、出産、赤ちゃんに関する夢想起の頻度が高まることが示された。また、1週間で妊娠・出産・赤ちゃんに関する夢想起の経験をもつ妊婦の割合は、妊娠初期20%、中期57.1%、末期57.1%であり、中期と末期とが初期よりも高率であったが、想起者ひとりひとりの平均夢数の割合では、中期67.9%に対し末期78.6%であり、妊娠中期、末期には妊娠・出産.赤ちゃんに関する夢を想起する妊婦の割合が増え、また、このような妊婦は妊娠経過とともに妊娠・出産・赤ちゃんに関する夢の頻度も増加することが示された。2)「妊娠・出産.赤ちゃんに関する夢」31を内容別に分類した結果、「母乳に関する夢」、「妊娠による身体的変化に関する夢」、「胎児に関する夢」、「出産に関する夢」、「出産後の赤ちゃんのことに関する夢」の5つのサブカテゴリーに分類された。さらに妊娠時期別にサブカテゴリーの頻度を比較すると、妊娠初期は「胎児に関する夢」であったが、妊娠中期は「「母乳に関する夢」、「妊娠による身体的変化に関する夢」、「胎児に関する夢」、「出産に関する夢」、妊娠末期は「出産後の赤ちゃんのことに関する夢」に関する報告がほとんどを占めており、妊娠経過に伴い妊娠・出産・赤ちゃんに関する夢の内容が変化していくことが示された。以上、本報告書では妊娠期女性の夢に関する定量的な特徴を調査研究の結果に基づき記載した。事例による分析は、報告書に成果を纏めて報告する。
著者
稲垣 絹代 白井 裕子 島田 友子 鹿嶌 達哉 井上 清美
出版者
名桜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

野宿生活者の支援団体の協力を得ながら、名古屋、大阪、沖縄で炊き出しの場や入所施設で継続した健康相談活動を行った。野宿生活体験者との信頼関係を築きながら、彼ら自身の意志を尊重した相談活動を行うことにより、彼らの健康意識を高め、健康を維持し、向上しようと考える機会となっていた。研究者たちも、彼らと共に存在することで、支援の在り方を考える機会となり、支援団体の様々な工夫を学ぶ機会となった。
著者
丹羽 隆子 山岸 寛 庄司 邦昭 大津 皓平
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

平成14年と15年の夏に地中海沿岸諸国の実地踏査に出た結果、新知見を多く得ることができた。古代、優れた海洋民族であったフェニキア人の広域に渉る海上活動が、地中海の精神文化や物質文化の交流、伝播に大きな貢献をなしたであろうこと。カルタゴの港湾都市やギリシアのピレウス港などは古くから高度に整備された港湾施設などを要していたこと。また地中海島嶼、レバノン、ギリシア本土の各地やイタリア各地、スペイン東岸の沿岸地域を踏査し、入り組んだ海岸線や入り江のある地中海の地形と環境が古くから自然の良港として、海上活動の発展を促したことなどを確認した。また、発展した海底考古学が発見した古代地中海の木造船建造法が「ほぞとほぞ穴」を使った"shell-first method"だったことの延長上に、ギリシアでは「ヒュポゾーマタ」という艤装品を重要な必須艤装品としていたことも知り、文献学的にも、造船工学的にも研究を進めることができた。「ヒュポゾーマタ」の装着法などを巡り、イタリアのアマルフィの開催された「中世以降の艤装品と航海機器の発展」と題した国際シンポジュームに招かれて講演し、さらに日本航海学会、日本西洋古典学会でも研究発表した。国際シンポジュームではかなり反響がった。Elsi Sapathari, Sailing through Time : the Ship in Greek Artの翻訳、解説、補注の形でそれらをまとめた。出版刊行の予定である。
著者
土屋 礼子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、大阪の二紙、『大阪毎日新聞』と『大阪朝日新聞』の明治36年(1903)から40年(1907)まで、および東京の二紙『時事新報』と『萬朝報』の明治36年から38年(1905)までの、各年一月の紙面に掲載された広告の数量分析を行った。その結果、総件数の月平均では『時事』が3,751件と最も多く、次いで『大阪朝日』3,203件、『大阪毎日』2,956件、『萬朝報』が2,010件と最も少なく、各紙の広告掲載量および広告収入への依存度の差異が明らかになった。また広告件数の増減では、大阪の二紙は共に、戦前の明治36年に比べて戦後の40年には約1.4倍増加しており、日露戦争期に新聞広告が飛躍的に発展したという通説を裏付けた。広告主旨別件数では、四紙とも商品宣伝の広告が最も大きい割合を占めたが、『萬』では六割以上と高く、『大阪朝日』『大阪毎日』では三割から四割、『時事』では三割程度と差異が見られた。大阪の二紙では商品宣伝に次いで年賀広告と事業広告の割合が高く、組織的かつ定期的な広告活動の比重が大きかったといえる。一方、東京の二紙は対照的に異なり、『時事』では商品宣伝以外では特定の分類への偏りがなく幅広いのに対し、『萬』は商品宣伝への集中度が突出して高かった。広告の大きさでは、五十行以上の大型広告の割合が大阪の二紙で高く、戦後には6-10%に達した。また絵図や写真使用などの視覚的デザインも大阪の二紙の方が使用頻度がほぼ二割以上と東京に比べて高く、特に戦勝広告の華々しさは際だっており、新聞広告の大型化とデザインの発展を牽引したのは大阪の新聞だったといえる。また広告主の地域性では、大阪の二紙では大阪の広告主が五割を、東京の二紙では東京の広告主が六-七割を占め、地域性の高さが明らかになった。なお大阪の二紙で東京の広告主が占める割合は7-12%に対し、東京の二紙で大阪の広告主が占める割合は1-3%と低かった。以上のように、新聞広告における大阪と東京の差異が明確に数量的に現れたのが本研究の成果である。
著者
冨士田 亮子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

住宅の清掃は、住まいを美しく、清潔に暮らしていくために、必要なばかりでなく、居住者によって日常的に住宅内外の点検や小修理が行われることから、住宅の維持管理上も必要な基本的な作業である。近年、住宅の長寿化が目指されているものの、住宅そのものばかりでなく、住生活も大きく変化し、清掃は行われなくなっている。清掃をはじめとした住宅を維持管理するために、居住者がどの様な手法を用い、現在までどの様に受け継いでいるかを明らかにするため、明治以降に出版された月刊誌の掲載記事を採集し、また、伝統的住宅地における清掃をはじめとした住宅の維持管理の実態と意識を把握し、時代による変化、用具、考え方を明らかにする。あわせて、今後の住宅の維持管理に活かす方法、また、住文化的にも現代生活において引き継いでいったらよいと思われることを明らかにする。(1)月刊誌にみる清掃:対象とした月刊誌は『住宅』と『婦人之友』である。『住宅』では創刊号(1916年)から廃刊(1943年)までの28年間、また、『婦人の友』では、創刊号(1908年)から昭和期(1988)までの81年間である。清掃をはじめとした住宅の維持管理に関する記事を収集し、記述内容の分析を行った。採集した記事は『婦人の友』64件、『住宅』42件ある。その結果、『婦人之友』では、1)掃除の担当は、中流家庭の場合、女中から主婦へ移っていく様子が見える。2)住宅内の清掃場所は居住室で、掃除機が普及する以前ははたく→掃く→水拭きの順に毎日、朝食前に行われていた。住宅を美しく磨き上げることに主眼が置かれている。3)清掃は、時間や労力の管理を重視した視点で書かれ、日常生活を丁寧に営み、美しく清潔に住むことに主眼が置かれている。4)『住宅』は、労賃などの点から女中を雇用する代わりに、掃除機を用いたり、軽減するための合理的な方法を見いだそうとしている。(2)伝統的住宅における家庭清掃:調査対象地域と対象家庭は、重要伝統的建造物群保存地区である岐阜県美濃市、大阪府富田林市、岡山県高梁市吹屋および伝統的生活習慣を色濃く残している京都市中京区の1985から1987年に実施した調査家庭で、計14家庭である。その結果、1)日常の清掃は、日常用いる部屋を中心にして行われて、日常の清掃範囲は縮小の傾向である。用具は、掃除機ばかりでなく、使い慣れて軽い箒、はたき、雑巾が使い続けられている。京都の「かどはき」を除いて、朝食後に、10〜90分かけて行っている。夫婦が協力して行う家庭もみられる。2)家庭内の清掃は、しなければならないものとしており、業者を利用ることは考えられていない。3)調査対象住宅の内装、外装材は無垢材であるため、新築時以降の継続した清掃習慣が材の艶を出し、汚れを取りやすくし、丁寧に住みこなしている様子である。生活習慣の積み重ねの大切さを感じさせられる。
著者
斎藤 功 佐々木 博
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

近年, 山菜は自然食品の最たるものとして需要が増大している. 本研究は落葉広葉樹林帯(ブナ帯)で広範にみられる山菜の採取および山菜の促成栽培の実態を解明し, それに風土論的考察を加えることを目的としたものである.山菜の採取は, 伝統的にブナ帯の山村, とくに多雪地の山村で行われてきたが, 山菜の促成栽培はブナ帯の少雪地で多い. 山菜の促成栽培は, フキ, ワラビ, タラノメ, コゴミ等が行われるが, タラノメの促成栽培が典型であろう.本来, タラノメは春にとるものであるが, 促成栽培はそれを夏冬の12〜3月に採取するものをいう. 当初, 山からタラノキを切り, それを植木として温室内で栽培したものであるが, 促成栽培の普及につれて, タラノキを桑のように栽培するのがみられるようになった. 現在, タラノメのキの落葉後, 台木を切り, 一芽ごとに10〜15cmに切ったものを温室内のオガクズ床に伏せこみ, 12月下旬〜3月下旬にタラノメが7〜8cmに仲が〓ように栽培している.このタラノメの促成栽培は, ブナ帯で冬季出稼を止めさせるまでになったが, 栽培技術が容易なこと, ビニールハウスを転用できることなどで普及した. 当初, 〓境期の山菜としてタラノメは高価に販売されたが, その栽培の普及とともに価格が低下した.結論的にいえば, タラノメの促成栽培は, 生産基盤の脱弱性をもった風土産業といえよう.なお, 研究結果の詳細については, 別さつの研究成果報告書を参照されたい.
著者
三尾 稔 杉本 良男 高田 峰夫 八木 祐子 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 押川 文子 高田 峰夫 八木 祐子 井坂 理穂 太田 信宏 外川 昌彦 森本 泉 小牧 幸代 中島 岳志 中谷 哲弥 池亀 彩 小磯 千尋 金谷 美和 中谷 純江 松尾 瑞穂
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

文化人類学とその関連分野の研究者が、南アジアのさまざまな規模の20都市でのべ50回以上のフィールド調査を実施し、91本の論文や27回の学会発表などでその結果を発表した。これまで不足していた南アジアの都市の民族誌の積み重ねは、将来の研究の推進の基礎となる。また、(1)南アジアの伝統的都市の形成には聖性やそれと密接に関係する王権が非常に重要な機能を果たしてきたこと、(2)伝統的な都市の性格が消費社会化のなかで消滅し、都市社会の伝統的な社会関係が変質していること、(3)これに対処するネイバーフッドの再構築のなかで再び宗教が大きな役割を果たしていること、などが明らかとなった。
著者
染岡 慎一
出版者
安田女子大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

大学の付属学校等を除いて、従来、小学校が直接インターネットに接続された事例は皆無であった。本研究では、実際に小学校をインターネットに接続し、接続を維持し、さらに教育の場で活用する一連の研究を行った。本研究により、日本で最初の小学校ドメインとして広島市立鈴張小学校がUUCPによってインターネットに直接接続された。本研究により、以下の点が明らかになった。1)UUCPにより、小学校をインターネットドメインとして直接接続することは可能であるが、特に、公の機関がインターネット接続のために回線を利用するという概念がもともと無いため、電話回線等の外部との通信回線の確保が困難であった。また、現段階では、既存のワークステーションを利用したUUCP接続が最も接続が安定した。2)インターネットに公立小学校が直接接続する事例は日本において初めての試みであったが、地域ネットワークプロジェクトを介することにより、教育・研究目的の接続は可能であり、小学校の教諭が直接手続きを行った。3)UUCP接続後、1日の電子メールの出入りは平均20通であった。主な通信先は国内ドメイン40%、海外ドメイン35%、メーリングリスト18%、パソコン通信局7%等であった。4)カナダKingston and District小学校と、電子メールを利用した「クリスマスのすごし方」について
著者
曽根 陽子 亀井 靖子 香山 奈緒美
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は昭和40年代後半に首都圏郊外で大手開発業者によって開発された建て売り住宅・団地の変容の要因を明らかにすることを目的とした。これは欧米に比べ短命なわが国の戸建て住宅の延命に役立つと同時に、現在のわが国の供給住宅の約1割を占める建売住宅・団地の変容過程を明らかにすることである。首都圏からの距離が等しい、同時期に一斉分譲された7団地のアンケート調査を中心に13種の調査を行い、以下のことを明らかにした。1)分譲形態、延べ床面積、協定有無等々の開発条件の違いは入居時にはさほど違いが見えないが、30年後には、住宅改変状況や家族構成、住戸植栽の状況などに違いを生じさせる2)住宅改変は新築後の年数より、子供が中学生になった時や世帯主が50才代になった時などライフステージ上の変化時の方が強い関係がある3)中古住宅購入者は新築建売購入者より家族形態が多様である。購入時の築後年数と住宅改変までの年数は逆比例し、新築後15年以上経過した住宅では建替え率が高くなる4)住戸の緑の量は手入れの度合いは関係があるが、プランターの数はどちらとも関係しない5)世帯主が高齢になるほど緑の量が多く、手入れも良い傾向がある6)南道路の家、街路の角やT字路の突き当たりにある家の方がそうでない家より緑の量が多く、手入れも良い7)建売団地は宅分団地より、協定団地は協定のない団地より緑が多く、手入れも良い。8)住宅改変状況、緑の量と手入れの度合い共に近隣の影響をうける「同化」現象がある。
著者
村山 元展
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は自治体レベルの地域農業構造政策の展開、農協の広域合併の進展、複数市町村による農業公社設立の動き、さらには市町村合併の推進といった近年の我が国農業の動向を背景に、標記の課題に迫ろうとしたものである。まず青森県を事例とした県と市町村の連携の取り組みである。青森県では平成7年から地域農業構造政策の柱として「ローラー作戦」を実施している。これはソフトの事業で、一市町村あたり平均年間250万円を措置し、市町村と普及センター、JA、農業者等が一体となって集落や旧村といった具体的な地域単位に農業構造問題を解明し、農業構造の改革に取組むものである。調査した自治体では特に稲作部門の担い手育成、規模拡大の実現と、複合部門の拡充による所得増大効果が実証できた。大分県津江地区では、中津江・上津江・前津江の三村とJA日田が連携して第三セクターの農産加工「(株)ツエ・エーピー」を設立し、地域農業振興に大きな役割を果たしている。特にワサビと柚子の買い入れは、生産農家の所得安定に寄与している。また隣接する大山町農協が経営する直売施設「木の花ガルテン」への出荷も農家経済の増大に寄与しており、津江地区のみならず大山町を含めたヨリ広域の自治体間連携の可能性と必要性が析出された。広域農協と市町村農業公社の検討事例が琴丘町である。広域合併農協管内で唯一農業公社をもつのが琴丘町である。琴丘町では合併以前から中山間地域対策として町主導の梅産地形成に取り組んできたが、その加工施設の事業主体をめぐって町と合併農協との間で問題が生じている。農協の広域性と自治体の個別性の齟齬である。今後は梅を含めた広域的な他品目産地形成を農協の地域戦略とすることが求められている実態が明らかになった。これら以外にも水田転作や大区画圃場整備事業に焦点を当てた広域的取り組みを検討したが、これについては報告書にて詳述する。
著者
倉田 良樹 西野 史子 宣 元錫 津崎 克彦
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

グローバル経済化による市場の不確実性に直面している現代の日本企業は、業務請負型間接雇用の導入によって雇用関係の市場化を実現しようとしている。業務請負型間接雇用は、いまや日本の労働市場において一定のセグメントとして定着している。業務請負型間接雇用で働く労働者に対しては、企業内労働組織において他のタイプの労働者と比べて特別に異なる人的管理の手法が適用されているわけではない。その生活環境は正社員に比べて顕著に劣位にあり、貧困の罠に陥るリスクに直面している。
著者
山下 泰正 田邊 俊彦 磯部 しゅう三 西野 洋平 北井 礼三郎 末松 芳法 黒河 宏企 平山 淳 中村 士 代情 靖 船越 康宏
出版者
国立天文台
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

1.研究の概要平成3年7月11日の皆既日食は、7分近い皆既継続時間を持つ今世紀最大規模のものであった。この貴重な機会を利用して、平常では十分行なうことが出来ない太陽コロナの精密観測を実施して、その物理状態を調べる事が本研究の目的であった。研究調査は、2年に跨ってメキシコ国内各所で行なわれ、初年度は観測地の調査選定を、本年度は皆既日食本観測を実施した。当初、メキシコ国内の治安の悪さ、自然環境の厳しさ等危惧されたが、初年度の予備調査により、晴天率、望遠鏡設置条件、居住条件、安全性、機材輸送経路等の諸条件を十分検討して観測地点を選択したこと、予めメキシコ大学その他現地の協力機関と折衝出来たこと等により、約40日にわたる本年度調査は、概ね順調に実施され、晴天にも恵まれて太陽コロナその他の観測に成功した。2.研究の実施経過日本観測隊は11名により構成された。内訳は国立天文台6名、京都大学理学部3名、海外保安庁水路部2名である。前者2機関9名が本研究計画により派遣されたものである。3チ-ム8名(国立天文台3名、京都大学3名、水路部2名)は、カリフォルニア半島南端のラパス市にて、1チ-ム(国立天文台3名)が、メキシコ市南東のポポカテペトル山(5452m)にて観測した。全員メキシコ市日本大使館にて打ち合わせた後、2箇所に分かれて、設営準備を開始した。ラパス隊はカリフォルニア半島北端のエンセナ-ダ港にて、観測機材(全重量8.7トン)の通関手続きを行った後、トラック2台によりラパス市までの1600kmを陸送した。予め選定していたラパス市郊外の南バハカリフォルニア自治大学の運動場にて、観測機械を設置し、調整、テスト観測等約20日間余りにわたる準備を行なった末、皆既日食当日に臨んだ。当日は快晴に恵まれ、観測機器も順調に作動して観測に成功した。観測機材散収梱包作業後、再びトラックにて陸送し、エンセナ-ダ港にて通関手続き、船積み手続き完了後メキシコ市に帰還した。ポポカテペトル隊は、メキシコ大学天文学教室の応援を得て、5400mの山頂付近に観測機器を設置した。皆既当日は朝から快晴で、後半薄雲の影響を受けたものの、観測機器も正常に作動して観測に成功した。3.研究の成果得られた多くの観測デ-タの解析は現在進行中であるが、観測デ-タの内容と予備的な解析結果はすでに、別冊の研究成果報告書「平成3年7月11日メキシコ日食による太陽コロナの観測」としてまとめられている。その概要は次の通りである。(1)太陽コロナの微細構造の観測によるコロナの熱力学構造の研究。異なる温度構造を代表する4本の輝線、既ち中性水素輝線Hα(1万度)、9回電離鉄イオン6374輝線(100万度)13回電離鉄イオン5303輝線(200万度)、14回電離カルシウム5694輝線(350万度)と連続光の、合計5種類の単色フィルタ-によって、内部コロナの単色像を多数撮影した。これによってコロナ中の高温ル-プ、低温ル-プ、紅炎周縁等の微細温度構造を示すデ-タを、従来にない高分解能で得ることに成功した。予備的な解析から、コロナのル-プ構造は従来から考えられていた「中心が冷たく外側が高温」の同軸モデルでは説明できない構造が多いことが判った。(2)太陽コロナ中の低温物質の起源の研究中性ヘリウむ輝線10830(1〜10万度)と10000オングストロ-ム連続光及び13回電離鉄輝線5303の単色像を撮影すると同時に、紫外領域と赤外領域の偏光分光観測により、カルシウムイオンH.K輝線、ヘリウム10830輝線等のスペクトルを多数撮影した。予備的な解析によると、コロナ中には、紅炎以外には、はっきり検出できる低温物質が存在しないようである。又、Kコロナの観測から、コロナストリ-マ-の太さを調べた結果、太陽表面では約15〜40秒角の大きさの構造につながる事が判った。(3)太陽周縁の塵の研究4波長(5325A、5965A、7200A、8015A)の広帯域フィルタ-と偏光板によって、外部コロナの二次元偏光測光を行い、偏光の二次元分布図を作成した。これから、真のFコロナ偏光成分を求めるためには、地球大気によるバックグラウンド偏光成分とKコロナのストリ-マ-偏光成分とを分離する必要があり現在整約を続行中である。これにより、太陽周縁の惑星間塵の分布及び物理状態を調べることが出来る。
著者
藤原 眞砂 久場 嬉子 矢野 眞和 平田 道憲 貴志 倫子
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

子育てや看護をはじめとする家庭生活の多様な環境に配慮した企業および行政のワーク・ライフ・バランス(WLB)施策は、勤労者の生活に安心とゆとりをもたらし、ひいては企業、社会の活性化(少子化の克服も含む)に資する。本研究は総務省社会生活基本調査ミクロデータの独自の再集計値をもとに家庭内の男女、成員の役割関係の実態を解明し、WLBを実現する政策的含意の抽出を試みた。あわせて理論的研究も行った。
著者
宮崎 元裕
出版者
愛知江南短期大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

前年度に引き続き、価値教育に関する文献の収集・整理・分析を行いながら、諸外国における価値教育の機能変容に関して検討を進めた。その際、注目したのは、(1)中心的に教えられている価値観は1つか、それとも複数か、(2)その価値観を絶対的なものとして教え込んでいるのか、それともその価値観に対する批判的検討を許容する余地を許容しているのかどうか、という2点である。従来、1つの価値観を絶対的に教え込む傾向の強かった価値教育だが、近年の多文化化の進行に伴い、しだいに複数の価値観を取り扱いながら批判的思考力を重視するものへと変化する傾向が見られる。近年の特徴は、価値教育のなかでも、従来、特に絶対的な価値観を教え込む形態がとられることの多かった宗教教育についても変化が見られるようになった点である。本研究では、この点をトルコの公教育における宗教教育を事例に取り上げて明らかにした。イスラーム教徒が国民の圧倒的多数を占めるトルコでも、2000年以降、宗教教育の内容に変化が見られ、イスラーム以外の宗教を紹介しながら、イスラームと他宗教との違いを肯定的に捉え、他宗教に対する理解と寛容を促すものになっている。こうした変化は、従来のように宗教教育を通して国民共通の基盤として宗教を教え込むことで国民統合を図るだけでなく、他宗教に対する理解と寛容を全国民に教えることも必要となってきたことを示している。つまり、社会の多文化化の進行に伴い、共通の価値観を教え込むという価値教育の伝統的な機能だけではなく、多様な価値観に触れさせることで多様な価値観に対する理解と寛容の必要性を教え、また多様な価値観と比較することで自らの価値観を批判的に検討するような価値教育の機能が重視されるようになっているのである。こうした観点から公教育における価値教育のあり方を検討することが我が国でも求められる。
著者
橘川 武郎 長谷川 信 平沢 照雄 松村 敏弘 橋野 知子 高岡 美佳 平本 厚 中村 尚史
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

課題番号17330077基盤研究(B)「規制の経済史的研究-産業発展をめぐる企業と政府-」(平成17〜19年度)の研究成果は、2008(平成20)年3月に刊行した研究成果報告書(xii+270頁、総論+全12章)に集約されている。この研究成果報告書の各章は、19世紀後半の生糸貿易(1章、中林真幸執筆、以下同様)、明治期の鉄道業(2章、中村尚史)、第1次世界大戦期の染料工業(3章、橋野知子)、1920〜30年代のラジオ受信機工業(4章、平本厚)、戦前から戦後にかけての港湾運送業(5章、大島久幸)、1950〜60年代のクリスマス電球工業(6章、平沢照雄)、1960年前後の損害保険業(7章、齋藤直)、1960〜70年代の自動車排ガス規制(8章、板垣暁)、戦後復興期〜1980年代の重電機工業(9章、長谷川信)、1950年代後半から今日にかけての原子力発電(10章、橘川武郎)、1980年代後半から今日にかけてのネットワーク型公益事業をめぐる規制改革(11章、松村敏弘)、経済規制に関する理論研究の動向(12章、佐々木弾)を、検討対象としている。本研究は、(1)検討対象期間を長期(明治期から今日まで)にわたって設定する、(2)第2次産業および第3次産業に展開する幅広い業種を取り上げる、(3)大企業と政府との関係だけでなく、中小企業と政府との関係も視野に入れる、(4)歴史分析にもとづく実証研究と経済学に基盤をおく理論研究を結合する、という四つの特徴をもっているが、この点は、上記の報告書にも色濃く反映されている。(1)(2)の点は、1章〜11章の構成から明らかである。(3)に関しては、4〜6章が、中小企業と政府との関係を掘り下げている。(4)に関しては、1、11、12章が理論研究の成果を積極的にとり入れている。
著者
大倉 元宏
出版者
成蹊大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

平成4年度から5年度にわたって,当該研究テーマに関して,駅プラットホームからの転落事故を中心として研究を実施した。2カ年の間に6件の転落事例が寄せられ,調査の結果,うち2例に関しては詳細な分析ができ,その結果は学会等で報告した。この2例はいずれもわずかに視覚が残っている障害者(弱視)の事例である。視覚を利用できることはその分,移動に関して安全性が高いと考えられがちであるが,不十分な照明条件や時間的に切迫した状況では事故が起こりうることが明らかとなった。弱視の事故に関しては今後も注意を払っておく必要がある。この2カ年において,事故の事例研究と並行して,これまでに収集された十数例の事故例について再整理し,視覚障害者の基本的な歩行特性(オリエンテーションとモビリティ,OM)との関連で事故原因を吟味した。視覚障害者のOM特性に関しては,音源定位,エコー定位,偏軌傾向,square-off effectと慣性力の影響,不確定性の高い聴覚情報に基づく判断,記憶依存性,強い心理的ストレスなどが指摘されているが,事故例を分析すると,事故原因にこれらの特性が深く関与していることが明らかとなった。事故防止に関しては,これらの特性を十分考慮して対策を立てる必要がある。また,視覚障害者の安全移動を支援する設備として,最も普及している点字ブロックに関して,新しい形状や素材に関して実験的検討も実施した。形状に関しては線状ブロックについて従来のものより突起部の幅が狭いものを試作し,評価した。また,道路横断を支援するための横断歩道上に敷くブロックの素材について検討し,実験的に敷設して,その効果を確かめた。さらに,ゴムチップを利用した第三の点字ブロックというべきものを試作し,評価した。いずれの試作品も良好な結果が得られた。
著者
筒井 和義 南方 宏之 浮穴 和義 田中 滋康
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

我々は新規脳ホルモンである生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(gonadotropin-inhibitory hormone;GnIH)を鳥類から発見した。本研究では、GnIHはヒトなどの霊長類から無顎類に至る全ての脊椎動物に存在することを明らかにした。さらに、GnIHは生殖腺刺激ホルモンの合成と放出を抑制して生殖腺の発達と機能を抑える働きがあることを明らかにした。本研究により、この新規脳分子による新しい生殖制御機構の大略が解明された。
著者
板谷 良平 北條 仁士 久保 寔 八坂 保能 阿部 宏尹
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

RFタンデムミラ-は、イオンサイクロトロン高周波(ICRF)のみを用いて、完全軸対称タンデムミラ-閉じ込めを実現しようとするものである。本研究において、セントラルRFとプラグRFの組合せにより、プラズマ生成、MHD安定化、イオン加熱、ならびに熱障壁付閉じ込め電位形成の全てが、ICRFにより達成できることを実証した。1.中央セルにおいて、セントラルRFにより励起したヘリコン/速波により、電子密度n〜1.8×10^<13>cm^<-3>、β値〜10%の高密度ヘリウムプラズマが生成された。2.n〜0.4×10^<13>cm^<-3>の2種イオンプラズマにおいて、混成共鳴層が存在するとき、イオン温度Ti〓〜220eVが得られた。これは、ヘリコン/速波が共鳴層で遅波にモ-ド変換され、少数イオン加熱が生じたためである。プラズマはRF動重力によりMHD的に安定である。3.セントラルRF入射によりプラグセル中央において電位のくぼみが観測された。これは、プラグセルで加熱された少数イオンがスロッシングイオン分布を形成したためである。また、n〜0.2×10^<13>cm-^3、Ti〓〜140eVにおいて、プラグセルに60〜80Vの閉じ込め電位が形成され、イオンの端損失の減少が達成された。計算によると、この閉じ込め電位により、軸方向の閉じ込め時間は2〜3倍に改善された。4.プラグRFの重量により、プラグセルにおいて約100Vの閉じ込め電位とともに約90Vの熱障壁電位が形成され、その電位の深さはプラグRFの入射電力にほぼ比例する。イオンの掃き出し機構は、プラグRFの方位角方向動重力に基づくイオンの半径方向の非両極性損失によるものであろう。