著者
西野 範夫 西坂 仰 上野 直樹 松本 健義 北澤 憲昭 茂呂 雄二 永井 均 大嶋 彰 西村 俊夫
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、今日の子どもにかかわる諸問題は、子どもの論理による学びが成立していないこと、すなわち、子どもの学びが今を生きることに成り得ていないことによるものであるとの認識に立ち、子どもの学びの実践の場に臨み、その論理を総合的にとらえ、子どもの論理による教育の体系化を目指した。このため、次のような研究を行なった。(1)子どもの論理による学びの成立がみられる、子どものつくること、表すことの行為に着目し、その実践の場に臨み、その論理を行為分析等の臨床学的手法を援用してとらえることとした。(2)子どもの論理によるつくること、表すことの行為をとらえ、学びの論理を明らかにするため、現象学的発達心理学、談話行為論、相互行為論、状況的認知論等の考え方をとり入れた学際的な研究を行なった。その結果、(a)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの身体性を働かせた<感じること、考えること、表すこと>による相互作用・相互行為による意味生成の実践過程であって、常に<いま、ここ>を<私>として生きる学びの実践であるとともに、子どものすべての学びの基礎理論となり得ること。(b)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの<生>の論理による学ぶこと生きることが一体となったものであるとともに、他者と相互行為的にかかわり、学び合い、行き合い、意味生成と、<私>と<他者>をともに生成する過程であり、「生きる力」を育む過程であること。(c)子どもの論理による学ぶこと、生きることの生成過程は、子どもと相互行為的にかかわり、ともにその過程を実践する教師の学習臨床あるいは意味生成カウンセリング的な関与に支えられること。以上の論理を総合することによって、子どもの論理による学びのカリキュラムの構成が十分に可能であることを明らかにすることができた。
著者
甲斐 広文
出版者
熊本大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

温熱療法関連の研究から, 電流刺激が生体に与える作用についての研究に着手し, パルス幅(持続時間: 0.1ms) を有する短形波の微弱電流には, PI3K-AKT 経路の活性増強効果が認められること,さらに微弱電流がユビキチン/プロテアソーム経路の阻害効果を有していることを見出した(PLoS ONE 2008, 2012; J. Pharmacol. Sci. 2008,2010;Int.J.Hyperthermia 2009; J.Surg.Res. 2009 等で発表). 一般に,細胞膜は電気的抵抗が高いために,細胞内のシグナル分子に影響することはあり得ないことから,細胞の表層を流れる電流がどのようにして細胞内に刺激を伝えるのか, これまでの細胞生物学的アプローチの経験から(EMBO J. 2007; J.Biol.Chem. 2009; Mol.Cell.Biol. 2008; Mol.Cell 2012 など), 様々な角度から微弱電流が生体に与える効果を科学的に検証してきた. その結果, 持続パルス時間が0.1 ミリ秒の電流に対して何らかの受容体が存在すること, ラフトの関与があること等を明らかにした.
著者
渡邊 侃
出版者
北海道帝國大學法經會
雑誌
法經會論叢
巻号頁・発行日
vol.8, pp.310-312, 1940-03
著者
安藤 哲 LE VanVang LE Van vang
出版者
東京農工大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

昆虫性フェロモンは超微量な天然生理活性物質であり、一頭の雌が分泌するフェロモン量は大変限られている。しかしながら、各種クロマトグラフィー法や機器分析技術が発達したため、大量飼育の困難な害虫も研究対象にできるようになった。ベトナムで採取し性フェロモンを溶媒抽出し、それを航空便で輸送し日本にて分析した。構造決定した化合物を日本にて有機合成し、それを誘引源としたトラップをベトナムの圃場に設置し雄蛾の誘引を調査することで、効率よく多くの種のフェロモンを同定することができた。当該特別研究員も年に数回、2国間を行き来し研究を進めるとともに、カントー大学において多くのスタッフの協力の下に害虫の採集と野外誘引試験を実施した。主な研究成果は以下の通りである。1)ポメロの実を食害するPrays endocarpaの性フェロモンの同定とその防除への応用: ポメロはベトナムでは贈答用に使われる高級柑橘で、フェロモン腺抽出物の分析より本種の処女雌は(Z)-7-tetradecenalなどを分泌することがわかった。合成化合物を用いた野外試験の結果、雄成虫は合成アルデヒドのみの誘引源に強く誘引され、12月および3~4月に発生のピークがあることが判明した。更に、そのアルデヒドをポリエチレンチューブに封入した製剤(ディスペンサー)を作成し、それを果樹園で1ヘクタールあたり200~400本設置した。その結果、被害が明確に低減し、本種を対象とした交信撹乱技術を確立することができた。2)ミモザに潜るスカシバガの性フェロモンの構造決定:ミモザは中南米原産の低木で世界各地に植生域広げ、農耕地の荒廃をもたらしている。生物的防除を目的に、ミモザの幹に潜るスカシバガの一種Carmenta mimosaの性フェロモンを分析したところ、(3Z,13Z)-3,13-octadecadienyl acetateであることが判明し、合成化合物を用いた雄蛾の誘引にも成功した。現在、年間を通した発生消長を検討中である。
著者
藤井 正 伊東 理 伊藤 悟 谷 謙二 堤 純 富田 和昭 豊田 哲也 松原 光也 山下 博樹 山下 宗利 浅川 達人 高木 恒一 谷口 守 山下 潤
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

まず、多核的都市圏構造の研究を整理・展望し、空間的構造の変化に関して社会的メカニズムを含め、地理学と社会学からの分析を行い、同心円的なパターンから地区の社会的特性によるモザイク化、生活空間の縮小の傾向を明らかにした。これは都市整備面では、多核の個性を生かし、公共交通で結合する多核的コンパクトシティ整備を指向するものとなる。こうした整備についても、中心地群の再編等の動向について国際比較研究を展開した。
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人環フォーラム (ISSN:13423622)
巻号頁・発行日
vol.13, 2003-07-25

<巻頭言>専門の壁を超える学問 / 北川善太郎<対談>時間とあいだ / 木村敏, 大澤真幸, 司会 高橋義人<特集 : 大学はどうあるべきか>京都大学の過去と未来 / 岡本道雄<特集 : 大学はどうあるべきか>大学問題雑考 ― 「旧制度」下ヨーロッパの大学制度を手がかりに / 中川久定<特集 : 大学はどうあるべきか>幻の大学? ― 変わる大学・変わらぬ大学 / 木下冨雄<フィールド便り>路と住まい ― 台湾ヤミ族の住まいをとおして / 足立崇<フィールド便り>高島北海とエミール・ガレ / 鵜飼敦子<リレー連載 : 環境を考える>九州南部から南西諸島の自然環境と人々の暮らし ― 交流と重層と隔離の歴史 / 堀田満<フロンティア>分子のかたちをみる / 髙橋弘樹<フロンティア>原子の世界の三体問題 / 佐野光貞<サイエンティストの眼>愚か者の合理性 / 河野敬雄<社会を斬る>家庭の教育力の低下という言説 / 小山静子<奈文研の散歩道>法隆寺五重塔心柱の年輪年代と法隆寺論争 / 光谷拓実<歴史を旅する>ローリーのヴェネズェラ ― 黄金を求めた旅をたどる / 櫻井正一郎<書評>蟹江憲史著『地球環境外交と国内政策』 / 西井正弘<書評>鎌田浩毅著『火山はすごい』 / 諫早勇一<書評>田口義弘訳・註解『リルケ ― オルフォイスへのソネット』 / 伊藤行雄<書評>鯨岡峻著『〈育てられる者〉から〈育てる者〉へ』 / 遠藤利彦<書評>斉藤渉著『フンボルトの言語研究』 / 後藤正英<人環図書><瓦版><コラム>移動する民への想像力 / 板倉史明
著者
吉田 正純
出版者
京都大学ヒマラヤ研究会
雑誌
ヒマラヤ学誌 : Himalayan Study Monographs (ISSN:09148620)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.47-60, 2000-06-30

本論文ではブータンにおけるノンフォーマル教育の分析を通して, 開発における教育を通じたエンパワーメントについて探求する. そのためにまず「開発とリテラシー」・「開発とジェンダー」の二つの領域でのノンフォーマル教育に関わる先行研究を整理し, アプローチを定位する. 次に現在のブータンにおける(ポスト)リテラシー・プログラムと女性の社会参加計画の政策・実践を分析し, エンパワーメントの可能性を考察する.
著者
海老澤 賢史 石成 迪人 中尾 俊也 石川 篤 坂口 慧 石原 太樹 外山 晴久
出版者
新潟工科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

光注入によりカオス発振する半導体レーザー(LD)を考え,LDの駆動電流に複雑な信号を印加することでカオス発振LDの軌道不安定性を制御する手法を提案した。まず,印加信号として疑似ランダム信号を用いたときLD系の軌道不安定性が向上することを示した。次に印加信号の周波数帯域に対する軌道不安定性の周波数応答について調査し,この周波数応答がLD系のカオススペクトルと一致することを発見した。さらに,カオス信号を印加した場合と,同様なスペクトルを持つような疑似ランダム信号を印加した場合の軌道不安定性を向上させる効果を比較した。これにより,印加信号のスペクトル形状が軌道拡大率の向上の要因であることを示した。
著者
有村 博紀 宇野 毅明 湊 真一 平田 耕一 伊藤 公人 下薗 真一 喜田 拓也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,実世界と情報世界が融合した巨大な情報空間から有用な知識を効率よくとりだすための大規模半構造マイニング技術の確立を目指す.とくに,大規模規模知識基盤形成システムのための基礎技術として,超高速半構造マイニングエンジンと,時空間情報を用いた半構造マイニング技術の研究開発,周辺技術として,確率的情報スキーマの導入と,知識連係技術と知識索引技術の研究開発を行った.開発した技術の実装と最適化によりプロトタイプシステムの構築を行った.
著者
稲葉 善太郎 大城 美由紀
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.303-306, 2003-12-15
被引用文献数
6 3

キンギョソウ品種'メリーランドピンク'と'ライトピンクバタフライII'を10月に播種し,定植後から加温開始時期と夜温を組み合わせて栽培した.'メリーランドピンク'では同一夜温において加温開始を早めることで開花が早くなった.切り花品質からみて,'メリーランドピンク'では11月中旬からの夜温11℃が適していた.'ライトピンクバタフライII'では11月中旬から加温を開始して夜温16℃とすることで開花が早くなった.いずれの品種も夜温が高いほど開花が早くなった.'メリーランドピンク'と'ライトピンクバタフライII'ともに夜温が低いほど開花時の草丈が高くなった.
著者
佐藤 容子
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

アイルランドの詩人・劇作家・神秘家であるウィリアム・バトラー・イェイツの超自然演劇における表象構造を以下の観点から多角的に分析した。すなわち、イェイツが体系的に用いる頭韻によるサウンド・シンボリズム、アイルランドのフォークロアと溶け合ったスピリチュアリズムの要素、さらに日本の能狂言との接触という観点である。劇作としては、イェイツのクフーリンサイクルの最後の作品となる『クフーリンの死』を取り上げて論じるとともに、『鷹の泉』と『猫と月』について、能「養老」及び狂言「不聞座頭」との比較を行った。
著者
三浦 直希
出版者
東京都立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

昨年度に引き続き、フランスの思想家エマニュエル・レヴィナスの経済倫理思想の研究を行った。レヴィナスの経済倫理は、彼自身がユダヤ人であることから、タルムードをはじめとするユダヤ教・ユダヤ思想と密接な関係を有している。この点を際立たせるために、新約聖書に依拠するカトリックの作家ポール・クローデルとの対立に注目することで、レヴィナスにおけるユダヤ的経済倫理を重点的に分析した。その結果、レヴィナスはキリスト教の愛・無償性すなわち贈与に基づく他者との関係を批判し、公正・平等性すなわち交換に基づく関係を重視していることが判明した。レヴィナスの経済倫理は、その意味では、厳正な<正義>の実現を目指すものであると言ってよい。とはいえ、彼の思想には、後年に大きな変化が生じている。かつて批判された愛や無償性が重要性を持つ概念として再登場し、その経済倫理思想全体が交換ではなくまず贈与に基づく<善>のエコノミーとして再構築される。それとともに、強い批判を受けていたはずのクローデルの経済倫理思想が再評価される。レヴィナスは、初期の反発にも関わらず、最終的にはクローデルの主張にほぼ一致する形で倫理のエコノミーについて語っている。ただし両者の経済倫理は、単に愛や贈与の無償性のみに依拠したユートピア的な思想ではなく、これを根本としつつも、交換の正義の実現をももくろむ現実的かつ実践的な思想である。以上の点を学会にて発表し、学会誌に論文を掲載した。
著者
内田 浩昭 吉見 晃 徳永 英明 小倉 興太郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1997, no.4, pp.276-282, 1997

磁気記録用バリウムフェライトの効率的な合成を目的として,合成反応に及ぼすフラックスの添加と焼成試料の粉砕の影響について検討した.フラックスを添加しない場合,例えば1130℃,70分間焼成しても,試料の保磁力はサイバネティック規格に適合しない不十分なものしか得られなかった.しかし,フラックスとして塩化バリウムを1.2から2.9wt%添加することにより,1080℃,40分の焼成で,反応率,保磁力とも実用的レベルの値(97.1%,2510-26200e)に達した.さらに,遊星ボールミルで粉砕することによって,焼成試料の段階ではその保磁力が規格外にあったバリウムフェライトでも,その保磁力が改善され,実用的レベルに調整することができた.また,遊星ボールミル粉砕の効果として,保磁力の分布すなわちSFDが小さくなることを明らかにした.
著者
中野, 晴久
出版者
中野, 晴久
巻号頁・発行日
2014