著者
猪瀬 武則 山根 栄次 栗原 久 阿部 信太郎 山岡 道男 淺野 忠克 山田 秀和
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

価値多元社会における多面的多角的見方を育成する経済教育カリキュラムの開発研究である。研究を進める上で、「カリキュラム班」と「金融リテラシー班」の二つに分けた。カリキュラム班では、「価値多元社会における多面的多角的見方」の原理研究と海外のカリキュラム調査を試みた。金融リテラシー班は、中学生の金融リテラシー調査結果をもとに、経済的見方の有無にかかわらず一定の経済知識はあることが明確となった。カリキュラム班で明らかにした多面的多角的見方育成の原理と、リテラシー調査班で明らかにした中学生の現状の一端を説明する。前者に関しては、第一に、多面的多角的見方育成のための原理として、(1)一元的な経済学教授から多元的な経済学教授へ、(2)政策決定学習などでの経済論争を基礎とした既得観念との差異を対象化する学習、(3)経済学の合意・不合意を前提としたカリキュラム教材の構成を、(4)行動経済学などの成果を基にした感情などを踏まえた意思決定モデルの精緻化を提起した。また、カリキュラム教材としては、米国では、問題基盤経済学、経済学の倫理的基礎付け教授などのカリキュラム教材によって、英国からはビジネス教育のカリキュラム教材にそのモデルを見いだした。後者のリテラシー班では、稀少性などの経済基本概念がきわめて弱く、福利などの知識が弱かった。財の種類、収益が高い貯蓄商品、複利計算、株と債券の違い、投資家の収益(配当)、分散投資などは、米国に比しても高く、半数以上は把握していた。日米の差異は、文化的背景も考えられるが、カリキュラムや教材を含め、多面的内容構成に課題を投げかけている。
著者
長嶋 雲兵
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本研究では、非経験的分子軌道法を用いて量子力学の第一原理から、2体の相互作用ポテンシャルを求め、それを簡単な関数系でフィットし、マクロな効果を含まない2体ポテンシャルを求めることを目的とした。具体的な系は、超臨界抽出溶媒として実用にも用いられ、また、様々な実験的研究が行われている二酸化炭素の2体相互作用ポテンシャルを求めることを試みた。さらに、本重点領域研究の溶液構造班からの実験的研究により、超臨界流体中では溶質分子の振動スペクトルが真空中のものに比べ赤方にシフトすることが報告されており〔2〕、超臨界流体中での溶質と溶媒分子の間に分子クラスターが形成されることが示唆されているので、その構造を調べるために、非経験的分子軌道法を用いて、二酸化炭素-ホルムアルデヒドクラスターの構造と振動スペクトルの計算を行った。二酸化炭素の2体相互作用ポテンシャルに関して、平成5年度はポテンシャル面を計算しいくつかの関数系でのフィッテイングを行ったが、実験結果と計算機シミュレーションの結果を合わせようとすると、そのためのパラメータを導入しなければならないことが分かった。振動スペクトルの計算に関しては、ホルムアルデヒドの水素と酸素に二酸化炭素が1つ配位しても大きな振動スペクトルの変化は見られないが、それぞれに二酸化炭素がつき第一配位圏を形成した後、炭素上に二酸化炭素が配位すると大きな変位が見られることが分かった。
著者
野本 明男 西山 幸廣 柳 雄介 小柳 義夫 審良 静男 川端 重忠 西山 幸廣 柳 雄介 小柳 義夫 藤田 尚志 川端 重忠 笹川 千尋 光山 正雄 堀口 安彦 小安 重夫 堀井 俊宏 野崎 智義 北 潔 中西 憲司 豊島 久真男 笹月 健彦 永井 義之 永田 恭介 岩本 愛吉 河岡 義裕 審良 静男
出版者
公益財団法人微生物化学研究会
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

平成23年4月開催の日本医学会総会で展示を行う予定であったが、震災の影響で中止となった。しかし、平成23年6月~9月まで下記のサイトにてウェブ展示を行った。「わかろう医学つくろう!健康EXPO2011 ウェブ&体験 博覧会」公式サイトhttp://ex2011.net「わかる」の「8感染症」コーナーにて、感染マトリックスの成果の一つ(川口寧の成果)を紹介した。平成23年12月3日(土)には「感染症研究の未来」とのタイトルで感染マトリックスの成果全体を紹介し、また今後の感染症研究の方向を考えることを目的としたシンポジウムを東京大学鉄門記念講堂にて開催した。シンポジウムは2部から構成され、前半は「感染マトリックス成果報告」として、ウイルス、細菌、寄生虫の各分野から世界に発信された貴重な成果が紹介された。続いて第2部では「感染症の未来」と題して、今後の感染症研究に必要な概念と方向性について、「ワクチン、薬剤耐性、グローバルな視点からの感染症研究」の講演が行われた。参加者は100名を越え、特に感染マトリックス関係者以外の参加者が7割以上であったことは感染症研究に対する他領域の研究者や一般の関心の高さを表わしていると考えられる。アンケートからは「病原体に対する宿主の応答の多様性」、「宿主の防御反応からの病原体の回避機構」、「最先端の生命科学によるワクチンや薬剤開発の現状」に多くの興味が集まったことが判った。国際交流がますます緊密になり、しかもスピードアップする現在、インフルエンザなどをはじめとする「グローバル感染症」に関する研究の重要性に理解と興味を示す聴衆が多かった点は、科学技術立国をめざすわが国の感染症研究に対する期待を表わしているものと考えられる。
著者
山本 和雄
出版者
岡山市立岡山後楽館高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1研究目的(1)郷土出身の文学者坪田譲治を媒体として,高校教育において〈郷土への愛着・郷土愛と郷土理解・地域文化の伝承〉・〈生涯学習の基盤〉青成の必要性を、地域に「生きる力」の一環として、教材開発の過程においてなるべく広く啓蒙する。(2)〈生涯学習〉の場で、教材のパイロット版を応用活用できる方法を模索する。(3)坪田譲治周辺の《地域文化資源》についても遺族・親族等から取材・調査し、記録する。2.研究方法(1)6月9日「岡山県高等学校教育研究会国語部会春季大会」において、21年度「補助金」で制作した「デジタル資料パイロット版」の紹介と利用方法説明、22年度研究の概略を口頭説明し、「中間のまとめ」の一部を小冊子として希望者に配布。(参加者約70名)(2)5月から開講した「市民講座坪田譲治研究」の受講生と共に新資料の調査に着手。(3)夏季休業中に「文芸部」の生徒も(2)の調査に参加。(4)8月3日「岡山文学教育の会第40回文学講演会国語教育実践発表会」(後援岡山市教育委員会参加者約50名)において、21年度研究成果と22年度中間発表。(5)「岡山後楽館高校公開市民講座坪田譲治研究」を、特別編を含めて通算7回、岡山県立図書館で行った。うち夏季休業中の2回は,高校生一校内授業の受講生と文芸部員も参加し、一般市民の方々と交流しながら受講した。(6)授業「岡山の文学」を11月から県立図書館で数回行った。譲治に関する各グループ別設定テーマの調べ学習とまとめの後、授業で発表会を行い相互評価させた。また、「現代文」においては「公開市民講座」で検討した作品を教材としてレポートを作成させた。(7)21年度同様、県立工業高校建築科との連携を行い、親族への取材成果をそれに反映させた。3研究成果(1)「公開市民講座」の実施で,一般市民の参加者と勤務校生徒との接点ができ、学習教材の開発に多面的価値観とその見解を得ることができた。(2)21年度例作の「デジタル教材」について、著作権等に配慮しながら修正を行い、夏季以降希望校に貸与できる打ち合わせ、準備ができた。(3)坪田譲治のいわゆる「最初期・初期」の小説作品(郷土岡山でも一般に知られていない)を、教材候補としてあえて取りあげた。新たな発見があり、教材選定の基準の一つを確定することができた。(4)「公開市民講座」はテーマ別に通算7回行った。テーマごとに興味を持った、様々な市民の方の参加があった。その感想・意見は、授業での生徒のものと同様、今後の研究活動に大変有効である。(5)県立岡山工業高校との連携は、「岡山県工業教育誌」に紹介された。(6)「公開市民講座」は、8・10・11月に実施した計4講座が「あっ晴れ!おかやま国文祭応援事業」に承認された。うち、10・11月の講座は「おかやま県民文化祭協賛事業」としても承認された。また、3月に実施した「講座特別編パネルディスカッション坪田譲治と岡山の自然」は、岡山市の「おかやま文学フェスティバル2010関連事業」として承認された。
著者
久保田 正和 木下 彩栄 保利 美也子
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

在宅認知症患者とその家族を対象に、患者の認知症悪化予防と家族の介護負担軽減を目的に研究を行った。介入群には、スカイプ(テレビ電話)を通して主に看護師が相談に応じた。認知機能検査の結果は、介入群の得点に改善傾向が見られた。ADL機能評価は変化がみられず、記憶が少し改善されたとしても、それが身体の活動性に影響を与えるまでには至らなかったといえる。介護者の自記式アンケートでは「性格が明るくなった」「活動的になった」など患者同様に介入を良い印象として捉えていたようである。
著者
林 信太郎 井門 正美 林 良雄
出版者
秋田大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

自治体の防災担当者などの噴火危機管理訓練用ゲーミングシミュレーションサーバ開発のため,今年度は訓練用ゲーミングシミュレーションの開発を行った。主な研究・開発事項は、1)火山警戒避難シミュレーション「リブラ」「リブラ2」のルールの洗練化およびオンラインゲーム化、2)訓練用シナリオ「コスモス島の噴火」の開発、3)火山版クロスロードの制作である。1)については、何度かの試行の結果、リアリティの追及を行わないと良い訓練結果が得られないことが明らかになってきた。そのため、仮想世界の火山の噴火史、研究論文、確率樹などを作成した。また、「リブラ2」のオンラインゲーム化を行い、試行を繰り返した。2)については桜島をモデル火山とした訓練シナリオである。過去の噴火史を参考に架空の噴火をつくり、様々な事件が発生する中、適切な対処を行う訓練シナリオである。3)については、噴火の際に発生する様々なジレンマについて資料収集を行い、およそ20のクロスロードゲームを作成した。そのうち、10の問題を完成版に収録した。林信太郎・赤塚彩・伊藤英之(2006)では、「リブラ2」について発表を行い、ポスターセッションの場で「リブラ2」の実演をすると共にその場での議論に基づいてルールの改善を行った。これらの研究を行った成果と、研究の過程で得られた副産物的知見について学会発表や論文化を行った。林ほか(2006)、伊藤ほか(2006)では、ゲーミング制作過程で調査した火山災害史について述べている。また、林の著書「世界一おいしい火山の本」にも研究の過程で得られた火山噴火サバイバル法について述べられている。
著者
別所 遊子 長谷川 美香 細谷 たき子 出口 洋二 安井 裕子 吉田 幸代
出版者
福井医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

目的 在宅痴呆症高齢者の,基礎調査後10年間の死亡率,死因および死亡の場所を調査し,また存命者とその介護者に対して生活の状況の調査を行い,痴呆症高齢者に対する地域看護援助のための基礎データを得る。対象と方法 1992年に福井県K市において,在宅高齢者全員を対象に実施した生活基礎調査,および二次調査により,精神科医が痴呆症と診断した201名について,死亡の状況を人口動態調査死亡標等により調査した。また,存命者とその介護者に面接し,ADL等の状態を調査した。結果 (1)痴呆症コホート201人のうち,10年後の死亡者は170人,転出者は3人であった。(2)痴呆症コホートの実死亡数は,K市の同年齢層の高齢者について算出した期待死亡数(年齢補正)の,1.42倍であった。(3)Kaplan-Meier生存曲線による平均生存時間は4.32年で,死亡関連要因として,男性,後期高齢者,鑑別不能型,中等症・重症,寝たきり,歩行障害,食事障害,等が,またCox比例ハザードモデルによる分析では,性別,年齢階級,寝たきり,歩行障害が抽出された。(4)痴呆症高齢者は脳血管疾患で死亡する割合が高く,脳血管性痴呆では全死因の約半数であった。(5)在宅者は入所者よりもADLの自立度が高かった。(6)在宅継続の要因として,痴呆症高齢者のADLが高く,寝たきり度が低い,介護代行者がいる,介護者に被介護者に対する愛情があり,介護継続意思が強い,などがあげられた。考察 本研究の対象者は,一市における全数調査において医師により診断された集団であり、死亡状況を人口動態調査票から把握したので,データの信頼性が高いといえる。本研究の結果から,痴呆症の発症および予後のために脳血管疾患の予防が重要であり,痴呆症高齢者の生活の質と生命予後のためには,歩行能力の維持,寝たきり予防が重要であるといえる。
著者
犬木 努
出版者
大谷女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

3ヶ年に及ぶ当該研究の最終年度である本年度は、下記のような研究を実施した。昨年度に引き続いて、いわゆる下総型埴輪およびその前段階の埴輪についての詳細な資料調査を実施した。具体的には千葉県人形塚古墳出土埴輪、同金塚古墳出土埴輪、同羽黒前古墳出土埴輪、埼玉県杉戸町目沼瓢箪塚古墳出土埴輪の円筒埴輪・形象埴輪についての悉皆調査(調査検討・観察・写真撮影・調書作成・計測)を行った。これらの資料調査は本年度でほぼ終了し、現在までにこれらの調査記録や写真資料の整理作業もほぼ終了している。このほか、本年度は、下総型埴輪の対照資料として、宮崎県西都市西都原171号墳出土の円筒埴輪・形象埴輪の本格的研究に着手した。数次にわたる調査を経て、各埴輪についての検討・観察・写真撮影・調書作成・計測を行い、大半の作業を終了させることができた。本年度も含めて、この3ヶ年の調査・研究を通じて、特定埴輪工人集団の内部構造の解明を大きく進めることができた。関東地方においては、いわゆる下総型埴輪およびその直前段階の埴輪の製作に携わった埴輪工人集団の全体像及び内部構造を「工人レベル」で解明することができた。また南九州地方では、西都原古墳群出土埴輪の製作に携わった埴輪工人集団の内部構造を「工人レベル」で解明することができた。両地域での分析を踏まえ、同様の分析手法を他の地域・時代に適用することによって、さらに大きな成果を得ることができると考えている。なお、本研究の成果を踏まえて、2月5日〜6日にかけて、葛飾区立郷土と天文の博物館において開催された第6回埴輪研究発表会にパネラーの一人として参加し、「下総型埴輪再論-同工品識別の先にあるもの-」と題して発表を行った。また2月13日には、宮崎県立西都原考古博物館において、「西都原古墳群の埴輪を考える」と題する講演を行った。
著者
塩原 佳典
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の課題は、近世近代移行期における「教育」の営みを、その社会的文脈である地域社会に位置づけて構造的に把握することである。この課題に応えるため本研究では、信濃国松本藩筑摩・安曇郡を対象地域とし、当該地域で指導的な立場にあった人びと(地域名望家層)の具体的な動向を追うことで、19世紀後半における地域社会の歴史的変遷を描き出す。以上の問題意識のもと23年度は、研究成果の公表と新たな史料収集・解読とを平行して行った。まず、近代学校の設立を地方レベルで担った人びとについて、幕末期における身分に多様性がみられることを指摘し、その意味を検討した。従来は、「地域指導者層」と一括りにされがちであった地域の学事担当者が、近世段階では大庄屋やその分家、また庄屋など身分的出自とそれにもとづく文化・政治・経済的力量を異にする存在であったことを解明した。そのうえで、「御一新」に伴い地域社会の支配体制や身分秩序が流動化するなか、新たに成立した明治政府の近代化政策を具体化させることは、その担い手にとっては自身の地位や名望の保持という意味を持っていたことを指摘した。第二に、明治初年代の筑摩県下で盛んに催された博覧会の歴史的意義を検討した。博覧会を取り上げることで、明治政府の近代化政策をそのまま模倣するだけでなく、地域の文脈に合わせてその意味を読み換える地域名望家たちの姿を描出することが狙いである。筑摩県下博覧会における展示の中心は、海外の文物や新機械というよりも、県下各地の「古器物」や村芝居であった。こうした特徴について従来は、「骨董博覧会」と位置づけられ、単に充分に「開化」されていない地方特有の特徴であるとされてきた。これに対し本研究では、明治初年の地方博覧会が、地域民衆の心をつかみつつ地域の「開化」を効果的に推進し、明治の「新時代」に対応した形で地域社会を運営していくひとつの手段であったことを指摘した。
著者
VANGOETHEM ELLEN
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

風水における景観上での四神の表現方法に関する比較研究である。最古記録では、四神に対応する地形的な特徴は不明瞭なままである。後に、二つの共存する風習が、風水の中で、発達してきたようである。一つでは、自然地形の存在が強調され、四神は山などの地形として表現された。もう一つでは、それぞれの四神について、異なる自然的・人為的な地形的特徴の存在が必要とされていた。本研究では、後者の風習に注目した。文書資料の調査に基づいて、四神相応の思想の起源と発展をさかのぼり、異なる記録に関する基礎分析を行った。そして、「四神相応が宮都の位置の決定過程において利用されていた」という一般的な認識に対し、異議を唱えた。
著者
小川 尚 羽山 富雄 長谷川 佳代子
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ラットの味覚野では機械受容ニューロンが機能円柱を形成していることはWang and Ogawa (2002)が先に報告したが、本研究では味覚ニューロンの円柱構造を研究することを目的とした。ラットの大脳皮質味覚野は眼窩と岩様骨の間で、嗅状溝の背側部の島皮質前部にあり、電極を皮質表面に垂直に刺入するために。既成のマニピュレータを組み合わせることにより首振り可能な3次元マニピュレータを作成した。ラットの大脳皮質味覚野にいろんな角度で記録電極を刺入したラットの大脳皮質味覚野に種々の角度で記録電極を刺入し、表面近くより50-100μmステップで四基本味+グルタミン酸ソーダの全口腔刺激に反応するマルチユニット神経活動を記録し、パソコン上で自家製ソフトによりユニットを分離して味覚ニューロン活動を同定し、四基本味+グルタミン酸ソーダに対する応答プロフィールおよび口腔内受容野を調べた。味覚ニューロンは多くの場合1-2個が連続的に記録されるに過ぎなかったが、数例で5-6個が連続的に記録できた。四基本味+グルタミン酸ソーダ中最も大きい応答を生じる刺激をベスト刺激とすると、ベスト刺激は殆ど1個毎変化したが、偶に最大で4〜5個連続して同じベスト刺激を共有するニューロンが見い出され受容野の位置が変化することがあった。それに反しベスト刺激が変化するにも関わらず同じ箇所に受容野は連続して見い出されることもあった。特に、複数の味刺激に同じように大きい応答を生じるニューロンが連続して記録される場合に口腔全体に受容野を持つ例があった。同じ円柱内ではベスト刺激や受容野を共有すると仮定すると、受容野を共有する円柱サイズは約20ミクロン、ベスト刺激のみを共通とする円柱は約30ミクロンと推定された。これは機械受容性受容野をもつ持たないに関わらず、この所見は当てはまった。円柱のサイズを確認するために、最初の電極刺入点近くで、やや角度を変えて第二の電極を刺入して、味覚ニューロンを調べた。円柱サイズが小さいためか、サイズを調べる有効な手段とはならなかった。本研究の1部は2004年7月の国際嗅覚味覚シンポジウム(京都)で発表した
著者
清澤 毅光 安田 潤 金井 省二 勝田 雄吉 大田 春外 宮田 由雅
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本年度の研究目的に沿ってまず実数体や複素数体上のバナッハ空間について図書、論文等により現在どのようなことが研究されているかの理解を深めた。さらに非アルキメデス的付値体上のバナッハ空間についての文献も調べ、世界の現状を把握した。また、学会、シンポジウム等に参加したり、研究分担者等との討論等を通してこの分野に関連する種々の知識を得た。これらのことを通して本年度主に研究したことは、1.バナッハ空間上のある種の分解について。2.コンパクト作用素の拡張。3.位相空間上の非アルキメデス的付値体に値をとる有界な連続関数の空間や第2次共役空間等における補空間をもつ部分空間について、である。そして得られた結果は、Kを非アルキメデス的付値体、E,FをK上のバナッハ空間とするとき次の通りである。1.については、(1)E上のSchauder分解は強収束するが一様収束はしない。(2)Kが球完備でEがGrothendieck空間のとき、EはSchauder分解をもたない、ことを示した。この結果はThe Rocky Mountain J.of Mathで発表されることになっている(現在校正済みである)。2.については、(1)Kが球完備のときEの部分空間からFへのコンパクト写像Tは、そのノルムを変えないでE全体で定義されFへのコンパクト写像に拡張できる。(2)Kが球完備でないときEがstrongly polarでFがpolarならば、Tは任意のε>oに対して、E全体からFへのコンパクト写像でそのノルムが||T||と(1+ε)||T||の間にあるものに接続できる、ことを示した。3.については、(1)BC(cl^n)_1)がCo(] SY.encircled+. [)Xと線形同型となるバナッハ空間Xが存在する。(2)Kが球完備でないときBc((Co)_3)がl^m(] SY.sym. [)Yと線形同型となるバナッハ空間Yが存在する、ことを示した。ただし(l^m)_1、(Co)_1はl^m、Coの元でノルムが1以下である全体である。2.、3.については、現在投稿中である。
著者
橋本 政晴
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、1991年から鹿島アントラーズのホームタウンとなり、2002年のW杯開催の受け皿となった茨城県鹿嶋市を事例として、これらプロスポーツチームやスポーツイベントに対して地域住民たちは、どのような「働きかけ」をおこなったのかを明らかにすることである。さらには、その働きかけを駆動させた背後には、どのような「生活の倫理」が内在しているのかについても明らかにするため、サポーター活動に奔走し、その後市議会議員をつとめている地元出身のT氏と、彼をとりまく同市佐田地区の地域住民たちを対象とした。プロスポーツチームやスポーツイベントに対するT氏とその地域社会の対応の諸相から、次のことが明らかになった。第一に、住民たちにとってサッカーは、決してい身近なスポーツではなく、言説によって凝り固められたメディアスポーツであり、メディアイベントであった。T氏はそうした住民よりも近くでサッカーを経験してはいるが、「熱い」サッカーを諦観する住民たちの暮らしぶりにも寄り添っている。ここから、メディアスポーツ/メディアイベントにおける受け手の能動性/受動性について語ろうとすることは、彼らの経験をあまりにも単純化・抽象化してしまうことにならないだろうか。第二に、住民たちがサッカーに対して諦観の姿勢を固持していたのは、自らの暮しをつつがなく送っていきたいがためのものだった。加えて、そうした地域の生活に配慮しつつ、「もの静か」な暮らしぶりに近づこうとするT氏の姿は、他方のサポーターとしての「過激な」振る舞いとは対照的であった。サポーターの代表としてのT氏は、地域の生活者でもある。両者が繋がりがないままに癒合している彼の身体性。それは、「地域」の歴史的な暮らしぶりが、かろうじてつなぎとめているのかもしれない。第三に、T氏はスタジアムに足を踏み入れると過激になり、ゴール裏を纏め上げることが求められる。鹿島に興味を注ぐマスコミや研究者に対しても、「地元サポーターの代表」としての役割が期待される。ところが共に地域生活を営んでいく人物としてのT氏に求められているのは、「つつがなく暮らしていく」ために地域に貢献することだった。だからこそスタジアムでは「ガラ悪く」しているのだが、地域生活者としての彼は、自身のこれまでの活動に苦悩し、「地域」に対して控え目に振る舞うのである。それだけ彼にとって「地域」の共同生活とは揺るぎのないものなのだ。鹿島においては地域生活とは無関係なままにサッカーが展開してきた。しかしそこで生活するT氏は「地域」とかかわらざるを得ない。スポーツ社会学の問いは、こうした生活の事実から出発することが求められている。
著者
立山 晋 SRI Lespari DARNAS Dana SRI Utami Pr HERNOMOADI H EMIR A.Sireg GATUT Ashadi SINGGIH H.Si 内田 和幸 三澤 尚明 飯田 貴二 山口 良二 延東 真 後藤 義孝 掘井 洋一郎 HERMONOADI Humit A.GANI Asike EMIR A Sineg SRI Utami Rr SINGGIH H Si 村上 昇 AGKA Sri Les 玉井 理 HUMINTO Hern DANA Darnas PRAMONO Sri RUMAWAS Will ASHADI Gatut SIGIT Singgi 吉田 照豊 青木 宙
出版者
宮崎大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本研究は、インドネシアにおける家畜及び魚類疾病の発生状況の実態調査と各々の疾病の解析を目的に、宮崎大学とインドネシア・ボゴール農業大学の大学間協力研究として行なわれた。平成5年〜7根の3年間で得られた研究成果の概要について大別して下記に述べる。1.インドネシアと宮崎における家畜疾病の発生状況の比較・検討。インドネシアの家畜がおかれている環境を知る目的で、宮崎大学とボゴール農業大学で1990年から1994年の過去5年間に剖検されたイヌの主要疾病について比較・検討した。その結果、ボゴール農業大学で剖検されたイヌ、548例中、もっとも頻繁にみられた疾病は、腸炎(63.5%)、滲出性肺炎(50.6%)、胃炎(48.7%)、間質性腎炎(36.3%)であり、宮崎大学で剖検されたイヌと比較して、これらの疾患の発生率は極めて高かった。この原因として、通常これらの炎症性疾患は、ウイルスや細菌を中心とする伝染病していることを反映しているものと考えられる。日本ではこの様な感染症、特にパルボウイルス、ジステンパーウイルス、伝染性肺炎ウイルス、レプトスピラ等のワクテン接種により、これらの疾患が有効に低減しているため、インドネシアにおいても、同様な防疫対策を図ることにより、これらの伝染病の低減が期待できるものと考えられた。2.インドネシアの家きん疾病の解析。ニワトリ、ハトなどの家きんは、インドネシアの主要な産業動物である。本研究では、ニワトリの伝染性ファブリキウスのう炎(ガンボロ病)とマイコプラズマ感染症について、各々病理学的、微生物学的に調査した。ガンボロ病は鳥類特有の免疫系繊維であるファブリキウスのうを選択的に侵態するウイルス性疾患であり、本症に罹患したニワトリは免疫不全に陥いり、種々の細菌・ウイルスなどに感染しやすくなる。インドネシアにおける本病の漫延状況を知る目的で、インドネシアのニワトリを業収・剖検し、肉眼的にガンボロ病が疑われた36例について病理組織学的に検討した。この結果、36例中24例のファブリキウスのうに著明なリンパ球の減少、細網内及系細胞の増生、線維化などがみとめられ、伝染性ファブリキウスのう炎ウイルスの抗原が12例で検出されたこのことからインドネシアのニワトリには広く強毒のウイルスが漫延しているものと推察された。一方、マイコプラズマ症はニワトリの上部気道感染症であり、本病自身は重大な病変を引き起こすことは稀れであるが、種々の細菌・ウイルス感染症が併発しやすい。本研究では、インドネシアの5つの農場より、ニワトリの血液を採取し、合計49例についてELISA法により、マイコプラズマ・ガリセプティカムの抗体価を測定した。その結果、1農業では抗体陽性率が15.4%と低くかったが、その他の農場では70%〜100%と極めて高い陽性率を示し、マイコプラズマ症が広く漫延している現情が把握された。3.インドネシアの魚類疾患に関する検討。インドネシアのグラミ-養魚場における疾患の発生情況を知る目的で、瀕死のグラミ-50例を剖検し、病理学的に検討した。その結果もっとも高率に認められたのは抗酸菌感染による肉芽腫性皮フ炎であったが、その他、肝や脊づいの変性・壊死など何らかのビタミン欠乏症に起因すると思われる病変が多発していた。これはインドネシアの養魚場では鶏フンをエサとして使用していることから幼魚が種々とのビタミン欠乏症に陥りやすいものと予想された。従って、インドネシアの養魚場における疾患防止のためには、伝染病に対する防疫と同時に飼養形態の改善を図る必要があると思われる。以上今回の大学間協力研究で得られた実績の概要を示した。本研究では、インドネシアの寄生虫病についても若干の知見を得たがここでは省略した。得られた知見については、インドンシアの関係者と協議し、問題点などを指摘した。今回の研究の成果は、今後、インドネシアの家畜・魚類の疾患を低減するうえで貴重な基礎データとなりうるものと期待している。
著者
エリス 俊子 OTOMO RIO
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

1.金原ひとみに関して書いた論文に推敲を重ね、「少女を読む少女」(青山とも子編Routledge社)の一章として2008年の出版を予定している。この論文は1995年以降に登場した村上春樹以降の若手作家に現れる傾向を探りつつ、女性、文体、近代的主体の行方を追った研究の一環である。2.その後村上作品に戻って、脱ジェンダーが実は女性性を隠蔽するシステムとなっている点を分析し、最近の作品「アフターダーク」における日常と非日常の空間の表象を考察した。この研究は「少女、身体、そして国家」、「文学と言語における空間と時間」という二つの学会に向けて書かれ、共に、単行本の一章として出版が予定されている。3.さらに、「やおいマンガの語りと欲望の消費」という小論文を書き、マンガやライトノベルのジャンルの語りに現れる日常性にも目を向け、現在出版に向けて推敲中である。4.ウェブ・ジャーナル「日本近代文学:フェミニズム文学批評」の立ち上げは、若干の遅れはあるものの進行中で、来年9月にタスマニア大学(豪州)にて「日本研究科で文学を教えるためのワークショップ」を開催し、その際同時にこれを立ち上げる予定。
著者
筒石 賢昭
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、1994年に発表された『全米芸術教育標準』の目的、内容、及び実践への示唆を明らかにすることを課題とした。研究の目的は2点に大別され、第一点は、理論的研究として、『標準』の成立過程を歴史的側面より明らかにした。特に『標準』のスコープとシークエンスを平成10年12月に発表された我が国の学習指導要領と関連させながら分析した。第二点は、実践的研究として、この『標準』が実際に現場の芸術教育または音楽教育にどのような影響を及ぼしているか、イリノイ大学やミシガン大学の関係者のインタビューを含んだフィールド調査をすることによって明らかにした。以上の結果、『標準』の事例は、discipline-basedと呼ばれる芸術本来の持つ原理、機能を明らかにしつつも他教科、他分野との学際的なカリキュラムでもあることが分かった。この『標準』の意義はつぎのようなものである。(1)音楽における知識・技能を多様な角度から理解・獲得できるよう、「学際的・総合的な学習」を指向している。(2)「美的一般教育」としての芸術統合教育の発展上にある。(3)コンテクストとの関わりで音楽にアプローチする、「多文化音楽教育」に対応する内容を提示している。(4)芸術教科だけでなく、他教科との関わりを強調することで、音楽の学習を学校教育における他教科との学習に有機的に結び付けている.また教師教育という観点からも、「全米音楽教育者会議」MENCは大学の教員養成カリキュラムの実施にも積極的に支援した。
著者
輪島 裕介
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度も、前年度に引き続いて第二次世界大戦後の日本の大衆文化の歴史的展開を研究し、とりわけそこにおける音楽の位置について主題的に検討した。昨年度は主に1970年代以降の「若者文化」の形成と変容を主題的に扱ったが、本年度は戦後初期からの、「大衆文化」および「大衆音楽」に関する言説の変遷に着目した。1950年代の『思想の科学』グループや、1960年代の「朝日ジャーナル」や「話の特集」に代表される対抗文化的ジャーナリズムにおける歌謡曲/流行歌へのまなざしのありようを通時的に研究し、旧来支配的であった「洋楽」(西洋芸術音楽)を範型とする教養主義的な語りや、大衆の啓蒙を目指す既成左翼的な文化の語りのなかでは蔑視されてきた歌謡曲/流行歌に、「日本の民衆的/民族的な土着性」という意味が投影されることによって真正性が付与されてゆく過程を明らかにした。その成果の一部は早稲田大学オープン教育センター講座「感性の現在への問い」のゲスト・スピーカーとして『「艶歌」の誕生:流行歌が「日本の心」になるとき』と題して口頭発表した(2005年6月23日)。また、1990年代以降の民族音楽学およびポピュラー音楽研究に関する学説史的な概観を行い、その知見に基づき事典の項目執筆を行った。担当項目は「ワールドミュージック」(約1万字)、「ライブ」(約1000字)(『音の百科事典』丸善、2006)「1989年以降の民族音楽学」、「日本のワールドミュージック」、「カーニバル文化の政治性」(各約5000字)(『世界音楽の本』(岩波書店近刊)である。
著者
奥 忍 権藤 敦子 HERMANN Gottschewski
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究の完成年度として、3度の研究会を開催してこれまで行った研究成果について検討と補足をした上で報告書の形で総括をした。研究の目的を実現するために、本研究では数多くの研究者、学生の協力を得たので、それらを含めて、成果を全185頁の報告書として刊行した。第1部「忘れられたアイデンティティ」:日本音楽をめぐる教育の場の現状を3つの角度から明らかにした。第2部「潜在する音楽的アイデンティティ」:日本音楽・芸能におけるリズムを対象とした実験研究を行い、口上や朗読、伝統音楽にみられるリズムの特質について分析を行う。また、学生の表現の分析によって、その中に伝統芸能のリズム操作と共通する要素が含まれていることを明らかにした。第3部「近代日本の歌における日本語の捉え方」:第1部や第II部で浮上した問題について歴史研究の手法でアプローチした。近代日本における日本語による歌の捉え方、音楽要素に着目した日本語指導などについて扱った。第4部「音楽的アイデンティティの再認識」:言葉と音楽との関係に着眼した授業の開発とその成果の検討。日本音楽の学習に関する客観的で分析的な理論研究の裏付けをもつ実践的な研究が必要とされるため、方法の異なる実践例を検討し、例示した。研究の内容は以下のとおりである。I 忘れられたアイデンティティ1.小学生と中学生に見る日本伝統音楽に対する姿勢2.教員養成関係学部における日本音楽の動向3.現代の若者にとっての日本音楽-大学院生のレポートに見る日本音楽-II 潜在する音楽的アイデンティティ-リズムを中心に-1.香具師の立ち売り口上におけるリズム操作-「がまの油売り」の場合-2.「何は何して何とやら」におけるリズム操作-茂山千之丞による7つの演じ分けを基に-3.日本の伝統芸能のリズム-共通詞を用いた伝統芸能の音声分析-4.朗読と歌唱のリズムの類似度を定める方法についての考察5.音楽教育専攻学生に見る伝統芸能的な語感-歌舞伎風「名乗り」のリズム分析-6.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(1)-行と行間、連間に焦点をあてて-7.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(2)-行間と連間の感受に焦点をあてて-8.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(3)-詩の初見と再読による「間」の取り方-9.詩の朗読から歌うことへ-詞を詠・唱・歌う-III 近代日本の歌における日本語の捉え方-西洋音楽との関わりから-1.「国の子ども」を定義する-近代日本子ども音楽の三つの場面-2.音楽教育と外国語教育の接点-語学教育における歌唱のすすめ-3.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(1)-兼常清佐の言説を中心に-4.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(2)-高野辰之の言説を中心に-5.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(3)-わらべうた教材の分析をとおして-IV 音楽的アイデンティティの再認識-声と言葉による学習の開発-1.言葉のリズム学習としてのヴォイス・プロダクション-「お祭り」の創作学習2.香川の民話・民謡・方言を用いたミュージカルの創作-小学校低学年向け「狼の眉の毛」-3.オノマトペによる音楽創作-ヴォイス・プロダクション『のでのでので』-4.讃美歌から生まれた歌唱教材-「星の世界」に見る歌詞の変遷-5.体験学習「歌舞伎の表現」-内在する伝統的なリズム感に気づく授業
著者
武山 健一 今井 祐記 岡田 麻衣子 藤木 亮次
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-06-23

「研究の目的」本研究では、性差構築におけるエピゲノムコードの解明を研究課題として、ピストン修飾やそれに伴うクロマチン構造変化等のエピジェネティクスの性差を見いだすことである。これまで、エピジェネティクスの現象に性ホルモンや性染色体依存的性差は判然としていない。そのため、本研究アプローチでは、細胞レベルでの性ホルモンによるエピゲノム調節を解析することとした。「研究実施計画とその成果」性差の認められる組織や器官において、それらを構成する細胞の分化や維持について着目した。特に、間葉系幹細胞は骨芽細胞、脂肪細胞、B細胞など多様に細胞分化することが明らかであるが、これら細胞数や細胞分化には性差が認められる。本研究では、これら細胞分化に必須となるZincfingerタンパク質(Zfp)に着目し、核内におけるZfpやタンパク複合体精製を行った。興味深いことに既知のクロマチンリモデリング因子複合体構成因子に加え、これまで染色体上では着目されていない酵素を見いだした。この点をより詳細に検討するため、タンパク精製を繰り返し、複合体構成因子の全貌を解明することができた。更にこの酵素活性が複合体中に存在することが判明した。また、この酵素遺伝子を不活性化させると、間葉系幹細胞の分化促進や細胞系譜に異常が生じることが明らかとなった。これらのことから、細胞分化における新たな分子機構が明らかとなり、今後、細胞分化における性ホルモンやY染色体とのシグナルクロストークを解明する糸口を提案できた。以上、細胞分化制御における新たな性差のエピジェネティクスの分子機構解明の一端を見いだすことに成功した。
著者
鈴木 廣一 西尾 元 田村 明敬 宮崎 時子
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

この研究の契機はABO式血液型(以下ABOと略)遺伝子座でde novoの組換え例を発見したことである。各対立遺伝子の配列からみて、親子のいろいろな型の組み合わせのなかで、de novoの組み換えによって子の表現型に矛盾が生じるというのは特定の組み合わせに限られ、非常に稀なことと考えられる。このことは逆に表現型の矛盾として現れない組換えがかなりの頻度で存在している可能性を示している。このような推察から、一般集団をスクリーニングした結果、組換え体ががなりの頻度(1〜2%)存在していることを明らかにした。これらの組換え体をまとめると、12種類の可能な組み合わせのうち、A1-O1、B-A1、B-O1、B-O1v、O1-O1v、O1v-A1、O1v-Bという7種類の配列構成(例えばA1-O1というのは、遺伝子の5側がA1遺伝子の、3側がO1遺伝子の配列であることを示す)であった。O1v-Aには配列の変換領域が異なるものがあったので、あわせて7種類8個となる。これらはいずれも、エクソン2から7までの間に配列の変換領域をひとつもっていたが、イントロンVとエクソン7の2ケ所に変換領域のあるO1v-B-O1vという配列構成をもった組換え体も見いだした。この組換え体の成因としては交叉よりも遺伝子変換が考えやすい。以上のように、わずか300人足らずの集団調査で、予想される組換え配列12とおりのうち7つを見いだしたことは、ABO遺伝子領域では、新規の組換えを繰り返してきていることを示している。近傍に相同の配列をもった遺伝子などが報告されていないことから、相同遺伝子がタンデムに配列している領域に起こりやすい交叉よりも、遺伝子変換のような機構が関わっている可能性が高く、高等生物における遺伝子変換機構を研究するモデル領域になると考えられる。