著者
首藤 文洋
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトに心地よさを感じさせる音を被験者に提示すると、被験者の前頭葉酸素ヘモグロビン量の変動が相対的に小さくなる。被験者はその音を「気分がよい」と評価したと考えられる。これらの音のうち、川のせせらぎの音をマウスに提示すると、情動に深く関与するセロトニンやノルアドレナリンの脳内濃度が変動していた。これらのことは音刺激には本能システムにはたらくことで心地よさを感じさせる脳機能メカニズムに作用するモノがあることを示唆しており、これらの音を使うことで多くの人が安らぎを感じられる音環境が設計できる可能性が示された。
著者
山崎 晴雄 鈴木 毅彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

海成段丘上に位置する孤立した短い活断層の成因を検討するため、日本各地の当該断層について、断層地形の特徴、運動様式、地質構造、地震活動等を考察した。その結果、1.沖合に存在する大規模な逆断層のバックスラストと、2.海岸沿いの基盤地質構造が、遠方の大地震や過去の環境条件の変化による応力集中によって再活動したもの、の2タイプの断層があることが判った。何れも起震断層として活動する可能性は考えにくい。
著者
堤 純一郎 安藤 徹哉
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究期間の3年間に6つのテーマで研究を行った。まず、亜熱帯島嶼地域の沖縄における伝統的な木造住宅から最近のパッシブクーリング住宅まで、歴史的な変遷を考慮した6棟の戸建住宅における熱環境の実測調査または既存データの解析を行い、住宅の熱環境に関する変化について考察した。次に、低緯度における最大熱負荷要因となる屋上面の遮熱、断熱に対する対策として、RCスラブと亜鉛鉄板屋根を対象に、屋上植栽、セラミックタイル、ペイントなどの6種類の屋上被覆材料の熱的効果に関する屋外実験を行った。屋上植栽の熱的効果が最も高く、セラミックタイルはそれに準じる。市販の断熱ペイントの遮熱性能も確認できた。さらに、沖縄県産の素材を用いた3種類の外装仕上げ材料を実験用の小型RC住宅の西壁と北壁に塗り、これらの遮熱及び断熱性能の評価を行った。単純な塗り壁仕様の仕上げ材料であるが、これがある程度外断熱的な働きをすることが明らかになった。以降は建物を取り巻く屋外環境に関する研究である。まず、伝統的な町並みの代表として首里金城町の石畳の道とアスファルト舗装の熱環境を比較測定した。日中ばかりでなく夜間も石畳の表面温度は常にアスファルトよりも低いことが明らかになった。また、沖縄の伝統的屋敷囲いであるフクギの防風林に関する、詳細な調査を本部町において行った。現存するフクギ林だけでなく、歴史的な変遷に関する調査も行った結果、フクギ林の生活環境に与える効果を肯定する住民の意見と、RC造住宅に替わってから徐々にフクギ林が減っている現実を明らかにした。次に、都市の熱環境を調整要素としての重要な働きが期待される樹木そのものの熱環境に関する実測調査を行った。琉球大学構内において8種類の樹木の熱環境測定を行い、樹種による熱的効果の違いを明らかにした。さらに、天空における樹冠の形態係数を用いて、街路樹が日陰を作る効果を定量化した。
著者
橋口 暢子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「目的・方法」本研究の目的は、温熱環境の構成要因である湿度と気流が、入浴後の生体へどのような影響を及ぼすかについて、特に皮膚性状を中心とした生理反応や、不快感、乾燥感を中心とした心理反応の双方から検討し、看護の対象者をとりまく適切な住宅温熱環境についての基礎資料を得ることである。交付初年度の平成17年度は、健康な男子大学生8名を被験者とし、冬期のエアコン暖房使用時の環境を想定した(湿度20%、気流0.6m/s、室温25℃)環境に、一定の手順で入浴した後、80分間椅座位にて滞在してもらい、それと、入浴をしない状況で同じ温熱環境に滞在した場合と比較することで、入浴後の生理心理反応に及ぼす特徴を明らかにし、気流速度が速く、低湿度の環境は、体温調節反応に及ぼす負担や、皮膚の乾燥に対する影響が、入浴後であれば特に大きくなるなどの知見を得た。そこで、本年度は、湿度、気流の違いが入浴後の生理心理反応に及ぼす影響について、昨年度と同様に被験者実験を行った。温熱環境条件は、湿度20、60%、気流0.2m/s以下の各2条件を組み合わせ計4条件とした。測定項目は、皮膚温、直腸温、血圧・脈拍、皮膚水分量、経皮水分蒸散量、皮脂量、体重、主観申告(温冷感、不快感、湿度感、気流感、顔・目の乾燥感)である。被験者の基本衣服は、短パン、半袖Tシャツ、スウェット上下である。「結果」低湿度環境では、皮膚水分量が少なく、蒸散量が多くなること、顔の乾燥の自覚が強まることが示され、気流が大きい環境では、温冷感の涼しいや不快感の申告が多くなること、眼の乾燥が強まることが示された。また、湿度60%、気流無し条件では、入浴後の平均皮膚温の低下が小さいことが示された。「結論」皮膚の乾燥には気流の違いよりも湿度が低湿度であることの影響が大きく、気流速度は主に温冷感、不快感に大きく関与することが示唆された。気流速度が速く、低湿度の環境が他の条件に比べ顕著な生体反応を引き起こすことは示されなかったが、湿度60%、気流無し条件では、入浴後の皮膚温の低下が抑制され、一般に言う湯冷めを軽減させることができることが示唆された。
著者
三浦 均也 前田 健一 窪内 篤 菅野 高弘 大塚 夏彦
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、港湾地域における岸壁等の施設の耐震性能を高度化することであり、地震時における地震時土圧の特性を明らかにし、より合理的で経済的な地震時土圧の評価法および耐震設計法を開発することである。この目的を達成するために、北海道釧路港で実施していた「実大重力式岸壁の地震時挙動観測」で得られるデータの収集、分析・評価を進め、地盤の液状化に関連した岸壁の被害メカニズムを明らかにするとともに耐震設計の提案を行った。研究成果の概要および特徴は以下の通りである。「研究の独創性」 阪神淡路大震災で生じた港湾施設の甚大な被害に対して、これまでの耐震設計の枠組みの中で設計地震衝撃力を増大させ構造物が長大化させる考え方が主流であった。しかし、本研究ではこれまでの震度法にとらわれない。構造物の振動特性と液状化対策の効果を適切に反映できる独創的な地震時土圧評価法および耐震設計法を提案し、その検証を観測結果に基づいて検証することができた。「研究の実用化の可能性」 2003年十勝沖地震における観測結果を解析することによって、地震時における岸壁の挙動メカニズムが明らかになり、提案していた地震時土圧の評価法も検証することができた。現在をこの評価法を取り入れた耐震設計法の開発を終え、1年以内に行われる港湾構造物の耐震設計法の改訂という形で研究の成果が実用化されることになった。また、試験岸壁の建設時や建設後長期間に渡る観測においても岸壁挙動の重要な知見が得られ、これらは岸壁の施工管理や維持管理において今後実用化される予定である。「研究の達成度」 当初予定していた現地観測と耐震設計法の開発を予定通り達成することができた。2004年9月26日には十勝沖地震が発生し試験岸壁は震度5強の衝撃力を受けた。試験岸壁の背後地盤は液状化し、岸壁には地震時特有の変形が生じ機能が深刻な損傷を受けた。地震衝撃力による液状化を伴う岸壁の被害を観測によって捕らえることに成功したため、観測結果の解析と耐震設計法の検証は説得力を持って予定通り達成することができた。「研究の学問的発展への貢献度」 このような実大岸壁の背後地盤の液状化を伴う地震時挙動を得たのは世界的にも初めてである。地震時挙動の観測によって得られたデータは、2005年1月17日から1年間インターネットで世界の研究者に公開している。このデータを用いた研究成果を持ち寄り2005年9月には国際会議を開催する予定であり、この分野の学問的発展に大きく寄与するものと期待している。また、このような前例のない観測を通じて観測方法や試験方法についても重要な知見を得ることができた。
著者
渡沼 玲史
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

特徴としてデータ量が多くなるモーションキャプチャデータを要約する質評価指標を開発してその有効性を確認した。本研究で開発した指標の特徴は、人文科学的な予見が入らない物理量から指標を作成している事である。さらに、質評価指標を中心とした舞踊解析手法を開発し、いくつかの舞踊動作に適用して検証した結果、当該手法がモーションキャプチャを用いた舞踊研究の効率化を可能することが分かった。また、5組の舞踊家の計9種の動作をモーションキャプチャによってディジタルデータ化した。
著者
牛山 素行
出版者
岩手県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)2005年豪雨災害の特徴解析2005年に発生した豪雨災害のうち,特に台風14号による災害(9/4-8)に注目し,被害の大きかった宮崎県を中心に現地調査,資料解析を行った.豪雨災害が多発した2004年の事例と比較しても,大きな被害を生じた事例であり,数年に1回程度発生する規模の事例と判断された.宮崎県日之影町においては,長年の地域の取り組みにより早期の避難が行われ,20世帯以上が全壊する洪水・土砂災害にもかかわらず人的被害を生じなかった事例を確認した.また,宮崎市においては市による電子掲示板上で市民・市役所間の災害時における迅速な情報交換が行われ,わが国におけるほぼ初めての形態であることを示した.これらの成果は災害後1週間以内にweb公開し,数万ページビュー/日の参照があり,報道機関からも多くの問い合わせを受けた.(2)台風0514号災害時の死者の死因に関する検討台風0514号による人的被害(29名)に関し,台風0423号の際に開発した手法を適用して,死亡状況に関する解析を行い,そのほとんどが,「土砂災害により,高齢者が,屋内で死亡」であったことを指摘した.これは,洪水による青壮年の死者が目立った台風0423号の事例とは異なり,近年整備されている災害情報の活用による救命の可能性がある犠牲者が中心であったことを指摘した.また,この解析手法の有効性を示した.(3)豪雨時の自治体の対応に関する調査2004年度末に調査票を配布した,2004年の豪雨災害時および災害後の被災,非被災自治体における災害対応状況についての調査を解析した.その結果として,(a)豪雨災害の頻発は防災担当者の豪雨災害に対する関心を高める事は確かである。たとえば,リアルタイム豪雨情報の参照頻度が高まる,豪雨災害による避難勧告の可能性を予想する市町村が増加するなどの変化が見られる.(b)関心の高まりは具体的な対策にはつながらない.たとえば,災害前39%の市町村が指定避難場所の選定に浸水の影響を考慮していなかったが,災害後,見直しを行ったのはそのうち12%にすぎない.(c)2003年水俣市土石流災害の教訓は,ほとんど他の市町村に波及していない,(d)防災ワークショップが1割程度の自治体で実施されているが,その半数程度が住民だけで行われている,などを指摘した.
著者
橋本 正治 川野 常夫 西田 修三
出版者
摂南大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

以下に示す計画に従い研究を実施した。(1)3次元曲線の入力法の提案・入力装置の試作・評価実験(2)作業者の特性の検出法の提案・検出装置の試作・評価実験(3)個性や熟練度の検出法・評価法の提案と試作装置による評価実験(4)熟練度に応じて柔軟に対応するインタフェースの提案と評価実験CADシステムに用いるための3次元入力法を提案し、試作装置の精度と入力に要する時間について評価した。その結果、精度に関して300mmの曲線の長さに対して5mm程度の誤差が生じていることと、処理時間に関して作業者が違和感を覚えるとされている0.1sec以内に前ての処理が行われているとが明らかとなった。評価実験を行った結果、本入力装置のように作業者の表現内容を機械が判断し入力情報として用いる方式を用いることで未熟者であっても容易に熟練者と同じ入力処理が行えることが明らかとなった。作業者の熟練度は、作業結果や作業工程などに現れると考えられるが、作業の内容に応じて評価しなければならない。本研究では、未熟者と熟練者では作業の疲労度に差がでることから、疲労度を生理的情報を検出することで熟練度合いを評価する手法を提案した。作業の負担とならない生理情報の検出法の提案と測定装置の試作を行い、生理情報と精神的疲労度との関連を実験により明らかにした。熟練を要する作業のシミュレータを開発し、作業者の熟練度に応じてインタフェースのC/D値を作業中に変化させる実験を行った。被験者が熟練者の場合、作業成績を維持しながら作業時間が短くなった。これは、本手法を用いることによりさらに技能の習熟が進んだことを意味し、有効性が確認されたと考えられる。
著者
佐藤 卓己 佐藤 八寿子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

従来のテレビ論やテレビ史の大半は娯楽文化論か政治報道論であり、教育・教育とテレビの関係は「子どもとメディア暴力」や「メディア・リテラシー」に集中していた。本研究では「教養のメディア」としてテレビ放送の意義を再検討することをめざした。『テレビ的教養-一億総博知化の系譜』(NTT出版・2008年)などにおいて、NHK、民間放送、放送大学など諸組織ごとに分かれた既存の個別研究を統合する放送メディア教育研究の新しい枠組みを提示した。
著者
村井 祐一 田坂 裕司 北川 石英 石川 正明 武田 靖 武田 靖
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

マイクロバブル混合液体の層流域から乱流域までのレオロジー特性を実験的に研究したものである.層流域では,非定常なせん断応力場において気泡形状と応力の関係に非平衡性が表れる場合,平衡を仮定した実効粘度よりも10倍以上大きな運動量伝達特性をもつことがわかった.遷移域では周波数の変調による乱流への初期遷移が抑制されることがわかった.また乱流域では乱流渦干渉による乱流エネルギー低下,気泡クラスタリングによる新しい境界層構造の出現や伝熱促進が観測された.
著者
王 道洪 高木 伸之 渡邉 貞司
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

雷の前兆現象の解明を目的に2005年と2006年の夏季にそれぞれチベット雷について総合観測実験を行った。それらの観測データを解析して、以下の知見が得られた。1.チベット雷雲は夕方から深夜にかけて発生することが殆どである。雷活動は雷雲によって随分異なる。雷が多い雷雲では一分間20回以上の雷放電が観測されており、少ない雷雲では全放電数が数回程度にとどまる。2.2005年度観測できた雷雲の殆どは地上で主たる正極性電界を示したが、2006年度観測できた雷雲の殆どが地上で主たる負極性の電界を示した。前者の場合、雷の9割以上が雲放電であり、落雷の数が極めて少ない。後者の場合、普通の夏季雷雲と同じ、落雷が2〜3割合を示す。普通の雷雲の下部に正極性のポケットチャージがあり、これが落雷を誘発するとされている。正極性電界を示すチベット雷雲の場合、このポケットチャージはむしろ主電荷領域であり、その下に落雷を誘発する逆極性のマイナスポケットチャージがない。これは正極性電界を示すチベット雷雲において落雷があまり発生しない原因と推測している。3.雷の開始場所は明らかに高度が高い層と低い層に分かれており、それぞれの場合、その後の雷放電リーダが異なる特性を示す。雷の開始に関して、負極性リーダが見かけ上最初に伸びるとの説が主流になっているが、今回の研究では始めて正極性リーダのものと負極性リーダのものと両方が存在することを突き止めた。4.雷雲の発達段階によっては落雷の割合が随分異なり、落雷しやすい電荷構造が明らかに存在すると考えられる。
著者
粒来 香 米澤 彰純 濱名 篤 矢野 眞和 吉田 香奈
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

現在、高等教育においては大学評価が重要な意味を持ちつつあるが、本研究では家計による市場型評価に焦点をあてた。大学の教育サービスの需要者である家計は、教育内容と価値について情報を求める。わが国の大学教育費の多くは、とりわけ私立大学では親(保護者)によって負担されていることから、保護者を家計の代表者と考えることができよう。以上をふまえ、本研究では保護者を対象とした面接調査および質問紙調査を中心とし、1)大学教育に対する満足のありかたとその規定要因、2)家計による費用負担の実態、3)大学に対する期待と教育費負担に対する考え方、の3点を明らかにすることを、主要な課題として設定した。1.大学教育に対する保護者の満足度は、「満足」+「やや満足」の合計で77.3%と、全体的にみて非常に高い。2.入学時に考慮していた教育内容やサービスに対する満足度が高いだけでなく、入学時にはほとんど考慮されていなかった「同窓会組織の充実」や「卒業生の社会的活躍」などに対する満足度が大きく高まっている。入学から卒業にいたる期間に、保護者は大学の評価すべき側面を新たに発見しており、そのことが高い評価に結びついていると考えられる。3.親子間のコミュニケーションが高いほど、また大学から提供されるさまざまな情報を利用しているほど、保護者の大学評価は高くなる傾向がある。4.年収700万円未満の家庭では、教育費が家計の20%以上を占める比率が85%にのぼる。教育費の調達に特別な方策を要しなかった家庭は6%で、ほとんどの家庭で「教育目的以外の預貯金や蓄え」を取り崩している。5.重い負担にもかかわらず、多くの保護者は教育費を「子どもへのプレゼント」として認識している。
著者
箕田 雅彦
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度は、高分子材料を常圧常温下で擬似体液(SBF)中へ浸漬するというバイオミネラリゼーションに倣った手法により、キチン/アパタイト粒状ハイブリッドを創製した。市販の多孔性キチン粒状ゲルをSi(OEt)_4を用いるゾル-ゲル反応によりカルシウムシリケート化してSBFへ浸漬することでハイブリッドを得た。さらに、CH_3Si(OEt)_3含有ゾルを用いて同様に処理することで、ハイブリッド表面無機層を改質した。また、バイオミネラリゼーションに倣ったPP、PET材料とアパタイトとのハイブリッド化についても検討した。高分子基板をTi(OiPr)_4を用いるゾル-ゲル法でチタニアコートし、沸騰水中で3時間保持してチタニア層の結晶構造変換を行ったのちSBFへ浸漬することで、アパタイトとのハイブリッドを得た。既報の希塩酸加熱処理法に比してより穏和な熱水処理法が、チタニア層の結晶構造変換に有効であることを明らかにした。平成18年度は、有機/無機界面強度の増大によるハイブリッドの力学的特性の向上をねらいとして、高分子の表面修飾反応を検討した。PET基板をアルカリ前処理して3-イソシアナートプロピルトリエトシキシラン(IPTS)と反応させることで表面にIPTS残基を導入した。続いて、Ti(OiPr)_4を用いるゾル-ゲル法によるチタニアコーティングと熱水処理を行った後SBFに浸漬することで、試料表面にアパタイトを形成させることができた。さらに、粘着テープによる剥離面をXPS解析した結果、IPTS処理無しの試料に比して、基板表面をIPTS処理したハイブリッド試料では剥離強度の増大が認められた。また、ハイブリッド形成時のチタニア層とのネットワーク形成ならびに投錨効果による有機/無機界面強度の増大をねらいとして、PET基板表面へ-si(OMe)_3側鎖を有するグラフトポリマー鎖を導入する手法を開発した。
著者
廣瀬 昌博 花田 英輔 竹村 匡正 吉原 博幸 今中 雄一 岡本 和也 中林 愛恵 本田 順一 江上 廣一 津田 佳彦
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

各医療機関には膨大なインシデントレポートデータが蓄積されているが、インシデントによって発生するあらたな医療費、とくにその多くを占める転倒・転落事例とともに一般事例についても追加的医療費を算出するとともに疫学的側面を明らかにすることができた。また、機械学習法を繰り返すことで、インシデントレポートの自動分類や最適に分類される精緻化が可能であることが分かった。
著者
樺島 祥介 岡田 真人 田中 和之 田中 利幸 石井 信 井上 純一
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では,特定領域研究「情報統計力学の深化と展開」を円滑に推進するために,本領域全体の研究方針の策定,研究項目間の調整,国際研究集会・公開シンポジウム・講習会の企画実施,研究成果の広報,研究成果に対する評価・助言を行った.主な実績としては,計4回の公開シンポジウムおよび計6回の国際会議の開催,4冊のプロシーディングスの発行が挙げられる.これらの活動の成果は計280件を超える領域内から発表された原著論文等に反映されている.
著者
長嶋 淳
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

目標とする名人を超えるコンピュータ将棋ソフトの作成のため,前年度より引き続き,コンピュータ将棋の弱点である序盤を主な対象として改良を行った.前年度にこれまでの研究成果をまとめた論文を雑誌投稿し,7月にNew Mathematics and Natural Computation Journalに掲載された.今年度はこれまでの序盤の研究に加え,序盤を抜けた辺りに見られる仕掛けの問題にも取り組んだ.1つのアプローチとして,局面情報から仕掛けのタイミングを認識し,必要な時にのみ探索コストを集中させて問題への対処とする研究を行った.また,同時に別アプローチとして,人間の対局記録である棋譜から仕掛けなどの数手一組の手順を抽出し,探索に利用する研究のサポートにあたった.本年度も多くのコンピュータ将棋の大会があり,開発を行っているコンピュータ将棋TACOSが多くの成果を残した.1.第16回世界コンピュータ将棋選手権 4位2.11th Computer Olympiad将棋部門 3位3.第2回コンピュータ将棋世界最強決定戦2007 2位1では決勝シードと予選を勝ち抜いた8チームによる総当たり戦において4勝3敗となり,初めて勝ち越しに成功し,過去最高の順位となった.2では1で優勝及び準優勝のプログラムと戦い,3プログラムが全て1勝1敗で並ぶ結果となった.3においても,優勝した激指以外は全て1勝2敗で並ぶ結果であった.これらの結果から,Tacosとトップのコンピュータプログラムと差がほとんど無くなってきた事が確認できた.また,インターネット上の対局サーバでも実力の向上が見られ,強さはアマチュア6段相当に向上したことが確認できた.
著者
小林 保子 高橋 泉
出版者
東京福祉大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、重症心身障害児(以下、重症児)とその家族が、地域でより豊かにQuality Of Life(以下、QOL)の高い生活が享受できるよう(1)主たる養育・介助者である母親、(2)きょうだい、(3)家族を地域で支援する事業実践の視点から、先行する諸外国の訪問調査から得られた知見も踏まえ検証し、地域における重症児の「家族支援」の必要性とサービス内容のあり方について方向性を示した。
著者
高田 和幸
出版者
東京電機大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

都市鉄道整備の事業評価を行う際には,旅行時間の短縮効果,車内混雑率の緩和効果を評価していた一方,予定した時刻に目的地に到着できるという所要時間の信頼性については定量的評価が殆どなされていなかった.そこで本研究では,鉄道の所要時間の信頼性を,事故等に伴う列車遅延による旅客の時間損失で評価した.鉄道旅客の損失時間については,データ制約もあり,これまで全く定量的な検証が為されていなかったが,『鉄道運転事故等届出書(平成14年度版)』をデータ化し,事故の発生現象(一日あたりの事故発生件数,発生時間,事故原因,事故発生路線など)の確率分布を特定化した.また事故が発生して乗車した列車が運行停止した際,旅客がどのような行動を取るのか(運転再開を待つ,代替路線で移動する,移動することをあきらめる)を,選好意識調査(SP調査)の結果を用いて分析し,選択行動モデルを推定した.先に特定化した事故現象に関する確率分布と,事故発生時の乗客の選択行動モデルを適用してモンテカルロ・シミュレーションを行い,鉄道旅客の損失時間の年間推計値とその確率分布を同定した.またアンケートでは,個々の被験者に,現在の年間損失時間を提示し,その減少分に対する金銭的な支払い意志額を別途調査した.この調査データを用いて,到着時間の信頼性向上に対する支払い時間の確率分布を求めた.ケーススタディとしてエイトライナーを取り上げ,この路線が整備された際に首都圏でどれだけ乗客の年間損失時間が減少するのかを算定し,さらに損失時間減少分の便益を求めた.
著者
小林 敏男 金井 一頼 淺田 孝幸 高尾 裕二 関口 倫紀 椎葉 淳 伊佐田 文彦 栗本 博行 松村 政樹 平山 弘 朴 泰勲 寺川 眞穂 古田 武 前中 将之 中田 有吾
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

グローバルニッチ戦略とは,自社の開発技術を評価する特定顧客に対して,そのニーズに叶った製品を開発・供給していく過程で,事業として存続しうる売上規模を獲得でき,その状態を持続可能にすることによって,当該製品が属する市場において参入障壁が高い小市場を形成でき,グローバルな多地域への展開が可能となる戦略のことである。ニッチ市場は,既存市場のセグメント分析から存在論的に発見できるものではなく,特定顧客との密接な協働から形成しうる過程論的な市場である。
著者
武田 雅哉 東田 雅博 立川 健治 杉本 淑彦 竹中 亨 斉藤 大紀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究においては、画報や映画など、ビジュアルな資料を主たる研究対象としてとして検討を行なってきたが、ヨーロッパと中国および日本の、それぞれの資料に描かれた、それぞれにとっての「外国人」「外国文物」についての検証を、多角的に進めることができた。その過程で、当初の研究対象である「外国人イメージ」をさらに拡大させ、われわれの関心は、都市、政治、制度、物語、科学技術など、広く外国伝来のものに対するイメージを探る方向にも、展開していった。最終的な研究成果報告書においては、「日清・日露戦争時期におけるイギリスの画報に見るアジアイメージ」、「日本の馬匹改良に見る外国イメージ」、「エジプト遠征の記憶に見るアラブ・イスラームのイメージ」、「ドイツの画報に見るアジアイメージ」、「中国清末民初期の画報から文化大革命時期の刷り物に見る鉄道事故のイメージ」、「日本の流行歌に見いだされる上海のイメージ」、「近世ヨーロッパが見た日本の法制度」、「1930年代ハリウッド映画に見られる中国人イメージ」が、研究代表者・分担者および協力者による成果として文章化され、報告されている。3年にわたる研究会を通して、われわれは、互いに研究分野の異なる研究者が、ひとつの図像資料に目を向けて意見交換をしあうことの有効性を痛感した。それぞれが使用する言語の壁を越え、図像というオブジェの解読をめぐって知恵を出し合うという研究のスタイルは、今後の展開においても、そのまま継承されるであろう。今後はまた、英国と中国、日本と中国など、異なる地域において刊行された画報が、同一事件(戦争など)について、それぞれどのように報道されているかを、図像、テキストともに詳細に併読、検討することなども行なっていきたい。