著者
跡部 真人
出版者
横浜国立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

微小な流路内で化学反応を行うマイクロリアクターは、様々な分野で応用が期待されている反応デバイスであり、これを利用した研究は1990年代初頭から分析化学の分野で、また、最近は有機合成化学の分野でも大きな成果を挙げている。とくに大きな比界面積を有し迅速な溶液混合が可能といった特徴は、均一系反応よりもむしろ固-液不均一系界面での反応のほうが効率化できるなど利点が多く、典型的な固-液界面での反応である電気化学反応においても大変魅力的なものと言える。さらに、電気化学測定・分析の領域のみならず、電解合成の分野においては、マイクロリアクターの利点はこれだけではない。電極間距離がマイクロオーダーであり、「電解液の流れがリアクター内で厳密に制御されている」といった特徴を最大限に活用すれば、従来のバッチ式反応容器(フラスコやビーカー)では決して実現できなかった全く新しい電解合成反応や電解合成システムが構築できることも予想される。このような着想に基づき、今年度はマイクロリアクターを利用した1)電解反応をキーステップとするカスケード反応システムの開発と2)連続的レドックス反応システムの開発の2つの電解反応システムの開発を実施し、着想原理の妥当性を十分に示すことが出来た。さらにそれぞれの反応システムの汎用性やリミテーションについても検証し、電解合成プロセスにおけるマイクロリアクター利用技術の基盤的指針を獲得した。
著者
佐藤 久美子 梶川 祥世
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、外国語学習において歌を通して単語を一定期間反復聴取することは、音声言語発達を促進し、第二言語習得に効果的であるという仮説を立てこれを検証した。2 歳-3 歳の幼児と6 歳~11 歳の児童を対象として一定期間英語歌を聴取させ、英語反復力及び発音力を測定した。これにより母語と非母語の音声処理の関係が8 歳頃を境に変化することを明らかにし、幼児においては歌聴取による非母語反復能力の促進を確認した。
著者
川節 望 新藤 健太郎 田北 勝彦 増山 不二光
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. A編 = Transactions of the Japan Society of Mechanical Engineers. A (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.74, no.741, pp.669-677, 2008-05-25

Glass Fiber Reinforced Plastics (GFRP) have been applied to products such as building components and various structural materials in industrial plants due to their excellent lightness and corrosion resistance, as well as weather resistance since the 1980's. Use of GFRP for large-scaled components and/or components with repetitive load has increasingly widespread in recent years, and both tensile and compressive properties have thus become important. Reinforcing laminate for GFRP has been mainly woven fabric such as glass woven roving due to its easy handling. However, its fiber winding and gap occurrence have been problems to be solved. In the recent years, new fiber fabrics for reinforcement have come on the market owing to rapid development of weaving machine, and one of the new fabrics is the stitched fabric. This glass fiber stitched fabric has been increasingly developed in Europe and all over the world for over ten years, and in Japan, has extended its application for ship for about ten years. This study investigates and examines GFRP reinforced with unidirectional glass fiber stitched fabric, in respects of the effect of fiber laminated constitution, fiber content and fiber diameter on tensile and compressive properties. Additionally, this study also examines relevance between weaving patter of fiber and strength property by comparing 0 degree/ 90 degree stitched fabric with GFRP with general woven roving.
著者
山内 和人 山村 和也 佐野 泰久 稲垣 耕司 三村 秀和 森 勇藏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本年度(平成18年4月〜平成18年7月)の研究実績1 走査型蛍光X線顕微鏡システムの構築これまで開発を進めてきた、ナノ集光システムの後段に、既存のXYステージと蛍光X線ディテクターを装着させ、走査型の蛍光X線顕微鏡システムを構築した。XYステージには、0.01μm分解能のステージを用いた。蛍光X線ディテクターからの波形分布を、各ポイントで取得可能なシステムとし、複数の元素マップを取得することを可能とした。SPring-8のBL29XULにおいて、テストパターンによるシステムの動作確認と、細胞内の元素分布の観察を行った。テストパターンはFIB (Focused Ion Beam)により作製した。顕微鏡システムの空間分解能のテストを行った結果、30nmの分解能でテストバターンに書かれていた文字を画像化することができた。細胞観察では、細胞内の核やミトコンドリアの観察において、同時に複数の元素分布を可視化することに成功した。2 ブロジェクション顕微鏡システムの予備検討ブロジェクション型顕微鏡システムとしては、将来的な発展性を考慮すると、近年注目をあびているX線回折顕微鏡の導入が不可欠であり、検討を開始した。本手法は、X線の透過強度分布から、集光点近傍のサンプル内の電子分布を求めるものであり、原理的にナノメートルの空間分解能を持つ顕微鏡手法として有力である。今年度は、位相回復法と呼ばれる数学的手法に基づくブログラムを開発した。そして、ミラー集光光学系においても、透過強度分布からサンブルの電子構造を求めることが可能であることがわかった。
著者
湯本 博勝
出版者
(財)高輝度光科学研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では-ミラー型光学素子による硬X線ナノ集光実現を目的とし,本X線集光ミラーを作製するために必要となる形状精度を保証可能な表面形状計測システムの構築を行った.可視光位相シフト白色顕微干渉計を利用しミラーの部分的な表面形状計測を行うと同時に,各計測領域間の相対角度決定型の高精度スティッチング干渉法を開発した.これにより,ミラー全体形状に関して1nm単位の高精度なデータ算出が可能となった.
著者
柴田 純祐 川口 晃 江口 豊
出版者
滋賀医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

近年、癌の浸潤、移転に関する因子として、各種接着因子やプロテアーゼが注目されている。urokinase-type plasminogen activator(u-PA)はセリンプロテアーゼの一種で、plasminを介してpro-collagenaseを活性化し、細胞間基質を溶解することで癌の浸潤、転移に関与しているものと考えられている。本研究は、消化器癌手術切除標本を用いて、免疫組織化学染色法及びin situ hybridization法により、u-PAを中心とする線溶因子の発見と局在及びその臨床的意義について検討した。その結果、ヒト消化器癌において、u-PAは癌細胞自身が産生しており、その発現率は、食道癌で15例中1例(6.7%)と低く、胃癌では111例中44例(39.6%)、大腸癌で145例中48例(33/1%)であった。さらに、大腸癌u-PA陽性症例では有意にリンパ節転移率が高く、また、胃癌及び大腸癌のu-PA陽性症例で、5年生存率は各々有意にu-PA陰性症例と比し低かった(51.0% VS 77.5%:胃癌、60.2% VS 80.9%:大腸癌)。一方、u-PAの抑制因子である plasminogen activator inhibitor(PAI)の免疫組織化学的検討では、大腸癌において癌細胞周囲近傍の線維芽細胞に、PAI-2は胃癌、大腸癌において癌細胞自身に局在していた。さらに、PAI-1は大腸癌のリンパ節転移を抑制する傾向が、PAI-2に関しては、胃癌、大腸癌の5年生存率において、u-PA陽性PAI-2陰性例が最も予後が悪く、u-PA陰性PAI-2陽性例が最も良かったことより、PAI-1、PAI-2は、癌の浸潤、転移機構を抑制する可能性が示唆された。現在、消化器癌手術は、根治性とquaality of life (QOL)の立場より、拡大あるいは縮小手術の方向にあり、その指標として、真の悪性度、つまり生物学的悪性度が求められている。そこで、術前の組織生検、あるいは手術切除標本におけるu-PA、さらにPAI-1、PAI-2の発現を組み合わせて生物学的悪性度の一指標とし、術式、あるいは術後の化学療法を含めた集学的治療を行う臨床応用が期待される。
著者
入谷 純 角野 浩
出版者
小樽商科大学
雑誌
商學討究 (ISSN:04748638)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.271-294, 2001-03-28

論説
著者
原 純輔 秋永 雄一 片瀬 一男 木村 邦博 神林 博史
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

これまでの研究の過程で、社会調査データアーカイブに関する整備体制と利用実態の国際比較を通して、わが国の現状を検討するという課題が、浮上してきた。そこで、世界最初の国勢調査実施国であり、データの整備と公開が進んでいるアイスランド国立大学およびアイスランド国立博物館における聴取調査を実施した(秋永雄一・原純輔)。また、昨年度に引き続き、社会調査データアーカイブについてのケルン大学社会調査データ・アーカイヴ、マンハイム社会科学方法論研究所での再調査(木村邦博・秋永雄一)を実施するとともに、ケルン大学におけるセミナーに参加した。この結果についても研究会で検討を行った。その結果、「公共財」としての社会調査データという理念が、両国に共通に存在しており、わが国との大きな違いとなっていることが明らかになった。また、過去2年間の実績をふまえて、SSM調査(報告者・片瀬一男。以下同様)、国民性調査(海野道郎)、生活時間調査(三矢恵子)、青少年の性行動全国調査(原純輔)、宮城県高校生調査(神林博史)に対象を絞り、調査の概要・成果に加えて、とくにデータの保存およびデータの公開・利用可能性に焦点をあてながら研究会における再検討を行った。その結果、企画者側の調査データの公開に関する姿勢は多様であるが、とりわけ社会的評価の高い調査では、データのとりかたに独特の工夫がされていることが多く、他の研究者がそれを利用することには相当の困難が伴うことを、具体的に明らかにした。以上の成果は、現在報告論文集としてとりまとめ中である。
著者
川井 敬二 平手 小太郎 安岡 正人
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.62, no.496, pp.9-13, 1997
参考文献数
10
被引用文献数
3 1

Recently, the research field of human - sound environment system tends to be diverse including community noise, neighborhood noise and the newly advocated concept of "soundscape". But the study field seem to be confusing for lack of a framework by which studies in the field could be described totally from one viewpoint. With the framework, the direction and significance of each study could become more clear. In this paper we construct a framework for description of human-sound environment system by assembling findings from cognitive psychology. As examples of application of the framework, we make descriptions on some topics of sound environment.
著者
太田 宏平
出版者
首都大学東京
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

圏論について現代的意義のある哲学的研究を行うために論理学及び計算論の進展との関わりに注目した。categorical combinator、categorical abstract machine、λσといった、直接的に圏に関わっていた諸体系は計算を自然演繹的およびラムダム計算における正規化ではなくて式計算におけるカット除去によって捉えるという現代の潮流(それは具体的には、proof net, geometry of interaction, game semantics, pointer abstract machineを始めとする諸々のabstract machine, interaction net, 微分ラムダ計算等である。)の源となっている。2006年5月に投稿し、2007年1月に差し戻された論文「空所について」では、フレーゲの空所ないし項場所に基づく関数表現の捉え方が、上記の潮流のひとつのまとまった成果であるP.-L.Curienの抽象ベーム木の体系に近いということを指摘した。このことは、変項という一種の表現ではなくて、表現をそこにおくことのできる場所という考えに基づいて関数表現を捉えることや、フレーゲが不飽和性を本来見出すべき領域として意義Sinnの領域を挙げていることの重要性にもつながっていくことが投稿後明らかになったので、今後行う再投稿においてはこのあたりの事情も論じていく予定である。7月と11月に行った研究発表では抽象ベーム木と同様の体系であるludicsにおける証明および命題の取り扱いを、ダメットおよびマルティン=レーフのそれと比較して論じた。上記フレーゲ研究の進展に伴い、これは証明を関数のような不飽和なものとしてとらえるか、それともマルティン=レーフのように飽和した数学的対象としてとらえるかという問題であることが明らかになった。
著者
本田 智寛 村中 智彦
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.42-64, 2010

研究の目的 自閉症児を対象に、学校の朝の会場面で報告言語行動(タクト)と聞き手への接近行動のシミュレーション指導を行い、直接指導を行わない自由場面でのタクトと接近行動の形成を目指した。その中で、タクトの指導手続きやシミュレーション指導場面の役割について検討した。研究計画 ベースライン、介入1期、介入2期で構成した。場面 対象児の在籍する小学校の特別支援学級の朝の会をシミュレーション指導場面とした。登校時、20分休憩と昼休みの開始時および終了時の5場面を自由場面とした。対象児 小学校の特別支援学級に在籍する自閉症男児2名であった。介入 介入1期では、各自由場面の「○○に行ってきました」などのタクトと接近行動のシミュレーション指導を朝の会で行った。介入2期では、朝の会場面でのシミュレーション指導の中で、タクトに先行する聞き手への接近行動を高めた手続きを分析し、「行ってきましたカード」などの手続きを自由場面に導入した。行動の指標 タクトの正反応と単語反応の生起を測定した。接近行動をプロンプトレベルで評価した。結果 介入1期では、タクトは生起したが、接近行動の遂行は高まらなかった。介入2期では、接近行動の遂行レベルの向上が認められた。結論タクトにおける接近行動の重要性とシミュレーション指導を行う授業場面の生起条件の分析としての役割が示された。
著者
金保 安則 横関 健昭 船越 祐司 長谷川 潤 杉本 里香
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

低分子量G蛋白質Arf6を介するシグナル伝達機構とその生理機能、およびそのシグナル伝達の破綻に起因する疾患との関連の解明を目的として、分子・細胞・個体レベルで解析を行った。その結果、(1)Arf6はリン脂質キナーゼPIP5K・を活性化して神経スパインの退縮を制御していること、(2)Arf6は、肝臓の発生と腫瘍血管形成に重要であり、Arf6をターゲットとした抗ガン剤の開発が可能であること、(3)Arf6はJNK相互作用蛋白質を介して神経突起の伸長とブランチングを制御していることを明らかにした。
著者
長谷川 潤
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2)の合成酵素であるホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼ(PIP5K)の2つのアイソザイムPIP5K_AおよびPIP5K_Bのノックアウトマウスを作製したところ、これらの酵素が精子形成に必須であることが分かった。また、2)エタノールアミンキナーゼ-1により合成されるホスファチジルエタノールアミンが、神経突起の伸長において重要な役割を担っていることが分かった。
著者
矢野 秀武
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
no.7, pp.111-131, 2001-06-17

本稿は、タイにおいて巨大な寺院組織(教団)へと拡大してきたタンマカーイ寺およびタンマカーイ財団をとりあげている。1970年代初頭より活動を展開しているこの教団は、独特な瞑想実践の思想、マスメディアの使用、大規模な建造物の建立、大々的な教団イベントの実施、過剰な献金要求などから問題視され、1998年末から批判が高まり、タイ仏教史上重大な社会問題となっている。本稿では、そのようなタンマカーイ問題を直接は扱わないが、この問題の背後にある消費社会と宗教の接点からタンマカーイ寺と財団の特質を明らかにする。対象としては、瞑想実践、教団イベント、マスメディアの介在と、消費的な宗教行為の連関を取り上げる。そして彼らの宗教的な自己構築と自己表象の営みが、都市部の高学歴層が直面している、生産と消費の心性の急速な形成、消費社会と公的な仏教道徳の矛盾等の問題を、独自の形で乗り越える試みであることを明らかにする。
著者
小野里 光広
出版者
京都学園大学
雑誌
京都学園法学 (ISSN:09164715)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.1-17, 2009-10-20
著者
木原 高治
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.205-210, 2010-09

フィリピン会社法は,母法アメリカ会社法と同様に会社の権利能力範囲内の行為として慈善,学術,教育等への寄付を認める一方で,母法と異なり政治献金は会社の能力外の行為として禁止している。一般に,会社の政治献金は公法により制限されており,フィリピンのように会社法により政治献金を直接規制する例は他になく,わが国の会社法研究上において示唆に富むものであると言える。The Corporation Code of the Philippines provides that corporations may make reasonable donations for public welfare, charitable, cultural, scientific, civic or similar purposes in the provision of Corporation Laws of the US. However, it also provides that corporations shall not give donations to any political party or candidate for the purpose of partisan political activity. This provision has originality and it is very significant to rethink the legal problems of political donations by business corporations in Japan. This paper shows the content and meaning of the provision and necessity to adopt such a provision into the Company Law of Japan.