著者
辻本 哲郎
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近年,河川整備は治水・利水・環境のいずれの機能も等しく向上させるという理念で行なわれるようになりつつある.すなわち多機能水路が目指されるが,それぞれの機能が充分発揮できるように水流を的確に制御する技術の開発・確立が望まれている.本研究ではとくに斜め桟粗度によるら旋流制御と植生帯を利用した横断混合促進を中心に多機能水路設計に必要な現象理解と記述・予測をめざし,室内実験,野外計測,数値解析の3つのアプローチを採用した.斜め桟は底面あるいは側岸に設置されるが,適当な間隔で設置された場合,流下方向に均質な乱流が形成される.桟が斜めに配置されることにより,抗力に横断方向あるいは鉛直方向成分が出現し,これが2次流を駆動する.抵力とそれによるエネルギー損失を局所的に平均化した力と乱れエネルギー生成として取り込んだ数値解析で現象を記述できることを計測結果と比較して示し,桟の配置と流れの関係を予測できるようにした.底面・側岸の斜め桟はストリーム型魚道の阻流板に相当し,魚道の設計への応用も示した.魚道はストリーム型にかかわらず典型的な機能型水路で,従来のその設計は経験式や模型実験に頼っていた.ここでは各種ストリーム型魚道,バ-ティカルスロット魚道について数値解析法を提案し,これによって標準型でない魚道も容易に工夫・設計できるようにした.一方,植生帯は横断混合を促進し,主流部の濁質を植生帯に引き込んで,主流の清浄化に役立つ.こうした効果を利用するため水路に植生帯を配置することを考えると,植生帯流入部から従来よく知られた植生帯を伴う平衡流れ場までの遷移距離の推定やその過程での流れの変化や浮遊砂の挙動を知る必要があり,室内実験・野外実験・数値解析を行なってそれらを調べた.
著者
原島 秀人 神田 明延 佐藤 慎一 山内 真理 ローソン トム
出版者
前橋工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

複数のオンライン学習管理システム(LMS)をつなぎ合わせることによって,異なる大学に学ぶ学生達がそれぞれのeラーニング環境を離れることなく交流や恊働学習活動ができる環境を模索して来たが,本研究ではそこにマルチメディアプラグインを組み合わせ,音声やビデオを含んだプレゼンテーションの交換と相互評価の実践を試みた.また,学習ツール相互運用性(LTI)の応用を試み,LMS間で学習成果を自動的に共有する仕組みを作り,オンライン教材やプロジェクトの共有可能性を広げることができた.本研究の成果は2014年度の日本e-Learning大賞「ニューテクノロジー賞」の受賞という評価を受けた.
著者
藤原 英史
出版者
ドキュメンタリーチャンネル
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究計画に基づき、平成25年の夏期から秋期にかけて、ヒメイカの飼育・観察を行った。ヒメイカが水槽内で産卵する様子をハイビジョンカメラと特殊なマクロレンズで、超拡大撮影し、それに成功した。これまで、イカの産卵行動において、メスが産卵の過程のどのタイミングで卵と精子を受精させているのかは不明であったが、本研究で得られた映像から、卵を保護するための卵ゼリーの中に卵を産み込んだ直後に、メスの口部周辺にある貯精嚢を卵ゼリーに押しつけるような行動をとり、この時に卵ゼリー内に精子を注入し、最後に、口でゼリーの穴を閉じることが明らかになった。このような行動をとることで、体内に貯めた限られた量の精子でも、確実に受精させることが可能になると考えられた。また、受精卵にヘキスト染色を施し、卵割する様子を微分干渉顕微鏡および蛍光顕微鏡でライブセルイメージングを行った。これまで、イカ類において、一つの卵の卵割の様子を連続的に記録し、細胞運命を追った研究はほとんどなかった。そのため、卵割で殖える細胞がどのような過程を経て組織や器官になるのかを詳しく知ることはできなかった。今回、受精直後のヒメイカ卵のヘキスト染色の方法を確立することができた。そして、8細胞期から覆い被せが始まる、2日後くらいまで、細胞の核の位置を映像で追跡することができるようになった。その結果、細胞の移動は、予想していたよりも少ないことが明らかとなった。平成25年7月に行ったアオリイカの産卵行動の観察は、産卵期のアオリイカが隠岐ノ島周辺の海域に現れる個体が例年よりも少なかったため、産卵行動を撮影することができなかった。
著者
森 公一 真下 武久 二瓶 晃 砥綿 正之 精山 明敏
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、脳波測定実験によってヒトの快・不快情動を検出する方法を探るとともに、この実験結果をふまえたメディアアート作品《rendezvous》を制作・発表した。作品は、二人の鑑賞者を対象に、色彩と音響の変化を与えるものである。鑑賞者の頭部に脳波測定装置を装着し、刻々と変化する脳波パターンを測定。それぞれの脳波パターンから情動の判定を行い、快情動が得られた場合、その時に提示している色や音を継続させる。一方、快情動が検出されない場合には、PCによって色と音のバリエーションをランダムに選択し、再び快情動が確認されるまで提示し続けるシステムを構築した。
著者
佐藤 政良 NIYAMAPA Tan BAHALAYODHIN バンショー 佐久間 泰一 真板 秀二 小池 正之 BANSHAW Bahalayodhin TANYA Niyamapa NIVAMAPA Ton VUDHIVANICH バラウト PONGSATORN S TANYA Niyama VARAWOOT Vud JESDA Kaewku BANSHAW Baha 杉山 博信
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

戦後に建設されたタイ中央平原における近代的灌漑システムの現状を末端農村レベルまで調査し、独立的といわれるタイ農民の協同的水管理行動について検討した。チャオブラヤ川流域における乾期の絶対的水不足環境の下で、政府の努力に関わらず、Water Users′Group(WUG)が十分に機能せず、とくに乾期の水配分が政府の意図通り計画的に実施できていないことを明らかにした。末端レベルでは、圃場条件に応じた水管理が行われ、用水配分は一般に上流有利になっていて、水条件のよい農民だけが3期作を実現できる。用水確保のため、必要な限りではあるが協同で水路維持事業を実施している。圃場整備実施に対しても、村としての事業参加が見られ、大半の農民が参加している。しかし道水路密度,換地方法,不賛同者地区除外の仕方などに日本との違いがあることが指摘された。補助金等の政策技術によって、WUG活動へのインセンティブを高めることが必要である。中央平原稲作地帯における大型トラクタ走行の阻害要因であるBangkok clayey soilに対する動力学的試験を行い、繰り返しねじりせん断試験における繰返し回数の増加につれて、ねじりせん断ひずみと間隙水圧が増加することを見いだした。乾燥密度と載加周波数がねじりせん断応力に及ぼす影響も明確になった。流域保全に関しては,メクロン川流域における土壌侵食および浮遊土砂流出と流域特性を解明するため、(1)流域および降雨特性、(2)タイの他諸河川との比較によるメクロン川の浮遊土砂流出特性、(3)浮遊土砂流出量推定式、(4)支流のクワイ・ヤイ川、クワイ・ノイ川およびランパチ川の浮遊土砂流出特性,の検討を行い、流域上流部に対して下流部の方が浮遊土砂のより大きな供給源になっていることを明らかにした。流域の長期的・持続的利用にとって、開発農地における土壌流亡対策の実施が重要であることを指摘した。
著者
佐野 信雄 森田 一樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

平成7年度は、既存の500W、2.45GHzの電子レンジでCaO,SiO_2,Al_2O_3,FeO,Fe_2,O_3等の各種酸化物の加熱挙動を予備実験として把握した後、1.6kWのマイクロ波加熱装置と温度測定系のセットアップを行い、模擬転炉スラグ(CaO-SiO_2-Fe_tO系)のマイクロ波照射による加熱挙動を調べ、スラグ自身が加熱されることと、加熱挙動が鉄の価数すなわち析出結晶相の種類に大きく依存することを明らかにした。スラグ中に析出する相の中で最も加熱の寄与が大きいのはCaFe_3O_5であり、誘電損失値も最大であった。平成8年度は同スラグからの鉄の回収やりんの除去を念頭において、炭素共存下でのマイクロ波による加熱挙動を調べると共に、スラグ中の鉄やりんの挙動について検討を行った。マイクロ波の照射により約4〜6分で試料は1700℃に加熱され、炭素の含有量に伴い加熱速度は増加した。また、加熱試験中にスラグ中のFe_tOがグラファイトにより還元され、Fe-C合金相がスラグ下部に生成した。試料中Fe_tOの還元に必要なC量に対するC添加量をC当量とすると、C当量の増加と共にスラグ中に残留するFe量は減少し、C当量が1.5以上ではスラグ中の残留Fe濃度は2mass%以下であり、金属Feの回収率も90%以上に達している。また、C当量1以上では50〜60%のりんがFe-C合金中に還元されて移行するが約20%は気相中に除去されたものと考えられる。従ってスラグ中には15〜20%程度のみのりんが残留した。以上の結果により、炭素共存下での模擬転炉スラグのマイクロ波による加熱が確認され、鉄源の回収およびスラグ中からのりんの除去の可能性が示され、転炉スラグ、ダストの再利用および鉄、りん資源回収システムが提案された。
著者
江口 亨
出版者
横浜国立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、改修された建物を対象とし、寿命を決定づけた物理的、社会的要素を分析して、長寿命化のための維持改修プロセスに必要な事項の整理である。明らかになった課題は、物理的要素について、既存ストックの情報を集約し管理していない点、外装材を交換できるよう設計しても施工精度が高い必要がある点などがある。また、社会的要素については、改修を行う事業者は、これまでとは異なるサービスも提供する必要がある点、個人的なつながりが改修の機会を増やす点などがある。
著者
田川 まさみ 村永 文学 網谷 真理恵 元日田 和規 貴島 沙織
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

医学部教育における医学生の成長を、卒業前の学生の意識と臨床実習前の振り返りの記載より明らかにし、関連する学生の経験を検討した。1から4年次の振り返りの解析では、医療面接のロールプレイ、医療現場でのロールモデル、患者との経験がプロフェッショナル・アイデンティティ獲得のきっかけとなっていた。卒業前の学生の多くは不安や両価的感情を持っていた。臨床実習での診療への貢献、患者からの感謝の言葉が学生のポジティブな感情に関連しており、ロールモデルとの経験が学習成果を学生が実感することに関連していた。十分な経験をできる教育プログラムと経験から学び取る振り返りの重要性が明らかとなった。
著者
外間 ゆき 東盛 キヨ子 金城 須美子 桂 正子 宮城 節子 尚 弘子 福田 亘博 知念 功 玉那覇 直
出版者
琉球大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1985

1.研究目的 昭和60年ー63年度の4年間、沖縄の長寿者の食生活と生活状況について聞き取り調査を行ない、その利用食品の中から特徴のあるものの食品分析と動物実験による生理的効果を検証して、長寿と食生活との関係を考察することを目的とした。2.方法 (1)聞き取り調査は80歳又は85歳以上、総数168人、本部町・与那城村・知念村・那霸市・粟国村・伊江村・伊是名村の7地区で家族構成、日常生活、食生活、栄養素・食品摂取、身体状況について行った。(2)食品分析は豚肉、海藻、味噌の一般成分、微量成分について行った。(3)動物実験は豚肉料理、海藻、茶を飼料として脂質代謝への影響をみた。3.結果 沖縄の長寿者達は転居が殆んどなく、持ち家率が95%と高く三世代同居が多く、家族にも長寿者が多かった。日常生活においては睡眠を充分とり、軽労又は運動を積極的に継続し、精神的なゆとりを持つよう心がけ、食事は一日三食、腹八分を心がけ、過度の飲酒、喫煙をつつしんでいた。栄養素摂取率では所要量に対し、エネルギーは80ー86%、たんぱく質は73ー81%でビタミンAとビタミンCは100%を超えて摂取していた。食品群別摂取量は穀類、野菜類、大豆製品、魚介類の順に多かった。穀類エネルギー比は50ー53%で脂肪エネルギー比は25ー26%であった。豚肉料理志向は強い。ゆでこぼし、あく取りを行う長時間加熱調理によって豚肉の脂質、コレステロール量は減少した。脂肪酸組成はパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸が主であった。動物実験により"アシティビチ","中身の吸物"には脂質代謝改善効果のあることがわかった。ひとえぐさはβーカロチン、ビタミンCを含み抗酸化性が期待され、おごのりには脂質代謝改善効果が期待される。そら豆及びそてつ味噌のアミノ酸組成は普通味噌に比べて劣らなかった。香片茶にも脂質代謝改善効果が期待される結果を得た。
著者
岡 孝 朴 仁煥 諸 哲雄 尹 泰永 申 政武 張 学軍 馬 新彦 李 国強 黄 詩淳 蘇 恵卿 TAUPITZ Jochen KUNZ Jurgen BIDERBOST Yvo
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

①日韓台湾ともに(中国梁慧星第二草案も)、法定後見の中の特に成年後見類型では被後見人の能力を制限しているが、2008年の国連障害者権利条約との関係では検討しなおす必要がある。改革の方向性はいくつか考えられるが(「相対的意思能力」概念に依拠して、「意思無能力者の行為は無効である」というルールを活用することなど)、なお十分には立論が詰められていない。②医療行為の同意については、韓国新民法(家庭法院の許可)が日本の立法論としても参考になろう。③任意後見については、2013年から施行されているスイス成年者保護法の「事前支援委託」が参考になる(法定後見と任意後見を併存させている)。
著者
田中 秀逸
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本課題の目的は、我々が開発した非相同末端結合能欠損株を用いた植物細胞における高効率遺伝子ターゲッティング法に関して、遺伝子機能解析や育種への応用への有効性を示すことであった。特定の蛋白質へのタグ付けを行うための遺伝子導入用コンストラクトを作製したが、耐性を獲得したカルスは得られていない。RNAiによりKU70量を抑制した野生型細胞の作製を試みたが、形質転換カルスが得られないでいる。得られ次第ターゲッティング実験を行う。T-DNAによる高効率な細胞内への遺伝子導入法との共用の検討はできなかった。本研究で使用したカルスは、培地の植物ホルモン組成を変えることでシュート形成することを確認した。
著者
藤井 龍彦 熊井 茂行 加藤 隆浩 友枝 啓泰
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

3年計画の調査の最終年度である本年度の現地調査は、短期間の補充調査にしぼった。調査の中心は、2002年秋に行われた全国的地方選挙に関して、クスコ県の地方都市のケースを具体例として、決起大会にはじまり、政策綱領の策定、選挙終了時の総括、評価、活動記録など、地方における選挙活動の実態に関する録音テープによる記録を分析し、それらのデータに基づいて現地研究協力者と意見を交換した。さらにその他のインタビュー資料も併せて、ペルーの地方政治の実態を分析した。分析結果は、現在まとめつつある、これまの分析で、都市・農村を問わず、住民の政治意識はかなり高いこと、その際の基準はあくまでも自分たちの利益にかなうかどうかであること、つまり、農民の場合、低利の融資、トラクターや肥料・農薬などの安定した供給などであり、都市住民の場合、雇用の確保、道路の建設、公設市場の運営などにある。結果として、前回の選挙もあいかわらず利益誘導型の金権選挙が幅をきかせ、一方で教会を中心とした既成の権力の介入を止めることができなかった。
著者
西田 憲司 岩永 恭雄 二宮 晏 山形 邦夫 越谷 重夫 平野 康之 藤田 尚昌
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ホップ代数が作用する環について研究した。特に環上の加群の伴う素イデアルの不変性を研究した。Auslander公式の一般化を行った。更に、その証明の過程で得られたExt群、転置関手、シジジーからなる短完全列がある種の双対関手で記述できることを観察し、それにより加群のlinkageに関する新しい定式化を得た。この結果を可換ゴレンシュテイン局所環に応用することによって、有限生成加群が極大コーエンマコーレーになるための必要充分条件はその加群のlinkage加群が極大コーエンマコーレーかつその加群が水平linkagedになることを示した。ハッセ原理をみたすある種のp群を全て決定した。また、Hecke環の可換性を指標を通して考察し、ある群Gがp-ベキ零群で、そのシロ-p-部分群Hの位数がpの場合にHecke環が可換であるための素数pに対する条件および群Gの構造を全て決定した。体上の有限次元多元環で自己入射的なものについて、反復多元環によるガロア被覆を持つ場合の性質を研究した。一般標準的なARクイバーを持つ自己入射多元環の決定や、自明拡大多元環上の加群と反復多元環上の加群の関係を研究した。可換な3不足群を持つ主ブロックにたいし、ドノバン、ブイグ予想を肯定的に証明した。有限群のモジュラー表現の現在最も重要な問題ブルエ予想についての成果を上げた。具体的には、有限群のシロー部分群が位数9の基本可換群の場合の主ブロックに対して、ブルエ予想を完全に解決した。その後、同じ位数9の群を不足群にもつ非主ブロックに対して、考えている群が特別の重要な幾つかの離散的有限単純群の場合に、ブルエ予想が正しいことを証明した。環Rの任意の剰余環が右アルチン的にならないこととR上の組成列を持つ任意の右加群が巡回加群になることが同値を示した。そして、この同値条件が有限正則拡大、森田同値で不変なことを示した。大きいglobal dimensionを持つタイル整環を半完全環内のneat idempotentに着目して研究し,新たな視点を得た。応用として特に,Jansen-Odenthalの例を概念的に改良した。構造系により定義される全行列代数について、フロベニウス全行列代数を詳しく研究し、ゴレンシュテインタイル整還との関係を決定した。
著者
五関 正江
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アルカリホスファターゼ (ALP) はリン酸エステルを加水分解する反応を触媒する酵素で、骨型ALPは石灰化との関連が深い。骨量は食生活等の環境因子と複数の遺伝因子によって決定される。本研究では、本酵素の遺伝子発現と加齢・老化や栄養因子との関連について検討を行い、リン酸代謝を含めたミネラル代謝等に関する有用な結果を示唆することができた。すなわち、実験実施計画に従って、骨量調節に関与するALPや骨代謝等への各種栄養因子(ビタミン、高脂肪食など)の影響を検討し論文に報告した。さらにヒトを対象とした栄養素等摂取状況と骨量測定、骨型ALP、遺伝子多型等との関連についても詳細な解析を行って論文に報告した。
著者
太田 至 島田 周平 池野 旬 松田 素二 重田 眞義 栗本 英世 高橋 基樹 峯 陽一 遠藤 貢 荒木 美奈子 野元美佐 山越 言 西崎 伸子 大山 修一 阿部 利洋 佐川 徹 伊藤 義将 海野 るみ 武内 進一 武内 進一 海野 るみ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

現代のアフリカ諸社会は、紛争によって疲弊した社会秩序をいかに再生させるのかという課題に直面している。本研究では、アフリカ社会には人々が紛争の予防や解決のために自ら創造・蓄積し運用してきた知識・制度・実践・価値観(=アフリカ潜在力)が存在すること、それは西欧やイスラーム世界などの外部社会との折衝・交渉のなかで不断に更新されていることを、現地調査をとおして実証的に明らかにした。本研究ではまた、「紛争解決や共生の実現のためには民主主義や人権思想の浸透がもっとも重要である」といった西欧中心的な考え方を脱却し、アフリカ潜在力は、人々の和解や社会修復の実現のために広く活用できることを解明した。
著者
坂上 潤一 伊藤 治 生井 幸子
出版者
独立行政法人国際農林水産業研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

西アフリカのギニアをモデルに、数年間の品種比較試験を通して、天水低湿地水田の収量形成要因の特定と環境型と遺伝子型の交互作用の解析を行い、対象地域の環境に適応した品種群を明らかにしようとした。その結果、収量形成に及ぼす最も重要な形質は、環境にかかわらず登熟歩合であった。全期間、サイト、品種の登熟歩合と収量の相関係数はr=0.743(P<0.001)となり、極めて高正の相関が認められた。さらに、収量は1穂籾数とも相関があり(r=0.419(P<0.001)、1穂籾数の増加は収量向上に影響を及ぼしていると考えられることから、対象の天水低湿地水田全般においては、穂数よりも穂重の特徴のある草型がより適性が高いと言えるが、収量は環境によって変動しており品種の環境への評価を詳細に進める必要があろう。次に、環境型・遺伝子型の交互作用を解析によって、異なる環境に対する品巣の一般適応性が明らかになった。そのような品種群は環境の良否にかかわらず講習を示す品種であり、本研究においては西アフリカで伝統的に栽培されているGambiakaとアフリカライスセンターで高収量を目的に育種されたアジアイネとアフリカイネの交雑種NERICAと呼ばれる系統のWAB1159-2-12-11-2-4などが、供試品種の中ではより一般適応性が高いと考えられた。これら品種はいずれも登熟歩合が高く、収量の回帰係数が1に近く、回帰の残差分散も小さい特徴を示した。
著者
平林 あゆ子
出版者
名古屋女子大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1.障がいを理解するための絵本(以後「絵本」)を幼児教育・保育を志望する学生、現役の保育者、障がい児の保護者らと共に制作した。それらの「絵本」は、(1)「たいせつなあなたへ(14頁)2007」:ダウン症をもつ保護者の気持ちの理解、(2)「かみさまのおくりもの(18頁)2007」:ダウン症児の理解(3)「じゅんじゅん(24頁)2007、改訂版(20頁)2008.自閉症の理解とその支援」、(4)「たっくん(20頁)2008:自閉症の理解と友情」、(5)「ともだち(24頁)2008:自閉症の理解」、(6)「こえのおんど(24頁)2008:学生の障がい理解の過程」である。2.上記の(1)から(5)の「絵本」をインクルーシブ保育・教育に効果的に役立てるために、9ヵ所の保育園の年中・年長クラスで読みきかせの後、園児による描画とインタヴュー(録画)、保育士へのインタヴューと質問紙により効果測定を試みた。いずれも自分とは異なっている子どもに関心をもたせる事に役立つ事が期待できる結果であった。「絵本」の読みきかせの効果的な方法も園児や保育士の反応を検討し、読みきかせの実践に役立つようにまとめた。3.「絵本」の制作をとおして、幼児教育・保育課程における障がいと障がい児理解を援助する教育プログラムを試作した。違いを認識し障がいを理解していくには段階がある。障がいの理解とは、障がいを適切に受けとめていけるようにすることはもちろん、まず自分と他の人々との「違い」というものを理解することが必要である。この違いの理解が人間理解の深化につながるものと思われる。
著者
成松 美枝 菅野 文彦 梅澤 収 山崎 準二
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は「高い適格性を持つ教師(Highly Quality Teachers)」を確保するためにアメリカの大学は教師教育においてどのような改革を進めているのか、その実態と評価を明らかにすることを目的とした。ウィスコンシン州立大学を事例にして以下の事項を分析・評価した。(1)教員養成のカリキュラムと「修了認定の学生評価」の実態と効果 (2)「教員免許の更新」に際して各教員が大学で行う「単位取得(6単位)」と「職能成長計画」に対する大学の支援体制 (3)他州の大学との比較の上で、ウィスコンシン州立大学の教員養成と研修への支援体制を総合評価した。
著者
小野 伸一郎
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は現在までに活躍した女子長距離選手を対象に,選手のBMI(Body Mass Index)と競技記録の関係分析から競技記録が最も高くなるBMI(至適BMI)を推定し,女子長距離選手のウエイトコントロール指標の提案を行うことを目的とする.本年度に得られた成果の概要は以下のとおりである.なお,成果(1)については高校女子選手を,成果(2)については中学女子選手を対象とした.成果(1):高校女子の800mから5000mまでの競技においては,競技距離の延長に伴いBMIの影響が大きくなり,等確率楕円より推定した至適BMIは,800mでは17.5,1500mでは17.6,3000mでは17.0,5000mでは16.8を示し至適BMIは小さくなる関係が示唆された.高校女子中長距離種目には,それぞれ競技成績を最もよく引き出すことのできる至適なBMIが存在するのではないかと考えられる.成果(2):中学女子の等確率楕円より推定した至適BMIは,800mでは17.4,1500mでは17.2であった.また,BMIと最高記録との関係による回帰分析より推定した至適BMIは,800mレースでは17.5,1500mレースでは17.8であり,中学女子種目にも競技距離ごとの至適BMIが存在する可能性が示唆された.計画にあげた「女子マラソン選手の至適BMI推定」については平成12年度に成果発表をおこなう予定としている.また,「BMIと体脂肪率との関係分析」に関しては現在データ収集している.
著者
佐々木 晶子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

河口干潟の高い生産性を支える有機物源の一つとして陸上植物の落葉に着目し、その分解過程と大型底生動物による利用状況の解明を目的とした。野外調査と室内操作実験からは、河口干潟に供給された落葉が比較的速やかに分解されることが示された。また、現地に試験的に設置した落葉には、特定の動物群の出現が確認された。これらの大型底生動物が落葉を摂食している可能性を検討した結果、餌資源としての寄与は小さいことが明らかとなった。以上のことから、河口干潟では供給された落葉の滞留は長期には渡らないが、ある動物群に生育場所を提供している可能性が示された。