著者
山口 佳昭 中川 晃 渡邊 英昭 久門 良明 榊 三郎 佐々木 潮 畠山 隆雄 西原 潤 麗 憲行
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.10, pp.672-678, 2000-10-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
21
被引用文献数
1

脳室内に限局した出血で, 出血源が不明であった原発性脳室内出血(PIVH)15例について, 臨床症状, 治療および予後について検討した.対象症例の平均年齢は62.2歳で, 65歳以上の高齢者が約半数を占めていた.神経学的局所症状を示す症例はなく, 主たる症状は意識障害で, 脳室内出血の程度に比例して増悪傾向を示した.特に第3または第4脳室に鋳型状血腫が存在する症例では, 意識障害が高度であった.年齢や既往歴の有無と重症度との関連性は認められなかった.7例に脳室ドレナージを行い, うち2例にはウロキナーゼを脳室内に投与した.経過中に合併症を併発した2例以外は良好な転帰であった(GR9例, MD4例).脳室内出血の程度と転帰には相関はなかったが, 第3ないし第4脳室に血腫が充満する症例では転帰不良の傾向があった.また高齢者であっても比較的良好な転帰であり, 年齢は予後不良因子ではないと考えられた.以上の結果から, PIVHでは出血量が多い重症例や高齢の症例であっても, 積極的な治療を行うことで良好な予後が期待できると考えられた.
著者
中川 隆之
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.210-216, 2017 (Released:2019-02-13)
参考文献数
19

近年、内耳保護、再生に関連する基礎的研究の進捗に伴い、感音難聴に対する創薬研究が注目されている。感音難聴は、頻度の高い身体障害として知られているが、感音難聴に対し、米国食品医薬品局が認める薬物は存在しない。突発性難聴は、感音難聴の中では頻度の低いものであるが、診断、治療に関する臨床研究の蓄積があり、新規治療薬の対象疾患としての条件は比較的整っている。本総説では、感音難聴治療開発の現況、インスリン様細胞増殖因子1局所投与による突発性難聴治療に関わる基礎的研究、臨床研究の概要について述べ、薬事承認に向けた今後の展開について展望する。
著者
水野 学 中川 充 石田 大典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.18-29, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
24

本研究の目的は,ハードウエア・スタートアップ企業(以下,HWSU)が創業前後に直面する「あいまいな問題」とその「解決行動」,ならびにその背景にある「支援」のあり方について,事例分析を通じて検討することである。HWSUは,開発しようとする製品やサービスの大まかな方向性を決める「機能デザイン」と,それを具現化させるための「技術デザイン」という2つの側面において,多くの「あいまいな問題」を抱えている。しかし,十分な経営資源や専門知識を有しないHWSUがそれに単独で対処することは難しく,適切な支援が必要となる。そこで本研究では,DMM.make AkibaというHWSU支援組織に焦点を当てる。この組織が提供する2つの支援は,HWSUの成長に貢献している。すなわちテックスタッフは,開発目標とロードマップの重要性を示唆することで,技術デザインに関する本質的な問題の発見に,そしてコミュニティマネージャーは会員と支援企業を1つのコミュニティとして活性化することで,機能デザインに関する重要な問題の再認識に寄与している。
著者
末廣 吉男 森谷 裕司 山口 京子 夏目 恵美子 井上 保介 武山 直志 中川 隆 野口 宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.375-379, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
8

近年,臨床検査関連団体や学会が認定する専門臨床検査技師制度の普及により,専門分野に特化した臨床検査技師が増加している。しかし,救急医療に関連した専門臨床検査技師制度の整備は遅れている。当院では,緊急検査担当の臨床検査技師が救急蘇生外傷治療室にて検査関連業務を実施することで,医師による検査依頼から結果確認までの時間(TTAT:Therapeutic turn around time)を従来と比べ約22分間短縮した。救急蘇生外傷治療室における初療時検査は,病態把握や治療方針決定のために実施されるものであり,医師が最も必要としている検査結果を推測し,的確な検査項目について結果報告することが重要である。これらを実践するため,救急医療に携わる臨床検査技師にはさまざまな疾患に対応するための幅広い臨床検査知識や技術のほかに,救急医療の基礎知識および技術の習得が必須であると考える。救急医療における臨床検査技師の専門性とは,積極的に救急医療の現場へ介入して検査関連業務を実施し,検査依頼から結果確認までの時間を短縮するとともに,医師や看護師が本来業務に特化できるように業務支援することであると考える。
著者
阿南 豊正 高柳 博次 池ケ谷 賢次郎 中川 致之
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.56, pp.65-68, 1982-12-01 (Released:2009-07-31)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

緑茶貯蔵中の脂質含量:の変化を明らかにするため,貯蔵条件の異なる4種類の試料,すなわち荒茶を-70℃で18ヵ月貯蔵したもの(試料A,対照区),25℃で3ヵ月貯蔵後-70℃で15ヵ月貯蔵したもの(試料B),25℃で6ヵ月貯蔵後一70℃で12ヵ月貯蔵したもの(試料C),25℃で18ヵ月貯蔵したもの(試料D)の脂質を定量し,次のような結果を得た。1. 各試料について官能検査を行った結果,試料Aは新茶とあまり差がなかった。一方,試料Cおよび試料Dは変質程度が大きく飲用不適と判定された。2. 試料Bは試料A(対照区)に比べて全脂質含量で約10%減少し,試料Cは約20,0fib少した。一方,試料Dは試料Cよりほんのわずか減少する程度であった。3. 各脂質画分別にみた場合,25℃での貯蔵期間の増加につれて減少傾向が比較的はっきりしているものは糖脂質であり,中性脂質とリン脂質は減少傾向が小さかマた。又,個々の脂質別では,減少傾向が比較的大きかったものはMGDG,DGDG,SQDG,PCであった。終わりに,本実験を行うにあたり,御指導を頂いた当試験場古谷弘三前場長,坂本裕製茶部長ならびに官能検査をお願いした製茶第3研究室の方々に深く感謝致します。
著者
堀内 昭作 湯田 英二 中川 昌一 森本 純平 我藤 雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.225-235, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

‘ハヤシ系ウンシュウ’に‘セキトウユ’, ‘バレンシアオレンジ’, ‘ダンカン’グレープフルーツ, ポンカン, ‘セミノール’の5種•品種を交配し, 得られた種子の形状の差異により, 発芽可能な受精胚を含む種子を識別する方法を確立した.受精胚を含む種子の形状の特徴は, 扁平で凸凹が少なく, 比較的大きく充実していた. 胚の特徴は1種子内に1~数個存在しており, 種皮の縫線と2枚の子葉の合一する線とが一致し, 珠心胚の子葉とは異なる色を呈するものが多い, などである.どの五つの交配組み合わせにおいても, この特徴を持つ種子が存在した. また, 胚数には花粉親の影響が認められ, とくに, ‘セキトウユ’にその影響が強かった.これらの種子より生じた実生の葉の形状を珠心胚実生の葉と比較検討したところ, 明らかな差異が認められ, 交雑実生であることが確認できた.‘バレンシア’オレンジを母本に同様に5種•品種を交配した場合には, この特徴を持つ種子は出現しなかった.さらに, 32種•品種の自然受粉した種子について, 同様の特徴のある単胚種子の出現を調査したところ, 種•品種により大きな差異が認められたので, これらの品種をA型(単胚率10%以上), B型(単胚率0~10%), C型(単胚率0%)の3型に分類した.AおよびB型の種•品種は, 本研究で開発した種子の形状による受精胚を含む種子の選抜法を利用すれば母本として育種親に用いることが可能である.ウンシュウミカンを母本に用いた本実験では, この方法を用いることにより, 5交配組み合わせの種子662個から119個の交雑実生を得ることができた.
著者
中川 美恵 栢下 淳
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.465-471, 2023 (Released:2023-09-01)
参考文献数
28

介護老人保健施設入所者を対象に、身体計測、食事形態、握力や歩行能力、口腔機能調査を行い、常食摂取と関連のある要素について検討を行った。本研究は横断研究である。対象者73人の属性は平均年齢82.3±8.2歳、男性20人(27.4%)、女性53人(72.6%)であった。常食群と形態調整食群の2群に分けて検討を行った結果、常食群でBMI、上腕三頭筋皮下脂肪厚(Triceps Skinfold Thickness;TSF)、握力が高く(p<0.05)、咀嚼能力が良好な者の割合が高かった(p<0.05)。歩行能力別の比較では、歩行能力が低下するにつれて、常食摂取者の割合が低下し、形態調整食摂取者の割合が増加した。常食摂取と関連のある要素として、咀嚼力や舌圧値等の口腔機能と握力および歩行能力が示唆された。また、ADLの低下に伴い、食事形態も軟食化傾向となり、栄養状態の低下につながることから、多職種と連携して、口腔機能や筋力の維持に努める必要がある。さらに、形態調整食群ではエネルギー摂取量やたんぱく質量を確保する必要性が示唆された。
著者
中川 和明
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.44-63, 2023-07-01 (Released:2023-07-20)

NHK放送文化研究所は、2020年から新型コロナウイルスに関する世論調査を毎年行っており、3回目となる2022年の調査については、感染拡大の不安やストレスなどに関する結果を『放送研究と調査』(2023年5月号)に掲載した。本稿は、それに続くもので、コロナ対策やデジタル化、コロナ禍がもたらしたものなどについて報告する。主な内容は以下のとおりである。なお、ここで紹介する調査結果は、2022年の調査時点のものである。 政府のコロナ対策について『評価する』が55%で『評価しない』の44%より多いものの、『評価しない』と答えた人が前回よりも増えている。感染対策のために個人の自由が制限されることについて『許されない』と答えた人が20%で前回より増加した。いま力を入れるべきこととして、『経済活動の回復』と答えた人が60%で、『感染対策』と答えた人の39%を大きく上回った。 コロナ禍を経て様々な手続きや活動がオンラインでできるようになったが、オンラインで仕事をしたことがあると答えた人は22%にとどまり、7割の人はしたことがないと答えた。さらに、オンラインで仕事をしたことがあるのは、事務職や管理職などのいわゆるホワイトカラーで多く、年収の高い、大都市に住む人たちでよく利用されていた。一方、オンライン化の進展に関して、個人情報を把握される懸念を感じている人が7割から8割ほど、また個人情報の流出も該当者の8割ほどを占めた。 3年にわたったコロナ禍について、マイナスの影響が大きいと答えた人が74%で多くを占めたが、若い人たちを中心に、「家族と過ごせる時間が増えた」「在宅勤務など柔軟な働き方ができる」「今までと違う楽しみを見つけた」など、前向きに捉える人たちも一定数にのぼった。
著者
中川 理 赤松 加寿江 加藤 玄 野村 啓介 伊藤 毅 杉浦 未樹 大田 省一 岸 泰子 上杉 和央 中島 智章 坂野 正則
出版者
神戸女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

まず日本国内におけるテロワール調査として東京近郊における参照産品として、野田市の醤油工場見学および研究会を実施。ワイン以外にも「テロワール」の形成がどのようになされているのを検討する上で参照事例となった。将来的な成果発表を行う国際シンポジウムのため、シャンパーニュメゾンのドゥーツ社会長へプレゼンテーションを行い、11月には宇治茶の製茶会社である福寿園の担当者と研究交流会を開催した。1月には台湾調査を実施し、多様な茶生産が流通とともに変容しながらも、テロワールを構築している状況を調査することが出来た。2月には「テロワールと流通」を軸にテロワール報告会を実施。シャトー・クーテットに関する調査分析の進捗を確認し、「テロワール」形成の現場に触れ、研究を深化することができている。一方、2020年3月初めには、フランス・ボルドーのサンテミリオン調査を予定していたが、コロナ発生により断念することとなり、2020年度、2021年度に予算繰り越しにより、国外調査によらない研究活動を実施した。2020年度は研究会をオンライン中心で実施し、9月には東アジア環境史学会大会においてポスターセッション「テロワール研究」を立ち上げ、ボルドー大学のフレデリック・ブトゥル教授をコメンテーターにしたパネルディスカッションを実行することができた。2021年度には3回のオンライン中心の研究会を実施し、また2月に「若手研究セミナー」を京都で開催し、研究を深化することができた。また京都近郊和束町茶業集落および滋賀県のワイナリーの生産現場の調査を行い知見を深めることが出来た。また、国内におけるテロワールの現地調査として、九州における嬉野茶産地やワイン生産の現場の調査を実施することができ、国内外におけるテロワールの実態を把握することができた。
著者
長坂 侑里 中堀 祐香 阿部 隼人 中川 智史 山口 諭 馬場 俊見 川上 純平 山崎 武志 萩谷 功一
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.5-13, 2022-02-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
21

本研究はタイストール(TS,126,492頭),フリーストール(FS,88,851頭)および放牧主体(GZ,3,989頭)において,ホルスタイン雌牛の体型形質と在群期間(HL)の関係を調査した.データは1993から2008年の間に初産分娩した雌牛の体型審査記録から初産次の体型6形質(肢蹄得率,胸の幅,鋭角性,乳房の懸垂,乳房の深さ,前乳頭の配置)であった.各飼養形態において,体型形質におけるHLの最小二乗平均値(LSMHL)を比較した.FSとTSの肢蹄得率が高いほどLSMHLは高かったが,GZの肢蹄得率が79以下のとき,LSMHLは一定の値を示した.すべての飼養形態において,乳房が浅いときおよび乳頭が中央に位置するとき,LSMHLは高かった.FSおよびTSにおけるLSMHLは,多くの形質で近似したが,GZにおいて低い肢蹄得率でHLに大きな影響を与えない点が他と異なった.
著者
千田 厚生 中川 卓二 高野 良比古 笠次 徹
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.324-329, 1992-04-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
6
被引用文献数
5 9

The autocatalytic chemical deposition of lead has been achieved using titanium trichloride as the reducing agent. Lead film was deposited onto the non-conductive substrate to the intended thickness at a rate of 520Å/min. The optimum bath composition was; lead chloride 0.04M, trisodium citrate 0.20∼0.40M, disodium EDTA 0.08∼0.16M, NTA 0.20M, and titanium trichloride 0.03∼0.05M. The pH was 9.0 (adjusted with ammonia) and the temperature 60°C. Measurements of UV and visible absorption spectra revealed that NTA, EDTA and citric acid mainly formed complex salts with Ti3+, Pb2+ and Ti4+ respectively. X-ray diffraction analysis showed that the crystal structure of the deposited film was not affected by bath composition and plating condition.
著者
中川 毅
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.1-31, 2023-02-01 (Released:2023-02-21)
参考文献数
119

気候変動の地域による先行,遅延,あるいは同時性は,気候変動の因果関係を理解する上で,しばしばカギとなる情報を提供する.とくに,16〜10 cal. kyr BP頃に起こった晩氷期から完新世初期にかけての移行は,いくつかの急激な気候変動を含む上に情報も多いことから,気候変動の時空間構造を調べるためのターゲットとして理想的である.だが現実には,異なる地域の間で年代軸を精密に同期 (synchronise) させることは容易ではなく,気候変動のタイミング比較はほとんどの場合,仮説的な議論にとどまってきた.このことを踏まえ,本研究では福井県水月湖から新たに得られた花粉データ (n=510) および気候復元の結果について報告する.水月湖の放射性炭素データはIntCal20の主要構成要素であり,絶対年代はU/Th年代と互換性がある.水月湖のきわめて精密な年代軸,およびグリーンランドのアイスコアに含まれる宇宙線生成核種の研究の進歩により,水月湖とグリーンランド,またその他の多くの地域の精密な対比が可能になった.それによると,完新世および晩氷期亜氷期 (ヤンガー・ドリアス期に相当) の開始は,いずれも水月湖とグリーンランドの間で同時だった.ただし晩氷期亜間氷期 (ベーリング・アレレード期に相当) の開始については,水月湖がグリーンランドに200年ほど先行した.偏西風の双峰的 (bimodal) な移動は,東および南アジア (ひょっとすると西アジアも) において急激な変動を産み出す,「しきい値」 を含んだメカニズムとして重要だったかもしれない.大西洋においては,緯度方向の鉛直循環 (Antarctic Meridional Overturning Circulation: AMOC) のオン・オフの切り替わりが,より強力な 「しきい値」 メカニズムとして存在していた.アジアと大西洋のしきい値の高さが異なることで,両者の気候応答に数十年〜数百年規模の遅延が生じた.また,どちらか一方だけが応答した場合には東西で気候モードの不均衡が発生し,気候は不安定化した.気候が安定な時代は,人類が農耕と定住を開始した時期に対して良い一致を示した.これらの新しい生活技術は気候が安定した時代,すなわち短期的な予測が可能な時代でないと,必ずしも生存にとって有利に働かなかったのかもしれない.
著者
中川 俊輔 岡本 康裕 児玉 祐一 西川 拓朗 田邊 貴幸 河野 嘉文
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-36, 2018 (Released:2018-06-19)
参考文献数
10

再発髄芽腫に対するtemozolomide(TMZ)の報告は本邦ではまだない.症例は6歳の男児で,小脳原発の高リスク髄芽腫(desmoplastic type,術後の脊髄MRIで播種病変あり)と診断された.脳腫瘍摘出術と放射線照射後に寛解を確認した.術後化学療法(ifosfamide, cisplatin, etoposide)と自家末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法(busulfan, melphalan)を行った.術後24か月後のMRIで右側脳室,右側頭葉,左小脳半球に腫瘤性病変を認め再発と診断した.欧米からの有効性があるという既報を参考に,TMZ(150 mg/m2/日×5,4週間毎)の内服で治療を開始した.腫瘍は残存しているが縮小傾向で,再発後28か月が経過し,TMZを30サイクル行った.副作用もほとんど認めず,良好なQOLを維持できている.TMZは髄芽腫の再発に対する化学療法として有用な可能性がある.
著者
小畑 大志 横川 正美 中川 敬夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.793-796, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

〔目的〕低強度の呼気筋トレーニング(EMT)が,随意的咳嗽力の指標である咳嗽時最大呼気流量(CPF)に及ぼす即時効果を検討すること.〔対象と方法〕呼吸器,循環器の既往,喫煙歴のない健常男性21名を対象とした.背臥位にてEMTを実施し,その直後のCPFを測定した.EMTは最大呼気圧の15%の抵抗で,実施回数は10,20,30回の3条件とした.〔結果〕実施回数に関わらず,EMTを実施することで直後のCPFは向上した.10回と比較して20回および30回条件ではより強い疲労感がみられた.〔結語〕最大呼気圧の15%負荷にて10回EMTを行うことで,疲労感が少なく,かつCPFを増強させることが示唆された.