著者
久保 大輔 髙木 武蔵 鈴木 智高 菅原 憲一
出版者
一般社団法人 日本基礎理学療法学会
雑誌
基礎理学療法学 (ISSN:24366382)
巻号頁・発行日
pp.JJPTF_2021-05, (Released:2022-06-21)
参考文献数
21

【目的】本研究の目的は,予測的姿勢調整を制御するために補足運動野が活動するタイミングを経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation:以下,TMS)を用いて検討することである。【方法】健常成人11 名は,ビープ音に反応して上肢を挙上する課題を行った。課題中,ビープ音から0 ms,30 ms,50 ms,70 ms 後のタイミングで補足運動野へTMS を付与し,三角筋と大腿二頭筋から筋電図を記録した。【結果】三角筋の筋活動開始のタイミングから前100 ms の時間帯にTMS が補足運動野へ付与された場合,TMS のない試行と比較して大腿二頭筋の筋活動開始のタイミングが有意に遅延した。【結論】立位での上肢挙上課題において,補足運動野が活動するタイミングは三角筋の筋活動開始から前100 ms の時間帯にあると推察された。
著者
大久保 街亜
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.57-67, 2016 (Released:2018-04-13)
参考文献数
49
被引用文献数
11

Although null hypothesis significance testing has been strongly criticized for decades, it has been the dominant statistical method in the field of psychology. Non-reproducibility of findings in psychology can be attributed, at least partially, to an arbitrary threshold (i.e., .05) in the null hypothesis significance testing and overrepresentation of p-values. The present study surveyed papers from the Japanese Journal of Social Psychology and examined whether or not such overrepresentation also existed among psychology researchers in Japan. Effect size measures and p-values did not correspond well when p-values were set at around .05. Moreover, the frequency of p-values just below .05 was greater than expected. These results imply that the overrepresentation of p-values can produce unreliable and irreproducible results. Two types of remedies are discussed to alleviate the problems of overrepresentation of the p-values.
著者
久保田 祐貴 加藤 昂英 一柳 里樹
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.61-74, 2021-03

近年,参加者それぞれが,新たな視点や科学との関わり方を見いだすことのできる,対話を伴う科学技術コミュニケーションが注目されている.その実践では,科学技術に対する参加者の意見や知識を説明者や他の参加者が把握するとともに,参加者と説明者が共同で新たなアイデアや視点を生み出すことが重要な目的となる.本報告では,著者らのUTaTané における一連の活動から2つの実践例を紹介する.これらの実践では,当事者性・受容可能性・柔軟性の3点に配慮した実践設計を行った.さらに,参加者の創作活動を対話の起点とすることで,参加者と説明者の双方が新たなアイデアや視点を見出すことを目指した.結果として,知己の者同士の直接的な対話だけでなく,初対面の者同士の対話や掲示された創作物を通した間接的な対話など,多様な形態の対話が実現した.特に,参加者が自発的に話題を提供することで,他の参加者や説明者が新たな視点を得る場面もあった.加えて,「きっかけから探究への一気通貫のデザイン」が対話を伴う科学技術コミュニケーションを行う上で重要であることが示唆された.これらの実践と考察は,参加者の相互交流や参画を促す実践を行う上での試金石となり,実践を組み立てる際の一助となることが期待される.
著者
久保 明教
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.518-539, 2007-03-31 (Released:2017-08-28)

1999年に販売が開始されたエンターテインメント・ロボット「アイボ」は、生活空間において人々の間近で動作する初めてのロボットとして多くの注目を浴びた。本稿では、アイボの開発と受容の過程を横断的に検討し、テクノロジーにおける科学的側面と文化的側面がいかなる関係を取り結ぶかについて考察する。科学およびテクノロジーを社会的ないし文化的事象として捉える研究は近年盛んになされてきたが、その多次元的な性質ゆえにテクノロジーを包括的に考察することには困難が伴う。本稿では、アイボという技術的人工物が科学的知識、工学的製作、日常的実践等の接点となっていることに注目し、異なる領域に属する諸要素が接続される様々な局面を分析することで、境界横断的なテクノロジーの動態を捉えることを試みる。そこで明らかになるのは、開発と受容の過程において、科学的要素と文化的要素が組み合わされる中でアイボの有様が方向づけられていったことである。開発過程においては、人工知能研究およびロボット工学上の成果である設計手法を基盤にしながらも、ロボットをめぐる人々の想像力に基づいた語りを工学的装置へと翻訳することによってアイボがデザインされていった。一方、受容過程においては、アイボ・オーナーの生活する空間に特有の日常的な事物の有様とアイボの機能システムの作動が結びつくなかで、アイボの動作が様々な形で解釈されるようになり、開発者の想定を超える意味をアイボは獲得していった。筆者は、開発者による工学的デザインとアイボ・オーナーによる解釈が科学的要素と文化的要素を組み合わせることで妥当性を生み出す営為であったと分析した上で、実在と意味を媒介するテクノロジーの働きにおいて科学と文化の相互作用が捉えられることを示した。
著者
萬田 正治 奥 芳浩 足達 明広 久保 三幸 黒肥地 一郎
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.521-528, 1989-06-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

牛の色相の識別能力の有無を,牛の学習能力を利用した動物行動学的手法により検討した.そのため二叉迷路型の学習装置を用い,供試牛の前方左右に正•負刺激の色パネルを提示し,配合飼料を色パネルの後方に置き,供試牛が正刺激の色パネルを選択した場合にのみ,配合飼料が摂食できるよう学習訓練した.色パネルの左右交換は乱数表によりランダムに行ない,1セッション20試行とし,適合度の検定により,正反応率が80%以上に達した場合,供試牛はその学習実験を完了したとし,その供試色を識別出来たと判定した.供試色には有彩色として赤,緑および青の3色,無彩色として灰色を用いた.供試牛には鹿児島大学農学部付属農場入来牧場生産の牛5頭を用いた.まず赤色パネルを正刺激,灰色パネルを負刺激とした実験では,2~18セッションでいずれの供試牛も正反応率は80%を超えた.同様に緑色パネルを正刺激,灰色パネルを負刺激とした実験では1~31セッションで,青色パネルを正刺激,灰色パネルを負刺激とした実験では,2~13セッションで80%を超えた,次に赤,緑および青色の有彩色同士の実験においても,赤色と緑色パネルの識別実験における3号牛を除き,供試牛はいずれも1~16セッションで正反応率は80%を超えた.次に紫外線を除去した条件下で赤色パネルを正刺激,緑色パネルを負刺激とした実験では,供試牛はいずれも4~5セッションで80%を超えた.以上の結果より,いずれの供試牛も色相を識別出来る能力を有していることが明らかとなった.
著者
堀本 拡伸 高橋 優 久保 俊彦 芦原 俊昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.371-376, 2011 (Released:2012-10-03)
参考文献数
2

症例は38歳, 男性. 小学生時から労作時や緊張した時を中心に開始と停止の明瞭な動悸を自覚していたが, 30分程で消失するため放置していた. 2009年4月, 軽労作で呼吸困難感が出現し, 2日後には座位でも自覚するようになったため, 近医を受診. 心電図でwide QRS頻拍を指摘され当科に救急搬送された. 当院到着時の心電図はwide QRSで左脚ブロックパターンを呈しており, 毎分200拍程度の頻拍にもかかわらず症状は軽微で血行動態も保たれていた. アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP) 急速静注によりR-R間隔が短縮するとともにnarrow QRSに変化し, 続いて一過性完全房室ブロックを経て正常洞調律に回復した. この経過から, 左側副伝導路を有する房室回帰性頻拍が左脚ブロックによりCoumel現象を生じていたと疑われた. 電気生理学的検査により左側壁の副伝導路を認め, カテーテルアブレーションによる離断とともに誘発不能となり根治したことから, 上記診断が裏づけられた. ATP投与によりCoumel現象が確認でき, 頻拍の機序が房室回帰性頻拍であること, かつブロックを生じた脚と同側に副伝導路が存在することを同時に診断でき, その後の検査, 治療に非常に有用であったwide QRS頻拍の1例を経験した.
著者
牧迫 飛雄馬 阿部 勉 藤井 伸一 住谷 久美子 吉松 竜貴 徳原 理恵 小林 修二 久保 晃
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.203-206, 2005 (Released:2005-09-02)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

在宅における歩行能力評価としての可能性を探ることを目的に,1.5 m,5 mおよび10 m歩行を分析し,その妥当性を検討した。対象は,理学療法を実施している入院患者40例(平均年齢70±12歳)で,快適および最大速度歩行中の1.5 m,5 m,10 mの各地点を通過した所要時間,歩数を計測し,歩行速度,歩行率,歩幅を比較した。その結果,快適および最大歩行ともに歩行距離による歩行速度,歩行率,歩幅の有意差は認めなかった。また,歩行速度,歩行率,歩幅ともに快適速度,最大速度条件において1.5 m歩行は5 m歩行,10 m歩行のそれぞれと有意に高い相関関係を認めた。以上より,1.5 mでの歩行測定は,5 m歩行および10 m歩行同様に歩行能力評価指標のひとつとして活用できる可能性があると考えられた。
著者
室井 尚 佐藤 守弘 吉田 寛 吉岡 洋 秋庭 史典 島本 浣 安田 昌弘 小松 正史 吉村 和真 前川 修 大久保 美紀 丸山 美佳
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

本研究は5名の研究代表者、分担者を中心とした研究会を複数回開催するとともに、大規模な公開研究集会を年に一回開催し、その成果を映像記録や報告書にまとめることによって、一般からもその成果に対する広い関心を集めることができた。最終年度には報告書として論文集を公刊した。また2014年の国際記号学会においてはラウンドテーブルを組織して、海外の研究者との議論を深めることができた。これらの研究活動によって新しい理論的な枠組の構築に結びつけることができた。本研究はポピュラー文化に関する美学的アプローチの最先端の成果を挙げることができた。
著者
大久保 澄子 田中 克浩 野村 長久 山本 裕 池田 雅彦 山本 滋 紅林 淳一 園尾 博司
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.2358-2361, 2002-10-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

当科で経験した小児・若年者甲状腺癌14例について検討した.男女比1:2.5, 年齢6~19歳だった.主訴は頸部腫瘤が13例と最も多く,術前診断は血中サイログロブリン値測定と穿刺吸引細胞診が比較的診断率が高かった.手術方法は全摘6例,亜全摘7例,葉切除1例で,リンパ節郭清は12例に行った.全例乳頭癌でリンパ節転移陽性は10例(71%)だった.肺転移は3例(21%)に認めたが現在全例生存中である.小児・若年者は早期からリンパ節転移や肺転移をきたしやすいため,正確な術前評価,手術方法の決定,厳重な術後経過観察が必要だと考えた.
著者
大久保 賢一 渡邉 健治
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education (ISSN:21899185)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.34-52, 2018 (Released:2018-08-30)
参考文献数
11

本研究においては、公立小学校の知的障害特別支援学級と自閉症・情緒障害特別支援学級の担任教員を対象として、担任教員が認識している特別支援学級に関わる現状と推移、そして通常学級支援を目的とする弾力的対応の実態について質問紙法による調査を行った。その結果、対象教員の大部分が、在籍児童数、仕事量ともに増加していると認識していることが明らかとなった。また、通常学級に対する自らの支援の必要性は、大多数の特別支援学級担任教員によって認識されており、頻度の差はあるものの7割から8割の者が実際に弾力的対応を実施しており、通常学級担任教員への支援としては「担任教員に対する助言」や「児童の実態把握」が多く、通常学級在籍児童への支援としては「授業中における児童に対する学業面や行動面での個別的支援」が多かった。しかしながら、付加的な時間を必要とする対応、通常学級の児童集団から個別的に切り離して場を設定することを必要とする対応、そして実施の際に保護者や本人の同意を得ることが必要な対応については実施率が低かった。

11 0 0 0 OA 金解禁亡国論

著者
久保久治 著
出版者
久保法制経済研究所
巻号頁・発行日
1929
著者
栗田 英資 久保 晴信 守田 佳史 小竹 情悟 白石 潤一
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.170-180, 1998-03-05
参考文献数
63

楕円代数という名の国があります. 最近までは, この国のことを詳しく記した地図はありませんでした. この国には楕円関数に付随した代数の秘密が伝わっていると謂われています. それはBaxter達の模型を開ける大事な鍵になると信じられています. Baxter達の模型の臨界点での振舞を読み解く鍵となったのは共形場理論でした. 臨界点から離れたところを探るために, 次の鍵を見つけよつとして, 多くの人々が何年にも亘って知恵を出し合いました. 紆余曲折の末, それでも懸命に進み, 目的地へのある扉を叩くことになった人達がいました.
著者
黒田 玲子 大久保 靖司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

個人の体内時計と社会的スケジュールの不一致によって生じる睡眠時間帯のずれによる社会的時差ボケ(Social jetlag)は、朝型夜型(Chronotype)の違いを調整しても様々な健康影響と関連があるかどうか検討した。まず、質問紙法でのSocial jetlagは高い再現性・妥当性を確認できた。また、Social jetlagの大小と、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、肥満有病率の関連は、U次型の曲線を示すことがわかった。抑うつ症状(K6>=5点)は、Social jetlagが大きい群で有症率が高かった。産業保健分野で社会的時差ボケの認知の重要性と予防対策の必要性を示唆することができた。