著者
佐藤 ゆかり
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.255-260, 2008 (Released:2009-02-19)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

本報では, 歯周治療で消失した歯間乳頭が, セルフケア用具の使用時期を術者が入念にコントロールすることにより, 回復してきた過程を報告する。患者は43歳の女性で, 45の修復物の脱離を主訴に来院した。主訴への対応後, 全顎的な歯周治療が必要と判断し, 歯周基本治療を開始した。当初はモチベーションも低く, 上顎前歯部の歯間乳頭は消失し審美性も失われていたが, 治療が進むにつれモチベーションが上がり, 歯間空隙を気にするようになった。そこで, 歯肉の回復の時期に合わせて歯間乳頭の回復を妨げないように歯間ブラシの使用を中止したところ, 歯間乳頭の回復がみられた。その後サポーティブペリオドンタルセラピー(以下SPTと略す)に移行し, 全顎的に良好な状態を維持している。歯間乳頭を回復させることは審美性の追求だけでなく, 隣接面の清掃性の向上や患者負担の軽減につながる。また, 患者も満足するためにモチベーションの維持としても効果が期待できる。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)50(4) : 255-260, 2008
著者
加藤 真 岩堀 裕介 佐藤 啓二
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.481-484, 2004-08-30 (Released:2012-11-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

We verified the coaptaion effect of the subscapuraris muscle when the shoulder was immobilized the external rotation after initial anterior dislocation of the glenohumeral joint, and the practical use of the immobilizer to keep the shoulder in external rotation position. We evaluated twelve shoulders of the 12 patients with traumatic initial anterior dislocation of the shoulder. All of the patients were male, and the in mean age was 22.2 years old(range,17 to 30). Fast-spin-echo T2-weighted axial and sagittal magnetic resonance images were made, with the arm held at the side and positioned first in the maximum internal rotation and then in 15°external rotation within one week after the dislocation. We examined the coaptaion effect of the subscapuralis muscle comparing the images in the both positions. The patients were asked about the compliance and the discomfort of immobilization. Bankart lesions were identified in 11/12 shoulders (91.6%). The coaptaion effect was observed in 10/12shoulders (83.3%). All of the patients put on immobilizers for 3 weeks, and answered that discomfort was within the bounds of their torelance. Better coaptaion of a Bankart lesion was observed in external rotation compared with that in internal rotation. The immobilizer was of practical use.
著者
江川 翔一 瀬島 吉裕 佐藤 洋一郎
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-18-00069, (Released:2019-03-29)
参考文献数
31
被引用文献数
5 6

In human face-to-face communication, not only verbal messages but also non-verbal behaviors such as facial expressions, body movements, and gazes are conveyed; these non-verbal behaviors can express human affect. In addition, it leads to sharing of empathy unconsciously in human interaction and enhancing intimacy between humans. In particular, cognitive empathy as well as emotional empathy play an important role in sharing of empathy. Therefore, it is expected to evaluate emotional empathy based on the features of affect for enhancing intimacy. In this study, for the basic research of evaluating emotional empathy, a method that estimates the emotional centroid based on the coordinate system in the Russell’s circumplex model was proposed. In addition, the experiment was conducted to evaluate the proposed method. The results demonstrated that the method has a possibility to estimate the features of affect.
著者
佐藤 健斗 野口 普子 三富 菜々 嶋田 岳 昆 恵介
出版者
公益社団法人 日本義肢装具士協会
雑誌
POアカデミージャーナル (ISSN:09198776)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.118-123, 2019 (Released:2019-10-16)
参考文献数
11
被引用文献数
2

臨床の場面で、脳血管障害により身体に後遺症を負った装具使用者と、義肢装具士やその他の治療に関わる様々な職種の方々との間で装具を使用する上で重視する点の違いを感じる場面が少なくない。今回は、それぞれが短下肢装具選好に際して重視する要素を確認し、違いを明らかにすることを目的とし、コンジョイント分析を用いた調査研究を行った。結果として、義肢装具士群、理学療法士群が短下肢装具を使用する目的を「歩行・立位の安定」とみて、装具選好の際に重視している一方、装具使用者群とは有意にその影響度に差異があり、装具使用者群においては装具選好にあたり必ずしも重視される要素ではない可能性が示唆された。
著者
斎藤 嘉人 宮川 璃空 村井 匠 小畑 悠 板倉 健太 佐藤 翼
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.215-222, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
24

大豆の種子選別は時間と労力を要す作業であり,一農家が利用できる安価で簡便な選別機が求められている.本研究では,カラー画像および紫外励起蛍光画像の2種類の画像の入力による大豆の欠陥判別を目的とした.大豆種子のカラー画像と励起波長365 nmの蛍光画像をそれぞれ撮影し,目視にて正常粒・しわ粒・裂皮粒・病虫害粒の4カテゴリにラベル付けを行った.カラー画像,蛍光画像,カラー・蛍光画像同時入力の3パターンの入力によりResNet-50でモデルを構築した結果,テスト精度はそれぞれ91.7%,88.2%,88.3%であった.また,カラー・蛍光画像同時入力モデルでは正常粒の適合率が最も高く,判断根拠を可視化した結果,病斑のない健全箇所が重視されていた.以上より,従来のカラー画像に蛍光画像を組み合わせた判別手法が有効である可能性が示唆された.
著者
佐藤 郁哉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.20-29, 2019-06-20 (Released:2019-10-30)
参考文献数
32

研究論文の質という問題について英国の研究評価事業を「反面教師」的な事例として検討していく.研究の質を論文の掲載誌の格付けと同一視するような風潮は,世界大学ランキングへの関心の高まりや研究業績に基づく各種補助金の傾斜配分政策などにともなって,日本でも近年傾向としてあらわれている.本稿ではこのような「論文掲載至上主義」的な傾向が,学術研究の劣化をもたらすだけでなく次代の研究者を育成するシステムの基盤をも掘り崩してしまう可能性について指摘する.
著者
佐藤 忠雄 清水 雅子 渡辺 一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.585-586, 1956-09-20

においのある物質の溶液,たとえばサルバルサン,カンフル,ビタミンB1等の溶液を鼻からかいでみると,それぞれ特有のにおいを感じる。これは即ち鼻性(呼吸性)嗅覚である。一方これらの溶液を静脈内に注射すると7〜8秒後に同様ににおいを感じ,しかも鼻からかぐ場合よりもより強く感じることは既に知られているところである。静脈注射によつてどうして嗅覚が起るかというと,これらの物質のにおいが気道(主として肺)から放散され,これが呼気に混じて主として後鼻孔から鼻腔に送られ嗅神経末梢を刺戟するために嗅覚を起すと考えるのが常識的な考え方である。このことについては既に1916年にForschhei—merがネオ・サルバルサンを静注すると,注射されたサルバルサンのにおいが呼気に混じて出て,来て,これによつて嗅覚が惹起されると述べている。ところが1930年にBedntär, Langfelder等は静脈注射によつて起る嗅覚は,静脈内に注射されたにおいのある物質—嗅素—が血行中で直接に嗅神経末梢に到達しこれを刺戟するために起るものであるという説を提唱した。彼等はこれを血行性嗅覚(或は静脈内性嗅覚)と呼び,従来考えられている嗅覚,即ち呼吸性(或は鼻性)嗅覚とは全然別に存在するものであると主張した。1938年,石川はこれを追試して両氏の説に賛成し,嗅覚は鼻性と血行性の二つに大別しうるということを述べている。我々は嗅覚障碍の治療法として水溶性カンフル(ガダミン)の静脈注射療法を試みた際,たまたまこの血行性嗅覚の存在について疑念を抱いたので,これを検討した結果,血行性嗅覚なるものは存在せず,所謂血行性嗅覚と考えられたものは普通の鼻性(呼吸性)嗅覚にほかならぬという結論に達したのでここに報告し,諸賢の御批判を仰ぎたいと思う。 Bednär, Langbelder等が血行性嗅覚の存在を主張する根拠は何処にあるかというと,それは彼等の行つた次の如き実験の結果によるものである。即ち彼等は被検者として嗅覚正常なものを選び,鼻腔に流動パラフィンを浸したタンポンを施し,先づ鼻性嗅覚の存在しないことを確かめたのちネオ・サルバルサン溶液,カンフル溶液,再餾テレピン油等を静注すると,それぞれ特有の嗅感覚を認識した。従つてこの際起る嗅覚は鼻性(呼吸性)嗅覚とは無関係の全く別種の嗅覚であつて,これは血行性に直接嗅神経末梢部に到達して起る嗅覚であるから血行性嗅覚であると考えたのである。しかしこの実験では完全に鼻性(呼吸性)嗅覚を除外したとは言えないのである。何故ならば,鼻腔はタンポンによつて遮断されているから,呼気の大部分は口から出るけれども,その一部が後鼻孔から入つて鼻腔の後部から上昇し嗅神部に到達しないとは断言出来ないからである。(嗅神部の全部をタンポンガーゼで覆うことは不可能である)従つて,鼻腔にタンポンを施して鼻呼吸を遮断しておいてもなおかつ嗅覚が起るからこれは血行性の嗅覚であると断定するのは早計であるといわざるを得ない。そこで我々はもつと完全に鼻呼吸を除外してもなおかつ嗅覚(所謂血行性嗅覚)が起るか否かについて実験した。
著者
三好 正太 大西 亘 古関 隆章 佐藤 基
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.143, no.3, pp.242-255, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2

Boost converters are key components of DC power conversion used for electric mobility and renewable energy applications. In addition to constant voltage control of the output, variable voltage control has been attracting attention in recent years for high-efficiency drive of loads. However, the dynamic characteristics of boost converters exhibit nonlinear and nonminimum phase characteristics. Therefore, the inverse model for feedforward control is unstable, making high-precision voltage trajectory tracking control challenging. This study aims to present a noncausal and nonlinear feedforward controller to compensate for the nonlinear and nonminimum phase characteristics of the boost converter and to achieve perfect tracking control with respect to the output voltage trajectory. This study also establishes a method for identifying circuit parameters and deriving the time length of noncausal control input for practical implementation. The effectiveness of this control method is demonstrated by experiments using a boost converter.
著者
清水 創一郎 佐藤 賢 伊藤 健太 喜多 碧 相原 幸祐 舘山 夢生 阿部 貴紘 柴崎 充彦 山崎 節生 深井 泰守 飯塚 賢一 滝澤 大地 新井 弘隆 井出 宗則 浦岡 俊夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.530-537, 2022-12-01 (Released:2022-12-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1

COVID-19に対するワクチンが開発され,感染抑制や重症化防止に大きく貢献している.その一方で副反応も生じ,肝障害の報告も世界で散見されつつある.ワクチンによる肝障害のメカニズムは,自己免疫性機序などの報告があるものの,不明な点が多いのが現状である.今回,1回目のワクチン接種後に肝障害を来し,2回目のワクチン接種で更に肝障害が悪化し,ワクチンによる因果関係を強く疑い,ワクチンによる薬物性肝障害と診断した10代の女性の症例を経験した.本邦におけるCOVID-19に対するワクチンによる肝障害の報告はあるも,論文化された報告は1例もなく,貴重な症例と考えここに報告する.
著者
佐藤 寛子 羽山 伸一 高橋 公正
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.81-86, 2007 (Released:2018-05-04)
参考文献数
22

ダイオキシン類は,実験動物あるいは野生生物が暴露した場合,甲状腺の機能や形態に影響を及ぼす。今回我々は野生ニホンザル(Macaca fuscata)の甲状腺におけるダイオキシン類の影響について報告する。野生サルはヒトの居住地の周辺で生活しており,生物分類学的にヒトに最も近い動物種である。野生サルの脂肪組織,肝臓,骨格筋からダイオキシン類(PCDDs,PCDFs,Co-PCBs)の残留濃度を分析した。また,甲状腺については病理組織学的に検索し,画像解析を用いて濾胞上皮細胞の肥大を定量的に評価した。PCDDs,PCDFs,Co-PCBsの残留濃度はいずれも0.2〜26pgTEQ/g-fatの範囲だった。病理組織学的検索において,TEQに関連した甲状腺の変化は認められなかった。さらに,濾胞の数や濾胞上皮細胞の大きさにもTEQに関連した変化は認められなかった。このように,野生ニホンザルは自然環境からダイオキシン類に暴露されてはいたが,検出されたレベルでは甲状腺の機能や形態に影響を及ぼさなかったと考えられた。
著者
佐藤 健二
出版者
札幌学院大学社会情報学部
雑誌
社会情報 = Social Information (ISSN:0917673X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.49-77, 2001-12-22

第11回 社会と情報に関するシンポジウム
著者
片野 修 馬場 吉弘 大原 均 河村 功一 佐藤 正人 熊谷 雅之 竹内 基 伊藤 正一 富樫 繁春 井上 信夫
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.97-103, 2014-11-05 (Released:2016-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
2

The distribution of Nipponocypris temminckii was investigated in 24 rivers in Nagano, Niigata, Yamagata, Akita, Iwate, and Aomori Prefectures, the species being collected at seven study sites. Amongst non-benthic fishes, N. temminckii was exclusively dominant in two rivers. Supplementary records of the species in Nagano, Niigata, Akita and Iwate Prefectures were also described. Rivers in which investigations had been conducted over two or three years showed an increasing proportion of N. temminckii, indicating successful colonization of the species.
著者
佐藤 智美
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.185-206, 2021-07-07 (Released:2023-04-08)
参考文献数
19

学校女性管理職比率は,1990代に小学校を中心に本格的な上昇を示していたにも関わらず,2000年代半ば以降停滞・低下している。 本稿の目的は,女性管理職比率の停滞・低下の要因について,「教育改革」下における女性教員の意識や経験の変容とそれらが管理職志向にもたらしている影響を明らかにすることである。 調査対象とした大分県の小学校女性教員のライフヒストリー・インタビューを分析した結果,以下のような知見が得られた。 ①「教育改革」下の多忙化は,男性教員より家庭責任の重い女性教員の方により多くの困難をもたらしていた。そのために,女性教員は,管理職試験の準備や昇任後の家庭との両立に危惧をもち,管理職志向を低下させていた。②女性教員は,「教育改革」下の管理職を,権威的な「管理者」「評価者」とみなし,それに対する親和性が低いため,管理職志向を低下させていた。③「教育改革」下の管理職の重責化に対して,女性教員は自らを力量不足と見なし,管理職志向を低下させていた。彼女たちは,男性教員の倍以上の努力や成果を示さなければ認められなかった経験を通して,女性管理職に対する厳しい視線を強く意識し,優秀な女性でなければ管理職は務まらないと見なしていた。 これまで,「家庭との両立」「キャリアパスや登用過程」の側面から論じられてきた女性管理職の低比率や停滞の要因に,「教育改革」という政策の影響を付加することができたと言えよう。
著者
佐藤 千登勢
出版者
ジェンダー史学会
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.17-29, 2022-10-14 (Released:2023-10-13)
参考文献数
34

アメリカでは今日、連邦政府による貧困対策としてさまざまな所得維持政策が実施されているが、なかでもフードスタンプ制度1は、4,150万人(人口の12%)が参加する最大規模のプログラムとなっている。この制度は、農務省の食料・栄養サービス局が管轄しており、原則として所得が貧困線(2021年に3人家族で年収約2万2,000ドル)の130%以下であれば、年齢や子どもの数、健康状態などに関わらず、だれでも参加資格を得られる。平均受給額は、1世帯で月444ドル、1人当たり233ドルであり、フードスタンプを用いて、酒類とタバコ以外のあらゆる食料品を購入することができる。フードスタンプ制度は、重要なセーフティーネットとしてアメリカ社会で広く受け入れられている。その理由としては、低所得の家庭の子どもを飢餓や低栄養から救い出す役割を果たしていると評価されていることや、フードスタンプが農産物や食料品の消費拡大に貢献しているため、農業団体や食品業界が強く支持していることがあげられる。フードスタンプ制度は、農務省の下で、現金ではなく食料品の購入に特化したスタンプを支給しているという点において、他の社会福祉プログラムとは異なる特殊な性格を有している。生活困窮者が支給されたスタンプを用いて消費行動をし、それによって食生活を向上させるという仕組みは、大恐慌による余剰農産物の処理との関連で1930年代に考案された。本稿では、こうしたフードスタンプ制度の歴史的な起源を、消費行動の主体とされた貧困女性に着目しながら検討し、プログラムに内在していたジェンダー規範を明らかにしていく。消費と結びついたフードスタンプ制度をジェンダーの視点から見ることで、福祉国家の多様なあり方やアメリカ的な特殊性を考察することが本稿の目的である。これまで、フードスタンプ制度については、政策史や経済的な効果といった観点からいくつかの研究がなされてきた(Waugh, Hoffman, Gold 1940; Herman 1940; Herman 1941; Harvey 1941; Kreager 1942; Coppock 1947; Poppendieck 2014)。また、フードスタンプと消費に着目し、食品業界を中心とした経営者団体との関連でフードスタンプ制度を論じた研究もある(Moran 2011)。しかし、消費の主体としての貧困女性の役割やジェンダー規範を検討した研究はこれまでなされていない。本稿ではまず第1 節で、大恐慌の到来により飢えが社会的な問題として捉えられるようになったことを論じ、第2節で、1933年以降、フランクリン・D・ローズヴェルト政権の下で余剰農産物の処理と貧困者を対象にした食料支援が結びつけられたことを見ていく。第3節では、余剰農産物の配給制度が持つ弱点を克服するためにフードスタンプ制度が導入され、消費者として貧困女性が前景化されたことを明らかにする。第4節では、栄養学との結びつきを論じ、農務省家政局の下で、貧困女性がフードスタンプで入手した食材を用いて、栄養学的な知見に基づいた料理を習得することが期待されたことを検討していく。
著者
佐久間 絢 上田 朝美 池田 敏明 玉井 謙次 高橋 宏行 佐藤 智行
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.323-327, 2022-07-15 (Released:2022-08-27)
参考文献数
12

心臓外科手術の術中・術後に急性硬膜下血腫を発症した3症例を経験した.発症要因として,既報で論じられているヘパリン化や凝固能異常,マンニトールによる脳容積減少に加えて,術中の手技も発症の一要因としてなり得たのではないかと考察した.今回経験した1症例では,術中のBIS値の急激な低下が早期診断の一助となったが,心臓外科手術後の脳神経障害は,術中や術後の鎮静薬,鎮痛薬の影響で早期発見が困難である場合が多い.人工心肺を用いた心臓外科手術では特に高齢者において急性硬膜下血腫が発症し得ることを念頭に置き,術中に頭部に加わる外力を最小限にすることや,術後に定期的な中枢神経評価を行うことが重要である.
著者
小山 純一 仲西 城太郎 佐藤 純子 野村 純子 鈴木 裕美子 増田 嘉子 中山 靖久
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.16-26, 1999-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

健常な人にとっての一般的な皮膚の悩みとして, 皮膚表面に生じる落屑の発生があげられる。冬季の肌荒れによくみられる現象である。形態学的, 生化学的な検討により肌荒れの現象面については解明されてきたが, 落屑の発生メカニズムはまだ明らかでない。本研究では角層の接着, 剥離のメカニズムを明らかにし, どのような因子が影響しているのか, またどのようなスキンケアが有効かを検討した。角層中には2種類のセリン酵素が存在し, それぞれトリプシン様 (30kDa), キモトリプシン様酵素 (25kDa) であることがわかった。遺伝子解析によりキモトリプシン様酵素はすでに報告されている角層中のキモトリプシン様酵素 (SCCE) と一致した。トリプシン様酵素はIV型トリプシノーゲンと新奇なトリプシノーゲンであることがわかった。角層シートは緩衝液中で単一細胞にまで分散するが, 分散した角層からはデスモソームは検出されなかった。逆に熱処理した角層やセリン酵素阻害剤を添加した場合はデスモソームは分解されず, 分散も起こらなかった。ロイペプシンあるいはキモスタチンの単独では抑制効果はアプロチニンの半分でしかなかった。しかし, ロイペプシンとキモスタチンを混合した場合はアプロチニンと同程度の抑制効果がみられた。この結果からデスモソームが角層細胞の接着に大きな役割をはたしており, このデスモソームを2種類のセリン酵素 (トリプシン様, キモトリプシン様) が分解することにより角層細胞が剥離することが明らかになった。加齢によりトリプシン様酵素の活性が低下することが明らかになり, 加齢による角層の肥厚に酵素活性の低下が関与していることが示された。酵素によるデスモソームの分解は角層中の水分に影響されることが明らかになった。冬季の乾燥により角層中の水分が減少しデスモソームの正常な分解が妨げられた結果, 落屑が生じると考えられた。この研究により角層の剥離過程に二つの因子が関係することがわかった。一つは角層中の水分量である。酵素自体は正常であっても角層中の水分量が減少することにより酵素の働きが妨げられる。この場合は保湿剤が有効であった。もう一つは酵素活性そのものの低下であった。この場合にはデスモソームの分解を促進する薬剤が必要であった。ジカルボン酸類がデスモソームの分解を促進しその種の薬剤としての可能性が示唆された。
著者
中川 明仁 佐藤 豪
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.1-8, 2012-03-10 (Released:2013-09-06)
参考文献数
34
被引用文献数
1

Relationships between multidimensional self-oriented perfectionism, defense mechanisms and anxiety were investigated. Participants were university students (n = 169: 68 men and 101 women). They completed the following questionnaires: Multidimensional Self-oriented Perfectionism Scale (MSPS), Defense Style Questionnaire 42 (DSQ42) and State Trait Anxiety Inventory (STAI). Path analysis indicated that Personal Standards positively affected mature defense mechanisms; and moreover, mature defense mechanisms had negative effect on trait anxiety. Moreover, Concern over Mistakes had a positive effect on immature defense mechanisms, and furthermore, immature defense mechanisms had positive effect on trait anxiety.