著者
中分 遥 佐藤 浩輔
雑誌
じんもんこん2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.119-124, 2022-12-02

道徳神仮説によれば, 超自然的な行為者や罰への信念を持つことは、 社会的な協力行動を維持 することに役立ち、人類の社会的複雑性を高める動因となる. これまで体系的な研究も含め、他の人 間に対して危害を加えることに対する超自然罰に関する研究は数多く行われてきたが, 一方で自然に 対して危害を加えることに対する超自然罰に関する計量的な分析はほとんど行われてこなかった。こ うした信念は、環境問題や地域のコミュニティーの持続可能な発展に役立っていた可能性がある. 本 研究では,日本の民間伝承のデータベースに登録されている, 超自然的な報復である 「タタリ」に関 連した資料について分析した.分析の結果,「タタリ」 と自然に関連する単語 (e.g., 木・動物・山の 神)が高い頻度で共起した. また, 報復は個人ではなくより大きな単位 (c.g.. 家) に対して与えられ る傾向についても示唆された.これらの結果は日本のタタリ伝承が 「報復する自然」 観を内包してい ることを支持するものである.
著者
佐藤 俊樹
出版者
The Japanese Association of Sociology of Law
雑誌
法社会学 (ISSN:04376161)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.55, pp.7-21,247, 2001-09-30 (Released:2009-01-15)
参考文献数
9

The various reformations of 90's Japan are often summarized as "From equality of result to equality of opportunity". However, the cause and implication of this change are not sufficiently made clear. On statistical data, the improvement of equality, both of result and of opportunity, has been stagnant since 80's. So the reformation in 90's was not caused by excess of the equality of result, but this stagnation itself caused the change of the principle of equality. In this paper, with re-examination of the concept of "opportunity", we show how this change is related to the new phase of 90's Japan, such as stagnation of equalization, sustainable society, and privatization.
著者
平松 靖史 品川 晃二 高畑 統臣 佐藤 俊雄 水田 玲美 権守 邦夫 宮崎 哲次 小嶋 亨
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.145-149, 1998-07-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

アマニタトキシン (キノコ毒) 中毒による劇症肝炎を報告する。71歳, 男性, 下痢を主訴にして来院。入院時の血液生化学検査でGOT518U/L, GPT333IU/L, BUN77.3mg, Cre 7.0mgと急性の肝腎障害を認めた。意識レベルは清明であったが, 入院後, 劇症肝炎を来たし血漿交換等の治療に抵抗し死亡した。又一緒に毒キノコ中毒になり死亡した妻は司法解剖され, 採取された血液, 脳, 肝臓の組織からキノコ毒であるα-amanitinが検出された。司法解剖でキノコ毒を証明しキノコ中毒死を証明した法医学的報告は今までなく, その検査結果も合わせ報告する。本例も死後肝生検で致命的劇症肝炎像を証明した。
著者
佐藤 卓己 Takumi Sato
雑誌
社会学部紀要 (ISSN:04529456)
巻号頁・発行日
no.別冊, pp.1-26, 2011-03-15
著者
佐藤 美奈子
出版者
言語科学会
雑誌
Studies in Language Sciences (ISSN:24359955)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-81, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
20

本研究では、ネパール、フィリピン、ブラジル、中国等、外国につながりをもつ7人の複言語話者である高校3年生を対象に母語認識インタビューを行った。その結果を「継承語(第一言語)」、「現地語」(日本語)、英語という3つの観点から考察し、彼らの各言語に対する複層的な認識と、その認識を基盤とするアイデンティティの表出を質的に分析する。
著者
清水 渉 大江 透 金子 敬子 高木 洋 相原 直彦 鎌倉 史郎 松久 茂久雄 佐藤 磐男 下村 克朗
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.773-778, 1988-11-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

同一心電図上でデルタ波の出現と消失を認める間歇性WPW症候群35例の臨床電気生理学的特徴を検討した.心房早期刺激法による房室伝導曲線パターンは一様でなく, 顕在性WPW症候群に類似するもの (I群) , 基本周期でデルタ波を認め, 早期刺激で一旦デルタ波が消失するが, さらに短くすると再び出現し, 最後に再び消失するもの (II群) , 潜在性WPW症候群に類似するもの (III群) , 基本周期でデルタ波を認めないが, 早期刺激でデルタ波が出現し, 最後に再び消失するもの (IV群) の4群に分類された.顕在性WPW症候群類似のI群や, いわゆるsupernormal conductionを認めたII, IV群の副伝導路順行性の有効不応期は長かった.III群は電気生理学的検査後にデルタ波の出現と消失を認めた症例もあり, 潜在性WPW症候群との関連については今後の検討が必要と思われた.以上の電気生理学的特徴がどのように臨床上のデルタ波の出現と消失に関与するかは今後さらに検討を要する問題である.
著者
岸 美智子 佐藤 修二 土屋 久世 堀口 佳哉 和田 裕
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.318-323_1, 1975-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1 5

加熱食用油から発生する気化物質の吸入毒性について検討するため, ウサギを用いて, 循環呼吸系に及ぼす影響を調べた. 加熱食用油からの発生ガスを吸入させると, 著明な心拍数の減少と呼吸運動の抑制が発現し, 血圧上昇も認められた. 気化物質中, 比較的多く存在するエタン, ペンタン, アクロレインのうち, 発生ガスと同じ症状を発現させるのは, アクロレインのみであった. また, アクロレインを除去した発生ガスでは, 症状が現れず, これらの結果から, 加熱食用油からの発生ガス吸入によって循環呼吸系に現れる毒性症状の主たる原因物質は, アクロレインと思われる.
著者
岡 英明 本間 義人 恩地 芳子 櫻井 裕子 関本 美月 安藤 翔太 岩本 早紀 岩本 昂樹 近藤 美佳 梶原 浩太郎 牧野 英記 松田 健 近藤 陽一 佐藤 格夫 上村 太朗
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.583-589, 2021 (Released:2021-11-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1

症例は73歳,男性.7年前に糖尿病性腎症で血液透析を導入,冠動脈ステント留置後で抗血小板薬を内服中であった.接触者検診で新型コロナウイルス感染症(COVID‒19)と診断され当院に入院した.肺炎像は軽微であったが,D‒dimerが陽性でありヘパリンの予防投与を開始した.第2病日より38℃台の熱が続くため第4病日にデキサメタゾンを開始した.第6病日に腰痛が出現し,翌日には腹痛に変化した.同日の透析中にショックを呈し,貧血も進行しており透析を中止した.造影CTで左後腹膜出血と造影剤の漏出を認め,輸血を開始し感染対策を行った上で血管造影を行った.腰動脈出血を同定しコイル塞栓術で止血した.以後は貧血の進行を認めず,第60病日に転院した.COVID‒19では血栓性合併症が多くしばしば予防的ヘパリン投与が行われる.一方で抗血小板薬内服例や透析例は出血合併症のリスクが高く,抗血栓療法に関して慎重な判断が求められる.
著者
美馬 達哉 小金丸 聡子 芝田 純也 佐藤 岳史
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1111-1117, 2022-11-18 (Released:2023-01-20)
参考文献数
21

2010年代以降に注目を集めているN-of-1研究について,従来の症例研究との差異,高いエビデンスレベルである理由,臨床研究としての実験計画および論文執筆の際の注意点などについて概説した.個別性の高いケアを重視するリハビリテーション医学の領域において,この研究手法は大きな可能性を有すると考えられる.さらに,近年では,複数のN-of-1研究を標準化してまとめ,集団疫学と同様に扱う手法も提案されている.Patient-centered careやprecision medicineが議論されている現状では,今後も重要性が高まると予測され得る.本稿の最後では,非侵襲的脳刺激法のリハビリテーション応用について,N-of-1研究から切り拓かれる展望についても,筆者らの経験を例として論じる.
著者
栗林 千聡 武部 匡也 佐藤 寛
出版者
日本スポーツ心理学会
雑誌
スポーツ心理学研究 (ISSN:03887014)
巻号頁・発行日
pp.2023-2015, (Released:2023-06-13)
参考文献数
15

The purpose of this study was to develop and examine the preliminary effectiveness of a cognitive behavioral therapy program to address competitive anxiety among junior athletes. This cognitive behavioral therapy program for competitive anxiety in junior athletes was developed based on a cognitive behavioral therapy program for anxiety disorder in children and adolescents (Ishikawa, 2013). The goal of the program was not to eliminate competition anxiety itself, but to make athletesʼ interpretation of competition anxiety and cognition more flexible. A group of seven junior players (four males and three females) from a private tennis club were treated by a clinical psychologist once a week for a total of four sessions. This program was shown to increase their psychological performance selfefficacy post-intervention and at follow-up compared to pre-intervention. Interpretation of competitive anxiety and competitive positive self-statements showed a post-intervention increase compared to preintervention. Finally, the future effective practice of the program is discussed.
著者
佐藤 香寿実
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.393-416, 2019 (Released:2020-02-15)
参考文献数
47
被引用文献数
5 1

本稿の目的は,フランス,ストラスブールの大モスクの建設過程およびその利用を通じて,言説実践としてのスケールがいかに実質的な効果を生み出したのかについて,「スケールのパフォーマティヴィティ」の観点から論じることである。同モスクは,ライシテ(非宗教性の原則)が重要視されるフランスにありながら,異なる制度を持つアルザス・モーゼル地方法を活用し,地方公共団体からの資金援助を受けて2012年に建てられた。本稿では,人文地理学で発展してきた社会構築主義的な「スケール」視角に依拠し,スケール言説がモスクの建設過程および物質性にいかに作用したか,またモスクの利用を通じて新たなスケール言説がいかに再構築されているか,インタビューで得た語りを引用しながら分析を試みた。分析において,アクターや状況に応じて登場する複数のスケールが,「ここ/よそ」の区別に結び付けられていること,さらにスケールの言説実践を通じて,「ここ/よそ」の境界は絶えず問い直されていることが示された。
著者
中分 遥 五十里 翔吾 EMILY Burdett 佐藤 浩輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第37回 (2023) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1K5OS11b02, 2023 (Released:2023-07-10)

近年、接客ロボットの普及や大規模言語モデルを用いた対話モデルの躍進により、人間と、ロボットやAIなどといった人工主体との関わりが重要になっている。本発表では、こうした背景を受けロボットやAIに関連した道徳的問題、特にロボットに対する道徳的配慮に関する問題について、既存の知見ならびに発表者らが行ってきた実証的な心理学研究に基づいて考察する。具体的には、宗教や教育といった社会的ドメインでロボットを用いることに対する評価は年齢によって異なることを示す研究や、ロボットに対する道徳的な態度が宗教といった文化的背景に影響を受けることを示す研究を紹介する。これらの知見に基づき、人間とそれら人工主体からなる社会の将来像について議論する。
著者
小林 輝雄 藤橋 芳弘 円谷 哲男 佐藤 純一 大浦 泰 藤井 保和
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.117, no.5, pp.609-615, 1997-04-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
15

In Japan speed tests in 300km/h region have been carried out since Oyama Test Line recorded a 319km/h run in 1979. Meanwhile TGV recorded a 515.3km/h run by an electric locomotive installed with a pantograph in 1990 and ICE did 406.9km/h using similar train in 1988. High speed current collection tests over 400km/h using electric railcars have been desired in Japan. Problems of high speed tests are: train speed approaching wave propagation velocity, multi-pantographs resonance, and too large uplift of contact wires caused by lift. It is necessary to keep wave propagation velocity of contact wire higher than train speed. CS contact wire and TA contact wire were compared in high speed tests because it was impossible to get a good current collecting performance by using hard-drawn copper contact wires. In December, 1993 using these contact wires we carried out high speed running tests of 400km/h region on Jyoetsu Shinkansen with the test train STAR 21 which JR EAST built for high speed tests. This paper gives the current collecting performance of these contact wires predicted by simulation and running tests at 425km/h.
著者
佐藤 廉也 蒋 宏偉 西本 太 横山 智
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.309-323, 2023 (Released:2023-08-18)
参考文献数
15
被引用文献数
2

焼畑・漁撈・家畜飼養・狩猟・採集を生業とし,自給的な食生活を維持しているラオス中部のマイノリティ(マンコン)の村において,一年を通じた食生活を把握するとともに,世帯の食料獲得戦略を考察した.データは食事日誌法によって収集し,毎食ごとの主菜・副菜メニューとともに,それらの副食の食材を誰がどこで獲得したのかを記録し,世帯の構成に注意を払いつつ分析した.結果として,子どもが10歳代の時期に世帯の生活収支(生産量から消費量を差し引いた値)もプラスに転じることが推測され,子どもの成長に応じた家計への貢献が重要な役割を果たしていることが示唆された.
著者
浅井 麻衣香 佐藤 宗範 草田 理恵子 松村 一
出版者
一般社団法人 日本熱傷学会
雑誌
熱傷 (ISSN:0285113X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.101-104, 2021-09-15 (Released:2021-09-15)
参考文献数
9

症例は24歳, 女性. 陰毛脱毛のために脱毛ワックスを電子レンジで加温直後,夫が塗布する際誤って下腹部にこぼし受傷した. 水で洗い流したが,自力では剝れず,当院時間外外来受診となった. 下腹部に2%の浅達性Ⅱ度熱傷を認め, 入院加療を行った. 保存的加療で第8病日に上皮化し, 退院となった. 本症例の熱傷誘因として, 1) 高温ワックスの塗布, 2) 脱毛ワックス加温後の攪拌不足,3)オイルなど皮膚を保護する保湿剤を塗布していない部位への脱毛ワックスの付着の3つがあげられる. 脱毛ワックスによる熱傷は適正な使用下ではまれである. 自宅使用が容易である脱毛ワックスの使用が増えている近年, 使用方法とともに熱傷リスクや適切な救急処置の記載 (冷却しワックス温度を下げる, 油性は水で落ちずオイルや油性成分を含むクリーム剤を用いて落とすなど), 使用者に対しての注意喚起が必要である. また, 医療者も脱毛ワックスの特徴を理解し治療にあたることが望まれる.