著者
柳原 剛司
出版者
ロシア・東欧学会
雑誌
ロシア・東欧研究 (ISSN:13486497)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.31, pp.219-237, 2002 (Released:2010-05-31)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

In 1998, Hungary started a pension reform, which involved partial privatisation of the system and partial introduction of the fully funded (FF) scheme. The reform aimed to improve the financial sustainability, the incentive structure, and the transparency of the system. It also aimed to achieve the system's fairness by separating the principles of“social solidarity”and“social insurance”.But, after the FIDESZ-led government came to power, the pension reform was not carried out as scheduled. The FIDESZ-led government made some institutional changes that partially reversed the 1998-reform.This article examines the original reform plan and institutional changes under the FIDESZ-led government from three viewpoints: 1) financial sustainability of the pension system; 2) incentive structure and the system's transparency; and 3) the system's fairness. We also evaluate pension reforms carried out since mid-1990s in relation to the processes of system transformation and EU accession.By investigating institutional changes in detail, we show the 1998 pension reform was inadequate to its three purposes mentioned above, because it incorporated measures softening the shocks expected from the original reform plan. Although there is no doubt that the 1998 pension reform was a drastic one, actors had to make numerous compromises during in the agreement formation process and the legislation process. Consequently, the system maintained a larger scale of redistribution than originally proposed by the Ministry of Finance, the Ministry of Welfare and the PIF (Pension Insurance Fund) self-government.We also show that the changes made by the FIDESZ-led government resulted not from differences in thinking about pension systems but from populist politics that was imposed heavier burden on both contributors and pensioners.We conclude by pointing out there are many unsolved problems, opacities and uncertainties regarding the future course of Hungary's pension system reform.
著者
金谷 弦 多留 聖典 柚原 剛 海上 智央 三浦 収 中井 静子 伊藤 萌 鈴木 孝男
出版者
日本ベントス学会
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:1345112X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.84-101, 2019-03-31 (Released:2019-05-22)
参考文献数
45
被引用文献数
3 2

To assess macrozoobenthic diversity and habitat conditions following the 2011 tsunamis, we conducted a series of field surveys in the Samegawa and Momiya River estuaries (Fukushima and Ibaraki Prefectures, respectively). We compared measured parameters with existing published datasets for 10 sites along the northeastern Honshu coast. Faunal diversity was higher at the Samegawa site (140 taxa in total, of which 31 were endangered and 51 were endemic; the faunal list included stenohaline marine taxa), likely because of the high habitat diversity at this location and seawater discharge from the thermal power plant. Cluster analysis differentiated distinct faunal community groupings associated with two habitat types: (i) marine-dominated sites, including the Samegawa Lagoon, Mangoku-ura, and Matsushima Bay and (ii) sites with riverine influence, including the mouths of the Samegawa and Momiya Rivers and brackish lagoons along Sendai Bay. The population size of the dominant mud snail Batillaria attramentaria in the Samegawa Lagoon declined steeply after the tsunamis but gradually recovered within five years. Microsatellite DNA analysis showed that the genetic diversity of this population did not significantly change following the tsunamis. After 2016, ongoing restoration work caused drastic habitat degradation at the Samegawa site, resulting in mass mortalities of polyhaline and stenohaline marine taxa and overall reductions in faunal diversity.
著者
緒方 政則 川崎 貴士 佐多 竹良 小原 剛 南立 宏一郎 緒方 政則
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

手術侵襲・麻酔薬が、自然免疫において中心的な役割を持っている食細胞(単球・マクロファージ、好中球)の機能に与える影響を検討することが今回の研究目的である。食細胞の機能活性化はミトコンドリアによるエネルギー産生によるところが大きい。ミトコンドリアの呼吸鎖により産生されるATPは、食細胞機能を活性させることが近年報告されている。そこで、ミトコンドリアのエネルギー産生、活性化、形態に与える手術侵襲・麻酔薬の影響を検討することにした。麻酔薬が単球、好中球のミトコンドリア機能に与える影響について検討した。様々な濃度の局所麻酔薬(リドカイン、メビバカイン、ブプバカイン、ロビバカイン)とともに、健常成人から採取した末梢血から分離した単球、好中球を数時間培養した。培養後、貪食能、細胞内ATP濃度測定、蛍光標識されたマーカーによるミトコンドリア機能評価、ミトコンドリア形態評価をおこなった。リドカインは、貪食能を有意に低下させた。更に、リドカインは、細胞内ATP濃度や、ミトコンドリア膜電位をコントロールに比べて、有意に低下させ、アポトーシスをひきおこした。他の局所麻酔薬は、このような作用は認められなかった。リドカインは、ミトコンドリア機能を低下させて、自然免疫を抑制する作用があることがわかった。更に、静脈麻酔薬について、同様の研究を行った。プロポフォールは、濃度依存性に好中球ミトコンドリア機能を低下させる傾向が見られたが、有意な差は認められなかった。また、手術中の胸部硬膜外麻酔により、上腹部開腹術で、周術期の自然免疫能低下を抑制するかどうか調べた。手術侵襲により、TNF産生能、貪食能は有意に低下したが、殺菌能は低下しなかった。胸部硬膜外麻酔でも、全身麻酔と同様に、手術侵襲による自然免疫能低下がおこった。好中球アポトーシス及びミトコンドリア機能に関しては、個人差が大きく、現在も研究中である。
著者
萩原 剛 太田 裕之 藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.117-123, 2006-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
7 6

人々の自発的な交通行動変容を促すコミュニケーション施策である「モビリティ・マネジメント」を実務的かつ広範に展開していくためには、なるべく多数の人々と、なるべく安価に接触できるようなコミュニケーション技術を検討する必要がある。この認識の下、本研究はアンケート調査の「回収率」に着目し、回収率の向上に影響を及ぼす要因について分析を行った。その結果、配布方法や報酬の提供方法によって、回収率が大きく異なることが示された。また、これらの方策に要するコストを算出することで、より効率的・効果的なアンケート回収率向上方策について検討した。
著者
田中 皓介 稲垣 具志 岩田 圭佑 大西 正光 神田 佑亮 紀伊 雅敦 栗原 剛 小池 淳司 佐々木 邦明 佐々木 葉 Schmöcker Jan-Dirk 白水 靖郎 泊 尚志 兵藤 哲朗 藤井 聡 藤原 章正 松田 曜子 松永 千晶 松本 浩和 吉田 樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.129-140, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本稿ではCOVID-19の蔓延および政府からの社会経済活動自粛要請に伴う,人々の意識行動への影響を把握することを目的にWebアンケート調査を行った.その結果,感染・死亡リスクを,現実の数倍~数千倍過大に評価している様子が明らかとなった.また,接触感染対策として効果的な「目鼻口を触らない」の徹底度合いが他の対策に比べて低く,周知活動の問題点を指摘した.さらに,緊急事態宣言に対する65%以上の支持率や,「家にいる」ことについて,「ストレス」を感じる以上に「楽しい」と感じる人が多いこと,行動決定のために参考にするのはキャスターや評論家や政治家よりも「専門家の意見」の影響が大きいことなどが明らかとなった.
著者
小林 駿 桑原 剛志 川上 萌 能登 文香 天野 雅男
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-5, 2020 (Released:2020-11-13)

オスのマッコウクジラ(Physeter macrocephalus)は,性成熟前に出自集団を離れてオスだけの群れを形成する.商業捕鯨期には独身オス群と呼ばれる密集したオスの群れについて度々報告がなされたが,近年の調査でオスは一日の大半の時間散開して採餌しており,密集した群れ(クラスター)は滅多に形成しないことが明らかになっている.2019年9月16日,北海道根室海峡にマッコウクジラの大群が来遊した.およそ1海里(1852m)の範囲内にいる約30頭が5分程度の潜水と浮上を繰り返しながら同調的に移動し,浮上時には様々なサイズのクラスターを形成した.この日確認された最大のクラスターは18頭で,根室海峡で調査を開始した2006年以降に目撃されたものの中で最大であった.この日観察した個体はいずれも体長10 m前後で,通常この海域で見られる個体よりも小さく,子連れの個体が見られなかったことから,性成熟前のワカオスだと考えられた.また船上からの観察中,この集団は一般的な水平移動速度よりも速い速度で移動し,メスの群れが捕食者に襲われた際にとるマーガレットフォーメーションに似た陣形を二度に渡って組んだ.今回のように大規模で密集したオスの群れやその行動についてはこれまでに観察例がなく,オスの社会構造を理解する上で重要な知見であると考えられる.
著者
加藤 美生 木内 貴弘 河村 洋子 石川 ひろの 岡田 昌史 奥原 剛
出版者
帝京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

保健医療課題を取り扱ったプライムタイムテレビドラマの研究状況を文献調査から把握した。視聴者の医師像の認知および医師への信頼度の影響を分析したところ、医療ドラマの外科医の描かれ方によって信頼度を左右する可能性があることが明らかになった。テレビドキュメンタリー番組に登場した患者の語りについてはその重要性が近年認識されつつあることがわかったが、公害や薬害の番組数は種類によって制作数の偏りが見られた。エンターテイメント・エデュケーション実施団体や医療ドラマ制作者へのヒアリング調査により、制作者の制作動機や課題を収集し、メディアと医療をつなぐ会を設立し医療ドラマ制作教育プログラムを実施した。
著者
木内 貴弘 岡田 昌史 奥原 剛 加藤 美生 石川 ひろの
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.312-317, 2015-08

2004年 9 月,ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors)傘下の学術雑誌有志による臨床試験登録の必須化を求める声明によって,多くの日本国内の医学研究者から,日本国内に日本語の取り扱いができる臨床試験登録サイトの構築を行うことが,要望された.このため,大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)では,2005年 6 月 1 日より,日本初の臨床試験登録システムとして,UMIN臨床試験登録システム(UMIN CTR=UMIN Clinical Trial Registry)を運用開始した.データ項目や運用法は,ICMJE声明の提唱する基準を満たすように設計され,UMIN CTRは,ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors)の認定を得た 5 つのサイトに含まれた.日本を主体としながらも,世界中からの臨床試験登録を集める国際的なサイトとして認知されてきた.UMIN CTRはWHOの定めた必須項目をすべて含んでおり,JPRN (Japan Primary Registry Network)を介して,WHOの全世界臨床試験ポータルサイトへのデータ提供も行っている.登録件数は年々増大して,合計で 1 万 7 千件以上にいたっている. 2013年11月には,匿名化した個別症例の生データを臨床試験登録データに追加できる症例データレポジトリの運用が開始された.これによって,臨床データの散逸防止と長期保存が可能になること,相互チェック・査察のための臨床研究データの質の担保ができること,そして,論文で公表された以外の新たな知見を得るための統計解析のリソースとしての活用が可能となった. 現行の問題点としては,実施責任組織,研究費提供元,病名のためのマスターがなく,文字列入力となっている点が挙げられる.実施責任組織と研究費提供元については,現在,マスターと関連するシステムの改造が実施されており,2015年度中の実現が予定されている.病名については,改善の目途がたっていない. 臨床試験登録情報の内容と形式については,CDISCにおいて,標準化の作業が進められている.CDISCによる標準化の完成度の向上を待って,CDISC標準によるデータの受け入れと取り出しができるようになることが望まれる.
著者
奥原 剛 木内 貴弘
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.91-106, 2020

<p>本稿では進化生物学的視点を採用したヘルスコミュニケーション研究・実践の可能性を考察する。進化生物学の視点で見ると,人の行動には至近要因と究極要因がある。これまでの行動変容理論・モデルを用いたヘルスコミュニケーションは至近要因に着目してきたが,至近要因は人の行動の要因の一部に過ぎない。人の意思決定や行動を考えるには究極要因にも目を向ける必要がある。人の心や行動は,生存と繁殖上の問題を解決するよう自然淘汰を経てデザインされてきた。したがって,人は生存と繁殖及びそれに関連する社会的協力・競争の欲求を持つ。これらが人の究極要因レベルの欲求である。人の究極要因レベルの欲求が,意思決定や行動に影響を与えることが,心のモジュール理論や認知機能の二重過程理論の関連研究で示されている。これらの先行研究をふまえ,ヘルスコミュニケーションで対象者のより良い意思決定を支援するために「何を」「どう」伝えたらよいかを提案し,がん対策への示唆を示す。</p>
著者
土井 修一 山崎 貴司 安岡 茂和 甲斐 拓也 梶原 剛史 夘野木 昇平
出版者
公益財団法人 高輝度光科学研究センター
雑誌
SPring-8/SACLA利用研究成果集
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.96-98, 2021

正極活物質に大気中の酸素を用いる次世代二次電池「水素/空気二次電池」において、ガス拡散電極(空気極)は、酸素を還元・発生させる役割を担うため、水素/空気二次電池の特性に大きな影響を与える。本研究では、放射光を利用した高分解能X線CTを用いて、Bi<sub>2</sub>Ru<sub>2</sub>O<sub>7</sub> 触媒、Ni 粉末及びポリテトラフルオロエチレン (PTFE) で構成される空気極の内部構造の調査を目的として、非破壊観察を試みた。また、実際にX線CT像を取得しながら観察用の試料作製方法を検討した結果、試料をキャピラリーに充填する方法が良いことが分かった。測定の結果、空気極内部に触媒粒子の凝集物や大きな空隙が存在しており、空気極の課題を抽出することができた。
著者
土井 修一 安岡 茂和 石田 潤 甲斐 拓也 梶原 剛史 夘野木 昇平
出版者
公益財団法人 高輝度光科学研究センター
雑誌
SPring-8/SACLA利用研究成果集
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.83-87, 2021

ニッケル水素電池の負極として用いられる RE–Mg–Ni–Al (RE: 希土類元素)系の水素吸蔵合金について、電池反応と固気反応における結晶構造の変化を放射光粉末X線回折により調べた。民生用のニッケル水素電池として使用実績のある合金を用いた測定の結果、主相 A<sub>2</sub>B<sub>7</sub>(2H) 相の回折ピークに関し、電池の寿命末期に近い 600 サイクル充放電を行った試料と 80℃ での水素ガスによる固気反応5サイクルの試料を比較すると、処理前の合金からのピーク位置の変化量はほぼ同じであったが、ピーク形状が異なることが明らかとなった。電池反応と固気反応では、格子歪みや結晶子サイズの観点で、水素吸蔵・放出の結晶構造への影響が異なると推測される。
著者
梶原 剛史 夘野木 昇平 甲斐 拓也 土井 修一 安岡 茂和
出版者
公益財団法人 高輝度光科学研究センター
雑誌
SPring-8/SACLA利用研究成果集
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.270-274, 2017

正極活物質に大気中の酸素を用いる次世代二次電池「水素/空気二次電池」の開発に向け、放射光粉末X線回折を用いて、酸素還元・発生の二元活性を持つBi<sub>2</sub>Ru<sub>2</sub>O<sub>7</sub>パイロクロア型酸化物触媒の結晶構造を調査した。触媒試料は、共沈法により調製した前駆体を焼成することで作製するが、共沈時に分散剤を加えた試料は結晶子サイズが小さく副生成物が減少したが、電池評価では放電電圧が低下した。
著者
成田 正明 江藤 みちる 大河原 剛
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.41, pp.S13-4, 2014

発達期の化学物質のばく露は子どもの正常な発達に悪影響を及ぼし得る。なかでも妊娠中の化学物質のばく露は様々な外表奇形・内臓奇形を引き起こすことはよく知られているが、情動や認知行動への影響についての詳細はわかっていない。<br> 自閉症は人との関わりを主症状とする、先天的な脳の機能障害に基づく発達障害である。しかし胎生期のどの時期に、どういうことが原因で(遺伝的因子、ウイルス感染、薬剤・化学物質)、どんな機能障害が脳のどの部分におきているか、はわかっていなかった。<br> これまで報告されている自閉症の原因としては、遺伝的因子、胎内感染症、化学物質(薬物・毒物)などがある。遺伝的因子の関与は強く指摘されているが、スペクトラムとしてヘテロな症候を持つ自閉症の病態を、単一の遺伝子異常で説明するのは本来困難である。妊婦の抗てんかん薬バルプロ酸などの薬物、アルコール、その他の化学物質の胎内ばく露も自閉症発症原因になり得るとされている。化学物質の胎内ばく露を巡っては、有機水銀摂取なども懸念事項であり、妊婦の魚介類摂取許容量が見直されるなども関連しているといえる。<br> 私たちはヒトでの疫学的事実、即ち妊娠のある特定の時期にサリドマイドを内服した母親から生まれた児から通常発症するよりもはるかに高率に自閉症を発症したことに着目し、妊娠ラットにサリドマイドやバルプロ酸を投与する方法で自閉症モデル動物を作成してきた。自閉症モデルラットでは、これまでにセロトニン神経系の初期発生の異常、行動異常などがあることを報告してきた。<br> 今回の講演ではサリドマイドによる自閉症モデルラットについての知見のほか、有機水銀ばく露実験なども含め、最近の知見も含めて述べていきたい。
著者
町田 夏雅子 石川 ひろの 岡田 昌史 加藤 美生 奥原 剛 木内 貴弘
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.637-645, 2018

<p><b>目的</b> 東京五輪開催決定後,国内外で受動喫煙規制強化を求める声が増え厚生労働省が対策強化に取り組んでいる。本研究では受動喫煙規制に関する新聞報道の現状と傾向を内容分析により明らかにし,行政側の報告書との比較から課題を示すことを目的とした。</p><p><b>方法</b> 分析対象は全国普及率が上位の3紙(朝日・読売・毎日)の2013年9月7日から2017年3月31日までに発行された東京本社版の朝刊と夕刊で,キーワードとして「受動喫煙・全面禁煙・屋内喫煙・屋内禁煙・建物内禁煙・敷地内禁煙」を見出しか本文に含む記事のうち,投稿記事および受動喫煙規制に関係のない記事を除いた182記事である。規制に対する肯定的記載および否定的記載に分けた全37のコーディング項目を作成した。また行政側が発表した内容を記事が反映しているかを考察するため,平成28年8月に厚生労働省が改訂発表した喫煙の健康影響に関する検討会報告書(たばこ白書)より受動喫煙に関する記載を抜き出し,コーディング項目に組み入れた。</p><p><b>結果</b> コーディングの結果,記事数の内訳はそれぞれ肯定的107,否定的7,両論併記50,その他18であった。両論併記のうち否定意見への反論を含むものが14記事(28%)であり,反論の内容は主に「屋内禁煙による経済的悪影響はない」,「分煙では受動喫煙防止の効果はない」という記載であり,いずれもたばこ白書に明示されている内容であった。</p><p><b>結論</b> 受動喫煙規制に関する新聞記事は,規制に肯定的な内容の一面提示が最も多く,最も読み手への説得力が高いとされる否定意見への反論を含む両論併記の記事は少数であったが,社説においては両論併記の記事が一定数認められた。もし新聞が受動喫煙規制に対して賛成なり反対なり何らかの立場を持つのであれば,記者の意見を述べる社説において,反対意見への反論を含む両論併記を行えば,社説の影響力が高まるかもしれない。また,報道が不十分と考えられるトピックも見られ,受動喫煙規制に関する新聞報道の課題が示唆された。</p>
著者
金子 栄 山口 道也 日野 亮介 澤田 雄宇 中村 元信 大山 文悟 大畑 千佳 米倉 健太郎 林 宏明 柳瀬 哲至 松阪 由紀 鶴田 紀子 杉田 和成 菊池 智子 三苫 千景 中原 剛士 古江 増隆 岡崎 布佐子 小池 雄太 今福 信一 西日本炎症性皮膚疾患研究会 伊藤 宏太郎 山口 和記 宮城 拓也 高橋 健造 東 裕子 森実 真 野村 隼人
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.6, pp.1525-1532, 2021

<p>乾癬治療における生物学的製剤使用時の結核スクリーニングの現状について西日本の18施設を調査した.事前の検査ではinterferon gamma release assay(IGRA)が全施設で行われ,画像検査はCTが15施設,胸部レントゲンが3施設であった.フォローアップでは検査の結果や画像所見により頻度が異なっていた.全患者1,117例のうち,IGRA陽性で抗結核薬を投与されていた例は64例,IGRA陰性で抗結核薬を投与されていた例は103例であり,副作用を認めた患者は23例15%であった.これらの適切な検査と治療により,結核の発生頻度が低く抑えられていると考えられた.</p>
著者
荻原 剛志 飯田 元 新田 稔 井上 克郎 鳥居 宏次 Ogihara Takeshi Iida Hajimu Nitta Minoru Inoue Katsuro Torii Koji オギハラ タケシ イイダ ハジム ニッタ ミノル イノウエ カツロウ トリイ コウジ
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告プログラミング(PRO) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.94, pp.89-98, 1988-12-09

我々はソフトウェアの開発過程を形式的に記述し,実行するための関数型言語PDL(Process Description Language)およびそのインタプリタを作成した.PDLでは開発過程をツールの起動やウィンドウ操作の系列として記述する.PDLはこれらの操作のための関数や複数の操作を並列実行するための関数を持つ.また,さまざまなマクロ機能があり,定義の記述を容易に行うことができる.PDLインタプリタは,実行中に検出した未定義関数をそのつどユーザに定義させる機能などを持ち,十分詳細化されていない記述も実行可能である.また,デバッグ機能やヒストリ機能,関数定義の画面編集機能などの機能も備えている.我々はすてにJSD(ジャクソンシステム開発法)など,いくつかの開発技法をPDLて記述し,実行している.PDLインタプリタは現在,いくつかのUNIXワークステーション上で稼働中である.
著者
大野 淳也 白川 真一 大原 剛三 Ohno 1 Junya Shirakawa 2 Shinichi Ohara 2 Kouzou
雑誌
SIG-KBS = SIG-KBS
巻号頁・発行日
vol.B4, no.01, pp.1-7, 2014-07-24

In this report, we propose a neural network model for subjective contour perception. The contour perception has an important role in recognizing the shape of objects for human. Human can perceive a contour even when there is no change of the characteristic or brightness in the image. This type of contour is called subjective contour, and the mechanism of its perception has yet to be completely become clear. It is helpful from the viewpoint of the visual psychology and engineering application if the subject contour perception model can be constructed by the computer. We, therefore, attempt to construct the model of the subjective contour perception by using only input and output images based on a convolutional neural network (CNN). From the experimental results, we confirmed that our proposed model has the possibility of extracting the subjective contour from the given image, though the general model for the subjective contour perception could not be obtained.