著者
吉田 克己 長谷川 晃 瀬川 信久 稗貫 俊文 田村 善之 潮見 佳男 曽野 裕夫 道幸 哲也 亘理 格 山下 竜一 池田 清治 村上 裕章
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、現代社会を構成する政治=行政、経済=市場、生活=消費という3つのサブシステムの内部変化と外部変容(相互関係の変化)を、実定法学という観点から構造的・総合的に把握することである。共同研究を通じて、これら3つのサブシステム相互関係の変容を端的に表現するのが公私のクロスオーバーという現象であることが明らかとなった。また、そのような問題が集中的に現れる問題領域として、競争秩序と環境秩序があることも明らかになった。競争秩序の維持・確保は、その公共的性格のゆえに、伝統的に行政機関が担当すべきものとされてきた。ところが、近時、市民を主体とする民事法的対応の可能性が模索されている。このような動向に応じるためには、市民を主体とするものとして「公共性」を捉え返す必要があること、そして、競争秩序違反に対する損害賠償や差止を可能にする法理もまた、そのような観点から再構成されるべきことが解明された。さらに、競争秩序の形成に関して、上からでなく、下からの自生的秩序形成の可能性とその条件が検討された。競争論の観点からの民法学の原理論的考察も行われ、物権・債権の二分法に基礎には競争観念があることが明らかにされた。環境秩序に関しては、近時、理論的にも実践的にも重要な争点となっている景観問題などを素材として、公私のクロスオーバー現象が分析された。行政法の領域からは、公益、個別的利益および共同利益の相互関連が検討され、民事法の領域からは、差止を可能にする法理として、地域的ルール違反に対するサンクションとしての差止という法理が提示された。そして、刑法の領域からは、環境を保護法益として捉える場合のおける近代刑法原理の限界に関する分析が行われた。さらに、「憲法と民法」の相互関連という問題を通じて、公私の再構成に関する原理的な検討が行われた。
著者
山本 由徳 吉田 徹志 宮崎 彰 坂田 雅正
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

良食味米生産の産地間競合が激化する中で,沖縄県を除く国内で最も早い収穫,出荷を目指して,高知県では早期栽培用極早生品種とさぴか(多収性,良食味)を育成した.しかし,普及を開始した1998年に,農家水田において異常(不時)出穂が多発し,収量,品質が不安定となったため普及面積が伸び悩んでいる.本研究では,極早生品種とさぴかに発生した異常(不時)出穂現象を取り上げて,その発生要因と発生防止のための栽培技術的な方策を明らかにしようとした.得られた結果は以下のように要約される.1.とさぴかは北海道育成品種に比べ,最終主稈葉数が少ないため,早晩性を示す播種から止葉展開までの有効積算温度(基準温度10℃)が低く,播種からの有効積算温度が301〜348℃日で幼穂形成期(平均幼穂長1mm)に達することが明かとなった.また,とさぴかは感光性・感温性および基本栄養生長性程度も比較的小さく,これらの特性は交配母本の高育27号と類似していた..2.とさぴかの幼穂分化苗を移植して,不時出穂(主稈)が発生すると,収量は,不時出穂の発生しなかった幼穂未分化苗区に比べ9〜15%少なかった.これは,m^2当たり穂数は多いが,分げつ穂の発育が劣り,1穂籾数が少なく,m^2当たり籾数が減少したことと,発育停止籾割合が高く,登熟歩合が低くなったためであった.また,玄米品質も青米の増加により低下した.3.不時出穂を防止・軽減するために,育苗期間中での幼穂の分化,発育を遅らせるには,播種から200℃日(3.5齢)以上では窒素追肥は行わず,箱当たり播種量を多くして,地上部乾物重/草丈比を低くする管理が必要であると考えられた.また,育苗時の基肥窒素の増施や育苗期間中の剪葉処理も効果的であることが明らかとなった.
著者
吉田 隆 下平 保直 林王 弘道 横内 克巳 秋山 秀樹
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.499-507, 2006-11-05
参考文献数
13
被引用文献数
2

黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準を検討した。潮岬での黒潮の離岸を示す串本と浦神の潮位差が小さい値に安定していることに加えて,遠州灘沖での黒潮流軸の最南下点が北緯32度より南に位置することを,黒潮が大蛇行流路であるか否か判定する基準とした。さらに,大蛇行・非大蛇行流路と黒潮流路のA,B,C,D,N型分類との対応について整理した。
著者
井口 壽乃 伊原 久裕 西村 美香 山本 政幸 井田 靖子 吉田 紀子 エンズレイ ジェレミー
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

1930年代の芸術家バイヤー、チヒョルト(ドイツ)、モドレイ、ノイラート(オーストリア)、ストナー(チェコスロヴァキア)の英国および米国への亡命・移住によってニュー・タイポグラフィ、アイソタイプ、写真広告などのグラフィックデザインの理論と技術が移植され、戦後デザインの基盤形成を果たした. その際パーシー・ランド・ハンフリーズ社、スィーツ・カタログ会社が重要な要となった.研究成果はシンポジウム「越境のグラフィズム」開催と論文集『グラフィックデザイン1930』Fuji Xerox(2008)にまとめ、一般に公表した.
著者
若林 隆 仁木 一郎 吉田 松年 早川 哲夫 JERZY Krechn ZDZISLAW Wai MICHAL Wozni
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.培養細胞系によるミトコンドリア(ミト)巨大化実験モデルの確立:従来の動物(マウス、ラット)に代わって培養細胞系による実験モデルを確立し、ミト巨大化の機序解明を可能にした。2.ミト巨大化機序の解明:様々な病的条件下でのミト巨大化の普遍的機序に、フリーラジカルが直接関与することをin vivo,in vitroの実験系で証明した。3.ミト巨大化の細胞病理学的意義の解明:巨大ミト存在下の細胞がやがてアポトーシスに陥る事を培養細胞系で見いだした。フリーラジカルに晒された細胞内ミトは、巨大化により自らの酸素消費量を減少することによって酸素ラジカル産生を減少させ細胞内フリーラジカル量の増加を緩和しようとするのであり、ミト巨大化はオルガネラ・レベルでの適応と考えられる。4.フリーラジカルスカベンジャーによるミト巨大化阻止の成功:coenzyme Q_<10>,α-tocopherol,4-OH-TEMPOにより、in vivo,in vitroでの種々病的条件下でのミト巨大化の阻止に成功した。6.臨床応用を目的としたフリーラジカルスカベンジャーの開発:in vivoの実験系で4-OH-TEMPOの副作用がみられたので、新たに6種の誘導体を合成しスカベンジャー効果を培養細胞系で検討した結果、4-octanoyl-,4-lauroyl-TEMPOに4-OH-TEMPOよりはるかに優れたスカベンジャー効果が見られ、in vivoの系で検討中。
著者
吉田 敦彦 今井 重孝 西平 直 西村 拓生 永田 佳之 井藤 元
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1)日本各地の全てのシュタイナー学校(8校)のフィールドワーク調査による現状把握。2)範例な実践事例の収集および学習指導要領との対照における分析・考察。3)ユネスコスクール認定のシュタイナー学校におけるESD実践事例の研究。4) NPO法人立シュタイナー学校における社会的制度的認知プロセスに関するアクションリサーチ。5)シュタイナー学校の卒業生に関する欧米の先行調査の紹介と日本での調査実施の準備。
著者
小林 研二 青木 太郎 西岡 清訓 高地 耕 小森 孝通 畠野 尚典 吉田 恭太郎 林 英二朗
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.28-34, 2011-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
2

61歳男性.主訴は嚥下時心窩部痛,胸部中部食道(Mt)の長径3cm,IIc,食道扁平上皮癌で,ESDを施行.切除標本では低分化型扁平上皮癌,sm1,ly1,v1であり,追加治療として化学療法を施行.14カ月後に胸部大動脈周囲リンパ節転移再発にて,手術を行い,組織学的にはリンパ節再発,内分泌細胞癌であった.集学的治療をするも,初回治療から2年1カ月,食道切除から10カ月で原病死した.術前診断困難な悪性度の高い食道癌におけるESD後のリンパ節再発死亡例を報告した.
著者
吉田 忠
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

(1) 全国各地の図書館において関連文献の調査・収集につとめたが、殊に大谷大学図書館、国立天文台図書館、横浜市立大学図書館などにおいて関係資料を採訪した結果、内通、円煕、介石以後の論者たちの文献を調査・収集することができた。(2) 幕末の神道家賀茂規清が有名な天文学者間重富から聞いた話では、円通は老齢になっても須弥山説の講釈を行っていたという。事実彼が1817年三重県津市一身田専修寺で行った講釈の記録ノートが現存している。そこでは孔子君子の暦法が仏暦と同じだと述べているが、こうした表現は一般大衆の共感を喚ぶにきわめて有効な言い回しであったろう。(3) こうした講義記録は、円通の弟子達、たとえば2大弟子である信暁(1837,1855)、環中(1854,2点)、また円煕のそれが残っている。しかし、どういうわけか、円通の場合も含めて、『立世阿毘曇論日月行品』に対する講義が多くを占めているのは注目してよい。(4) 幕末から明治初年の護法運動は、中国伝道プロテスタント宣教師たちの書物による地球概念と地動説の普及を警戒し、須弥山宇宙論の観点から批判した。佐田介石らの運動も、この一連のコンテクストの中で考える必要があることを明らかにした。(5) 介石らの努力にもかかわらず、須弥山説運動が明治中期に衰退するのは、明治の学校制度の整備による科学知識の普及の結果、これが仏教関係者の間だけの論争に終わったことによることを指摘した。
著者
吉田 克己 田村 善之 長谷川 晃 稗貫 俊文 村上 裕章 曽野 裕夫 松岡 久和 池田 清治 和田 俊憲 山下 龍一 亘理 格 瀬川 信久 秋山 靖浩 潮見 佳男 伊東 研祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

公正な競争秩序や良好な自然環境、都市環境を確保するためには、行政機関や市町村だけでなく、市民が能動的な役割を果たすことが重要である。要するに、公私協働が求められるのである。しかし、公私峻別論に立脚する現行の実定法パラダイムは、この要請に充分に応えていない。本研究においては、行政法や民法を始めとする実定法において、どのようにして従来の考え方を克服して新しいパラダイムを構築すべきかの道筋を示した。
著者
吉田 治典 後藤 祥仁
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.73, pp.95-104, 1999-04-25
被引用文献数
6

近年,蓄熱式空調システムの導入が,電力負荷の平準化につながり発電所の総合効率を上昇させ,省エネルギーの効果があると同時に,地球温暖化問題で懸案となっているCO_2の削減にも重要な役割を果たすといわれている.しかし,蓄熱式空調システムは制御が難しく,計画どおりの運用がなされていない事例が多いようである.このシステムの最適運転には建物に発生する次の日の負荷を予測し,その情報を基に適切な温度レベルで適正量を蓄熱する必要があり,熱負荷予測技術が不可欠となる.本研究では,既報で示した熱負荷予測の手法を実建物に適用して検証し,熱負荷予測法における精度向上のため種々の改良を行った過程を報告する.しかしその結果,若干の改善は見られたものの,大幅な改善は見られず,既報の手法の妥当性が裏付けられた.
著者
近藤 幸一 千葉 龍矢 小野 裕司 吉田 栄吉 松下 伸広 阿部 正紀
出版者
公益社団法人日本磁気学会
雑誌
日本応用磁気学会誌 (ISSN:18804004)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, 2004-04-01
被引用文献数
2

携帯電子機器の急速な高速度化・小型化とそれに伴う電子回路の高集積化により,半導体部品等から発生する高周波伝導ノイズを,ノイズ発生源である半導体素子内部あるいはその近傍で抑制する技術が望まれています.我々はフェライトめっき法により得られるNiZnフェライト薄膜を用いたGHz伝導ノイズ抑制体(バスタフェリックス_[○!R])を開発しました.Fig.1に示すように,従来の金属粉とポリマーからなる複合磁性シート(厚さ50μm)に比べ約1/15の厚さ(31μm)で同等以上の性能を発揮するので,携帯電話,ノートパソコン、デジタルカメラのようなデジタル電子機器の輻射ノイズ対策、及び内部干渉・誤動作の防止に最適です.
著者
中山 雄二 佐藤 明雄 吉田 彰顕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.640-648, 1994-11-25
参考文献数
15
被引用文献数
28

高速無線アクセスを実現するためミリ波帯が大きく注目され,屋内におけるマルチパス伝搬研究等が活発化してきている.本論文では,ミリ波帯の屋内高速ディジタル伝送特性の評価法を新しく提案している.まず屋内のマルチパス環境下における広帯域伝搬特性の測定を行い多重波構造を明らかにしている.次に多重波環境下におけるディジタル伝送特性を定量化するため,4PSK-100Mbit/sの変復調装置とマルチパスフェージングシミュレータにより10^<-4>の符号誤り率が生じるときの希望波と干渉波の所要レベル比(D/U)を評価した.その結果,干渉波の遅延時間がそのシンボル長を越える場合,符号誤り率は希望波と全干渉波のレベルの比(D/U_T)で決定され,干渉波の遅延時間には依存しないこと,干渉波数の増大と共に所要D/U_Tはその符号誤り率を与えるS/N(N:ガウス雑音)に漸近することを明らかにした.以上の結果から屋内高速無線通信におけるD/Uを用いた回線設計法を提案している.
著者
稲積 泰宏 吉田 俊之 酒井 善則 堀田 裕弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1130-1142, 2002-07-01
被引用文献数
29

リアルタイム動画像通信に関するアプリケーションが普及する一方で,ユーザ数やユーザ当りの需要帯域の増大等によって帯域の確保が困難となっていることを背景として,動画像を利用可能なビットレートに再符号化して伝送するトランスコーダの必要性が高まっている.ユーザから見たサービス品質を可能な限り高く保つためには,動画像の空間・時間方向の情報をバランス良く削減する画質評価基準が必要がある.従来のトランスコーダは主に2乗誤差に基づく制御が行われているが,2乗誤差はユーザが視・知覚する動画像品質(主観評価品質)を直接に表しているとはいえない.そこで本論文では,ビデオサーバに蓄えられた動画像(原画像)を指定されたビットレートで再符号化する際に,主観評価品質を最大化するフレームレート(最適フレームレート)の推定手法を提案する.本手法は,多くの主観評価実験による平均オピニオン評点(MOS:Mean Opinion Score)を少数のパラメータを含む関数で近似し,原画像から得られる特徴量を用いて関数のパラメータを推定する.この関数に対して指定されたビットレートを与え,その最大点を求めることによって最適フレームレートを得る.提案法を用いてopen dataに対する最適フレームレートを区間推定した結果,平均誤差4frames/s程度で推定可能なことを確認している.
著者
吉田 友祐 天目 隆平 柴田 史久 木村 朝子 田村 秀行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.470, pp.7-12, 2007-01-12
被引用文献数
7

複合現実感システムで現実・仮想両空間の幾何学的整合のために用いるマーカは,これまで検出・同定しやすい人工的なパターンが用いられてきた.こうしたマーカの利用が美観を損ねているとの苦情・批判も少なくない.本研究では「美観と頑健性を両立させた半人為的マーカ」の利用を推奨し,そのようなマーカ・セットを場合に応じて使い分けること提唱する.その第一歩として,対象領域と同系色のマーカ群を用いる「ツートンカラー方式」を考案したので,そのデザインと幾何位置合わせを試みた結果を報告する.
著者
藤原 隆広 熊倉 裕史 大田 智美 吉田 祐子 亀野 貞
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.347-352, 2005-09-15
被引用文献数
12 20

1. 京都府綾部市において, 2003年6月〜2004年5月までの1年間に毎月2〜3回の間隔で購入した市販のホウレンソウ(合計127サンプル)に含まれるL-アスコルビン酸(AsA)と硝酸塩の周年変動を調査した.2. AsA含量は, 夏期(7月〜8月)に低く冬期から春先(1月〜3月)にかけて高い傾向が認められた.また, この傾向は可食部上部(葉身側)で特に高かった.3. 硝酸塩含量は, 7月〜9月に高く, 1月〜3月に低い傾向が認められた.また, この傾向は可食部下部(葉柄側)で顕著であった.4. 生体重および葉色(SPAD値)と2つの品質成分(AsA含量と硝酸塩含量)との間に有意な相関が認められたが, これらの相関関係は外観形質から品質成分の多寡を推定するには十分ではないと判断された.