著者
牛山 素行 吉田 淳美
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.487-497, 2006-02-28
被引用文献数
6

A heavy rainfall caused by typhoon No. 0514 (Nabi, GLIDE: TC-2005-000154-JPN) and a stationary front occurred in Japan from September 4 to 8, 2005. A 1238-mm, 48-hour precipitation was recorded at Mikado in Miyazaki prefecture. This was the highest recorded precipitation of all observatories administered by the Japan Meteorological Agency since 1979. Based on data from the agency, the highest 24-hour precipitation records in the last 25 years were revised at 56 observatories, and the highest 48-hour precipitation records were revised at 64 observatories as a result of this rainfall. However, there was no observatory where the highest 1-hour precipitation was revised. In this heavy rainfall, 2,834 houses were destroyed and 21,834 houses were inundated; most of the property destruction was caused by inundation. In total, 29 persons were killed or missing in 8 prefectures: 13 in Miyazaki prefecture, 5 in Kagoshima, 4 in Ohita, 3 in Yamaguchi and 4 in others. Of these deaths, 22 were attributable to sediment disaster. On the other hand, in Hinokage town, Miyazaki prefecture, there were no deaths even though a large number of houses were destroyed. This is because all the residents had taken refuge at least 6 hours before the flood and debris flow occurred. It should be noted that in Miyazaki city, an electronic bulletin board system (BBS) administered by the city office was helpful. Whenever a resident used the BBS to ask a question, the city office replied within several minutes. With this system, information was exchanged efficiently and there were no incidences of online vandalism. This example showed the potential for official disaster BBSs in Japan.
著者
吉田 純一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.60, no.477, pp.173-179, 1995
被引用文献数
2 1

Zuigenji temple in Fukui city is a well known temple which was built by Masachika MATSUDAIRA, the fifth feudal lord of the Fukui clan. The main hall was moved from the residential building called "Kozashiki", which was a section of the "Honmaru palace" of Fukui castle. The palace of "Kozashiki" was built between the thirteenth year of the Bunsei (1830) to the second year of the Tempo (1831) for Naritsugu MATSUDAIRA who was the fourteenth feudal lord of the Fukui clan. The main hall of Zuigenji temple is of great historical importance as it is only remaining building of the original Fukui castle.
著者
吉田 智成 高橋 友和 出口 大輔 井手 一郎 村瀬 洋
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.28, pp.1-6, 2011-08-29

監視カメラ映像からの顔画像認識において,顔領域が低解像度であることは認識精度の低下を招く.この問題に対して,動画像を用いた超解像技術を利用することで認識精度が向上できると考えられる.しかし,従来の超解像は,平面物体を撮影した動画像を対象としている場合が多く,顔画像のように向きや表情の変化によって 2 次元的に非剛体変形する動画像を扱うことが困難である.そこで本報告では,局所領域毎に位置合わせをすることで,顔向きや表情の変化に頑健な超解像を行う手法を提案する.具体的には,フレーム間の位置合わせに非剛体レジストレーションを用いることで顔画像の非剛体変形に柔軟に対応する.実際に撮影した動画像を用いた実験の結果,超解像の性能向上が見られ,提案手法の有効性が確認できた.In a face recognition system with surveillance video cameras, the decrease in resolution of face images degrades the recognition accuracy. To overcome this problem, multi-frame super-resolution techniques could be used to improve the accuracy. However, most super-resolution techniques assume that a planar object is captured in input images. Therefore, it is difficult to apply them to face images that include non-rigid deformations caused by changes of face poses and expressions. In this report, we propose a multi-frame super-resolution method that can deal with changes of face poses and expressions. To achieve this, alignment of each local region between video frames is performed by using a free-form deformation method. Thus, the proposed method can easily deal with the non-rigid deformation of face images. Experimental results demonstrate that the proposed method improved the performance of super resolution for actual videos. From this, we confirmed the effectiveness of the proposed method.
著者
吉田 正夫
出版者
岡山大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

1.8種類のウニ(タワシウニ、コシダカウニ、エゾバフンウニ、タコノマクラ、アカウニ、バフンウニ、ムラサキウニ、サンショウウニ)の幼生および稚ウニの飼育を試み、理学部付属臨海実験所レベルの小規模施設における稚ウニ生産技術の確立をめざした。2.タコノマクラを除き、大規模な飼育設備を持たない施設においても、数千個の稚ウニを生産できることが判明し、実験の性質を限れば、研究者にある程度安定的にウニを供給できる目途がついた。3.海水の汚染状況は各地で異なるため一概には言えないが、適当な濾過装置を用いれば幼生飼育可能な海水を得ることができる。4.幼生飼育の餌としては、珪藻Chaetoceros gracilisが最適である。5.変態前の幼生は、30リットルパンライト容器中で、1mlあたり6個体の密度で飼育した。飼育液中に繊毛虫が発生してきたら換水した。6.幼生が8腕期に達し、ウニ原基が十分に発達したら変態誘導をおこなった。予め器壁に付着珪藻を付けておいた500リットルパンライト容器中に、プラスチックの波板を組合わせて作ったコレクターを設置し、変態直前の幼生を入れると直ちに変態を開始した。7.20°Cで飼育して、変態誘導までに要した時間は、アカウニ、21日、バフンウニ、18日、ムラサキウニ、12日、サンショウウニ、9日であった。8.変態後の稚ウニは、アナアオサやモクを餌として与えて飼育し、殻径が5mm〜1cmに達したら海へ放流した。9.500lパンライト容器で生産可能な稚ウニの数は、最大1万であろう。
著者
竹内 秀雄 吉田 修
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.593-596, 1982-05

A case of Mullerian duct cyst in a child is presented. In this case the cyst did not communicate with the urethra, and it could be removed easily by surgery. It contained fluid intermediate between serum and urine.
著者
渡辺 寧 村上 浩康 松枝 大治 吉田 武義 水田 敏夫 石山 大三 清水 正明 木村 純一 渡邊 公一郎 今井 亮 浦辺 徹郎 鹿園 直建 林 謙一郎 実松 健造 星野 美保子
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

世界各地の重希土類およびインジウム鉱床の調査を実施し,ベトナム,タイ等東南アジア地域で重希土類に富む花崗岩風化殻を発見するとともに,日本,中国,ベトナム,ペルー, ボリビアでのインジウムの資源量の見積もりを行った.これらの結果,中国以外の地域でも重希土類およびインジウムの資源ポテンシャルが存在することが判明し,また鉱床成因のための必要条件が考察された.
著者
横田 眞一 吉田 和弘 金 俊完
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

長寿命で耐振動性などの特長を備えた小形で低コストな極薄ジャイロを実現することを目的として,本年度では,小形化,薄形化,集積化,大量生産が可能なMEMS技術を用いた極薄ECFマイクロレートジャイロを開発した.ECFジャイロは,1)ECFジェット発生部,2)噴流発生部と流路,3)速度方向検出部の主要要素で構成されている.まず,MEMS技術によるECFジェット発生部として,高アスペクト比を有する金属構造体である三角柱-スリット形電極対を提案し,フォトリソグラフィによりガラス基板上に形成した金属の薄膜に高さ500μmのレジストによる鋳型を形成し,Ni電鋳により電極を形成する製作プロセスを提案した.鋳型に用いるレジストとして,高アスペクト比のマイクロ構造体の形成と,電鋳後の鋳型を選択的に除去可能な厚膜レジストKMPRを選定し,電鋳におけるプロセス条件を検討することでマイクロ電極対の試作に成功した.次に,電極対を形成したガラス基板にエポキシレジストSU-8により噴流発生部と流路を試作し,従来の機械加工によるジャイロに用いられていた速度方向検出部と組み合わせることで,部分的にMEMS化したECFマイクロレートジャイロを構成し,特性実験を行った.厚さを5mm,流路体積を10×8×t0.5mm^3とし,従来よりも1/5程度に小形化したジャイロの動作を確認したほか,流路高さを1mmとしたジャイロで印加電圧0.38kVとした際に比較的良好な特性が得られた.また,支柱の上の薄膜にホットワイヤとなる回路を形成した形の速度方向検出部を提案し,MEMS技術に応用可能なプロセスを用いてその試作を行ない,有効性を確認した.
著者
山口 晶 吉田 望 飛田 善雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集C (ISSN:1880604X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.407-417, 2010 (Released:2010-06-18)
参考文献数
13

本研究では,一度液状化した地盤が別の地震によって再度液状化する現象(再液状化現象)が発生する理由として土粒子の水中落下に着目した.これは,液状化後の体積減少によって発生する土粒子の水中落下現象を想定したものである.土槽に作製した模型地盤を強制的に水中落下させ,その前後でせん断抵抗の変化を調べた.この結果,土粒子の水中落下距離が大きいほど,土層のせん断抵抗が減少する層厚が増加した.この実験から,土粒子の水中落下現象が,再液状化が発生する原因の一つであることを示した.
著者
中野 俊郎 吉田 昭治 粟生田 忠雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

長辺50m、短辺40mの20aの水田に排水の能力差のある暗渠条件を長辺方向に2本設けて、暗渠の能力差による排水効果を測定した。一本の暗渠は小排水路に排水され暗渠の水頭差は田面下60cmである。他方の暗渠は田面下100cmに埋設された集水渠に接続したため大排水路の水位が集水渠より常時高く暗渠には約40cmのサクションが掛かる構造になった。その結果、取水時、間断潅水時および落水の水管理時には集水渠に接続した方のA暗渠の水位は常時田面下60cmを維持するようになり、土壌水分張力値もA暗渠の方が大きくなることがわかった。気象装置や土壌水分張力測定器を設置観測開始年の2年間は少雨高温の特異年であった。TDR土壌水分率測定結果も平行して測定した結果は、作土層と耕盤層の土壌水分は心土層より約1日遅れで圧力が伝達されて減少し始めることが分かった。お盆過ぎから刈取り期近くの間断灌漑は慣習的に5〜4日間隔で水管理されているが、耕盤層の水分張力の減衰が1日間観測されていることから、3日間隔の方が稲の生育生長および収量や地耐力の発現に好結果を期待することができると思われる。地耐力の測定にはコーン指数で判定する構造改善局基準があるが、側面摩擦抵抗や泥炭地水田では必ずしも適さない事例があり、ベーン試験と三軸試験機を用いた非排水条件の側圧一定試験から有効応力解析を行いベーン試験による沈下量とスリップ率から判定した。その結果、シルト質粘土地盤の作土層表面が極度に乾燥履歴を受けてシルトの噛合い成分が強くなり、刈取り期近くになると粘着力成分より摩擦力成分が卓越することが判明した。一方、植物遺骸が堆積した泥炭地水田の作土層の表面が乾燥すると植物遺骸の繊維質がメッシュ構造を生成して地耐力が増強されると判断した。
著者
吉田 道利 泉浦 秀行 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に装着された可視光高分散エシェル分光器用に、望遠鏡カセグレン焦点から光を導く光ファイバー天体導入システムの開発を行った。また、ファイバー集光システムに付随する問題点とその解決策を明らかにした。さらに、巨星周りの惑星探査計画を進め、散開星団に世界ではじめて系外惑星を発見するなど、巨星周りに惑星を新たに8個発見することに成功し、恒星質量・年齢と惑星質量・軌道半径の間に相関関係が存在する兆候を見出した。
著者
松岡 勝 大野 洋介 戎崎 俊一 清水 裕彦 吉田 篤正 河合 誠之
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目指すものは、超広視野光学望遠鏡システムの基礎開発を行うことである。この装置を使った科学的な意義は、短時間で変動する天体・天体現象を連続的にモニター観測をして予測のできない天体現象を捉えることである。この研究で鍵となるのは「広視野望遠鏡」と「画像データの連続短時間読出し」の2点である。このため、本研究では(1)「広視野望遠鏡」ユニットを設計・製作し、(2)市販のCCDを焦点面にセットした試験観測を実行した。5度の視野をもつ望遠鏡は、通常の天文学用としては考えられない大きな視野である。このような広視野の天文観測用望遠鏡が実際実現され得るかどうかが、広視野トランジェント天体監視用望遠鏡システム実現の最初の試験項目であった。この試験観測のため、八ケ岳南麓天文台で試験観測を行った。散開星団M45(すばる)の観測を行い、測光制度0.1の限界等級が12等級であった。アナログ回路のノイズが60e相当であったが、現在は30e相当まで抑える見通しがつき、引き続き試験観測を行っている。CCD読み出し回路は、汎用CCD駆動・読み出しシステムを開発した。これを使って「連続短時間読み出し」に関して鍵となる技術であるTDI(ドリフトスキャン)方式による試験観測を野外で実施し、10秒間、望遠鏡固定の状態で鮮明な星像を捉えることができ、初期の目的が達成された。本研究の最大の目的であった望遠鏡システムの基礎開発は、ほぼ初期の目的を達成した。今後は、引き続いてこの望遠鏡の詳細な特性を試験観測で行う予定である。また、大量にこのような広視野望遠鏡を安価で製作する方法についての検討が必要である。さらに、大量の画像データを速やかに処理するソフトウヱアも将来の問題として残されている。
著者
吉田 篤司
出版者
浜松医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

IL-12はTh1細胞やNK細胞にIFN-γ産生を誘導することが知られている。我々はIFN-γがマクロファージにIL-12mRNAの発現を誘導する事を見出し、IFN-γ⇒マクロファージ⇒IL-12⇒Th1細胞⇒IFN-γというPositive regulatory circuit(PRC)が存在するのではないかと考えた。本研究ではこのPRCがどの程度生体防御に関与しているかを明らかにするために、実験動物にはIFN-γレセプターを持たずPRCを形成できないIFN-γレセプターノックアウト(IFN-γ-KOマウス)を用い、そのBCGに対する生体防御能を調べた。しかし、このマウスではIFN-γレセプターを持たないため一酸化窒素(NO)等のIFN-γにより誘導されるもの全てが産生されないのでBCGの増殖抑制を指標にしたのではPRCの重要性を見ることはできない。そこでIFN-γmRNA産生を指標にしてPRCのBCG排除における重要性を調べた。IFN-γ-KOマウス及びコントロールマウスにBCGを経静脈的に感染させ、脾臓に発現するIFN-γ,IL-12及び誘導型NO合成酵素(iNOS)mRNAの量を定量的RT-PCR法で比較したところ、iNOS mRNAの発現は有意に低下していたが、IFN-γmRNA及びIL-12mRNA発現は僅かに低下が認められたのみであった。また、これらマウスより得た脾細胞を試験管内でBCG刺激し、脾細胞に発現するIFN-γ,IL-12及びiNOSmRNAの量を同様に調べたが、結果は同じであった。さらに、これらマウスより得た骨髄マクロファージを試験管内でBCG刺激し、発現するIL-12mRNAの量を定量的RT-PCR法べたがこれにはまったく差がなかった。以上の結果より、コントロールマウスに比べPRCを形成できないIFN-γ-KOマウスではBCG感染によるIFN-γ mRNA及びIL-12mRNA発現は僅かに低下していることが分かったが、これはそれほど有意なものではなく、PRCはBCGに対する生体防御において中心的な働きをするものではないことが明らかになった。
著者
山田 礼子 木村 拓也 井ノ上 憲司 森 利枝 舘 昭 吉田 文 西郡 大 園月 勝博 相原 総一郎 沖 清豪 杉谷 祐美子 田中 正弘 安野 舞子 渡辺 達雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究の成果は、(1)KCSS(韓国版大学生調査)を24年に実施し、日韓のデータ結合により分析、(2)日本では、平成25年まで、延べ866大学・短大から約14万人がJFS、JCSSとJJCSSに参加するなど標準的調査が根付いた。(3)24年には中国版CSSが試行され、25年には、上海市で中国版CSSの実施へと進展し日本発の標準的調査のアジアでの展開への基盤が形成されつつある。(4)2014年末までに、14万人のデータを格納し、参加大学が利用できるデータベースを開発、(5)日本のカレッジ・インパクト研究を下記で示す理論モデルにまとめたという5点が挙げられる。
著者
和田 正平 吉田 憲司 小川 了 端 信行 A.B. イタンダーラ 阿久津 昌三 栗田 和明 江口 一久 小馬 徹 S B Pius A B Itandala
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

平成6年度は以下のような実績をあげることができた。1.カメルーン北西部州では、端が州都バメンダから離れたいくつかの村で調査を行ない、都市化、貨幣経済化の浸透のなかでの性による役割分担の変化を示した。男性のグループは、稲作農民組合を形成して水田耕作を拡大している。一方、伝統的な自給的農業の担い手であった女性もグループで土地を購入し、換金性の高い作物を栽培して貨幣経済に積極的にかかわっていく動きを見せている。男女それぞれが新しい社会経済的なニッチェを生み出している傾向が明らかになった。またカメルーン国北部で、フルベ族の女性の調査を行なった、フルベ社会ではイスラム教の影響で女性の社会的な立場は低いのとされ、仕事も禁じられている。しかし、実際には自活している女性も少なくなく、昔話の中にも女性の力を讚えているものもある。女性の生活を多面的に示し、実際の両性の関係を精密に記述する試みをした。2.セネガル国ダガ-ルで、小川は都市に住む人々の経済活動を調査した。インフォーマル・セクターでの女性の活躍が昨年度から指摘されていたが、全体像の記載の必要から男性も含めたインフォーマル経済従事者たちの活動状況を広く調査した。これらの経済活動と都市民の互助組織がセネガル国全体の経済、発展と密接な関連があることを示した。3.ザンビア国でチェワ社会とンゴニ社会での儀礼における性差に注目して、吉田が調査を行った。その結果、父系社会であるンゴニ社会から母系社会であるチェワ社会へ精霊信仰が導入され、その時点で信仰の主たる担い手が男性から女性へと変化したことがわかった。また、その信仰がチェワ社会の伝統的な儀礼組織の欠如を埋め、それを補完する形で浸透してきていることを示した。4.コートジボワール国ダブ郡で、茨木はアジュクル社会の女性の活動に注目した。最近の都市部での人口急増によってキャッサバを加工した食品、アチュケの需要が高まっている。アジュクルの女性はこの食品を加工生産する作業にふかく関わるようになり、その結果、農作業や日常の生活上の性別の分業に変化がみられるようになった。平成4年度から6年度にかけての本研究によって以下のような成果をあげることができた。1.本研究全体の主題は、女性、伝統と変化、に関わるものであったが、これは研究対象となったそれぞれの民族社会の理解をすすめる上で大きな意味をもつ問題であり、それぞれ有効な記述の観点を引き出すことができた。したがって、女性と変化を主題に研究する視点は、多くの社会にあてはまる普遍性をもち、これからの文化人類学研究の分野として重要であることが示唆される。2.特に変化を踏まえての記述は、多くの場面で有効であった。フェミニズム人類学やマルキズム文化論の影響下の人類学では十分に示すことができなかった、「現在起っている社会の変化に柔軟に対応して変化していく両性の役割」という研究視点を提供することができた。3.本研究にって提供された、女性の文化人類学に向けての研究視点として、具体的には以下のようなものを挙げることができる。それは、都市の中での女性の経済活動、都市と農村との関係で農村女性が果たす役割、農村女性の生活改善運動、他民族やキリスト教との接触による女性の役割の変化、両性の役割のノルムと実際、などである。とくに現在では国際的な経済活動、開発と援助の影響の下で大きな変化と対応を示している女性の諸活動に注目する研究視点が重要であると示唆された。
著者
柳田 益造 武田 昌一 郡 史郎 桑原 尚夫 吉田 優子 力丸 裕
出版者
同志社大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

日本語の韻律について,現象面から見た多様性と歌唱における韻律制御の自由度,韻律の個人性,社会的要因の影響,感情との関係,韻律情報の脳内処理に関する神経科学的検討,一般言語学からの考察を行った.(1)特殊な状況での韻律についてのデータから音響的特徴の変動幅を調査した.特殊な発声例として,幼児の矯声における高F_0,高校野球の選手宣誓における平坦F_0,母語との近さや状況による平均F_0の違いなどを調べた.また,制約付きの韻律としての歌唱におけるF_0の特にビブラートについて邦楽と洋楽(ベルカント唱法)を比較した.(2)基本周波数、ホルマント周波数等の音響的特徴と個人性との関係を物理的および知覚的に分析した.同時に,発声速度の異なる音声や,訛りなどに現われる特徴の変化についても研究した.個別音に関する研究としては,連続音声中に現れる鼻音化された/g/について,音響的ならびに知覚的な面から検討した.(3)社会的要因に由来する韻律の多様性.およびアクセント型以外の韻律の地域的多様性について,社会言語学的観点を加えつつ音響音声学的な手法を用いて調査した.具体的には,共通の台詞を種々の方言話者が発声した音声データについての知覚的な印象について検討した.(4)発話に含まれる感情と韻律の関係を多変量解析等の手法を用いて規則として抽出し,その規則に基づいた韻律で音声合成を行い,その有効性を評価した.また,百人一首の韻律やホーミーについても研究した.(5)物理量としての音のどのパラメタが韻律知覚に関与し,脳内のどのような処理によって,韻律知覚が生成されているかを,劣化音声を用いて聴覚神経科学の立場から追究し,韻律知覚生成機構の解明を試みた.(6)一般言語学の立場から,ピッチアクセント言語である日本語の韻律をストレスアクセント言語における韻律と比較することによって,音声におけるアクセント付与の普遍性について考察した.
著者
吉田 貴富
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.30, pp.439-452, 2009-03-21

対話型ギャラリートークが日本に紹介されると同時に,学校教育への導入・応用の動きも始まり,啓蒙書的・指南書的な書籍の出版も相次いでいる。しかし,これらの書籍はほぼ共通して進行役(ファシリテーター)の美術的素養や扱う作品に関する知識・理解・解釈を問題にしない。むしろそれらは不要であるとの言説も存在する。はたしてこのような認識や喧伝の仕方は,学校教育における対話型鑑賞を実り多いものに導くであろうか。本稿は,対話型ギャラリートークに関する文献,アメリア・アレナスの対話型ギャラリートーク,それに小学生を対象とした実践例を再検討して,対話型ギャラリートークを学校教育へ導入・応用する際に重要な要件のひとつとして,進行役が,扱う作品に関する知識・理解・解釈を具えていることが挙げられることを明らかにした。
著者
遠西 昭壽 川上 昭吾 大高 泉 吉田 淳 平野 俊英 楠山 研 森本 弘一 磯崎 哲夫 橋本 健夫 劉 卿美 遠西 昭壽
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アジアの中で発展が急な韓国、中国、台湾、シンガポール4ヶ国、中国については教育特区の北京、上海、香港の理科教育の実態を調査した。アジア各国は例外なく理科教育の充実に努めている。特に、韓国では英才教育院、科学英才教育院において英才教育が進められていること、シンガポールでは2007年に「シンガポール大学附属理数高校」(National University of Singapore High School of Math and Science)、理数教育に特化した高校が開校していることが特記すべきことである。コンピュータ教育の充実も盛んに行われている。特に、シンガポールでは国が力を入れ、コンピュータはインターネット、電子黒板等多面的に利用されている。いじめがあるのは日本で、韓国では問題になりつつある。その他の国ではこの問題はない。3年間の本研究で、韓国、中国(北京、上海、香港)、台湾、シンガポールの研究者との交流を深めることができ、国際シンポジウムを開催することもできて、今後の研究交流の基盤が整備されたことは、大きな成果であった。
著者
夏目 長門 酒井 映子 山中 克己 大塚 隆信 千田 彰 中垣 晴男 小島 卓 服部 正巳 前田 初彦 森田 一三 井上 誠 吉田 和加
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

モンゴル国において3年間に5回にわたり調査を行うとともにモンゴル人スタッフに通年依頼して調査を行った。その結果、(1)モンゴル人口唇口蓋裂発現率は、0.07%であった。(日本人口唇口蓋裂0.2%)(2) 961名の妊婦の母体環境調査を行った。(3)モンゴル人の口唇口蓋裂遺伝子レポジトリーでは、1, 999名の試料を入手できた。
著者
池田 瑞音 宮永 豊 下條 仁士 白木 仁 水上 正人 吉田 廣 目崎 登
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.287-295, 2008-12-10 (Released:2009-02-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2

The purposes of this study were to examine the effect of teeth clenching on isokinetic muscle strength during isokinetic elbow (60, 120 degrees per second) and knee (60, 180 degrees per second) extension and flexion using a BIODEX isokinetic dynamometer. Twenty-five American football players (19.6±1.3 years) with normal occlusion served as subjects. Isokinetic muscle strength of the elbow and knee, extension and flexion strength were measured during tooth clenching (Bite), biting with a soft biteplate (Soft), biting with a hard biteplate (Hard), and without tooth clenching (No-bite). Analysis of the peak torque per body weight and the time to peak torque yielded the following results:1) The peak torque per body weight of elbow extension with Soft was significantly higher than with Bite and No-bite (120 deg/s, p<0.05).2) The time to peak torque of elbow extension with Hard was significantly slower than that with No-bite and Soft (60 deg/s, p<0.05), and those with Bite and Hard were significantly slower than that with No-bite (120 deg/s, p<0.05).3) The peak torque per unit body weight of knee flexion with Bite and Hard were significantly lower than that with No-bite (60 deg/s, p<0.05), and that with Bite was significantly lower than that with No-bite (180 deg/s, p<0.05).4) The time to peak torque of knee flexion with Soft and Hard were significantly slower than that with No-bite (60 deg/s, p<0.05), and that with Bite, Soft and Hard were significantly slower than that with No-bite (180 deg/s, p<0.05).These findings suggest that tooth clenching and the materials of the biteplate are factors that lead to increased isokinetic muscle strength of elbow extension and to decreased isokinetic muscle strength of knee flexion. Thus it appears that tooth clenching and the materials of the bite-plate do not influence isokinetic elbow flexion muscle strength or knee extension muscle strength.