著者
坂本 雅明
出版者
国際戦略経営研究学会
雑誌
戦略経営ジャーナル (ISSN:21858985)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.59, 2022-08-25 (Released:2022-11-23)

本研究の目的は、M&A のタイプに応じた効果的なPMI 推進方法を明らかにすることである。PMI に関する最近の研究では、タスク統合に先立って人的統合に取り組むべきことが示されている。しかし、これらの研究の多くはM&A のタイプが考慮されていない。そこでシナジー獲得方法が異なる類似型M&A・補完型M&A という分類に着目し、この両タイプが共存するM&A 事例を比較分析した。その結果、(1) 類似型M&A では概ね通説が当てはまるものの人的融和策だけでは人的統合達成は難しく、途中段階からのタスク統合の併用が効果的であること、(2) 補完型M&A では時間をかけた人的統合が逆機能をもたらすことがあり、むしろ早期のタスク統合が望まれることの2 点が示唆された。
著者
阿部 俊夫 坂本 知己 田中 浩 延廣 竜彦 壁谷 直記 萩野 裕章
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.147-156, 2006-01-30 (Released:2009-01-19)
参考文献数
27
被引用文献数
7 4

河川への落葉供給源として必要な河畔林幅を明らかにするために,森林内の落葉散布パターンを実測し,さらに,風速変動を考慮した簡単な物理モデルを用いて落葉散布の推定が可能かを検討した.落葉広葉樹林において,谷の両側斜面に単木的に分布するクリの木(両側各1本)を対象として,落葉散布を実測したところ,斜面から谷への方向では,落葉の散布距離は,最大で約25mであり,ほとんどの落葉は15m以内に落下することが分かった.モデルによる落葉散布推定の結果,一方のクリでは,樹冠近傍を除き,モデル推定値と実測値がよく一致した.累積落葉密度は,モデル,実測とも,距離15mで約90%に達した.もう一方のクリでは,モデルによる散布距離の推定値はやや過大となった.モデル推定値と実測値の比較の結果,林内風速が正確に測定できれば,本研究で提案したモデルを用いて落葉散布パターンを推定できる可能性が示唆された.しかし,林内では,樹木や地形の影響で局所的に風の吹き方が異なり,これがモデルの推定精度を下げる要因になっていると思われる.一方のクリで,モデルと実測が一致しなかったのも,この風速の不均質性が原因と推察された.ただし,大まかな落葉散布範囲は,河畔域の代表的な地点で風を観測することにより十分推定可能と思われる.また,本モデルは,その性質上,樹冠近傍の落葉密度を過小評価してしまう.しかし,落葉の累積%が80~90%に達する距離は,モデル,実測ともほぼ同じであり,落葉供給範囲を推定するという目的を考えれば,この違いは大きな問題ではないといえる.以上から,本モデルは,現時点での検証が不十分であるものの,今後,河川への落葉供給源の推定に有効なツールになりうると思われる.
著者
小林 謙一 春成 秀爾 坂本 稔 秋山 浩三
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.139, pp.17-51, 2008-03-31

近畿地方における弥生文化開始期の年代を考える上で,河内地域の弥生前期・中期遺跡群の年代を明らかにする必要性は高い。国立歴史民俗博物館を中心とした年代測定グループでは,大阪府文化財センターおよび東大阪市立埋蔵文化財センターの協力を得て,河内湖(潟)東・南部の遺跡群に関する炭素14年代測定研究を重ねてきた。東大阪市鬼塚遺跡の縄文晩期初めと推定される浅鉢例は前13世紀~11世紀,宮ノ下遺跡の船橋式の可能性がある深鉢例は前800年頃,水走遺跡の2例と宮ノ下遺跡例の長原式土器は前800~550年頃までに較正年代があたる。奈良県唐古・鍵遺跡の長原式または直後例は,いわゆる「2400年問題」の中にあるので絞りにくいが,前550年より新しい。弥生前期については,大阪府八尾市木の本遺跡のⅠ期古~中段階の土器2例,東大阪市瓜生堂遺跡(北東部地域)のⅠ期中段階の土器はすべて「2400年問題」の後半,即ち前550~400年の間に含まれる可能性がある。唐古・鍵遺跡の大和Ⅰ期の土器も同様の年代幅に含まれる。東大阪市水走遺跡および若江北遺跡のⅠ期古~中段階とされる甕の例のみが,「2400年問題」の前半,すなわち前550年よりも古い可能性を示している。河内地域の縄文晩期~弥生前・中期の実年代を暫定的に整理すると,以下の通りとなる。 縄文晩期(滋賀里Ⅱ式~口酒井式・長原式の一部)前13世紀~前8または前7世紀 弥生前期(河内Ⅰ期)前8~前7世紀(前600年代後半か)~前4世紀(前380~前350年頃) 弥生中期(河内Ⅱ~Ⅳ期)前4世紀(前380~前350年頃)~紀元前後頃すなわち,瀬戸内中部から河内地域における弥生前期の始まりは,前750年よりは新しく前550年よりは古い年代の中に求められ,河内地域は前650~前600年頃に若江北遺跡の最古段階の居住関係遺構や水走遺跡の遠賀川系土器が出現すると考えられ,讃良郡条里遺跡の遠賀川系土器はそれよりもやや古いとすれば前7世紀中頃までの可能性が考えられよう。縄文晩期土器とされる長原式・水走式土器は前8世紀から前5世紀にかけて存続していた可能性があり,河内地域では少なくとも弥生前期中頃までは長原式・水走式土器が弥生前期土器に共伴していた可能性が高い。

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著者
坂本浩然
出版者
巻号頁・発行日
1835
著者
坂本 裕
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.79-85, 2001-03-31 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
2

知的障害養護学校小学部4年2名(男・自閉症・DQ59、女・自閉症・LIQ39)について、前者は入浴の自立、後者は身支度の自立をターゲットとし、教師のコンサルテーションに基づいて母親が家庭で自立の支援を行った事例について報告した。いずれの事例とも約3か月でその支援は終了したが、入浴の事例では、支援期間中、その経過について母親と担任教師との間で細かな検討がなされた。それに対して、身支度の事例では、支援開始までの母親への対応に時間を要し、開始後も担任教師との検討はほとんど行われなかった。こうした母親の対応の違いは、それぞれの家庭の人員構成や生活環境に大きく影響されていた。これらのことより、発達障害児とその家族への支援を行う際には、各家族が個々にもつニーズ、さらには、支援観などを十分に考慮していくことの重要性が指摘された。
著者
坂本 光德
出版者
四天王寺大学大学院
雑誌
四天王寺大学大学院研究論集 (ISSN:18836364)
巻号頁・発行日
no.12, pp.93-104, 2018-03-20

韓国の公的扶助制度の大きな改革は、2000 年施行の国民基礎生活保障法であった。扶助の種類など日本の生活保護法と類似する点も多い制度であるが、改正を繰り返して2015 年にはそれまでのパッケージ方式の給付から各扶助の個別給付への大きな転換も果たしている。 その中で、国民基礎生活保障法の対象である生活困窮者を経済的理由等で文化芸術に触れる機会が少ない文化疎外階層と呼び、その人々の文化的な生活を送ることを支援することを目的に文化利用券制度が2004 年から展開されてきた。2017 年現在その文化利用券は「文化ヌリカード」として発行され、生活困窮者160 万人以上が利用している。 本論では文化利用券制度の概要と展開を明らかにして、日本の生活困窮者対策に示唆できることを検討する。
著者
熊倉 忍 坂本 美一 岩本 安彦 松田 文子 葛谷 健
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.499-504, 1988-06-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

黒色表皮症を伴い家族性に高インスリン血症を認めたインスリン受容体異常症の1例を報告する. 症例は16歳女性. 主訴は腋窩部の色素沈着. 男性化徴候や多嚢胞性卵巣はない. 100g経ログルコース負荷試験 (OGTT) では耐糖能は正常だが高インスリン血症 (基礎値40μU/ml, 頂値746μU/ml) を呈した. インスリン抗体, インスリン受容体抗体はなく, インスリン拮抗ホルモンは正常であった. インスリン感受性試験で感受性の低下を認めた. 患者赤血球のインスリン結合能と親和性はほぼ正常であった. 患者血清のゲル濾過の結果高プロインスリン血症は否定された. 患者インスリンの生物活性をモルモット腎膜成分を用いるRadioreceptor assay (RRA) およびラット脂肪細胞を用いるグルコース酸化能にて検討したが正常であった. 以上より, このインスリン抵抗性は受容体結合以後の障害と考えられた. また, 母親, 兄弟に高インスリン血症を認め, 遺伝性疾患である可能性が高い.
著者
小林 紘 磯部 和順 鏑木 教平 吉澤 孝浩 佐野 剛 杉野 圭史 坂本 晋 高井 雄二郎 栃木 直文 本間 栄
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.190-195, 2017-06-20 (Released:2017-07-04)
参考文献数
17

目的.Epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor(EGFR-TKI)治療に制酸剤併用が与える影響を明らかにする.方法.2008年8月から2014年12月にGefitinib/Erlotinibで加療されたEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌98例を対象とし,制酸剤併用群と非併用群へのEGFR-TKIの臨床効果を後方視的に検討した.結果.Gefitinib群の制酸剤併用は25/56例(44.6%)で,Erlotinib群は33/42例(78.6%)であり,Gefitinib群/Erlotinib群の奏効率,病勢制御率,無増悪生存期間は制酸剤併用の有無で有意差は認めず,Erlotinib群のGrade 3以上の肝障害は,制酸剤併用群が有意に少なかった(3% vs. 22%,p = 0.023).結論.制酸剤併用はEGFR-TKIの治療効果や毒性に大きな影響を与えないことが示唆された.
著者
山根 和也 伊尾 阿佑美 宇佐美 利恵 大西 麻美 小笠 ひかる 栗木 るえ子 小柳 美咲 齋藤 かおり 鷹見 正貴子 中島 千里 坂本 君代 小田 美紀子 Kazuya YAMANE Ayumi IO Rie USHAMI Mami OONISHI Hikaru OGASA Rueko KURIKI Misaki KOYANAGI Kaori SAITOU Makiko TAKAMI Chisato NAKASHIMA Kimiyo SAKAMOTO Mikiko ODA
雑誌
島根県立大学出雲キャンパス紀要 (ISSN:2187199X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.37-48, 2014-12-11

保健師学生と住民との協働活動により、壮年期の住民を対象に運動を取り入れた生活習慣病予防のキャンペーンや健康教室を実施した。本研究の目的は、壮年期の住民の健康意識向上を促すために必要とされる支援方法を明らかにすることである。活動の周知方法は、回覧板が最も効果的であり、知人からの紹介も多数見られた。また、教室参加者のうち45.5%が子ども連れであった。このことから、壮年期の特性を考慮し、子どもや職場、サークルなどをきっかけにした支援が有効な方法であることが明らかとなった。また、地域の核となる人と協働活動を行うことで、より壮年期の住民のニーズや視点に沿った活動を展開できることが明らかとなった。
著者
中島 章博 上野 佳奈子 坂本 慎一 橘 秀樹
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.73, no.626, pp.415-422, 2008-04-30 (Released:2008-08-20)
参考文献数
13

In Japan, “open-plan” type classroom is becoming popular in elementary schools. Although this planning has various merits for educational activities, sound propagation between adjacent classrooms tends to be a serious acoustical problem. In this study,therefore, the sound propagation between closely located two classrooms connected by an open-space was investigated by numerical simulation using FDTD method. In the simulation, two classrooms and the open-space connecting them were modeled and the configuration of the rooms and sound absorption treatment on the room boundaries were examined. As a result, it has been found that sound absorption treatment on the ceiling and architectural/acoustic treatment for the wall of the open-space which makes mirror-reflection are effective to mitigate the sound propagation between the classrooms.
著者
松嶋 優貴 白旗 慎吾 坂本 亘
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.201-219, 2004-12-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

ウェーブレットは不規則,不連続な関数(または信号や画像)を効率的に表現するための道具であり,スケーリング関数,ウェーブレット関数と呼ばれる2種類の関数から作られる基底関数の線形結合によって関数などを表現する.スケーリング関数,ウェーブレット関数の組(この組もウェーブレットと呼ばれる)については,すでに数種類が開発されており適宜選択することができる.しきい値法(Thresholding)は,ウェーブレットによるノイズ除去のための代表的な手法であり,観測値にもとづく関数の推定を基底関数の線形結合で表現するための係数を「しきい値」と比較し,しきい値よりも絶対値が小さな係数の値を0で置き換える.この置き換えによって小さな変動を無視することによりノイズを取り除く.しかし,しきい値法によって得られるノイズ除去の結果はウェーブレットの種類に依存するので,しきい値法で用いるウェーブレットの種類によってしきい値法の結果も異なる.それゆえに観測値に応じてウェーブレットを選択する必要がある.本論文では種々のウェーブレットから観測値に適するものを数値的に選択するための基準を示す.選択基準としてはAIC(赤池情報量基準)を用い,選択の対象となるウェーブレットの中で最小のAICをとるものを最良として選択する.小さなAICに対応するウェーブレットほどしきい値法における考えをよく満たすことが,AICを選択基準として採用した根拠である.AICによるウェーブレットの選択法について,その適用結果を図によって例示し,シミュレーションを行うことにより,AICが適切なウェーブレットを選択することを示す,また,ウェーブレットを選択するための他の方法(最小自乗法,MDL法)との比較を行う。
著者
齊藤 正和 佐藤 智秋 後藤 真希 坂本 薫 宮本 みづ江 田畑 陽一郎 伊東 春樹
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.421-426, 2014 (Released:2014-08-02)
参考文献数
26

【目的】外来血液透析 (HD) 患者の身体活動量に関連する因子を検討するとともに, HD施設までの通院方法と身体活動量および身体機能との関連について検討した. 【方法】外来HD患者53例 (男性34例, 女性19例, 平均年齢62±13歳) を対象とし, 基本情報, 合併症の重症度指標であるComorbidity Index, 栄養状態の指標であるGeriatric Nutrition Risk Index (GNRI), 身体機能の指標であるHD患者移動動作評価表, 身体活動量の指標であるLife Space Assessment (LSA) を調査した. 各調査項目とLSA得点との相関係数を算出し, LSA得点と有意な相関関係を示した因子を独立変数, LSA得点を従属変数とした重回帰分析を実施した. また, HD施設までの通院方法により通院自立, 送迎 (歩行) および送迎 (車いす) に分類し, HD施設まで通院が自立しているか否かを予測するLSA得点ならびに移動動作得点のカットオフ値をROC曲線より決定した. 【結果】LAS得点と有意な相関を認めた因子は年齢, GNRI, 透析期間, Comorbidity Index, 移動動作得点であり (p<0.05), LSA得点の規定因子として身体機能および年齢が抽出された (R2=0.54, p<0.01). また, 通院自立, 送迎 (歩行), 送迎 (車いす) の順で移動動作得点およびLSA得点は有意に低値を示し (p<0.05), HD施設までの通院方法が自立か否かを規定するLSA得点は, 63点 (ACU : 0.861, p<0.01, 95%CI 0.760-0.962), 移動動作得点は, 44点であった (ACU : 0.912, p<0.01, 95%CI 0.835-0.990). 【結語】HD血液透析患者の身体活動量の規定因子として, 年齢ならびに移動動作能力が抽出された.
著者
桑原 達朗 今中 翔一 河村 剛至 渡部 多真紀 黒木 裕治 河野 将行 長尾 剛至 三宅 康史 坂本 哲也 安野 伸浩
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.876-880, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
6

エチレングリコール(ethylene glycol,以下EGと略す)中毒は,有毒代謝物による代謝性アシドーシスなどにより死に至ることがあり,迅速な代謝阻害薬ホメピゾールの投与や血液透析が有効である。患者は自殺目的に大量のEG を服用し,救急要請となった。推定内服時間から搬送まで約7時間,来院時の血液検査で代謝性アシドーシス(pH 7.262),アニオンギャップ上昇(24.1mEq/L)を認めた。救急隊の情報で,搬送前に薬剤師がホメピゾールを加温融解し,来院39分後にホメピゾール投与,114分後に血液透析を開始した。その結果,重度のアシドーシスの進行や乏尿を認めることなく,入院10日目に退院となった。今回の症例では,救急隊の初動から薬剤師の介入により早期ホメピゾール投与による代謝物生成抑制,CEによる透析管理,医師による病態の評価と治療方針決定など,多職種連携による迅速な治療介入が,中毒治療に奏功したことを示す。
著者
石戸谷 滋人 青木 大志 櫻田 祐 菅野 裕樹 坂本 忍 千坂 和枝 小池 喜代子
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.207-211, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
5
被引用文献数
1

泌尿器科医は内分泌外科領域の手術において,腹膜外アプローチを頻用してきた。副腎領域では,後腹膜をバルーンで拡張して操作腔を作成,後腹膜鏡下副腎摘出術を盛んに施行している。種々のエネルギー源(電気メス,超音波凝固切開装置,シーリングデバイス)を用いての低侵襲かつ安全な手技である。また,一部の施設ではさらに整容性に優れた“単孔式副腎手術”も行われている。前立腺手術では,レチウス腔を展開しての前立腺全摘術を施行している。出血し易いサントリニ静脈叢の処理にはバンチング操作で対応,勃起神経の温存操作では,ファインな手術器械を吟味して慎重な操作で臨んでいる。最近では手術支援ロボット「ダヴィンチ」(daVinci)を用いた“ロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術”が急速に広まっている。
著者
横山 貴司 石川 博文 坂本 千尋 渡辺 明彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2612-2617, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
14

S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻を5例経験した.平均年齢68.4歳,男性3例女性2例で,5例中3例は他院にて大腸癌あるいは膀胱癌と診断され,1例は人工肛門を造設されていた.主訴は4例で糞尿あるいは気尿を認め,1例は腹痛,腹部膨満感のみであった.5例中3例において,注腸検査,膀胱鏡,MRIにより結腸膀胱瘻が描出可能であった.全例で大腸憩室症の既往があったこと,画像上,腫瘤形成を認めないことから,憩室炎に伴う瘻孔と診断し,S状結腸切除,膀胱部分切除術を施行した.術後経過は全例良好であった.結腸憩室炎による結腸膀胱瘻は比較的稀な疾患であり,自験例5例とともに15年間の報告例を集計し,以前の本邦報告例と比較し,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
坂本 秀樹 安川 文朗
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
pp.2022.005, (Released:2022-10-14)
参考文献数
22

超高齢化社会を迎える日本にとって,日常生活のQOLや生産性を低下させるだけでなく,認知症発症の要因となり得る難聴の対策は喫緊の課題の一つである。しかし,難聴対策として有効な補聴器の装用率は,他の先進国と比較して日本が著しく低く,補聴器の普及について改善の余地が大きい。補聴器はこれまで聴覚障害者のための福祉補装具の一つとして認識され,流通やビジネスの視点からはほとんど議論されてこなかった。欧米先進国では認知症発症抑制への期待や技術イノベーションによる補聴器の機能向上から装用対象者の拡大が進み,補聴器ビジネスの潮流に変化が生じつつある。世界の補聴器の99%は欧米のメーカーが生産しており,日本でも輸入補聴器のシェアは70%を超えることから,今後,海外の補聴器ビジネスの変化が,日本のそれにも大きく影響を与えることが予想される。そこで本稿では,これまであまり議論されたことが無かった日本の補聴器ビジネスに焦点を当て,欧米の現状と比較しながら,今後その規模が拡大してゆくと考えられる日本の補聴器業界のビジネスモデルにおける現状の分析と課題,および今後の展望について検討を行った。
著者
芳賀 道匡 高野 慶輔 羽生 和紀 坂本 真士
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.77-90, 2017 (Released:2017-04-21)
参考文献数
31
被引用文献数
5 6

本研究の目的は, 2つの研究を通して, 33項目から構成される大学生活における主観的ソーシャル・キャピタル尺度(SSCS-U)の開発と, 信頼性および妥当性を検討することにあった。本研究では2つの調査を通じて, SSCS-Uを構成する項目を選定し, 開発されたSSCS-Uの因子構造の再現可能性, 内的一貫性と再検査信頼性の検討, そして他の心理社会的要因との関連を検討した。その結果, SSCS-Uは, 仲間, クラス, 教員に関する主観的ソーシャル・キャピタルという3因子によって構成され, 因子構造の再現可能性があることが示された。また, 内的一貫性と再検査信頼性があること, ソーシャル・スキルおよび主観的ウェルビーイング, ソーシャル・キャピタル関連行動と関連があることが分かった。本尺度は, 学生が主観的に認知しているソーシャル・キャピタルを包括的に測定する尺度として, 大学生活のソーシャル・キャピタルに関する研究の更なる発展に寄与すると考えられる。
著者
森田 真理 坂本 理恵 大城 絵理奈 嘉山 郁未 菊池 恵理華 河原 英子 筑田 理絵 住友 正和 木田 達也 坂下 博之 豊田 茂雄 太田 郁子 渡部 春奈 斎藤 真理
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.135-139, 2022 (Released:2022-10-06)
参考文献数
12

【緒言】メサドンを用いたがん疼痛緩和治療の経過中に全身麻酔下で手術を行った2症例を経験した.【症例1】57歳女性.多発骨転移を伴った右進行乳がんで疼痛治療にメサドンを導入し,化学療法の経過中に右乳房切除術を行った.創部痛で臨時の鎮痛薬を用いたがメサドン休薬によるがん疼痛の増悪はみられなかった.【症例2】76歳男性.肺腺がんの痛みにメサドンを導入した.化学療法経過中に腰椎転移で下肢麻痺切迫状態になり除圧固定術を施行した.術中の痛みの増悪にケタミンを用い,麻酔覚醒後の痛みの再増悪にはフェンタニル注の持続注射で対応した.【結語】メサドンは従来の強オピオイドで緩和困難な強いがん疼痛に用いるが,本邦では内服薬のみの認可で他のオピオイドとの換算比がないため,周術期等の休薬が必要な期間の痛みの管理には注意を要する.したがって,メサドンの処方医はメサドン内服中の患者の周術期の円滑な痛みのコントロールにも積極的に貢献することが望まれる.