著者
吉川 真 吉光 徹雄 高木 靖彦 出村 裕英 野口 高明 宮本 英昭 川口 淳一郎 藤原 顕 安部 正真 岩田 隆浩 川勝 康弘 田中 智 森 治 矢野 創
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.7, 2006

小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星イトカワの観測で、500m程度の小さなS型小惑星についての理解が深まったが、我々は、さらに次の小天体探査ミッションについての検討を行っている。次のミッションとしては、S型と同様に小惑星帯で主要なタイプとなっているC型小惑星の探査を行いたい。このタイプでは、有機物や水をより多く含んでいると思われており、生命前駆物質の科学としても重要である。ここでは、これまでのミッション検討結果をまとめて報告する。また、是非、多くの研究者に小天体探査に参加してもらうことを呼びかけたい。
著者
藤村 彰夫 安部 正真 矢田 達 田中 智 加藤 學 はやぶさ試料初期 分析チーム
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.74, 2009

宇宙航空研究開発機構に設置された惑星物質試料受け入れ設備(キュレーション設備)は今後の種々のサンプルリターンに対応したものであるが、直近の2010年6月の小惑星探査機「はやぶさ」によるサンプルリターンに備え、設備の機能性能を確認する試験運用を実施した。今回の試験運用で、はやぶさ試料の受け入れ、試料カプセルの開封、試料の取り出しと保管、秤量や分配の手順確認ができた。現時点でクリーンチャンバー内では取り扱うことができない微小なサイズの試料についてのハンドリングを可能にする対応についても今後検討すると共に、直近に迫っている「はやぶさ」試料帰還に備えて、リハーサル運用を実施する予定である。
著者
北里 宏平 安部 正真 三戸 洋之
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.114, 2004

65803 Didymos はPHAの軌道グループに属する近地球型小惑星で, 比較的探査機が到達しやすく次期小天体探査計画の候補となり得る天体である. 我々は東京大学木曽観測所の30-cm望遠鏡 (K.3T) を用いて, この小惑星の15晩のライトカーブを取得した. Didymos のライトカーブには, 周期約2.26時間のダブルピークの連続周期カーブと周期約11.90時間の減光カーブが複合しており, 主星の周りに衛星が存在することを示唆している. これらの周期と主星と衛星の直径比より, 衛星の軌道を真円と仮定して二体問題で概算すると, この小惑星のバルク密度について約2.0 g/cm<sup>3</sup> という値が得られた.
著者
松本 徹 Dennis Harries 仲内 悠祐 浅田 祐馬 瀧川 晶 土山 明 安部 正真 三宅 亮 中尾 聡 Falko Langenhorst
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

硫化鉄はコンドライトや彗星塵などの初期太陽系物質に遍く含まれているが、星間空間や星周環境でのFeやSの存在形態はよく分かっていない。星間空間では固相の硫化鉄がほとんど確認されず、その原因として星間イオンの照射による硫化鉄の破壊機構が提案されている[1]。一方で、S型小惑星表面では硫黄のみが顕著に少ないことが報告されており、これは太陽風(太陽から飛ばされる荷電粒子)の照射や微小隕石衝突による硫化鉄からの硫黄の消失が原因であると推測されている[2]。こうした宇宙空間に曝された物質の変成作用を広い意味で宇宙風化と呼ぶ。銀河におけるFeやSの進化を解明する上で、宇宙風化が引き起こす硫化鉄の変成を具体的に理解することは重要である。小惑星イトカワから回収したレゴリス粒子は宇宙風化の痕跡が保存され[3]、月レゴリスに比べて硫化鉄を豊富に含む。そこで本研究ではイトカワ粒子の観察から、これまで報告が乏しかった硫化鉄の宇宙風化組織を記載し、その変成過程を明らかにすることを試みた。まず、宇宙科学研究所にて走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて硫化鉄を含む11個のイトカワ粒子に対して、troilite(FeS)に注目して表面の観察を行った。その後2つの粒子に対しては、さらに集束イオンビーム装置(FIB)を用いて粒子の一部から厚さ約100nmの切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で切片の観察を行った。イトカワ粒子表面の観察の結果、ブリスター(水ぶくれ状の)構造がtroilite の表面に見られた。これらは粒子表面が太陽風照射を受けた証拠である[3]。一方で一部のtroilite表面はいびつで、ウィスカー状の組織がその表面から伸びていた。ウィスカーの幅は50nm-500nm、 高さは50nm-2μm 程度であった。ウィスカーは密集する領域で約500nmから1μm の間隔で存在した。TEM観察の結果troilite表面のウィスカーはα鉄であり、その伸長方向は低指数の結晶軸方向におよそ一致することが分かった。ウィスカーが発達しているtroiliteの表面下にはバブルで満ちた深さ90 nm程度の結晶質の層が存在し、ウィスカーはその最表面から発達していた。イトカワ粒子のバブル層は、太陽風の主要な構成イオンであるHイオンとHeイオンの蓄積に伴うH2・Heガスの発生により形成したと考えられる。本研究ではイトカワ粒子と比較するために硫化鉄への太陽風照射を模擬したH+照射実験も行なっており、同様のバブル構造が再現されている。イトカワ粒子表面のα鉄の存在は硫黄原子が粒子表面から失われたことを示唆している。その過程としては、硫黄の選択的なスパッタリングを引き起こす水素よりも重い太陽風イオンの打ち込み[4]や、バブル内部の水素ガスと硫化鉄との還元反応[5]などが考えられる。イトカワの近日点(0.95AU)での放射平衡温度(約400K)下において、硫化鉄中の鉄はウィスカー間の1μmの距離を10年程度の短い期間で拡散できるため[6]、鉄原子はtroilite中を拡散してウィスカーに十分供給される可能性がある。ウィスカーが低指数方向に成長していることは、成長方向を軸とする晶帯面のうち表面エネルギーの低い低指数面で側面を構成できるので、ウィスカーの表面エネルギーを最小化した結果であると考えられる。Feウィスカーの形態は、Ag2Sから発生するAgウィスカーやその他の様々な金属めっき表面で成長するウィスカーに類似している。それらの成長機構として提案されているようにtroiliteの内部応力に関連した自発的な成長[7]によってウィスカーが形成したのかもしれない。[1] Jenkins (2009) et. al. ApJ.700, 1299-1348. [2] Nittler et al. (2001) MAPS. 36, 1673-1695. [3] Matsumoto et al. (2015) Icarus 257, 230-238. [4] Loeffler et al. (2009) Icarus. 195, 622-629. [5] Tachibana and Tsuchiyama (1998) GCA. 62, 2005-2022. [6] Herbert et al. (2015) PCCP. 17, 11036-11041. [7] Chudnovsky (2008) 48th IEEE Conf., 140-150.
著者
安部 正高
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2009-05-25

新制・課程博士
著者
安部 正真 矢田 達
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

新規に整備を行ったイオン照射装置を用いて、小惑星模擬表層物質としての含水ケイ酸塩鉱物と無水ケイ酸塩鉱物に対して、太陽風を模擬した水素イオンの照射実験を行った。照射前後の反射スペクトル測定を行ったところ、水素イオンの照射によって、H2OおよびOHに関連する吸収バンドに強度変化が見られた。このことから、水素イオンがケイ酸塩鉱物と反応して水を生成することを示唆する知見が得られた。大気のない小惑星や月表層のケイ酸塩鉱物に水素イオンが貫入し、結晶構造を壊し、活性化した酸素に水素イオンが結合することにより、SiOHやH2Oが形成していると考えられる。今年度は照射する試料を変えて、イオン照射量とスペクトル変化の関係に関する知見を獲得した。微隕石衝突を模擬した宇宙風化実験の結果とも整合する結果が得られている。また、ケイ酸塩鉱物への水素イオンの貫入で形成されるOHやH2Oの温度安定性についての知見を得るために、照射装置のサンプルホルダーに加熱機構を付加する改修を行った。この結果は実際に月表面で観察された水に関する吸収バンドの生成メカニズムを考察するのに役立つと考えられる。また、微隕石衝突を模擬した実験による反射スペクトル変化の測定は主に、可視波長域で行われているため、その結果と比較できるように、本研究で用いているFTIRの観測波長域を可視域まで拡張した。可視域には0.7ミクロンの水質変成に関係する吸収バンドがあり、宇宙風化がこの吸収バンドにどのような変化を及ぼすかについての考察にも役立つと考えられる。これらの改修後の照射・加熱実験および反射スペクトル測定の実施と結果の考察については、来年度も引き続き行う予定である。
著者
矢野 創 川口 淳一郎 安部 正真
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
宇宙科学シンポジウム
巻号頁・発行日
vol.1, pp.153-160, 2001-01-11
被引用文献数
1
著者
藤村 彰夫 安部 正真 中村 智樹 野口 高明 岡崎 隆司 矢田 達 石橋 之宏 白井 慶
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.63, 2010

小惑星イトカワを探査した「はやぶさ」の回収カプセルが無事相模原のキュレーション設備のクリールームに搬入された。回収カプセルは、開梱、外観チェック、内部のCT撮像、アブレータ取外し、サンプラコンテナ清掃、チャンバー搬入準備が行われ、クリーンチャンバーに搬入された。サンプラコンテナの開封、コンテナ内部の光学観察の後に、サンプルの取出し、分配、保管作業を順次実施する。これらのキュレーション作業は、サンプル1次分析チームから選抜された研究者とともに数か月程度実施され、その後、米豪の研究者も迎え、日本国内で1次分析が行われる予定である。本講演では、カプセル回収から、キュレーション設備搬入後のキュレーション作業についての現状を報告する。
著者
安部 正真 藤村 彰夫
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.185-190, 2011-06-25
被引用文献数
2

小惑星探査機はやぶさが地球に帰還し,回収されたカプセルの中から発見された粒子がイトカワ起源であると判断された.その全容はまだ明らかではないが,最大100μm超の粒子も確認され,10μm以上の粒子も1000粒以上あると予想される.キュレーション設備では,サンプルの取出しを行い,その一部を初期分析チームに分配し,初期記載を行うための初期分析が開始された.本稿では,サンプルコンテナ開封後の作業と,初期分析開始に至るまでの経緯について報告する.