著者
桂 紹隆 稲見 正浩 小川 英世
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、ディグナーガの主著『集量論自注』(Pramanasamuccaya-vrtti)の第5章「アポーハ論」の詳細な和訳研究にあった。そのため、上記の研究組織に、原田和宗・本田義央の両氏をくわえて、同書の読書会を定期的に開催した。その際、従来十分に利用されてきたとは言いがたいジネーンドラブディの『復注』(Tika)の重要性に着目し、その和訳研究にも並行して取り組んできた。その結果、次の様な重要な方法論的問題を自覚するようになった。すなわち、大変不完全な2種のチベット語訳しか存在しない『自注』の解釈にあたっては、従来の研究者が試みてきたように、出来るかぎりのサンスクリット断片テキストを収集して、原型としてのサンスクリット・テキストを想定した上で理解するのが最も有効な方法である。我々の研究グループにおいても、既に原田氏によって、ジャンブヴィジャヤ師の梵文還元の試みに基づく、貴重な還元サンスクリット・テキストが完成されている。また、それに基づく和訳も原田氏のものと、研究代表取者桂のものが、準備されつつある。いずれ近い将来に公刊の機会を得たいと願っている。他方、比較的良好なチベット訳が1本存在する『復注』の場合は、必ずしも『自注』と同じ方法論が適用できないことが判明した。勿論、ジャンブヴィジャヤ師は、常に還梵テキストの提示を試み、成功してきたのであるが、以下の我々の和訳研究が示唆するように、『量評釈自注』(Pramanavarttika-Svavrtti)などの引用を除いて、サンスクリット断片が極端に少ない『復注』の場合還梵テキストの提示は必ずしも容易ではないし、また、あまり実りの多いものとは言えない。むしろ、かつてシュタイケルナ-が提案した、断片テキストの階層的処理というプラマーナ・テキスト研究の方法論を積極的に適用すべきである。
著者
土肥 謙二 大滝 博和 小川 武希 宮本 和幸
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本検討の目的は熱中症モデルにおけるneuroinflammationの病態のメカニズムを明らかにすることであった。まず本研究ではいまだ確立されていなかったマウスの熱中症モデルを開発し、生理学的評価、血液学的評価、ミネラル補充の効果について明らかにした。さらに現在は酸化ストレスの評価や水素水を用いた新規治療法の開発に向けた検討を行っている。また、熱中症モデルにおいては腸管のダメージが組織学的に強かったことから重症熱中症モデルにおけるneuroinflammationと脳-腸管によるsystemic inflammationとの関係について再検討している。
著者
小川 侑一 松村 茂樹 北條 春夫 佐藤 太一 梅澤 清彦
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.65, no.634, pp.2486-2493, 1999-06-25
参考文献数
8

This paper proposes a simulator which can depict the rotational vibration of a spur gear having any types of tooth surface deviation including both tooth profile deviations and tooth helix deviations. The developed simulator is based on a single degree of freedom motion system constructed with equivalent mass, damping and mesh stiffness of a pair of gears. The mesh stiffness is calculated considering the effect of the tooth helix deviation which brings non uniform load distribution along the contact line of a tooth pair. The dynamic load tests have been performed to verify the simulator changing both helix slope deviation of driven gear and torque. The analytical results under each operating conditions are in good agreement with experimental results. Also, the damping ratio of the test gear system is evaluated as 0.03 with measured vibration responses, which is smaller than conventional expectation value of 0.07.
著者
草原 和博 棚橋 健治 溝口 和宏 桑原 敏典 鴛原 進 橋本 康弘 山田 秀和 渡部 竜也 藤本 将人 田中 伸 田口 紘子 後藤 賢次郎 小川 正人 川口 広美
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,社会科教育研究の日米比較を通して,それぞれの学界で確立されてきた研究方法論を抽出し,再構成することで,国際的な研究交流にたえうる「研究法ハンドブック」を開発しようとした。米国の研究者を招いたシンポジウムでの討論と聞き取り調査,ならびに文献調査を踏まえて,効果が期待される以下3つの方法論を導出し,論文作成の手続きを定式化することができた。(1)規範的・原理的な提言(2)実験的・実践的な開発(3)実証的・経験的な研究。
著者
小川 浩三
出版者
法学協会事務所
雑誌
法学協会雑誌 (ISSN:00226815)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.p721-751, 1979-06
著者
晴佐久 悟 筒井 昭仁 境 憲治 劉 中憲 金崎 信夫 埴岡 隆 柏木 伸一郎 三島 公彦 鎮守 信弘 小川 孝二
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.122-131, 2004-04-30
被引用文献数
9

産業歯科健診に,口腔健康教育の効果および歯科保健意識と行動変容因子との関連性を検討した.事業所従業員208名に対し,口腔内診査後,歯肉辺縁部清掃技術,歯間部清掃用器其の使用法の指導,定期管理受診の説明を行い,介入前,直後,1ヵ月後,1年後に質問紙による調査を行った.歯肉近縁部を磨く認識のある者の割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,55,62%であり,介入前の35%と比較して有意に増加した.歯間部清掃用器其の使用割合は,介入1ヵ月後,1年後は,それぞれ,40,31%であり,介人前の24%と比較して,1ヵ月後には有意に増加したが,1年後では有意差は認められなかった.介入直後,歯科医院での定期管理受診希望者は87%であったが,1ヵ月後,定期管理受診者は15%であった.ロジスティック解析の結果,歯肉近縁部を磨く行動と歯肉近縁部を磨くという行動変容の定着には汁その部位を確実に磨く」という自信の因子が単独で関連した.歯間部清掃用器具を用いる行動では,「むし歯を予防できると思う」,「爽快感が感じられる」,「歯間ブラシ人手容易」が単独で関連した.口腔保健教育の目的とする行動変容の程度,それぞれの行動に影響を及ぼす要因について違いがみられた.このことから,変容を期待するそれぞれの行動に対する効果的な教育・指導内容を用いて,介入を行う必要性が示唆された.
著者
三島 一晃 小川 月彦 北岡 隆 藤川 亜月茶 今村 直樹 三島 一晃
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)光刺激による網膜色素上皮の変性ラット網膜に光刺激を与えることで感覚網膜や網膜色素上皮が変性するか検討した。Wister Kyotoラットに強度の緑色光を24時間照射し、電子顕微鏡にて網膜を観察した。網膜の他の層に著変は無かったが、視細胞外節の蓄積と網膜色素上皮細胞の変形を認めた。光毒性による酸化ストレスや視細胞外節の蓄積で生じる酸化ストレスの影響で網膜色素上皮が変性し、加齢黄斑変性が誘導されると推測した。次に酸化ストレスが循環ホルモンであるレプチンによって誘導されることを検討したかったが、生体では困難であり、培養細胞で研究した。(2)レプチンによる酸化ストレス培養網膜色素上皮細胞と血管内皮細胞にレプチンが酸化ストレスを与えるか検討した。具体的には、網膜色素上皮細胞ARPE-19および血管内皮細胞EA hy926に活性酸素マーカーであるH_2DCFDAを導入した。その後様々な濃度のレプチンに曝露し、活性酸素を測定した。その結果、EA hy926においてレプチン1000ng/mlの曝露で活性酸素が有意に増加した。ARPE-19では活性酸素の増加はみられなかった。今回の研究では高濃度のレプチンが網膜色素上皮細胞ではなく、血管内皮細胞において酸化ストレスを生じることが示された。(3)色素上皮由来因子(PEDF)によるレプチン酸化ストレスの抑制レプチンの酸化ストレスを抑えるため、PEDFが有効か検討した。レプチンの溶液にPEDFを加え血管内皮細胞EA hy926の活性酸素を測定した。100nMのPEDFを加えると活性酸素の増加はみられなかった。PEDFは血管内皮細胞においてレプチンによる酸化ストレスを減少させる事がわかった。以上の研究により、色素上皮由来因子はレプチンによる酸化ストレスを減少し加齢黄斑変性を抑制する可能性がある事が示唆された。
著者
小川 信明 菊地 良栄 後藤 博 梶川 正弘 尾関 徹
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.503-511, 1998-08-05
被引用文献数
11 9

日本は海に囲まれており, 降水中には海塩起源と考えられるイオンが多量に含まれる. そこで, 降水中でも海水中のイオン組成比が保持されると仮定し, N^+又はCl^-イオン濃度を基準に, 降水中の汚染物質を海塩起源(ss)と非海塩起源(nss)に区分することが一般的になされてきた. しかし, 汚染物質を含んだ雨雲や乾性浮遊物が移動する途中にガス状酸性物質とイオン交換する可能性などがあり, 必ずしもss/nssという区分は正しくないという意見もあった. そこで, 1993年4月から1995年8月までの期間, 秋田市と湯沢市で1日ごとの降水を採取し, そのイオン組成を化学分析し, それらのデータに, 著者らが開発した制限斜交回転因子分析法を適用し, 降水中の汚染起源を抽出し解析した. その結果, 海水中の塩組成に非常に近い海塩由来の汚染起源が抽出された. しかし, Na^+及びCl^-イオンを含む海塩成分の一部が降水を酸性にする硫酸酸性の汚染起源の中にも含まれていることが分かった. この因子は, 冬季と冬季以外, 又海に近い秋田と内陸の湯沢で組成の違いを示した. このことは, 海塩由来の汚染物質が採水地点に到達するまでに, 組成の変質を受けていることを強く示している.
著者
小川 眞里子 OGAWA Mariko
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 = Bulletin of the Faculty of Humanities and Social Sciences,Department of Humanities (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
no.31, pp.47-59, 2014

今やノーベル賞量産国とまで言われる日本で、なにゆえこれほどまでに科学や工学の女性研究者が少ないのか。まずは学部学生の現状について概観し、次に理工系研究者の重要な人材プールである博士課程修了者について見る。これによれば次世代を担う人材はけっして十分に育ちつつある状況ではない。研究者については、まずわが国には性別の十分な統計資料が整備されておらず、これが大きな問題である。そもそもの問題の所在、原因を考える上で、あるいは他国と比較する上で統計の不備は大きな障害である。そして女性研究者支援のプログラムを実施することもきることながら、女性の活躍を保証する法的整備が重要であろう。Over the past several years, Japan has become the most productive country for Nobel Prizes after the US. However, all Japanese Laureates are male. We may rightly say that Japan is successful in producing male laureates. Why have there been no female laureates in Japan? It is now known world-wide that the percentage of female researchers in Japan is very small, almost the smallest among its peers, even though Japan is a democratic country with a national commitment to science and technology. To increase the number of female researchers, the number of female PhD graduates provides the human resources available for female researchers. But She Figures 2012 data showed that compared to all EU countries Japan is ranked lowest but one. The lowest is Malta and lowest but two is Cyprus. According to the details for these lowest three countries, the number of female PhD graduates is 3 in Malta, 4508 in Japan, and 11 in Cyprus. The low female percentage in Japan is shockingly behind the times. In addition to the low proportion of female PhD graduates, a quarter of these are foreign students. In fact, not a few post-doctoral students eventually return to their own countries. Increasing the number of native female PhD graduates is an urgent necessity for Japan. The next problem for human resources is Japanese researchers' social consciousness. The rate of dual-income to single-income households is now about 1.2. However, it is totally different in the academic sphere. Data on the jobs of researchers' spouses show that more than half of male researchers have full-time housewives. MEXT's efforts are not effective in such a conservative environment. If MEXT is to increase the number of female researchers, not only is a support system relying on male colleagues' cooperation required, but also legal action, such as a quota system, should be taken. In the US and EU, there are a lot of dual-career academic couples and they are a driving force for solving female researchers' problems. In Japan a few PhD female students plus the traditional tendency of male researchers with full-time housewives hampers the increase of dual-career academic couples. It is a shortcut to build a gender equal society to raise talented female researchers with the potential to win the Nobel Prize.
著者
小川 侃 佐藤 義之 冨田 恭彦 岩城 見一 斎藤 渉 金田 晋 吉田 和男 有福 孝岳 高橋 憲雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

平成12年から15年に継続された本科学研究費補助金によるプロジェクトは京都大学の研究者と京都大学以外の大学の研究者との共同作業に基づいて多くの成功した成果をあげることができた.なかでも海外からのおおくの著明な現象学的な研究者との国際的な協力と共同作業を行いえた.シュミッツ,ゲルノット・ベーメなどのようなドイツからの新しい現象学者,ヘルト,ベルネット,クリスティン,ケルックホーフェン,ダストウールがヨーロッパから共同研究に参加した.アメリカからの参加者はウエルトン,ガシェー,プルチョウなど.毎年数度の研究会を開催し,小川他が海外で共同研究を展開して成果の発表をおこなった.これらの研究プロジェクトの結果,集合心性は基本的に雰囲気と地方的もしくは地球全体の気候,天候,風土などに埋床しており,このことは,地水火風などという四つのエレメントを風土や雰囲気とくに風との連関で研究するべき新たなプロジェクトを立ち上げる必要性を示した.
著者
田村 淳 北口 和彦 崎久保 守人 上村 良 大江 秀明 吉川 明 石上 俊一 馬場 信雄 小川 博暉 坂梨 四郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1565-1572, 2008 (Released:2009-01-06)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

当院外科入院患者において,腸炎症状を発症した症例に偽膜性腸炎またはMRSA腸炎を疑ってバンコマイシンの経口投与を行ったのでその投与状況と効果について検討した.2001年1月から2005年4月までの外科入院患者4867例のうちバンコマイシンの経口投与を受けた症例は41例で,約9割が手術症例であった.その内訳はCD抗原陽性で偽膜性腸炎と診断された症例が10例,便培養検査にてMRSA腸炎と診断された症例が10例,これらを疑ってバンコマイシンを投与したが検査結果により否定された症例が21例で,臨床症状からの正診率は49%であった.治療により全例において症状は軽快し,腸炎による死亡例は認められなかった.腸炎発症前に投与された抗菌薬をセフェム系とカルバペネム系に分けて検討すると,後者の方が腸炎発症リスクが高いと考えられた.手術部位別の比較では,MRSA腸炎は上部消化管手術後に多く発症する傾向がみられた.バンコマイシンはこれらの腸炎の標準的治療薬であるが,腸内細菌叢を攪乱することによりVRE等の新たな耐性菌感染症の発症リスクとなるため,適正な投与基準を設ける必要があると思われる.
著者
小栗 慶之 長谷川 純 小川 雅生
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

注射針を患部に刺入して針内部に粒子線を通し,先端の標的に照射してガンマ線を発生し,ガン治療に用いる新しい方法について調べた.予備実験でガンマ線強度が小さいことが判明し,代りに陽子線照射により重金属標的から発生する特性X線を用いた.針の軸出しを精密に行い,内径で決まる値の80%のビーム透過率を得た.先端にAg標的を取り付けてX線を発生させたところ,針の壁の遮蔽効果により目的とするAgの特性X線のみを取り出すことに成功した.
著者
山口 千美 小川 由英 諸角 誠人 田中 徹 北川 龍一
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.311-318, 1987 (Released:2010-07-23)
参考文献数
27

ラットの実験的蓚酸カルシウム尿路結石症を用いて, クエン酸回路中間体のリンゴ酸, コハク酸およびそれらのナトリウム塩, 重炭酸ナトリウムの結石形成抑制におよぼす影響を比較検討した. リンゴ酸ナトリウム群, コハク酸ナトリウム群, 重炭酸ナトリウム群では, 尿中クエン酸排泄および尿中クエン酸濃度は増加したが, リンゴ酸群, コハク酸群では寧ろ減少した. リンゴ酸ナトリウム群, コハク酸ナトリウム群では, 著しい結石形成抑制作用を認めたが, 重炭酸ナトリウム群ではそれ程強くなかった. リンゴ酸群, コハク酸群では抑制作用は殆ど認められなかった. これらの物質の投与による尿中蓚酸, カルシウム, マグネシウムの各群間比較による有意差は認められなかった. 以上より, リンゴ酸ナトリウム, コハク酸ナトリウム投与により蓚酸結石形成は抑制され, その作用は尿中クエン酸濃度の増加が関与することが示唆された.