著者
岸本 聡 伊東 祐二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-41, 2017-02-01 (Released:2019-06-30)
参考文献数
28

抗体医薬の新たなフォーマットとして、ラクダ科の重鎖抗体由来の抗原結合ドメイン(VHH, Nanobody)を使った医薬品開発が進められている。このVHHは、高い安定性、バクテリアにおける高い発現効率、抗体工学の容易さといった優れた特性をもつ一方で、投与後の血中半減期の短さといった弱点もあわせもつ。臨床試験の結果を通して、このようなVHH医薬品の課題と今後の展開について考えてみたい。さらに、ファージディスプレイライブラリーと網羅的配列解析手法を使った新しいVHHの開発手法、ならびに、VHHを使った新しい抗体医薬品の形として、抗体特異的修飾法(CCAP:Chemical conjugation by affinity peptide)によるIgG-VHHコンジュゲートについて紹介する。
著者
岸本 千佳司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180920a, (Released:2019-04-16)
参考文献数
75

本研究は、サービスロボット・メーカー、テムザック (tmsuk) 社の事例研究である。同社は中小企業でありながら、オープンイノベーション活用を通して大企業を超える製品開発力を発揮し、同業界の先駆者のひとつとなっている。同社は、高度なメカトロニクス技術を土台とするインテグレーション (統合化) と実用化 (製品化) の能力を武器に、大学研究者を中心とする多数のパートナーを引き寄せ大規模なイノベーション・ネットワークを形成している。それに惹かれ大企業や公的機関も含む多数の顧客・ユーザーからも製品開発依頼が寄せられている。中小企業の制約を外部パートナーの活用で補い、大学のシーズと現場のニーズが出会う場となることで、多種多様なロボットの開発を実施しているのである。人材育成でも、一見粗放的な (しかし、実は理にかなった) 方法で、ロボット全体の構想力を持ち多様な専門分野に跨るロボット開発プロジェクトを管理できる「プロデューサー」的人材の成長を促していることが明らかにされる。
著者
岸本 桂子 竹内 智重 福島 紀子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.12, pp.1533-1541, 2017 (Released:2017-12-01)
参考文献数
18
被引用文献数
4

In Japan, a pharmacy or drug store license is required for selling pharmaceutical products. However, civilians without a pharmacy or drug store license are displaying pharmaceutical products for sale on a flea market application, which is illegal dealing. This study discussed the modality for implementing countermeasures for the illicit selling of pharmaceutical products. We extracted pharmaceutical products displayed for sale on three flea market applications (Mercari, Rakuma, Fril) on one day. One hundred and eighty-one pharmaceutical products were displayed (49 on Mercari, 86 on Rakuma, and 46 on Fril). There were 6.1% (11/181) domestically prescribed drugs, 69.1% (125/181) domestic OTC drugs, 23.8% (43/181) foreign-made prescribed drugs, and 1.1% (2/181) foreign-made OTC drugs. The seller could display the product for sale without confirming whether it is prohibited. We alerted the service providers of this illicit selling at flea markets at three different instances. The pharmaceutical product displays were deleted by the service providers at a rate of 55.1% (27/49) for Mercari and 51.2% (44/86) for Rakuma. The average number of drugs that were displayed for sale by each seller was 1.4 and the average number of total products that were displayed for sale by each seller was 100. The seller could have unintentionally displayed the pharmaceutical products for sale, without the knowledge that it is illegal. The service providers of flea market applications should create mechanisms to alert the sellers that displaying pharmaceutical products for sale is an illicit act and regulate these violations.
著者
岸本 成史
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ヒトナチュラルキラー細胞のガン細胞に対する細胞傷害活性におけるカンナビノイド受容作動薬や阻害薬の影響について調べることにより、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害の機構にエンドカンナビノイドシステムが関与している可能性を示した。さらに、マウスの腫瘍生着モデルに対するCB2受容体阻害薬の影響についても調べ、CB2受容体が少なくともマウスにおける腫瘍免疫において重要な役割を演じている可能性を示した。
著者
鹿野 祐介 肥後 楽 小林 茉莉子 井上 眞梨 永山 翔太 長門 裕介 森下 翔 鈴木 径一郎 多湖 真琴 標葉 隆馬 岸本 充生
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.279-295, 2022-11-01 (Released:2022-11-14)
参考文献数
35

The Research Center on Ethical, Legal, and Social Issues (ELSI) at Osaka University and mercari R4D started a practical joint research project in 2021 to innovate based on the concept of ELSI and responsible research and innovation (RRI). This paper describes the research and practice conducted in this joint project on (A) upgrading the ethics review process for research and development, (B) assessing AI-based solution technologies and strengthening AI governance, and (C) conducting a feasibility study for participatory technology assessment on quantum technology, respectively. In this paper, we illustrate the methods and processes of this project, as well as the results of these individual studies, and share critical reflections on the ELSI/RRI knowledge production processes from the perspectives of both ELSI researchers and members of the private sector. Our results provide evidence of the contribution to innovation governance in science and technology from ELSI/RRI research and the knowledge of the humanities and social sciences.
著者
安野 史彦 岸本 年史
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.75-79, 2016 (Released:2018-02-08)
参考文献数
19

1995 年 3 月 20 日,東京都内の地下鉄車内におかれたプラスチックバッグから放出されたサリンにより約 5,500 人が被害を受け,うち 12 人が亡くなられている(東京地下鉄サリン事件)。サリンは有機リン酸化合物の一種であり,強力なアセチルコリン(Ach)エステラーゼ阻害剤である。コリン受容体の障害を介して,自律神経系の神経伝達を阻害する。サリン事件の被害者においても,慢性的な脳障害と,それに伴う持続的な脳機能の変化の可能性が示唆される。本稿において,サリン事件被害者における,慢性(長期)の神経,精神および行動影響についてのこれまでの報告を概観し,Ach 作動神経系への急激かつ過剰な負荷が,慢性的なダメージの一因となりえる可能性について考察する。また,認知神経症状および MRI による神経機能・解剖学的な検討に加えて,神経分子画像による生体内分子レベルでの長期的な検討の有用性についても考察を行う。
著者
中村 友真 岸本 桂子 山浦 克典 福島 紀子
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.2-9, 2016-06-10 (Released:2016-07-06)
参考文献数
22
被引用文献数
6

To consider what pharmacists can do to prevent patients from having leftover prescription drugs, we conducted a qualitative study about the various causes behind the unused drugs. We interviewed one male and four female home-care patients who had leftover prescription drugs that pharmacists detected via their home visiting service. The Grounded Theory Approach was used for analysis, and two types were identified as “exogenous factors that cause confusion for the patient” and “patient’s personal thoughts and feelings.” “Exogenous factors that cause confusion” involved eight factors, including unsuitable dosing schedule for lifestyle, complex timing for taking medicine, and inadequate support for enhancing patients’ compliance. These factors were divided into [problems with prescription] and [difficult changes to manage]. In “patient’s personal thoughts and feelings,” 16 concepts were identified and their broader concepts comprised six categories: [distrust of drugs], [taking a positive view about one’s own non-compliance], [psychological distance from medical staff], and others. It was assumed that there would be a perception gap of compliance between patients and medical staff. Moreover, patients affirmed their poor compliance and they did not see the occurrence of leftover drugs as a problem. Additionally, psychological distance from medical staff prevents patients from consultation. Therefore, pharmacists should check patients’ compliance for each drug as well as any medical problems. Knowing patients’ inherent mind revealed by this study, the pharmacist can assist medication alongside patients and contribute to the early prevention of unused drugs.
著者
岸本 千佳司 Chikashi Kishimoto
雑誌
AGI Working Papers Series
巻号頁・発行日
vol.2015-08, pp.1-39, 2015-03

本研究の目的は,台湾半導体産業における垂直分業体制,とりわけファウンドリ・ビジネス(ウェハプロセスの受託製造業)の発展について,その歴史的経緯,成功要因を業界トップ企業のTSMCの事例を念頭に置き分析することである。その結果,ファウンドリの台頭は決して簡単に実現されたわけではなく,その時々に指摘された「限界」や「困難」をビジネスモデル上のイノベーションによって乗り越えてきたことが示される。ファウンドリ・ビジネスの発展史は少なくとも3段階に分けられる。①「ファウンドリ・ビジネスの初期モデル(1987年~1990年代半ば)」-専業ファウンドリの基本的な利点を活かした比較的単純なサービスの提供が特徴。当初,既存大手メーカーからのおこぼれ的仕事が主で,誕生間もないファブレス業の成長を刺激した。②「ファウンドリ・ビジネスの成長:技術・生産能力の発展(1990年代後半頃から)」-顧客ファブレスの成長(その背景にあるPC・周辺機器等の応用製品市場の成長)と連動。また,プロセス技術を体化した新式製造装置の導入で技術的キャッチアップが容易となった。工場拡充による規模の経済実現も進められた。③「ファウンドリ・ビジネスの成熟:ソリューション・ビジネスへ(2000年代以降)」-ファウンドリ・ビジネスは,専業の基本的利点,先端プロセス開発推進,大規模生産能力構築に加え,顧客への設計支援サービスを核とするソリューション提供に着手した。その内容は年々豊富になり,半導体バリューチェーン上の他の専門企業および主要顧客とのパートナーシップの構築・深化が進んだ。現在までに,専業の利点を徹底的に追求し,同時に顧客ファブレスやアライアンス・パートナーを含む他の専業企業の成長を促し,相互に支えあい,各分野でのイノベーションを刺激し,全体として半導体設計・製造のエコシステムを繁栄させる上で,ファウンドリは,IDM中心の産業システムよりも有効であったことが認められる。加えて,近年ファウンドリ業界でも企業間の格差が目立ってきている。本研究では,それをファウンドリ・ビジネスにおける成長の「正の循環」が形成された結果として捉え,この具体的状況をTSMCと台湾ファウンドリ2番手UMCとの業績比較を通して検討する。2000年代初頭まで概ね互角と看做されていた両社は,その後,収益性で差が開いていった。設備投資額や研究開発支出でも差が出ており,これが先端プロセス開発と量産立ち上げの遅速に影響を与えている。生産能力拡充と設備稼働率でもTSMCがUMCを上回っている。これがまた収益性の違いに繋がり,次第に格差が拡大していったのである。
著者
中野 智之 上條 隆志 高山 浩司 岸本 年郎 廣田 充
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

小笠原諸島の西之島は、2013年からの噴火によりほぼ全ての陸地が溶岩に覆われ新たな島となった。西之島は最も近隣の小笠原諸島父島から約130km離れた海洋島であり、海洋島における生態系の成立過程を観察できる世界で唯一の場所である。令和元年度に環境省が実施した総合学術調査において海産無脊椎動物、陸上植物、昆虫等陸棲節足動物、土壌微生物が採集された。本研究課題では、主にDNA解析に基づき、海産無脊椎動物、植物、昆虫、土壌微生物の視点から、「なにが」、「いつ」、「どこから」、「どのように」遷移が起きたのかを人類史上初めて明らかにするものである。
著者
山田 貴子 新谷 知也 飯田 哲郎 岸本 由香 大隈 一裕
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.271-278, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
39
被引用文献数
1 8

ブドウ糖果糖液糖のアルカリ異性化である希少糖含有シロップ摂取による血糖応答に及ぼす影響をヒト試験で評価した。グリセミック・インデックス (GI) 試験を行った結果, 希少糖含有シロップのGI値は49であった。次に, 空腹時血糖値126 mg/dL未満の成人50名を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバーによる低用量単回試験を行った。ショ糖6 gまたは希少糖含有シロップ8.8 g (同量のブドウ糖含有量) をコーヒーに溶解し摂取させ, 120分までの血糖値およびインスリン値を観察した。希少糖含有シロップはショ糖に比べて血糖AUC (曲線下面積) およびインスリンAUCが有意に低下し, 低下率は血糖1.8% (p<0.01) , インスリン6.1% (p<0.05) であった。以上の結果, 希少糖含有シロップはショ糖に比べ血糖応答およびインスリン値の上昇が低い低GI甘味料であることが示された。低用量単回試験は倫理委員会の承認後, 臨床試験登録システムUMIN-CTRに登録し実施した (UMIN000018120) 。
著者
千田 譲 伊東 慶一 大山 健 米山 典孝 原 一洋 中村 亮一 野田 智子 橋詰 淳 熱田 直樹 伊藤 瑞規 渡辺 宏久 安井 敬三 小竹 伴照 木田 義久 岸本 秀雄 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.441-447, 2013-11-25 (Released:2013-11-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

要旨:【目的】回復期入院リハビリテーション(リハビリ)での脳梗塞branch atheromatous disease(BAD)の治療成績を検討した.【対象と方法】レンズ核線条体動脈領域(LSA-BAD)90 例と傍正中橋動脈領域(PPA-BAD)21 例に対し,入院時・退院時の脳卒中重症度(NIHSS),機能的自立度評価法(FIM),上肢・手指・下肢各Brunnstrom stage(BRS)を検討した.【結果】LSABAD群はPPA-BAD 群に比べ入退院時NIHSS は有意に重症であり,手指・上肢の機能改善は不良であった(p<0.05).LSA-BAD 群は入院時上肢・手指BRS の退院時3 段階以上の回復は稀だったが,両群とも退院時FIM は多くが100 点以上であった.【結論】回復期リハビリでのBAD を分類し検討することで,皮質脊髄路障害部位の違いによる運動麻痺と機能的自立度評価の回復過程を評価できた.
著者
江浜 律子 岩渕 徳郎 飯野 雅人 中沢 陽介 出田 立郎 辻 善春 大浦 一 荒瀬 誠治 岸本 治郎
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.35-40, 2011-03-20 (Released:2013-03-18)
参考文献数
8

最も一般的な女性の薄毛は “female pattern hair loss (FPHL)” に分類され,男性ホルモン依存性脱毛 (androgenetic alopecia : AGA) とは異なる特徴を示す。AGAでは頭頂部や前頭部が顕著に薄毛化するのに対し,FPHLではより広範囲にわたってびまん性に毛髪密度が低下し,髪の生え際の後退は認められない。アデノシンは細った毛髪を太く成長させることにより太い毛の割合 (太毛率) を高めて男性におけるAGAを改善することが示されている。本研究では女性の薄毛改善に対するアデノシンの有効性を検討した。薄毛女性を対象とした12カ月間連用試験の結果,アデノシン配合ローション使用群ではプラセボ群に比較して太毛率が有意に高くなった。さらにアデノシンに加えてパナックスジンセンも配合したローションの6カ月連用試験の結果,連用前後の比較で毛髪密度の増加が認められた。いずれの試験においても副作用は観察されなかった。以上の結果より,アデノシンは男性のみならず女性のQOL (quality of life) をも改善する安全で効果的な育毛剤として有益であることが示された。
著者
桑名 義晴 岸本 寿生
出版者
パーソナルファイナンス学会
雑誌
パーソナルファイナンス学会年報 (ISSN:18843328)
巻号頁・発行日
no.9, pp.39-50, 2009-10-15

本稿は、アジア、とくに台湾、香港、タイの3地域の消費者金融市場の現状と特徴を考察し、そこにおける日系消費者金融企業の事業展開の現状を分析し、その問題点とビジネスの可能性について研究することを目的としている。台湾の消費者金融ビジネスは、1985年のシティバンクによるクレジットカード事業が端緒である。その後、台湾の金融機関がクレヅット事業に相次いで進出し、2000年頃にピークを迎える。しかし、多重債務問題が表面化したため、上限金利の引き下げが行われ、ローン事業は縮小する。また日系企業は1991年に自動車ローン事業を行い、その後現地の銀行と提携して信用ビジネスを始めるが、規制強化とともに収益性が悪化し撤退する。台湾は、与信データが整備されており、消費者金融へのニーズもあるが、規制が厳しく、ローンの規模が小額であり、消費者金融の収益性が低いのが特徴である。香港では、早くから消費者金融ビジネスが行われており、日系企業も1970年代に参入している。1981年の銀行法の制定により、銀行やノンバンクなど、多くのプレイヤーが参入した。近年では大手企業のシェアが高くなっているが、依然競争は厳しい。香港市場は成熟しているが、中国本土への進出を果たしている企業もあり、新しい事業展開の可能性が存在している。次に、タイでは1990年の金融の自由化により、消費者金融市場が発展した。しかし、アジア通貨危機により市場が縮小し、さらに参入規制がなされた。日系企業は2社進出しており、1社は現地企業と提携し広範にビジネスを展開している。もう1社は、単独進出であり、特定の顧客をターゲットに堅実なビジネスを行っている。これら3地域の現状を踏まえて、消費者金融企業が海外進出を行う際の分析フレームワークを検討した。最初に、現地市場の規模を決定する以下の3つのファクターを提示した。「顧客(市民)の消費者金融への理解度」、「消費者金融の自由化度」、「企業の事業展開力」である。これらのファクターのレベルから、進出対象国の市場の大きさが決まる。しかし今回の調査研究によって、市場規模が消費者金融ビジネスの規模と一致するのではなく、政府-顧客(市民)、顧客(市民)-企業、政府-企業の関係性が消費者金融ビジネスに影響を与える、というコンセプトを提示した。現地市場の規模、政府、顧客(市民)、および企業の関係性が、消費者金融企業の海外進出戦略の成否を決定するといえるのである。
著者
飯干 紀代子 岸本 泰士郎 江口 洋子 加藤 佑佳 松岡 照之 成本 迅 三村 將
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.220-227, 2017-06-30 (Released:2018-07-02)
参考文献数
25
被引用文献数
3

テレビ会議システムを用いて遠隔で行う時計描画検査 (clock drawing test: CDT) の信頼性を, 対面検査との一致度, 加齢性難聴の影響, 利用満足度の観点から検証した。対象は, 健常高齢者 (NC) 38 例, 軽度認知障害者 (MCI) 15 例, アルツハイマー型認知症患者 (AD) 24 例, 計77 例 (女性39 例, 平均年齢75.6 ± 6.5 歳) であった。一人につきCDT を遠隔と対面の2 回, ランダムな順序で実施した。 全対象における遠隔と対面のCDT 得点の級内相関係数 (ICC) は0.83 以上, 疾患別でもNC が0.67 以上, MCI が0.59 以上, ADが0.84 以上であり, 十分な一致を認めた。施行順序別では, 遠隔・対面どちらを先に行ってもICC は0.81 以上であり結果に差はなかった。難聴が疑われる群においても, ICC は0.91 以上と一致度は高かった。遠隔検査に対する利用満足度調査では, 恐怖心や緊張感を多少なりとも感じる者が7 割いたが, 答えやすさについては, 対面と同等, あるいはそれ以上であった者が7 割を占め, 強い拒否感はないことが示された。
著者
岸本 忠之
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.15-25, 2018-10-25

本稿の目的は,明治後期の『黒表紙教科書』から終戦直後の『算数』までを対象として,算数教科書における小数の乗法の取り扱いに関する歴史的変遷を分析することである。そのため,小数と分数の位置づけ,純小数と帯小数の乗法の位置づけ,具体的場面と乗法の意味の観点から分析を行った結果以下のようなことが明らかとなった。黒表紙教科書では,分数よりも小数が先行していたが,分数との結びつきも既に見られるようになった。緑表紙教科書では,小数は分数の特別な場合であるとし,分数が先行していたが,水色表紙教科書では,小数が先行するようになった。当初黒表紙教科書では,純小数の乗法が中心課題とされていたが,緑表紙教科書以降では次第に帯小数の乗法から導入するようになった。ただし緑表紙教科書では,「4km,0.1km,0.8km,2.5km」の順序であったが,水色表紙教科書では,「4m,2.5m,0.1m,0.4m,2.3m」の順序に変わり,帯小数の乗法が純小数の乗法よりも先になった。意味づけについては,具体的場面を導入課題とした緑表紙教科書からと考えられているが,実際は,黒表紙教科書の第3期で意味づけについて注意が払われている。
著者
萩原 かおり 羽石 英里 河原 英紀 岸本 宏子 下倉 結衣 本多 清志
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ミュージカル俳優は声を酷使することが多いが、未だ彼らの喉の健康を守る効果的な発声・訓練法が確立されているとは言い難い。本研究では、歌手の多くが体感している「喉・胸が開く」という感覚を手掛りに手技を用いての発声実験、アンケート、聴覚印象評価、MRI動画の撮像を行うことで、健康的な発声法を構築するための方法を探った。その結果、体感・評価スコア・音圧レベルの好変化、声帯位置の下制が観察される等「喉・胸が開く」という感覚に対する科学的根拠を得ることができたと考えられる。またそのMRI動画を用いての視覚による発声への影響についても良い結果が得られ、健康的な発声法訓練のための道筋を見つけることができた。
著者
後濱 龍太 岸本 慎也 加藤 健太郎 横山 圭 島田 茂伸
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.284-291, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)
参考文献数
13

本稿では、身体表現における演者の「身体形状」および「動き方」の両方が唯一性や希少性を備えており、原資料としての性質を帯びているとのアイデアに基づき、動作する人体をデジタルアーカイブする方法を提案する。3次元デジタイザを用いて取得した高解像度かつ高寸法精度な形状データに、モーションキャプチャを用いて取得した動作データを統合することで、動作する人体のデジタル復元である「動作可能モデル」を生成する方法を明らかにする。動作可能モデルとデジタイズ直後の形状データの寸法変位RMSは1mm未満であり、提案手法がデジタイズ形状の寸法をほとんど変化させないことを示した。本手法が舞踊などの無形文化財やスポーツのアーカイブへ適用しうる基盤技術となることを期待する。