著者
木村 恵子 長田 斉 矢澤 正人 小松崎 理香 青山 旬 和田 聖一 伊谷 公男
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.204-212, 1997-04-30
参考文献数
19
被引用文献数
9

東京都における1歳6ヵ月児歯科健康診査の乳歯齲蝕罹患分類におけるO_1,O_2型(以下,O_1,O_2型)の判定基準について区市町村に対し質問紙による実態調査を行った。また,各区市町村のO_1,O_2型の判定状況,1歳6ヵ月児歯科健康診査の乳歯齲蝕罹患分類におけるO_2,型(以下O_2型)者率と1歳6ヵ月児歯科健康診査(以下,1歳6ヵ月児健診)および3歳児歯科健康診査(以下,3歳児健診)の齲蝕有病者率の差との関係について検討した。次いで,1歳6ヵ月見健診でO_1,O_2型と判定された東京都S区N保健所・北海道I保健所の平成7年度3歳児健診受診者を資料とし,新たなO_1,O_2型の判定基準を1歳6ヵ月から3歳までの齲蝕罹患に関与するリスク要因によって判定することを目的に「就寝時の授乳の習慣」・「甘味の摂取頻度]・「歯みがき状況」を要因と選定して相対危険度による検討を加えた。その結果, 1. 44区市町村(80.0%)から回答を得,そのうち19区市町村(43.2%)が国の示す1歳6ヵ月児歯科健康診査要領以外の独自の判定基準を持っていた。2. 平成5年度O_2型者率が80%以上の区市町村数は22(40.0%)であった。 3. O_2型者率と1歳6ヵ月児健診および3歳児健診の齲蝕有病者率の差との関係には有意な相関は認められなかった。 4. 齲蝕罹患に関与するリスク要因の相対危険度による検討では『甘いお菓子をほぼ毎日食べる習慣』・『就寝時の授乳の習慣』についてはN・I両保健所とも3歳時点での齲蝕有病状況に統計学的に有意な差が認められた。 5. 『甘い飲み物をほぼ毎日飲む習慣』もほぼこれに準じる成績であった。 6. 「歯みがき状況」を示す『保護者による歯みかき習慣』と『プラークスコア』はリスクとして認められなかった。以上の検討から,新たなO_1O_2型の判定基準としては「甘味の摂取頻度」・「就寝時の授乳の習慣」を要因としてとらえ,『甘いお菓子をほぼ毎日食べる習慣がある』・『甘い飲み物をほぼ毎日飲む習慣がある』・『就寝時の授乳の習慣がある』の3項目に1項目以上該当する者をO_2型と判定するのが適当ではないかと考えられた。
著者
宮脇 健三郎 尾関 基行 木村 穣 相澤 清晴 北村 圭吾 山崎 俊彦 森 麻紀 武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.48-54, 2010-01-01
参考文献数
12
被引用文献数
1

本稿では,「食べる」ことを「健康」と「楽しさ」の二つの側面からとらえ,携帯電話による遠隔食事指導,画像処理を応用した食事ログ,拡張現実感による食卓演出,遠隔共食システムの4件の研究事例を紹介する.
著者
酒井 隆太郎 宗像 雅広 木村 英雄
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.311-329, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

広域地下水流動に関する評価手法確立のための調査の一環として、千葉県養老川流域の小流域において、河川流量および観測点付近の河川水、湧水、井戸水の水質、水素・酸素同位体比等の分析を行った。水文学的検討により、地下水流動特性と地質・地質構造との関係を把握し、地化学的検討から、流出域の地下水の起源や流動経路を推定を試みた。この結果、高透水性を持つ砂岩優勢互層(大福山を含む高標高部)で涵養された地下水の大部分は、地層の走向の方向に流動した後、Ca-HCO3(SO4)型地下水として下流域において流出するが、一部は深部まで流動し、Na-HCO3型地下水と混合した後に、低透水性の砂泥互層の亀裂等を通じて下流域において流出する可能性が推定された。
著者
松本 珠希 後山 尚久 木村 哲也 林 達也 森谷 敏夫
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1011-1024, 2008-12-01
参考文献数
50
被引用文献数
3

月経前症候群(premenstrual syndrome; PMS)は,身体・精神症状から社会・行動上の変化に至るまで広範囲にわたる症状が,黄体期後半に繰り返し出現し,月経開始後数日以内に軽快するという特徴をもつ.種類や程度,継続する期間を問わなければ,性成熟期女性の大半が何らかのPMS症状を自覚しているといわれているが,その成因はいまだ明らかにされていない.本研究では,PMS症状のレベルが異なる女性を対象に,"体内環境の恒常性維持に寄与し,心の状態にも影響を及ぼす"とされる自律神経活動の観点から月経前の心身不調の発症機序について探求することを試みた.正常月経周期を有する20〜40代の女性62名を対象とした.実験は卵胞期と黄体後期に各1回行った.月経周期は,月経開始日,基礎体温および早朝第一尿中の卵巣ホルモン・クレアチニン補正値を基準に決定した.自律神経活動は,心拍変動パワースペクトル解析により評価した.月経周期に伴う身体的・精神的不定愁訴および行動変化は,Menstrual Distress Questionnaire (MDQ)により判定した.MDQスコアの増加率に応じて,被験者をControl群,PMS群,premenstrual dysphoric disorder (PMDD)群の3群に分け,卵胞期から黄体後期への不快症状増加率と自律神経活動動態との関連を詳細に検討した.PMS症状がないあるいは軽度のControl群では,自律神経活動が月経周期に応じて変化しないことが認められた.一方,PMS群では,卵胞期と比較し,黄体後期の総自律神経活動指標(Total power)と副交感神経活動指標(High-frequency成分)が有意に低下していた.PMDD群では,黄体後期の不快症状がPMS群よりもいっそう強く,自律神経活動に関しては,他の2群と比較すると卵胞期・黄体後期の両期において心拍変動が減衰,併せて,すべての周波数領域のパワー値が顕著に低下していた.PMSは,生物学的要因と・心理社会的要因が混在する多因子性症状群であり,その病態像を説明するさまざまな仮説が提唱されてはいるが,統一した見解が得られていないのが現状である.本研究からPMSの全貌を明らかにすることはできないが,得られた知見を考慮すると,黄体後期特有の複雑多岐な心身不快症状の発現に自律神経活動動態が関与することが明らかとなった.また,PMDDのようなPMSの重症例では,月経周期に関係なく総自律神経活動が著しく低下しており,黄体後期にいっそう強い心身不調を経験するとともに,月経発来後も症状が持続するのではないかと推察された.
著者
宮澤 陽夫 仲川 清隆 都築 毅 及川 眞一 岡 芳知 荒井 啓行 下瀬川 徹 木村 ふみ子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

生体の脂質は酸化されると過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド)を生じる。これが細胞や臓器機能の低下、動脈硬化、認知症の要因になることを、化学発光分析、質量分析、培養細胞試験、動物実験、ヒト血液分析で証明した。食品からの、ビタミンE 、ポリフェノール、カロテノイドの摂取は、これらの脂質過酸化を抑制し、老化性の疾病予防に有効なことを明らかにした。
著者
西堀 二郎 太田 容次 石部 和人 木村 政秀 辻野 賢治 宮田 仁
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.21, pp.94-95, 2005

本研究は、コミュニケーションを行う上で、場面理解が困難で相手の感情の理解が乏しい児童に対しての支援、今後の方策を構想していくための研究である。具体的には、日常の学級生活の中で友達を作ることが余り得意ではなく、仲良くなりたいという気持ちがあるのだが、うまくコミュニケーションがとれないでいる児童に対してどのような支援が可能か考え、いかにして学級経営を行うかを考えていこうとするものである。最終、その児童が適切に状況を判断して、コミュニケーションがとれる能力を育成していくことを目標に支援を考え、実践を行う。さらに実践していくなかで見つかった課題について、今後どのような手立てが必要かつ有効かを考え今後の構想として発表、提案を行うものである。
著者
カチョーンルンルアン パナート 木村 景一 BABU Suryadevara V. 鈴木 恵友
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ポリシング加工現象を解析するため,被ポリシング面(被加工領域)にエバネッセント光(近接場光)を発生させ,被加工領域に侵入するナノ微粒子の挙動観察を行なった.独自に開発したポリシング機に搭載できるポリシング現象可視化装置により,ポリシングの現象を再現し,SiO2基板で粒径15~100nm(4H-SiC基板では粒径50nmのシリカ)の粒子の挙動を動的に毎秒100フレームで観察することに成功した.
著者
木村 丈司 甲斐 崇文 高橋 尚子 佐々木 秀美
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.310-316, 2010-09-24
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

抗菌薬のPK/PD理論に基づく投与方法を実践するため,ICT,薬剤部にて抗菌薬のPK/PD理論に関する資料を作成し,2008年4月から院内への配布を開始した.同時に勉強会やICTニュースの配信,院内の抗菌薬使用指針の改訂といった活動も行い,PK/PD理論の普及を試みた.<br>   活動を開始した2008年度以降の投与方法をみると,CZOPでは1000 mg×3回/dayが,MEPMでは500 mg×3回/dayが,DRPMでは250 mg×3回/day及び500 mg×3回/dayがそれぞれ増加した.また第4世代セフェム系,カルバペネム系,ニューキノロン系抗菌薬及び抗MRSA薬の平均投与期間は,2008-2009年度で2006-2007年度に比べ短縮していた.緑膿菌のCZOPに対する耐性率は,2005年度に比べ2006-2007年度で増加したが,2008-2009年度では2005年度と同程度にまで減少し,またMEPMに対する耐性率は年々減少が見られた.<br>   このように今回我々が行った活動は抗菌薬のPK/PD理論の実践に有用であり,またPK/PD理論の実践は感染症治療期間の短縮及び抗菌薬耐性菌の増加防止に繋がる可能性が示唆された.<br>
著者
木村 円
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は"神経筋難病の幹細胞/遺伝子治療法の開発"、特に難病・筋ジストロフィーをターゲットに定め、病的骨格筋に治療用蛋白質"dystrophin"を導入する(replacement therapy)ことである。治療研究に用いるウイルスベクターの作成及びその機能の確認をおこなった:マーカー遺伝子(LacZ,eGFP)、複数の短縮型dystrophinとdystrophin/eGFP fusion遺伝子、骨格筋への特異的分化誘導を促す因子(MyoD,Pax7)などである。CMV,RSV,CAGなどの非特異的プロモーター以外に、骨格筋特異的なHuman Skeletal a-actin gene promoter (HSA),CK6(modified Creatinin Kinase promoter 6),MHCK7などを用いた。2)調節型myoDをマウス由来線維芽細胞に導入し、ex vivoおよびin vivoで骨格筋への分化誘導を行い、mdxマウスへの短縮型dystrophin遺伝子導入に成功した。(19.Kimura et al2008)3)作成した治療用ベクターをモデル動物(mdxマウス)に直接筋注した。長期的な発現を確認し、特に生理学的評価として骨格筋の収縮性・耐性の評価としてspecific forceとcontractionに対する耐性試験を行った。(11.Kimura et al 2010)4)またプロモーターの調節領域の詳細な検討のために、それぞれの発現カセットを含むベクターを用いTgMラインを作成した。骨格筋、心筋、多臓器の発現活性を検討し、プロモーター領域の組み合わせによる治療応用の可能性を提言した。(2.Suga et al 2011)
著者
木村 容子 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋醫學雜誌 = Japanese journal of oriental medicine (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.722-726, 2010-07-20
参考文献数
7

浅井貞庵の『方彙口訣』中暑門では,暑気あたりは,暑さだけでなく湿も関与し,寝冷え,納涼や冷飲食などで身体を冷やすことが原因であると述べている。湿度の高い暑さは胃腸内の気の巡りを阻害するが,五苓散は水気を取り除くことにより,暑気あたり全般に幅広く応用できる処方と解説している。本報告では暑い夏の最中に冷房室内で冷飲食をした後に心窩部痛を訴え,この心窩部痛に五苓散が有効であった2症例を経験したので提示する。症例1では安中散,また,症例2では六君子湯が無効であった。さらに,夏季の冷飲食後に生じた心窩部痛に五苓散を用いた19症例をまとめて検討したところ,舌苔が白かつ腹診で心下痞鞕を認める場合に効果が高いと考えられた。五苓散の腹証としては心下振水音が有名であるが,心下痞鞕が有効な場合もある。今回,冷飲食を誘引とする心窩部痛,舌白苔,心下痞鞕の併存は五苓散投与の目標となる可能性が考えられた。
著者
新宅 賀洋 千須和 直美 小橋 麻衣 田中 都子 木村 美佳 春木 敏
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.145-154, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

【目的】A府B市C校区では,2010年度より開始された国土交通省の「高齢者等居住安定化推進事業」の支援を受け,運営されている地域レストランがある。レストラン調製弁当の喫食ならびに食と運動の健康講座参加と会食を通じて,食生活状況および高齢者の精神的・身体的健康の状況を把握し,地域レストランと連携した高齢者の食生活支援プログラムにおける介護予防の有用性を検討した。【方法】事前に研究趣旨を説明し同意の得られた男性19名・女性30名の高齢者(65歳~92歳)49名が,会食群22名(3食喫食/週,講座への参加と会食),配食群14名(弁当の配食,3食/週),対照群13名に分かれて10週間のプログラムに参加した。各群とも参加前・参加後・終了1ヵ月後に,老研式活動能力指標,主観的幸福感などの自記式による質問紙調査を行い,食事バランス管理・運動の自己管理にはTAKE10!を用いた。【結果】会食群ではプログラム参加後,主観的幸福感が有意に高くなり,食品の多様性を心がけている者は,主観的幸福感が高いことおよび食生活満足度に正の相関がみられた。【結論】高齢者に対する10週間の地域レストランを活用した食と運動の健康講座は,他者との交流や会食によって主観的幸福感が高くなるという精神的健康の改善を促し,高齢者の介護予防の一助となることが示唆された。
著者
木村 健二郎 平田 恭信 菅谷 健 佐藤 武夫
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

尿蛋白による腎臓の間質尿細管障害の発症と進展の機序を明らかにする目的で実験を行った。(1)マウスの蛋白負荷モデル:12週齢のBalb/cマウスの腹腔内に牛血清アルブミン(BSA)を連日14日間投与して、腎臓の間質尿細管障害を観察した。(1)組織学的検討:通常のBSA(Fraction V, Sigma)では強い間質尿細管障害が生じたが、脱脂したBSAでは間質尿細管障害は軽度に止まった。(2)BSA(Fraction V)中の脂肪酸分析:BSAに含まれる脂肪酸は主としてoleic acid, stearic acid, palmitic acid, linoleic acidであり、ヒトの血清脂肪酸とほぼ同様であった。(2)培養マウス近位尿細管上皮細胞におけるBSAの取り込みの検討:培養液中にBSAを添加して、BSAがどの程度細胞内に取り込まれるかを見た。通常のBSAでは247ng albumin/mg proteinであり、脱脂したBSAでは494ng albumin/mg proteinであり、両者に有意差は見られなかった。(3)ヒト脂肪酸結合蛋白(L-FABP)トランスジェニックマウスでの蛋白負荷モデル:ヒトのL-FABPの染色体遺伝子を導入したマウスを樹立して、腹腔内蛋白負荷を行った。(1)と同様に、脂肪酸を含むBSAを投与したマウスでは強い間質尿細管障害が、脱脂したBSAを投与したマウスでは軽い間質尿細管障害が見られた。脂肪酸を含むBSAを投与したマウスでは尿中のL-FABPの排泄が増加し、また、腎組織中のL-FABPの遺伝子発現ならびに蛋白発現量は著明に増強した。(4)腎組織に浸潤しているマクロファージを免疫組織化学的に染色した。通常のBSA投与群では著明なマクロファージの浸潤を間質に認めたが、脱脂したBSA投与群ではマクロファージの浸潤は軽度に止まった。トランスジェニックマウスにおいても同様に、腎組織に浸潤しているマクロファージは通常のBSAを投与した群で著明であったが、これは野生型マウスで見られるマクロファージの浸潤よりも軽度であった。脱脂したBSAを投与したマウスでは遺伝子導入マウスと野生型マウスの間にマクロファージの浸潤には有意差が認められなかった。考察と今後の課題:尿蛋白に含まれる脂肪酸が間質尿細管障害を惹起し、L-FABPの発現を増強させていることが明らかになった。今後はL-FABPの細胞保護作用を明らかにする必要がある。