著者
卯野木 健 林田 敬 河合 佑亮 對東 俊介 安藤 守秀 飯田 有輝 笠井 史人 川崎 達也 神津 玲 近藤 豊 齊藤 正和 櫻本 秀明 佐々木 信幸 佐浦 隆一 中村 謙介 大内 玲 岡本 菜子 岡村 正嗣 栗原 知己 栗山 明 松石 雄二朗 山本 憲督 吉廣 尚大 矢坂 泰介 安部 諒 飯塚 崇仁 井上 拓保 内山 侑紀 遠藤 聡 大倉 和貴 太田 浩平 大塚 貴久 岡田 大輔 小幡 賢吾 片山 雪子 金田 直樹 北山 未央 喜納 俊介 草葉 隆一 桑原 政成 笹沼 直樹 高橋 正浩 髙山 千尋 田代 尚範 立野 淳子 田村 貴彦 田本 光拡 土谷 飛鳥 堤 悠介 長門 直 成田 知大 名和 智裕 野々山 忠芳 花田 匡利 平川 功太郎 牧野 晃子 正木 宏享 松木 良介 松嶋 真哉 松田 航 宮城島 沙織 諸見里 勝 柳 尚弥 山内 康太 山下 遊平 山本 夏啓 劉 啓文 若林 侑起 渡辺 伸一 米倉 寛 中西 信人 高橋 哲也 西田 修 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.Supplement2, pp.S905-S972, 2023 (Released:2023-12-10)

重症患者に対する標準化された質の高いリハビリテーションの提供は,取り組むべき重要課題である。日本集中治療医学会では,2017年に「集中治療における早期リハビリテーション ―根拠に基づくエキスパートコンセンサス―」を発行したが,系統的にエビデンスを評価したものではなく,あくまでも専門家のコンセンサスに基づくものであった。そこで,日本集中治療医学会では,質が高く,かつ,医療従事者が理解しやすく,その意思決定に資することを目的に,システマティックレビューおよびGRADE(grading of recommendations, assessment, development and evaluation)アプローチを用いた診療ガイドラインを作成した。 重症患者に対するリハビリテーションに特化し,かつ,GRADEアプローチを用いた診療ガイドラインとしては,世界初の試みである。本ガイドラインは日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会を核に,ワーキンググループ,システマティックレビュー班,アカデミックガイドライン推進班から構成された診療ガイドライン作成グループの合計73名からなるメンバーで作成した。リハビリテーションでは多職種連携が非常に重要であることはいうまでもない。本ガイドラインも多職種,かつ多様な専門分野を持つ医師や医療従事者,ICU患者経験者を含む多くのメンバーが作成に寄与した。 本ガイドラインでは,グループメンバーによる議論に基づいて,8領域を注目すべき臨床重要領域とした。その上で,各領域から重要な14の臨床疑問(clinical question, CQ)を作成した。 パブリックコメントの募集を計2回行い,CQに対する回答としては,10のGRADEによる推奨,4つの背景疑問の解説が示された。また,CQごとに情報を視覚的診療フローとして作成し,各CQの位置付けがわかりやすいように配慮した。多職種が関与する重症患者に対するリハビリテーションにおいて,本ガイドラインが活用されることを期待する。
著者
平川 周作 中島 淳 松木 昌也 古賀 敬興 秦 弘一郎 柏原 学 古閑 豊和 石間 妙子 宮脇 崇 金子 洋平 志水 信弘 松本 源生 石橋 融子
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.125-132, 2020 (Released:2020-09-18)
参考文献数
28
被引用文献数
1

In this study, we examined a fish survey method using environmental DNA (eDNA) metabarcoding in a river, and the relationship between the fish survey results and water quality detected in eDNA was analyzed. eDNA surveys and fishing surveys were conducted in summer and winter, targeting three sites on three rivers in Fukuoka prefecture. Our comparison of riffles and pools and our examination of the appropriate places to collect eDNA samples revealed that the detected fish species were not completely consistent between the two kinds of surveys and there was no ecological features common to detected fish species. Therefore, sampling at multiple locations is expected to reduce detectable fish dropouts. More fish species were detected in the eDNA survey than in the collection survey at all times. However, the results also suggested that the DNA of fish species living upstream may remain at sampling site, and benthic fish species tend to be difficult to detect by eDNA surveys. In addition, the influence of water quality on the characteristics of the survey site were analyzed, since marine species were detected in some river eDNA surveys. The results suggested that domestic drainage is likely to affect the characteristics in winter, when the amount of water is small, and the change in concentration of linear alkylbenzene sulfonic acid and its salts and the change of the ratio of chloride ions may be used as an index of domestic drainage.
著者
岡本 英生 森 丈弓 阿部 恒之 斉藤 豊治 山本 雅昭 松原 英世 平山 真理 小松 美紀 松木 太郎
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.84-93, 2014-10-18 (Released:2017-03-31)

大規模災害後の被災地では,ドアや壁が壊れて外部から侵入しやすくなった建物や,人々が避難して無人になった家屋や店舗が多くなることなどから,便乗犯罪が発生しやすい.また,災害によるダメージからの回復が遅れればそれだけ犯罪を誘発する要因が解消されず,犯罪は発生し続けることになる.逆に言えぼ,災害被害からの復旧・復興が速やかに進めば,犯罪発生は抑制されることになる.災害の被害が大きいほど,また災害被害からの回復が遅いほど犯罪が発生しやすいということは,阪神淡路大震災(1995年1月発生)のあとの被災地住民を対象とした調査では示されている.そこで,本研究では,地理的条件などが異なる東日本大震災(2011年3月発生)でも同様なことが言えるかどうかを調べた.東日本大震災のあとの被災地(宮城県及び福島県)の住民(n=1030)を対象にインターネット調査を実施し,ロジスティック回帰分析により検討したところ,震災被害が大きいと,また震災被害からの回復が遅いほど,「自転車・オートバイ盗」や「住宅への空き巣」が発生しやすいことなど,阪神淡路大震災後の調査と同様な傾向が確認できた.
著者
大貫 挙学 松木 洋人
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.68-81, 2003

本稿の目的は,いわゆる「足利事件」の法廷において,事件の理解可能性がいかなる実践を通じて成立しているのかを明らかにすることにある.1990年5月,栃木県足利市で4歳の女の子が行方不明となり,扼殺死体となって発見される.この事件で逮捕・起訴されたSさんは,一審の途中までは,犯行を認めていたが,控訴審以降は,無罪を主張するようになった.だが,一審でなされた精神鑑定によって,Sさんは「代償性小児性愛者」と診断され,これが事件の動機と認定されていた.そして,そのような成員カテゴリー化実践が,控訴審以後においても,かれを犯人として事件を理解することを可能にしている.つまり,Sさんの犯行を前提に,それに適合的なものとして構成された動機が,かれが否認した後も,その属性として脱文脈化され,かれは<動機を有する真犯人>と理解されたのである.本稿では,動機の語彙論(C.W.ミルズ)と成員カテゴリー化分析(H.サックス)を架橋することによって,犯行動機の構成と行為者への成員カテゴリー化が相互反映的な関係にあることを論じるとともに,法廷場面における精神鑑定の用法が含んでいる問題とその帰結を経験的に指摘する.
著者
松木 明好
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.33-38, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
22

理学療法対象症例の病態や予後,介入効果の推定のために神経生理学的評価が用いられることがある.これは脳,脊髄,末梢神経,筋の機能性を評価するものであり,運動に関連する代表的なものに,(1)筋電図,(2)運動誘発電位,(3)H反射を観察する方法がある.(1)表面筋電図は筋収縮に伴って発生する皮膚上の電位変化を記録するものである.これを用いることで異常運動の原因となっている筋活動のタイミングや活動量の異常を捉えやすくなることが期待される.(2)片側運動野への経頭蓋磁気刺激によって対側末梢筋の筋電図上に運動誘発電位が記録される.この運動誘発電位は脳卒中片麻痺の機能回復の予測や,皮質脊髄路機能の変化を推定することに利用されている.(3)H反射は脊髄運動神経群の興奮性を反映して変化することから,痙縮の病態の一部を反映すると考えられる.いずれにおいても,波形の成り立ちや誘発の機序,関与する神経回路,技術的に懸念される点を考慮して活用することが重要である.
著者
坪内 佑樹 脇坂 朝人 濱田 健 松木 雅幸 小林 隆浩 阿部 博 松本 亮介
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.818-828, 2021-03-15

クラウド上のシステムの大規模化にともない,CPU利用率などのシステムの各構成要素の状態を把握するために,大量の時系列データを保存する必要がある.そのために,時系列データを保存するデータベースにはデータの挿入処理とデータ保存の効率化と挿入スケールアウト性の向上が求められる.既存技術は,挿入スケールアウト性を高めるために広く利用されているディスクベースの分散KVS(Key Value Store)を利用する.しかし,ランダムI/Oが低速なディスクへ書き込むという前提があることから,メモリ上でキーを整列させながら挿入可能な平衡木が利用されるが,キーの挿入時に系列数に対して対数時間を要する.すべてのデータをメモリ上に保持するメモリベースKVSであれば,ハッシュ表に基づくデータ構造の利用により定数時間の挿入が可能となる.しかし,メモリは容量単価が大きいことから,データを長期間保存するには不向きである.本論文では,メモリベースKVSとディスクベースKVSを階層化する高性能な時系列データベースHeteroTSDBを提案する.HeteroTSDBは,メモリベースKVS上に系列名をキーとして,系列本体をバリューとしたハッシュ表を構成することにより,系列数に対して定数時間でデータを挿入する.加えて,系列を格納するキーにTTL(Time To Live)によるタイマを設定し,古くなったデータを系列単位でまとめてディスクベースKVSへ移動させることにより,データ保存のための容量単価を低減させている.実験の結果,ディスクベースKVSを利用した既存の時系列データベースであるKairosDBと比較し,HeteroTSDBは3.98倍の挿入スループット向上を達成した.
著者
小澤 啓子 鈴木 亜紀子 髙泉 佳苗 岩部 万衣子 松木 宏美 赤松 利恵 岸田 恵津
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.205-216, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

目的:夜遅い食事と肥満との関連を把握すること.方法:PubMedおよびCINAHLデータベースを用いて,検索式には「食事」,「夜・時間」,「食行動」,「肥満・MetS」を示すキーワードを組み合わせ,2005年以降10年間に英語で報告された論文を検索した.596件の表題と抄録を精査し,本研究の採択基準(①原著,資料や短報など,②健常な幼児以上のヒト,③「夜遅い食事」か「夜食」を含む,④「肥満」か「MetS」を含む,⑤基礎研究でない)を満たさない535件を除外した.さらに本文を精読し,最終的に11件の論文を採択した.結果:採択論文は,縦断研究が2件,横断研究が7件,介入研究が2件であった.研究対象者は,成人のみ対象が10件,成人と子ども対象が1件であった.5件で夜遅い食事(夜食含む)を摂取する者は,肥満(body mass index: BMI 30 kg/m2以上)の割合が高い,BMI値が高い,もしくは体重増加量が有意に多い結果であった.その一方,残り6件のうち5件は,夜遅い食事(夜食含む)と肥満(体脂肪率などの体組成を含む)との関連はなく,他の1件は,夜遅い食事を摂取する者は,摂取しない者よりもMetSのリスクが有意に低かった.結論:夜遅い食事と肥満との間に正の関連,負の関連を示すもの,関連を示さないものが混在しており,一貫した結果がみられなかった.その理由として,交絡因子としてエネルギー摂取量調整の有無が関わっている可能性がある.
著者
松木 悠佳 石本 雅幸 塩浜 恭子 溝上 真樹 重見 研司
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.123-126, 2015 (Released:2015-06-26)
参考文献数
12
被引用文献数
3

【目的】プレガバリンはさまざまな神経障害痛に対して有効であるが,眠気,めまい,末梢性浮腫などの副作用も多く報告されている.今回,プレガバリンを投与された神経障害痛患者で,副作用が認められた症例の危険因子を後ろ向きに検討した.【方法】当科でプレガバリンを処方された神経障害痛患者を,電子カルテ記録から後ろ向きに抽出した.プレガバリンによる副作用が出現した群(副作用群)と副作用が出現しなかった群(非副作用群)の2群に分類し,年齢,性別,BMI,プレガバリン投与量,副作用出現までの期間,プレガバリン投与前後におけるVAS,eGFR,血清アルブミン値,血清クレアチニン値,血清尿素窒素値,血清カリウム値を比較した.【結果】解析対象患者100名のうち副作用が出現した患者は28名であった.単変量解析では,eGFRが非副作用群に比べ副作用群で有意に低く,血清カリウム値が非副作用群に比べ副作用群で有意に高かった.多変量解析では,血清カリウム値が高値であることが独立した危険因子であった.【結論】プレガバリンを投与される神経障害痛患者において,副作用の発生には血清カリウム値も参考にするべきことが示唆された.

10 0 0 0 OA 麻酔の歴史

著者
松木 明知
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.427-433, 1990-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
7
著者
矢後 勝也 平井 規央 小沢 英之 佐々木 公隆 谷尾 崇 伊藤 勇人 遠藤 秀紀 中村 康弘 永幡 嘉之 水落 渚 関根 雅史 神宮 周作 久壽米木 大五郎 伊藤 雅男 清水 聡司 川口 誠 境 良朗 山本 以智人 松木 崇司
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.233-246, 2020-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
11

シカの急増に伴う林床植生の食害により国内で最も絶滅が危惧されるチョウと化したツシマウラボシシジミの保全を目的として,a)保全エリアでの実践的な保護増殖活動,b)保全エリア候補地の探索に関する活動,c)希少種保全と農林業との連携に関する活動,の大きく3つの課題に取り組んだ.保護増殖活動では,環境整備やシカ防護柵の増設により保全エリアの改善を試みた他,現状の環境を把握するためにエリア内の林床植生および日照・温度・湿度を調査した.今後の系統保存と再導入のために越冬・非越冬幼虫を制御する光周性に関する実験も行った結果,1齢幼虫から日長を感知する個体が現れることが判明した.保全エリア候補地の探索では,本種の好む環境を備える椎茸のホダ場30ヶ所を調査し,良好な環境を保持した11ヶ所のホダ場を見出した.保全と農林業との連携では,アンケート調査から多くの地権者や椎茸農家の方々は本種の保全に好意的なことや,本種を育むホダ場で生産された椎茸のブランド化に賛成で,協力可能であることなども明らかとなった.
著者
松木 洋人
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.18-29, 2007-04-30 (Released:2009-08-04)
参考文献数
15
被引用文献数
4 1

本稿では, 子育て支援の提供者の語りを分析することによって, 彼らが自らの経験をどのように理解しているのかを考察する。子育て支援の理念は, 従来の公的領域と私的領域の区分の再編成を含意しているが, その一方では, 家族に育児責任を帰属する規範はなお根強く存在している。このような状況において, 外部の人間が子育てに対して支援を行うことは, 家族責任についての規範的理解との間でのジレンマを提供者にもたらす可能性がある。提供者がそのようなジレンマに直面することを回避するには, 提供者が自らの活動を家族関係への支援として定義することが有効であるが, 提供者が子どもの親との関係を十分に形成できない状況では, 職務の限定性が生じることは避けられない。支援の受け手の限定化を前提としつつ, 提供者がその限定対象を創出するような働きかけを子どもの親に対して行うことが, 子育て支援を家族支援として行うための一つの実践的な解決となる。
著者
今井 修 寺田 悠希 松木 崇晃 杉野 弘明 林 直樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000030, 2018 (Released:2018-06-27)

農村地域における鳥獣被害が発生する場所では、主としてハンターによる捕獲が行われている。一方で住民は、自分達の地域を守るために果たすべき行動を学ぶことが必要である。鳥獣対策ボードゲームのもつロールプレイン機能は、動物、ハンター、住民それぞれの空間行動を学ぶことができる。住民の行動を引き出すように設計されたボードゲームをプレイすることにより、住民は短時間に具体的な対策行動について学ぶことができる。その結果、ゲーム後具体的な地域において住民は、動物の目撃情報の提供、餌場対策等、ハンターと協力し対策の効果を上げることができる。また、ボードゲームとして高校生による参加が期待でき、地域課題への関心を促す道具となる。
著者
松本 勉 岩村 充 佐々木 良一 松木 武
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.30(1999-DPS-097), pp.13-18, 2000-03-21

計算量的仮定に基づく暗号による電子署名方式は,技術環境が変化すれば,十分な安全性をずっと保ち続けられるとは限らないという性質を持つ.よって,本来自分だけが持つはずの暗号的署名生成機能を他のエンティティが持っているという状況が生じえる.このため,自分が署名した覚えのない電子文書が提示されたとしても,自分は署名していないことを調停者に対して証明できること,すなわち「電子署名アリバイ(電子署名の非生成証明)」を実現する機構が求められる.我々は,署名生成者の署名履歴?これには他のエンティティの署名履歴との交差が含まれる場合もある?に依存して署名生成を行うという「ヒステリシス署名」とそれを基礎とする電子署名アリバイ実現機構を提案する.
著者
屋地 康平 松木 吏弓 北村 亘 畔柳 俊幸 足立 和郞
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.45-51, 2013 (Released:2013-05-28)
参考文献数
23

電力設備の塩害対策として広く用いられているシリコーンオイルコンパウンドの塗布部分には,鳥類が原因と見られる著しい剥離の進行が散見され,保守現場で問題となっている.適切な鳥害対策を施すためには,鳥類種の特定が必要であることから,本研究では,シリコーンオイルコンパウンドと思われる人工物質を内容したペリットを採取し,DNA分析による種の特定,およびIR分析による内容物同定を行った.その結果,ペリットの吐出主がハシブトガラスであること,およびペリット試料に含まれる人工物が,設備のシリコーンオイルコンパウンドと同一の成分であることを突き止め,シリコーンオイルコンパウンド塗布部分への被害が,ハシブトガラスによってもたらされたことを示す一例を突き止めた.また,カラスの行うシリコーン化合物の採食行動が,従来考えられていた人工物からの脂質摂取とは異なる目的でなされた行動である可能性を指摘した.
著者
松木 祐馬 向井 智哉 近藤 文哉 金 信遇 木村 真利子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-19, 2020-04-27 (Released:2020-04-27)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

This study examined the relationship between images of religious believers and tolerant attitudes toward them. A questionnaire was administered to 220 respondents via a web survey. Exploratory factor analysis revealed that images of religious believers consisted of three factors: “mentally vulnerable,” “pious,” and “virtuous.” Furthermore, hierarchical multiple regression analysis indicated that, regardless of whether the respondents were themselves religious or not, virtuous images were associated with tolerant attitude toward them. In contrast, the relationship between mentally vulnerable and pious images and a tolerant attitude was different, depending on respondents’ religiousness.
著者
松木 洋人
出版者
The Kantoh Sociological Society
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.22, pp.162-173, 2009-07-25 (Released:2013-03-28)
参考文献数
23

This paper explores how the experience and the practice of providing family day care are organized by analyzing the narrative of family day care providers. Their work is made accountable through the logic of domesticity and the logic of professionalism. Although professionalism is often referred to in opposition to domesticity, redefining their own professionalism in terms of the artfulness of realizing the logic of domesticity is useful for avoiding the occupational dilemmas concerning providing family day care and experiencing their work as meaningful for themselves and their clients. Logic through which participants are making realities accountable has to be taken into account in the forthcoming reorganization of family day care system.
著者
福永 伸哉 北條 芳隆 高橋 照彦 都出 比呂志 杉井 健 松木 武彦 清家 章
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては、西日本の前方後円墳消滅過程について、九州、中四国、畿内の地域事例を比較検討し、以下のような事実を明らかにした。(1)前方後円墳消滅過程は地域ごとに著しく異なること(2)そのなかで中期前葉(5世紀前葉)、中期後葉(5世紀後葉)、後期中葉〜後葉(6世紀中葉〜後葉)に前方後円墳消滅の大きな波が認められること(3)後期前葉(6世紀前葉)には長らく途絶えていた前方後円墳築造が復活する地域があることこうした前方後円墳消滅過程の背景としては、中央政権と地方勢力との政治関係の変化、薄葬化へ向かう東アジア共通の傾向、横穴式石室導入に伴う葬送儀礼の変化といった複数の要因が存在したと考えられる。とりわけ、6世紀前葉の前方後円墳の「復活」は、支持基盤の拡大をねらった継体政権による地域首長優遇策の反映であり、その後まもなくして各地の前方後円墳が消滅する現象については、安定的な政権を築いた6世紀後葉の欽明政権が大王墓クラスの前方後円墳を巨大化させる一方で地域首長からは前方後円墳を奪うという戦略にでた結果であると推測した。そして、大王墓も含めた6世紀末における前方後円墳の完全な消滅は、もはや前方後円墳を必要としない社会秩序が生まれたことを示し、それは推古天皇の時代の「政治改革」と関連する可能性が高いが、円墳や方墳はなお多数築造されており、葬送儀礼による社会秩序の維持がなお必要であったことを指摘した。また、研究のもう一つの柱であるフィールド調査としては、兵庫県勝福寺古墳の発掘調査を行い、畿内北部地域における最後の前方後円墳の築造背景について多くの知見を得た。
著者
向井 智哉 松木 祐馬 貞村 真宏
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.2210, (Released:2023-06-22)
参考文献数
36

現在の日本では,被害者のプライバシーに関する証拠(情報)のうち,関連性が低いものが裁判に顕出することを禁じる「レイプ・シールド法」を導入することの是非が論じられている。このような議論を背景に,本研究は,被害者関連情報として,被害者の性的前歴(多×少×記述なし)と職業(風俗従事者×医者×記述なし)がその被告人に対する量刑に及ぼす効果を検討することを主な目的として調査を行った。ドメイン知識を活用しつつ,被害者関連情報の効果を検討するために,分析にはベイズ的アプローチを用いた。分析の結果,被害者関連情報の量刑判断に対する主効果の95%確信区間には0が含まれており主効果は認められなかった。ただし,性的前歴多×風俗従事者に交互作用効果が見られ,被害者は性的前歴が多く,かつ風俗従事者であると記述された場合には,性的前歴や職業に関する記述がなされない場合および風俗従事者であるという情報のみが提示された場合と比較して,被告人に重い量刑が求められることが示された。上記の結果から得られる政策的示唆について論じた。