著者
大西 修也 石川 幸二 金 大雄 林 南壽
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

当調査研究は、文化財の保存と修復に欠かせない基礎資料を最新の光学機器(ミノルタVIVID910デジタイザー)とデジタル技術を応用して作成し、その復原的研究をめざしたものである。国内調査は対馬・黒瀬銅造如来坐像を対象に平成14年に実施、韓国調査は磨崖仏や大型石仏を対象とした野外調査が中心であるため、文部省科学研究費補助金の支援と現地関係機関各位の協力を得て行なわれた。平成15年度調査:慶尚北道にある奉化郡物野面北枝里磨崖石仏及び栄州広域市可興里磨崖三尊仏の実測調査と3Dデジタル化作業を行った。北枝里磨崖仏は、高さ6メートルに及ぶこの地域最大の磨崖石仏で、新羅彫刻のもつ北方的要素の解明に欠かせない重要な作品と見られている。可興里磨崖三尊仏は、2003年6月下旬に起きた洪水で遺跡の一部が崩落、三尊石仏を彫刻した岩盤も背後の母岩から剥離していることから、遣跡保存に向けた総合的な科学調査の一環として、緊急調査を行った。ただし、可興里三尊仏には屋蓋施設がないため、太陽光が弱まる夕刻から夜間にかけて作業を行わなければならず、昼間に宝閣を有する北枝里磨崖石仏を、夕刻から可興里三尊石仏の実測調査を行う手順で実施した。平成16年度調査:忠清北道忠州市の中原鳳凰里磨崖石仏、及び忠清北道清州市の清原飛中里三尊石仏の実測とデジタル化作業を行った。中原鳳凰里磨崖石仏は、北の高句麗仏教の南下を示す重要な遺跡といわれるが、急峻な山腹にあるために発電機をはじめとする大型機材の搬入が難しく、光学機器を設置する足場も確保できない状況であるため、これまで大規模な調査が行われてこなかった。今回行った遺跡のデジタル化と高精細画像の収集により、写真や拓本では判読できなかった群像の詳細(菩薩半跏思惟像と脇侍菩薩の着衣や荘厳)が明らかになった。平成17年度調査:〓里廃寺址出土石造如来立像は、破損して12個の断片に分離した上半身と光背を接合した本体と台座からなる。本体は慶州国立博物館で保管され、台座は慶州市月城郡陽北面の寺址に残されたままである。博物館の調査では、如来立像の上半身部分と収蔵庫に保管されている断片3個、廃寺址の調査では高さ1.7mに達する八角台座をデジタイザーで実測した。なお〓項里廃寺には、第一層塔身の四面に仁王像を浮彫りした五層石塔が二基残っており、完形をとどめる西石塔の浮彫のデジタルデータを収集した。
著者
小林 文夫
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.701-705, 2001-11-15
被引用文献数
1 6

関東山地南部の三宝山帯を構成する, ジュラ紀新世後葉〜白亜紀古世前葉の付加体(御前山層)の石灰岩ブロックから18属23種の有孔虫化石群集が見出された.Codonofusiella kueichowensis Sheng, Nanlingella cf. meridionaris Rui and Sheng, Nanlingella ? simplex(Sheng and Chang), Rubuloides gibbus Reichelなどの指標種が識別されることから, この群衆はペルム紀新世前葉(Wuchiapingian)と考えられる.フズリナ類はCodonofusiellaとNanlingellaだけであり, Reichelina, Staffella, Nankinellaなどは含まれていない.フズリナ類以外の有孔虫では, Robuloidesを除くと, Colaniella, Paraglobivalvulina, Dagmaritaのようなテーチス海域の上部ペルム系に特徴的で広域的に分布する諸属を欠いている.それゆえ, この有孔虫化石群集は石灰岩の堆積年代の決定に有効であるだけではなく, ペルム紀新世の有孔虫古生物地理など関連する諸課題を検討する際の基礎資料として重要である.
著者
黨 康夫 小川 忠平 大友 守 荒井 康男 佐野 靖之 田代 裕二 古田 一裕 若林 邦夫 伊藤 幸治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.50-55, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
5

症例は30歳女性. 1997年5月中旬頃よりの腹痛, 腹部膨満感で当院救急外来を受診. 腹部X線写真にてイレウスを疑われ, 緊急入院となった. 白血球数の増加(12300/μl)及び好酸球比率の上昇(42.5%)を認めたが, CRPは陰性であった. 腹部CTにて大量の腹水貯留及び回腸から上行結腸にかけて広範囲に腸管壁肥厚が認められた. 腹水中細胞のほとんどは好酸球であった. さらに末梢血及び腹水中IL-5が著明高値を呈した. 消化管粘膜生検では好酸球浸潤は証明されなかった. 6月3日よりプレドニゾロン50mg/日の経口投与を開始し漸減. 症状は著明に改善し末梢血好酸球数, IL-5も正常化した. これらの所見から漿膜下優位型の好酸球性胃腸炎と診断した. 鑑別には腹水中好酸球増加の確認が有用で, かつIL-5が疾患活動性の指標となりうる可能性が示唆された.
著者
MARTIN Guest 神島 芳宣 徳永 浩雄 前田 吉昭 宮岡 礼子 河野 俊丈 大仁田 義裕 酒井 高司 SERGEI V Ketov 赤穂 まなぶ 乙藤 隆史 小林 真平 黒須 早苗
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

報告者は興味深い非自明な現象を示す,いくつかの重要な例についての進展を得ることが出来た.論文 "Nonlinear PDE aspects of the tt* equations of Cecotti and Vafa" (M. Guest and C.-S. Lin, J. reine angew. Math., 印刷中)では,tt*-戸田方程式の,滑らかな解の族の存在を示した.これは技術的観点に於けるブレイクスルーである,すなわち,既存のループ群論的アプローチが適用できない非コンパクトの場合にも,偏微分方程式論が有用であることを示したことは大きな進展である."Isomonodromy aspects of the tt* equations of Cecotti and Vafa I. Stokes data" (M. Guest, A. Its, and C.-S. Lin, arXiv:1209.2045) に於いてはtt*-戸田方程式の解の大域的な滑らかさを,付随する線形方程式のモノドロミーデータ(ストークスデータ)に関連付けることにより,また別の技術的側面に関するブレイクスルーがあった.より詳しくには,tt*-戸田方程式の全ての滑らかな大域解に対して,そのストークスデータを明示的に計算することが出来た.これらの技術はまた,微分幾何学に於けるその他の問題にも適用可能であると推測される。
著者
林 暎得 四手井 綱英
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.122-127, 1974-04-25
被引用文献数
6

アカムツの種子におよぼす動物の影響に関する調査を上賀茂の京大演習林, 滋賀県の日野町有林と田上国有林および京都府立大の大枝演習林で1972年7月から1973年6月まで行った。林外・林縁および林内で発芽率の差は見られなかったが, 林外では稚樹の発生は林縁や林内にくらべてはやかった。天然更新稚樹の本数密度は林縁から林内に入るにしたがって減少していた。林内の動物の影響は種子の密度と関係なく常に高い被食率(90〜100%)が詔められた。一方, 林外や林孔の場合には密度の増加にしたがって被害も大きくなった。林縁から林内に入るにしたがって動物による被害は大きくなった。そしてこのことが林内で稚樹が少ない一つの原因ではないかと思われる。調査地において林内の動物の影響は林縁・林外・林孔にくらべて常に多かった。そして動物による被害の内訳をみると鳥によるものが一番多く, 次にノネズミ, そして土壌昆虫の順であった。昆虫の影響はわずかであった。現在まで帯状皆伐はアカマツの天然更新の作業法として推奨されてきたが, 動物による被害のあらわれ方からみても有利であろうと考えられる。すなわち帯状伐採地は光条件を良くすること以外に種子に対する動物の影響を緩和することによってアカマツの更新を容易にしていると思われる。
著者
甲元 啓介 伊藤 靖夫 秋光 和也 柘植 尚志 児玉 基一朗 尾谷 浩 DUNKLE L.D. GILCHRIST D. SIEDOW J.N. WOLPERT T.J. JOHAL G. TURGEON B.G. MACKO V. 田平 弘基 YODER O.C. BRIGGS S.P. WALTON J.D. 宮川 恒 朴 杓允 荒瀬 栄 BRONSON C.R. 小林 裕和 中島 広光
出版者
鳥取大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

1) リンゴ斑点落葉病菌の宿主特異的AM毒素の生合成に関与する遺伝子: 環状ペプチド合成酵素(CPS)遺伝子のユニバーサルPCRプライマーを利用して得たPCR産物は他のCPS遺伝子と相同性が認められ、サザン解析の結果、AM毒素生産菌に特異的に存在する配列であることが判明した。本遺伝子断片を用いた相同的組込みによる遺伝子破壊により、毒素非生産形質転換体が得られ、さらに野生株ゲノムライブラリーをスクリーニングして、完全長のAM毒素生合成遺伝子(AMT)のクローニングに成功した。AMTは13KbのORFをもち、イントロンはなく、毒素構成アミノ酸に対応するアミノ酸活性化ドメインが認められた。2) ナシ黒斑病菌のAK毒素生合成遺伝子: REMIによる遺伝子タギング法を用いて毒素生産菌に特異的に存在する染色体断片から、AKT1(脂肪酸合成)、AKT2,AKT3(脂肪酸改変),AKTR(発現調節因子)、AKTS1(AK毒素生合成特異的)の5つの遺伝子を単離した。また、AK毒素と類似の化学構造を有するAF及びACT毒素の生産菌も、本遺伝子ホモログを保有することが明らかとなった。3) トウモロコシ北方斑点病菌の環状ペプチドHC毒素の生合成遺伝子TOX2の解析が進み、特異的CPS遺伝子HTS1のほかに、TOXA(毒素排出ポンプ)、TOXC(脂肪酸合成酵素b*)、TOXE(発現調節因子)、TOXF(分枝アミノ酸アミノ基転移酵素)、TOXG(アラニンラセミ化酵素)などが明らかとなった。4) トウモロコシごま葉枯病菌のポリケチドT毒素の生合成遺伝子TOX1は、伝統的遺伝学手法では単一のローカスと考えられていたが、今回の分子分析でTOX1AとTOX1Bの2つのローカスからなり、それぞれ異なった染色体上に存在することが明確となった。5) ACR毒素に対する特異的感受性因子を支配している遺伝子(ACRS)を、ラフレモンmtDNAからクローニングした。この遺伝子は大腸菌で発現した。6) リンゴ斑点落葉病感受性(AM毒素のレセプター)遺伝子を求めて、プロテオーム解析によりAM毒素感受性リンゴに特異的に発現しているタンパク質(SA60)を検出した。7) 宿主特異的毒素の生合成遺伝子は水平移動で特定の菌糸に導入されたと推論できた。
著者
小林 暁雄 増山 繁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.6, pp.1356-1368, 2012-06-01

日本語WordNetは,独立行政法人情報通信研究機構により開発された,Princeton WordNetの日本語版であり,誰でも利用可能な大規模なシソーラスである.しかしながら,収録された語彙の多くは一般語であり,一部の著名人や国名などといった有名な固有名詞以外の固有名詞や新語はほとんど収録されていない.このため,自然言語処理の応用研究に利用する上で,これらの名詞の不足が問題になる可能性がある.一方,ウィキペディアは,誰でも参加・閲覧できるオンラインの百科事典構築プロジェクトであり,多くの名詞を記事として収録しているとともに,日々記事の追加・更新が行われている.このため,固有名詞や新語の解析を必要とする研究において,知識源として頻繁に利用されている.しかしながら,ウィキペディアには,日本語WordNetのような整理された語彙の分類体系が存在しないため,日本語WordNetのようにシソーラスとして用いるのは困難である.そこで,我々は,ウィキペディアのもつ,記事をまとめ上げるための機能の一つであるカテゴリーに着目し,これを新たな概念とし,その階層を用いることによって,日本語WordNetを拡張する手法を提案する.
著者
藤本 宜正 伊藤 喜一郎 岸川 英史 東田 章 高羽 夏樹 小林 義幸 中森 繁 佐川 史郎 園田 孝夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.795-800, 1997-09-20
被引用文献数
8 3

(背景)心筋血流イメージング剤として開発された^<99m>Tc-methoxy-isobutyl-isonitrile(^<99m>Tc-MIBI)は腫大上皮小体にも集積することが知られている.われわれは,上皮小体機能力進症の術前局在診断における^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィの有用性について検討した.(対象と方法)1994年6月から1996年9月の問に当科で上皮小体摘除術を施行した,原発性上皮小体機能充進症(PHPT)11例と二次性上皮小体機能力進症(SHPT)13例(1例は亜全摘除術後の再発例)を対象とした.^<99m>Tc-MIB1600MBqを静注し,150分後のde1ayedimageでの集積像を陽性と判定して,手術所見と比較検討した.(結果)PHPT11例のうち10例は単発性腺腫,1例は原発性過形成で,腺腫10腺中9腺と過形成3腺中2腺が^<99m>Tc-MIBIで描出された(感度84.6%).術中に確認した正常腺への集積や偽陽性像はみられなかった(predictivevaluepositive 100%).描出されなかった2腺の重量はともに200mg,描出された11腺は300〜4300mg,平均1246mgであった.一方,SHPT!3例では手術時に49腺を確認し,過形成43腺を摘除あるいは部分切除した.43腺中28腺(重量290〜2639mg,平均999m1茎)が描出され(感度65.1%),これら28腺と描出されなかった15膜(90〜540mg,平均283mg)の平均重量に有意差を認めた.術中に正常大と判断した6線への集積はみられなかったが,1例に甲状腺結節に集積した偽陽性像がみられた(predictivevaluepositive96,6%)(結論)^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィは腫大上皮小体の描出に優れ,上皮小体機能亢進症,特にPHPTの術前局在診断に有用である。しかし,重量300mg以下の小さな腫大腺の描出には限界があると考えられる
著者
杜 伯学 加藤 景三 金子 双男 小林 繁雄
出版者
社団法人エレクトロニクス実装学会
雑誌
エレクトロニクス実装学会誌 (ISSN:13439677)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.401-404, 2002-07-01

Surface breakdown phenomenon of printed wiring board was investigated with increasing temperature from 23℃ to 150℃. The experiment was carried out by dc pulse voltage with the frequencies in the range of 50Hz to 150Hz. Printed wiring boards of epoxy resin laminate have been employed to investigate the effects of the surface temperature, electrode distance and the frequencies of applied voltage on the discharge quantity. The study revealed that the time to breakdown decreases with increasing the temperature, increasing the frequency of applied voltage and decreasing the electrode distance. The characteristics of discharge currents with increased temperature and the electrode distance were discussed by power spectral density of discharge current. The results show that the power spectral density of discharge currents increases with increasing the temperature, and decreasing the electrode distance.
著者
林 国郎 福井 雅男 上井 勲
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1028, pp.165-170, 1981-04-01
被引用文献数
4

ワラストナイト結晶の転移温度以上で焼成されたワラストナイト磁器の誘電特性の劣化原因を究明するために行った実験結果は, 次のように要約される.<br>その劣化の原因が, ワラストナイトの結晶型によるものかを調べるために, 高純度のβ-, 及びα-CaO・SiO<sub>2</sub>を合成し, 分散法を用いて, 粉末状態で誘電率 (ε) と誘電正接 (tanδ) を測定したところ, β型では6.5, 及び4.2×10<sup>-4</sup>, α型では8.6, 及び5.0×10<sup>-4</sup>となり, 両者の特性にはほとんど差を認めることができなかった. 次に, ホットプレスによって得たち密焼結体により, 誘電特性を比較したところ, β型焼結体のε, 及びtanδは7.4, 及び3.9×10<sup>-4</sup>で, α型焼結体では8.4, 及び4.4×10<sup>-4</sup>となり, 結晶型による差はなく, このことが特性の劣化の原因でないことが分った.<br>そこで, 磁器の内部微細組織の観察を行った結果, 高温焼成において磁器中に生じたα型結晶と, ガラス質母相の熱膨張係数の差により, 冷却時に母相中に発生したと思われるクラックが, 誘電特性を劣化させる原因になったものと考えられる.
著者
新堀 淳樹 小山 幸伸 林 寛生 能勢 正仁 大塚 雄一 堀 智昭 津田 敏隆 IUGONETプロジェクトチーム
巻号頁・発行日
2012-05-21

日本地球惑星科学連合2012年大会(JpGU Meeting 2012), 2012/05/20-25, 幕張メッセ(千葉県)
著者
徳山 博文 鷲田 直輝 脇野 修 原 義和 藤村 慶子 伊藤 新 上山 菜穂 乃村 元子 林 晃一 伊藤 裕
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.649-653, 2010-08-28
被引用文献数
1

症例は46歳,女性.41歳時に骨盤部胞巣状軟部肉腫の治療に伴い右骨盤半裁,人工股関節置換術を施行された.2005年に腎動脈狭窄に対して経皮的腎血管拡張術を施行されたが徐々に腎機能が悪化し,2007年1月に腹膜透析(CAPD)が導入された.2008年3月に転倒し,右大腿骨骨折にて当院整形外科に入院,観血整復固定術・自家腓骨移植術を施行された.5月15日より腹痛を認めたが腹膜炎の所見は認めず,5月21日退院となった.5月29日外来受診時は血液検査所見に異常所見はなかったが,5月30日より腹痛出現,徐々に症状増悪し,6月5日当院を受診し腹膜炎疑いにて緊急入院した.抗生剤の点滴静注(ceftazidime hydrate(CAZ)1 g/日,cefazolin sodium(CEZ)1 g/日,vancomycin hydrochloride(VCM)1 g/日)および腹腔内投与CAZ 1 g/日,CEZ 1 g/日)を施行したが,症状改善せずCAPD排液細胞数は540/μLから940/μLへ上昇した.第5病日,排液細菌培養にて複数菌が判明し,第6病日には腹痛が増悪し,排液は黄色混濁し排液細胞数5,200/μL,腹部CTにてfree airを認め緊急手術となった.大腿骨頭置換のボルトの背側の骨盤腔の間隙に小腸が嵌頓し,回腸末端部より30 cm口側に嵌頓部の穿孔を認めた.術後は集中治療室にて持続的血液透析濾過を施行し,同時にエンドトキシン吸着を施行した.術後経過は順調であり,腹膜透析から血液透析へ移行した.本症例では抗生物質の無効,CAPD排液の色調異常,CAPD排液培養から複数菌の検出などから,通常の細菌性急性腹膜炎ではないと判断し,腹部CTで確定診断に至った.骨盤あるいはその支持組織への侵襲手術後の骨盤内間隙に腸管嵌頓を誘発し,CAPDの中止を余儀なくされた症例を経験した.
著者
島田 一雄 若林 良二 鈴木 弘 武藤 憲司 田中 健二 浅井 紀久夫 結城 皖曠 近藤 喜美夫 渡辺 正子 美濃 導彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.486-495, 1998-05-25
参考文献数
13
被引用文献数
8

現在, 大学, 高専等の高等教育機関が教育・研究に利用しているディジタル衛星通信システムは, 二つに分けられる.文部省が大学間教育交流を主目的に推進しているSCS(Space Collaboration System)と研究を主目的として自主的に組織されたディジタル衛星通信の大学間高度共同利用研究協議会(UnSAT協議会:University's Joint Study Group for Digital Satellite Communications)である.本論文は, 平成9年5月30日に航空高専で開催された国立高等専門学校協会(以下, 国専協と略記)主催の「高等技術教育フォーラム'97」を上述のSCSとUnSATの異なる二つの衛星通信システム接続により, 終日, 6高専と3大学に配信する実験を行った結果を取りまとめたものである.最初にSCSとUnSATの概要を述べ, 続いてフォーラムの内容を紹介する.つぎに予備実験とフォーラム当日実施した本実験について述べる.更に, 予備実験と本実験に対する参加者へのアンケート調査に基づく主観評価結果の一部を示す.続いて, 1ホップと2ホップの場合の画像劣化の比較を行うために試みた画像の客観評価の結果について述べる.最後に考察を行い, 2衛星通信システム接続による教育・研究交流ネットワーク構築への手がかりが得られたことを示す.
著者
小野田 正利 小林 正幸 近藤 博之 平沢 安政 藤岡 淳子 山下 晃一 近藤 博之 平沢 安政 藤岡 淳子 志水 宏吉 井村 修 木村 涼子 中村 高康 野田 正人 岩永 定 山下 晃一 田中 規久雄 古川 治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

学校の教職員と保護者の間に、いま時として鋭い対立関係が生じてしまい、教育活動に大きな影響が出ていることが、わが国の学校問題の一つに急浮上してきた。本研究では、質的調査と量的調査を組み合わせ、同時に教育学の観点からだけでなく、心理学、精神医学、福祉学、法律学などの多様な分野の専門研究者を交えて、これらの問題の原因究明とともに、良好な関係性の構築の方向性を明らかにした。
著者
長尾 尚 小林 直行 市川 隆司 黒上 晴夫 稲垣 忠
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.125-128, 2004-03-05
被引用文献数
1

本論文の目的は,「匿名性」と「即時一覧性」機能のある電子掲示板システムを活かした授業方法を開発し評価することにある.高校の学級という比較的規模の小さな日常空間においても「授業中」には,自由闊達に発言できない状況が生じる.その克服には,複数の相手に対面した状態で自分の意見を表現しやすい環境の支援が必要となる.そこで上述した2つの機能を備えた電子掲示板を開発しそれを組み込んで授業設計をすることで議論を活発にし新たな意見を導けないかと考えた.2回の授業実践の結果,匿名の電子掲示板上では,匿名性によって少数意見を導き出しやすく,即時一覧性により議論が活性化されるという2つの効果が明らかになった.
著者
石原 雅巳 寺本 龍生 松井 孝至 千葉 洋平 山本 聖一郎 安井 信隆 石井 良幸 奈良井 慎 立松 秀樹 小林 直之 徳原 秀典 渡邊 昌彦 北島 政樹 倉持 茂
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.440-445, 1990-06
被引用文献数
6

症例は22歳の男性.1995年5月,排便困難,血便を主訴に近医を受診した.直腸癌の疑いで当院を紹介され1995年5月29日,入院となった.注腸造影,大腸内視鏡検査では肛門縁より約7cmの直腸左壁を中心とし半周性の隆起を主体とした腫瘤の集蔟を認め,感染性腸炎を疑わせる所見であった.生検の病理組織像は形質細胞の多い非特異的炎症のみであった.梅毒血清反応が陽性であったことから,梅毒性の直腸炎と診断し,駆梅療法を開始した.開始後,梅毒血清抗体価の低下にともない病変の縮小を認め,治療後約4カ月で梅毒血清抗体価の陰性化と病変の消失を認あた.さらにTreponema pallidum(以下T.p.)に対する抗体を用いた酵素抗体法によりT.p.が生検部の病理組織より証明され,梅毒性直腸炎の確定診断がされた.