著者
井上 修平 藤野 昇三 手塚 則明 紺谷 桂一 小西 孝明 澤井 聡 花岡 淳 一瀬 増太郎 寺本 晃治 森 渥視
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.545-550, 1999-05-15
被引用文献数
4

症例は60歳女性で, 膠原病, 膜性腎症等のため長期間ステロイドを投与されていた.1997年12月中旬から咳嗽, 喀痰が出現し, 翌年1月2日に39.3℃の発熱がみられた.1月4日に突然の右胸痛, 呼吸困難が出現し, 翌5日に緊急入院となった.入院時には発熱, 心肺不全を伴い起座呼吸, チアノーゼが認められた.胸部X線, CT写真では右胸腔の2/3を占める下葉中心の巨大肺嚢胞が認められ, 上中葉の無気肺, 胸水も存在した.血液検査ではCRPの高値及び低酸素血症が認められた.感染のコントロールのために抗生剤の投与をすると共に, 胸腔ドレナージ及び肺嚢胞内吸引療法を施行した.肺嚢胞吸引療法で嚢胞の増大進行を防止し, 胸腔ドレナージで呼吸不全から離脱できたため, 1月13日に安全に肺嚢胞切除術を施行できた.術後経過は順調であり術後3週間目に退院となった.
著者
加藤 みゆき 大森 正司 長野 宏子 加藤 芳伸
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

阿波晩茶製造工程中の桶漬けにおいて微生物を分離した。その中でも乳酸菌に分類されるLactobacillus pentosus, Lactobacillus plantarum, Enterococcus fecium and Enterococcus avium.を分離同定した。この DNA を解析した結果 1494bp の塩基配列が明らかとなった。阿波晩茶から分離した微生物の中にコラゲナーゼ活性を有している微生物が明らかとなった。阿波晩茶の浸出液中に抗酸化性を示す物質があることが明らかとなった。
著者
横井 公良 恩田 昌彦 山下 精彦 森山 雄吉 田中 宣威 古川 清憲 京野 昭二 高崎 秀明 瀬谷 知子 横山 滋彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.1940-1948, 1994-08-01
被引用文献数
30

過去19年間に当教室で経験した成人(15歳以上)の腸重積症は11例あり,著者らは発生部位別に小腸型(4例),回盲部型(4例),大腸型(3例)の3つに分類し,さらに回盲部型を小腸由来の回腸結腸型(1例),大腸由来の盲腸結腸型(3例)に亜分類し,臨床病理学的検討を行った.小腸型,回盲部型,大腸型の平均年齢は31.0歳,46.6歳,69.3歳,平均病悩期間は59.3週,33.3週,1.1週,診断率は25%,50%,100%,原因疾患が悪性腫瘍であった頻度は0%,50%,100%であった.小腸由来か大腸曲来かの観点から悪性腫瘍の頻度をみると,小腸由来は0%(0/5),大腸由来は83%(5/6)であった.それぞれの部位に臨床病理学的特徴があり,この分類方法は有用と思われた.また術前,術中の愛護的な整復を試みて腸重積が環納されれば,発生部位の同定が可能となり,より的確な術式が選択できるものと考えられた.
著者
柴田 浩平 前田 豊樹 三森 功士
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大腸癌における発癌または癌進展における新規non-coding RNAが注目されてきた。われわれは大腸発癌および癌進展において重要な役割を担う因子について解析を行った既存のデータベース(aCGH, Gene Expression, SNP アレイ)があり、これらをin silico に解析するなどしてlong nc RNAおよびmicroRNAについて解析を進めた。その結果、1)mTOR経路を標的とするmiR144が大腸癌の予後と関連すること。2) 大腸癌のゲノムクラスター上変異と発現変異とが相関する領域としてmiR17-92aが重要であることを改めて明らかにした。さらに3)大腸発癌関連遺伝子多型として8q24 (rs6983267)が知られるが、同多型直上において存在するlincRNA を同定し、同ncRNAの発現がMYCを介した大腸癌進展に寄与することを明らかにした。本助成により、臨床的に有用なマーカー候補であるnon coding RMAを同定し、また基礎的にも新たな発癌機構を明らかにしえた。
著者
森 俊夫
出版者
岐阜女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

グレイレベル画像解析が編目密度の異なる平編物の視覚的特徴、規則的にあるいはランダムに折り畳まれた綿布の折りしわ外観及びさざ波状のしわや不規則な折りしわを含むランダムなしわの布の視覚的緩和挙動の測定に適用された。デジタル画像のグレイレベル平均、グレイレベルの同時生起行列から抽出される角二次モーメント、相関、コントラストやエントロピーおよびフラクタル次元が視覚的特徴量として測定された。これらの画像情報量は平編物の美しさ、布の折りしわやランダムしわの視覚的特徴や視覚的緩和挙動を特徴づけるのに有用であることがわかった。水玉模様の色対比や色陰現象を特徴づけるためにカラー画像解析が適用された。NTSC_RGBカラーシステムで表現されたRGB画像からL*C*H*画像への変換が行われた。同時生起コントラスト(CON)がL*、C*およびH*画像について計算された。CONは、水玉模様の対比効果や色陰現象を記述するよいパラメータとなることが分かった。並置混色の論理を応用して多色の色柄の全体的な色の印象から色柄布の寒暖を評価するために、カラー画像解析が適用された。多色系色柄布の暖色、中性色および寒色イメージは色相角により評価されることがわかった。RGB色空間を利用した色彩特徴解析が布の色彩テクスチャの特徴づけに適用された。因子分析により官能評価値と視覚的特徴量との関係が検討された。画像解析が色柄布の変退色を評価するのに適用された.画像中の各画素のL^*,a^*およびb^*がCIELABの公式を用いて計算され,L*,a*およびb*の全画素の平均値がそれぞれAVE-L^*,AVE-a^*およびAVE-b^*として得られた.単一色に対して,分光色差計によって測定されたL^*,a^*およびb^*と画像解析から求められたAVE-L^*,AVE-a^*およびAVE-b^*との間にはよい一致がみられた.
著者
佐々井 啓 徳井 淑子 横川 公子 柴田 美恵 森 理恵 松尾 量子 村田 仁代
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

各自研究を推進しつつ各年とも3〜4回の研究会で意見の交換を行い報告書にとりまとめた。研究および意見交換は主に西洋と日本のグループに分かれてすすめた。西洋においては19世紀後半のアメリカ、イギリス、日本における「New Women=新しい女」に焦点をあて、New Womenの服飾からジェンダー意識について検討を行った。New Womenの衣服改良運動や、New Womenを扱った演劇・小説に表された服飾表現から、ファッションにあらわれた女性解放について明らかにし、新しい衣装と行動とによって「新しい女」が確立していったことを明らかにした。また、同時代のイギリスの女性のスポーツ服や合理服といった、新たな服飾についての調査を通して、この時代に新たな価値観が提示され、20世紀のジェンダー観に影響を与えていたことが分かった。また、異装については、17世紀前半の英国の女性の異性装、近代フランス文学における男装を取り上げ検討し、17世紀の異装は少年の服飾との相似点から不完全な男装であったことに注目し、当時のジェンダー意識を明らかにした。日本においては、異装については鎌倉期の『とりかえばや』と近世初期の阿国歌舞伎の装いについて中心に検討し、ジェンダーとセクシュアリティーの明証性について考察を進め、装いのジェンダー的な意味を多面的に示すものとの示唆を得、さらに著者である女性の目を通した男女に共通する価値意識についても明らかにした。また、阿国の男装と風流としての男子の女装の検討からは、服飾における両性の接近について明らかにした。また、17世紀初期の風俗について「歌舞伎図巻」から、男性の髪型と服装の関連を明らかにし、流行をリードする社会集団を特定することによって服飾におけるジェンダー観を明らかにした。またその結果をふまえ、近世日本の服装におけるジェンダー観と近代日本の「キモノ」観との関連を明らかにした。
著者
長友 和彦 森山 新
出版者
宮崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

・多言語併用環境,特に三言語併用環境にある幼児,年少者,成人の日本語およびその他の言語の発達を文法やコミュニケーション能力の発達という観点から解明した。・5班に分かれた約20名の研究者で月1回公開研究会を行いながら,タガログ語,ベンガル語,スペイン語,中国語,台湾語,韓国語,日本語によるデータの分析とその分析結果の検討を行った。・数回にわたって研究成果の中間発表会および最終発表会を公開で行った。・平成15年9月にアイルランドで開催されたThird International Conference on Third Language Acquisition and Trilingnalismで研究成果を発表するとともにInternational Association of Multilingualismの発足式に参加した。・研究成果を報告書(pp.1-199)にまとめ,約400部を関係機関・研究者に送付した。・本研究を基礎として「マルチリンガリズム研究会」が創設された。
著者
高橋 純 堀田 龍也 青木 栄太 森下 誠太 山田 智之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.117-120, 2009
被引用文献数
2

教科書に準拠した算数科提示用デジタルコンテンツを活用した授業実践を行い,実物投影機を活用した授業との比較から,本コンテンツを評価した.その結果,提示用デジタルコンテンツを活用した授業では,実物投影機を活用した授業と同じレベルまで理解度が高まっていた.児童や教員を対象にしたアンケート結果では,両群共に4段階評価で平均3を越える高い評価であったが,両群を比較すれば,本コンテンツを活用した授業の方が高い評価であった.児童の楽しさや満足,教員の板書のしやすさといった項目で,より高い評価が得られていた.また,本コンテンツを活用した授業の方が,拡大提示にかかる操作時間は短く,数多くの指導場面で教科書の拡大提示が行われるといった授業の特徴も明らかとなった.
著者
大山 莞爾 島田 多喜子 大谷 基泰 森 正之 濱田 達朗 福澤 秀哉
出版者
石川県農業短期大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

ゼニゴケY染色体は、主にその特異的反復配列からなる領域YR1(約4Mb)と、その他の領域YR2(約6Mb)に大別される。YR2はさらにContig-AとContig-Bの2領域に分かれている。YR2のContig-AおよびContig-Bのいずれにおいても100kb当たり1個の頻度で遺伝子が見いだされた。これを常染色体における遺伝子密度と比較するため、まずゼニゴケゲノム全体がコードする遺伝子数を推測した。進化的にゼニゴケに近い陸上植物であるヒメツリガネゴケは約2万5千個、緑藻クラミドモナスは約2万個の遺伝子を有するとされている。従って、ゼニゴケゲノムがコードする遺伝子数は2万〜2万5千と考えるのが妥当であり、その遺伝子密度は100kb当たり7〜9であると予想される。しかし、YR2における遺伝子密度は、偽遺伝子などを含めても100kb当たり2遺伝子である。さらに、ゼニゴケESTの約40%が他生物種由来の配列と相同性を示さないことから、相同性検索によって検出できるゼニゴケ遺伝子の数は全体の60%程度であると考えられる。このことを考慮するとY染色体の遺伝子密度は最大で100kb当たり3程度であり、少なくともYR2における遺伝子密度は常染色体に比べて低いと言える。実際、ヒトY染色体の場合でも常染色体に比べて遺伝子密度が低いことが知られており、Y染色体が遺伝子を失う方向に進化していることを改めて裏付けた。YR2配列について、90%以上の相同性を示す100bp以上の反復配列を検索したどころ、その約75%が反復配列であった。遺伝子はこれらの散在する反復配列の間に存在していた。反復配列の中には、レトロトランスポゾンなどの転移因子や常染色体にも存在するものも含まれていた。これは、ゼニゴケY染色体の進化の過程でY染色体に特異的な反復配列を高度に蓄積していったYR1とは対照的である。
著者
森岡 清志 大谷 信介 松本 康 園部 雅久 金子 勇 直井 道子 中尾 啓子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、第一に都市度とパーソナルネットワークの関連を都市間比較を通して明らかにすること、第二に、都市度の他に、階層性、家族的特性などのパーソナルネットワークへの効果も明らかにすること、第三に、「それほど親しくない人びと」とのネットワークを年賀状調査を中心とする事例分析をもとに捉え、機関や集団の存在を明らかにしながら、パーソナルネットワークと都市社会構造との連結点を具体的に把握することの三点である。第一と第二の研究目的に従って、平成6年度と平成7年度には、仮説の検討、調査票の作製、全国7地区における実査、調査票の点検、エラーチェックなどをおこなった。調査地は東京都文京区、調布市、福岡市中央区、西区、新潟市、富士市、松江市であり、各地点300サンプルを選挙人名簿から抽出した。回収率は全体で約48%であった。詳細は報告書第2章に記載されている。また、この調査結果の解析と知見については報告書の第3章〜第11章にまとめられている。平成8年度は、上記調査の集計分析の他、第三の研究目的を達成するべく年賀状調査を実施した。現在この事例分析の知見を整理・検討しているところである。調査票にもとづく大規模調査の結果は、都市度と友人ネットワークとに先行研究で示されたようなストレートな相関を見出しえないものとなった。都市度の高低は、遠距離に居住する友人数の大小と有意な相関を示し、むしろ親族ネットワークと都市度との間に興味深い関連が見出されるものとなった。このような結果の差異は、親しい親族数、友人数の聴き方のちがいによっても生じたものと思われる。
著者
繪内 正道 羽山 広文 森 太郎 瀬戸口 剛 本間 義規 林 基哉 佐藤 彰治
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本申請研究の目的は、冬をポジティブに捉えている子供達が、何時の時点で冬をネガティブに考えるようになるか、それに影響を与えている大人の側では、冬に対してどの様な適応状況にあるか、北方圏域における小学生や成人を対象にしたアンケート調査を通じて、経時的推移の実態把握を量ることにある。下記の「冬への適応に関する6軸の項目」に関わって、日本(札幌・盛岡・仙台)、カナダ(Waterloo, Gatineau)、フィンランド(Espoo)、ロシア(Knabarovsk)、中国(Harbin)においてアンケート調査を実施した。1.Enduring Winter(冬を忍耐する)、2.Tolerating Winter(冬を大目に見る)、3.Accepting Winter(冬を受け入れる)4.Respecting Winter(冬に期待する)、5.Appreciating Winter(冬に感謝する)、6.Celebrating Winter(冬を祝賀する)6項目合わせて、100%とするアンケート調査の実施例はなかった。この6軸項目を拠り所にして小学校学童や成人を対象にアンケート調査を実施することにより、言語や文化な違いを超えて、北方圏域で生活する人々の『冬の捉え方』を相互に分かり合い、共通の尺度を共有することは、冬とどの様に向き合い、冬期の屋外活動とどの様に取り組むのか、のシナリオが見出された時、積雪寒冷な地域に望まれるこれからのライフスタイル、特に微気候計画に基づいた街づくり(コミュニティーづくり)や省エネルギーのあるべき姿が明らかになり、これからの建築環境計画や都市計画に欠かせない基礎資料となる第一部では、日本の小学生(低学年)は、冬をポジティブに捉え、大人になるに従ってネガティブになる。カナダの小学生も冬をポジティブに捉えるが、成人は2面的になっていた。フィンランドは小学生も成人も冬をポジティブに捉え、ロシアや中国(Harbin)では、冬を受は入れるという心理特性にあることが分かった。また、対象地域において学童や成人の外套下の温湿度測定・就寝時の寝室の温湿度測定の結果を取りまとめ、検討を加えた。第二部では、札幌で行われたInternational Forum CREATION OF BETTER OPEN SPACES IN COLD REGIONS のProceedingsを収録した。このフォーラムでは、北方圏域における公開空地のあり方や学童の冬の屋外活動の実態を対象に、発表・討議を行い、Winter Citiesに求められる公開空地等の基本的な都市計画は如何にあるべきか、についてディスカッションを行った。更に、学童の冬の屋外活動を誘発するためワークショップを行い、学童による屋外活動を活発にする施設の提案や、研究者・都市計画家・建築家・行政官による屋外活動を誘発するためConcepts, Strategies, Toolsに関わった基礎的なディスカッションの結果を取りまとめた。
著者
神林 恒道 渡辺 裕 上倉 庸敬 大橋 良介 三浦 信一郎 森谷 宇一 木村 和実 高梨 友宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

この「三つの世紀末」という基盤研究のタイトルから連想されるのは、十九世紀末の、いわゆる「世紀末」と呼ばれた時代の暗く停滞したム-ドかもしれない。われわれはいままさに「二十世紀末」を生きている。そこからややもすれば「世紀末」という言葉に引きずられて、われわれの時代をこれと同調させてしまうところがあるのではなかろうか。しかしまた実際に、六十年代頃から現在に及ぶ芸術の動きを見やるとき、そこには芸術それ自体としてもはや新たなものは生み出しえない一種の先詰まりの状況が指摘されもする。といってかつての「世紀末」のような暗さはあまり感じられない。ダント-の「プル-ラリズム」、つまり「何でもあり」という言葉が端的に示すように、その気分は案外あっけらかんとしたものだと言えなくもない。今日の「何でもあり」の情況の反対の極に位置づけられるものが、かつて「ポスト・モダン」という視点から反省的に眺められた「芸術のモダニズム」の展開であろう。ところで「ポスト・モダン」という言い方は、いってみれば形容矛盾である。なぜならばmodernの本来の語義であるmodoとは、「現在、ただ今」を意味するものだからである。形容矛盾でないとすれば、この言葉のよって立つ視点は、「モダン(近代)」を過ぎ去ったひとつの歴史的時代として捉えているということになる。それでは過去にさかのぼって、いったいどこに「芸術における近代」の始まりなり起点を求めたらよいのだろうか。そこから浮かび上がってくるのが、「十八世紀末」のロマン主義と呼ばれた芸術の動向である。ロマン主義者たちが掲げた理念として、「新しい神話」の創造というものがある。そこにはエポックメイキングな時代として自覚された「近代」に相応しい芸術の創造へ向けての期待が込められている。この時代の気分は、「世紀末」の暗さとは対照的であるとも言える。つまりこの「三つの世紀末」という比較研究を貫く全体的テーマは、「芸術における近代」」の意味の問い直しにあったのである。
著者
森下 久 林田 章吾 伊藤 淳 藤本 京平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.687-697, 2002-05-01
被引用文献数
15

携帯端末がますます小形・機能化が行われているなか,それに使用されるアンテナは携帯端末機外側には現れない,アンテナの内蔵化の要求がますます高まってきている.また,小形になった携帯端末を実際に使用する際,使用者の多くは人差し指を立てた状態で携帯端末を保持するようである.ここでは,人体(頭,手及び指)を考慮した携帯端末用内蔵アンテナの特性について電磁界シミュレータを用いて解析し,アンテナが人体から受ける影響を明らかにする.解析モデルは,人体頭部と携帯端末機を持つ手及び指からなる人体モデル,及び金属筐(きょう)体に取り付けられたアンテナから構成される.内蔵アンテナには,既に実用されている平板逆Fアンテナと平衡給電型アンテナとして提案されている折返しループアンテナの2種類を用いている.本解析モデルを用いて計算した結果は実験値とおおむね一致し,人体モデルの影響を含めて携帯端末用アンテナの特性を比較的精度良く解析できることを示した.この解析モデルを用いて,W-CDMAの周波数帯において携帯端末に取り付けられた平板逆Fアンテナの特性を実用の携帯端末機に多く用いられている5/8波長モノポールアンテナの特性と比較して計算した.その結果,平板逆Fアンテナの放射効率は,人体モデルの影響を受け,指まで含めると約20%近くまで劣化することがわかった.折返しループアンテナにおいては,平板逆Fアンテナに比べ,金属筐体に電流が流れていないため,放射効率が約10%程度良くなっていることがわかった.
著者
永森 静志 水谷 悟 新谷 稔
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

平成8年度におけるこのプロジェクトにおける成績は、申請者らが樹立したヒト由来肝細胞を、ガラス担体(シラン)を用いたラジアルフロー型バイオリアクター(RAD)で培養すると、担体の内部や表面に細胞が3次元的配列を保ちながら増殖した。これは走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡で観察可能であった。酸素消費量やグルコース消費量から算定し10^8cells/ml-matrix以上の高密度培養が可能で、200ml容量のRADで総細胞数は2.88×10^<10>個となった。他の重要な肝機能としてのアンモニア代謝や、薬物代謝としてナファモスタットメシレートやアンチピリンについて検討し、機能していることを確認した。RAD本体の改良は、坦体の粒子や孔の大きさ、表面のコーティングなど検討したが現在の坦体に勝るものは見つかっていない。体外循環量の減量には、50ml容積のリアクターの作成と回路チューブの狭小・短縮により総体外循環量を200ml以下に減量した。また体外循環回路の改良は血漿への酸素の供給やRADの血漿流速のコントロールが必要である。協同開発者の旭メディカルとエイブルによりフォローファイバー薄膜による酸素供給システムと、RADへの流速を維持するための血漿リサイクル回路を作成した。、その制御システムの基本的設計の終わり、実用化への開発を行っている。一方RADを生体に装着した際の安全性確認のために、ブタを用いて検討を加えた。実際のヒトへの応用を考え、頚静脈にカテーテルを挿入し毎分30mlの血漿を分離、これをRADに環流した。5時間の還流経過中ブタのvital signは安定していた。一般に体外循環システムで問題となる血管拡張、降圧作用のあるbradykininの血中濃度を測定したところ、細胞培養の有無に関わらず、増加傾向を認めなかった。このシステムの生体への安全性が明らかとなった。
著者
津森 伸一 伊藤 敏 磯本 征雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.581, pp.19-24, 2006-01-21
被引用文献数
5

資格試験や検定試験の受験対策として過去問題等を用いた問題演習が実施されている。しかし、多くの資格試験、検定試験で採用されている多肢選択式問題による採点方法は偶然の正解を考慮せず単純に素点の合計を求めるものであり、学生が自身の理解状況を把握するための手段としてこの評価方法をそのまま適用することには問題が残る。そこで筆者らは、多肢選択式問題を用いて、e-Learningによる学習環境下において、学生が特に自分の学力を適切に把握することを目的とした学力評価方法を検討している。現在、既に提案した一手法と情報処理技術者試験の過去問題をCourse Management Systemの1つであるMoodleに実装し試験運用を行っている。本稿では、このシステムの概要とその活用の実態を報告する。
著者
東野 哲也 加藤 栄司 森満 保
雑誌
Audiology Japan (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-37, 1995-02-28
被引用文献数
9
著者
渡利 徹夫 江尻 晶 森下 一男 佐貫 平二 渡辺 二太 西村 清彦 天野 恒雄 成原 一途 岡本 正雄 笹尾 真美子 霍 裕平 沈 慰慈 沈 学民 李 健剛 張 大慶 王 孔嘉 兪 国揚 王 兆申 方 瑜徳 張 暁東 万 元熈 万 宝年 邵 育貴 朱 思錚 武藤 敬 関 哲夫 熊沢 隆平 大久保 邦三 岡村 昇一 足立 圭三 東井 和夫 佐藤 哲哉 孟 月東 藤原 正巳 羅 家融 藤田 順治 SHEN Xuemin SHEN Weici FANG Yude WANG Zhaoshen WANG Kongjia YU Guoyang HUO Yuping WAN Yuanxi WAN Baonian LI Jiangang ZHANG Daqing ZHANG Shaodong LUO Jiarong MENG Yuedong SHAO Yugui ZHU Sizheng 万 元煕 李 建剛 愈 国揚
出版者
核融合科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

本計画立案時点において、トーラス型プラズマ装置として核融合科学研究所(NIFS)ではJIPP T-II U及びCHSが稼働中であり、準定常運転を目指す大型のLHDが建設中、他方合肥の等離子体物理研究所(ASIPP)ではHT-6M装置が稼働中、準定常運転を目指す大型のHT-7が建設中であった。またこの時点では「高ベータプラズマの閉じ込め研究」を共同研究の主要なテーマとしたが、基本となるプラズマ加熱が未だうまく行かない状態にあったASIPP側では大電力イオンサイクロトロン加熱の実現をHT-6Mの第一優先項目としたので、本計画もこの方面への研究協力に力点を置くことにした。本計画の3年間に、日本から合肥への派遣延べ21名,合肥から日本への招聘延べ18名を含む交流が実行された。平成5年度:ASIPPは採用していたカーボンリミターの材料の選択に問題があるとしてこれを撤去した。引き続きイオンサイクロトロンアンテナのファラデイシールドと呼ばれる部分の構造に問題があるというNIFS側の指摘に基づきこれも撤去した。これらの結果として、加熱の効果を示す「アンテナの負荷抵抗の増大」が観測された。NIFSのイオンサイクロトロン加熱において実績のあるチタンゲッターをHT-6Mに持ち込み不純物の制御を試みた。その結果ターゲットプラズマの質が向上した。入射電力は多少増大したものの未だ本格的な加熱には至らなかった。平成6年度:NIFSにおいて実績のある、固体ボロンを使ったボロニゼーションを試みた。不純物の流入が減少し、表面加熱に関する実験を行なう事が出来た。不純物の問題はいくらか改良されたものの、アンテナは絶縁破壊が起り大電力入射を妨げている。これを解決するために「長いアンテナ」を製作することにした。NIFSは2イオン共鳴加熱に移行することを主張していたが、HT-6Mでは磁場を0.9T以上にする上での技術的問題とASIPP内の実験テーマの優先順位の問題があって、2イオン共鳴加熱への移行は持ち越すこととなった。NIFSではLHDのイオンサイクロトロン加熱のための技術開発研究を行なっている。この一部としてASIPPの同軸切替器を改造して使用することにした。平成7年度「長いアンテナ」を装着し、第2高周波加熱以外に2イオン共鳴加熱の実験も行なった。予備的なものであったが、水素と重水素の成分比等の基本データも
著者
近森 秀高
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究では、3個のタンクからなる単純な洪水流出モデルにカルマンフィルターを併用した排水機場洪水位実時間予測システムについて、カルマンフィルターの適用条件およびモデルの単純化が予測精度に及ぼす影響と、この予測システムに基づく排水機制御システムの有用性について吟味した。得られた結果は以下のようである。1.この予測システムを用いて、昭和47年7月および昭和61年7月豪雨時の巨椋・久御山両排水機場における洪水位の予測を行い、カルマンフィルターの適用条件と予測精度との関係について吟味した。その結果、状態変量の推定誤差分散行列の対角項は1×10^<-3>、システム誤差分散は1×10^<-2>〜10^<-3>、観測誤差分散は1×10^<-2>未満程度がよいことが分かった。2.予測システムを単純化した場合の予測精度の変化について検討した。その結果、洪水位予測の際重要になるピーク水位の予測誤差に着目すると、a)上流域からの流出は非線形タンク1個で表現してもよいこと、b)上流域タンクの孔係数は流出解析の結果に基づいて固定しておいても実用上差し支えないこと、c)他流域からの流入やポンプのon-offにより水位変動が激しい場合は、氾濫域タンク水深をフィルタリングの対象とした方がよいこと、などが明らかになった。3.セルフチューニングコントロール理論を適用して、排水機実時間制御システムを構築し、このシステムを巨椋流域で発生させた10〜100年確率の仮想出水に適用した。その結果、この制御システムを用いた場合、排水規則に準拠して排水量を決めた場合に比べ、洪水時のピーク水位はあまり変化しないが、流域低地部での湛水時間は大幅に短縮できることが分かった。しかし、水位低減時、排水機が激しい間欠運転が起こし、排水管理上問題となることも明らかになった。
著者
森近 貴幸 秋田 直人 浪尾 美智子 金谷 佳和 金谷 親好
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2008-04-20

【目的】膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後の競技復帰を目指したリハビリテーションでは、再建術からの時期、筋力などを考慮しながら運動強度を増加させてゆく効率的なプログラム構築が要求されている。また、早期復帰を目指し、ACLに負担をかけない筋力増強や再断裂予防のための取り組みも重要である。今回ACL再建術後の高校サッカー競技選手に対して、クリティカルシンキングによるプログラム構築を行い、アプローチとして動きによる気づきを取り入れた症例で効果的な知見が得られたので考察を交え以下に報告する。<BR>【方法】対象は試合中に受傷し、ACL再建術を施行した高校サッカー競技選手。治療プログラムにおいてクリティカルシンキングを用いて、筋力増強とともに基本的動作、サッカー動作、補助トレーニングをMECE(モレなく、ダブりなく)で段階的に行った。また、フェルデンクライス・メソッドによる動きによる気づき(以下ATM)を補助トレーニングの中に取り入れ、自覚的な運動能力の変化を評価した。ATMは、関節を滑らかに動かすレッスンなどで構成されており、1日に1プロセスをゆっくりと心地よい自動運動で行なった。<BR>【結果】クリティカルシンキングを用いたプログラム構築では、各時期に応じたメニューを提供することができ、MECEを活かしてトレーニングの無駄を省けた。また、治療への積極的な参加を促すことが出来た。ATMを取り入れてから、「余分な力が入らなくなった」「自分の身体に対する意識が変わった」という自覚的変化が現れ、動作が滑らかになった。トレーニングの段階が進むにつれサッカー動作の質が向上し、「ボールを扱う感じが違う」「ドリブルが楽になった」という感想と、「ボールタッチが柔らかくなった」という客観的意見が得られた。<BR>【考察】クリティカルシンキングを用いたことにより、各段階で必要な筋力や動きを明確にすることができた。この問題点を選手自身が認識することで、効果や取り組む姿勢に変化が現れた一因になったと考えられる。また、MECEにてプログラムのモレ、ダブりをなくしたことで時間的な効率が上がり、早期復帰につながるのではないかと考えられる。アプローチでは、フェルデンクライス・メソッドによるATMを補助トレーニングの中にレッスンとして早期から取り入れたことで、動きを通して自分の身体に対する気づきを学習することができた。これにより、走ったり、ボールを扱ったりする時期が来る前に神経系による身体の準備が完了していたため、サッカー動作トレーニングへの移行がスムーズに行なえた。さらに、受傷前の習慣的な動作が改善されたため、動作のレパートリーが豊富になり再断裂の予防とパフォーマンス向上につながったと考えられる。<BR>