著者
渡邊 智也 楠見 孝
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
pp.2020.045, (Released:2020-12-15)
参考文献数
52

In this study, the effects of a theatrical activity on social abilities were examined. The participants (N = 40) were randomly assigned to an experimental or control group. While the experimental group read a playscript, planned a performance, and performed, the control group read a playscript and summarized the content of the story. All the participants completed three social ability measures, namely, Reading the Mind in the Eyes Test, Yoni Test, and Situational Test of Emotional Understanding as well as a questionnaire, namely, Interpersonal Reactivity Index on three occasions: pre, post, and followup measurement. Moreover, they completed the Narrative Transportation Scale immediately after the intervention, which assessed the psychological state of immersion into the narrative world. It was predicted that the extent of narrative transportation the participants experience would moderate the effect of theatrical activity. The results revealed that highly transported participants in the experimental group scored significantly higher than those in the control group on various scales including Reading the Mind in the Eyes Test, Yoni Test, and the Interpersonal Reactivity Index Empathic Concern scale. Furthermore, after the intervention, the extent of transportation predicted these social abilities in the experimental group.
著者
野上 元 西村 明 柳原 伸洋 蘭 信三 渡邊 勉 福間 良明 山本 昭宏 一ノ瀬 俊也 木村 豊
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は、5年間の研究計画の二年目であった。まず、4月14、15日に東京大学で行われた戦争社会学研究会第9回大会の場を利用して、野上は、東京大学文学部社会学教授・佐藤健二氏を招いて特別講演「「戦争と/の社会学」のために」を企画した。これもまた、学際的研究領域としての「戦争社会学」の内実を検討するものであり、活発な質疑を経て、戦争社会学の可能性を検討することができた。また西村は、テーマセッション「宗教からみる戦争」を企画した。宗教と戦争と社会の結びつきについて、多面的な議論が行われた。6月には、同研究会の研究誌『戦争社会学研究』の第二号が刊行された。特集となる「戦争映画の社会学」は、昨年度企画したシンポジウム「『野火』の戦争社会学」の活字化である。企画者の山本ほか、野上・福間が寄稿した。また、第二特集として「旧戦地に残されたもの」があり、西村が企画趣旨文を寄せている。8月12日には、京都女子大学で小林啓治『総力戦の正体』の書評会を開催した。歴史学の立場からの「戦争と社会」研究であるが分野をまたいだ議論を可能にする幅広い問題提起を行う書物であった。書評担当者の一人を野上が担ったが、「戦争と社会」研究における「総力戦」概念の重要性に照らした検討を行った。この2018年度より、筑波大学を所属機関とする非常勤研究員として木村豊氏を雇用し、研究会の事務手続きを手伝ってもらうことになった。こうした研究会の企画のほか、研究打ち合わせを12月に行い、プレ調査の実施計画を進め、科研メンバーだけのクローズドな研究会を行った。また、筑波大学大学院「歴史社会学」演習と合同で、深谷直弘『原爆を継承する実践』の書評会を筑波大学で行った。若手研究者による戦争社会学的研究の成果である。
著者
渡邊 弘 駒場 一博
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センタ-紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
no.30, pp.105-113, 2007-07-01

明治後期の改正教育令(明治13年)の公布以来、わが国の学校教育において筆頭教科であった修身科の授業は、1945年(昭和20)12月31日に連合国軍総司令部(GHQ)によって出された四大指令の一つ「修身、日本歴史及ビ地理停止ニ関スル件」によって停止された。これに先立ち、同年11月、文部省に公民教育刷新委員会が設けられて、道徳教育にかかわる自主的改革の歩みが起こされており、「道徳と知識との結合」を重視した新しい公民教育が構想されていた。だが、占領軍の指導の下で、翌1947年(昭和22)年度以降、新学制のもとで社会科に移行した。このことは、その後の社会科と道徳教育との関係を不明瞭のものとする結果を招いたと考えられる。当時、このように十分な検討がされたとは必ずしも言えず、曖昧なまま玉虫色のまま終息した特徴的な議論の一つが、ここで取り上げる「教育勅語」(正式には「教育ニ関スル勅語」)廃止の問題である。とくに本論では、公民教育刷新委員会と教育刷新委員会において行われたこの「教育勅語」をめぐる論争を中心に考察する。
著者
児玉 芽生 石田 栄美 渡邊 由紀子 冨浦 洋一
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.119, pp.2123, 2021-11-30 (Released:2021-12-10)

COVID-19により物理的な図書館の利用が制限された特殊状況下において,電子書籍の積極的な利用が期待されている。そこで本稿では,電子書籍のニーズを把握するために,パンデミック前とパンデミック下の九州大学の利用ログを対象に利用傾向を分析した。全体的な傾向として,パンデミック下では電子書籍の利用が増加していた。またMaruzen eBook Libraryについて,アクセス回数,利用時間,ダウンロードページ数の3尺度から分析し,新たなニーズと尺度によって異なる利用傾向が把握可能なことを示した。最後に,電子書籍の利用傾向をまとめ,さらに3尺度の有効性や利用可能性について述べた。
著者
渡邊 芳之
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.98-107, 2016 (Released:2018-04-13)
参考文献数
33
被引用文献数
10

Herein, I discuss some methodological aspects on the reproducibility of psychological data. Reduced reproducibility of psychological data can occur as a consequence of research misconduct, inadequate statistical methods, effects of uncontrolled latent variables, and low occurrence probability of the studied phenomena itself. As such, the validity of data and their analyses may be subject to these sources of irreproducibility, and the expected reproducibility level depends on theoretical and methodological characteristics of the studied phenomena and related variables. Until recently, psychologists’ historical reluctance for replication studies, derived from demonstrational and anecdotal usage of psychological data, has prevented psychologists from considering the issues related to reproducibility. Some possible alternatives for psychologists addressing reproducibility issues are also discussed.
著者
渡邊 寛 城間 益里
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.162-175, 2019-03-31 (Released:2019-03-31)
参考文献数
56

There has been an increase in the number of Japanese people who disagree with traditional gender roles which has resulted in diversified male roles. Based on a nine-male-roles model, this study examined the chronological changes and differences in male characters as per their ages and relationships with the heroine in NHK’s morning drama serials known as “asadora,” which is a Japanese TV drama. Results indicated that the roles of middle-aged men evolved from “high communion” in the ’60s and ’70s, to “high social status” in the ’80s and ’90s, to “commitment to household responsibility” in the ’00s and ’10s. Meanwhile, young men’s roles evolved from “high agency” in the ’90s to “attentiveness to women” in the ’10s. Additionally, the heroines’ husbands, ex-husbands, male friends, and romantic partners demonstrated “low effeminacy,” “superiority to women,” and “attentiveness to women.” Conversely, the heroines’ brothers, sons, and neighbors demonstrated “psychological and physical strength” and “emancipation from emotional restriction and toughness.” Based on social changes in Japan, implications of this study and future prospects were discussed.
著者
渡邊 麻里
出版者
文化資源学会
雑誌
文化資源学 (ISSN:18807232)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.17-33, 2018 (Released:2019-07-12)
参考文献数
38

1975年、歌舞伎座において、日本人のための日本語による、同時解説イヤホンガイドが導入された。現在、イヤホンガイドは歌舞伎公演に定着し、多くの観客が利用するようになり、歌舞伎において重要な地位を占めている。しかし、イヤホンガイドの実態や、誕生の経緯とその目的は、これまで明らかになっていない。そこで本稿では、イヤホンガイドの歴史を振り返り、歌舞伎におけるイヤホンガイドとは如何なるものかを改めて考えるため、1960年の歌舞伎アメリカ公演の際に導入された、イヤホンを用いた同時通訳に着目した。 この同時通訳は、当時ニューヨーク・シティ・バレエの総支配人であり、アメリカ公演で重要な役割を果たしたリンカーン・カースティンの発案によるものである。1960年以前、同時通訳は国際会議では利用されていたものの、舞台芸術においては、同時通訳ではなく、パンフレットや開幕前及び休憩時間における解説が主流であった。それでは何故、アメリカ公演において、歌舞伎に同時通訳が導入されたのか。その目的と経緯を、歌舞伎公演の前年の1959年に行われ、カースティンが関わった雅楽アメリカ公演や、歌舞伎アメリカ公演における演目選定を通して考える。また、アメリカ公演の同時通訳は、ドナルド・リチーと渡辺美代子の二人の通訳者により行われ、その同時通訳台本が残されている。この台本をもとに、当時上演された『仮名手本忠臣蔵』と『娘道成寺』の二つを取り上げ、同時通訳の内容がいかなるものであったのかを考察してゆく。
著者
安村 通晃 渡邊 恵太
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.26, pp.109-116, 2008-03-08
参考文献数
28

ビデオゲームの進化の方向性をインタラクションデザインの立場から考察する。近年のビデオゲーム(以下では単にゲームと呼ぶ)は、対象ユーザの拡大、コンテンツの広がりと言う 2 点において、従来のゲームとは明らかに違う様相を呈している。これをここではゲーム 20 と呼び、従来のゲームをゲーム 10 と呼ぶ。従来のゲーム (ゲーム 1.0) とこれからのゲーム (ゲーム 2.0) の各々について、インタラクションデザインとの関係性、つまり、ゲームのインタフェースのコンピュータインタフェースに及ぼすべき影響と逆にコンピュータインタフェースがゲームのインタフェースに与える影響の両者を、具体的な事例に即して論じる。この論点から、ゲームのインタフェースおよびコンピュータのインタフェースのそれぞれの、今後の方向性についても言及する。In this paper, the authors argue on the evolution of video games from the viewpoint of interaction design. Recent video games have unique trends that they have newer user layers and their contents enter a newer domains. These points are quite different from the older games and their contents. Therefore we call the newer games as Game 2.0 and the older ones as Game 1.0. The authors also discuss about the relationship between the game interface and computer interface, and how each of them influences to the other and vice versa.
著者
江頭 勇紀 渡邊 亮 吉田 穂波 鄭 雄一 西海 昇 Byung-Kwang YOO
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-039, (Released:2022-11-28)
参考文献数
27

目的 COVID-19の感染流行に伴うまん延防止措置法等の適用に際し,都道府県は科学的根拠に基づいた政策立案を求められたが,国の支援と都道府県の政策需要の乖離が課題であった。そのため,神奈川県立保健福祉大学と神奈川県庁は,共同でEBPM(Evidence Based Policy Making)プロジェクトを立ち上げ,COVID-19感染予測モデルを開発し,政策判断へ活用した。そこで,本事例の成果および課題を検討し,今後の公衆衛生行政への示唆を提示する。方法 Google社が開発した新型コロナウイルス感染者予測モデル『COVID-19感染予測(日本版)』(Google AI)の推計と公開データを組み合わせた「簡易モデル」,二次医療圏の日別データを使用した「主要モデル」を開発した。主要モデルの開発では,神奈川県庁内で散逸したデータを統合データプラットフォームに格納し,二次医療圏ごとに療養者,入院者,重症者を予測した。予測は,パネルデータ推計にGoogle AIの推計を外挿することで,新規感染者数のピーク値を反映させた。活動内容 約50種類のデータを統合データプラットフォームに格納し,神奈川県立保健福祉大学の学術チームによる,データの質の評価後,使用データを選定した。推計結果は,平均絶対パーセント誤差(MAPE),平均二乗誤差の平方根(RMSE),平均二乗対数誤差(RMSLE)により評価した。主要モデルで最も精度が高かったのは,2021年9月5日を基準日としたモデルであった。結論 統合データプラットフォームを用いて二次医療圏の日別データを用いることで,高い精度で予測できたため,政策判断の際に活用された。官学連携の際,専門家とともに,行政側の意思決定プロセスに精通した者をアカデミア側に参画させることにより,円滑な連携が行えることがわかった。一方,諸外国と比較し,本邦では,公開データの粒度の粗さ,限定された研究主体,継続的な予測モデルの開発が課題であることが明らかとなった。
著者
渡邊 伸行
出版者
日本顔学会
雑誌
日本顔学会誌 (ISSN:13468081)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.61-67, 2022-12-21 (Released:2022-12-21)
参考文献数
12
著者
渡邊 ゆきの
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 = Annual reports of the Graduate School of Nara University (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.22, pp.1-18, 2017

" 慶応4/明治元(1868)年~2(1869)年に発生した戊辰戦争戦没者の墓は、亡くなった土地や出身地など全国に点在している。墓石は文字だけでなく形状や石材等、被葬者・建立者の様々な情報を内包しており、後世に伝えるべき重要な文化財である。戊辰戦争から150年近くが経過した今、墓石の劣化が深刻化しており、いち早く保存対策を講じる必要がある。 本稿では同時期に全国各地の異なる環境下で建立された戊辰戦争戦没者の墓石の劣化状態を調査・比較し、石造文化財の劣化傾向を明らかにすることを試みた。また、墓石の劣化状態をA~Dの4段階で評価し、墓石の劣化危険度を視覚化した。 調査の結果、石造文化財の劣化の進行には、用いられている岩石の種類と凍結破壊注意日の出現回数が影響することを確認した。"
著者
渡邊 大門
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.19-34, 2013-03-01

本稿で取り上げるのは、かつて神戸市北区に所在した荘園の一つ摂津国山田荘である。本稿では、山田荘が登場する平安期を基点として、終焉を迎える織豊期までを取り上げ検討する。その中で、平安期から室町期については、山田荘と周辺の三荘園(淡河、押部、八多)との相論を踏まえ、材木資源が争点になったことに触れ、荘園間での紛争解決が困難になったことから、守護権力を必要としたことを論じた。戦国期以降、山田荘は別所氏の関係者が代官職を務めることによって、安定的な年貢の確保を可能にした。織田信長登場以後は、基本政策である寺社本所領安堵によって、年貢確保をいっそう安定的にした。しかし、別所氏が信長に叛旗を翻してから、年貢の確保は困難になったと考えられる。別所氏は信長の傘下に収まって以後、先述した信長の施政方針に従っていたが、やがてその方針に従えなくなり、叛旗を翻したと考えられる。