著者
遠藤 教子 福迫 陽子 物井 寿子 辰巳 格 熊井 和子 河村 満 廣瀬 肇
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.129-136, 1986-04-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
10

一側性大脳半球病変における麻痺性 (運動障害性) 構音障害患者26例 (左大脳半球病変群14例, 右大脳半球病変群12例) および, 正常者13例の発話サンプルについて, 5名の評定者が, 聴覚印象に基づき評価した結果, 以下の知見が得られた.1) 今回対象とした麻痺性構音障害群における評価成績は, 正常群とは明らかに異なっており, 話しことばの障害があると判定されたが, 障害の程度は全般に軽度であった.2) 障害の特徴は, 仮性球麻痺と類似していたが, 重症度など異なる面もみられた.3) 障害側を比較すると, 概して左大脳半球病変群の方が重度の障害を示した.4) 病変の大きさと話しことばの重症度との関係は, 明らかではなかった.5) 従来, 大脳半球病変による麻痺性構音障害は, 病変が両側性の場合に出現するとされていたが, 今回の結果は一側性病変でも出現し得るということを示唆するものであった.
著者
黒木 俊郎 宇根 有美 遠藤 卓郎
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.27-34, 2003 (Released:2018-05-04)
参考文献数
27

クリプトスポリジウムは幅広い種類の脊椎動物に感染することが知られている。近年,爬虫類においてクリプトスポリジウムによる致死性の下痢症が頻発し,有効な治療法も無いために大きな脅威となっている。また,ヘビに由来すると推測されるクリプトスポリジウムのオーシストが水道原水から検出され,水道汚染の観点から新たに関心を集めている。ここでは,爬虫類に寄生するクリプトスポリジウムを中心にして,その生物学的特徴や病原性などの概要を紹介する。
著者
遠藤 孝夫
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.85, pp.185-199, 2001-03-30

シュタイナー教育の原理とも言うべき「人間認識に基づく教育」は,「学校の自律性」を前提に機能するものであるが,この両者の連関はこれまで十分に理解されてきていない。本稿は,「社会三層化運動」に関する最初の本格的研究であるシュメルツアーの成果に学びつつ,社会三層化運動の一つの結晶として創設されたヴァルドルフ学校とその創設理念を検討することで,従来のシュタイナー教育-の認識不足を補完することを意図するものである。
著者
桑山 直也 久保 道也 遠藤 俊郎 坂井 信幸
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.12-19, 2011-01-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
8
被引用文献数
29 25

硬膜動静脈瘻の治療の現状を知るため,全国の脳血管内治療専門医を対象とする調査を実施した.【方法】日本脳神経血管内治療学会専門医388人を対象とし,2005〜2006年の2年間に経験した症例の年齢/性,部位,症状,mRS,治療法,転帰,合併症を調査した.【結果】863症例の回答を得た.男性43%,女性54%,平均年齢は64歳であった.海綿静脈洞(CS)が46%,横・S状静脈洞(TSS)27%,その他27%であった.814例に積極的治療(血管内88%,外科7%,放射線4%)が施行された.治療後(ほぼ)完全閉塞が83%であった.mRSは1.4から0.6に改善した.治療合併症が4%に出た.【まとめ】CS,TSSの成績は良好であった.前頭蓋底,頭蓋脊椎移行部では安易な血管内治療が行われている可能性があり,外科治療を再評価すべきと思われた.
著者
遠藤 幸男
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.1046-1053, 1980-12-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
36

テレビ放送におけるゴースト対策の研究開発の動向について, ゴーストの測定および評価法の開発, 電波吸収壁やSHF放送の実用化など, 最近の動向を主に解説する.
著者
鈴木 克彦 佐藤 英樹 遠藤 哲 長谷川 裕子 望月 充邦 中路 重之 菅原 和夫 戸塚 学 佐藤 光毅
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.451-460, 1996-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
42
被引用文献数
2 1

スポーツ選手を対象として, 最大運動負荷に伴う白血球分画と好中球活性酸素産生能の変動を検討したところ, 以下の知見が得られた.1.運動直後に総白血球数が一過性に2倍程度上昇したが, これはリンパ球, 好中球および単球の数的増加によるものであった.好中球数は運動終了1時間後でも上昇した状態にあったが, 核左方移動は認められず, かつ分葉核好中球数の変動と相関が強かったため, 壁在プール由来の好中球動員であったと考えられる.2.リンパ球のなかでLGL (NK細胞) は運動直後に6倍も上昇しており, 終了1時間後には半減した.このようなリンパ球の数的・構成的変動が各リンパ球の機能を測定する上で誤差要因とならないように注意する必要がある.3.ルミノール依存性化学発光法を用いて単離好中球の活性酸素産生能を検討したところ, 刺激物質として貪食粒子のOZを用いた場合のみならず可溶性のPMAを用いた場合にも運動負荷に伴い有意に上昇し, かつ両者の変動には正相関が認められたことから, 単一機序で発光が増強したものと推察される.ルミノール依存性化学発光の反応機構から, 好中球の刺激に伴う脱顆粒能亢進によってMPOを介して強力な活性酸素種 (HOCl) が効率的に産生されやすくなることが示唆された.短時間の運動であっても極端に強度が高い場合には, 毒性の高い活性酸素種を生成しやすい好中球が血中に増加し, リンパ球の機能抑制や筋の炎症等の組織傷害作用を発現する可能性があり, 今後その体内動態をめぐっては, さらに踏み込んだ検討が必要である.
著者
遠藤 悟
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.364-370, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

米国,ドイツ,英国の科学技術政策は,それぞれの国の政治システムの相違に加え,各国の研究活動の様態やアカデミックコミュニティーが果たす役割等により異なる特徴が見られる。本稿においては,各国の最近の科学技術政策の動向を具体的な事例とともに紹介する。米国についてはトランプ政権の科学技術政策についてその歴史的背景とともに概観する。ドイツについては連邦政府と州との関係を通した研究活動高度化の取り組みについて整理する。英国については高等教育・研究法の成立に至る政策決定へのアカデミックコミュニティーの関与について報告する。そしてこれらの事例から,日本の科学技術政策への示唆について考える。
著者
遠藤 光男
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

 顔の順応効果は順応時の顔と順応後に評定する顔が異なっても生起するが,同一の場合の方が強いことが示されている。今回は,顔の順応効果に対する単純接触効果の影響を検討する目的で,歪曲顔への順応による正常性と魅力の知覚の変化を順応時の歪曲顔と順応後に評定する顔が同一の場合(接触条件)と異なる場合(非接触条件)で比較した。その結果,正常性に対する順応の効果は順応時間(2分,4分)にかかわらず接触条件で有意に強くなったが,魅力に対する順応の効果は4分条件でのみ接触条件で有意に強くなった。したがって,顔順応効果における単純接触効果は,魅力よりも正常性の評定の方に感受性が強いことや,魅力に対する単純接触効果には正常性(平均性)に対する単純接触効果が介在していることが示唆された。
著者
遠藤 明仁 Leon M.T. Dicks
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.152-159, 2008 (Released:2010-09-29)
参考文献数
52
被引用文献数
2 2

Lactobacillus属細菌は発酵食品や動物消化管など幅広い環境に生息している細菌群であり、それらが持つ有益な働きから、乳酸菌の発酵食品や宿主の健康への影響を研究する上で、非常に重要な細菌群の一つである。現在、Lactobacillus属は 100 種以上の膨大な数の菌種で構成されており、それらの菌種は系統的に多岐に渡っている。前述の通り、Lactobacillus属細菌は産業にとって非常に重要な細菌群であるため、Lactobacillus属の系統的関係を扱った総説はこれまでに多くある。しかし、近年では毎年 10 菌種程度がLactobacillus属の新菌種として提案されているため、最新のLactobacillus属菌種の系統樹は、種間の系統関係の正しい把握のために大きな意味をもつ。更に、膨大なLactobacillus属の中には、通常言われているようなLactobacillus属の特徴と大きく異なる非典型的な特徴を持つ菌種も報告されているが、これらはこれまでの総説では全く扱われていない。そこで本総説では、Lactobacillus属菌種の最新の系統的位置関係とともに、特定の菌種のみが持つ非典型的な特徴について概説した。
著者
遠藤 寛子 板井 英樹 桜木 康広
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E0353, 2007

【目的】高齢化が急速に進む中、全国市町村各地域で介護予防対象者に対しての介護予防教室などが2000(平成12) 年の介護保険制度開始から徐々に開始され、2006(平成18)年4月からの介護保険制度の改訂により、現在では一層多く開催されるようになった。しかし、実状として介護予防教室には介護予防を必要としている全ての対象者が参加しているわけではなく、介護予防が必要な方の中でも参加していない方も多い現状がある。そこで、参加していない理由、または参加できない理由について、参加している方と参加していない方の要因を比較検討し、今後の参加率向上に繋がる方法について考察した。<BR>【方法】A県内3市4町各地域の在宅介護支援センターが把握している介護予防対象者(特定高齢者含む)のうち、過去1年間介護予防教室への参加がある高齢者と過去1年間介護予防教室へ参加したことがない高齢者の中から無作為に選んだ230名を対象とした。その対象となった方が登録されている在宅介護支援センターに、厚生労働省推奨の介護予防のための基本チェックリストと独自に作成した介護予防/転倒予防・健康状態に関するアンケート用紙の2種類を郵送または直接訪問し自記式にて実施した。調査期間は平成18年9月から10月の1ヵ月間とした。<BR>【結果】アンケートの回収率は、対象者158通(68.7%)であり、有効回答数は男性27名、女性121名の計148名であった。平均年齢は74.6±6.3歳で、独居世帯は33世帯(21.5%)を占めていた。介護予防教室に参加している方は、女性が圧倒的に多く、頻度が少なくなるにつれて男性の比率が上がってきていた。同居家族の人数による違いは見られず、全く参加していない方は、独居が多い傾向があった。自覚的健康観は、「まあまあ健康である」と感じている人が多数を占めた。また、健康に関するメディアへの関心は、「とてもある」「まあまあある」で、9割以上を占めていた。身体を動かすことや友達の家への訪問は、介護予防教室への参加頻度が上がるにつれ増加傾向にあった。ただし、身体の痛み、身体を動かす機会や自分から人に声を掛ける機会、人見知りや人と仲良くできないことに関しては、あまり差がみられなかった。介護予防教室に言葉や内容、開催の認知については、参加していない人に認知されていなかった。<BR>【考察】介護予防教室への参加要因として、自分の健康観というより、身体を動かすことが好きで他人との交流を目的としていることが考えられた。一方、不参加要因としては、健康に対する意識や関心は高く、それ相応に身体を動かしているものの、教室自体の存在や目的が、各地域で必ずしも周知徹底していないことが考えられ、今後、広報活動や地域でのネットワークづくりの必要性が高いと考える。<BR>
著者
遠藤 忠 飯田 貴広 古谷 暢英 山田 由美子 伊藤 眞人
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Chemical Software (ISSN:09180761)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.81-92, 1999-06-15 (Released:2000-03-28)
参考文献数
43
被引用文献数
2 5

半経験的分子軌道法を用いて、ベンゼン2量体およびベンゼン(PhH)—モノ置換ベンゼン(PhX)対の生成熱を計算することにより、ベンゼン—モノ置換ベンゼン間相互作用のエンタルピーを求めた。ベンゼン2量体の場合について、計算法、初期の分子間距離(rI)などを検討した。PM3法で求めた相互作用エンタルピーと最適化後の配置は、これまでの実験値および計算値と矛盾しない。PhH—PhX系の初期配置としては、1ケの平行(P)と4ケの垂直配置(Vr 、Vp 、VmおよびVb)(図1)を選んだ。VpあるいはVm配置の場合には(この配置では、PhXの置換基Xに対してパラあるいはメタ位にあるH原子がPhH分子の重心の真上に存在する)、計算から求めたPhH—PhX間相互作用エンタルピー(ΔΔHf)は、GLPCから求めた実験値(ΔΔHt)と良い相関関係を示し(図5)、相関係数(ρ)は0.94(rI = 2.75 Å)になった。この相関式から求めたΔΔHtと実験値ΔΔHtとの差は、約0.1 kcal mol-1以下であった。他の配置の場合には(Vp配置を除くと)、ΔΔHfとΔΔHtとの間に相関関係は認められなかった。
著者
遠藤 貴宏 田口 仁 バルア プラナブ ジォティ 沢田 治雄
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.769-772, 2009

LiDARデータを用いてスギ人工林のベクター形式による単木抽出手法を開発した.本手法は, 樹冠形状に基づいた抽出手法であり, ラスタライズ処理を必要としないことが特徴である.また, 林木内の異なった大きさの樹冠を持つ樹木に適用できるよう, 本手法は, はじめに, 孤立木のような樹冠形状を有する樹木を抽出し, 次に被圧木のような樹冠形状を有する樹木を抽出する2段階の抽出処理で構成されている.現地調査による単木位置と本手法を用いた樹頂点位置とを比較したところ, 位置精度は1m以内であった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
Babaran Ricardo 遠藤 周之 光永 靖 安樂 和彦
出版者
日本水産工学会
雑誌
日本水産工学会誌 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.21-28, 2009
参考文献数
29
被引用文献数
2

フィリピンのパヤオ(浮魚礁)周辺で,キハダ幼魚の腹腔内に超音波発信機を挿入して放流し,パヤオのアンカーラインに装着した受信機で行動をモニタリングした。キハダ幼魚はパヤオ周辺にとどまり,同時にモニタリングした同サイズのツムブリに比べ,明らかに深い層を遊泳した。夜間は比較的浅く狭い層を遊泳し,昼間は深く広い層を遊泳する日周性や,深夜にパヤオから離れるなど,これまでに報告されているキハダ成魚とよく似た行動を示した。再捕結果から摂餌や移動が確認され,キハダ幼魚のテレメトリーが可能であることが示された。