著者
青山 潤 佐藤 克文 吉永 龍起 マイケル ミラー
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

ウナギ資源変動機構の解明のため、小規模な産卵回遊を行っている熱帯ウナギ(A. celebesensisとA. marmorata)仔魚の接岸回遊およびインドネシア・スラウェシ島における下りウナギの降河回遊生態を調べた。その結果、ウナギ属魚類ではおよそ70年ぶりとなる新種(A luzonensis)の記載も行うとともに、熱帯ウナギの降河・繁殖生態に関わる重要な知見を得ることが出来た。
著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

「持続可能な都市形成」が議題設定され、NGOメンバーなどの間で社会的な認知が進み、政策決定過程にフィードバックし、形成・遂行された政策がどのように中・長期的な波及効果をもちうるのか。本研究は、ソーシャル・キャピトルをもっとも基本的な説明変数として、環境NGOメンバーと地域社会に対するその社会的効果を定量的に分析した。都市規模・拠点性などから仙台市、セントポール市(米国)に拠点をおく環境NGOの会員を対象に行った郵送調査結果の分析にもとづいて、仙台市の環境NGOのソーシャル・キャピトル的な性格・機能の強さに対して、セントポール市の環境NGOは、政策提案志向型の専門性の高い団体を個人会員が財政的に支援するという性格が強く、ソーシャル・キャピトル的な性格は弱いことが明らかとなった。
著者
新谷 尚紀 関沢 まゆみ 三橋 健 比嘉 政夫
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

本研究では、ブルターニュとプロヴァンスという遠く離れた二つの地方の、聖人信仰と民俗行事の伝承、とくに復活祭前の二月に行われるカニヴァルと五月の春迎えを示す「五月の木」と呼ばれる祭礼行事、また夏の祭りとしてのサンテロワの馬祭りに注目した。かつて、A.V.ジェネップが調査した19世紀末から20世紀初頭のころには、「五月の木」はフランス各地にその伝承がみられたが、現在ではわずかにブルターニュのロクロナンとプロヴァンスのキュキュロンという二つの町のみに伝承されていることが判明した。そのキュキュロンの伝承で注目されたのは、まず「五月の木」という民間習俗が存在していたところに、後に聖人信仰が付着したという歴史であった。一方、カニヴァルについては、ニースの都市祭礼が有名だが、キュキュロンの2月の灰の水曜日に行われるサバやショバル・プランという村の2月の灰の水曜日に行われるベルとエルミットの祭りなどでは、より素朴な形態のカニヴァルの伝承の存在が明らかになった。そして、前回の科研調査で判明している敬虔な聖人信仰のブルターニュと比較して、プロヴァンスのカニヴァルにおいては聖人への信仰的要素が希薄で、娯楽的要素が強いという点が特徴的であった。また、夏の祭りとしての、サンテロワの馬祭りについて、ブルターニュのパルドン祭りと、プロヴァンスの馬祭りのパルドンなど聖人に因む民俗行事が一定地域ごとに特徴的な分布を見せている現状が明らかとなった。また、ブルターニュで最も主要な聖女とされているサンターヌへの信仰も、その本拠地であるサンターヌ・ドレーにおける熱心な信仰行事に対して、プロヴァンスの本拠地アプトという町のそれはやや世俗化の中にある。たがいに古い民俗行事を残し伝えているブルターニュとプロヴァンスの両者の関係について、さらに追跡すべき研究視点をえることができた。
著者
松山 秀人 島津 彰
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

本研究では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)/ジエチルフタレート系について、膜中に有機化クレイを添加し、有機-無機コンポジット膜の作製を試みた。得られた構造は二層連続構造であり、液-液相分離による構造の可能性が示唆されたが、DSCによる詳細な検討の結果、相分離機構はあくまで固-液型であり、溶液中のクレイが結晶核となって構造が形成されることがわかった。得られた中空糸膜が、従来の2倍程度の引っ張り強度と伸度を有することが明らかとなった。TiO_2を含む膜では主に光触媒反応による膜表面付着物の分解について検討されてきたが、ここではTiO_2の超親水化に着目し、ポリサルホン(PS f)/TiO_2コンポジット膜の作製と膜特性評価を行った。用いたTiO_2は粒子径180nmのナノ粒子である。TiO_2をPS fに対して2倍量添加した場合にも良好な中空糸膜が得られた。XPS測定により表面には有効にTiO_2が存在することが確認された。また、TiO_2の添加により、膜の弾性率は向上したものの、透水量はほとんど影響を受けなかった。得られた中空糸膜にUV照射後、その膜表面接触角を測定したところ、TiO_2添加による膜の親水性化は16日以上に渡って維持されることが明らかとなった。さらにUV照射TiO_2含有膜をブラックライト照射下で保存したところ、7日後には接触角は約10°と顕著な親水性を示した。中空糸膜をタンパク質(BSA)溶液に浸漬することにより、膜の劣化特性の評価を行った。UVを照射しない場合においてもPSf/TiO_2コンポジット膜は、PS f膜と比べ低劣化性を示した。UV照射後ではコンポジット膜の劣化特性はさらに抑制されることを見出した。従って、低ファウリング特性を有する膜の開発に成功したと言える。
著者
古田 一雄 吉村 忍 中田 圭一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003 (Released:2003-04-01)

原子力安全規制を例に、わが国及び欧米の安全規制システムの現状と動向について調査した。米国では安全規制に関する連邦法や規制指針は性能規定化されており、具体的な仕様規定は民間技術基準を連邦法や規制指針で引用して用いている。欧州(フランス)においても規制に関する法令はほとんど性能規定化されており、具体的な技術基準を定めるのは事業者の責任であるとされている。これに対し、わが国では法律の下位に省令や告示があってこれらが細かな技術基準を定めており、性能規定化はまだ進んでいない。技術進歩に安全規制が機動的に適応して行くためには、法令の性能規定化と民間技術基準を引用するための制度の整備が必要である。また、事業者の保安活動が技術基準を満たしているかどうかを検査する体制についても、米国では第三者機関が検査機関や検査員の認定・認証を行っており、規制機関の検査官に対する教育訓練、資格認定のプロセスはよく公開されている。欧州においても、EU指令に基く検査機関、検査員の認定・認証制度が整備されている。これに対して、わが国では認定・認証制度が十分に確立されておらず、規制行政当局やその担当者の技術的能力に対する認定・認証も曖昧である。つぎに、安全規制システムの評価を行うための社会シミュレーションを提案した。シミュレーションモデルは企業を単位とするマルチエージェントシステムであり、多数の企業が与えられた条件下で進化しながら生産活動を行う。各企業は事業リソースを生産活動と安全管理に分配し、その結果によって設備の稼働率と信頼性(事故確率)が決る。さまざまな安全規制スタイルを環境条件としてシミュレーションを実施したところ、事後制裁は生産効率向上を促進することがあること、仕様規定型規制は意図と逆の結果を生む可能性があること、途中で規制を撤廃すると信頼性は劣化すること、間隔の長い定期検査よりも抜き打ち検査の方が効果的であることなどがわかった。
著者
松本 光太郎 小林 敦子 梅村 坦 大野 旭 松本 ますみ 高橋 健太郎
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

平成19年度科学研究費補助金研究成果報告書は、3年間の調査研究の成果と、本プロジェクトの最終年度に開催された国際シンポジウム「移動する中国ムスリム-ヒトと知識と経済を結ぶネットワーク」の報告内容を整理し、作成したものである。その際、本科研プロジェクトの課題として提示した三つのテーマを軸としている。その三つのテーマとは次のとおりである。一つ目に、中国ムスリムの越境移住の実態について調査を行うことである。中国ムスリムは中国国内における人口流動のみならず、迫害や留学、労働移民、宗教指導者の動きやメッカ巡礼などによって、国境を越えて移住し、コミュニティを形成している。移住や定着にともなって、社会構造や文化にどのような変化が生じたのかという点が、本報告書で解明しようと試みた一つ目の軸である。二つ目に、中国ムスリムの国内外における移住に付随して、イスラーム的宗教知識と商業的ネットワークの構築過程を探ることが目的であった。本報告書では、宗教指導者や宗教学生のモスク間の移動や、イスラーム宗教知識の国境を越えた流動などが分析を二つ目の軸として分析している。三つ目に、中国ムスリムの移住や、移住にともなうイスラーム宗教知識の流動などにともなって生じる、宗教復興を調査分析することであった。イスラーム復興をキーワードとする論考も、本報告書に収録されている。これら三つの軸を中心に提出された研究成果を、中国西北、西南華南、新疆、中国域外という地域軸に基づいて整理しなおし、報告書として提出した。
著者
岩田 正美 杉村 宏 岡部 卓 村上 英吾 圷 洋一 松本 一郎 岩永 理恵 鳥山 まどか
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本研究は1)貧困の概念と最低生活費研究を理論的に整理し、2)現代の代表的な低所得層の家計調査からその生活実態を把握し、3)家計の抵抗点による最低生活費の試算と生活保護基準との比較を行った。この結果、1)最低生活費は複数のアプローチで確かめられる必要がある。2)単身者の生活費は、生活基盤費が固定費であり、その他の経費の高低で消費水準が決まる。3)その他の消費水準の抵抗点を利用して最低生活費を試算すると167,224円であった。生活保護基準と比較すると、約2万円強高くなることが分かった。
著者
岩崎 貢三 康 峪梅 田中 壮太 櫻井 克年 金 哲史 相川 良雄 加藤 伸一郎 NGUYEN VAN Noi LE THANH Son BANG NGUYEN Dinh VENECIO ULTRA Jr. Uy. TRAN KHANH Van ZONGHUI Chen NGUYEN MINH Phuong CHU NGOC Kien 小郷 みつ子 福井 貴博 中山 敦 濱田 朋江 杉原 幸 瀬田川 正之
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

本研究では, (1)ハノイ近郊の鉱山周辺土壌における重金属汚染, (2)紅河流域畑土壌における有害金属・農薬残留に関する調査を実施し, 特に有害金属に関し, 工場・鉱山を点源とする汚染と地質に由来する広域汚染が存在することを明らかにした. また, これら金属汚染土壌の植物を用いた浄化技術について検討するため, 現地鉱山周辺で集積植物の探索を行ない, Blechnum orientale L.やBidens pilosa L.を候補植物として見出した.
著者
藤本 文朗 太田 富雄 加瀬 進 小川 克正 河相 善雄 玉村 公二彦 後藤 容子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997 (Released:1997-04-01)

本研究は、障害児教育教員の免許制度(養成・採用・研修に関する懸案事項)を解決するため盲・聾・養護学校並びに都道府県教育委員会・教員養成大学の実情を把握することとともにこの制度についての歴史的研究と国際比較を通して、総合的な観点から免許制度と教師教育の在り方について立案することを意図した。(1)第3年次としてまとめの年で今後あるべき方向として障害児学校の教師には研修として総合的な障害児教育の基礎免許状(教員養成大学学部)を義務づけ、障害別の免許状は大学院専攻科レベルで取れるとしてそのカリキュラムを草案として示した。(2)又ベトナムホーチミン市に障害児教育師範大学(2年、現取対象)の創立、カリキュラム教師派遣に援助して発展途上国の教師教育について討議した。
著者
金子 勇 森岡 清志 園部 雅久 片桐 資津子 坂野 達郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

3年間の研究で大きくは2つのテーマの研究をした。一つは先進22カ国のうちフランスだけが合計特殊出生率の一貫した反転に成功したから、その要因をパリでの参与観察法で探求してきた。日本での応用可能性に絞ると、制度化された「公認保育ママ」、フランス人全体への政府の手厚い家族支援のうち特に権利として勝ち取られてきた子育て関連休暇制度、そしてフランスのCNAF、これは日本で長らく私が提唱してきた「子育て基金」と規模が類似していたから、この導入の検討が日本的な文脈でも有効である。国内では北海道伊達市と鹿児島市での少子社会調査を実施した。市民のソーシャル・キャピタルが相対的に貧困であれば、地域社会における子育て支援の輪が広がらない。さらに、ソーシャル・キャピタル調査結果と自由意識の側面を表すいくつかのデータを組み合わせたら、「自由意識」よりも「伝統意識」と高い合計特殊出生率とが正相関した。まとめると、日本都市においては、ソーシャル・キャピタルに恵まれ、伝統意識が強い都市に合計特殊出生率が高く、それが乏しく自由意識が強い都市では少子化が進む傾向にあると主張できる。
著者
内田 直 宝田 雄大 渡邉 丈夫 宮崎 真 宝田 雄大 後藤 一成 関口 浩文 宮崎 真
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

近年、国民の健康に対する関心の高まりとともに身体運動への関心も高まっている。しかしながら、このような関心は、身体的な健康が主体となっている。一方で、精神的なあるいは脳の健康も同様に重要であることは疑い。このような、精神的なあるいは脳の健康と、これに対する身体運動の効果についての研究は、いまだ十分に行われているとはいえない。本研究では、身体運動と精神活動あるいは脳活動の関連について焦点をあて、これについて健康科学的な側面から実証的な研究を行った。このような研究は、身体活動と身体の健康に関連した研究に比べると新しいものであり、今後うつ病や認知症予防のための運動療法としての活動につながるものである。研究は、以下の5つのテーマ(方法)によって行った。すなわち(1)身体運動が睡眠に及ぼす影響について、(2).睡眠中の代謝活動についての予備的研究、(3)朝行う身体運動が、その後の認知機能に及ぼす影響について、(4)身体運動と児童の発達の関連について、(5)観察学習の効果とスキルの転移、である。(1) 身体運動が睡眠に及ぼす影響については、二つの実験を行った。昼寝により人工的に作成した不眠状態への運動の影響をみたが、これは大きな影響が観察されなかった。次に睡眠直前に高強度の運動を行わせ、これが睡眠にどのような影響を及ぼすのかを観察した。これまでの研究では、ストレス反応により睡眠が悪化すると言う説があったが、我々の研究では変化無く、悪化は無かった。しかしながら、睡眠中の体温が睡眠中期で運動後運動しないときよりも有意に高いという興味深い結果が得られた。(2) はヒューマンカロリーメータを用いた睡眠中の代謝の連続測定と言う新しい分野の研究であり、今後運動後の代謝の変化など興味がもたれた。(3) 朝の運動については、日常的に行われる健康運動と似たパタンであるが、これが日中の活動にどのように影響を及ぼすのかを見た。しかしながら、結果としては一過性の効果は認められたが、一日の中での変化は無かった。このような運動を習慣的にした場合の影響が今後の課題として残った。(4) 小学生を対象とした研究のまとめが一部完成した段階である。現状では、認知機能のうち、判別と抑制の発達パタンが小学生年代では異なっている可能性が示唆された。(5) 観察学習は、運動学習の一部であるが、観察学習により獲得された手続き記憶は、必ずしも転移しないことが示唆される結果であった。全体として基礎研究と応用研究の両方から成果が得られ、身体運動が脳と心に及ぼす効果の解明と健康科学への応用についての業績がえられた。期間は終了しているが、この結果を国際論文として発表している作業を持続して行っている。
著者
中川 淳司 福永 有夏 ORTINO Federico LENG Lim Chin LALLAS Peter FELICIANO Florentino MAGRAW Daniel PLAGAKIS Sofia
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本研究は、近年利用件数が急増しているWTO(世界貿易機関)の紛争解決手続および投資紛争の仲裁による解決手続における透明性の確保をめぐる理論的問題点を整理するとともに、実務上の課題となっている透明性確保・向上のための諸方策の導入可能性について、内外の国際経済法研究者・市民団体の代表者が共同で検討し、これらの紛争解決手続における透明性の確保に関する将来の方向性を明らかにすることを目指すものである。平成20年度と平成21年度には、2度の国際研究集会(Society of International Economic Law設立大会(平成20年7月、ジュネーブ大学)、アジア国際法学会第2回研究大会(平成21年8月、東京大学))において「国際貿易紛争・国際投資紛争の解決における透明性」をテーマとするパネル・セッションを開催し、本研究のメンバー全員が各々の担当する研究テーマについて報告を行った。平成22年度は前年度および前々年度の研究成果を踏まえ、メンバー間でさらに意見交換を行ったうえで各メンバーが研究の最終成果を英文の論文として取りまとめる作業を行った。本報告書執筆時点でFlorentino Feliciano氏を除くすべてのメンバーおよびDaniel Magraw氏が主催する国際環境法センター(ワシントンDC)の研究員であるSofia Pragakis 氏から論文の原稿が提出されている。Feliciano氏の原稿提出を待って研究代表者とDaniel Magraw氏が共著でIntroductionを執筆し、Transparency in International Trade and Investment Dispute Settlementという表題の英文の編著として刊行する予定であり、現在ケンブリッジ大学出版会との間で刊行に関する交渉を進めている。研究成果の詳細は上記近著に盛り込まれたとおりであるが、以下で簡単にその概要を述べる。(1)WTO紛争解決手続および投資紛争仲裁手続における透明性とは、(i)紛争解決手続の公開、(ii)紛争解決に関連する文書(当事者の提出書面および解決結果(WTO小委員会報告及び上級委員会報告、投資紛争仲裁判断)の公開、の2点によって判断される。(2) これらの紛争解決手続における透明性は、国内裁判所や他の国際裁判(例えば国際司法裁判所)に比べると低いが、いわゆる国際商事仲裁よりは高い。この点は、(i)紛争の当事者の性格(前者はWTO加盟国同士、後者は投資受入国政府と外国投資家)、(ii)扱われる争点の性質(ともに貿易・投資に関する国家の規制の合法性が争われる一方、紛争の真の争点は私企業の利害に直接関連する事項であること)、(iii)紛争の最終解決に至る過程で紛争当事者の妥協による法廷外解決の可能性が排除されていないこと、などの特性にその根拠が求められる。(3)他方で、いずれの紛争においても国家の規制の合法性が争われ、その結果は当該国の経済社会生活に大きな影響を及ぼすことから、紛争当事国国民や市民団体の紛争に対する関心が高く、この点からこれらの紛争解決手続きの透明性を一層高めるよう求める要求が出てくる。(4)(2)で挙げた諸特性と(3)で指摘した要求を勘案し、両者の均衡点を求めることが必要であり、WTO紛争解決手続、投資紛争仲裁の各々について、扱われる争点の性質や当事者の特性の考慮(特に、投資紛争仲裁における外国投資家の営業秘密保持への配慮)を行いながら、透明性の一層の向上策を提案する。ただし、研究メンバーの中には、WTO紛争解決手続について、争点によってはむしろ輸入国の国内裁判所による解決(そこでは高度の透明性が保証されている)を優先させるべきであり、WTO紛争解決手続の透明性を高めることには消極的な見解を述べた者もいる。
著者
多田 學 天野 宏紀 神田 秀幸 金 博哲
出版者
島根医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997 (Released:1998-04-01)

近年、本態性(老人性)痴呆症の発症や病態のメカニズムが明らかにされるにつれ、脳機能低下を予防させるために、より早期に精神機能の低下の兆候を特定することに注目が集まってきている。従来我が国において実施されてきた痴呆症対策は、痴呆がある程度のレベル以上に進行してしまっているため、改善が極めて困難な状態の痴呆症に対する医療・リハビリテーションによるケアであった。そこで、我々は島根県H町在住の初老期以降(50歳以上)の地域住民について、二段階方式診断法を用いた軽症痴呆症の評価法及び脳活性化対策の有効性を検討し、次のような結果が得られた。1)性・年代別かなひろいテスト得点では、女性において加齢による得点の低下が見られた。2)本研究では二段階方式診断法を用いて参加者58名のうち前痴呆8名、軽症痴呆4名であった。3)かなひろいテストの得点とMMSの得点との相関係数は0.6868で、正の相関が認められた。4)脳活性化対策実施後で60歳代男性を除いて全ての性・年代別で教室前のかなひろいテスト得点を上回った。5)脳活性化対策の継続実施は教室前の状態に比べ痴呆状態を改善しうることが明らかになった。特に、対策開始後2年間継続によって、かなひろいテスト平均得点の上昇がピークに達することが分かった。6)ライフスタイル調査では、重点対策前と対策開始1年後で参加者の日常生活に、ADLや対外的な行動に大きな割合の変化は無かった。7)参加者の痴呆に関する意識では、対策開始後1年でアンケートに14名全てが「自分は痴呆にならないと思う」と回答した。
著者
川村 邦光 荻野 美穂 杉原 達 冨山 一郎 真鍋 昌賢 落合 恵美子 荻野 美穂 落合 恵美子 才津 祐美子 重信 幸彦 杉原 達
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

日本の家族写真は、当初西洋の影響を受けていたが、独自の展開をしてきたことを明らかにした。家族写真が人生儀礼や年中行事において撮影され続け、民俗的慣行として確立され、民俗資料として有効であることも明らかにした。現在では、特に年賀状に家族写真が載せられて、友人・知人に向けて発信され、家族の共同性を確認する機能を果たしている。本研究は家族写真に関する初めてのまとまった本格的な研究であると考える。
著者
倉田 良樹 西野 史子 宣 元錫 津崎 克彦
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

グローバル経済化による市場の不確実性に直面している現代の日本企業は、業務請負型間接雇用の導入によって雇用関係の市場化を実現しようとしている。業務請負型間接雇用は、いまや日本の労働市場において一定のセグメントとして定着している。業務請負型間接雇用で働く労働者に対しては、企業内労働組織において他のタイプの労働者と比べて特別に異なる人的管理の手法が適用されているわけではない。その生活環境は正社員に比べて顕著に劣位にあり、貧困の罠に陥るリスクに直面している。
著者
國藤 進 三浦 元喜 羽山 徹彩
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本研究課題では個人とグループのスムーズな創造的思考活動の移行を可能にするための知識創造支援環境を研究開発した.そのために,まず発散的思考支援機能と収束的思考支援機能を備えた知識創造支援環境を調査した.発散的思考および収束的思考の主要な技術としてはブレインストーミング支援ツール"Brain Writer"および手書きKJ法支援ツール"GKJ"がある.それらは創造的思考プロセスの個人とグループの両モードに対し,適用することができる.
著者
石田 憲治 嶺田 拓也 粟生田 忠雄 田村 孝浩 日鷹 一雅 谷本 岳 小出水 規行 若杉 晃介 栗田 英治 芦田 敏文
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

水田における魚類や水生昆虫などの生物の行動特性と水田及び周辺の植生や土壌、水利条件などの環境特性、さらには水田の水環境にかかわる社会条件から生物多様性向上要因を分析した。その結果、(1)生物多様性向上に有効な湿地環境復元に水田冬期湛水が有効であること、(2)初期湛水深、湛水田の配置、湛水期間の工夫で現行の利水条件下でも湛水可能面積の拡大が可能であること、(3)一部の水生昆虫では冬期湛水より通年湛水場所を確保する水管理が重要であること、などを明らかにした。
著者
横山 美江
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本研究では,多胎児の身体発育・発達過程を縦断的に調査し,単胎児との比較から身体発育・発達過程の特徴を明らかにすることを目的とした。その結果,三つ子と単胎児における体重の発育差は,出生時が最も大きく(40%以上の発育差),最初の 1 年で急激に減少するものの,学齢期においても三つ子は単胎児よりも体重が軽いことが明らかとなった。さらに,身長に関しても,出生時に最も差が認められ,最初の 1 年でその差は急激に減少するものの,学齢期においても身長が低いことが判明した。
著者
大角 欣矢 花岡 千春 塚原 康子 片山 杜秀 土田 英三郎 橋本 久美子 信時 裕子 石田 桜子 大河内 文恵 三枝 まり 須藤 まりな 中津川 侑紗 仲辻 真帆 吉田 学史
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

近代日本の洋楽作曲家第一世代を代表する作曲家の一人、信時潔(1887~1965)に関する音楽学的な研究基盤を確立するため、以下の各項目を実施した。①全作品オリジナル資料の調査とデータベース化、②全作品の主要資料のデジタル画像化、③信時旧蔵出版譜・音楽関係図書目録の作成、④作品の放送記録調査(1925~1955年のJOAKによる信時作品の全放送記録)、⑤作品研究(特に《Variationen(越天楽)》と《海道東征》を中心に)、⑥明治後期における「国楽」創成を巡る言説研究、⑦伝記関係資料調査。このうち、①から⑤までの成果は、著作権保護期間内の画像を除き原則としてウェブにて公開の予定。