著者
山室 信一 小関 隆 岡田 暁生 伊藤 順二 王寺 賢太 久保 昭博 藤原 辰史 早瀬 晋三 河本 真理 小田川 大典 服部 伸 片山 杜秀
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究においては、女性や子ども更には植民地における異民族までが熱狂をもって戦争に参与していった心理的メカニズムと行動様式を、各国との比較において明らかにすることを目的とした。そこでは活字や画像、音楽、博覧会などのメディアが複合的に構成され、しかも複製技術の使用によって反復される戦争宣伝の実態を明らかにすることができた。そして、このメディア・ミックスを活用する重要性が認識されたことによって、外務省情報部や陸軍省新聞班などが創設されることとなった。戦争ロマンの比較研究から出発した本研究は、戦争宣伝の手法が「行政広報」や「営利本位の商業主義」に適用されていく歴史過程を明らかにすることによって、総力戦という体験が現代の日常生活といかに直結しているのかを析出した点で重要な成果を生んだ。
著者
小田 裕昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

栄養・運動・睡眠は健康の要である。この3つの要素は生物時計という観点で見ると,統合的に制御できると考え、臓器間時計ネットワークの同調を介して代謝を正常化させて健康に結びつけるための分子的基盤を明らかにすることを目指した。摂食リズムが不規則になるモデルとして,ダラダラ食いや,夜食症候群モデルを作成してきたが,ヒトでも起きうる不規則な摂食タイミングとして朝食欠食を取り上げた。朝食欠食は,休息期から最初の食事が数時間だけ遅れるだけであるが,代謝異常が起きることが多くの研究で明らかになっている。朝食欠食モデルを作成して,様々な実験食を与えて,実験を行ってきた。高脂肪食では,肝臓時計と肝脂質代謝のリズムが数時間遅れるが,高コレステロール食では,肝臓時計が変化せずに肝脂質代謝が遅れた。いずれの場合も活動期の体温上昇が遅れることは同じであり,摂食タイミングの数時間の遅れが,脳視床下部の体温中枢へは同じ影響を与えていることがわかった。何を食べるかということと,そのタイミングが相乗的な効果を生んでいることが初めてわかったためその因子を検討しはじめることにした。時計リセット食品の探索の一貫として,まず三大栄養素の中でほとんど検討されてきてこなかった糖質について検討した。スクロースでは,肝脂質代謝の異常が生じることが知られているが,肝臓時計に影響を与えることはなかった。ところが,肝脂質代謝酵素のリズムを大きく変動させていた。これまで脂質代謝酵素のリズムは,肝臓時計の支配下にいると考えてきたが,食事成分が代謝のリズムを独立に制御することが明らかとなった。
著者
橋本 千絵 古市 剛史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ヒトに最も系統的に近いチンパンジーにみられる「妊娠しにくい」形質の進化の解明のため、ウガンダ共和国カリンズ森林保護区に生息する野生チンパンジーを対象に、直接観察によるメスの性行動のデータと、ヒト用妊娠検査キットを用いた妊娠時期の判定とをあわせて分析した。さらに、妊娠検査キットによる妊娠判定を一歩進め、2009年度より尿や糞試料によるホルモン分析の予備調査を行った。
著者
鳥養 祐二 田内 広 趙 慶利 庄司 美樹
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

トリチウム処理水の海洋放出処分における、安全確認と安心のために、トリチウム水を用いてヒト細胞の培養を行い、その影響を調べた。その結果、①海洋放出するトリチウム処理水濃度と比較して、非常に高濃度なトリチウム環境下でしか細胞死は起きないこと、②モンテカルロ法により、細胞核にトリチウムのβ線のエネルギーを付与するためには、トリチウムは細胞核内に存在する必要があること、を明らかにした。また、③魚の自由水に含まれるトリチウムの濃度を迅速に測定できる手法の開発を行い、トリチウム処理水の海洋放出処分時の迅速な安全確認が行えるようにした。本研究は、トリチウム処理水の処分に大きく貢献する研究成果である。
著者
神庭 重信 鬼塚 俊明 加藤 隆弘 本村 啓介 三浦 智史
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

うつ病の神経炎症仮説に基づき、動物実験としては、グラム陰性菌内毒素をマウスに投与して、行動および脳内の組織化学的変化について研究した。広範囲に及ぶミクログリアの一過性の活性化は見られたが、それを通じたアストログリア、オリゴデンドログリアへの影響は検出できなかった。ミクログリア活性化阻害物質であるミノサイクリンの投与は、内毒素投与の有無にかかわらず、抑うつ様行動を惹起した。培養細胞系では、ヒト末梢血中の単球から、ミクログリア様細胞を誘導することに成功し、気分障害罹患者を対象とする画像研究でも、拡散テンソル画像を集積した。これらの研究を通じ、うつ病と神経炎症の関連についてさらに知見を深めた。
著者
眞溪 歩 藤巻 則夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本基盤研究(B)「変調刺激による誘発脳波・脳磁界計測」は,誘発脳波・脳磁界計測において被験者に提示する刺激に広義の変調を施し,脳波・脳磁界データから脳内処理に関係する情報を抽出する計測方法の開発を目的とした.具体的には以下の項目について研究・開発を行った.1)M系列符号を用いて人間に直接与える刺激にAM, PM変調を施し,この符号を用いた復調を行った.2)言語処理課題の対照実験に対し,実験Aの脳波・脳磁界には実験Aに関連する変調作用が反映されていると考え,それが実験Bの脳波・脳磁界に含まれているかを調べるフィルタリングを行った.3)2)における脳内での変調作用は自発脳波(α波,β波など)の位相同期にも現れると考え,刺激前後のα波の位相と誘発反応の振幅の関係を調べた.4)変調を施さない方式での脳波・脳磁界計測も行い,上記変調方式と比較した.5)1)の方式の有用性検証するために,リアルタイム動作するBrain-Computer Interface(BCI)を試作した.6)上記の手法開発過程での副産物として,信号源推定法を開発した.上記の情報抽出手段は既存の脳イメージングの枠組みにははまりにくいが,システム論の立場では重要な意味を持つ.脳がその処理において入力信号に変調を加えるなら,入力信号の変化は脳が行った処理と考えられる.計測・制御を支えるシステム論においては,信号と処理は抽象化され同一視される.この同一視の重要性は,システムのanalysisにおいてもsynthesisにおいても実証されている.本研究の提案手法では,このような立場に立脚し,上記の5)を除く項目についてはanalysisとして,5)に対してはsynthesisとして有効の可能性を示した.
著者
飯本 武志 山西 弘城 藤本 登 吉川 肇子 三浦 竜一 林 瑠美子 掛布 智久 高木 利恵子 (森崎 利恵子) 尾崎 哲 三門 正吾 高畠 勇二 村石 幸正
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

安全文化醸成のための基盤として、人材育成の中核となる教育者集団を主たるステークホルダーとし、彼らが必要とする教育モジュールを開発することを本研究の目的とした。放射線計測分野の視点では、大気圧空気GM計数管の仕組みを応用した教育用簡易放射線検出器を開発した。教育・社会心理学分野の視点では、さまざまな施設における放射線に関する情報の普及活動、諸外国における中高生やその教員に関する科学技術教育及び原子力・放射線教育の現状、専門家人材育成等の現状に関する調査を実施した。この情報を基に、放射線教育のための簡易ツールを開発し、それを用いての実践モジュールを策定、国内外の中学校、高校で試験運用した。
著者
高橋 敏子 久留島 典子 山部 浩樹 高橋 慎一朗 金子 拓 馬田 綾子 池田 好信
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

中世東寺を統括していた長者・凡僧別当・執行などに関する史料を系統的に調査した結果、「東寺長者補任」の諸本、「東寺凡僧別当引付」、京都国立博物館所蔵「阿刀家伝世資料」、天理大学附属天理図書館所蔵「東寺執行日記」、「東寺過去帳」などの写真や情報を収集することができた。その上で、これまで行われてこなかったこれらの史料学的検討を行った。1.「東寺長者補任」諸本の調査とそれらの史料学的考察の結果、従来認識されていなかった長者補任の類型を抽出することができた。さらに、諸本それぞれの特徴を提示するとともに、いくつかの補任については作成者を確定することもできた。2.「東寺執行日記」については、これまで研究の素材として主に利用されてきたのは内閣文庫所蔵の二種類の写本であったが、今回の調査によって天理図書館所蔵のより良い写本を発見することができた。今後は、こちらが研究の基礎史料になると考える。3.「東寺文書」「東寺百合文書」「教王護国寺文書」など、これまで利用されてきた東寺関係史料に「阿刀家伝世資料」を加えて分析することによって、平安時代から近世初期に至る東寺執行職の歴代を確定し、その根拠となる史料を翻刻提示した。また執行の職務内容についても検討し、新たな知見をえた。4.東寺に伝来してきた複数の「過去帳」について、それぞれの性格を確定した。また、東寺と関係の深い醍醐寺の過去帳分析も行った。今後も収集史料の史料学的研究を継続するとともに、「東寺執行日記」のテキスト化を行う予定である。
著者
山口 二郎 酒井 哲哉 村上 信一郎 新川 敏光 中北 浩爾 米原 謙 石川 真澄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1990年代後半には、英、独、仏の三カ国で社会民主主義政党の再生が起こり、イタリアでは政党再編成の中で中道左派連合が政権を獲得した。日本でも同じように政治改革を契機とする政党再編成の動きがあったにもかかわらず、社会民主主義政党の衰弱、事実上の退場という対照的な現象が起こった。その原因は次の諸点に求められる。第1に、日本社会党が1950年代後半に政権政党としての政策構想を放棄して以来、野党化の論理の中に埋没した。護憲平和主義が野党としての存在を正当化する最大の根拠となった。第2に、自民党政権時代に整備された地方重視の公共投資や弱小産業保護のための規制政策が、社会的平準化とセーフティネットの役割を代替し、本来の社会民主主義の出番がなくなった。この点はイタリアとよく似た状況であったが、イタリアの場合左翼政党の連合がEU加盟という国家目標に沿って自由主義的な改革を取り入れ、政権担当能力を示したのに対して、日本の場合社会党が規制緩和や官僚制改革について政策を示せなかったことで、90年代の政治において周辺的な地位に追いやられた。第3に、労働組合という旧来の支持基盤の衰弱、市民の台頭という有権者意識の変化に対応できなかった。これらの要因によって1990年代の日本で社会民主主義政党が衰滅していったが、新自由主義的な構造改革によって旧来の擬似セーフティネットが壊されたのちには、再び新たな社会民主主義的政策を軸にした政治勢力の結集が可能となる可能性もある。
著者
中村 靖子 大平 英樹 金 明哲 池野 絢子 重見 晋也 葉柳 和則 中川 拓哉
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-07-17

本研究は、独伊仏日の四カ国語圏にまたがって愛国的文化運動や、公共芸術や文化遺産保護運動、文芸誌とその検閲などを対象とし、ファシズム期のスイス、イタリア、日本、フランスにおける集合的記憶の構成過程を辿ろうとする領域横断型の学際プロジェクトである。四つの言語圏における文化運動のオラリティ資料を介して、人間の社会に情動が広範なムーヴメントを創り出すメカニズムを考察しようとするものであり、伝統的な人文学が培ってきた文献研究のスキルとテキストマイニング手法が共同することにより上記の目的を達成することが可能になると期待できる。
著者
林 久美子 丹羽 伸介 池田 一穂 岡田 康志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-07-18

分子モーターキネシンやダイニンによるオルガネラ輸送は医療や美容と関連が深い。例えばアルツハイマー病などの神経疾患では軸索輸送障害が問題となるし日焼けの原因となるメラニン色素の顆粒輸送もキネシンやダイニンが担う。非平衡統計力学は輸送を扱う学問であるが、非平衡統計力学の恒等式をこのような輸送に応用した。これらの輸送は非平衡確率過程とみなせるからである。具体的にはシナプス小胞前駆体輸送とメラニン色素顆粒輸送を調べた。前者では恒等式の利用でシナプス形成位置に異常がでる変異体において物理的要因を突き止めた。後者ではダイニン阻害剤シリオブレビンの効果を輸送に関連する力や分子モーターの数から評価した。
著者
吉澤 和徳 吉冨 博之 上村 佳孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

標本収集:国内でのフィールド調査により,より幅広い範囲のチャタテムシの形態解析用サンプルが得られた.ヒョウモンチョウ,マルハナノミのサンプリングも継続して行い,追加サンプルが得られた.遺伝子解析:前年度解析したミトコンドリアゲノム情報に基づき,トリカヘチャタテの分子系統解析に必要な追加プライマーの設計を終え,データもほぼそろった.現在外群のデータを追加している状態である.予備解析ではトリカヘチャタテ内の系統関係の解像度も高く,また近縁な Afrotrogla, Sensitibilla, Spekeletor 属との系統関係に関しても良好な解析結果が得られている.トリカヘチャタテの親子判別,集団構造解析に必要なマイクロサテライトプライマーも完成し,それらを報告した論文が受理され,現在印刷中である.形態解析:SPring8での追加の形態解析を行い,十分なデータを集めた.特に,トリカヘチャタテの精子貯蔵構造に興味深い発見があり,それらの解析をほぼ終え,論文の執筆を開始している段階にある.雌ペニスに関連した構造の解析も進めており,現在は比較に必要な雌ペニスを持たない通常のチャタテムシの交尾器の状態の解析を進めている.加えて,共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析も進めており,これらの構造のタンパク質構成などについても解析を進めている.サブプロジェクト:プロジェクトを通して得られたトリカヘチャタテなどのサンプルを用いて,交尾器以外の形態の観察も行った.特に,前後翅を連結する構造の解析を行い,その結果を論文として出版した.この構造から,トリカヘチャタテの飛翔能力が弱いであろう事も傍証された.受賞:本プロジェクトでイグ・ノーベル賞生物学賞を受賞した.
著者
植松 一眞 細谷 和海 吉田 将之 海野 徹也 立原 一憲 西田 睦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

オランダ国ライデン自然史博物館に保管されているシーボルトが採集した日本産フナのタイプ標本を現地で精査した結果、C. cuvieriはゲンゴロウブナに,C. langsdorfiiはギンブナに,C. grandculisはニゴロブナによく一致したが、キンブナに対応するタイプ標本はなかった。一方、C. buergeriのタイプシリーズにはオオキンブナとナガブナが混入している可能性が示唆された。日本各地および韓国群山市で採集したフナ59個体と7品種のキンギョを入手し、筋肉断片から抽出したミトコンドリアDNA(mtDNA)ND4/ND5領域の約3400塩基配列に基づく近隣結合法による系統樹作成、外部形態・計数形質・内部形態の計28項目の計測比較、倍数性の確認を行なった。その結果、これらは1.琵琶湖起源のゲンゴロウブナからなる集団、2.韓国・南西諸島のフナとキンギョからなる集団、3.日本主要集団からなることが遺伝学的にも形態学的にも確認された。日本産と韓国産の2倍体フナは異なる久ラスダーを形成したことから、両者には異なる学名を与えるべきと考えた。日本主要集団の2倍体個体はさらに東北亜集団(キンブナ)、中部亜集団(ナガブナとニゴロブナ)、そして南日本集団(オオキンブナ)に分けられるので、これらに与えるべき学名を新たに提案した。また、ゲンゴロウブナ集団はすべて2倍体であったが、他の2集団は、遺伝的に非常に近い2倍体と3倍体からなる集団であった。すなわち、2倍体と3倍体は各地域集団において相互に生殖交流しつつ分化したものと考えられた。キンギョは遺伝的に日本主要集団のフナとは明らかに異なり、韓国・南西諸島の集団に属するので、大陸のフナがその起源であることがあらためて確認された。フナとキンギョの行動特性(情動反応性)が明らかに異なることを示すとともに、その原因となる脳内発現遺伝子の候補を得た。
著者
藤盛 啓成 大内 憲明 里見 進 土井 秀之 宮田 剛 関口 悟 大貫 幸二 宮崎 修吉
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

マジュロにて2006年2月20日〜3月22日の期間、自発的に受診希望した者1386名(女性888名、男性498名、平均年齢50.9±12.34才)を対象に問診、エコー検査を行い、結節性病変275名に細胞診を行った。全検診者中608名に検診既往があり、386名がBRAVO cohort、ブラボー事件時0〜5歳であった者は322名であった。全検診者中、エコーで悪性疑い36名2.6%であり、細胞診でPTC or PTC疑いが10名0.72%であった。目的とした対象(BRAVO cohort中ブラボー事件時0〜5歳)では4名1.2%であり、設定したcohort 1055名でみると、その時点で甲状腺癌と診断された9名を除いた1046名中4名(男1、女3)0.38%(3.82人/年/1万人)が甲状腺癌を新たに発症したと考えられた。甲状腺機能、抗体検査では採血した1186名中1153名で検査結果が得られた。以前の結果と異なり、甲状腺自己抗体陽性率は20%程度で特に低くはないと思われた。マーシャル諸島政府が保管するデータベースから、以前の検診者7162中の死亡者数、死亡原因を調査した。3714名のBRAVO cohort、のうち2003年12月31日までの死亡者は642名、死亡時平均年齢63.9才であった。BRAVO cohort中癌死は107名で、最も多かったのは肺癌(男23、女性9)であった。死亡時平均年齢は男性、女性それぞれ62.8才、71.2才であった。男性の死亡診断書には全員heavy smokerの記載があった。BRAVO cohort中乳癌の死亡例は、6名であった。甲状腺癌の死亡例は2名であった。その他、消化管、肝臓、膵臓、子宮の癌死が多かった。癌死以外の死亡は392名であった。肝硬変・肝不全、肺炎・肺気腫の呼吸不全、循環器障害、脳血管障害、腎不全、糖尿病・下肢壊疽・敗血症、自殺・事故が主なものであった。以上より、マーシャル諸島における癌発生、死亡の実態が把握され、BRAVO cohort中0-5才の間に被曝した集団のデータベースが完成した。肺癌については喫煙の影響が大きく、被曝の影響は少ない可能性が示唆された。今後このデータベースを基に解析を進め、甲状腺癌の発生と被曝の関係を明らかにすることが可能となった。
著者
佐治木 弘尚 澤間 善成 近藤 伸一
出版者
岐阜薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ステンレススチール(SUS304)製遊星型ボールミル中で水をミリングすると、メカノエネルギーとSUSを構成する金属の触媒作用効率良く協調して、非加熱、非加圧で水の全量分解反応が進行し、水素が定量的に生成する。反応の進行にはSUS合金を構成する金属とメカノエネルギーが重要である。水だけでなく炭化水素やエーテルでも同様に水素が効率良く生成することも明らかにした。特に芳香族化合物共存下、ジエチルエーテルをミリングすると芳香核の還元が定量的に進行する。さらにSUS304ボールとH2O、CO2をミリング処理するとCO2がSUSを構成する金属の炭酸塩を経て逐次的にメタンに定量的に変換されることも判った。
著者
山嶋 哲盛 及川 伸二 山下 竜也
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、世界的に様々な疾患モデルで追試されて来た研究代表者提唱の「カルパイン-カテプシン仮説」に基づき、オメガ6系の食用油を多量に摂るヒトに好発するアルツハイマー病や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及び2型糖尿病などの病因を、ヒドロキシノネナール(HNE)などの過酸化脂質に着目して究明する。すなわち、『酸化損傷(カルボニル化)とカルパイン切断がもたらすHsp70.1の異常に起因するリソソーム膜の破綻』をサルモデルで検証し、生活習慣病の根本原因を見直す。
著者
目加田 英輔 水島 寛人 麻野 四郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

エクトドメインシェディングとは、細胞膜蛋白質が細胞表面でプロテアーゼによる切断を受け、その細胞外ドメインが培養液中に放出される現象を示し、膜タンパク質の活性制御に非常に重要な意味を持つ。本研究の目的は、これまでのHB-EGF研究をベースに、シェディングに関る分子群を明らかにし、シェディングの調節機構と生物学的意義の解明を行うことである。この目的のために、以下の実験を計画した。1)HB-EGFを発現したヒト細胞にsiRNA発現ライブラリーを組み込まれたレンチウィルスベクターを感染し、siRNA発現細胞を得る。2)この細胞にエクトドメインシェディング誘導薬であるTPAを作用させると、ほとんどの細胞ではシェディングが誘導されるが、シェディングが起こらない細胞群を抗HB-EGF抗体で染色して、これをセルソーターで選別する。3)得られた細胞群の中で発現が低下している遺伝子をDNAアレイの手法で同定することで、エクトドメインシェディングに関わる遺伝子を網羅的に明らかにする。4)シェディングに関わることが示唆された遺伝子について個別に詳しく検証し、シェディング機構にどのように関わっているのか明らかにする。まず我々はジフテリア毒素耐性細胞のスクリーニングを行い、この手法が実際に稼働するかどうかの検証を行い、本法によって既知の遺伝子に加えて新規遺伝子の同定が可能であることを明らかにした。続いて、同手法にて、シェディングに関る分子群をスクリーニングし、候補遺伝子のリストを得た。現在、得られた候補遺伝子のリストから、個別にその遺伝子の機能を調べ、シェディングに関るかどうかを調査中である。
著者
是永 論 浅岡 隆裕 柄本 三代子 金 相美 岡田 章子 清水 真 酒井 信一郎 重吉 知美 池上 賢 加藤 倫子
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本社会および日本人に関して、「劣化」という表現が言説上について頻繁に使用されているという状況を踏まえ、メディア言説上における劣化表現のありようを解明するために、活字メディアを中心に内容分析を行ったほか、一般のメディアの受け手に対する質問紙およびインタビュー調査から得られたデータの分析結果から、言説どうしが形成する関係と、言説が人々に消費される具体的な過程を明らかにした。
著者
暮沢 剛巳 江藤 光紀 加島 卓 鯖江 秀樹 飯田 豊
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

4年計画の2年目に当たる本年度は、各メンバーとも初年度から行ってきた基礎調査を継続する発展させると同時に、国内外での現地調査を本格化させ、さらに多くの情報を収集することを目指した。暮沢は夏季に江藤と合同で中国での調査を行ったほか、その直後にイギリスでも調査を行い、また国内でも京都の国際学会や研究会に参加したほか、沖縄でも調査を行った。江藤は暮沢と合同で中国で調査を行ったほか、ドイツでも調査を行った。鯖江は主に資料収集に注力した。加島は多くの外国語文献を収集したほか、大阪で70年大阪万博についての現地調査を行った。飯田は70年大阪万博についての多くの資料を収集した。各メンバーの活動は基本的には個人単位で行ったが、定期的に連絡を取り合って情報を交換し、また8月上旬には京都で、3月中旬には東京で全員が一堂に会しての研究ミーティングを行った。個別の研究成果に関してだが、暮沢は紀元2600年万博についての論文を発表したほか、オリンピックについての共著を出版し、そのなかで万博についても扱った。江藤は今年度は基礎研究に専念した。鯖江は2本の論文を発表したほか、翻訳書を出版した。加島は2本の論文を発表したほか、学会での研究報告を行った。飯田は単著『メディア論の地層』を出版したほか、70年大阪万博に言及した論文を発表したが、2020年初頭からのコロナウイルスの急速な感染拡大の影響で、一部の計画を変更し、研究費の一部を次年度に繰越使用するなどの影響が出た。以上の実績を踏まえて、3年目に当たる次年度以降も引き続き積極的に調査研究に取り組んでいく予定だが、コロナウイルスの急速な感染拡大が計画に影響を及ぼすことは避けられないので、注意していく必要がある。