著者
増田 弘 佐藤 晋 加藤 陽子 加藤 聖文 浜井 和史 永島 広紀 大澤 武司 竹野 学
出版者
東洋英和女学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

平成21年度から23年度に至る3力年の研究の具体的成果は、本年9月に慶応義塾大学出版会より刊行が予定されている増田弘編『大日本帝国の崩壊と復員・引揚』にある。本書は、日本が第二次世界大戦に敗北したことで生じた帝国日本の崩壊過程に関して、外地からの民間人引揚と外地に在った日本軍将兵の復員という視座に立った実証研究であると同時に、東アジアにおける冷戦という新局面との歴史的接合点を解明しようとする試論である。
著者
吉川 欣亮 設楽 浩志 野口 佳裕 STEVE Brown 奥村 和弘
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

新規難聴モデルマウスの樹立およびそれを応用した難聴発症機構の解明を目指し、ポジショナルクローニングおよび分子間相互作用解析に基づき研究を実施した結果、以下の主要な成果を得た。1)2種の難聴モデルマウスの発症原因遺伝子が共通してMyosinVIであることを明らかにした。2)発現解析および蛋白質相互作用解析に基づき、4.1BおよびGelsolinが感覚毛伸長に機能することを明らかにした。3)SansおよびWhrlinの2重変異マウスの表現型から両者が有毛細胞上の感覚毛の平面細胞極性に機能することが示された。
著者
佐藤 卓己 渡辺 靖 植村 和秀 柴内 康文 福間 良明 青木 貞茂 本田 毅彦 赤上 裕幸 長崎 励朗 白戸 健一郎 松永 智子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

情報化の先進諸国におけるメディア文化政策の展開を地域別(時系列的)、メディア別(地域横断的)に比較検討し、国民統合的な「文化政策」と情報拡散的な「メディア政策」を明確に区分する必要性を明らかにした。その上で、ソフト・パワーとしては両者を組み合わせた「メディア文化政策」の重要性が明らかになった。佐藤卓己・柴内康文・渡辺靖編『ソフトパワーとしてのメディア文化政策』を新曜社より2012年度中に上梓する。
著者
橋本 順光 山中 由里子 西原 大輔 須藤 直人 李 建志 鈴木 禎宏 大東 和重 児島 由理
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

座標軸として和辻哲郎の『風土』(1935)を旅行記として注目することで、漫遊記を多く生み出した欧州航路、旅行者と移民の双方を運んだ南洋航路、そして主に労働者を「内地」へ供給した朝鮮航路と、性格の異なる三つの航路の記録を対比し、戦間期日本の心象地図の一側面を明らかにすることができた。和辻の『風土』が展開した文明論は、戦間期の旅行記という文脈に置くことで、心象地図という抽象化と類型化に大きく棹さした可能性が明らかになった。
著者
木村 勝彦 荒川 隆史 大楽 和正 山田 昌久 卜部 厚志 荒川 隆史 高田 秀樹 大野 淳也 向井 裕知 岡田 憲一 平岩 欣太 赤羽 正春 吉川 昌伸 吉川 純子 西本 寛 三ツ井 朋子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

縄文時代の木柱に年輪酸素同位体分析を加えた年輪年代学的解析を加えることで、新潟県青田遺跡の集落ではBC477年前後とBC530年前後の2回、それぞれ短期間に集中的に10棟以上の建物が建てられたことが明らかになった。縄文の建物に実年代がついたのは初めての成果であり、さらに廃棄層やクリの初期成長の変化などを加えて実年代をつけた詳細な解析が実施できた。また、現生の森林での実験を加えた詳細な花粉分析により、青田遺跡集落の数十m近傍にクリ林が存在していて、人為的な維持管理がなされていたことが確実になった。
著者
勝部 眞人 坂根 嘉弘 中山 富廣 河西 英通 布川 弘 木村 健二 徳永 光俊 真栄平 房昭 弁納 才一 張 楓 張 翔 戴 鞍鋼 蘇 淳烈 朴 ソプ
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

本研究は、19世紀末~20世紀初頭におけるグローバリゼーションのなかで、在地社会の持つ伝統的文化性(「在来」)が新しい社会変動(「外来」)に対してどのような影響を与え、どういう形で生き残っていくのか…を、東アジア社会という枠組みで検討しようとしたものである。期間中に日本・中国・朝鮮3国の比較に議論が集中し、瀬戸内という対象地域の特質解明にまでは至らなかったが、3国社会比較の視座について「在地社会の共同性」という観点からの手がかりを得ることができた。
著者
中村 純作 堀田 秀吾 朝尾 幸次郎 梅咲 敦子 松田 憲 津熊 良政 野澤 和典 東 照二 山添 孝夫 佐藤 佳奈 宮浦 陽子 山本 香里 濱中 千裕 霜村 憲司
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

我が国中等教育の英語教科書のモニターコーパスを更新、補充、新たにアジア諸国の英語教科書を追加したコーパスを構築し、教科書研究のための環境づくりを行った上、教科書の内容(語彙、構文、文法項目、トピック、社会文化的要素等)を中心に質的・量的比較を行い日本の英語教育に欠けている点を指摘した。また、我が国を含めたアジア諸国の英語教育の実態と課題を検討し、我が国英語教育の問題点、今後の方向性などを考えるための国際シンポジウム、英語教育での新しい試みに関する知見を共有するための英語教育公開講演会、ワークショップなども開催、これらをまとめた報告書を出版した。
著者
原田 正純 花田 昌宣 宮北 隆志 富樫 貞夫 羽江 忠彦 下地 明友
出版者
熊本学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

本研究は、被害実態の広がり(医学的側面のみならず社会的側面から)の把握に努め、現在の課題を明らかにすることを課題としており、病いを社会的なものとしてとらえ医学的な疾患学・症候学あるいは病像論から解き放ち、社会環境の中に位置づけ直す試みを通して、改めて被害実態を明らかにしたものである。[健康・医療・生活問題班]では、御所浦地区での全戸調査と数次にわたる集中的ヒアリングを実施、水俣病に対する忌避観の強さとその急速な変貌を明らかにできた。また、熊本学園大学水俣学現地研究センターを利用しての医療相談を定期的に実施し、若い世代の医療的側面での調査も実施し研究発表をしてきた。[地域社会・福祉問題班]水俣社協との協力のもと、住民意識調査の実施、住民との対話の機会を持ち調査の結果をさらに検討し、報告書を作成した。[被害補償と環境再生問題班]では、水俣地域の社会的アクターを中心に地域戦略プラットフォームづくりのワーキンググループを定期的に開催し、具体的な提言書を作成した。毎年1月には、水俣市において水俣病事件研究交流集会を本研究プロジェクト参加者のみならず、全国各地の研究者ら100名近くの参加で開催し、研究成果の発表および討論を掘り下げ、水俣学研究のアリーナ形成をはかることができている。これらを通して、水俣病被害が社会的広がりを持つこと、今なお係争課題が数多く残されており社会運動も継続していること、それらを踏まえた地域づくりの方向性を示すことができた。これらの研究成果は、研究代表ならびに分担者によってモノグラフィックな研究論文や報告書の形で随時発表されている。
著者
酒井 直隆 嶋脇 聡
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

ラットの坐骨神経を大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経の3つの神経束に分割し、各々の神経束にフック電極もしくは埋設電極を取り付け、ラットの下肢動作時の神経活動電位を計測した。その結果、各々の神経束から個別に活動電位を得ることができ、いずれも活動電位は2相性で、活動時間、最高電位、最低電位、電位差といったパラメータの値や周波数分布の特徴は類似していた。フック電極と埋設電極によって計測される活動電位を比較すると、計測される最高電位、最低電位、電位差の値に相違があるものの、活動時間や周波数分布の特徴から同様の活動電位を検出できた。活動電位は、大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経ともに類似の波形であり、足関節の屈伸はこれらの神経活動電位の位相差によって、拮抗筋の収縮・弛緩による協調運動が実現するものと考えられた。そのため坐骨神経を神経束に分離後、同一平面上に配置して各神経束に電極を装着することで、電位束ごとに異なる神経電位を感知することが可能であり、この方法で神経束電位による多チャンネル化が実現するものと考えられた。
著者
V・L カーペンター 四宮 俊之 神田 健策 黄 孝春
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-08-23)

りんごを事例にして農産物の生産販売における知的財産の活用に不可欠な育成者権(特許)と商標権の管理運営・保護に関わる諸課題を考察し、その商標権に基づく商標使用ライセンス契約等による一貫した新しい生産と販売の試みを検討した。また、知的財産(商標権)活用の先駆者となったピンクレディー(品種名:クリプス・ピンク)管理・運営の「クラブ」システムの展開と実態を調査した。
著者
佐藤 誠 青木 辰司 岡崎 昌之 横川 洋 内田 和実 江藤 訓重
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

1.アジア連携のヘルス・ツーリズムとライフスタイル起業の実証研究を実施。中国、台湾、ラオス、ベトナムなどのローカルメディスンを活かしたヘルスツーリズムについて、現地調査とあわせて海外から研究・実践者を招いたアジア・ヘルスプロモーション会議などで成果を上げた。また、健康・美容・性・保健をテーマとしたライフスタイル起業について、具体的に天草市金焼地区でのグリーンライフ・コミュニティ事業推進との関連で展望が開けた。2.セカンドホーム・ツーリズムとライフウエア産業形成の道筋が見えてきた。遊休農地や未利用バイオマス資源活用によるライフスタイル起業について、本科研研究の延長線上で、天草市・熊本大学・熊本経済同友会との民学官連携で共生・対流の社会実験に関わる国土交通省や農林水産省からの助成を得て、都市住民がリースされた農地にグリーンライフ実現のための乾式壁工法ストローベイル・コテージを建てる方式で画期的な農村活性化モデル構築に挑んだ。このグリーンライフ天草方式は、2地域居住から田園移住へと進化するセカンドホーム・ツーリズムと地元住民と地場企業との地域再生事業に明るい展望を拓いた。3.本研究の成果として「風地観ツーズム」理論が構築された。本科研のテーマで北海道大学大学院観光創造専攻で田園リゾート論および地域再生連携事業論を組み立てる中で、これまでのビジターの「観る」観光や、リピーターに「示す」観光地域づくりの先に、いのち育む「土」とスピリット=気の流れである「風」とが結ばれて新しい暮らしや生業が産み出される「風地観」ツーリズムが、田園へのアメニティ・ムーバーを介して産業イノベーションをもたらすという理論仮説を提示した。
著者
土田 英三郎 植田 克己 檜山 哲彦 畑瞬 一郎 亀川 徹 関根 和江 岩崎 真 畑 瞬一郎
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

東京芸術大学が明治期以来の長い歴史の中で、学内各部署に分散蓄積してきた貴重な資料群の所在を確認し、目録を作成のうえ、近年とみに劣化が激しく、このままでは、死蔵されたまま歴史の片隅に埋もれてしまいかねないアナログ録音のオープンテープをデジタル化し、音のデータベース構築する基礎を形成できたこと、そして一部ではあるが、公開の機会を得ることができたことは、本研究の大きな成果である。今後は、本研究で採り上げられなかったアナログ資料をデジタル化し、積極的に公開する方法を探り、公共の財産として活用する方向を目指したい。
著者
松本 光太郎 小林 敦子 梅村 坦 大野 旭 松本 ますみ 高橋 健太郎
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

平成19年度科学研究費補助金研究成果報告書は、3年間の調査研究の成果と、本プロジェクトの最終年度に開催された国際シンポジウム「移動する中国ムスリム-ヒトと知識と経済を結ぶネットワーク」の報告内容を整理し、作成したものである。その際、本科研プロジェクトの課題として提示した三つのテーマを軸としている。その三つのテーマとは次のとおりである。一つ目に、中国ムスリムの越境移住の実態について調査を行うことである。中国ムスリムは中国国内における人口流動のみならず、迫害や留学、労働移民、宗教指導者の動きやメッカ巡礼などによって、国境を越えて移住し、コミュニティを形成している。移住や定着にともなって、社会構造や文化にどのような変化が生じたのかという点が、本報告書で解明しようと試みた一つ目の軸である。二つ目に、中国ムスリムの国内外における移住に付随して、イスラーム的宗教知識と商業的ネットワークの構築過程を探ることが目的であった。本報告書では、宗教指導者や宗教学生のモスク間の移動や、イスラーム宗教知識の国境を越えた流動などが分析を二つ目の軸として分析している。三つ目に、中国ムスリムの移住や、移住にともなうイスラーム宗教知識の流動などにともなって生じる、宗教復興を調査分析することであった。イスラーム復興をキーワードとする論考も、本報告書に収録されている。これら三つの軸を中心に提出された研究成果を、中国西北、西南華南、新疆、中国域外という地域軸に基づいて整理しなおし、報告書として提出した。
著者
星 正治 遠藤 暁 大瀧 慈 木村 昭郎 岡本 哲治 豊田 新 山本 政儀 川野 徳幸 今中 哲二 片山 博昭
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

セミパラチンスク旧ソ連核実験場周辺の村、ドロン、セミパラチンスク、ズナメンカ、サルジャル他の村等で土壌を採取し、Cs-137、1-129、Puの同位体を測定し結果をまとめた。それぞれの村の被ばく線量を推定した。測定結果は、Bq/m2の単位で放射能の降下量として求めた。セミパラチンスクでの個人線量評価方法を確立し、個人被ばく線量推定のための方式を確立したのでコンピュータ入力している。
著者
岩田 正美 杉村 宏 岡部 卓 村上 英吾 圷 洋一 松本 一郎 岩永 理恵 鳥山 まどか
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本研究は1)貧困の概念と最低生活費研究を理論的に整理し、2)現代の代表的な低所得層の家計調査からその生活実態を把握し、3)家計の抵抗点による最低生活費の試算と生活保護基準との比較を行った。この結果、1)最低生活費は複数のアプローチで確かめられる必要がある。2)単身者の生活費は、生活基盤費が固定費であり、その他の経費の高低で消費水準が決まる。3)その他の消費水準の抵抗点を利用して最低生活費を試算すると167,224円であった。生活保護基準と比較すると、約2万円強高くなることが分かった。
著者
吉松 靖文 村田 健史 井上 雅彦 木村 映善 中川 祐治
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004 (Released:2004-04-01)

本研究では、自閉症児を主とした発達障害児の日常生活を支援するための携帯型生活支援ツールを設計・実装し、その評価を行う。ツールは携帯電話で動作し、自宅、学校、外出先などどの場所にいても利用できる日常生活に根付いたツールとして設計した。さらに、パーソナルコンピュータでも同じユーザインターフェースと同じ機能で動作するアプリケーションを提供した。本研究では、このツールを実装し、これを用いて次の2点について研究を行った。平成16年度〜平成17年度は、発達障害児の生活支援ツールの設計・実装を行った。まず発達障害児に有効なインターフェースを提案し、XMLをベースにシステム設計した。ツールとしては、タイマー機能、スケジュール機能、カレンダー機能、絵カード機能の4つの機能を実装した。平成17年度〜平成18年度は、ツールによる自閉症児を中心とした発達障害児への実験を行った。臨床応用では、様々なタイプや程度の発達障害および生活シーンにおいて適用を行った。知的障害の特別支援学校では、PCでタイマーやスケジューラを表示し、学級での活用を行った。その結果、指示待ち状態にあった自閉症児が自発的に活動に着手したり、一つ一つの活動遂行に時間がかかっていた知的障害児や自閉症児が所定の時間内に活動を終えることが可能になったりするなどの成果が得られた。また、他児の遂行と自分のそれを比較するようになったり、タイマーを使っていない場面での活動への着手・遂行も能動的になったりするなどの効果も見られた。家庭での応用では、朝の支度や下校後の活動支援を行った。その結果、朝がなかなか起きられなかった高機能自閉症児が短時間で自ら起床するようになったり、宿題が通常の何倍もかかっていた高機能自閉症児が平均的な時間で宿題を終えるようになったりするなどの効果が見られた。
著者
内田 直 宝田 雄大 渡邉 丈夫 宮崎 真 宝田 雄大 後藤 一成 関口 浩文 宮崎 真
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

近年、国民の健康に対する関心の高まりとともに身体運動への関心も高まっている。しかしながら、このような関心は、身体的な健康が主体となっている。一方で、精神的なあるいは脳の健康も同様に重要であることは疑い。このような、精神的なあるいは脳の健康と、これに対する身体運動の効果についての研究は、いまだ十分に行われているとはいえない。本研究では、身体運動と精神活動あるいは脳活動の関連について焦点をあて、これについて健康科学的な側面から実証的な研究を行った。このような研究は、身体活動と身体の健康に関連した研究に比べると新しいものであり、今後うつ病や認知症予防のための運動療法としての活動につながるものである。研究は、以下の5つのテーマ(方法)によって行った。すなわち(1)身体運動が睡眠に及ぼす影響について、(2).睡眠中の代謝活動についての予備的研究、(3)朝行う身体運動が、その後の認知機能に及ぼす影響について、(4)身体運動と児童の発達の関連について、(5)観察学習の効果とスキルの転移、である。(1) 身体運動が睡眠に及ぼす影響については、二つの実験を行った。昼寝により人工的に作成した不眠状態への運動の影響をみたが、これは大きな影響が観察されなかった。次に睡眠直前に高強度の運動を行わせ、これが睡眠にどのような影響を及ぼすのかを観察した。これまでの研究では、ストレス反応により睡眠が悪化すると言う説があったが、我々の研究では変化無く、悪化は無かった。しかしながら、睡眠中の体温が睡眠中期で運動後運動しないときよりも有意に高いという興味深い結果が得られた。(2) はヒューマンカロリーメータを用いた睡眠中の代謝の連続測定と言う新しい分野の研究であり、今後運動後の代謝の変化など興味がもたれた。(3) 朝の運動については、日常的に行われる健康運動と似たパタンであるが、これが日中の活動にどのように影響を及ぼすのかを見た。しかしながら、結果としては一過性の効果は認められたが、一日の中での変化は無かった。このような運動を習慣的にした場合の影響が今後の課題として残った。(4) 小学生を対象とした研究のまとめが一部完成した段階である。現状では、認知機能のうち、判別と抑制の発達パタンが小学生年代では異なっている可能性が示唆された。(5) 観察学習は、運動学習の一部であるが、観察学習により獲得された手続き記憶は、必ずしも転移しないことが示唆される結果であった。全体として基礎研究と応用研究の両方から成果が得られ、身体運動が脳と心に及ぼす効果の解明と健康科学への応用についての業績がえられた。期間は終了しているが、この結果を国際論文として発表している作業を持続して行っている。
著者
中山 一麿 落合 博志 伊藤 聡
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01 (Released:2015-04-16)

昨年度後半から本格始動させた覚城院の調査であるが、調査が進むにつれて新たな発見があり、多義に亘る史料の宝庫として、その実態把握を加速させている。字数制限上、覚城院に関する主たる成果のみ以下に記す。6月には、中山一麿「寺院経蔵調査にみる増吽研究の可能性-安住院・覚城院」(大橋直義編『根来寺と延慶本『平家物語』』、勉誠出版)において、新出の増吽関係史料を中心に、増吽やその周辺の研究を進展させると共に、聖教調査研究が新たな発展段階にあることを示唆した。9月には本科研を含めた6つのプロジェクトの共催で、「第1回 日本宗教文献調査学 合同研究集会」が行われたが、中山はその開催に主導的役割を果たし、二日目の公開シンポジウム「聖教が繋ぐ-中世根来寺の宗教文化圏-」では基調報告として「覚城院所蔵の中世期写本と根来寺・真福寺」を発表し、覚城院から発見された根来寺教学を俯瞰する血脈の紹介を交えつつ、覚城院聖教が根来寺・真福寺などの聖教と密接に関係することを報告した。加えて、同時に開催された寺院調査に関するポスターセッションでは、全29ヵ寺中、本科研事業に参加する研究者5名で計10ヵ寺分(覚城院・安住院・随心院・西福寺〈以上中山〉・木山寺・捧択寺〈以上向村九音〉・善通寺〈落合博志〉・地蔵寺〈山崎淳〉・薬王寺〈須藤茂樹〉・宝泉寺〈中川真弓〉)のポスターを掲示した。3月には「第1回 覚城院聖教調査進捗報告会―今目覚める、地方経蔵の底力―」を開催し、覚城院調査メンバーから9名の研究者による最新の研究成果を公表した。同月末刊行の『中世禅籍叢刊 第12巻 稀覯禅籍集 続』(臨川書店)においては、覚城院蔵『密宗超過仏祖決』の影印・翻刻・解題を掲載し、翻刻(阿部泰郎)・特論(中山一麿)・解題(伊藤聡・阿部泰郎)がそれぞれ担当して、本書の持つ中世禅密思想上の意義やその伝来が象徴する覚城院聖教の重要性を論じた。
著者
伊東 信宏 小島 亮 新免 光比呂 奥 彩子 太田 峰夫 輪島 裕介 濱崎 友絵 上畑 史 阪井 葉子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2012-04-24)

ブルガリアの「チャルガ」は、「マネレ」(ルーマニア)、「ターボフォーク」(旧ユーゴ諸国)などのポップフォーク(民俗的大衆音楽)と並んで、1990年代以降バルカン諸国に特有の社会現象であり、同様の現象は日本の「演歌」をはじめとしてアジア各国にも見られる。本研究はそれら諸ジャンルの比較を行い、その類似と差異をあきらかにすることを目指してきた。これまでに大阪、東京などの諸都市で、8回の研究会を開催し、20の報告が行われた。2017年にはこの問題に関する国際会議を開催する予定である。そこでは上記諸ジャンルの社会的文脈を検証し、歌詞や音楽構造の分析が行われた。日本語による単行本出版が準備されている。